(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20250408BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20250408BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B3/30
B32B33/00
(21)【出願番号】P 2022508276
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009748
(87)【国際公開番号】W WO2021187301
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020049285
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】速水 裕
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117413(WO,A1)
【文献】特開2010-099929(JP,A)
【文献】特表2020-507095(JP,A)
【文献】特開2011-189590(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221326(WO,A1)
【文献】特開2008-122525(JP,A)
【文献】特開平11-268500(JP,A)
【文献】特開平07-329494(JP,A)
【文献】特開2006-068947(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139136(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/085084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41M 1/34
3/06
B44F 1/04
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射層と、
断面視にて、前記反射層を挟持するように形成された第1の着色層と第2の着色層とを有し、
前記第1の着色層および前記第2の着色層のうち少なくとも一方の着色層は、透光性を有し、
前記第1の着色層は、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収する着色部を含み、
前記第2の着色層は、前記第1の着色層の前記着色部と対向する位置に、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収し、前記第1の着色層の前記着色部とは呈する色が異なる着色部を含
み、
前記第1の着色層と前記第2の着色層との間に、凹凸層を有し、前記凹凸層は、平面視にて、1000μm以下のピッチで並んで形成された3本以上のライン状の凸部または凹部を有し、
前記凹凸層は、前記凹部内に形成された気体部を有し、
前記反射層が、前記凹凸層から構成される、積層体。
【請求項2】
前記凹凸層は、樹脂を含
む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記凹凸層と、前記第1の着色層または前記第2の着色層との間に、前記凹凸層に接して、樹脂層が
配され
る、請求項
1または2に記載の積層体。
【請求項4】
390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式にて、各測定波長について前記反射層の反射率を測定したとき、
同じ面内位置において、前記第1の着色層側から測定した前記反射層の反射率の平均値と前記第2の着色層側から測定した前記反射層の反射率の平均値がいずれも0.5%以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式にて、各測定波長について前記反射層の反射率を測定したとき、
同じ面内位置において、前記第1の着色層側から測定した前記反射層の反射率と前記第2の着色層側から測定した前記反射層の反射率との差の分散値が0.3%
2以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体は、一方の側から使用者または観察者が視認するものであり、
前記第1の着色層と前記第2の着色層のうち視認側と反対側の着色層が顔料を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体は、一方の側から使用者または観察者が視認するものであり、
前記第1の着色層と前記第2の着色層のうち視認側と反対側の着色層の裏側に、散乱層を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記凹凸層と、前記第1の着色層または前記第2の着色層との間に、前記凹凸層に接して配される樹脂層を支持しかつ前記樹脂層の前記凹凸層側の面と反対側の面に配される、樹脂製またはガラス製の支持部材を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
表示装置の加飾用である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板は、耐久性が高く、表面が平滑で、質感および反射等により意匠性が高く、建築物およびインテリア等に広く用いられている。さらに、近年、窓材、床材、壁材、および天井材等の建築部材;テーブル天板等のインテリア部材;洗濯機および冷蔵庫等の白物家電の外装材;自動車等の車両の内装および外装部材;携帯電話および携帯情報端末(PDA)等の電子機器等の用途において、より意匠性の高いガラス材が求められるようになってきている。今後さらに、意匠性の高いガラス材の用途は拡大していくことが予想される。
【0003】
かかる背景下、内部に、印刷PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、和紙等の紙、布、金属、大理石、木材、押し花、および葉脈等のガラス以外の異種素材を封入した合わせガラスが提案されている。かかる合わせガラスは、ガラス板/透光性樹脂膜(中間膜)/異種素材/透光性樹脂膜(中間膜)/ガラス板の5層構造を基本とし、表側のガラス板を通して異種素材を視認することで、美観に優れた意匠を実現できる。
異種素材は、色、模様、およびパターン等を有し、意匠層として機能できる。例えば、特許文献1には、ガラス板/接着性フィルム/突板裏打シート/接着性フィルム/ガラス板を積層成形してなる5層構造の積層体が開示されている(請求項1)。
上記用途において、裏側のガラス板は必須ではない。また、ガラス板の代わりに、透光性樹脂板等の任意の基材を用いてもよい。意匠層を含む積層体においては、各種製品の高付加価値化に伴い、より高度な意匠性が求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平08-015770号公報
【文献】国際公開第2018/221326号
【文献】特開2008-018631号公報
【文献】特開2015-120328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者はこれまで、特許文献2等において、反射率異方性を有するように設計された微細な凹凸パターンを有する凹凸層を含む凹凸構造体およびこれを含む積層体を提案している。本発明者の提案する凹凸構造体またはこれを含む積層体は、視線または光源の角度が変化したとき、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られ、意匠性に優れる。
【0006】
本発明の関連技術として、以下の特許文献3、4が挙げられる。
特許文献3には、透明基材と、該透明基材の裏面に並行に配された線状凸型透明突起からなる複数のブロックと、前記透明基材の裏面に前記複数のブロックを覆うように配された光反射層とを備え、前記複数のブロックの各ブロックは、隣り合うブロックのうち少なくとも1のブロックと前記線状凸型透明突起の延在する方向が異なる光輝性装飾体が開示されている(請求項1)。
【0007】
