(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハ製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250408BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/46
(21)【出願番号】P 2021213118
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅之
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和宏
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027049(JP,A)
【文献】特開2013-042092(JP,A)
【文献】特開2015-092526(JP,A)
【文献】特開2010-141060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャルウェーハ製造装置のチャンバ内にウェーハを搬入し、前記ウェーハ上にエピタキシャル膜を成長させてエピタキシャルウェーハとし、前記チャンバ外に前記エピタキシャルウェーハを搬出するエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回実行した後に、チャンバ内をクリーニングするエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記エピタキシャル膜の成長中に、第一加熱装置によりサセプターに支持された前記ウェーハを加熱するとともに、前記サセプターの外縁部を第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定し、測定された温度に基づいて前記サセプターの外縁部を第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記サセプターの外縁部の温度を測定し、前記ウェーハの中心部の温度と前記サセプターの外縁部の温度との温度差がウェーハ間で変化しないように前記サセプターの外縁部を前記第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
予め設定した加熱条件に基づいて前記サセプターの外縁部を前記第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項5】
エピタキシャルウェーハ製造装置のチャンバ内にウェーハを搬入し、前記ウェーハ上にエピタキシャル膜を成長させてエピタキシャルウェーハとし、前記チャンバ外に前記エピタキシャルウェーハを搬出するエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回実行した後に、チャンバ内をクリーニングするエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記エピタキシャル膜の成長中に、第一加熱装置によりサセプターに支持された前記ウェーハを加熱するとともに、前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定し、測定された温度に基づいて前記ウェーハの外周部を第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記ウェーハの外周部の温度を測定し、前記ウェーハの中心部の温度と前記ウェーハの外周部の温度との温度差がウェーハ間で変化しないように前記ウェーハの外周部を加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
予め設定した加熱条件に基づいて前記ウェーハの外周部を前記第二加熱装置により加熱するエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項8】
サセプターに支持されたウェーハを加熱する第一加熱装置と、
前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定する温度測定装置と、
前記サセプターの外縁部を加熱する第二加熱装置と、
エピタキシャル膜の成長中に、前記温度に基づいて前記第二加熱装置を制御する制御装置と、を備えるエピタキシャルウェーハ製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載のエピタキシャルウェーハ製造装置であって、
