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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】前処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
G01N35/10 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023546790
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022026014
(87)【国際公開番号】W WO2023037725
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021148726
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】田村 一真
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-039674(JP,A)
【文献】特開2007-139470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0241858(US,A1)
【文献】特開2015-169639(JP,A)
【文献】特開2004-024981(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3428654(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に収容された液体の検体を吸引した後、他の検体容器へ吐出して分注する分注処理を行う前処理装置であって、
分注ノズルと、
前記分注ノズルの先端に着脱可能に設けられた分注ノズルチップと、
前記分注ノズルから前記分注ノズルチップを取り外して廃棄する廃棄ボックスと、
前記分注ノズルから前記分注ノズルチップを取り外す取り外し部に挿入された前記分注ノズルチップを長手方向側方から切断する切断機構と
を備えたことを特徴とする前処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の前処理装置において、
前記切断機構は、
前記分注ノズルチップの側面に異なる方向から当接するよう連続的に形成された第1刃面および第2刃面を有し、前記第1刃面と前記第2刃面とを含む平面に沿う方向に回動可能に設けられた第1の刃と、
前記第1の刃の前記第1刃面および前記第2刃面とは異なる方向から前記分注ノズルチップの側面に当接するように形成された刃面を有し、前記第1の刃に対して相対的に固定された第2の刃とを備え、
前記第1の刃と前記第2の刃との間に前記分注ノズルチップを配置した状態で前記第1の刃を前記第2の刃の方向に回動させることで、前記第1の刃の前記第1刃面および前記第2刃面と前記第2の刃の刃面とで画定される範囲に前記分注ノズルチップを保持しながら切断することを特徴とする前処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の前処理装置において、
複数の前記切断機構と、
前記複数の切断機構のそれぞれの前記第1の刃を連結する連結部材と、
前記複数の切断機構にそれぞれ配置された複数の前記分注ノズルチップを一時に切断するように、前記複数の切断機構のそれぞれの前記第1の刃を前記連結部材を介して回動させるアクチュエータと
を有することを特徴とする前処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の前処理装置において、
前記切断機構は、
前記第1の刃と同軸状に回動可能に設けられ、前記分注ノズルチップの側面に前記第1の刃の前記第1刃面に沿って当接するとともに、前記第1の刃の前記第1刃面に沿う位置から前記分注ノズルチップ側への前記第1の刃に対する相対的な回動を抑制される第1のチップ保持部材と、
前記第1のチップ保持部材とは異なる方向から前記分注ノズルチップの側面に当接し、前記第2の刃の刃面に沿うように設けられた第2のチップ保持部材と、