特許文献4には、互いに重なることのない直線または曲線の配列による線画の各線の長さ、間隔、線幅または角度を変化させることにより複数のパターン線画を形成すると共に、これらのパターン線画を組み合わせた絵柄を印刷基材の全面にインクを用いた印刷による断面山形状の線画として形成したことにより、印刷基材の絵柄の視認性が見る角度によって変化するようにしたチェンジング画像印刷物が開示されている(請求項1)。
特許文献3、4には、断面視にて、凹凸構造体を挟持するように形成された、呈する色の異なる第1の着色層と第2の着色層について、開示がない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られ、面内位置によって色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性に優れる積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層体は、
反射層と、
断面視にて、前記反射層を挟持するように形成された第1の着色層と第2の着色層とを有し、
前記第1の着色層および前記第2の着色層のうち少なくとも一方の着色層は、透光性を有し、
前記第1の着色層は、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収する着色部を含み、
前記第2の着色層は、前記第1の着色層の前記着色部と対向する位置に、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収し、前記第1の着色層の前記着色部とは呈する色が異なる着色部を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られ、面内位置によって色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の積層体の模式断面図である。
【
図2】本発明に係る第2実施形態の積層体の模式断面図である。
【
図3】本発明に係る第3実施形態の積層体の模式断面図である。
【
図4】本発明に係る第4実施形態の積層体の模式断面図である。
【
図5】本発明に係る第5実施形態の積層体の模式断面図である。
【
図6】本発明に係る第1実施形態の平面パターンにおける1つの凸部または凹部の平面パターンの一例を示す図である。
【
図7】平面視蛇行線状の複数の凸部または凹部が、互いに隣接する凸部または凹部の曲部が隣接するように配置された複数の凸部または凹部のパターンの例を示す図である。
【
図8】切子ガラスのように見える凹凸層の複数の凸部のパターンの第1の例を示す平面図である。
【
図9】切子ガラスのように見える凹凸層の複数の凸部のパターンの第2の例を示す平面図である。
【
図10】切子ガラスのように見える凹凸層の複数の凸部のパターンの第3の例を示す平面図である。
【
図11】切子ガラスのように見える凹凸層の複数の凸部のパターンの第4の例を示す平面図である。
【
図12】切子ガラスのように見える凹凸層の複数の凸部のパターンの第5の例を示す平面図である。
【
図13A】凹凸構造体の凹凸層が有する1本の平面視蛇行線状の凸部または凹部の模式平面図の例である。
【
図13B】凹凸構造体の凹凸層が有する1本の平面視蛇行線状の凸部または凹部の模式平面図の他の例である。
【
図14A】複数の凸部または凹部SCの平面パターンの第1の例を示す模式平面図である。
【
図14B】
図14Aに示すパターンにおいて、複数の凸部または凹部の特定極点を繋ぐ架空直線群の例を示す図である。
【
図15A】複数の凸部または凹部SCの平面パターンの第2の例を示す模式平面図である。
【
図15B】
図15Aに示すパターンにおいて、複数の凸部または凹部の特定極点を繋ぐ架空直線群の例を示す図である。
【
図16】複数の凸部または凹部SCの平面パターンの第3の例を示す模式平面図である。
【
図17】複数の凸部または凹部SCの平面パターンの第4の例を示す模式平面図である。
【
図18】
図14A、
図15A、
図17に示すそれぞれパターンにおいて、任意の1つの架空直線群における架空直線の番号xと架空直線の角度との関係例を示すグラフである。
【
図19】
図14A、
図15A、
図16、
図17に示すそれぞれパターンにおいて、凸部または凹部の番号xと1本の凸部または凹部に含まれる特定極点の個数との関係例を示すグラフである。
【
図20】[実施例]の項で作製した金型の複数の凹部の並び方向の模式断面図である。
【
図21A】第4の積層体(LD11)の反射スペクトルである。
【
図21B】第4の積層体(LD11)の透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、特に明記しない限り、「可視光域」は390~620nmの波長域と定義する。
本明細書において、互いに隣接する凹部の離間距離を「凹部間距離」と言い、互いに隣接する凸部の離間距離を「凸部間距離」と言う。
本明細書において、凸部または凹部の幅とピッチは、複数の凸部または凹部の並び方向の凸部または凹部の幅とピッチである。同様に、凸部間距離は、複数の凸部の並び方向の凸部間距離であり、凹部間距離は、複数の凹部の並び方向の凹部間距離である。
【0013】
一般的に、薄膜構造体は、厚みに応じて、「フィルム」および「シート」等と称される。本明細書では、これらを明確には区別しない。したがって、「フィルム」に「シート」が含まれる場合があれば、「シート」に「フィルム」が含まれる場合もある。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
[積層体]
本発明の積層体は、
反射層と、
断面視にて、前記反射層を挟持するように形成された第1の着色層と第2の着色層とを有し、
前記第1の着色層および前記第2の着色層のうち少なくとも一方の着色層は、透光性を有し、
前記第1の着色層は、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収する着色部を含み、
前記第2の着色層は、前記第1の着色層の前記着色部と対向する位置に、390~620nm内の少なくとも一部の波長域の光を吸収し、前記第1の着色層の前記着色部とは呈する色が異なる着色部を含むものである。
【0015】
本発明の積層体の一実施形態において、前記第1の着色層と前記第2の着色層との間に、表面に、平面視にて、1000μm以下のピッチで並んで形成された3本以上のライン状の凸部または凹部を有する凹凸層を有し、樹脂を含む凹凸構造体を含むことができる。
【0016】
第1の態様において、前記凹凸構造体の前記凹凸層の直上に、当該凹凸層の凹部内の空間部を気体部として残して樹脂層を積層することができる。この場合、前記凹凸構造体の前記凹凸層と前記気体部とからなる層が、前記反射層として機能することができる。
【0017】
第2の態様において、前記反射層は、前記凹凸構造体の前記凹凸層の表面凹凸に沿って、表面凹凸を有して形成され、透光性を有する層であることができる。
この態様において、前記第1の着色層と前記第2の着色層のうちの一方の着色層は、前記反射層の前記表面凹凸に接して形成することができる。前記第1の着色層と前記第2の着色層のうち視認側の着色層が、前記反射層の前記表面凹凸に接して形成されることが好ましい。
【0018】
(積層構造の第1実施形態)
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態の積層体の構造について、説明する。
図1は、本実施形態の積層体の模式断面図である。
本実施形態の積層体1は、複数の平面視ライン状の凸部または凹部を含む凹凸層を有し、透光性を有する凹凸構造体20を含む。
本実施形態において、凹凸構造体20は、第1の平坦層21と、この第1の平坦層21と一体成形された凹凸層22とからなる。凹凸層22は、複数の凸部22Aと、複数の凸部22Aの間隙に形成された複数の凹部22Bとからなる。本実施形態において、凹凸層22の直上に、凹凸層22の凹部22B内の空間部を気体部として残して第2の平坦層31が積層されている。
第1の平坦層21と第2の平坦層31のうち、少なくとも、凹凸層22より視認側に位置する層は、透光性を有する。
【0019】