前記第二加熱装置は、レーザー加熱装置であるエピタキシャルウェーハ製造装置。
【請求項10】
サセプターに支持されたウェーハを加熱する第一加熱装置と、
前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定する温度測定装置と、
前記ウェーハの外周部を加熱する第二加熱装置と、
エピタキシャル膜の成長中に、前記温度に基づいて前記第二加熱装置を制御する制御装置と、を備えるエピタキシャルウェーハ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ上にエピタキシャル膜を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ上にエピタキシャル膜を成長させるエピタキシャルウェーハ製造装置として、原料ガスをチャンバ内に導入し、この原料ガスの熱分解または還元により生成された原料を高温に加熱されたウェーハ上にエピタキシャル膜として気相成長させる装置が知られている。
【0003】
エピタキシャル成長の際は、転位や単結晶の原子レベルの歪みなどの欠陥が生じないように、厳密な温度管理がなされる。
特許文献1には、エピタキシャルウェーハの外周部の温度を計測する工程と、サセプターの温度を計測する工程とを有し、エピタキシャルウェーハの外周部の温度とサセプターの温度との差が所定の範囲内となるように、サセプターまたはエピタキシャルウェーハを加熱することによって、エピタキシャルウェーハとサセプターとの接触部における転位発生を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エピタキシャルウェーハの製造方法では、チャンバ内へのウェーハの搬入、エピタキシャル膜の成長、およびウェーハの搬出を行った後に、チャンバ内のクリーニングを行うことが一般的である。
一方、ウェーハの搬出の度にクリーニングを行うとトータル製造コストの点で不利となるため、ウェーハの搬入、エピタキシャル膜の成長、およびウェーハの搬出からなるエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回繰り返した後に、クリーニングを行うマルチウェーハデポジションプロセスも知られている。すなわち、マルチウェーハデポジションプロセスによるエピタキシャルウェーハの製造方法では、クリーニングの頻度を低くして、コスト低減を図っている。
しかしながら、マルチウェーハデポジションプロセスで特許文献1の技術を適用すると、厳密な温度管理を行ってもウェーハに歪みが生じるという不具合があった。
【0006】
本発明は、マルチウェーハデポジションプロセスによるエピタキシャルウェーハの製造において、ウェーハの歪みを抑制することができるエピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、マルチウェーハデポジションプロセスによるエピタキシャルウェーハの製造においてウェーハに歪みが生じる原因は、エピタキシャル膜の成長時にサセプターの外縁部に堆積するポリシリコンなどの副生成物によりサセプターの外縁部の温度が変化することであると考え、この副生成物の堆積を考慮した製造方法および製造装置とすることによってウェーハの歪みを防止することができる本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、エピタキシャルウェーハ製造装置のチャンバ内にウェーハを搬入し、前記ウェーハ上にエピタキシャル膜を成長させてエピタキシャルウェーハとし、前記チャンバ外に前記エピタキシャルウェーハを搬出するエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回実行した後に、チャンバ内をクリーニングするエピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記エピタキシャル膜の成長中に、第一加熱装置によりサセプターに支持された前記ウェーハを加熱するとともに、前記サセプターの外縁部を第二加熱装置により加熱することを特徴とする。
【0009】
上記エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定し、測定された温度に基づいて前記サセプターの外縁部を第二加熱装置により加熱することが望ましい。
【0010】