前記第1のチップ保持部材を前記分注ノズルチップ側に付勢し、前記第1の刃の前記分注ノズルチップ側への回動に伴って前記第1のチップ保持部材を回動させて、前記第2のチップ保持部材との間で前記分注ノズルチップを把持させる弾性体とを有することを特徴とする前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置に係る装置としては、検体分注装置などのように検体に前処理を施して分析可能な状態にする前処理装置が知られている。検体分注装置は、自動分析装置とともに、或いはその一部として病院や検査機関の検査室内に設置されるものであり、被検体から採取した血液や尿などの検体が収容された親検体容器から、様々な分析装置での分析に対応した空の子検体容器へ検体の分注を行う装置である。
【0003】
分注装置における分注では、例えば、消耗品の分注ノズルチップを装着した分注ヘッドにより、親検体容器内の検体を吸引し、子検体容器内へ吐出させる。また、分注を終えると、分注ヘッドに装着した分注ノズルチップをチップリムーバによって分注ヘッドから取り外され、分注装置内に設けられた廃棄ボックスへ廃棄される。このとき、チップリムーバをボックス上方に2箇所配置し、分散して分注ノズルチップを廃棄させており、これにより、廃棄ボックス内で分注ノズルチップの積載が1か所に集中しないようにしている。
【0004】
このような分注装置における分注ノズルチップの廃棄に係る技術としては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1には、ピペットチップを収納する方法において、(a)ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程と、(b)前記切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の前記切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる工程と、(c)前記切断されたピペットチップを所定の収納域に収納する工程と、を有するピペットチップの収納方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ノズル基部から抜脱したノズルチップを落下・廃棄するノズルチップ廃棄装置であって、前記ノズルチップを抜脱するためのチップリムーバの下方に、互いに平行配置されるとともに互いに逆回転する一対の回転ローラを有し、前記一対の回転ローラの間隙に前記ノズルチップを落下させ、前記一対の回転ローラの押圧力により前記ノズルチップを破砕するようにしたことを特徴とするノズルチップ廃棄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-039674号公報
【文献】特開2007-139470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、廃棄ボックス内の分注ノズルチップの収容本数には制限があり、例えば、予め設定した閾値を超えたときにアラームを発報することで、オペレータに対して廃棄ボックス内の分注ノズルチップの除去を促す。一方、廃棄ボックス内から分注ノズルチップを除去する際には、分注装置は処理を一時中断されることになるため、除去の頻度は少ないことが望ましい。
【0009】
分注装置における分注ノズルチップの廃棄においては、例えば、チップリムーバをボックス上方の2箇所に配置し、分散して分注ノズルチップを廃棄させることで、廃棄ボックス内で分注ノズルチップの積載が1か所に集中しないようにしている。しかしながら、廃棄された分注ノズルチップが廃棄ボックス内で積載されていくと、稀にではあるが分注ノズルチップがタケノコ状に積み重なる場合があり、この現象が発生すると、容易に廃棄ボックスの入口まで分注ノズルチップが積み重なってしまい、以降の分注ノズルチップを廃棄できなくなるという問題があった。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、廃棄された分注ノズルチップの積み重なりを抑制しつつ収容効率を向上することができる前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体容器に収容された液体の検体を吸引した後、他の検体容器へ吐出して分注する分注処理を行う前処理装置であって、分注ノズルと、前記分注ノズルの先端の嵌合部に着脱可能に設けられた分注ノズルチップと、前記分注ノズルから前記分注ノズルチップを取り外して廃棄する廃棄ボックスと、前記分注ノズルから前記分注ノズルチップを取り外す取り外し部に挿入された前記分注ノズルチップを長手方向側方から切断する切断機構とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃棄された分注ノズルチップの積み重なりを抑制しつつ収容効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】前処理装置の一例である検体検査自動化システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】分注モジュールの内部構成を模式的に示す上面図である。