凹凸層22は好ましくは、複数の凹部22B内に形成された複数の気体部と、これら複数の気体部を互いに隔離する複数の樹脂部(複数の凸部)とを含む気体樹脂複合層である。本実施形態では、この気体樹脂複合層が反射層として機能することができる。
好ましくは、第1の平坦層21は第1の樹脂層であり、第2の平坦層31は第2の樹脂層であり、気体樹脂複合層はこれら平坦な2つの樹脂層に挟持されている。第1の平坦層21および第2の平坦層31のうち少なくとも一方は粘着層を含む層であってもよい。
図1に示す態様では、すべての凸部22Aが図示下側の第1の平坦層21と一体成形されているが、少なくとも一部の凸部22Aは、図示上側の第2の平坦層31と一体成形されていてもよい。
【0020】
本実施形態において、凸部22Aまたは凹部22Bは平面視ライン状であり、複数の凸部22Aまたは複数の凹部22Bは、1000μm以下のピッチで並んで形成されている。
平面視ライン状の凸部22Aまたは凹部22Bは、平面視にて、直線状でもよいし、曲線状でもよいし、1つ以上の曲部と1つ以上の直線部とを組み合わせた形状でもよい。
個々の凸部22Aまたは凹部22Bは、平面視にて、少なくとも1つの曲部を有することが好ましく、複数の曲部を有することがより好ましく、蛇行線状であることが特に好ましい。
【0021】
凹凸層22においては、平面視にて、複数の凸部22Aまたは凹部22Bが、1000μm以下のピッチで第1番目から第n番目まで並んで形成されている。
nは3以上の整数であり、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、特に好ましくは1000以上である。nは、上限は特に制限されず、好ましくは10000000以下、より好ましくは1000000以下である。
ピッチは小さい方が好ましく、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
凸部22Aまたは凹部22Bが少なくとも1つの曲部を有する場合、曲部の曲げ角度は、好ましくは30~150°、より好ましくは50~130°、特に好ましくは70~110°、最も好ましくは90°である。
【0022】
積層体1は必要に応じて、第1の平坦層21を支持する樹脂製またはガラス製の支持部材11、および/または、第2の平坦層31を支持する樹脂製またはガラス製の支持部材41を有することができる。
【0023】
本実施形態の積層体1は、断面視にて、凹凸構造体20を挟持するように形成された第1の着色層50と第2の着色層60とを有する。
図示例では、第1の着色層50は、支持部材11の外面(凹凸構造体20とは反対側の面)に形成され、第2の着色層60は支持部材41の外面(凹凸構造体20とは反対側の面)に形成されている。第1の着色層50と第2の着色層60の形成位置は、これらの層が凹凸構造体20を挟持する位置であればよく、適宜設計できる。
【0024】
第1の着色層50および第2の着色層60はそれぞれ、可視光域(390~620nmの波長域)内の少なくとも一部の波長域の光を吸収する1つ以上の着色部を含む。着色部は、1種以上の着色剤を含む。着色剤としては公知のものを使用でき、顔料、染料、およびこれらの組合せが挙げられる。第1の着色層50および第2の着色層60のうち、少なくとも表側(視認側)の着色層の着色部は透光性を有する。一般的に、顔料を含む着色部は、透光性を有しないため、少なくとも表側(視認側)の着色層の着色部は、顔料を含まないことが好ましい。少なくとも表側(視認側)の着色層の着色部は、染料を含むことが好ましい。裏側(視認側と反対側)の着色層の着色部は、透光性を有しなくてもよく、顔料を含んでもよい。
【0025】
第1の着色層50が有する着色部の数は、適宜設計できる。第1の着色層50の全体が1つの着色部であってもよい。第1の着色層50が複数の着色部を含む場合、複数の着色部は、任意のパターンで平面的に配列される。各着色部の平面形状および複数の着色部の平面的な配列は、適宜設計できる。第2の着色層60についても、同様である。
本実施形態において、各着色部の呈する色は、白以外の可視光域内の任意の色または黒である。同じ面内位置の第1の着色層50の着色部と第2の着色層60の着色部とは、呈する色が異なる。
【0026】
図示例では、第1の着色層50は、呈する色が異なる2つの着色部51、52を有し、第2の着色層60は、呈する色が異なる2つの着色部61、62を有する。互いに対向する第1の着色層50の着色部51と第2の着色層60の着色部61とは、面内位置が同じであるので、呈する色が異なる。同様に、互いに対向する第1の着色層50の着色部52と第2の着色層60の着色部62とは、面内位置が同じであるので、呈する色が異なる。
【0027】
着色層50、60の形成方法は特に制限されず、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、およびスクリーン印刷法等の一般的な印刷法等が挙げられる。例えば、光硬化性樹脂を含む光硬化型インクを用いて、スクリーン印刷およびインクジェット印刷等の公知方法により印刷する方法が好ましい。
【0028】
着色層50、60は、白以外の可視光域内の任意の色または黒の着色印刷層であることができ、白および黒以外の任意の色の着色印刷層であることが好ましい。
具体的には、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式とも言う。)にて、各測定波長について反射層(本実施形態では、凹凸層22、気体樹脂複合層)の反射率を測定したとき、同じ面内位置において、第1の着色層50側から測定した反射層の反射率の平均値と第2の着色層60側から測定した反射層の反射率の平均値がいずれも0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、3.0%以上であることが特に好ましい。
ある面内位置において、第1の着色層50側から測定した反射層の反射率が0%またはそれに極めて近ければ、その着色層の着色部は黒色を呈する。ある面内位置において、第1の着色層50側から測定した反射層の反射率の平均値が0.5%以上であれば、その着色層の着色部は白および黒以外の色を呈し、意匠性に優れる。第2の着色層60側から測定した反射層の反射率についても、同様である。
【0029】
本実施形態の積層体1は意匠用として好適であり、使用者または観察者は、第1の平坦層21および第2の平坦層31のうち透光性を有する層側から、積層体1を観察できる。積層体1に入射した光は、第1の平坦層21と気体部(凹部22B内の空間部)との界面、凸部22A(好ましくは樹脂部)と気体部との界面、または気体部と第2の平坦層31との界面で反射される。
【0030】
本実施形態では、凸部22Aまたは凹部22Bは平面視ライン状、好ましくは曲部を有するライン状、特に好ましくは蛇行線状であり、平面視異方性を有するため、凹凸層22は、方向によって反射率の異なる反射率異方性を有する。
第1の平坦層21および第2の平坦層31のうち透光性を有する層側から凹凸層22に入射した光は、平面視にて、気体部の幅方向に主として反射され、気体部の長さ方向にはほとんど反射されない。また、平面視にて、気体部が間隔を空けて複数形成されている場合、気体部の長さ方向と気体部の幅方向とのコントラストの差が大きくなる。本実施形態では、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られる。
例えば、使用者または観察者から見た観察面において、気体部の長さ方向を水平方向とし、気体部の幅方向を鉛直方向とし、水平方向の中心を通る鉛直方向を軸にして左右に-45°~45°の範囲で回転させたときに、コントラストが顕著に変化し、意匠性が高くなる。
【0031】
本実施形態では、断面視にて、凹凸構造体20を挟んで、第1の着色層50と第2の着色層60とを形成し、同じ面内位置の第1の着色層50の着色部と第2の着色層60の着色部とは、呈する色が異なるように設計している。このような設計では、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より高い意匠性が得られる。
【0032】
本実施形態では、第1の着色層50の各着色部と第2の着色層60の各着色部の色の組合せを自由に設計でき、これによって、積層体1の色または配色パターンと色の変化を自由に設計できる。
