(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】ガスケットの管理方法、システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20250407BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20250407BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
F16J15/00 E
F16J15/06 P
G01L5/00 103A
(21)【出願番号】P 2022535332
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2021025406
(87)【国際公開番号】W WO2022009864
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020117730
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】赤松 淑子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 清華
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡美
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 正
(72)【発明者】
【氏名】坂田 義太朗
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
(72)【発明者】
【氏名】江頭 正浩
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008585(WO,A1)
【文献】特開平09-329281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333035(US,A1)
【文献】特開2013-040647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
F16L 23/02
F16L 23/18-23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ間に拘束され
る拘束部と前記拘束部に隣接する非拘束部とを備えたガスケットに荷重を付与する工程と、
前記荷重により前記ガスケット
の前記非拘束部の複数個所に設定された形状観測部に生じる形状変化を観測する工程と、
を含み、
前記形状変化を観測する前記工程では、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサを用いて、前記形状観測部における前記ガスケットの周方向の前記形状変化を含む形状情報を取得し、
前記形状
情報に基づき前記ガスケットの締付けを管理することを特徴とする、管理方法。
【請求項2】
前記形状変化は、前記ガスケットの少なくとも前記フランジ間の間隔方向の変化、または前記間隔方向と交差方向の変化の何れかまたは双方を
さらに含
み、
N次微分を施した前記形状情報の変曲点を前記ガスケットの締付け完了の判断基準とすることを特徴とする、請求項1に記載の管理方法。
【請求項3】
フランジ間に拘束されて荷重を受けるガスケットの
非拘束部の複数個所に設定された形状観測部に生じる形状変化を計測する計測手段と、
前記形状変化に基づき前記フランジ間の締付けを管理する管理情報を生成する管理サーバと、
前記管理情報を提示する情報提示部と、
を含
み、
前記計測手段は、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサであり、前記形状観測部における前記ガスケットの周方向の前記形状変化を含む形状情報を取得し、
前記管理サーバは、前記形状情報に基づき前記フランジ間の締付けを管理することを特徴とする、管理システム。
【請求項4】
コンピュータにより実現するためのプログラムであって、
ガスケットがフランジ間に拘束され
る拘束部に該フランジ間より荷重を受け、該荷重により前記
拘束部に隣接する非拘束部の周縁の複数個所に設定された形状観測部における前記ガスケットの周方向の形状変化を表す形状情報を
、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサを用いて取得する機能と、
前記形状
情報に基づき前記ガスケットの締付けを管理する管理情報を生成する機能と、
を前記コンピュータで実現するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たとえば配管系統の締結などに用いられるガスケットの管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットの締付けには、ボルトによりフランジに加えられる締付けトルクやボルト軸力値が伝統的に用いられている。締付けトルクやボルト軸力値はフランジ間を締め付けるボルトの締付けに関する情報である。
【0003】
このガスケットの締付けに関し、締付けトルクを把握するため、ガスケットや内部流体の種類に対応する締付け面圧、複数の締付力、ボルトに関する情報などを用いるシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。ボルトの締付けに関し、ボルトに発生するひずみをデータ化し、ボルトの締付け状態を視認化することが知られている(たとえば、特許文献2)。また、ガスケット内部に埋設したシート型圧力センサーにより、締結によってガスケットの一部に加わる力を測定するものが知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-225219号公報
