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特許7661014切断用ブレード及び切断用ブレード製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】切断用ブレード及び切断用ブレード製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/14 20060101AFI20250407BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20250407BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20250407BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20250407BHJP
   B24D 3/14 20060101ALI20250407BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20250407BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B24D5/14
B24D3/00 340
B24D3/00 320B
B24D3/06 B
B24D3/28
B24D3/14
B24D3/00 310D
B24D5/12 Z
H01L21/78 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020100943
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194720
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】星 純二
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-088572(JP,A)
【文献】特開昭58-090467(JP,A)
【文献】実開平02-122767(JP,U)
【文献】特開昭63-174877(JP,A)
【文献】特開2002-066933(JP,A)
【文献】特開平03-079276(JP,A)
【文献】特開2002-018723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0274502(US,A1)
【文献】実開平02-130759(JP,U)
【文献】特開2006-082187(JP,A)
【文献】特開平07-246564(JP,A)
【文献】特開平05-208373(JP,A)
【文献】実開昭63-151269(JP,U)
【文献】特開平08-290362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D3/00-99/00
H01L21/301;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに回転して被加工材を切断する切断用ブレードであって、
軸線を中心とする円板状に形成され第1ボンド相に第1砥粒が分散されたブレード本体と、
前記ブレード本体の外周縁部の少なくとも一方の側面に配置され、第2ボンド相に第2砥粒が分散されるとともに前記ブレード本体から前記軸線方向における外方に突出する逃げ付き部と、
前記ブレード本体及び前記逃げ付き部の外周面に形成された切れ刃と、を備え、
前記逃げ付き部の外側側面に前記軸線方向にくぼむ凹部が形成されており、
前記凹部は、径方向に延在し、前記ブレード本体が露出するように形成された複数のスリット部を備えており、
前記第2砥粒の平均粒径は、前記第1砥粒の平均粒径よりも大きく設定されていることを特徴とする切断用ブレード。
【請求項2】
請求項1に記載の切断用ブレードであって、
前記逃げ付き部は、前記ブレード本体の両側の側面に形成されていることを特徴とする切断用ブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切断用ブレードであって、
前記第2砥粒は、ダイヤモンド超砥粒とされている
ことを特徴とする切断用ブレード。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記第2砥粒の含有率は、前記第1砥粒の含有率よりも高く設定されている
ことを特徴とする切断用ブレード。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記凹部は、
隣接する前記スリット部の間に配置された複数のディンプル、
を備えていることを特徴とする切断用ブレード。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、
ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、
前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、
前記逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、
前記第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液に前記第2砥粒が分散されて形成された分散めっき液に、前記ブレード本体の外周縁部を浸漬して前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成する
ことを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、
ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、
前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、
前記逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、
前記逃げ付き部形成工程において、
前記第2砥粒を貯留した容器を前記第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液内に浸漬し、前記ブレード本体の外周縁部を前記第2砥粒と接触させながら前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成する
ことを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の切断用ブレード製造方法であって、
前記逃げ付き部形成工程において、
前記ブレード本体を間欠的に回動させて前記逃げ付き部を形成する
ことを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載の切断用ブレード製造方法であって、
前記ブレード本体がレジンボンドブレード又はビトリファイドボンドブレードである場合に、
前記ブレード本体形成工程で形成したブレード本体の前記外周縁部に導電性プライマーを被覆する前処理工程を、備えることを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、
ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、
前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、
前記逃げ付き部がレジン逃げ付き部である場合に、
前記逃げ付き部形成工程において、
前記第2ボンド相を構成する樹脂材料に第2砥粒を分散させた分散樹脂材料を作成し、前記分散樹脂材料に前記ブレード本体の外周縁部を接触させながら前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成する
ことを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【請求項11】
請求項10のいずれか一項に記載の切断用ブレード製造方法であって、
前記逃げ付き部形成工程において、
前記外周縁部にマスキングを施すことにより前記逃げ付き部に前記軸線方向にくぼむ凹部を形成する
ことを特徴とする切断用ブレード製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体材料等の基板を切断してチップ状に個片化するのに用いられる切断用ブレード及びかかる切断用ブレードを効率的に製造する切断用ブレード製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、半導体材料等の基板を切断してチップ状に個片化する際に、例えば、Cu-Snを主成分とするメタルボンド相に砥粒を分散、配置した切断用ブレード(メタルブレード)が広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、半導体材料等の基板を個片化する切断用ブレードとしては、メタルボンド相を備えたメタルブレードの他、レジンボンド相を有するレジンブレードやビトリファイドボンド相を有するビトリファイドブレードが使用されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0004】
また、切れ味を向上させるために、内周部に柔らかい材料を、外周部に固い材料を配置して、成形、焼結した切断用ブレードをラップ加工して、内周部を余分に除去して厚さを薄くすることにより、逃げを形成した切断ブレードが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-187736号公報