本実施形態の積層体1のすべての構成要素が透光性を有する場合、第1の着色層50側と第2の着色層60側のいずれの側も、表側(視認側)とすることができる。この場合、第1の着色層50側から観察する場合と、第2の着色層60側から観察する場合では、同じ面内位置でも異なる色が見える。この場合、積層体1は、使用者または観察者が、好みあるいは気分等に応じて、いずれの側を表側(視認側)とするかを自由に選択できるリバーシブルタイプとなる。
【0033】
積層体1は例えば、液晶ディスプレイおよびエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフラットまたはフレキシブルなパネルディスプレイ、並びにかかるパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイ等の表示装置の加飾用等に好適に用いることができる。
【0034】
積層体1を表示装置と組み合わせて用いる場合、積層体1の透過率が面全体的にほぼ一定になるように設計することが好ましい。例えば、表側の着色層が市松模様および木目などの模様を含む場合、裏側の着色層の色と模様は、模様を含む表側の着色層と重なったときに、積層体1の各ピクセルの透過率が面全体でほぼ一定となるように設計することが好ましい。このような設計では、表示装置の消灯時は表側の着色層の模様が視認され、表示装置の点灯時は積層体1の透過率が面全体的にほぼ一定であるため、表側の着色層の模様が視認されず、表示装置の画面表示が鮮明に視認できるようになる。
【0035】
上記用途では、同じ面内位置において、第1の着色層50側から測定した反射層(本実施形態では、凹凸層22、気体樹脂複合層)の反射率と第2の着色層60側から測定した反射層の反射率が異なることが好ましい。具体的には、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射層の反射率を測定したとき、第1の着色層50側から測定した反射層の反射率と第2の着色層60側から測定した反射層の反射率との差の分散値が0.3%2以上であることが好ましく、0.8%2以上であることがより好ましく、1.5%2以上であることが特に好ましい。
【0036】
支持部材11、41としては特に制限されず、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板、およびこれらの組合せ等が挙げられる。支持部材11、41は、単層構造でも積層構造でもよく、表面処理等の処理が施されたものでもよい。少なくとも視認側の支持部材は、透光性を有する。
樹脂板または樹脂フィルムの構成樹脂としては特に制限されず、アクリル系樹脂;塩化ビニル系樹脂;カーボネート系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリエチレンおよびポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;スチロール系樹脂;ABS系樹脂等のスチレン系樹脂;ナイロン等のアミド系樹脂;フッ素系樹脂;フェノール系樹脂;メラミン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のエステル系樹脂、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
ガラス板は公知のものを使用でき、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、石英ガラス、サファイアガラス、および無アルカリガラス等が挙げられる。ガラス板は、表面に反射防止(AR)処理、眩光防止層(AG)、防指紋(AFP)処理、防汚処理、および抗菌処理等の公知の表面処理が施されたものでもよい。ガラス板は、強化加工等の公知の二次加工処理が施されたものでもよい。
【0037】
支持部材11と第1の平坦層21との界面での反射を防ぐため、支持部材11と第1の平坦層21との間の屈折率差は小さい方が好ましい。同様に、第2の平坦層31と支持部材41との界面での反射を防ぐため、第2の平坦層31と支持部材41との間の屈折率差は小さい方が好ましい。支持部材11と第1の平坦層21との間の屈折率差、第2の平坦層31と支持部材41との間の屈折率差はいずれも、好ましくは0.3以内、より好ましくは0.2以内、特に好ましくは0.1以内、最も好ましくは0.05以内である。
【0038】
本実施形態では好ましくは、凹凸構造体20は透光性樹脂からなり、それに含まれる第1の平坦層21は透光性を有する。凹凸構造体20の可視光透過率は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。本明細書において、特に明記しない限り、可視光透過率は、JIS R 3106(1998)に準拠して測定するものとする。積層体1は好ましくは、凹凸構造体20の外面(凹凸面と反対側の面)上に、第1の平坦層21を支持する透光性樹脂製の支持部材11を有することができる。
【0039】
凹凸構造体20は、公知方法にて製造できる。
例えば、凹凸構造体20の凹凸パターンの反転パターンを有する成形型を用意し、この成形型上に、モノマー、オリゴマー、およびプレポリマー等の透光性樹脂の前駆体を含む液状の硬化性組成物を塗工し、加熱、または、紫外線および電子線等の活性エネルギー線照射により硬化性組成物を硬化させ、成形された凹凸構造体20を成形型から剥離することで、所望の凹凸パターンを有する凹凸構造体20を製造できる。成形型上に塗工した硬化性組成物上に、樹脂フィルム等の支持部材11を重ねた後、硬化性組成物を硬化させ、成形された凹凸構造体20を支持部材11と共に成形型から剥離してもよい。
【0040】
その他、あらかじめ平坦な透光性樹脂フィルムを用意し、凹凸構造体20の凹凸パターンの反転パターンを有する成形型を押し当てて、透光性樹脂フィルムを加熱する方法によっても、所望の凹凸パターンを有する凹凸構造体20を製造できる。透光性樹脂フィルムの加熱のタイミングは、型を押し当てる前でもよい。支持部材11はあらかじめ平坦な透光性樹脂フィルムに積層しておいてもよいし、得られた凹凸構造体20に支持部材11を積層してもよい。
【0041】
第2の平坦層31は、好ましくは透光性を有する樹脂層であり、例えば粘着層を含む層である。積層体1は、第2の平坦層31の外面(凹凸層22とは反対側の面)上に、第2の平坦層31を支持する透光性樹脂製の支持部材41を有することができる。
例えば、粘着層の両面に剥離性の保護フィルムが積層された公知の粘着シートを用意し、この粘着シートから一方の保護フィルムを剥離して粘着層を露出させ、この粘着シートの露出した粘着層側を凹凸構造体20の凹凸面上に貼り合わせることができる。この方法では、粘着シートの残った保護フィルムが支持部材41となる。
上記貼り合わせを実施した後、粘着シートの残った他方の保護フィルムを剥離し、露出した粘着層上に、支持部材41として他の樹脂フィルムまたはガラス板を貼り合わせてもよい。
粘着シートとしては特に制限されず、アクリル系、ウレタン系、およびシリコーン系等の粘着剤を用いた公知の粘着シートを用いることができる。
粘着層は、液状または半硬化状態で凹凸構造体20の凹凸面上に積層した後に、加熱、または、紫外線および電子線等の活性エネルギー線照射により硬化させてもよい。
なお、第2の平坦層31が粘着層である場合、支持部材41の着脱または交換を行うこともできる。
【0042】
第2の平坦層31と支持部材41として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなる樹脂基材の片面に粘着層が積層された粘着テープを用いてもよい。この場合、粘着層が第2の平坦層31、樹脂基材が支持部材41となる。
【0043】
第2の平坦層31が粘着層を含む場合、その粘着層は凹凸層22より薄いことが好ましい。第2の平坦層31に含まれる粘着層が凹凸層22より薄ければ、外力が加わっても第1の平坦層21と第2の平坦層31とが接着して気体部(凹部22B内の空間部)がつぶれて小さくなることが抑制され、反射強度の低下が抑制される。凹凸層22の厚みに対する第2の平坦層31に含まれる粘着層の厚みの比率(第2の平坦層31に含まれる粘着層/凹凸層22)は好ましくは1.0未満、より好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5以下である。この厚み比は、下限は特に制限されず、好ましくは0.1以上である。
