IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-体液吸収用当て材 図1
  • 特許-体液吸収用当て材 図2
  • 特許-体液吸収用当て材 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】体液吸収用当て材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20250407BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/47 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018122798
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020000488
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 梓
(72)【発明者】
【氏名】氏家 彩奈
(72)【発明者】
【氏名】若林 文
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】武市 匡紘
【審判官】田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176474号公報(JP,A)
【文献】特表2008-531111号公報(JP,A)
【文献】特開2011-115611号公報(JP,A)
【文献】特開2012-157438号公報(JP,A)
【文献】特開2018-57421(JP,A)
【文献】特開2016-220752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸収する吸収体と、
前記吸収体の皮膚側面に設けられ皮膚に接触して体液を通過させるトップシートと、
前記吸収体の前記トップシートとは反対側の面に設けられる液不透過性のバックシートと、
前記バックシートの前記吸収体とは反対側の面に設けられ下着に貼付け可能な粘着層と、
を少なくとも備え、
前記トップシートは、皮膚と接触する側の面の少なくとも体液透過領域における乾燥時の平均表面摩擦係数が0.2以上0.8以下であり、かつ湿潤時の平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下である、体液吸収用当て材。
【請求項2】
前記トップシートは、天然繊維を素材として含む、請求項1に記載の体液吸収用当て材。
【請求項3】
前記トップシートは、天然繊維のみで構成される、請求項1に記載の体液吸収用当て材。
【請求項4】
前記天然繊維は、綿である、請求項2又は3に記載の体液吸収用当て材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着などに装着して、おりもの、経血、汗、尿などの体液を吸収するために使用される体液吸収用当て材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、おりもの、経血、汗、尿などの体液を吸収するため、体液吸収用当て材が使用されている。体液吸収用当て材は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に吸収体を挟んだ構造であり、トップシートを皮膚に接触させ、トップシートを透過した体液を吸収体で吸収するものである。
【0003】
体液吸収用当て材の使用時の快適性を高めるためには、体液が皮膚に触れないように、体液吸収用当て材の体液の吸収速度を高めてトップシートに体液が残らないようにすることが重要である。その手段として、例えば特許文献1や特許文献2には、トップシートと吸収体との間に親水性シートを介在させるとともにトップシートと親水性シートとを複数のエンボスによって接合する技術や、トップシートを凹凸構造にして吸収体との間に空間を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-49697号公報
【文献】特開2014-110809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の体液吸収用当て材のように、トップシートに凹凸が存在すると、トップシートは滑らかさがなく硬い風合いに感じられる。トップシートは、体液吸収用当て材の使用時に使用者の肌に直に接触するため、着け心地に大きく影響し、トップシートに滑らかさがないと、体液吸収用当て材の着け心地が悪く、使用者が不快に感じるため、使用感を損なうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、体液の吸収速度を向上でき、良好な使用感を得られる体液吸収用当て材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一定の滑らかさを有するトップシートを備えた体液吸収用当て材においては、使用時に滑らかで優しい風合いを感じて良好な使用感を得られるとともに、体液の吸収速度を向上できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。即ち、本発明は下記態様の体液吸収用当て材を提供する。
【0008】