【文献】特開2013-154424号公報
【文献】特開昭61-178181号公報
【文献】特開2001-079768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の切断用ブレードより被加工材を切断したときの切断溝は、上下方向の位置(被加工材表面からの深さ)によって、溝の幅寸法が変化しやすい。また、被加工材として、例えば、セラミックスとリード等の金属を同時に切断するQFN(Quad Flat Non lead package)のようなパッケージを切断する場合には、切断溝の上下方向位置における幅寸法の差は特に大きくなる。
【0007】
また、特許文献4に記載された切断用ブレードは、製造工程でラップをする必要があり、製造コストが増加する虞れがあるうえ、内周部に摩耗性が大きい柔らかい材料を使用することから切断用ブレードとしての剛性、強度が低下して、高速切断するのに適しているとはいえない。
さらに、切断に寄与する外周縁部(先端部)は、単一の構造であり、被加工材を切断して形成したチップの上面側(表面側)と下面側の形状や大きさを長期にわたって一定に維持するという安定した摩耗形態を確保することはできない。
【0008】
一方、今後、被加工材をさらに高精度に切断するためには、切断用ブレードの厚さを小さくするだけではなく、切断溝の上下方向位置における寸法差が小さくなるように切断することが不可欠である。
そこで、被加工材を切断した場合に、切断溝の上下方向位置における幅寸法の差を小さくすることが可能な切断技術が要望されている。
【0009】
この発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、被加工材を切断した際の切断溝の上下方向における幅寸法差を小さくすることが可能な切断用ブレード及びかかる切断用ブレードを効率的に製造することが可能な切断用ブレード製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)この発明の第1態様は、軸線周りに回転して被加工材を切断する切断用ブレードであって、軸線を中心とする円板状に形成され第1ボンド相に第1砥粒が分散されたブレード本体と、前記ブレード本体の外周縁部の少なくとも一方の側面に配置され、第2ボンド相に第2砥粒が分散されるとともに前記ブレード本体から前記軸線方向における外方に突出する逃げ付き部と、前記ブレード本体及び前記逃げ付き部の外周面に形成された切れ刃と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る切断用ブレードによれば、軸線を中心とする円板状に形成され第1ボンド相に第1砥粒が分散されたブレード本体の外周縁部の側面に、第2ボンド相に第2砥粒が分散されるとともにブレード本体から軸線方向における外方に突出する逃げ付き部が配置され、ブレード本体及び逃げ付き部の外周面に切れ刃が形成されていて、ブレード本体の側面が切断溝の側面の切断に関わることがない。
その結果、被加工材を切断する際の切断抵抗を小さくすることができる。
また、切断溝のいずれか一方の側面が逃げ付き部の側面によって切断される場合であっても、逃げ付き部は径方向寸法が短いので、軸線を含む断面においてブレード本体よりも矩形形状が維持されやすくなり(矩形維持性が向上し)、切断溝を切断方向に沿って見たときの上下方向位置における幅寸法の差を小さくする(維持する)ことができる。
【0012】
ここで、第2砥粒の含有率(集中度)は任意に設定することが可能であり、第1砥粒の含有率よりも高くしてもよいし低くしてもよい。また、第1砥粒と同じ含有率に設定してもよい。
また、第2砥粒の平均粒度は任意に設定することが可能であり、第1砥粒の平均粒度よりも大きくしてもよいし小さくしてもよい。また、第1砥粒と同じ平均粒度に設定してもよい。
また、第1ボンド相、第2ボンド相を構成する材料(金属又は金属化合物、樹脂材料、ガラス質等)は任意に設定することが可能である。
【0013】
また、メタルブレード本体を構成する第1ボンド相としては、例えば、メタルボンド相、レジンボンド相、ビトリファイドボンド相のいずれを用いてもよい。
ここで、メタルボンド相は、金属又は金属化合物を圧粉、焼結して形成したもの、金属又は金属化合物をめっきすることにより形成したもののいずれとしてもよい。
【0014】
(2)上記(1)に記載の切断用ブレードは、前記逃げ付き部は、前記ブレード本体の両側の側面に形成されていてもよい。
【0015】
この発明に係る切断用ブレードによれば、逃げ付き部は、ブレード本体の両側の側面に形成されているので、切断に際して切断用ブレードが切断溝の側面を削り取った場合であっても、切断溝の上下方向位置における幅寸法の差を小さくすることができる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)に記載の切断用ブレードは、前記第2砥粒は、ダイヤモンド超砥粒とされていてもよい。
【0017】
この発明に係る切断用ブレードによれば、第2砥粒は、ダイヤモンド超砥粒とされているので、逃げ付き部が摩耗するのを抑制することができる。その結果、逃げ付き部の矩形維持性を向上することができる。
【0018】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の切断用ブレードは、前記第2砥粒の含有率は、前記第1砥粒の含有率よりも高く設定されていてもよい。
【0019】
この発明に係る切断用ブレードによれば、第2砥粒の含有率は、第1砥粒の含有率よりも高く設定されているので、ブレード本体に比較して、逃げ付き部の耐摩耗性を向上することが可能となり、逃げ付き部の矩形維持性を向上することができる。
【0020】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の切断用ブレードは、前記第2砥粒の平均粒径は、前記第1砥粒の平均粒径よりも小さく設定されていてもよい。
【0021】
この発明に係る切断用ブレードによれば、第2砥粒の平均粒径が、第1砥粒の平均粒径よりも小さく設定されているので、第2砥粒が切れ刃の角部近傍まで配置されて、逃げ付き部の摩耗が抑制されるので、矩形維持性を向上することができる。
【0022】
(6)上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の切断用ブレードは、前記第2砥粒の平均粒径は、前記第1砥粒の平均粒径よりも大きく設定されていてもよい。
【0023】
この発明に係る切断用ブレードによれば、第2砥粒の平均粒径は、第1砥粒の平均粒径よりも大きく設定されているので、逃げ付き部全体としての耐摩耗性が高くなり、被加工材を切断する際に、逃げ付き部が部分的に脱落するのが抑制されて、矩形維持性を向上することができる。
【0024】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の切断用ブレードは、前記逃げ付き部の外側側面に前記軸線方向にくぼむ凹部が形成されていてもよい。
【0025】
この発明に係る切断用ブレードによれば、逃げ付き部の外側側面に軸線方向にくぼむ凹部が形成されているので、切断によって生じた切りくず等を凹部によって効率的に排出し又は保持することにより、切断時に切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
ここで、凹部は、軸線に沿って見たときの形態を任意に設定することが可能であり、例えば、逃げ付け部の内周側と外周側を貫通するスリット部や、逃げ付け部の内周側と外周側のいずれにも開口されていないディンプルや、軸線に沿って見たときに逃げ付け部の内周側と外周側のいずれか一方のみが開口された舌片状の凹部を含んでもよい。また、軸線方向の寸法(深さ)についても任意に設定することが可能である。
【0026】
(8)上記(7)に記載の切断用ブレードは、前記凹部は、径方向に延在する複数のスリット部を備えていてもよい。
【0027】
この発明に係る切断用ブレードによれば、逃げ付き部の外側側面に軸線方向にくぼむ凹部が、径方向に延在し内周側から外周側に貫通する複数のスリット部を備えているので、切断によって生じた切りくず等をスリット部によって効率的に排出することにより、切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
ここで、軸線方向に沿ってみたときに形状を任意に設定することが可能であり、軸線を中心とする放射状のもの、軸線を中心とする円に接するように形成されたもの、渦巻きをはじめとする曲線状に形成されたもの等、を含むものとする。
【0028】
(9)上記(7)に記載の切断用ブレードは、前記凹部は、複数のディンプルを備えていてもよい。
【0029】
この発明に係る切断用ブレードによれば、逃げ付き部の外側側面に軸線方向にくぼむ凹部が、複数のディンプルを備えているので、切断で生じた切りくず等をディンプルによって捕捉して、切断時に切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
ここで、ディンプルは、軸線に沿って見たときの形状を任意に設定することが可能であり、例えば、円形状、三角形、四角形をはじめとする多角形、アルファベットの「J」字形や「U」字形、ひらかなの「く」の字形等でもよいし、種々のサイズや形状が混同されていてもよい。また、ランダムに配置されていてもよいし、千鳥状や碁盤の目状に配置されていてもよい。
【0030】
(10)上記(7)に記載の切断用ブレードは、前記凹部は、径方向に延在する複数のスリット部と、隣接する前記スリット部の間に配置された複数のディンプルと、を備えていてもよい。
【0031】