第2の平坦層31の厚みは特に制限されず、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である。この厚みは、下限は特に制限されず、好ましくは1μm以上である。
【0044】
凸部22Aは、第1の平坦層21または第2の平坦層31と一体成形されていなくてもよい。一体成形を採用せずに、あらかじめ用意された第1の平坦層21および/または第2の平坦層31上に、1個以上の凸部22Aを形成する方法は特に制限されず、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷等の一般的な印刷方法等が挙げられる。印刷には例えば、光硬化性樹脂を含む光硬化型インク(紫外線(UV)硬化型インク等)を用いることができる。例えば、(株)ミマキエンジニアリング社製のUVプリンター「UJF-6042MkII」を用いて、樹脂層となる透光性樹脂フィルム上に1個以上の凸部22A(樹脂部)を印刷できる。この方法では、低コストな材料である印刷インクを用いて、簡易なプロセスで1個以上の凸部22Aを形成できる。
【0045】
本実施形態の積層体1では、凹凸面に沿って反射層を設けていないが、凹凸構造体20の凹部内には気体のみが存在することで、気体とこれに接する材料(第1の平坦層または第2の平坦層)との間の屈折率差を大きく確保でき、凹凸面に沿って反射層を設ける場合と同様に、反射強度を高めることができる。なお、積層体1では、凹凸面に沿って反射層を設ける必要はないが、必要に応じて凹凸面に沿って反射層を設けることは差し支えない。
【0046】
積層体1は、第1の着色層50と第2の着色層60とは別に、木目等の模様を有する加飾層を有してもよい。例えば、加飾層として木目模様を印刷することで、高コストな天然素材である木材を用いることなく、低コストに木材を用いたような積層体を提供できる。
【0047】
(積層構造の第2実施形態)
図2は、本発明に係る第2実施形態の積層体を示す模式断面図である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の積層体2は、第1実施形態の積層体1の少なくとも一方の表面上に、中間膜71を介してガラス板72を積層したものである。
図示例は、第1実施形態の積層体1の両面にそれぞれ、中間膜71を介してガラス板72を積層した例である。ガラス板72は、支持部材である。中間膜71は、合わせガラスに用いられる公知の中間膜である。
【0048】
(積層構造の第3実施形態)
図3は、本発明に係る第3実施形態の積層体を示す模式断面図である。第1、第2実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の積層体3は、第1実施形態の積層体1の一方の表面上に、散乱層81を積層したものである。
図示例では、第1の着色層50が表側の着色層であり、第2の着色層60が裏側の着色層である。散乱層81は、裏側の着色層(図示例では第2の着色層60)の奥に配置される。
散乱層81としては白色顔料を含む白色層が挙げられ、例えば、白色顔料を含むインクを用いた印刷により形成できる。
【0049】
裏側の着色層の奥に白色層等の散乱層を形成することで、第1実施形態の積層体1に比して、第1の着色層50側から見たときの色がより鮮やかとなる。
凹凸構造体20を挟んで表側の着色層50と裏側の着色層60を設け、さらに裏側の着色層60の奥に散乱層81を配置する構成では、表側の着色層50と裏側の着色層60の両層を透過した光が散乱層81の表面で散乱される。
本実施形態の積層体3では、表側の着色層50を透過した光のうちの一部の波長域の光が凹凸構造体20の表面で反射され、表側の着色層50と裏側の着色層60の両層を透過した波長域の光が散乱層81の表面で散乱される。本実施形態の積層体3では、反射光と散乱光の波長域が異なる結果、散乱による鮮やかな色を呈しながら、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より高い意匠性が得られる。
【0050】
<第3実施形態の設計変更例>
第2実施形態で説明したように、第3実施形態の積層体3の少なくとも一方の表面上に、中間膜71を介してガラス板72を積層してもよい(図示略)。
【0051】
<第3実施形態の他の設計変更例>
裏側(視認側と反対側)の着色層の奥に散乱層を設ける代わりに、裏側の着色層に光散乱性を有する成分を含有させ、裏側の着色層を散乱層としてもよい。例えば、裏側の着色層が顔料を含む場合、この着色層は散乱層として機能できる。
凹凸構造体を挟んで表側の着色層と裏側の着色層を設け、さらに裏側の着色層が散乱層として機能する構成では、表側の着色層を透過し裏側の着色層に入射した光が散乱層として機能する裏側の着色層内で散乱される。この設計変更例でも、第3実施形態の積層体3と同様の作用効果が得られる。
詳細には、表側の着色層50を透過した光のうちの一部の波長域の光が凹凸構造体20の表面で反射され、表側の着色層50を通り裏側の着色層60に入射した波長域の光が裏側の着色層60に吸収されながら裏側の着色層60の内部で散乱される。反射光と散乱光の波長域が異なる結果、散乱による鮮やかな色を呈しながら、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より高い意匠性が得られる。
【0052】
(積層構造の第4実施形態)
図4は、本発明に係る第4実施形態の積層体を示す模式断面図である。第1~第3実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の積層体4は、第3実施形態の積層体3の散乱層81上に、押さえ印刷層91を積層したものである。
図示例では、第1の着色層50が表側の着色層であり、第2の着色層60が裏側の着色層である。裏側の着色層(図示例では第2の着色層60)の奥に散乱層81が配置され、さらに奥に押さえ印刷層91が配置される。
押さえ印刷層91としては黒色顔料を含む黒色層が挙げられ、例えば、黒色顔料を含むインクを用いた印刷により形成できる。
本実施形態では、散乱層81の奥にさらに押さえ印刷層91を形成したことで、第3実施形態の積層体3と同じ作用効果を有し、さらに遮光性のある積層体4が得られる。
【0053】
<第4実施形態の設計変更例>
第2の着色層60が顔料を含む場合、散乱層81を設けなくてもよい。
【0054】
<第4実施形態の他の設計変更例>
第2実施形態で説明したように、本実施形態の積層体4の少なくとも一方の表面上に、中間膜71を介してガラス板72を積層してもよい(図示略)。
【0055】
(積層構造の第5実施形態)
図5は、本発明に係る第5実施形態の積層体を示す模式断面図である。第1~第4実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
本実施形態の積層体5は、支持部材11上に形成された凹凸構造体20の凹凸層22の凹凸面に沿って、表面凹凸を有して、透光性を有する反射層32が形成されたものである。凹凸層22の凹凸面に沿って反射層を設けることで、反射光の強度が高くなり、意匠性を向上できる。
反射層は、凹凸層22との屈折率差が0.4以上の高屈折率材料を含む高屈折率反射層であることが好ましい。高屈折率反射層は、TiO
2、Nb
2O
5、ZnO、ZnS、およびZrO
2からなる群より選ばれる少なくとも1種の高屈折率材料を含むことが好ましい。
反射層は、金属を含む金属反射層であってもよい。金属反射層は、膜厚を比較的薄く調整することで、光の一部を反射させ、一部を透過させることができる。金属反射層は、Al、Ag、Sn、In、およびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料を含むことが好ましい。
【0056】