図3】分注モジュールに設けられた分注チップ廃棄ダクトを関連構成とともに抜き出して模式的に示す縦断面図である。
図4】チップ切断機構を抜き出して模式的に示す平面図である。
図5】チップ切断機構のチップ保持部を抜き出して模式的に示す平面図である。
図6】分注ノズルチップが切断機構に挿入された状態を示す平面図である。
図7】分注ノズルチップが切断機構に挿入された状態を示す縦断面図である。
図8】分注ノズルチップが切断機構で切断された状態を示す平面図である。
図9】分注ノズルチップが切断機構で切断された状態を示す縦断面図である。
図10】従来技術における分注ノズルチップの重なり状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る前処理装置の一例である検体検査自動化システムの全体構成を概略的に示す図である。
【0016】
図1において、検体検査自動化システム1は、投入モジュール2、遠心分離モジュール3、開栓モジュール4、子試験管生成モジュール5、分注モジュール6、閉栓モジュール7および収納モジュール8から構成されている。
【0017】
各モジュール2~8は、血液や尿などの検体を搭載して搬送するための検体搬送ホルダを搬送可能なベルトコンベアなどの搬送装置を内部に有しており、また搬送装置によって隣接する他のモジュールとの間で検体搬送ホルダの授受が可能である。
【0018】
投入モジュール2は、例えば、患者より採取された血液や尿などの検体が収容された検体容器(以降、親検体と称する)の検体検査自動化システム1への投入を行うものである。親検体は、オペレータにより投入モジュール2内に投入される。ここでは、3本の親検体が投入される場合を例示する。
【0019】
投入モジュール2に投入された3本の親検体は、図示しないロボットアームなどの移動機構によって投入位置から搬送装置上に配置された検体搬送ホルダに順次搭載され、搬送装置によって他のモジュールに搬送される。投入モジュール2に投入された親検体は、それぞれの分析の依頼項目に応じて遠心分離モジュール3や開栓モジュール4へ検体搬送ホルダごと搬送される。
【0020】
遠心分離モジュール3では、搬送された親検体の遠心分離処理を行い、子試験管生成モジュール5や開栓モジュール4に検体搬送ホルダごと搬送される。また、開栓モジュール4では、親検体(検体容器)を開栓する開栓処理を行い、子試験管生成モジュール5に検体搬送ホルダごと搬送される。
【0021】
子試験管生成モジュール5に搬送された親検体は、搬送装置によってさらに分注モジュール6へ搬送される。また、親検体が子試験管生成モジュール5内を通過する際に、子試験管生成モジュール5では、その親検体の情報(例えば、情報が印字されたバーコード)が付加された検体容器(子検体容器)を生成し、搬送装置上に配置された検体搬送ホルダに搭載して、分注モジュール6へ検体搬送ホルダごと搬送する。
【0022】
分注モジュール6では、搬送装置により検体搬送ホルダごと搬送された親検体を、同様に搬送装置により検体搬送ホルダごと搬送された子検体容器に分注する分注処理を行う(後に詳述)。
【0023】
閉栓モジュール7は、開栓モジュール4で開栓された親検体(検体容器)および分注モジュール6で作成された子検体容器を閉栓する閉栓処理を行い、それぞれ搬送装置により検体搬送ホルダごと収納モジュール8に搬送する。
【0024】
収納モジュール8は、閉栓モジュール7から搬送された親検体および子検体容器を検体搬送ホルダごと保温収納する。収納モジュール8に収納された子検体容器は、オペレータによって、或いは、搬送装置によって分析装置などに投入される。
【0025】
図2は、分注モジュールの内部構成を模式的に示す上面図である。また、図3は、分注モジュールに設けられた分注チップ廃棄ダクトを関連構成とともに抜き出して模式的に示す縦断面図である。
【0026】