【文献】特開2015-141345号公報
【文献】特許第4699935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスケットの締付け管理にボルトの締付けトルクや軸力値が用いられる理由は、ボルトがフランジ間を締付ける手段であること、ボルトひずみを計測すればボルトからガスケットに加わる締付け力を容易に把握できること、などがある。
【0006】
しかしながら、ボルト、フランジおよびガスケットの関係を精査した結果、ボルトの締付け力は、フランジに作用しており、ガスケットにはフランジを媒介として間接的に作用しているにすぎない。つまり、フランジはボルトの締付けによる荷重を受け、この荷重がフランジを介してガスケットに作用しているにすぎない。ボルトに作用させたトルク値や軸力値は、フランジの一部に作用している荷重であり、ガスケットに作用する面圧を表すものではない。
【0007】
このため、ガスケットの締付け管理には次のような課題がある。
【0008】
a)ボルトから取得したトルク値や軸力値はボルトに関する情報であり、ガスケットが受ける面圧を測定しているとは言えない。
【0009】
b)ガスケットがフランジから受ける面圧から見れば、ボルトのトルク値や軸力値は間接的な情報にすぎず、面圧の目安にすぎない。
【0010】
c)ボルトのトルク値や軸力値はボルトやフランジの締付け状態の影響を受け、この変動傾向を無視できない。
【0011】
トルクレンチやボルト軸力計で測定したトルク値や軸力値でガスケットの面圧を推定した場合、ボルトやフランジの締付け状態の影響を受けると、ガスケットに付与される面圧(=推定面圧)と、実際にガスケットが受ける面圧(=実面圧)の関係は、
推定面圧≠実面圧
となる。トルク値や軸力値の測定精度を高めても、推定面圧とガスケットの実面圧が一致しない。ガスケットが受ける面圧を把握することができない。
【0012】
斯かる課題について、発明者は、ガスケットの形状変化がフランジ間から受ける荷重に依存しており、その形状変化を観測することがガスケットの締付け管理上有益であるとの知見を得た。特許文献1~3には斯かる課題の開示や示唆はない。そして、特許文献1~3に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0013】
そこで、本開示の目的は上記課題および上記知見に基づき、フランジ間で荷重を受けるガスケットの形状変化を観測し、ガスケットの締付けの管理にその観測結果を用いることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本開示のガスケットの管理方法の一側面によれば、フランジ間に拘束される拘束部と前記拘束部に隣接する非拘束部とを備えたガスケットに荷重を付与する工程と、前記荷重により前記ガスケットの前記非拘束部の複数個所に設定された形状観測部に生じる形状変化を観測する工程とを含み、前記形状変化を観測する前記工程では、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサを用いて、前記形状観測部における前記ガスケットの周方向の前記形状変化を含む形状情報を取得し、前記形状情報に基づき前記ガスケットの締付けを管理する。
【0015】
この管理方法において、前記形状変化は、前記ガスケットの少なくとも前記フランジ間の間隔方向の変化、または前記間隔方向と交差方向の変化の何れかまたは双方をさらに含み、N次微分を施した前記形状情報の変曲点を前記ガスケットの締付け完了の判断基準とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本開示の管理システムの一側面によれば、フランジ間に拘束されて荷重を受けるガスケットの非拘束部の複数個所に設定された形状観測部に生じる形状変化を計測する計測手段と、前記形状変化に基づき前記フランジ間の締付けを管理する管理情報を生成する管理サーバと、前記管理情報を提示する情報提示部とを含み、前記計測手段は、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサであり、前記形状観測部における前記ガスケットの周方向の前記形状変化を含む形状情報を取得し、前記管理サーバは、前記形状情報に基づき前記フランジ間の締付けを管理する。
【0017】
上記目的を達成するため、本開示のプログラムの一側面によれば、コンピュータにより実現するためのプログラムであって、ガスケットがフランジ間に拘束される拘束部に該フランジ間より荷重を受け、該荷重により前記拘束部に隣接する非拘束部の周縁の複数個所に設定された形状観測部における前記ガスケットの周方向の形状変化を表す形状情報を、前記形状変化の変化量を検出するひずみセンサを用いて取得する機能と、前記形状情報に基づき前記ガスケットの締付けを管理する管理情報を生成する機能とを前記コンピュータで実現する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0019】
(1) フランジ間で生じるガスケットの形状変化は、ガスケットがフランジ間より受ける荷重、ガスケットの締付け状態を表しており、ガスケットの形状変化を観測すればガスケットの締付けを管理することができる。
【0020】
(2) フランジ間で生じたガスケットの形状変化はフランジ間にあるガスケットの締付け状態やフランジ間の密閉性を表しており、この形状変化をガスケット自体から直に観測すれば締付け状態やフランジ間の密閉性を容易に評価できる。
【0021】
(3) 従前のボルトのトルク値や軸力値による管理に比較し、従事者の技量に依存することなくガスケットの締付け管理精度を高めることができる。