上記エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記サセプターの外縁部の温度を測定し、前記ウェーハの中心部の温度と前記サセプターの外縁部の温度との温度差がウェーハ間で変化しないように前記サセプターの外縁部を前記第二加熱装置により加熱することが望ましい。
【0011】
上記エピタキシャルウェーハの製造方法であって、予め設定した加熱条件に基づいて前記サセプターの外縁部を前記第二加熱装置により加熱してもよい。
【0012】
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、エピタキシャルウェーハ製造装置のチャンバ内にウェーハを搬入し、前記ウェーハ上にエピタキシャル膜を成長させてエピタキシャルウェーハとし、前記チャンバ外に前記エピタキシャルウェーハを搬出するエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回実行した後に、チャンバ内をクリーニングするエピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記エピタキシャル膜の成長中に、第一加熱装置によりサセプターに支持された前記ウェーハを加熱するとともに、前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定し、測定された温度に基づいて前記ウェーハの外周部を第二加熱装置により加熱することを特徴とする。
【0013】
上記エピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記ウェーハの外周部の温度を測定し、前記ウェーハの中心部の温度と前記ウェーハの外周部の温度との温度差がウェーハ間で変化しないように前記ウェーハの外周部を加熱してもよい。
【0014】
上記エピタキシャルウェーハの製造方法であって、予め設定した加熱条件に基づいて前記ウェーハの外周部を前記第二加熱装置により加熱してもよい。
【0015】
本発明のエピタキシャルウェーハ製造装置は、サセプターに支持されたウェーハを加熱する第一加熱装置と、前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定する温度測定装置と、前記サセプターの外縁部を加熱する第二加熱装置と、前記温度に基づいて前記第二加熱装置を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記エピタキシャルウェーハ製造装置であって、前記第二加熱装置は、レーザー加熱装置であることが望ましい。
【0017】
本発明のエピタキシャルウェーハ製造装置は、サセプターに支持されたウェーハを加熱する第一加熱装置と、前記ウェーハの外周部または前記サセプターの外縁部の温度を測定する温度測定装置と、前記ウェーハの外周部を加熱する第二加熱装置と、前記温度に基づいて前記第二加熱装置を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかるエピタキシャルウェーハ製造装置の概略図である。
【
図2】本発明の第一実施形態にかかるエピタキシャルウェーハ製造装置のサセプターの断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態にかかるエピタキシャルウェーハの製造方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の第一実施形態にかかるエピタキシャル膜形成工程のフローチャートである。
【
図5】本発明の第二実施形態にかかるエピタキシャルウェーハ製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態にかかるエピタキシャルウェーハ製造装置の概略図である。
図1に示すように、エピタキシャルウェーハ製造装置1は、ウェーハWを1枚ずつ処理する枚葉式であり、装置本体2と、制御装置3と、ウェーハ搬送機構4とを備えている。
ウェーハWとしては、例えば、シリコンウェーハ、GaAsウェーハ、InPウェーハ、ZnSウェーハ、ZnSeウェーハ、あるいは、SOIウェーハがある。
【0020】
装置本体2は、ウェーハWが収容されるチャンバ11と、チャンバ11内においてウェーハWをその下面側から水平に支持するサセプター12と、支持部材駆動機構23と、ガス供給装置29とを備えている。サセプター12は、サセプター支持部材13により回転自在に支持されている。
【0021】
チャンバ11は、環状のベース31と、収容したウェーハWの上方を覆う上部ドーム32と、ウェーハWの下方を覆う下部ドーム33とを備えている。