図2において、分注モジュール6は、親検体を搭載した検体搬送ホルダを搬送装置(例えば、ベルトコンベア)によって搬送する親検体搬送ライン11と、子検体容器を搭載した検体搬送ホルダを搬送装置(例えば、ベルトコンベア)によって搬送する子検体搬送ライン12と、分注処理後の親検体(検体容器)を搭載した検体搬送ホルダおよび子検体容器を搭載した検体搬送ホルダを搬出する搬出ライン13とを有している。
【0027】
親検体搬送ライン11上には、分注対象となる親検体(検体容器)が搭載された検体搬送ホルダが分注処理時に待機する親検体分注待機位置11aが設定されている。また、子検体搬送ライン12上には、親検体分注待機位置11aに待機する親検体に対応する子検体容器が分注処理時に待機する子検体分注待機位置12aが設定されている。
【0028】
また、分注モジュール6は、親検体搬送ライン11の親検体分注待機位置11aの上方と子検体搬送ライン12の子検体分注待機位置12aの上方との間を一体的に移動可能な複数(例えば、3つ)の分注ヘッド17a,17b,17c有している。図3にも示すように、分注ヘッド17a,17b,17cは上下方向に延在する円筒形状を有しており、その下方の先端(下端)は、分注ノズルチップ101aに挿入して装着可能なように、下方に行くにつれて細くなるテーパ形状を有している。
【0029】
分注モジュール6における親検体搬送ライン11及び子検体搬送ライン12の前方(図2中下方)には、複数の分注ノズルチップ101aを差し込むことで保持する差し込み用孔を多数有するチップマガジン18が配置されている。分注ノズルチップ101aは、一端(先端)が窄まった円筒形状を有している。チップマガジン18上の複数の差し込み用孔には、それぞれ、分注ノズルチップ101aが先端を下方に向けた姿勢で穿設されている。
【0030】
分注モジュール6における親検体搬送ライン11及び子検体搬送ライン12の前方(図2中下方)かつチップマガジン18の後方(図2中上方)には、分注ヘッド17a,17b,17cに装着された分注ノズルチップ101aを取り外すためのチップリムーバ14が配置されている。チップリムーバ14は、水平方向に沿うように配置された板形状を有しており、分注ヘッド17a,17b,17cを水平方向から挿入可能なように設けられた分注ヘッド17a,17b,17cと同間隔で同数以上(ここでは、3つ)のU字切り欠き部を備えている。チップリムーバ14のU字切り欠き部の幅は、分注ヘッド17a,17b,17cの分注ノズルチップ101aとの結合部よりも広く、かつ、分注ノズルチップ101aの上端(先端とは異なる端部)よりも狭くなるように形成されている。すなわち、分注ノズルチップ101aが装着された分注ヘッド17a,17b,17cをチップリムーバ14のU字切り欠き部に水平方向から挿入した状態で、分注ヘッド17a,17b,17cを上方(図2中紙面手前方向)に移動させることで、分注ヘッド17a,17b,17cから分注ノズルチップ101aを取り外すことができる。
【0031】
また、チップリムーバ14の下方(図2中紙面奥方向)には、チップリムーバ14によって分注ヘッド17a,17b,17cから抜き取られて廃棄される分注ノズルチップ101aが通過する廃棄ダクト15が配置されている。さらに、廃棄ダクト15の下方(図2中紙面奥方向)には、廃棄ダクト15を通過した使用済みの分注ノズルチップ101aを多数収容可能な廃棄ボックス20が配置されている。
【0032】
図3に示すように、廃棄ダクト15内には、分注ノズルチップ101aを長手方向側方から切断する切断機構25が設けられている。切断機構25は、分注ヘッド17a,17b,17cに固定された使用済みの分注ノズルチップ101aを廃棄する際に切断処理を行う。以下、切断機構25の詳細について説明する。
【0033】
図4は、チップ切断機構を抜き出して模式的に示す平面図である。また、図5は、チップ切断機構のチップ保持部を抜き出して模式的に示す平面図である。
【0034】
図3及び図4に示すように、切断機構25は、分注ヘッド17a,17b,17cと同数以上(ここでは、分注ヘッド17a,17b,17cと同数の3つ)の切断部を備えている。以降、分注ヘッド17aに係る切断部を代表して説明し、同様の構成を有する他の切断部については説明を省略する。
【0035】