本発明の体液吸収用当て材は、体液を吸収する吸収体と、前記吸収体の皮膚側に面に設けられるトップシートと、前記吸収体の前記トップシートとは反対側の面に設けられるバックシートと、を少なくとも備え、前記トップシートは、皮膚と接触する側の面の少なくとも体液透過領域における乾燥時の平均表面摩擦係数が0.2以上0.8以下であり、かつ湿潤時の平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の体液吸収用当て材においては、前記トップシートは、天然繊維を素材として含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明の体液吸収用当て材においては、前記トップシートは、天然繊維のみで構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の体液吸収用当て材においては、前記天然繊維は、綿であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の体液吸収用当て材によれば、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいてもトップシートが滑らかさを有しており、良好な着け心地(風合い)を奏するとともに、排出された体液の吸収速度が高められており、排出された体液がトップシートに残りにくく、体液が皮膚に触れることが抑制されるので、使用時の快適性を高めることができる。よって、良好な使用感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の体液吸収用当て材の平面図である。
図2】本実施形態の体液吸収用当て材の底面図である。
図3図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の体液吸収用当て材の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の体液吸収用当て材は、トップシートと、バックシートと、トップシート及びバックシートの間に挟まれた吸収体とを少なくとも備えた複数層構造を有しており、使用者の下着などの衣類や直接皮膚に装着されて、おりもの、経血、汗、尿などの体液を吸収するために使用されるものである。体液吸収用当て材としては、例えばおりものシート(パンティライナー)、生理用ナプキン、失禁用パッド、汗取りシートなどを例示することができる。
【0015】
図1図3は、本発明の体液吸収用当て材の一実施形態を示す。本実施形態の体液吸収用当て材1は、使用者の皮膚に接する側(表側)から、トップシート2、吸収体3及びバックシート4がこの順で積層された3層構造であり、バックシート4側の裏面には、体液吸収用当て材1を下着などの衣類に貼り付けるための粘着層5が形成されている。
【0016】
体液吸収用当て材1の厚み及び大きさは、特に限定されるものではなく、装着部位に応じて厚み及び大きさを適宜設定することができる。また、体液吸収用当て材1の形状も、特に限定されるものではなく、本実施形態では平面視で略瓢箪形状を呈しているが、装着部位(使用目的)に合わせて長方形状、正方形状、円形状、楕円形状、小判形状、多角形状など、他の種々の形状とすることができる。
【0017】
トップシート2は、使用者の皮膚に接触して体液を通過させることで、下層の吸収体3に体液を浸透させる液透過性を有している。トップシート2は、液透過性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば織物、編物、不織布、フェルトなどを用いることができる。その中でも、良好な肌触りや皮膚への刺激性、吸収性の点から不織布が好ましい。
【0018】
また、トップシート2を構成する素材も、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維などの合成繊維;綿、シルク、パルプ、羊毛、麻などの天然繊維;レーヨン繊維、アセテート繊維などの半合成繊維;及び各種繊維を混ぜた繊維(混紡品、混繊品)を挙げることができるが、肌触りを良好とするためには、天然繊維が好ましく、特に綿が好ましい。トップシート2は、単層に限らず、複数層以上の積層体で構成されていてもよい。
【0019】
吸収体3は、体液の吸水性を有していれば特に限定されるものではなく、一般に生理用ナプキンやパンティライナー、おしめ、汗取りシートなどに用いられている、例えば吸水性パルプ、吸水性ポリマーなどの公知の吸収材や、織物、編物、不織布又はパルプ製品などから構成される繊維構造物を用いることができる。その中でも、肌触りがよく、吸収性に優れる点から、天然繊維及び合成繊維からなる集積体(例えば不織布)を用いることが好ましい。天然繊維としては、例えば綿、シルク、パルプ、羊毛、麻などを挙げることができる。このような天然繊維の中でも、アレルギーなどの接触性皮膚炎が起こりにくく、かぶれにくく、かつ吸収性に優れる点から、(タンパク質系成分でない)綿やパルプなどのセルロース系繊維が好ましい。また、合成繊維としては、例えばナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ウレタン繊維、アクリル繊維などを挙げることができる。また、レーヨン繊維、アセテート繊維、キュプラなどの半合成繊維、及び各種繊維の混紡品、混繊品を用いることもできる。その中でも、ドライ感及び風合いの点から、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などの合成繊維又はそれらの複合繊維が好ましい。複合繊維としては、ポリエチレン/ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを含む)複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、エチレン酢酸ビニル/ポリプロピレン複合繊維などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の組み合わせの例としては、セルロース系繊維と複合繊維の組み合わせなどが挙げられ、その配合割合は、例えば4:6~8:2とすることができる。
【0020】
バックシート4は、吸収体3に吸収された体液の外部への流出を防止する液不透過性を有している。バックシート4は、液不透過性を有していれば特に限定されるものではなく、例えばフィルム、SMSなどの液不透過性の不織布、スパンボンド不織布やポイントボンド不織布などに樹脂フィルムがラミネートされたものなどを用いることもできる。液不透過性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン、塩化ビニルなどからなるフィルムもしくはこれらの多層フィルムを挙げることができる。