この発明に係る切断用ブレードによれば、凹部が、複数のスリット部と、隣接する前記スリット部の間に配置された複数のディンプルと、を備えているので、水が回りやすく、切断で生じた切りくず等をスリット部によって効率的に排出するとともに、排出されなかった切りくず等をディンプルによって捕捉し、切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
【0032】
(11)この発明の第2態様は、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、前記逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、前記第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液に前記第2砥粒が分散されて形成された分散めっき液に、前記ブレード本体の外周縁部を浸漬して前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成することを特徴とする。
【0033】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液に第2砥粒が分散されて形成された分散めっき液に、ブレード本体の外周縁部を浸漬してブレード本体を軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成するので、容易にメタル逃げ付け部を形成することができる。
【0034】
(12)この発明の第3態様は、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、前記逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、前記逃げ付き部形成工程において、前記第2砥粒を貯留した容器を前記第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液内に浸漬し、前記ブレード本体の外周縁部を前記第2砥粒と接触させながら前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成することを特徴とする。
【0035】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、逃げ付き部がメタル逃げ付き部である場合に、逃げ付き部形成工程において、第2砥粒を貯留した容器を第2ボンド相を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液内に浸漬し、ブレード本体の外周縁部を第2砥粒と接触させながら前記ブレード本体を軸線周りに回動させて逃げ付き部を形成するので、容易かつ効率的にメタル逃げ付け部を形成することができる。
【0036】
(13)上記(12)に記載の切断用ブレード製造方法は、前記逃げ付き部形成工程において、前記ブレード本体を間欠的に回動させて前記逃げ付き部を形成してもよい。
【0037】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、逃げ付き部形成工程において、ブレード本体を間欠的に回動させて逃げ付き部を形成するので、効率的かつ安定的にメタル逃げ付け部を形成することができる。
また、厚さ寸法が大きい場合であっても安定してメタル逃げ付け部を形成することができる。
【0038】
(14)上記(11)~(13)のいずれか一項に記載の切断用ブレード製造方法であって、前記ブレード本体がレジンボンドブレード又はビトリファイドボンドブレードである場合に、前記ブレード本体形成工程で形成したブレード本体の前記外周縁部に導電性プライマーを被覆する前処理工程を、備えていてもよい。
【0039】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、ブレード本体がレジンボンドブレード又はビトリファイドボンドブレードである場合に、前処理工程を備えていて、前処理工程において、ブレード本体形成工程で形成したレジンボンドブレード又はビトリファイドボンドブレードの外周縁部に導電性プライマーを被覆するので、第1ボンド相を形成する金属又は金属化合物及びめっき方法(無電解めっき、電解めっき)に関わらず、逃げ付き部形成工程において、メタル逃げ付き部を効率的かつ安定的に形成することができる。
【0040】
(15)この発明の第4態様は、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の切断用ブレードを製造する切断用ブレード製造方法であって、ブレード本体を形成するブレード本体形成工程と、前記ブレード本体の側面の外周縁部に逃げ付き部を形成する逃げ付き部形成工程と、を備え、前記逃げ付き部がレジン逃げ付き部である場合に、前記逃げ付き部形成工程において、前記第2ボンド相を構成する樹脂材料に第2砥粒を分散させた分散樹脂材料を作成し、前記分散樹脂材料に前記ブレード本体の外周縁部を接触させながら前記ブレード本体を前記軸線周りに回動させて前記逃げ付き部を形成することを特徴とする。
【0041】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、逃げ付き部がレジン逃げ付き部である場合に、逃げ付き部形成工程において、第2ボンド相を構成する樹脂材料に第2砥粒を分散させた分散樹脂材料を作成し、この分散樹脂材料にブレード本体の外周縁部を接触させながらブレード本体を軸線周りに回動させて逃げ付き部を形成するので、容易かつ効率的にレジン逃げ付け部を形成することができる。
【0042】
(16)上記(11)~(15)のいずれか一項に記載の切断用ブレード製造方法は、前記逃げ付き部形成工程において、前記外周縁部にマスキングを施すことにより前記逃げ付き部に前記軸線方向にくぼむ凹部を形成してもよい。
【0043】
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、逃げ付き部形成工程において、外周縁部にマスキングを施すことにより逃げ付き部に凹部を形成するので、機械加工等を用いることなく、凹部を形成する過程で容易かつ効率的に凹部を形成することができる。
また、逃げ付き部を一部形成した後にマスキングを施すことにより、凹部の深さを任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0044】
この発明に係る切断用ブレード及び切断用ブレード製造方法によれば、切断溝の上下方向位置における幅寸法差を小さくすることができる。
この発明に係る切断用ブレード製造方法によれば、切断溝の上下方向位置における幅寸法差を小さくすることが可能な切断用ブレードを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の第1実施形態に係る切断ブレードの概略構成を説明する斜視図である。
図2】第1実施形態に係る切断ブレードの概略構成を説明する概略構成図であって、(A)は軸線方向に沿って見た平面図であり、(B)は軸線を含む断面図である。
図3】第1実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
図4】第1実施形態に係る切断用ブレードの逃げ付き部の一例を説明する概略構成図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)に矢視IVB-IVBで示す図である。
図5】第1実施形態の変形例に係る切断用ブレードを説明する概略構成図であり、(A)は第1変形例に係る凹部が形成されていない逃げ付け部を、(B)は第1変形例に係るスリット部が形成された逃げ付け部を、(C)は第3変形例に係るディンプルが形成された逃げ付け部を示している。
図6】第1実施形態の第4変形例に係る切断用ブレードを説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
図7】第1実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る切断用ブレード製造工程におけるメタル逃げ付き部形成工程の概略を説明する概念図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
図10】第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程におけるレジン逃げ付き部形成工程の概略を説明する概念図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
図13】第3実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
図14】本発明の第4実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
図15】第4実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<第1実施形態>
以下、図1図4を参照し、本発明の第1実施形態に係る切断用ブレードについて説明する。
図1は、第1実施形態に係る切断ブレードの概略構成を説明する斜視図であり、図2は、切断ブレードの概略構成を説明する概略構成図であり、図2(A)は軸線方向に沿って見た平面図であり、図2(B)は軸線を含む断面図である。また、図3は、切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。また、図4は、切断用ブレードの逃げ付き部の一例を説明する概略構成図であり、図4(A)は平面図であり、図4(B)は図4(A)に矢視IVB-IVBで示す図である。