分注ヘッド17aに係る切断部は、分注ノズルチップ101aの側面に異なる方向から当接するよう連続的に形成された第1刃面311および第2刃面312を有し、第1刃面311と第2刃面312とを含む平面に沿う方向に回動可能に設けられた第1の刃31と、第1の刃31の第1刃面311および第2刃面312とは異なる方向から分注ノズルチップ101aの側面に当接するように形成された刃面321を有し、第1の刃31に対して相対的に固定された第2の刃32とを備えている。
【0036】
より具体的には、第1の刃31は、切断機構25の土台41に固定されたピン35に水平方向に回転可能に支持されている。また、第2の刃32は、切断機構25の土台41に固定されている。そして、第1の刃31と第2の刃32との間に分注ノズルチップ101aを配置した状態で第1の刃31を第2の刃32の方向に回動させることで、第1の刃31の第1刃面311および第2刃面312と第2の刃32の刃面321とで画定される範囲に分注ノズルチップ101aを保持しながら切断する。分注ヘッド17b,17cに係る他の切断部についても同様の構成を有している。
【0037】
複数の切断部のそれぞれの第1の刃31には長円穴部313が設けられており、可動ベース44(連結部材)に設けられたピン45がそれぞれ挿入されており、可動ベース44によって各切断部の第1の刃31が連結されている。可動ベース44は、アクチュエータであるモータ42の動力を伝達するタイミングベルト43に固定されており、モータ42の回転によって可動ベース44が移動し、ピン45を介して各切断部の第1の刃31が回動されることにより、複数の切断機部にそれぞれ配置された複数の分注ノズルチップ101a,101b,101cを一時に切断する。
図5に示すように、各切断部の第1の刃31及び第2の刃32の下側(図4中紙面奥側)には、チップ保持部が設けられている。以降、分注ヘッド17aに係るチップ保持部を代表して説明し、同様の構成を有する他のチップ保持部については説明を省略する。
【0038】
分注ヘッド17aに係るチップ保持部は、第1の刃31と同軸状に回動可能に設けられ、分注ノズルチップ101aの側面に第1の刃31の第1刃面311に沿って当接するとともに、第1の刃31の第1刃面311に沿う位置から分注ノズルチップ101a側への第1の刃31に対する相対的な回動を抑制される第1のチップ保持部材33と、第1のチップ保持部材33と対向する方向(第2の刃32の刃面321と同様の方向)から分注ノズルチップ101aの側面に当接し、第2の刃32の刃面321に沿うように設けられた第2のチップ保持部材34と、第1のチップ保持部材33を分注ノズルチップ101a側に付勢し、第1の刃31の分注ノズルチップ101a側への回動に伴って第1のチップ保持部材33を回動させて、第2のチップ保持部材34との間で分注ノズルチップ101aを把持させる弾性部材38(例えば、バネなどの弾性体)とを備えている。
【0039】
より具体的には、第1の刃31の下側には、ピン35により回動可能に支持された第1のチップ保持部材33が配置されている。また、第1のチップ保持部材33は、第1の刃31の第1刃面311に沿って分注ノズルチップ101aの側面に当接する緩衝性のあるゴム面331と、第1の刃31の方向へ立ち上がるように形成され、第1の刃31と当接することで第1のチップ保持部材33の第1刃面311よりも分注ノズルチップ101a側への回動を抑制する突起部332とを有している。また、第2の刃32の下側には、第2の刃32と同様に土台41に固定された第2のチップ保持部材34が配置されている。第2のチップ保持部材34は、第2の刃32の刃面321に沿って分注ノズルチップ101aの側面に当接する緩衝性のあるゴム面341を有している。分注ヘッド17b,17cに係る他のチップ保持部についても同様の構成を有している。
【0040】
ここで、第1の刃31及び第2の刃32の位置関係について説明する。
【0041】
第1の刃31及び第2の刃32による分注ノズルチップ101aの切断中に、分注ノズルチップ101aが第1の刃31及び第2の刃32の間の位置から逃げないほうが望ましい。例えば、回動軸(ピン35)が第2の刃32の刃面321の延長線よりも外側の位置にあると、切断中に分注ノズルチップ101aが第1の刃31及び第2の刃32の間の位置から逃げる方向(図4中左方向)に移動してしまう。そこで、回動軸(ピン35)の位置は、第1の刃31の第1刃面311と第2の刃32の刃面321の間に位置することが望ましい。