図示するように、第1の着色層50と第2の着色層60のうちの一方の着色層は、反射層32の表面凹凸に接して形成されることが好ましい。この着色層は、反射層32の表面凹凸の凹部を埋め、さらに、反射層32の表面全体を覆って形成されることが好ましい。この着色層の反射層と反対側の表面の凹凸は、反射層32の表面凹凸より小さいことが好ましく、この着色層の反射層と反対側の表面の凹凸は、ほとんどないことがより好ましい。図示例では第2の着色層60が、このような条件を充足する着色層である。
【0057】
上記構成では、反射層32の表面凹凸に接して形成された着色層(図示例では第2の着色層60)に、厚みの分布が生じる。この場合、面内位置によって一方の着色層(図示例では第2の着色層60)の厚みが変化し、見る角度によって一方の着色層(図示例では第2の着色層60)の厚みが変化するため、積層体、視線または光源の角度が変化したときの色の変化がより大きく、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高くなる。
積層体5が一方の側から使用者または観察者が視認するものである場合、上記作用効果がより効果的に得られることから、第1の着色層50と第2の着色層60のうち視認側の着色層が、反射層32の表面凹凸に沿って形成されることが好ましい。積層体5では、第2の着色層60側が視認側であることが好ましい。
【0058】
第1~第5実施形態の積層体1~5は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
積層体1~5の各構成要素は必要に応じて、任意の添加剤を含むことができる。
積層体1~5において、視認側の最表層は必要に応じて、紫外線(UV)吸収剤を含むことができる。UV吸収剤により凹凸構造体20等の紫外線による劣化を防ぐことできる。
積層体1~5は必要に応じて、上記以外の任意の構成要素を含むことができる。
【0059】
[凹凸構造体の平面パターン]
以下、本発明の積層体に含まれる凹凸構造体の平面パターンについて説明する。
図1~
図5と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
上記したように、本発明の積層体は、表面に、複数の平面視ライン状の凸部または凹部を含む凹凸層を有し、透光性を有する凹凸構造体を含むことができる。凸部または凹部は、平面視にて、直線状でもよいし、曲線状でもよいし、1つ以上の曲部と1つ以上の直線部とを組み合わせた形状でもよい。個々の凸部または凹部は、平面視にて、少なくとも1つの曲部を有することが好ましく、複数の曲部を有することがより好ましく、蛇行線状であることが特に好ましい。
【0060】
凹凸層においては、平面視にて、複数の凸部または凹部が、1000μm以下のピッチで第1番目から第n番目まで並んで形成されている。
nは3以上の整数であり、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、特に好ましくは1000以上である。nは、上限は特に制限されず、好ましくは10000000以下、より好ましくは1000000以下である。ピッチは小さい方が好ましく、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0061】
(平面パターンの第1実施形態)
平面パターンの第1実施形態において、凸部または凹部は、1つ以上の曲部を有することができる。
図6に、第1実施形態の平面パターンにおける1つの凸部または凹部111の平面パターンの一例を示す。
図6において、符号BPは曲部、符号111A~111Cは曲部の極点、符号CPは曲部に接続される接続部である。曲部BPに接続される接続部CPは、曲線部でも直線部でもよい。
一態様において、凹凸層は平面視にて、曲部BPを介して接続された第1の方向に向かう第1の曲線部と第2の方向に向かう第2の曲線部とを含む、
図6に示すライン状の凸部111が間隔を空けて複数形成されたパターンを有することができる。
他の態様において、凹凸層は平面視にて、曲部BPを介してなめらかに接続された第1の方向に向かう第1の直線部と第2の方向に向かう第2の直線部とを含むライン状の凸部111が間隔を空けて複数形成されたパターンを有することができる。
上記のように、ライン状の凸部または凹部111は、1つの曲部BPに接続された、曲線部または直線部からなり異なる方向に向かう第1、第2の接続部CPを含むことができる。ライン状の凸部または凹部111は、接続部CPを含まなくてもよい。
【0062】
凸部または凹部が少なくとも1つの曲部を有する場合、曲部の曲げ角度は、好ましくは30~150°である。
本明細書において、曲げ角度は、次のように定義される。
第1または第2の接続部CPが曲線部である場合、第1または第2の曲部BPと接続部CPとの変曲点における接線を求める。第1または第2の接続部CPが直線部である場合、第1または第2の直線部の延長線を求める。曲部BPに接続部CPが接続されない場合、曲部BPの端点における接線を求める。曲部を挟んで一方の側にある接線または延長線と他方の側にある接線または延長線とのなす角度を曲げ角度と定義する。
【0063】
凹凸構造体に入射した光は、平面視にて、ライン状の凸部または凹部111の線幅方向に主として反射され、線幅方向に対して垂直方向にはほとんど反射されない。ライン状の凸部または凹部111の線幅方向と線幅方向に対して垂直方向とのコントラストがより大きくなる。
ライン状の凸部または凹部111が曲部BP、好ましくは曲げ角度が30~150°の曲部BPを有する場合、曲部を境にして凸部または凹部111の延びる方向が有意に変わり、曲部BPを境にしてコントラストが有意に生じる。このコントラストは、曲げ角度が90°に近くなる程、大きくなる傾向がある。
【0064】
例えば、曲部BPを有する複数の凸部または凹部111が、互いに隣接する凸部または凹部111の曲部BPが隣接または近接するように配置された場合、上記コントラストにより複数の曲部BPが連なった部分は手前側または奥側に膨らんでいるように立体的に視認される。手前側と奥側のどちらに視認されるかは、光源と積層体と観察者の位置関係によって決まる。
図7は、平面視蛇行線状の複数の凸部または凹部が、互いに隣接する凸部または凹部の曲部が隣接するように配置された複数の凸部または凹部のパターンの例を示す。
図7では、凸部または凹部111を黒の実線で示してある。図示するように、複数の曲部が連なった部分は手前側または奥側に膨らんでいるように立体的に視認される。
【0065】
上記設計を応用すれば、積層体に彫刻を入れずに、切子ガラスのような外観を呈する積層体を提供できる。
図8~
図11に、切子ガラスのように見える複数の凸部または凹部のパターンの例を示す。
図10において、左図はパターンの全体図であり、右下の図はパターンの中心点およびその近傍の部分拡大図である。
図8~
図11では、凸部または凹部111を黒の実線で示してある。積層体は、
図8~
図11に示すようなパターンを1つまたは2つ以上有することができる。
【0066】
図8~
図11に示す態様の複数の凸部または凹部111のパターンは、平面視にて、曲部BPを介してなめらかに接続された第1の方向に向かう第1の直線部LP1と第2の方向に向かう第2の直線部LP2とを含むライン状の複数の凸部または凹部111が、等ピッチで同じ方向に複数配列した凸部群または凹部群111Gを有する。パターンは、好ましくは中心部から互いに重なり合わずに複数の径方向に延びる複数の凸部群または凹部群111Gを含むことができる。
図8~
図11に示す複数の凸部または凹部111の配列パターンは、本発明者の先の出願である特願2018-141344号(本願の出願時において未公開)の
図13~
図16に記載の複数の凸部(21)の配列パターンと同様である。パターンの詳細については、この特許文献を参照されたい。
【0067】
図8~
図11に示すような、中心部から互いに重なり合わずに複数の径方向に延びる複数の凸部群または凹部群111Gからなる放射状のパターンにはさらに、同じような複数の凸部群または凹部群111Gを用いて、放射状のパターンの各頂点を繋ぐ輪郭パターンを形成できる。
【0068】
一例として、
図12には、
図8に示したような、中心部から4方向に90°間隔で延びる4つの凸部群または凹部群111Gからなる放射状パターンに対して、この放射状パターンの互いに隣接する2つの頂点を1つの凸部群または凹部群111Gで繋ぐ様子を示してある。放射状パターンの複数の頂点を複数の凸部群または凹部群111Gで繋ぐことで、放射状のパターンの各頂点を繋ぐ輪郭パターンを形成できる。