ベース31には、水平方向で対向する位置に、チャンバ11内部にガスGを導入するガス導入口31Aと、チャンバ11外部にガスGを排出するガス排出口31Bとが形成されている。
【0022】
ガス供給装置29は、ガス導入口31Aから、チャンバ11内の上側空間にキャリアガス(例えば、水素(H2))と共に原料ガス(例えば、トリクロロシラン(SiHCl3))、必要に応じてドーパントガス(例えば、ジボラン(B2H6))を導入する。これらのガスはガス排出口31Bから排出される。
【0023】
ベース31の内側には、サセプター12および導入されたガスGを予熱するヒートリング19が取り付けられている。ヒートリング19は、トリクロロシランがウェーハWと接触する前に、サセプター12およびトリクロロシランを予熱する。これにより、成膜前および成膜中のウェーハWの熱均一性が向上し、エピタキシャル膜の均一性が向上する。また、ヒートリング19は、ガスGがチャンバ11の下部へ回り込むことを抑制する。
ヒートリング19は、例えば、炭化珪素(SiC)で被覆された炭素基材で形成することができる。
【0024】
下部ドーム33の中央には、下方に延びる筒体33Aが形成されている。筒体33A内には、サセプター12を支持するサセプター支持部材13を構成する内主柱51および内主柱51の外周に軸方向摺動自在に配置されてリフトピン支持部材22の一部を構成する外主柱61が挿通されている。外主柱61の上端には外アーム62が設けられている。
【0025】
ベース31は、例えば、ステンレスにより形成することができる。上部ドーム32および下部ドーム33は、例えば、チャンバ11内のウェーハWやサセプター12を加熱する上部ランプ24(第一加熱装置)および下部ランプ25(第一加熱装置)からの赤外線などの熱線を遮らない透明石英により形成することができる。
【0026】
サセプター12は、チャンバ11内でウェーハWが載置される円板状の部材である。
図2に示すように、サセプター12の上面の最外周部には環状の外縁部14が形成され、外縁部14の内周側が円形の凹部15となっている。凹部15は、ウェーハWを収容するために、ウェーハWの直径よりもわずかに大きい直径で形成されている。凹部15の最外周部には、凹部15の底面よりも上方に突出する突出部16が設けられている。突出部16は、ウェーハWの外縁部を支持する。サセプター12は、例えば、炭化珪素で被覆された炭素基材で形成することができる。
【0027】
図1に示すように、サセプター支持部材13は、円柱状の内主柱51と、内主柱51の先端から放射状に延びる複数本のアーム52によりサセプター12を支持する。
【0028】
リフトピン21は、円柱状の軸部と、軸部の上端に設けられ、上方に向かうにしたがって径が大きくなる円錐台状の頭部とを備えている。リフトピン21は、頭部がサセプター12に支持される。
リフトピン21は、例えば、炭化珪素、石英、炭素基材、ガラス状カーボン、あるいは、炭化珪素で被覆された炭素基材で形成することができる。
各々のリフトピン21は、上下に摺動する際に下端がリフトピン支持部材22により支持される。
【0029】
リフトピン支持部材22は、円筒状の外主柱61と、外主柱61の先端から放射状に延びる複数本の外アーム62と、各々の外アーム62の先端にそれぞれ設けられた当接部63とを備えている。各々の当接部63は、対応するリフトピン21を動かす際に下端に当接して支持する。
【0030】
支持部材駆動機構23は、サセプター支持部材13を回転させたり、リフトピン支持部材22を昇降させたりする。
【0031】
チャンバ11の上方であってウェーハWの中心の上方には、第一パイロメーター28Aが取り付けられている。第一パイロメーター28Aは、ウェーハWからの熱放射を感知し、ウェーハWの表面温度を非接触で測定する。
チャンバ11の上方には、ウェーハWおよびサセプター12を上方から加熱する上部ランプ24が設けられている。
【0032】
チャンバ11の下方には第二パイロメーター28Bが取り付けられている。第二パイロメーター28Bは、サセプター12の中心部の温度を非接触で測定する。
チャンバ11の下方には、サセプター12を下方から加熱するための下部ランプ25が設けられている。
【0033】
上部ランプ24および下部ランプ25は、横置きタイプの複数の上部ハロゲンランプ71および複数の下部ハロゲンランプ72からなり、リング状に配列されている。なお、上部ランプ24および下部ランプ25の配列方法はこれに限ることはなく、例えば、下方からの加熱量を増やすために、リング状に配列された下部ハロゲンランプ72の内側に、さらにハロゲンランプをリング状に配列してもよい。