【0022】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施の形態に係るフランジ締結部を示す図である。
【
図2】
図1のII-II線部の切断端面を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るガスケット管理システムを示す図である。
【
図4】ガスケット管理データベースを示す図である。
【
図5】第3の実施の形態に係るガスケット管理システムを示す図である。
【
図6】Aは実施例1に係るガスケットを示す図であり、Bはガスケットに対する形状観測部の一例を示す図である。
【
図7】実施例1に係るガスケットにおける荷重に対する形状変化を示す図である。
【
図8】Aは実施例2に係るガスケットを示す図であり、Bはガスケットのアウターカットを示す斜視図であり、Cはアウターカットに表れる形状変化を示す図である。
【
図9】実施例2に係るアウターカットにおける荷重に対する形状変化を示す図である。
【
図10】Aは実施例3に係るガスケットを示す図であり、Bはインナーカットを説明するための斜視図であり、Cはインナーカットに表れる形状変化を示す図である。
【
図11】実施例3に係るガスケットにおける荷重に対する形状変化を示す図である。
【
図12】実施例4に係るガスケットの形状観測の一例を示す図である。
【
図13】実施例4に係る形状観測例であって、Aは外径側と内径側の形状変化を示す図であり、Bは周方向と径方向の形状変化を示す図である。
【
図14】Aは実施例5に係るガスケットの形状を示す図であり、Bは荷重付加前の状態例を示す図であり、Cは所定値の荷重を付加した場合の状態例を示す図である。
【
図15】実施例5に係る形状観測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るフランジ締結部2を示している。
図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示が限定されるものではない。
図1では一例としてフランジ締結部2の中心でX軸、Y軸およびZ軸を記載している。
このフランジ締結部2はZ軸方向に管路4-1、管路4-2を配置している。管路4-1には管路4-2との締結手段としてフランジ6-1が形成されている。管路4-2には管路4-1との締結手段としてフランジ6-2が形成されている。
【0025】
フランジ6-1、6-2間にはガスケット8が配置されている。フランジ6-1、6-2は所定の角度間隔(たとえば、45度)で複数のボルト10を貫通させ、各ボルト10とナット12で締結している。
ガスケット8は、フランジ6-1、6-2間の封止部材であって、たとえば、PTFE(Polytetrafluoroethylene)と充填材を配合したシートガスケットである。このガスケット8はPTFE以外の樹脂やゴムを用いたガスケットでもよい。また、ガスケット8は、金属材料で構成されたものや、金属材料とセラミック、耐熱性の繊維材、その他の材料などを組み合わせたものであってもよい。さらに、ガスケット8は、うず巻き形のガスケット80(
図5)や、平板状のガスケットの表面にPTFEや黒鉛などのシートが貼付けられたもの、ガスケット表面に溝が形成されたり外縁部分に鍔部を備えたカンプロファイルガスケットなどが含まれる。
【0026】
このガスケット8には、内周側に拘束部8-1、外周側に非拘束部8-2が設定されている。拘束部8-1は、フランジ6-1、6-2の間に挟まれて拘束され、フランジ6-1、6-2との接触部であって、フランジ6-1、6-2より荷重Fを受ける領域である。この荷重Fは各ボルト10とナット12による締付け荷重である。
【0027】
非拘束部8-2は拘束部8-1と一体であるとともに、フランジ6-1、6-2の拘束を受けず、ガスケット8の周縁側の領域である。つまり、非拘束部8-2はフランジ6-1、6-2と非接触であり、フランジ6-1、6-2に拘束されておらず、フランジ6-1、6-2より荷重Fを受けない領域である。
【0028】
そして、非拘束部8-2には複数の形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4が設定されている。各形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4は、拘束部8-1が受ける荷重Fにより非拘束部8-2に現れる形状変化を観測するための領域である。この第1の実施の形態ではX軸およびY軸が成す観測面を想定し、90度間隔で設定された角度位置に任意幅の形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4が配置されている。
【0029】
<
図1のII-II線切断端面>
図2は、
図1のII-II線部の切断端面を示している。拘束部8-1は、フランジ6-1、6-2の各ガスケット座16の間に挟まれて拘束されている。これに対し、非拘束部8-2はフランジ6-1、6-2間の隙間18に突出している。ガスケット8の端部は、拘束部8-1が荷重Fを受けると、この荷重に対するひずみが非拘束部8-2に形状変化として現れる自由端であり、片持ち梁を構成している。
【0030】
<非拘束部8-2に現れる形状変化の観測>
フランジ6-1、6-2間を締結するため、ボルト10およびナット12を締付けると、ガスケット8の拘束部8-1はフランジ6-1、6-2間より荷重Fを受ける。
【0031】
この荷重Fを受けたガスケット8には拘束部8-1にひずみを生じ、このひずみが非拘束部8-2に形状変化を生じさせる。この形状変化は荷重Fに応じた変化量である。
【0032】