また、回動軸(ピン35)が第1の刃31及び第2の刃に近いほど、モータ42の動作量を大きくする必要がある(可動ベース44の移動量が増える)が、モータ42のトルクは比較的小さくて済む。したがって、切断対象の分注ノズルチップ101aが硬い場合には、回動軸(ピン35)を第1の刃31及び第2の刃32に近づけることが望ましい。
【0042】
また、第1の刃31の第1刃面311と第2の刃32の刃面322の隙間が狭いと分注ノズルチップ101aを配置できず、広すぎるとモータ42の動作量が増える。そこで、第1の刃31の第1刃面311と第2の刃32の刃面322の隙間は、切断対象の分注ノズルチップ101aの外径より少し広い(例えば、チップ径+1~3mm程度)とすることが望ましい。
【0043】
以上のように構成した切断機構25のチップ廃棄動作について説明する。以降、分注ヘッド17aに係る動作を代表して説明し、同様の構成を有する他の分注ヘッドの動作については説明を省略する。
【0044】
図6は、分注ノズルチップが切断機構に挿入された状態を示す平面図であり、図7は、その縦断面図である。また、図8は、分注ノズルチップが切断機構で切断された状態を示す平面図であり、図9は、その縦断面図である。
【0045】
まず、廃棄対象の分注ノズルチップ101a,101b,101cが装着された分注ヘッド17a,17b,17cをチップリムーバ14のU字切り欠き部に水平方向から挿入した位置(以降、図3に示すこの位置をチップ廃棄位置と称する)に移動する。このとき、分注ヘッド17a,17b,17cに装着された状態の分注ノズルチップ101a,101b,101cの長手方向の中央付近が、廃棄ダクト15における切断機構25の切断部の第1の刃31と第2の刃32の間に配置される。
【0046】
続いて、チップ廃棄位置に分注ヘッド17a,17b,17c(言い換えると分注ノズルチップ101a,101b,101c)を配置した状態で、切断機構25の動作を開始してモータ42が回転駆動し、タイミングベルト43を介して可動ベース44を移動させる。これにより、図6及び図7に示すように、可動ベース44のピン45が第1の刃31をピン35を中心に時計回り(すなわち、第1の刃31の第1刃面311及び第2刃面312が第2の刃32の刃面321に近づく方向)に回動する。また、第1の刃31の回動に伴って、第1のチップ保持部材33が弾性部材38の付勢力により第1の刃31と同じ方向へ回動する。これにより、第1の刃31の第1刃面311及び第2刃面312と第2の刃32の刃面321により分注ノズルチップ101aを挟んだ状態となる。また、第1のチップ保持部材33及び第2のチップ保持部材34により分注ノズルチップ101aの切断部分(第1の刃31及び第2の刃32の位置)の下側が把持される。
【0047】
さらにモータ42が回転駆動して可動ベース44が移動すると、図8及び図9に示すように、第1の刃31の第1刃面311及び第2刃面312と第2の刃32の刃面321によって、分注ノズルチップ101aが側方から切断される。
【0048】
このとき、分注ノズルチップ101aの切断面よりも上部は、分注ヘッド17aの先端に装着された状態で保持され、切断面よりも下部は、第1のチップ保持部材33及び第2のチップ保持部材34(チップ把持部)に把持された状態となる。
【0049】
分注ノズルチップが切断された後、切断機構25のモータ42が逆方向(時計回り)方向へ回転し、第1の刃31及び第1のチップ保持部材33が開いた状態となり、第1のチップ保持部材33及び第2のチップ保持部材34に把持されていた、切断後の分注ノズルチップ101aの下部がリリースされ、廃棄ボックス20へと廃棄される。
【0050】
その後、分注ヘッド17aが上昇し、分注ヘッド17aに装着されていた切断後の分注ノズルチップ101aの上部が、チップリムーバ14のU字切り欠き部に引っ掛かり、分注ヘッド17aから脱落し、廃棄ボックス20へと廃棄される。
【0051】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0052】
図10は、従来技術における分注ノズルチップの重なり状態を示す図である。
【0053】
廃棄ボックス内の分注ノズルチップの収容本数には制限があり、例えば、予め設定した閾値を超えたときにアラームを発報することで、オペレータに対して廃棄ボックス内の分注ノズルチップの除去を促す。一方、廃棄ボックス内から分注ノズルチップを除去する際には、分注装置は処理を一時中断されることになるため、除去の頻度は少ないことが望ましい。
【0054】