図1に示した第1実施形態の積層体1のように、凹凸層が、複数の凹部22B内に形成された複数の気体部と、これら複数の気体部を互いに隔離する複数の樹脂部(複数の凸部22A)とを含む気体樹脂複合層である場合、凹凸層内において、上記の放射状パターンと輪郭パターンを含む、複数の凸部群または凹部群111Gのパターンの非形成領域は、樹脂部のみからなる樹脂単独領域120であることができる。
このようなパターン設計は、
図9~
図11に示す例の放射状パターンを含む、任意の放射状パターンに、同様に適用できる。放射状パターンと輪郭パターンは、自由に組み合わせることができる。なお、
図12に示すように、輪郭パターンは、放射状パターンの全輪郭のうち一部にのみ形成してもよい。
【0069】
上記したように、複数の凸部群または凹部群111Gのパターンの非形成領域は、樹脂部のみからなる樹脂単独領域120であることができる。この領域は、特異的な反射がなく、支持部材11と同等の外観を呈し、切子ガラスの彫刻をしていないように見える領域である。
凹凸層内に、複数の凸部群または凹部群111Gのある領域と、樹脂部のみからなる樹脂単独領域120とを設けることにより、切子の彫刻があるように見える領域と切子の彫刻がないように見える領域とを、任意に設計できる。なお、樹脂単独領域120としては、複数の凸部群または凹部群111Gによって囲まれた閉領域120Aと、複数の凸部群または凹部群111Gによって囲まれずに一部が開放した開領域120Bの2種がある。
【0070】
(平面パターンの第2実施形態)
図7~
図12に示すパターン例は、1つの凸部群または凹部群111G内において、曲部の連なる方向が、直線方向である例である。曲部の連なる方向は、直線方向でなくてもよい。
図13Aおよび
図13Bは、1本の平面視蛇行線状の凸部または凹部の模式平面図の例である。図中、太線111、121は、1本の凸部または凹部を示す。図示例の凸部または凹部はいずれも、両線端を有している。図中、符号112、122はそれぞれ、凸部または凹部111、121の全体に外接する最小面積の架空長方形を示す。
凸部または凹部の平面形状は、平面視にて線端を有さない環状の蛇行線状であってもよい。
【0071】
個々の凸部または凹部について、凸部または凹部の全体に外接する最小面積の架空長方形を描き、接線が、架空長方形の互いに対向する2つの辺の線方向に対して平行である複数の極点をそれぞれ特定極点と定義する。ただし、線端がある場合、線端は特定極点には含めない。
【0072】
図13Aに示す凸部または凹部111は2つの極点を有し、これら2つの極点はいずれも、接線が、架空長方形112の互いに対向する2つの辺112A、112Bの線方向に対して平行である特定極点111Pである。
図13Aに示す例では、2つの特定極点111Pはいずれも、架空長方形112の互いに対向する2つの辺112A、112B上に存在している。
【0073】
図13Bに示す凸部または凹部121は6つの極点を有し、これら6つの極点のうち4つが、接線が、架空長方形122の互いに対向する2つの辺122A、122Bの線方向に対して平行である特定極点121Pである。図中、点121Qは、極点ではあるが、特定極点の定義に当てはまらない点である。
図13Bに示す例では、4つの特定極点121Pのうち2つは、架空長方形122の互いに対向する2つの辺122A、122B上に存在し、残りの2つは架空長方形122の内部に存在している。
【0074】
平面パターンの第2実施形態においては、以下のように設計できる。
xを1≦x≦n-1を充足する整数とする。
凹凸構造体の凹凸層においては、平面視にて、
第x番目の凸部または凹部の1つの特定極点と、この特定極点に最も近い第x+1番目の凸部または凹部の1つの特定極点とを第x番目の架空直線で繋ぐ操作を、第1番目の凸部または凹部の任意の1つの特定極点を開始点として、第n番目の凸部または凹部の1つの特定極点に到達するまで繰り返したとき、
第x番目の架空直線の線方向と第x+1番目の架空直線の線方向とが異なる。
【0075】
図14A、
図15A、
図16、
図17は、複数の凸部または凹部SCの平面パターン例を示す模式平面図である。これらの図においては、図示上下方向に直線状または蛇行線状の複数の凸部または凹部SCが、1000μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下のピッチで、図示左右方向に並んで形成されている。
図14A、
図15A、
図16、
図17において、凸部または凹部SCの線幅およびピッチは、実際よりも拡大して図示してある。
【0076】
図14Aに示すパターンでは、直線状の凸部または凹部SCと蛇行線状の凸部または凹部SCとが混在しているが、複数の凸部または凹部SCのうち、平面視蛇行線状のものについて、並び方向に第1番目から第n番目までを特定する。すなわち、第1番目から第n番目の凸部または凹部SCには、直線状の凸部または凹部SCは含まれない。
ここでは、例として、
図14A、
図15A、
図16、
図17に示す平面パターンにおいて、図示最左端の平面視蛇行線状の凸部または凹部を「第1番目の凸部または凹部」とし、図示最右端の平面視蛇行線状の凸部または凹部を、第n番目の凸部または凹部とする。
【0077】
図14Bは、
図14Aに示す複数の凸部または凹部SCに対して、第x番目(ただし、1≦x≦n-1である。)の凸部または凹部SCの1つの特定極点と、この特定極点に最も近い第x+1番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点とを第x番目の架空直線で繋ぐ操作を、第1番目の凸部または凹部SCの任意の1つの特定極点を開始点として、第n番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点に到達するまで繰り返して得た架空直線群を例示したものである。
図14Bには例として、2つの架空直線群Ls1、Ls2を示している。
図14Bにおいて、架空直線群Ls1は直線ではなく、架空直線群Ls1に含まれる複数の架空直線の線方向(線角度)は、変化している。架空直線群Ls1において、第x番目の架空直線の線方向と第x+1番目の架空直線の線方向(線角度)とが異なっている。架空直線群Ls2についても同様である。
【0078】
図15Bは、
図15Aに示す複数の凸部または凹部SCに対して、第x番目(ただし、1≦x≦n-1である。)の凸部または凹部SCの1つの特定極点と、この特定極点に最も近い第x+1番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点とを第x番目の架空直線で繋ぐ操作を、第1番目の凸部または凹部SCの任意の1つの特定極点を開始点として、第n番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点に到達するまで繰り返して得た架空直線群を例示したものである。
図15Bには例として、2つの架空直線群Ms1、Ms2を示している。
図15Bにおいて、架空直線群Ms1は直線ではなく、架空直線群Ms1に含まれる複数の架空直線の線方向(線角度)は、変化している。第x番目の架空直線の線方向と第x+1番目の架空直線の線方向(線角度)とが異なっている。架空直線群Ms2についても同様である。
【0079】
図16に示すパターンにおいても、
図14Aおよび
図15Aに示すパターンと同様、第x番目(ただし、1≦x≦n-1である。)の凸部または凹部SCの1つの特定極点と、この特定極点に最も近い第x+1番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点とを第x番目の架空直線で繋ぐ操作を、第1番目の凸部または凹部SCの任意の1つの特定極点を開始点として、第n番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点に到達するまで繰り返したとき、第x番目の架空直線の線方向と第x+1番目の架空直線の線方向(線角度)とが異なっている。
【0080】