【0047】
図1図4において、符号100は切断用ブレードを、符号101は外周面(切断用ブレード)を、符号102は切れ刃(切断用ブレード)を、符号103、103A、103Bは側面(切断用ブレード)を、符号10はメタルブレード本体(ブレード本体)を、符号15はメタルボンド相(第1ボンド相)を、符号16はダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)を、符号20はメタル逃げ付き部(逃げ付き部)を、符号25はメタルボンド相(第2ボンド相)を、符号26はダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)を、符号27はスリット部を、符号28はディンプルを示している。
【0048】
切断用ブレード100は、図1に示すように、例えば、メタルブレード本体(ブレード本体)10と、メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20と、メタルブレード本体(ブレード本体)10及びメタル逃げ付き部(逃げ付き部)20の外周面101に形成された切れ刃102と、を備え、内周側には軸線Oと同軸の円形穴100Hが形成されている。
そして、切断用ブレード100は、軸線O周りに回転してウェーハ(半導体材料等の基板)等の被加工材(不図示)を切断してICチップ(チップ状)等に個片化することが可能とされている。
【0049】
また、切断用ブレード100は、この実施形態において、例えば、外径55.05mm、刃厚0.15~0.50mm(例えば、0.35mm)に形成され、円形穴100Hは直径42.0mmに形成されている。
また、メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20は、この実施形態において、例えば、厚さ刃厚0.015~0.05mm(例えば、0.025mm)に形成されている。
【0050】
メタルブレード本体(ブレード本体)10は、軸線Oを中心とする円板状に形成されたメタルボンド相(第1ボンド)相15と、メタルボンド相(第1ボンド相)15に分散されたダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16とを備えている。
【0051】
ここで、メタルボンド相(第1ボンド相)としては、金属又は金属化合物の粉末を圧粉した成形品を焼結して形成したもの、金属又は金属化合物のめっきにより形成されているもの(例えば、ニッケルブレード、電着ブレード等)が含まれる。
以下に示すメタルブレード本体(ブレード本体)10は、特に記述がない場合は、第1ボンド相が、金属又は金属化合物のめっきにより形成されたニッケルブレード、電着ブレード等のメタルボンド相とする。
【0052】
メタルボンド相(第1ボンド相)15を構成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、ニッケル(Ni)又はニッケル合金を主成分とする合金により構成されている。
なお、例えば、ニッケルを主成分とする合金(例えば、ニッケル単層、ニッケル-リン(Ni-P)、ニッケル-コバルト(Ni-Co)、ニッケル-ボロン(Ni-B)を適用することが好適である。
【0053】
ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16は、例えば、平均粒径3~10μm(例えば、5μm)、含有率6.25~31.25vol%(集中度は25~125)に設定されている。
また、ダイヤモンド超砥粒16は、例えば、メタルボンド相15の表面から約2μm程度露出している。なお、ダイヤモンド超砥粒16をメタルボンド相15の表面から突出させるかどうかは任意に設定することが可能である。
【0054】
ここで、上記「平均粒径」とは、多数の超砥粒16の粒径の平均値を表しており、例えば、ある粒径範囲をもった超砥粒16をMicrotrac社(登録商標)製の型式MT3300EXII-SDC等により測定し、平均粒径をメッシュサイズに基づく粒度表示(JIS B 4130:1998を参照)により算出する等の方法が取られる。
【0055】
また、「集中度」とは、工具中の砥粒量を表す指標である。切断用ブレードの場合、ブレード本体全体の体積に対して、砥粒の体積が25vol%を占有するとき、集中度100と規定する。(よって、ブレード本体のすべてが砥粒で構成されている場合は、集中度400となる。)
【0056】
メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20は、例えば、メタルボンド相(第2ボンド相25と、メタルボンド相(第2ボンド相)25に分散されたダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26とを備えている。
メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20は、この実施形態において、軸線Oを中心とするリング状(環状)に形成されていて、ブレード本体10の軸線O方向の両方の側面103A、103B(103)の外周縁部に配置され、メタルブレード本体10の両方の側面103A、103B(103)から軸線O方向外方に突出して形成されている。
【0057】
メタルボンド相(第2ボンド相)25を構成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、メタルブレードブレード本体10を構成するメタルボンド相(第1ボンド相)15と同種類のニッケル(Ni)又はニッケル合金を主成分とする合金により構成されている。
【0058】
ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26は、例えば、平均粒径2~6μm(例えば、4μm)、含有率7.5~40.0vol%(集中度は30~160)に設定されている。
すなわち、図3に示すように、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26の平均粒径は、メタルブレード本体10を構成するダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の平均粒径よりも小さく設定されている。
また、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26の含有率(集中度)は、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の含有率(集中度)よりも高く設定されている。
【0059】
また、ダイヤモンド超砥粒26は、例えば、メタルボンド相25の表面から約1.5μm程度露出している。なお、ダイヤモンド超砥粒26をメタルボンド相25の表面から突出させるかどうかは任意に設定することが可能である。切断溝の側面の精度を高くする場合は、この突出を小さくすることが好適である。
【0060】
メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20は、この実施形態において、図4に示すように、メタル逃げ付き部20の外側側面103A、103B(103)に、軸線O方向にくぼむ凹部が形成されている。
具体的には、凹部は、図4(A)に示すように、径方向に延在し、軸線Oを中心とする放射状に形成された複数のスリット部27と、隣接するスリット部27の間に配置されランダムに配置された多数(複数)のディンプル28と、を備えている。
【0061】
スリット部27は、例えば、図4(B)に示すように、切断用ブレード100の両方の側面103A、103B(103)において、軸線Oを中心として同じ周方向に配置されている。
また、スリット部27は、例えば、深さがメタル逃げ付け部20の厚さと同じ寸法に形成されている。すなわち、スリット部27の底面には、メタルブレード本体10が露出するように形成されている。なお、スリット部27の深さについては任意に設定することが可能である。
【0062】
ディンプル28は、例えば、同じ大きさの円形状のくぼみとされている。
また、ディンプル28は、例えば、深さがメタル逃げ付け部20の厚さと同じ寸法に形成されている。すなわち、ディンプル28の底面には、メタルブレード本体10が露出するように形成されている。なお、ディンプル28の深さについては任意に設定することが可能である。
【0063】
次に、図5を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。
図5は、第1実施形態に係る切断用ブレードの逃げ付き部の第1~第3変形例を説明する概略構成図である。
【0064】
<第1変形例(第1実施形態)>
以下、図5(A)を参照して、第1変形例に係る切断用ブレード100Aについて説明する。
第1変形例に係る切断用ブレード100Aは、図5(A)に示すように、メタルブレード本体10と、メタル逃げ付き部20Aとを備えている。
メタル逃げ付き部20Aは、図5(A)に示すように、両側の側面103A、103B(103)に、スリット部27もディンプル28等の凹部が形成されていない点で切断用ブレード100と相違する。
また、メタル逃げ付き部20Aの両側の側面103A、103B(103)は、ダイヤモンド超砥粒26がメタルボンド相25から露出していてもよいし、メタルボンド相25の内方に埋設されていてもよい。
その他は、上述の切断用ブレード100と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
<第2変形例(第1実施形態)>
以下、図5(B)を参照して、第2変形例に係る切断用ブレード100Bについて説明する。