分注装置における分注ノズルチップの廃棄においては、例えば、チップリムーバをボックス上方の2箇所に配置し、分散して分注ノズルチップを廃棄させることで、廃棄ボックス内で分注ノズルチップの積載が1か所に集中しないようにしている。しかしながら、廃棄された分注ノズルチップが廃棄ボックス内で積載されていくと、稀にではあるが図10に示すように分注ノズルチップがタケノコ状に積み重なる場合があり、この現象が発生すると、容易に廃棄ボックスの入口まで分注ノズルチップが積み重なってしまい、以降の分注ノズルチップを廃棄できなくなるという問題があった。
【0055】
これに対して、本実施の形態においては、分注ヘッド17a,17b,17c(分注ノズル)から分注ノズルチップ101a,101b,101cを取り外す取り外し部(チップ廃棄位置)に挿入された分注ノズルチップ101a,101b,101cを長手方向側方から切断するように構成したので、廃棄された分注ノズルチップ101a,101b,101cの積み重なりを抑制しつつ収容効率を向上することができる。
【0056】
以上のように構成した本実施の形態における分注モジュールの全体動作を説明する。
【0057】
分注モジュール6へ搬送された親検体および子検体容器は、親検体搬送ライン11上の親検体分注待機位置11a及び子検体搬送ライン12上の子検体分注待機位置12aまでそれぞれ搬送されて到達すると、図示されていない把持部材で固定される。
【0058】
続いて、分注ヘッド17a,17b,17cがチップマガジン18の上方へ移動して下降し、分注ヘッド17a,17b,17cの先端がチップマガジン18の分注ノズルチップ101a,101b,101cに挿入されることで装着される。
【0059】
その後、分注ヘッド17a,17b,17cは上昇し、親検体分注待機位置11aの上方へ移動して下降する。下降中、分注ノズルチップ101a,101b,101cが親検体の液面に接触すると、親検体容器内の検体を圧力変化を利用して分注ノズルチップ101a,101b,101c内に吸引する。
【0060】
続いて、分注ヘッド17a,17b,17cは分注ノズルチップ101a,101b,101c内に親検体を充填させた状態で上昇し、子検体分注待機位置12aの上方へ移動して下降する。分注ノズルチップ101a,101b,101cの先端が子検体容器の管底へ到達すると下降を停止し、上昇しながら分注ノズルチップ101a,101b,101c内に充填した検体を圧力変化を利用して子検体容器内へ吐出する(分注処理)。分注を終えた親検体および子検体容器は親検体搬送ライン11及び子検体搬送ライン12により搬送され、搬出ライン13を経由して分注モジュール6から搬出される。
【0061】
分注処理の完了後、分注ヘッド17a,17b,17cは、廃棄ダクト15の上方へ移動して下降する。分注ヘッド17a,17b,17cに装着されている分注ノズルチップ101a,101b,101cの上端がチップリムーバ14の下面の位置まで下降すると、分注ヘッド17a,17b,17cを水平方向に移動してチップリムーバ14のU字切り欠きに挿入し、チップ廃棄位置(図3参照)において切断機構25による分注ノズルチップ101a,101b,101cのチップ廃棄動作を行う。
【0062】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…検体検査自動化システム、2…投入モジュール、3…遠心分離モジュール、4…開栓モジュール、5…子試験管生成モジュール、6…分注モジュール、7…閉栓モジュール、8…収納モジュール、11…親検体搬送ライン、11a…親検体分注待機位置、12…子検体搬送ライン、12a…子検体分注待機位置、13…搬出ライン、14…チップリムーバ、15…廃棄ダクト、17a…分注ヘッド、17b…分注ヘッド、17c…分注ヘッド、18…チップマガジン、20…廃棄ボックス、25…切断機構、31…第1の刃、32…第2の刃、33…第1のチップ保持部材、34…第2のチップ保持部材、35…ピン、38…弾性部材、41…土台、42…モータ、43…タイミングベルト、44…可動ベース、45…ピン、101a…分注ノズルチップ、101b…分注ノズルチップ、101c…分注ノズルチップ、311…第1刃面、312…第2刃面、313…長円穴部、321…刃面、322…刃面、331…ゴム面、332…突起部、341…ゴム面
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10