この形状変化は荷重Fの大きさや作用方向によって変化する。この形状変化にはフランジ6-1、6-2の間隔方向(Z軸方向)、この間隔方向に対する交差方向(X軸方向、Y軸方向)の変化が含まれる。第1の実施の形態のガスケット8の形状変化では、ガスケット8の厚さ方向、径方向または周方向の変化が含まれる。
【0033】
<ガスケット8の管理工程>
ガスケット8の管理工程は本開示の管理方法の一例である。この管理工程には拘束部8-1および非拘束部8-2の生成工程S1、荷重Fの付与工程S2、形状情報の取得工程S3、形状情報などの提示工程S4を含んでいる。各工程に付したS1~S4は、各工程の順序であり、引用する用語も便宜上使用したにすぎない。
【0034】
拘束部8-1および非拘束部8-2の生成工程S1: ガスケット8がフランジ6-1、6-2間に設置されると、フランジ6-1、6-2と接するガスケット8の部分が拘束部8-1となり、フランジ6-1、6-2に接しないガスケット8の部分が非拘束部8-2になる。つまり、ガスケット8の拘束部8-1および非拘束部8-2は、フランジ6-1、6-2間に設置されることにより生成される。
【0035】
荷重Fの付与工程S2: ガスケット8は、フランジ6-1、6-2により拘束される拘束部8-1に対し、フランジ6-1、6-2の締付けにより荷重Fが付与される。この荷重Fに応動し、拘束部8-1のひずみによって非拘束部8-2に形状変化を生じる。
【0036】
形状情報の取得工程S3: 管理サーバ24(
図3)は、非拘束部8-2に現れる形状変化を含む形状情報を取得する。
【0037】
形状情報などの提示工程S4: 管理サーバ24は、形状情報を含む提示情報を生成し、情報提示部26(
図3)により提示する。
なお、形状情報の取得工程S3で取得した形状情報にN次微分(多段階微分)を施し、形状情報の変化点を際立たせる処理を行ってもよい。この処理結果を提示工程S4で提示情報に反映させれば、形状情報の変化点を明確化できる。
【0038】
<ガスケット管理システム20>
図3は、第1の実施の形態に係るガスケット管理システム20を示している。このガスケット管理システム20は既述の管理工程を情報処理により実行するためのシステムである。
図3に示す構成は一例であり、本開示が斯かる構成に限定されるものではない。
図3において、
図2と同一部分には同一符号を付してある。
このガスケット管理システム20はひずみセンサ22、管理サーバ24および情報提示部26を備える。
【0039】
ひずみセンサ22は、非拘束部8-2に設定した形状観測部14から形状変化を計測する計測手段の一例であり、形状観測部14に生じた形状変化の変化量を表す検出信号を出力する。このひずみセンサ22には形状変化を検出して電気信号に変換する機器としてレーザー変位計、カメラなどを用いてもよい。
【0040】
レーザー変位計は、レーザー光を形状観測部14に当て、形状観測部14の形状変化を反射光で検出し、変化量を観測する。カメラは、形状観測部14を撮像し、管理サーバ24がひずみセンサ22で検出した形状変化を画素数で検出し、ひずみに相当する形状の変化情報を取得する。
【0041】
管理サーバ24は通信機能を備えるコンピュータで構成される。この管理サーバ24は、プロセッサ28、記憶部30、入出力(I/O)部32、通信部34を備える。プロセッサ28は記憶部30にあるOS(Operating System)や管理プログラムを実行し、ガスケット管理のための情報処理を行う。記憶部30にはOSや管理プログラムを格納する記憶媒体を含む。この記憶部30にはガスケット管理データベース(DB)36(
図4)が格納される。通信部34はプロセッサ28の制御により、図示していない管理端末と連係して情報の入力や提示を行う。管理端末は、形状情報の取得、ガスケット管理DB36の書込みや読取りなどにも活用される。
【0042】
また、情報提示部26は管理サーバ24の制御により、形状変化を表す変化情報に関係付けられた荷重情報や判定情報を含む管理情報を提示する。
【0043】
<管理サーバ24の情報処理>
管理サーバ24の情報処理には、
a)ひずみセンサ22の検出出力の取込み処理
b)非拘束部8-2の形状変化を含むガスケット8の形状情報の取得
c)情報提示部26による情報の提示
などの処理が含まれる。
【0044】
<ガスケット管理DB36>
図4は、ガスケット管理DB36の一例を示している。このガスケット管理DB36には、ガスケット管理ファイル38が格納されている。
このガスケット管理ファイル38には、ガスケットの管理情報の一例として、ガスケット情報部40、形状検出情報部41、時間情報部42、荷重情報部44、ひずみセンサ情報部46、検出情報部48、履歴情報部50が設定されている。
【0045】
ガスケット情報部40には、ガスケット8の識別情報の他、ガスケット8を特定するための仕様情報が格納される。
【0046】
形状検出情報部41には、形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4に関する情報たとえば、実施例1(
図6)、実施例2(
図8)、実施例3(
図10)などの形態、配置位置などの形状観測部情報が格納される。
【0047】
時間情報部42には観測日時など、時間情報が格納される。
【0048】
荷重情報部44には、ボルト10の締め付けによりフランジ6-1、6-2間に加えられる荷重F、その負荷条件などの荷重情報が格納される。
【0049】
ひずみセンサ情報部46には、形状変化を観測するセンサの種別などが格納される。
【0050】
検出情報部48には、形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4からひずみセンサ22が取得した検出値が格納される。
【0051】