【0034】
第一パイロメーター28Aおよび第二パイロメーター28Bとは別に、チャンバ11の上方には、サセプター12の外縁部14の温度を測定する第三パイロメーター28C(温度測定装置)が取り付けられている。第三パイロメーター28Cは、上部ランプ24との干渉を避けるためにサセプター12の外縁部14の直上には配置されておらず、上部ランプ24の内側に配置されている。第三パイロメーター28Cは、上部ランプ24の外側に配置してもよい。
【0035】
さらに、チャンバ11の上方には、サセプター12の外縁部14を加熱するための補助加熱装置27(第二加熱装置)が設けられている。補助加熱装置27は、サセプター12の外縁部14を加熱するように方向付けられている。
補助加熱装置27は、指向性があり、レンズの集光作用により直径10mm程度の小さいポイントを集中して加熱することができる装置が好ましく、例えば、YAGレーザーやYLFレーザーなどのレーザー加熱装置を採用することができる。補助加熱装置27としては、赤外線による放射熱で加熱を行う加熱装置も採用することができる。
本実施形態の装置本体2では、第三パイロメーター28Cおよび補助加熱装置27はそれぞれ1つ設けられている。第三パイロメーター28Cおよび補助加熱装置27はサセプター12の外縁部14上の一点に向けて方向付けられているが、サセプター12が回転することにより、外縁部14の周方向の全周にわたって測定、加熱することができる。なお、第三パイロメーター28Cおよび補助加熱装置27は複数設けてもよい。また、補助加熱装置27は、チャンバ11の下部側に設けてもよい。
【0036】
制御装置3は、ウェーハ搬送機構4、支持部材駆動機構23、上部ランプ24、下部ランプ25、補助加熱装置27、およびガス供給装置29を制御する。
【0037】
制御装置3の記憶装置には、エピタキシャルウェーハを製造するためのプロセスシーケンスおよび制御パラメーター(温度、圧力、ガスの種類およびガスの流量、成膜時間などの制御目標値)に関する製造プログラムが記憶されており、温度(特に、チャンバ11内のウェーハWの設定温度)を管理するためのプロセスシーケンスおよびデータ(成長温度のキャリブレーションカーブなど)も含まれる。
【0038】
制御装置3は、エピタキシャルウェーハの製造時においては製造プログラムを記憶装置から読み出し、ウェーハ搬送機構4、支持部材駆動機構23、上部ランプ24および下部ランプ25並びにガス供給装置29を制御する。
【0039】
制御装置3は、温度管理時においては製造プログラムを記憶装置から読み出し、製造プログラムおよび測定データに基づいて、温度(特に、チャンバ11内のウェーハWの設定温度)を管理する。
【0040】
ウェーハ搬送機構4は、チャンバ11の図示しないウェーハ搬入出口を介して、ウェーハWをチャンバ11内に搬入し、チャンバ11内から搬出する。
【0041】
〔エピタキシャルウェーハの製造方法〕
次に、エピタキシャルウェーハ製造装置1を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法について説明する。
エピタキシャルウェーハの製造方法は、エピタキシャルウェーハ製造装置1を用い、複数のウェーハWに順次エピタキシャル膜を成長させる方法である。
【0042】
図3に示すように、エピタキシャルウェーハの製造方法は、複数のウェーハWを準備するウェーハ準備工程S1と、ウェーハWを搬入するウェーハ搬入工程S2と、ウェーハWにエピタキシャル膜Eを形成するエピタキシャル膜形成工程S3と、ウェーハWを搬出するウェーハ搬出工程S4と、チャンバ11内をクリーニングするクリーニング工程S5と、準備した全てのウェーハWについてエピタキシャル膜Eを成長させたか(終了か否か)を判定する判定工程S6とを有する。
ここで、ウェーハ搬入工程S2、エピタキシャル膜形成工程S3、およびウェーハ搬出工程S4の3つの工程をエピタキシャルウェーハ製造工程と呼ぶ。
【0043】
本実施形態のエピタキシャルウェーハの製造方法では、カウンタによってエピタキシャル膜製造工程を5回実行した後にクリーニング工程S5を実行するようにプログラムされている。
なお、本実施形態では、エピタキシャルウェーハ製造工程を5回実行してからクリーニング工程S5を実行したが、複数回(例えば2回から9回)であれば回数はこれに限ることはない。
【0044】
すなわち、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、ウェーハWの搬入、エピタキシャル膜Eの成長、およびウェーハWの搬出からなるエピタキシャルウェーハ製造工程を複数回繰り返した後に、クリーニングを行うマルチウェーハデポジションプロセスを用いた製造方法である。