第2変形例に係る切断用ブレード100Bは、図5(B)に示すように、メタルブレード本体10と、メタル逃げ付き部20Bとを備えている。
メタル逃げ付き部20Bは、図5(B)に示すように、両側の側面103A、103B(103)に、軸線Oを中心としメタル逃げ付き部20Bの内周側と外周側を貫通するスリット部27が形成されている。
また、スリット部27は、切断用ブレード100Cの一方と他方の側面103A、103B(103)において、メタルブレード本体10の側面が露出する深さまで形成されている。
【0066】
また、スリット部27は、切断用ブレード100Bの一方と他方の側面103A、103B(103)で同じ周方向位置に配置されていてもよいし、異なる周方向位置(例えば、周方向における互いの中間位置等)に形成されていてもよい。
また、メタル逃げ付き部20Bの両側の側面103A、103(103)は、ダイヤモンド超砥粒26がメタルボンド相25から露出していてもよいし、メタルボンド相25の内方に埋設されていてもよい。
その他は、切断用ブレード100と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
第2変形例に係る切断用ブレード100Bによれば、メタル逃げ付き部20の外側側面に軸線O方向にくぼむ凹部が、径方向に放射状に延在し内周側から外周側に貫通する複数のスリット部27を備えているので、切断によって生じた切りくず等をスリット部27によって効率的に排出することにより、切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
【0068】
<第3変形例(第1実施形態)>
以下、図5(C)を参照して、第3変形例に係る切断用ブレード100Cについて説明する。
第3変形例に係る切断用ブレード100Cは、図5(C)に示すように、メタルブレード本体10と、メタル逃げ付き部20Cとを備えている。
メタル逃げ付き部20Cは、図5(C)に示すように、両側の側面103A、103B(103)の全面にわたって、多数(複数)の円形状のディンプル28が形成されている。
【0069】
また、ディンプル28は、切断用ブレード100Cの一方と他方の側面103A、103B(103)において、メタルブレード本体10の側面が露出する深さまで形成されている。
また、メタル逃げ付き部20Cの両側の側面103A、103(103)は、ダイヤモンド超砥粒26がメタルボンド相25から露出していてもよいし、メタルボンド相25の内方に埋設されていてもよい。
その他は、切断用ブレード100と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
第3変形例に係る切断用ブレード100Cによれば、メタル逃げ付き部20の外側側面に軸線方向にくぼむ凹部が、多数(複数)のディンプル28を備えているので、切断で生じた切りくず等をディンプル28によって捕捉して、切断時に切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
【0071】
<第4変形例(第1実施形態)>
次に、図6を参照して、第1実施形態の第4変形例について説明する。
図6は、第1実施形態の第4変形例に係る切断用ブレードを説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。
【0072】
第4変形例に係る切断用ブレード100Dは、図6に示すように、メタルブレード本体10と、メタル逃げ付き部20Dとを備えている。
ここで、第4変形例に係るメタルブレード本体10のメタルボンド相(第1ボンド相)16は、例えば、金属又は金属化合物のめっきにより形成された(例えば、ニッケルブレード等の電着ブレード)とされている。
【0073】
また、第4変形例に係るメタルブレード本体10のダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16は、例えば、含有率が10.0~31.25vol%(集中度は40~125)に設定されている。
なお、メタルボンド相(第1ボンド相)15が金属又は金属化合物のめっきにより形成されている場合に、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の含有量を、含有率6.25~31.25vol%(集中度は25~125)に設定してもよい。
【0074】
メタル逃げ付き部20Dは、メタルボンド相(第2ボンド相)25と、メタルボンド相(第2ボンド相)25に分散されたダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Dとを備えている。
【0075】
ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Dは、例えば、10~20μm(例えば、平均粒径15μm)、含有率7.5~20.0vol%(集中度は30~80)に設定されている。
すなわち、メタルブレード本体(ブレード本体)10を構成するダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の平均粒径3~10μm(例えば、5μm)と比較して、平均粒径が大きく設定されている。
【0076】
また、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Dは、含有率(集中度)が、メタルブレード本体(ブレード本体)10のダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の10.0~31.25vol%(集中度は40~125)よりも低く設定されている。
【0077】
なお、メタル逃げ付き部20Dにおけるダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Dの含有率(集中度)を、メタルブレード本体(ブレード本体)10におけるダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の含有率(集中度)よりも高く設定し又は同じ値に設定してもよい。
【0078】
また、メタル逃げ付き部20Dの両側の側面103A、103B(103)にダイヤモンド超砥粒26Dを露出させるかどうかは任意に設定することができる。また、メタル逃げ付き部20Dのいずれか又は両方の側面103A、103B(103)に、スリット部27やディンプル28等の凹部を形成するかどうかについては任意に設定することが可能である。
その他は、切断用ブレード100と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
第4変形例に係る切断用ブレード100Dによれば、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Dの平均粒径がダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の平均粒径よりも大きく設定されているので、メタル逃げ付き部20D全体としての耐摩耗性が高くなり、被加工材を切断する際に、メタル逃げ付き部20Dが部分的に脱落するのが抑制されて、矩形維持性を向上することができる。
【0080】
次に、図7図8を参照して、切断用ブレード100を製造する切断用ブレード製造工程(切断用ブレード製造方法)の一例の概略について説明する。
図7は、第1実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートであり、図8は切断用ブレード製造工程におけるメタル逃げ付き部形成工程の概略を説明する概念図である。
【0081】
第1実施形態に係る切断用ブレード製造工程は、図7に示すように、例えば、メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S101)と、メタル逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S102)とを備えている。そして、メタルブレード本体形成工程(S101)、メタル逃げ付き部形成工程(S102)を経ることにより、切断用ブレード100が完成する。
ここでは、メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S101)において、ニッケルめっき液にダイヤモンド超砥粒が分散された分散めっき液を用いたメタルボンド相(第1ボンド相)16を備えたニッケルブレードからなるメタルブレード本体10を形成する場合について説明する。
【0082】
(1)メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S101)
(1-1)SUS台金(ステンレス鋼製台金)を準備
まず、例えば、SUS台金(ステンレス鋼製台金)を準備する。
SUS台金は、鏡面処理されていることが好適である。また、SUS台金は、ブレード本体10の形状に合わせてニッケルめっきが不要とされる部分にマスキングを施すことが好適である。
(1-2)分散めっき
ダイヤモンド超砥粒26を分散させたニッケルめっき液を分散めっき装置(不図示)に貯留して、ニッケルめっき液にSUS台金を浸漬する。
ニッケルをアノードとして、ニッケルめっき液を撹拌しながら、電解めっき法によりSUS台金にニッケルめっきを成長させメタルブレード本体を構成する分散ニッケルめっき層(ダイヤモンド超砥粒26が分散されたニッケル層)を形成させる。
また、電解めっき法に代えて、無電解めっき法によりめっき層を形成してもよい。
なお、メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)において、めっきによるメタルボンド相(第1ボンド相)を備えたメタルブレード本体10に代えて、金属又は金属化合物の粉末を圧粉した成形品を焼結して形成したメタルボンド相(第1ボンド相)を備えたメタルブレード本体を形成してもよい。