履歴情報部50には、形状変化や荷重などの観測や情報提示などの履歴情報が格納される。
【0052】
<第1の実施の形態の効果>
この第1の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0053】
(1) ガスケット8の形状変化は、ガスケット8がフランジ6-1、6-2間より受ける荷重によって生じ、ガスケット8の締付け状態を表している。そこで、ガスケット8の形状観測部14によりその形状変化を観測することでガスケット8の締付け状態を把握し、締付け状態を管理できる。
【0054】
(2) ガスケット8の形状変化はフランジ6-1、6-2間にあるガスケット8によるフランジ6-1、6-2間の密閉性を表しており、この形状変化をガスケット自体から直に観測すれば、フランジ6-1、6-2間の密閉性を容易に評価することができる。
【0055】
(3) 従前のボルトのトルク値や軸力値による管理に比較し、従事者の技量に依存することなくガスケット8の締付け管理精度を高めることができる。
【0056】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態に係るガスケット8の管理方法は、第1の実施の形態の管理方法にさらに、変曲点情報による推定工程S5を含んでいる。
変曲点情報による推定工程S5では、形状情報が特定の荷重Fによる形状変化の変曲点情報を含み、管理サーバ24は、該変曲点からガスケット8に付与すべき荷重Fを算定できる。
【0057】
変曲点はガスケット8のたとえば、周方向の形状変化が大きく変化する状態を表し、極小点を含む。極小点は形状変化の変化方向が変わる点であり、たとえば、圧縮状態から伸長(引張)状態、または伸長(引張)状態から圧縮状態への移行点である。
【0058】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0059】
(1) 形状情報から形状変化の特異情報として変曲点情報を取得できる。
【0060】
(2) この変曲点情報をガスケット8に付加すべき荷重Fに対応付けることにより、形状情報から変曲点情報を確認することで、ガスケット8に対する荷重の最適化を実現できる。
【0061】
(3) ガスケット8に対する荷重設定や荷重調整を容易化できる。
【0062】
〔第3の実施の形態〕
図5は、第3の実施の形態に係るガスケット管理システム20を示している。
図5に示す構成は一例であり、本開示の技術が斯かる構成に限定されるものではない。
【0063】
このガスケット管理システム20は、フランジ6-1、6-2間に配置されており、フランジ6-1、6-2から受けた荷重Fによる形状変化の観測対象として、うず巻き形のガスケット80が用いられる。このガスケット80は、たとえば
図5に示すように、径の異なる複数の部材が同軸上に配置された積層体であって、外輪801、ガスケット本体802、内輪803を備える。
【0064】
外輪801、内輪803は、たとえばステンレスや炭素鋼やチタンなどの金属材料が用いられており、所定厚さの円環またはそれに近い形状に形成されている。
【0065】
ガスケット本体802は、たとえば金属材料で形成された薄板状の部材と、黒鉛やフッ素樹脂などの緩衝材(フィラー)の積層体を外輪801の内壁面と内輪803の外壁面との間でうず巻き状に巻回して構成されている。ガスケット本体802を構成する積層体は、たとえば断面が「V」形状、またはそれに近い波形に形成されている。この積層体は、たとえば端面が外輪801、内輪803に対してスポット溶接によって固着している。
【0066】
ガスケット80には、たとえばフランジ締結部2において、内輪803のみまたは内輪803とガスケット本体802の一部または全部、外輪801の一部がガスケット座16(
図2)と当接して荷重Fを受ける拘束部8-1となればよい。つまり、ガスケット80は、外輪801の一部または全部が非拘束部8-2となる。ガスケット80は、フランジ6-1、6-2からの荷重Fに応じてガスケット本体802が変形するとともに、この変形を受けて外輪801にひずみが生じる。
【0067】
このガスケット管理システム20では、たとえば非拘束部8-2である外輪801の一部に形状観測部14を設定し、この外輪801に生じるひずみなどの形状変化をひずみセンサ22によって計測する。そしてガスケット管理システム20は、形状変化の変化量を利用してガスケット80に付加される荷重Fやガスケットの締付け状態を把握する。ガスケット80の締付け状態の管理処理については、上記実施形態と同様の処理を行えばよい。
【0068】
<第3の実施の形態の効果>
第3の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
【0069】
(1) 第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0070】
(2) うず巻き形のガスケット80を用いる場合でも、フランジ6-1、6-2との非拘束部8-2の形状変化を計測することで締付け状態を把握することができる。
【実施例】
【0071】
<実施例1>
図6のAは、実施例1に係るガスケット8を示している。この実施例1では、拘束部8-1および非拘束部8-2が同一幅またはほぼ同一幅で同心円状に設定されている。拘束部8-1はガスケット8上の同一平面であり、既述のフランジ6-1、6-2のガスケット座16との当接部分として自動的に決定される領域でよく、非拘束部8-2はガスケット座16から外れた領域とすればよい。
【0072】