【0045】
ウェーハ準備工程S1は、ウェーハWを準備する工程である。ウェーハWの直径は、200mm、300mm、450mmなど、いずれであってもよい。
【0046】
ウェーハ搬入工程S2では、制御装置3は、ウェーハ搬送機構4を制御して、チャンバ11の図示しないウェーハ搬入出口を介して、ウェーハWをチャンバ11内に搬入し、サセプター12の凹部15上で停止させる。次に、制御装置3は、支持部材駆動機構23を制御して、リフトピン支持部材22を上昇させ、サセプター12で支持されているリフトピン21を上昇させることにより、ウェーハWを持ち上げ、ウェーハ搬送機構4からウェーハWを受けとる。
【0047】
次に、制御装置3は、支持部材駆動機構23を制御して、リフトピン支持部材22を下降させることにより、ウェーハWをサセプター12の凹部15内に載置させる。
【0048】
次に、エピタキシャル膜形成工程S3の詳細について説明する。エピタキシャル膜形成工程S3は、搬入されたウェーハW上にエピタキシャル膜Eを成長させてエピタキシャルウェーハとする工程である。
図4に示すように、エピタキシャル膜形成工程S3は、ガス導入工程S31と、ウェーハ加熱工程S32と、温度測定工程S33と、エピタキシャル膜成長工程S34と、温度差判定工程S35と、加熱工程S36と、成長時間判定工程S37と、を有する。
【0049】
ガス導入工程S31では、制御装置3は、ガス供給装置29を制御して、ガス導入口31Aからキャリアガスとしての水素ガスの導入を開始する。制御装置3は、水素ガスを連続的に導入しつつ、ガス排出口31Bから排出させることにより、チャンバ11内を水素雰囲気にする。また、制御装置3は、水素ガスの導入と同時に支持部材駆動機構23を制御して、サセプター支持部材13を回転させる。
【0050】
ウェーハ加熱工程S32では、制御装置3は、第一パイロメーター28AによりウェーハWの表面温度を測定しつつ、上部ランプ24および下部ランプ25を制御して、ウェーハWを成膜時設定温度までさらに加熱させる。本実施形態では、原料ガスとしてトリクロロシラン(SiHCl3)を使用し、成膜時設定温度は、1,200℃より低い温度領域に設定する。
【0051】
温度測定工程S33では、第一パイロメーター28Aを用いてウェーハWの中心部P1の温度を測定するとともに、第三パイロメーター28Cを用いてサセプター12の外縁部14の温度を測定する。
【0052】
エピタキシャル膜成長工程S34では、制御装置3は、第一パイロメーター28AによりウェーハWの表面温度を測定しつつ、上部ランプ24および下部ランプ25を制御して、チャンバ11内の温度を上昇させるとともに、ガス供給装置29を制御して、ガス導入口31Aから、トリクロロシランをチャンバ11内の上側空間に供給させる。
【0053】
サセプター12の回転およびウェーハWの温度が安定した時点で各種ガスを供給することにより、ウェーハWにエピタキシャル膜Eを均一に成長させる。
【0054】
次に、温度差判定工程S35、および加熱工程S36について説明する。
まず、エピタキシャル膜Eの成長中において生成される副生成物B、および補助加熱装置27の制御について説明する。
エピタキシャル膜Eの成長中、サセプター12の外縁部14には、エピタキシャル成長処理に伴う副生成物B(ポリシリコン、
図2参照)が堆積する。サセプター12の外縁部14に副生成物Bが堆積することによって、上部ランプ24によるサセプター12の外縁部の加熱効率が低下する。
【0055】
具体的には、副生成物Bの堆積が少ない場合には、ウェーハWの中心部P1の温度とサセプター12の外縁部14の内部P3の温度との差が小さく、ウェーハWの中心部P1の温度とウェーハWの外周部P2の温度との差も小さくなる。
しかしながら、副生成物Bはランプから照射される赤外線の吸収率が低いため、副生成物Bの堆積が多い場合には、サセプター12の外縁部14の内部P3が加熱されにくくなる。これにより、ウェーハWの中心部P1の温度とサセプター12の外縁部14の内部P3の温度との差が大きくなり、ウェーハWの中心部P1の温度と突出部16を介してサセプター12の外縁部14と接触するウェーハWの外周部P2の温度との差も大きくなる。このウェーハWの中心部P1と外周部P2との温度差により、ウェーハWに原子レベルの歪みが生じたり、ウェーハWの外周部P2のエピタキシャル膜Eの厚みが低下したりする。
【0056】