【0083】
(2)メタル逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S102)
以下、図8を参照して、メタル逃げ付き部形成工程におけるメタル逃げ付き部20の形成について説明する。
メタルボンド相(第2ボンド相)25を構成する金属又は金属化合物を含有するめっき液25Mを貯留した容器C1の中に、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mを収容(貯留)した容器C2を配置して、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mをめっき液25Mに浸漬した材料20Mを作成する。
そして、メタルブレード本体10の外周縁部(二点鎖線で示すメタル逃げ付き部20の形成予定部位)を、材料20Mのめっき液25Mに浸漬するとともに、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mに埋没させて、外周縁部が粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mと接触させながらメタルブレード本体10を軸線O周りに回動させる。このとき、メタルブレード本体10を所定の角度だけ間欠的に回動して、その位置で所定時間待機させることが好適である。
なお、メタル逃げ付き部20の側面103A、103B(103)にスリット部(凹部)27、ディンプル(凹部)28を形成する場合には、対象とする部分をマスキングしたうえでメタル逃げ付き部20を形成する。
その結果、メタルブレード本体10の外周縁部にメタル逃げ付き部20が形成され、切断用ブレード100が完成する。
【0084】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、メタルブレード本体10及びメタル逃げ付き部20の外周面101に切れ刃102が形成されていて、メタルブレード本体10の側面103A、103B(103)が被加工材の切断溝の側面の切断に関わることがないので、被加工材を切断する際の切断抵抗を小さくすることができる。
【0085】
また、切断溝の側面がメタル逃げ付き部20の側面によって切断される(削られる)場合であっても、メタル逃げ付き部20は径方向寸法が短いのでメタルブレード本体10よりも矩形形状が維持されやすくなり(矩形維持性が向上し)、切断溝の上下方向位置における幅寸法の差を小さくする(維持する)ことができる。
【0086】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、メタル逃げ付き部20は、メタルブレード本体10の両側の側面に形成されているので、切断に際して切断用ブレード100が切断溝の側面を削り取った場合であっても、切断溝の上下方向位置における幅寸法の差を小さくすることができる。
【0087】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、第2砥粒がダイヤモンド超砥粒26とされているので、メタル逃げ付き部20が摩耗するのを抑制して、メタル逃げ付き部20の矩形維持性を向上することができる。
【0088】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26の含有率が、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の含有率よりも高く設定されているので、メタルブレード本体10に比較して、メタル逃げ付き部20の耐摩耗性を向上することが可能となり、メタル逃げ付き部20の矩形維持性を向上することができる。
【0089】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26の平均粒径が、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の平均粒径よりも小さく設定されているので、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26が切れ刃102の角部近傍まで配置されて、メタル逃げ付き部20の摩耗が抑制されるので、矩形維持性を向上することができる。
【0090】
第1実施形態に係る切断用ブレード100によれば、メタル逃げ付き部20に複数のスリット部27と、スリット部27の間に配置された多数の複数のディンプル28が形成されているので、切断で生じた切りくず等をスリット部27によって効率的に排出するとともに、排出されなかった切りくず等をディンプル28によって捕捉し、切りくず等が切断溝の側面に影響を与えるのを抑制することができる。
【0091】
また、メタルブレード本体10を間欠的に回動させて、メタルブレード本体10をめっき液25Mに浸漬された粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mと所定時間停止したまま接触させてメタル逃げ付き部20を形成するので、効率的かつ安定的にメタル逃げ付け部20を形成することができる。
また、メタル逃げ付き部20の厚さ寸法が大きい場合であっても安定して形成することができる。
【0092】
<第2実施形態>
以下、図9図11を参照し、本発明の第2実施形態に係る切断用ブレードについて説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図である。また、図10は、第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートであり、図11は、第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程におけるレジン逃げ付き部形成工程の概略を説明する概念図である。
図において、符号200は切断用ブレードを、符号30はレジン逃げ付き部(逃げ付き部)を、符号35はレジンボンド相(第2ボンド相)を、符号36はダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)を示している。
【0093】
切断用ブレード200は、図9に示すように、例えば、メタルブレード本体(ブレード本体)10と、レジン逃げ付き部(逃げ付き部)30と、メタルブレード本体(ブレード本体)10及びレジン逃げ付き部(逃げ付き部)30の外周面101に形成された切れ刃102と、を備え、内周側には円形穴100Hが形成されている。
メタルブレード本体(ブレード本体)10については第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0094】
レジン逃げ付き部(逃げ付き部)30は、例えば、レジンボンド相(第2ボンド相)35と、レジンボンド相(第2ボンド相)35に分散されたダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36とを備えている。
レジン逃げ付き部(逃げ付き部)30は、この実施形態において、メタルブレード本体10の軸線O方向の両方の側面103A、103B(103)の外周縁部に配置され、軸線Oを中心とするリング状(環状)に形成されていて、メタルブレード本体10の両方の側面103A、103B(103)から軸線O方向外方に突出して形成されている。
【0095】
レジンボンド相(第2ボンド相)35を構成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、フェノール樹脂により構成されている。
【0096】
ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36は、平均粒径、含有率(集中度)を任意に設定することが可能であるが、例えば、第1実施形態のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26と同等に、平均粒径2~6μm(例えば、平均粒径4μm)、含有率7.5~40.0vol%(集中度は30~160)に設定されている。
すなわち、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36の平均粒径は、メタルブレード本体10を構成するダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の平均粒径3~10μm(例えば、5μm)よりも小さく設定されている。
また、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36の含有率(集中度)は、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16の含有率6.25~31.25vol%(集中度は25~125)よりも高く設定されている。
【0097】
また、ダイヤモンド超砥粒36は、例えば、レジンボンド相35の表面から約1.5μm程度露出している。なお、ダイヤモンド超砥粒36をメタルボンド相35の表面から突出させるかどうかは任意に設定することが可能である。
【0098】
次に、図10図11を参照して、切断用ブレード200の製造方法について説明する。
図10は、第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートであり、図11は切断用ブレード製造工程におけるレジン逃げ付き部形成工程の概略を説明する概念図である。
【0099】