図6のBは、複数の形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4を配置したガスケット8を示している。各形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4は非拘束部8-2に中心角度90度の角度間隔で配置されている。θは形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4が設定される角度範囲を示している。各形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4の配置位置は、ボルト10の配置位置に重ならない位置に設定してよいが、これに限定されない。
【0073】
図7は、横軸に荷重〔kN〕、縦軸にひずみ(形状変化)を取り、角度=0(deg)、45(deg)、90(deg)をパラメータとし、実施例1に係るガスケット8に現れる形状変化をひずみセンサ22で計測した計測値で示している。
【0074】
m1は0(deg)方向(=ガスケット8の円周方向)のガスケット8の変形、m2は45(deg)方向のガスケット8の変形、m3は90(deg)方向(=ガスケット8の厚さ方向)の変形を示している。
【0075】
このようにフランジ6-1、6-2から拘束部8-1が荷重Fを受けると、非拘束部8-2には荷重Fに応じた形状変化を生じる。
この形状変化には変曲点が生じており、ガスケット8に加える荷重Fと、形状変化の変曲点の関係から最適な荷重Fを特定し、初期締結完了の判断情報に利用できる。
【0076】
<実施例2>
図8のAは、実施例2に係るガスケット8を示している。この実施例2では、実施例1と同様に、拘束部8-1および非拘束部8-2が同一幅またはほぼ同一幅で同心円状に設定されている。
【0077】
非拘束部8-2には各形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4にアウターカット54が形成されている。このアウターカット54は、ガスケット8の非拘束部8-2の最外縁部に形成され、一部に非閉鎖部を持つ切欠き形状である。
【0078】
実施例2では、ガスケット8に複数のアウターカット54が形成されており、各アウターカット54は非拘束部8-2に中心角度90度の角度間隔で配置されている。
【0079】
このアウターカット54はたとえば、
図8のBに示すように、ガスケット8の周囲面から中心方向に向かって一定の長さL1だけ切り込まれた一定幅W1の溝であり、ガスケット8の上下面に貫通している。つまり、アウターカット54は、ガスケット8の内側に垂直面部56、一定幅W1で対向する平行面部58、60を有する。
【0080】
このようなアウターカット54を備えるガスケット8の拘束部8-1にフランジ6-1、6-2から荷重Fが加わると、
図8のCに示すように、荷重Fに応じて、垂直面部56は矢印aで示すように広がるとともに周縁方向に変位する。また、各平行面部58、60は、矢印b、cで示すように周縁方向に拡開する。このとき、ガスケット8の縁面は矢印dで示すように、外側に伸出する。
【0081】
このような形状変化は、ひずみセンサ22で容易に検出することができる。なお、アウターカット54の空間部分に金属や樹脂などのセンサ部材を設置し、このセンサ部材からアウターカット54の形状変化を取り出してもよい。
【0082】
図9は、横軸に荷重〔kN〕、縦軸にアウターカット54の開き幅(形状変化)〔mm〕を取り、実施例2に係るガスケット8に現れる形状変化と荷重の関係を示している。同様に、表1はアウターカット54の開き幅W2と荷重Fの関係を示している。
【0083】
【0084】
フランジ6-1、6-2から拘束部8-1が荷重Fを受け、拘束部8-1の荷重Fが増加すると、その荷重Fに対する形状変化を表すアウターカット54の開き幅W2が増大する。この形状変化には変曲点が生じている。したがって、実施例2を用いる場合には形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4に現れる形状変化の変曲点をターゲットにすれば、形状変化と荷重Fとの関係を特定することができる。
【0085】
<実施例3>
図10のAは、実施例3に係るガスケット8を示している。この実施例3では、実施例1、2と同様に、拘束部8-1および非拘束部8-2が同一幅またはほぼ同一幅で同心円状に設定されている。
【0086】
非拘束部8-2には各形状観測部14-1、14-2、14-3、14-4にインナーカット62が形成されている。このインナーカット62は、ガスケット8の非拘束部8-2内に形成された貫通口部である。
【0087】
各インナーカット62は非拘束部8-2に中心角度90度の角度間隔で配置されているが、これに限定されない。
【0088】
このインナーカット62は
図10のBに示すように、ガスケット8の周縁部と同心円状で一定幅W
3の円弧状の溝部であり、ガスケット8の上下面に貫通している。つまり、インナーカット62は、ガスケット8の内側に垂直面部64、66、一定の長さL2および幅W3で対向する同心円状の円弧部68、70を有する。
【0089】
このようなインナーカット62を備えるガスケット8の拘束部8-1にフランジ6-1、6-2から荷重Fが加わると、
図10のCに示すように、荷重Fに応じて、矢印e、fで示すように、各円弧部68、70の距離が縮まり、ガスケット8の縁面は矢印gで示すように、外側に伸出する。このような形状変化は、ひずみセンサ22で容易に検出することができる。
【0090】
なお、インナーカット62の空間部分に金属や樹脂などのセンサ部材を設置し、このセンサ部材からインナーカット62の形状変化を取り出してもよい。
【0091】
図11は、横軸に荷重〔kN〕、縦軸にインナーカット62のひずみ(形状変化)を取り、実施例3に係るガスケット8に現れる形状変化と荷重の関係を示している。
【0092】