【0021】
上述した不織布は、湿式抄紙法、乾式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法、ラテックス樹脂ボンド法、溶剤ボンド法、スティッチボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法などの方法により製造することができる。なかでもスパンレース法、サーマルボンド法、エアースルー法、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法などの方法が好ましく、これらの方法では風合いがよくかつ、接着剤、溶剤を用いないため、肌への安全性を高くすることができる。
【0022】
トップシート2、吸収体3及びバックシート4を貼り合わせる方法は特に限定されるものではなく、水溶性の接着剤(例えばアクリル系水溶性接着剤)や非水溶性接着剤(例えばゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト)などの接着剤により接着することができる。また、トップシート2、吸収体3及びバックシート4の外周縁又は外周縁近傍を全周にわたって圧着(例えば熱圧着、超音波圧着)することで、各シート同士を圧着部6により互いに固定してもよい。なお、圧着部6は必ずしも形成する必要はない。
【0023】
粘着層5は、粘着剤をバックシート4に塗布することなどにより設けられる。粘着層5に用いられる粘着剤は、体液吸収用当て材1を下着などに貼り付けることができるものであれば特に限定されず、例えば、水溶性の接着剤(例えばアクリル系水溶性接着剤)や非水溶性接着剤(例えばゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト)などの接着剤を挙げることができる。その中でも、その他の粘着剤に比べて下着に対する接着力に優れる点から非水溶性接着剤が好ましく、ゴム系ホットメルトがより好ましい。粘着層5は、バックシート4に対してほぼ全域を覆うように設けられていてもよいし、バックシート4に対して部分的(図2では一定間隔をあけたストライプ状)に設けられていてもよい。
【0024】
なお、体液吸収用当て材1は、必ずしも上述した3層構造に限られず、例えばトップシート2と吸収体3との間に、透液効果、拡散効果又は表面側への体液の逆戻りを止める効果を有するシートを設けるなど、4層以上の層構造としてもよい。
【0025】
上述した構成の体液吸収用当て材1は、トップシート2の皮膚と接触する側の面(表面、以下「肌当接面」という。)の体液透過領域における乾燥時の平均表面摩擦係数(dry MIU)が0.2以上0.8以下であり、かつ湿潤時の平均表面摩擦係数(wet MIU)が0.4以上0.7以下である。
【0026】
ここで、体液透過領域とは、身体への装着時に体液の排出部と対向する領域をいい、本実施形態においては、図1で一点鎖線で示すように、トップシート2の略中央部としているが、体液透過領域の位置や大きさは、体液吸収用当て材1の装着部位(使用目的)や装着部位への装着の仕方(使用状況)などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。なお、トップシート2の肌当接面の体液透過領域を含む全域(圧着部6を除く)において、乾燥時の平均表面摩擦係数が0.2以上0.8以下であり、かつ湿潤時の平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下であってもよい。
【0027】
平均表面摩擦係数は、トップシート2の肌当接面の風合いを示す指標であり、値が小さい程、皮膚に対する肌当接面の抵抗感、ぬめり感が小さくて肌当接面が滑らかであることを示し、皮膚との間に擦れが生じたときにざらつかずにサラサラとしていて皮膚に与える影響が小さくなる。
【0028】
なお、乾燥時の平均表面摩擦係数は、体液吸収用当て材1が体液を吸収する前の乾燥した状態であるときのトップシート2の平均表面摩擦係数を指す。また、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数に加え、体液吸収用当て材1が湿潤した時のトップシート2の平均表面摩擦係数が小さいことで、体液吸収用当て材1を装着した後において、体液を吸収する前の状態、さらには、体液を吸収した後の状態でもトップシート2の肌触りが滑らかとなり、良好な着け心地(風合い)を奏する。
【0029】
また、本出願の発明者が、体液の吸収速度を高めるためには体液吸収用当て材がどのような性質を備えている必要があるかについて、鋭意研究を重ねた結果、体液吸収用当て材の乾燥時のトップシートの平均表面摩擦係数と湿潤時のトップシートの平均表面摩擦係数とが大きく関連していることを見出した。そこで、本実施形態の体液吸収用当て材1では、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数及び湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数を、それぞれ、優れた体液の吸収速度が得られる、0.2以上0.8以下及び0.4以上0.7以下にすることを特徴とした。これにより、本実施形態の体液吸収用当て材1は、乾燥時及び湿潤時においてトップシート2が良好な滑らかさを有すると同時に、体液の吸収速度が高いため、体液吸収用当て材1に排出された体液がトップシート2に残りにくく、体液が皮膚に触れることが抑制される。よって、使用時に使用者に不快さを感じさせることがなく、体液吸収用当て材1の快適性をさらに高めることができるので、良好な使用感を得ることができる。
【0030】
なお、上述した平均表面摩擦係数は、体液吸収用当て材1の体液の吸収速度をより高くするためには、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.3以上0.8以下、かつ湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下であることが好ましく、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.3以上0.6以下、かつ湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.6以上0.7以下であることがさらに好ましい。