なお、ウェーハWの歪みは、赤外光弾性を利用した歪み測定装置(SIRD装置)を用いて測定することができる。
また、「ウェーハWの外周部」とは、円板形状のウェーハWの直径において、外周から直径の3%までの周縁部分を意味する。
【0057】
制御装置3は、この歪みを抑制するために、第三パイロメーター28Cを用いてサセプター12の外縁部14の温度を測定し、測定された温度に基づいて補助加熱装置27を制御して、サセプター12の外縁部14を加熱する。
【0058】
具体的には、温度差判定工程S35では、ウェーハWの中心部P1の温度と、温度測定工程S33で測定されたサセプター12の外縁部14の温度との温度差が所定の閾値(例えば、5℃)以下か否かを判定する。
温度差が所定の閾値以下であった場合、補助加熱装置27を使用することなく、ランプのみの加熱を続行する(加熱工程S36A)。一方、温度差が所定の閾値より大きい場合、ランプによる加熱に加えて、補助加熱装置27によってサセプター12の外縁部14を加熱(レーザー加熱)する(加熱工程S36B)。
すなわち、制御装置3は、副生成物Bの堆積によるサセプター12の外縁部14の加熱効率の低下を補うべく、ウェーハWの中心部P1の温度とサセプター12の外縁部の内部P3の温度との温度差が製造される複数のウェーハW間で変化しないようにサセプター12の外縁部14を加熱する。
【0059】
サセプター12の外縁部14の温度に基づく補助加熱装置27の制御は、1回目のエピタキシャルウェーハ製造工程から5回目のエピタキシャルウェーハ製造工程まで実行してもよいし、1回目のエピタキシャルウェーハ製造工程では実行せず、2回目のエピタキシャルウェーハ製造工程以降で実行してもよい。
【0060】
成長時間判定工程S37では、所定のエピタキシャル膜成長時間に達したか否かを判定する。所定のエピタキシャル膜成長時間に達した場合は、エピタキシャル膜形成工程S3は終了となり、所定のエピタキシャル膜成長時間に達していない場合は、エピタキシャル膜Eの成長を続行する。
【0061】
次に、
図3を参照して、ウェーハ搬出工程S4、クリーニング工程S5、および判定工程S6について説明する。
エピタキシャル膜Eの形成後、ウェーハ搬出工程S14では、制御装置3は、第一パイロメーター28AによりウェーハWの表面温度を測定しつつ、上部ランプ24および下部ランプ25を制御して、ウェーハWの温度を成膜時設定温度から搬送時設定温度まで下げさせる。次に、制御装置3は、支持部材駆動機構23を制御して、リフトピン支持部材22を上昇させて、リフトピン21によりウェーハWをサセプター12から持ち上げる。次に、制御装置3は、ウェーハ搬送機構4を制御して、チャンバ11内部に移動させて、ウェーハWの下方で停止させる。
【0062】
次に、制御装置3は、支持部材駆動機構23を制御して、リフトピン支持部材22を下降させてウェーハWをウェーハ搬送機構4に受け渡す。次に、制御装置3は、ウェーハ搬送機構4を制御して、ウェーハWをチャンバ11の外部に搬出させる。
【0063】
次に、制御装置3は、ウェーハ搬送機構4を制御して、新しいウェーハWをチャンバ11内に搬入させた後、以上説明した一連の処理と同様の処理を行うことにより、新たなエピタキシャルウェーハを製造する。
【0064】
制御装置3は、上記したエピタキシャルウェーハ製造工程を5回実行することで5枚のエピタキシャルウェーハを製造した後、クリーニング工程S5を実行する。
クリーニング工程S5は、塩化水素ガスをガス導入口31Aからチャンバ11内に供給して、チャンバ11内のクリーニングを行う工程である。塩化水素ガスの導入により、塩化水素ガスと副生成物Bとが反応して、副生成物Bがエッチングされて除去される。
【0065】
判定工程S6では、準備した全てのウェーハWについてエピタキシャル膜Eを形成したかを判定し、全てのウェーハWについて形成が終了した場合は、エピタキシャルウェーハの製造方法を終了する。
【0066】
上記実施形態によれば、エピタキシャルウェーハ製造工程を複数回実行した後に、クリーニング工程を行う、所謂マルチウェーハデポジションプロセスにおいて、サセプター12の外縁部14の温度に基づいてサセプター12の外縁部14を加熱することにより、ウェーハWの中心部P1の温度とサセプター12の外縁部14の内部P3の温度差の変化を抑制する。これにより、ウェーハWの中心部P1の温度とウェーハWの外周部P2の温度差に起因するウェーハWの歪みを抑制することができる。
【0067】
また、ウェーハWではなく、サセプター12の外縁部14を加熱する構成としたことによって、直接加熱することによってスリップ転位などが発生するウェーハの製造にも適用することができる。