フランジ6-1、6-2から拘束部8-1が荷重Fを受け、拘束部8-1に対する荷重Fが増加すると、その荷重Fの変化を表すインナーカット62の形状が変化する。この形状変化には変曲点に含まれる極小点が生じており、この実施例3においても、斯かる極小点をターゲットにして形状変化と荷重Fの関係を特定することができる。この極小点は、既述したように、ガスケット8の非拘束部8-2に現れる形状変化の変化方向が変わる点であり、つまり、インナーカット62が圧縮状態から伸長(引張)状態、または伸長(引張)状態から圧縮状態への移行点である。
【0093】
したがって、実施例3によれば、荷重Fと形状変化の関係では、周方向の形状変化によって極小点が顕著に現れるが、極小点=変曲点の場合もある。また、周方向の形状変化によって極小点ではなく、つまり、周方向の形状変化が大きく変化する変曲点が生じる場合もある。
【0094】
<形状情報の変曲点の検出および締付け基準>
実施例1、実施例2、実施例3に示すように、特定の荷重Fに対応する形状情報に変曲点を生成させることができる。これにより、フランジ6-1、6-2の締付け時、形状情報の変曲点から特定の荷重Fを推測でき、締付け完了の判断基準とすることができる。
【0095】
<実施例1、2、3の比較>
【0096】
【0097】
表2は、実施例1(=アウターカット54およびインナーカット62:なし)、実施例2(=アウターカット54)、実施例3(=インナーカット62)について、形状、その形状変化、変曲点を示している。
【0098】
実施例1は、アウターカット54およびインナーカット62を加工していない。
実施例2は、幅W1=1mm、長さL1=3mmのアウターカット54を形成した。
実施例3-1は、インナーカット62について、幅W3=1mm、長さL2=30mmに設定した。
実施例3-2は、幅W3=2mm、長さL2=30mmに設定した。
実施例3-3は、幅W3=1mm、長さL2=50mmに設定した。
【0099】
実施例1では周方向の形状変化から変曲点荷重=140kNが得られ、極小点荷重は得られていない。
実施例2では周方向の形状変化から変曲点荷重=125kNが得られ、極小点荷重は得られていない。
実施例3-1では周方向の形状変化から変曲点荷重=135kNが得られ、極小点荷重=135kNが得られた。
実施例3-2では周方向の形状変化から変曲点荷重=115kNが得られ、極小点荷重=115kNが得られた。
実施例3-3では周方向の形状変化から変曲点荷重=120kNが得られ、極小点荷重=120kNが得られた。
【0100】
<実施例1、2、3の効果>
このような実施例1、2、3から明らかなように、アウターカット54では側面からカット形状の開き幅W2を測定することで、適正な荷重Fを推定することができる。アウターカット54を形状検出に用いる場合には、予めガスケット8に加える荷重Fごとにアウターカット54の開き幅W2を計測し、その開き幅W2と実測値を比較して荷重Fを推定することができる。この推定は、荷重Fごとにアウターカット54の開き幅W2をデータベース化し、形状変化の実測値との対比で荷重Fを容易にしかも正確に算定することができる。
【0101】
インナーカット62では、フランジ6-1、6-2に荷重Fを受け、貫通孔状のインナーカット62の内壁面が閉じること(接触し)で顕著な変化が得られる。
【0102】
このような形状変化の監視や計測ではトルク管理やボルト軸力の測定と異なり、非拘束部8-2の形状変化(実施例1)、アウターカット54の形状変化(実施例2)、インナーカット62の形状変化(実施例3)を計測し、ガスケット8から荷重Fを表す変化を取得できる。このため、ボルト10やフランジ6-1、6-2の影響を受けることなく、フランジ6-1、6-2に加えられる荷重Fをガスケット8の形状変化から推定できる。
【0103】
アウターカット54やインナーカット62の加工形状について、ガスケット8も様々な口径や厚さに対応できることが確認された。
【0104】
<実施例4>
図12は、実施例4に係るガスケット80の構成例を示している。この実施例4では、たとえばうず巻き形のガスケット80のうち少なくとも外輪801が非拘束部8-2を構成している。この実施例4では、ガスケット80の外輪801の外縁側や内縁側であって円周方向に伸縮する形状変化Qa、Qbや、ガスケット80の径方向に伸縮する形状変化Rを計測対象としている。
【0105】
<周方向の形状変化Qa、Qbの計測>
図13のAは、横軸に荷重〔kN〕、縦軸に周方向のひずみ(形状変化)をとり、外輪801の外縁に現れる形状変化Qaと内縁に現れる形状変化Qbをひずみセンサ22で計測した計測値を示している。
【0106】
外輪801には、内縁側のひずみが外縁側のひずみよりも大きな値となっている。すなわち、外輪801は、内縁側が大きく形状変化することから、荷重Fによるガスケット80、もしくはガスケット本体802の変化の挙動を検知し易い。
【0107】
<周方向の形状変化Qbと、径方向の形状変化Rの計測>
図13のBは、横軸に荷重〔kN〕、縦軸にひずみ(形状変化)をとり、外輪801の内縁に現れる周方向の形状変化Qbと径方向に現れる形状変化Rをひずみセンサ22で計測した計測値を示している。
【0108】
この計測結果から、周方向の形状変化Qbでは、ガスケット面圧が増加するに従って計測値が正の方向に増加していることから、引張り方向の力が作用していることが把握できる。また、径方向の形状変化Rでは、ガスケット面圧の増加に従って計測値が負の方向に大きくなっていることから、圧縮状態となっていることが把握できる。
【0109】
<実施例5>
図14のAは、実施例5に係るガスケット80の構成例を示している。この実施例5では、たとえば少なくとも外輪801が非拘束部8-2を構成している。この実施例5では、ガスケット80の外輪801の一部に外周に沿って所定長さのインナーカット82が形成されている。このインナーカット82は、ガスケット8の非拘束部8-2内に形成された貫通口部である。このインナーカット82は、たとえば外輪801の外縁部から所定距離tとして5〔mm〕の位置に形成されている。この実施例5では、たとえばインナーカッ