第2実施形態に係る切断用ブレード製造工程は、図10に示すように、例えば、メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S201)と、レジン逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S202)と、を備えている。そして、メタルブレード本体形成工程(S201)、レジン逃げ付き部形成工程(S202)を経ることにより、切断用ブレード200が完成する。
メタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S201)については、第1実施形態に係るメタルブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S101)と同様であるので説明を省略する。
【0100】
レジン逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S202)
以下、図11を参照して、レジン逃げ付き部形成工程におけるレジン逃げ付き部30の形成について説明する。
レジンボンド相(第2ボンド相)35を構成するフェノール樹脂材料を含有する接着樹脂(接着剤)35Mと、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36Mとを混合して、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36Mが分散された接着樹脂(接着剤)35Mからなる分散接着樹脂30Mを作成する。
そして、図11に示すように、分散接着樹脂30Mを容器C3に収容(貯留)して、メタルブレード本体10の外周縁部(二点鎖線で示すレジン逃げ付き部30の形成予定部位)を分散接着樹脂30Mに浸漬するとともに、メタルブレード本体10を軸線O周りに回動させる。
なお、レジン逃げ付き部30の側面103A、103B(103)にスリット部(凹部)27、ディンプル(凹部)28を形成する場合には、対象とする部分をマスキングしたうえでレジン逃げ付き部30を形成する。
その結果、メタルブレード本体10の外周縁部にレジン逃げ付き部30が形成され、切断用ブレード200が完成する。
【0101】
第2実施形態に係る切断用ブレード製造方法によれば、レジン逃げ付き部30のレジンボンド相(第2ボンド相)35を構成する樹脂材料35Mにダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36の粒子36Mを分散させた分散樹脂材料30Mを作成し、この分散樹脂材料30Mにメタルブレード本体(ブレード本体)10の外周縁部を接触させながらメタルブレード本体(ブレード本体)10を軸線O周りに回動させてレジン逃げ付き部30を形成するので、容易かつ効率的にレジン逃げ付け部30を形成することができる。
【0102】
<第3実施形態>
以下、図12図13を参照し、本発明の第3実施形態に係る切断用ブレードについて説明する。
図12は、本発明の第3実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図であり、図13は、第3実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
図12図13において、符号300は切断用ブレードを、符号40はレジンブレード本体(レジンボンドブレード本体、ブレード本体)を、符号45はレジンボンド相(第1ボンド相)を、符号46はダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)を示している。
【0103】
切断用ブレード300は、図12に示すように、例えば、レジンブレード本体(レジンボンドブレード本体、ブレード本体)40と、メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20と、レジンブレード本体(ブレード本体)40及びメタル逃げ付き部(逃げ付き部)20の外周面101に形成された切れ刃102と、を備え、内周側には円形穴100Hが形成されている。
メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20については第1実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0104】
レジンブレード本体(レジンボンドブレード本体、ブレード本体)40は、図12に示すように、軸線Oを中心とする円板状に形成されたレジンボンド相(第1ボンド相)45と、レジンボンド相(第1ボンド相)45に分散されたダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)46とを備えている。
【0105】
レジンボンド相(第1ボンド相)45を構成する材料は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、例えば、フェノール樹脂により構成されている。
【0106】
ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)46は、例えば、平均粒径3~10μm(例えば、5μm)、含有率6.25~31.25vol%(集中度は25~125)に設定され、第1実施形態に係るダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)16と同様に設定されている。
また、ダイヤモンド超砥粒46は、例えば、レジンボンド相45の表面から約2μm程度露出している。なお、ダイヤモンド超砥粒46をメタルボンド相45の表面から突出させるかどうかは任意に設定することが可能である。
【0107】
したがって、レジン逃げ付き部30を構成するダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36の平均粒径2~6μm(例えば、平均粒径4μm)は、レジンブレード本体40を構成するダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)46の平均粒径よりも小さく設定されている。
また、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)36の含有率7.5~40.0vol%(集中度は30~160)は、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)46の含有率(集中度)よりも高く設定されている。
その他は、第1実施形態、第2実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0108】
次に、図13を参照して、切断用ブレード300の製造方法について説明する。
第3実施形態に係る切断用ブレード製造工程は、図13に示すように、例えば、レジンブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S301)と、パラジウム(Pd)化合物被覆工程(前処理工程)(S302)と、メタル逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S303)とを備えている。そして、レジンブレード本体形成工程(S301)、パラジウム(Pd)化合物被覆工程(S302)、メタル逃げ付き部形成工程(S303)を経ることにより、切断用ブレード300が完成する。
【0109】
(1)レジンブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S301)
(1-1)材料粉末の生成、混合
まず、レジンボンド相(第1ボンド相)を構成する樹脂素材粉末と、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)を所定の比率で配合して材料粉末を作成し、この材料粉末が均一となるまで混合する。材料粉末の混合には、例えば、ボールミルを用いる。なお、ボールミルに代えて、適用可能な周知の混合装置を用いてもよい。
(1-2)ブレード本体原板形成(コールドプレス)
次いで、混合した材料をブレード本体原板形成型に供給して、例えば、常温でプレス装置により圧粉して、圧粉体からなるブレード本体原板を形成する。
ここで、コールドプレスとは、常温(例えば、室温)以下での加圧に限定されず、例えば、樹脂素材粉末が溶融を開始する温度以下で加圧することをいう。
(1-3)ブレード本体形成(ホットプレス)
次いで、ブレード本体形成型にブレード本体原板を配置し、プレス装置により加圧するとともにブレード本体原板を焼結する。
ここで、ホットプレスとは、例えば、樹脂素材粉末が流動可能な程度の温度で加圧することをいう。
以上のようにして、レジンブレード本体40が形成される。
【0110】
(2)パラジウム(Pd)化合物被覆工程(前処理工程)(S302)
次に、レジンブレード本体40の両側の側面103A、103B(103)の外周縁部(図8に二点鎖線を示す符号20の部分)に、メタル逃げ付き部(逃げ付き部)20の形成に先立って前処理を施す。具体的には、例えば、無電解めっき法のプライマーとしてパラジウム(Pd)化合物(例えば、レッドシューマー(登録商標)日本カニゼン株式会社製)の3%水溶液に、レジンブレード本体40を浸漬する。
そして、レジンブレード本体40のメタル逃げ付き部(逃げ付き部)20を形成する対象領域にパラジウム化合物を付着(被覆)させる。
【0111】
(3)メタル逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S303)
次に、パラジウム(Pd)化合物被覆してメタル逃げ付き部20の形成予定部に導電性を付与したレジンブレード本体40にメタル逃げ付き部20を形成する。