また、補助加熱装置27としてレーザー加熱装置を採用したことによって、サセプター12の外縁部14の表面のみを集中して加熱することができる。
【0068】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態にかかるエピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハ製造装置について説明する。なお、本実施形態では、第一実施形態と同様の構成については記載を省略する。
上記第一実施形態では、補助加熱装置27は、サセプター12の外縁部14を加熱する構成であったが、
図5に示すように、本実施形態の補助加熱装置27Bは、ウェーハWの外周部P2を加熱するように構成されている。すなわち、本実施形態の補助加熱装置27Bは、ウェーハWの外周部P2を加熱するように方向付けられている。
また、本実施形態の第三パイロメーター28Dは、ウェーハWの外周部P2の温度を測定するように方向付けられている。
【0069】
本実施形態の制御装置3は、第三パイロメーター28Dによって測定されるウェーハWの外周部P2の温度に基づいて補助加熱装置27Bを制御して、ウェーハWの外周部P2を加熱する。
具体的には、制御装置3は、ウェーハWの中心部P1の温度とウェーハWの外周部P2の温度との温度差が変化しないようにウェーハWの外周部P2を加熱する。
【0070】
上記実施形態によれば、ウェーハWの外周部P2を直接加熱する構成としたことによって、ウェーハWの外周部P2の温度をより早く変化させ、余計な熱歪を与えないで制御することができる。
【0071】
なお、上記各実施形態では、ウェーハWの中心部P1の温度とサセプター12の外縁部14(またはウェーハWの外周部P2)の温度との温度差が変化しないように補助加熱装置27を制御したがこれに限ることはない。例えば、エピタキシャルウェーハの製造中には温度測定を行わず、予め設定した加熱条件に基づいて補助加熱装置27を制御してもよい。
具体的には、事前にサセプター12の外縁部14の加熱条件を決定するために、複数回マルチウェーハデポジションプロセスによるエピタキシャルウェーハの製造を行う。その際、補助加熱装置27による加熱条件を変化させながらサセプター12の外縁部14(またはウェーハWの外周部P2)を加熱し、エピタキシャルウェーハ製造工程の回数毎にウェーハの品質が良かった加熱条件を、実際のエピタキシャルウェーハの製造の際の加熱条件として採用する。
なお、加熱条件は、パイロメーターを用いてウェーハやサセプターの温度測定を行い、これらの温度差などを確認しながら決定してもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、堆積する副生成物Bの厚みは考慮されていないが、副生成物Bの厚みを測定または推定し、厚みに応じて補助加熱装置27による加熱量を変化させてもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、第一パイロメーター28Aによって測定されたウェーハWの中心部P1の温度と、第三パイロメーター28C、28Dによって測定されたサセプター12の外縁部14またはウェーハWの外周部P2の温度とに基づいて、補助加熱装置27の制御を行ったがこれに限ることはない。例えば、第二パイロメーター28Bによって測定されたサセプター12の中心部P4(
図2参照)の温度も加味して、補助加熱装置27による制御を行ってもよい。
【0074】
さらに、上記各実施形態では、補助加熱装置27(第二加熱装置)としてレーザー加熱装置を採用したが、これに限ることはなく、例えば装置は、ハロゲンランプやキセノンランプなどの採用も可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…エピタキシャルウェーハ製造装置、2…装置本体、3…制御装置、4…ウェーハ搬送機構、11…チャンバ、12…サセプター、13…サセプター支持部材、15…凹部、16…突出部、19…ヒートリング、24…上部ランプ(第一加熱装置)、25…下部ランプ(第一加熱装置)、27…補助加熱装置(第二加熱装置)、28A…第一パイロメーター、28B…第二パイロメーター、28C…第三パイロメーター、29…ガス供給装置、31…ベース、31A…ガス導入口、31B…ガス排出口、32…上部ドーム、33…下部ドーム、B…副生成物、P1…ウェーハの中心部、P2…ウェーハの外周部、P3…サセプターの外縁部の内部、P4…サセプターの中心部、W…ウェーハ。