【0031】
平均表面摩擦係数は、以下の方法によって測定することができる。具体的には、摩擦距離30mmに合わせて体液吸収用当て材1の試験片を用意し、カトーテック株式会社製の表面摩擦係数測定器(KES-FB4-AUTO-A)を用いて当該試験片の平均表面摩擦係数を測定する。試験片の大きさは縦150mm及び横50mmとし、測定条件は、標準摩擦子(指紋タイプ)、摩擦時の荷重25gf/cm、測定感度L(高感度100g/V)とする。摩擦距離、摩擦速度などその他の条件は装置仕様通りとする(摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/sec)。平均表面摩擦係数は、20mmの解析距離にわたって測定した試験片表面(トップシート2側の面)の摩擦係数の平均値である。なお、湿潤時の平均表面摩擦係数は、乾燥した状態の試験片に1gの生理食塩水(25℃)を表面(トップシート2側の面)にできるだけ均一に付与し、10秒間静置した後に測定する。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態の体液吸収用当て材1は、トップシート2側の表面(圧着部6を除く)にエンボス加工などによる凹凸部が形成されていないが、エンボス加工などによる凹凸部は形成されていないことが好ましいものの、体液透過領域(圧着部6を除く)については、乾燥時及び湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数が上述した所定の数値範囲にあれば、エンボス加工などによる凹凸部が形成されていてもよい。なお、体液透過領域以外の領域については、乾燥時及び湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数に関係なく、エンボス加工などによる凹凸部が形成されていてもよい。
【実施例
【0033】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の内容は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
本発明の体液吸収用当て材の効果を確認するため、体液の吸収速度について試験を行った。実施例1~6及び比較例1~5で用いた体液吸収用当て材は、上記実施形態に示す構成と同様に、トップシート、吸収体及びバックシートが接着剤を用いて積層されたものであり、トップシート、吸収体及びバックシートに関する素材は、下記のとおりである。
・表面シート:
コットン(実施例1~4)
ポリエチレン、ポリエステル(実施例5)
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(実施例6)
コットン(比較例1~2、4~5)
コットン、レーヨン、ポリエステル(比較例3)
・吸収体:サーマルボンド不織布(全ての例で同じ)
・バックシート:ポリエチレンフィルム(全ての例で同じ)
【0035】
各例の体液吸収用当て材の乾燥時の平均表面摩擦係数(dry MIU)は、KES-FB4-AUTO-A表面摩擦係数測定器(カトーテック株式会社製)を用いて、体液吸収用当て材を、トップシート側を上にして測定器の台上に両面テープを用いて固定した後、上述した測定方法によって算出した。また、各例の体液吸収用当て材の湿潤時の平均表面摩擦係数(wet MIU)は、体液吸収用当て材を同様に測定器の台上に固定した後、トップシート側の面に1gの生理食塩水をピペットを用いてまんべんなく塗布して10秒間静置し、その後、上述した測定方法によって算出した。
【0036】
各例の体液吸収用当て材の体液の吸収速度は、体液透過領域にピペットマンを用いて1mLの生理食塩水を滴下し、生理食塩水が吸収されるまでの時間を測定した。吸収速度の評価は、短時間であるほど高評価となり、1.25秒未満を「◎」、1.25秒以上1.80秒未満を「○」、1.80秒以上を「×」とした。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果から、乾燥時のトップシートの平均表面摩擦係数が0.2以上0.8以下、かつ湿潤時のトップシートの平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下である実施例1~5の体液吸収用当て材では、比較例1~5の体液吸収用当て材と比較して体液の吸収速度が優れており、トップシートに体液が残ることを効果的に防止できることが確認された。よって、体液吸収用当て材の使用時に体液が皮膚に触れるなどの不快さを感じにくくなり、体液吸収用当て材の快適性が向上し、使用感を良好にできることが分かる。
【0039】
また、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.3以上0.8以下、かつ湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.4以上0.7以下である実施例2,3,5,6の体液吸収用当て材では、体液の吸収速度がより優れており、トップシートに体液が残ることをより効果的に防止できることが確認された。また、乾燥時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.3以上0.6以下、かつ湿潤時のトップシート2の平均表面摩擦係数が0.6以上0.7以下である実施例2,3の体液吸収用当て材では、体液の吸収速度がかなり優れており、トップシートに体液が残ることをさらに効果的に防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0040】
1 体液吸収用当て材
2 トップシート
3 吸収体
4 バックシート
5 粘着層
図1
図2
図3