ト82の形成位置に沿った外縁部分に、形状観測部14を設けている。
【0110】
この外輪801は、たとえば
図14のBに示すように、フランジ6-1、6-2からの荷重Fがガスケット本体802に付加される前は、所定の幅としてたとえば0.1〔mm〕
でインナーカット82aが開口している。そして、ガスケット本体802を通じて荷重Fが作用すると、外輪801は、たとえば
図14のCに示すように、開口部分の一部または全部が変形し、閉塞したインナーカット82bとなる。実施例5では、荷重Fによるガスケット面圧とインナーカット82bの状態のときの外輪801の形状変化Qcを計測する。
【0111】
図15は、横軸に荷重〔kN〕、縦軸にひずみ(形状変化)をとり、外輪801のインナーカット82bの形成位置に対応した外縁に現れる周方向の形状変化Qcをひずみセンサ22で計測した計測値を示している。
【0112】
この計測結果において、ガスケットに係る荷重が増加した場合、たとえば加重し始めてから所定の値まではひずみに大きな変化が無く、その後荷重が所定の値を超えると、ひずみセンサーにおいて負の値が計測されている。これは、たとえば外輪801の外縁部が周方向に圧縮されたことを示す形状変化が生じている。そして周方向のひずみは、たとえば荷重が220kN付近で極小点が現れた後、正方向に値が増加していく。
【0113】
<実施例4、5の効果>
実施例4、5によれば、以下のような効果が期待できる。
【0114】
(1) フランジ6-1、6-2間に挟んだうず巻き形のガスケット80の外輪801の形状変化を計測することで、荷重Fによるガスケット80の面圧を把握できる。
【0115】
(2) うず巻き形のガスケット80では、巻回状に形成されたガスケット本体802の形状的特徴により、外輪801の計測位置に応じてひずみの状態に相違点があり、ガスケットの状態や荷重の状態を詳細に把握することが可能となる。
【0116】
(3) うず巻き形のガスケット80は、ガスケット本体802と外輪801とが別部材であることから、単一部材で構成されたシートガスケットに比べて、フランジ6-1、6-2からの荷重Fに対し、非拘束部8-2に生じるひずみの形成傾向が異なるが、フランジ6-1、6-2から加えられる荷重Fをガスケット80の形状変化から推定できる。
【0117】
(4) うず巻き形のガスケット80に形成したインナーカット82は、フランジ6-1、6-2からの荷重Fにより開口部が閉塞することで、外輪801に生じるひずみに顕著な変化が得られる。
【0118】
(5) うず巻き形のガスケット80を用いたフランジ締結部2では、形状変化の監視や計測ではトルク管理やボルト軸力の測定と異なり、外輪801に生じる形状変化Qa、Qb、R(実施例4)や、インナーカット82の形状変化(実施例5)を計測することで、ガスケット8から荷重Fを表す変化を取得できる。このため、ボルト10やフランジ6-1、6-2の影響を受けることなく、フランジ6-1、6-2に加えられる荷重Fをガスケット80の形状変化から推定できる。
【0119】
〔他の実施の形態〕
(1) アウターカット54について、実施例2では垂直面部56および平行面部58、60を例示しているが、これらは一例である。アウターカット54は、垂直面部56を有しない形状や、平行面部58、60を非平行としたたとえば、V字形状であってもよい。
【0120】
(2) インナーカット62について、実施例3では同心円状の円弧部68、70を例示しているが、これらは一例である。インナーカット62は、円弧部68、70が一定幅としない形状であってもよいし、円弧状に代えて平行面または非平行面としてもよい。
【0121】
(3) ガスケット8の管理工程のうち形状情報などの提示工程(S4)において、管理サーバ24で、取得した形状情報を多段階微分などの処理により提示情報を生成してもよく、情報提示部26(
図3)に変化点を明示する表示部を提示してもよい。
【0122】
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態等について説明した。本開示は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示のガスケットの管理の方法、システムおよびプログラムによれば、フランジ間を締結するボルトの軸力やトルク値を計測することなく、フランジから受ける荷重によるガスケットの形状変化を観測し、ボルトやフランジの締付け状態の影響を受けることなく、形状情報からガスケットに対する荷重を算定でき、ガスケット交換などの管理情報に活用できるなど、有益である。
【符号の説明】
【0124】
2 フランジ締結部
4-1、4-2 管路
6-1、6-2フランジ
8、80 ガスケット
8-1 拘束部
8-2 非拘束部
10 ボルト
12 ナット
14、14-1、14-2、14-3、14-4 形状観測部
16 ガスケット座
18 隙間
20 ガスケット管理システム
22 ひずみセンサ
24 管理サーバ
26 情報提示部
28 プロセッサ
30 記憶部
32 入出力(I/O)部
34 通信部
36 ガスケット管理データベース(DB)
38 ガスケット管理ファイル
40 ガスケット情報部
41 形状検出情報部
42 時間情報部
44 荷重情報部
46 ひずみセンサ情報部
48 検出情報部
50 履歴情報部
54 アウターカット
56 垂直面部
58、60 平行面部
62、82 インナーカット
64、66 垂直面部
68、70 円弧部
801 外輪
802 ガスケット本体
803 内輪