メタル逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S303)に関して、その他は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
その結果、切断用ブレード300が完成する。
【0112】
<第4実施形態>
以下、図14図15を参照し、本発明の第4実施形態に係る切断用ブレードについて説明する。
図14は、本発明の第4実施形態に係る切断用ブレードの要部を説明する軸線を含む断面を拡大した概念図であり、図15は、第4実施形態に係る切断用ブレード製造工程の概略を説明するフローチャートである。
図15において、符号400は切断用ブレードを示している。
【0113】
切断用ブレード400は、図14に示すように、例えば、レジンブレード本体(ブレード本体)40と、レジン逃げ付き部(逃げ付き部)30と、レジンブレード本体(ブレード本体)40及びレジン逃げ付き部(逃げ付き部)30の外周面101に形成された切れ刃102と、とを備えている。
レジンブレード本体(ブレード本体)40、レジン逃げ付き部(逃げ付き部)30及びレジンボンド相(第1ボンド相、第2ボンド相)45、35、ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒、第2砥粒)46、36については、第1~第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0114】
次に、図15を参照して、切断用ブレード400の製造方法について説明する。
第4実施形態に係る切断用ブレード製造工程は、図15に示すように、例えば、レジンブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S401)と、レジン逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S402)とを備えている。そして、レジンブレード本体形成工程(S401)、レジン逃げ付き部形成工程(S402)を経ることにより、切断用ブレード400が完成する。
レジンブレード本体形成工程(ブレード本体形成工程)(S401)、レジン逃げ付き部形成工程(逃げ付き部形成工程)(S402)は、第2実施形態、第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0115】
なお、上記実施形態において記載した技術的事項については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、切断用ブレード100、200がメタルブレード本体10を備え、切断用ブレード300、400がレジンブレード本体40を備えている場合について説明したが、例えば、メタルブレード本体10、レジンブレード本体40に代えて、第1ボンド相としてビトリファイドボンド相を備えたビトリファイドボンドブレード本体を用いてもよい。この場合、ビトリファイドボンドブレード本体は、導電性がないので、レジンブレード本体40と同様に、パラジウム(Pd)化合物を用いた前処理をすることにより、メタル逃げ付き部20を形成することができる。
【0116】
また、上記実施形態においては、第2砥粒の含有率を第1砥粒の含有率よりも高く設定し、第2砥粒の平均粒径が第1砥粒の平均粒径に対して小さく、又は大きく設定する場合について説明したが、第2砥粒の第1砥粒に対する含有率、平均粒径については任意に設定することが可能であり、矩形維持性が向上する範囲で、例えば、第2砥粒の含有率を第1砥粒の含有率よりも低く又は同じに設定し、又は第2砥粒の平均粒径を第1砥粒の平均粒径と等しく設定してもよい。
【0117】
また、上記実施形態においては、ブレード本体10、40、逃げ付け部20、30が、第1ボンド相15、45に、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26、36が分散されている場合について説明したが、ブレード本体10、40や逃げ付き部20、30の加工性、剛性等、種々の機能を向上することを目的として、ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26、36に加えて、メタルボンド相15、レジンボンド相45にフィラーを分散させてもよい。
この場合、例えば、二硫化モリブデン(MoS)、シリカバルーンやガラスバルーン等の中空微粒子、炭化ケイ素(SiC)や炭化タングステン(WC)等のフィラー(不図示)を分散させてもよく、フィラー(不図示)を分散させるかどうか、分散させる場合のフィラーの種類については任意に設定することができる。
【0118】
また、上記実施形態においては、逃げ付き部20、30の外側側面103A、103B、(103)に形成される軸線O方向にくぼむ凹部が、径方向に放射状に延在し内周側から外周側に貫通する複数のスリット部27や、円形状のディンプル28である場合について説明したが、軸線方向に沿ってみたときの凹部の形状(形態)は任意に設定することが可能であり、例えば、軸線Oを中心とする放射状のスリット部27に代えて、軸線Oを中心とする小径の円に接するように形成されたスリット部や、渦巻きをはじめとする曲線状に形成されたスリット部としてもよい。
【0119】
また、円形のディンプル28に代えて、例えば、円形状、三角形、四角形をはじめとする多角形、「J」字形や「U」字形や「く」の字形に形成されたディンプルであってもよいし、種々のサイズや形状が混同されていてもよい。また、ディンプルを配置する形態を、ランダムとしてもよいし、千鳥状や碁盤の目状としてもよい。
また、凹部は、逃げ付け部の内周側と外周側のいずれか一方のみが開口された舌片状の凹部を含んでもよい。
また、スリット部27、ディンプル28等、凹部の軸線方向の寸法(深さ)についても任意に設定することが可能である。
【0120】
また、上記実施形態においては、メタルブレード本体10がニッケルめっきからなるメタルボンド相15にダイヤモンド超砥粒16が分散されている場合について説明したが、例えば、Ni-Pめっき、Ni-CoめっきやNi-Bめっき、銅(Cu)や銅合金(例えば、Cu-Sn)をはじめとする適用可能な種々のメタルボンド相に砥粒が分散されたメタルブレード本体を用いてもよい。
【0121】
また、メタルブレード本体10を形成する場合に、金属又は金属化合物のめっきにより形成されたメタルボンド相(第1ボンド相)(例えば、ニッケルブレード、電着ブレード等)15に代えて、金属又は金属化合物の粉末を圧粉した成形品を焼結して形成した周知のメタルボンド相(第1ボンド相)を用いてもよい。
【0122】
また、上記実施形態においては、メタル逃げ付き部20を形成する場合に、粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)26Mがメタルボンド相(第2ボンド相)25を構成するめっき液25Mに浸漬された材料20Mに、ブレード本体10、40の外周縁部を浸漬、接触させる場合について説明したが、メタルボンド相(第2ボンド相)25を構成するめっき液に第2砥粒26を分散した分散めっき液に、ブレード本体10、40の外周縁部を接触させてメタル逃げ付き部20を形成してもよい。また、電解めっきに代えて、無電解めっき法を適用して分散めっき層を形成してもよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、SUS台金に電解めっき法によって分散めっき層を形成することによりメタルブレード本体10を形成する場合について説明したが、分散めっき層をSUS(ステンレス鋼)以外の台金(例えば、表面に酸化皮膜を形成し易いアルミニウムやチタン)に成長させてブレード素材の原板を形成してもよい。
また、電解めっきに代えて、無電解めっき法を適用して分散めっき層を形成してもよい。
【0124】
また、図7図10図13図15に示した製造方法に係るフローチャートは一例であり、適宜変更(省略、追加)してもよいし、他の任意の製造方法を適用して製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明に係る切断用ブレード及び切断用ブレード製造方法によれば、被加工材を切断した際の切断溝の上下方向における幅寸法差を小さくすることができるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
O 軸線
10 メタルブレード本体(ブレード本体)
15 メタルボンド相(第1ボンド相)
16 ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)
20、20A、20B、20C、20D メタル逃げ付き部(逃げ付き部)
25 メタルボンド相(第2ボンド相)
26、26D ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)
26M 粒子状のダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)
27 スリット部
28 ディンプル
30 レジン逃げ付き部(逃げ付き部)
35 レジンボンド相(第2ボンド相)
36 ダイヤモンド超砥粒(第2砥粒)
40 レジンブレード本体(レジンボンドブレード本体、ブレード本体)
45 レジンボンド相(第1ボンド相)
46 ダイヤモンド超砥粒(第1砥粒)
100、200、300、400 切断用ブレード
100H 取付穴
101 外周面(切断用ブレード)
102 切れ刃(切断用ブレード)
103、103A、103B 側面(切断用ブレード)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15