図17に示すパターンでは、第x番目(ただし、1≦x≦n-1である。)の凸部または凹部SCの1つの特定極点と、この特定極点に最も近い第x+1番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点とを第x番目の架空直線で繋ぐ操作を、第1番目の凸部または凹部SCの任意の1つの特定極点を開始点として、第n番目の凸部または凹部SCの1つの特定極点に到達するまで繰り返したとき、第x番目の架空直線の線方向と第x+1番目の架空直線の線方向(線角度)とは一定である。
図17には例として、1つの架空直線群Ns1を示している。架空直線群Ns1は、1つの直線であり、架空直線の線方向(線角度)は変化していない。
【0081】
図18は、
図14A、
図15A、
図17に示すそれぞれパターンにおいて、任意の1つの架空直線群における架空直線の番号xと架空直線の角度との関係例を示すグラフである。例えば、
図14Aに示すパターンでは、
図14Bに示す架空直線群Ls1について、架空直線の番号xと架空直線の角度との関係を求め、グラフに示した。
なお、上記開始点を通り、この開始点が属する架空長方形の辺に対して垂直な方向を角度0°の基準線として、-90~90°の範囲で、個々の架空直線の角度[°]を求めた。
図18に示すように、
図14Aおよび
図15Aに示すパターンでは、架空直線の番号xが変わると、架空直線の角度が変化した。
図14Aおよび
図15Aに示すパターンでは、上記グラフは、xの増加に対して角度が増加する1つ以上の角度増加部と、xの増加に対して角度が減少する1つ以上の角度減少部とを含んでいた。
図15Aに示すパターンでは、上記グラフは、2つ以上の角度増加部と2つ以上の角度減少部とを含んでいた。
図18に示すように、
図17に示すパターンでは、架空直線の番号xが変わっても、架空直線の角度は変化しなかった。
【0082】
図19は、
図14A、
図15A、
図16、
図17に示すそれぞれパターンにおいて、凸部または凹部の番号xと1本の凸部または凹部に含まれる特定極点の個数との関係例を示すグラフである。
凹凸層においては、平面視にて、第1番目~第n番目の凸部または凹部の特定極点の数が少なくとも部分的に変化することが好ましい。
図14Aおよび
図16に示すパターンでは、平面視にて、第1番目~第n番目の凸部または凹部の特定極点の数が少なくとも部分的に変化している。凹凸層においては、平面視にて、少なくとも1つの凸部または凹部の特定極点の数が3つ以上であることが好ましい。例えば、
図16に示すパターンでは、平面視にて、凸部または凹部の特定極点の数が3つ以上で変化しており、好ましい。
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、積層体、視線または光源の角度が変化したとき、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られ、面内位置によって色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性に優れる積層体を提供できる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。例1、5、6、9、11が実施例、例10は参考例、例2~4、7、8が比較例である。
【0085】
[材料]
各例で用いた材料の略号は、以下の通りである。
<金型用の金属板>
(M1)Ni金属板(縦10cm×横10cm×厚み5mm、(株)ニラコ社製)。
<離型剤>
(RA1)ダイキン工業社製「オプツール HD-2100」。
【0086】
<硬化性組成物>
(R1)トリシクロデカノールアクリレート(新中村化学社製「A-DCP」)と、ウレタンアクリレート(新中村化学社製「UA-122P」)と、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製「IRGACURE184」)とを、質量比50:50:1の比率で混合した紫外線硬化性組成物。
(R2)透明接着剤(サンライズMSI社製「フォトボンド」)。
【0087】
<透光性樹脂フィルム>
(F1)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(縦10cm×横10cm×厚み125μm、プリンタペーパープロ社製)。
(F2)EVAフィルム(縦10cm×横10cm×厚み0.4mm、ブリジストン社製「AB膜」)。
【0088】
<粘着テープ>
(T1)透明粘着テープ(縦10cm×横10cm、総厚み10μm(粘着層の厚み:4μm、基材PETフィルムの厚み:6μm)、日栄化工社製「GL-10」)。
【0089】
<ガラス板>
(G1)フロートガラス板(縦10cm×横10cm×厚み1.8mm、屈折率1.52、AGC社製「FL2」)。
【0090】
[例1]
(金型(MM)の作製)
例1において、Ni金属板(M1)に対して公知の掘削加工を施して、表面に、平面視蛇行線状、断面視半円状の複数の凹部と、これら複数の凹部の間隙に形成された複数の凸部とからなる凹凸構造を有する金型(MM1)を得た。
複数の凹部の平面パターンは、
図16に模式的に示すパターンとした。平面パターンの詳細な説明は、[発明を実施するための形態]の項を参照されたい。
図14A、
図15A、
図16、
図17に示すそれぞれパターンにおいて、凸部または凹部の番号xと1本の凸部または凹部に含まれる特定極点の個数との関係例を示すグラフである
図19についても、参照されたい。
複数の凹部の並び方向の模式断面図を、
図20に示す。図中、符号MCは、金型の凹部を示す。
金型(MM)は、製造しようとする凹凸構造体の表面凹凸パターンの反転パターンを有する。
【0091】
例1においては、以下のように設計を行った。図示平面パターンにおいて図示上下方向に蛇行しながら延びる複数の凹部の図示上下の両線端部分を「複数の凹部の両線端部分」と言う。得られる凹凸構造体の複数の凸部についても、同様である。複数の凸部または凹部のピッチを少なくとも部分的に変化させるため、金型の凹部間距離とピッチ、並びに、凹凸構造体の凸部間距離とピッチについては、特に明記しない限り、「両線端部分」のデータを記載してある。なお、図示平面パターンでは、視認しやすくするため、実際のパターンよりも、ピッチを大きく図示してある。
【0092】
凹部の幅(MW)(凹凸構造体の凸部の幅(RW)に対応):30μm。
凹部の深さ(MH)(凹凸構造体の凸部の高さ(RH)に対応):15μm(幅の半分)。
複数の凹部の両線端部分の凹部間距離(MS)(凹凸構造体の複数の凸部の両線端部分の凸部間距離(RS)に対応):30μm。
複数の凹部の両線端部分のピッチ(MW+MS)(凹凸構造体の複数の凸部の両線端部分のピッチ(RW+RS)に対応):60μm。
【0093】
(凹凸構造体(S)の成形)
得られた金型(MM1)を用いて、凹凸構造体(S1)を成形した。
金型(MM1)の表面全体に1gの離型剤(RA1)を塗工し、80℃30分で乾燥させた。次に、離型剤(RA1)を付与した金型の表面全体に5gの硬化性組成物(R1)を塗工した。この工程において、硬化性組成物(R1)は、金型に形成されたすべての凹部を埋め、さらに、金型上に層を形成するように、塗工を実施した。次に、硬化性組成物(R1)からなる層の上に、気泡が入らないように支持部材としてPETフィルム(F1)を重ねた。次に、PETフィルム(F1)側より、シーシーエス社製「UVLED」を用いて紫外線(365nm)を100mW/m2の照度で10秒間照射し、硬化性組成物(R1)を硬化させた。
【0094】
以上のようにして、表面に、平面視蛇行線状、断面視半円状の複数の凸部とこれら複数の凸部の間隙に形成された複数の凹部とからなる凹凸構造を有する、樹脂製の凹凸構造体(S1)を成形した。得られた凹凸構造体(S1)の複数の凸部の平面パターンは、
図16に模式的に示すパターンである。凸部の幅(RW)、凸部の高さ(RH)、凸部間距離(RS)、および凸部のピッチ(RW+RS)は、それぞれ、用いた金型(MM1)の凹部の幅(MW)、凹部の深さ(MH)、凹部間距離(MS)、および凹部のピッチ(MW+MS)に一致する。これらのデータを表1に示す。なお、この工程で得られた凹凸構造体(S)の凸部の高さを、「成形時の高さ」と言う。表中の凸部間距離(RS)および凸部のピッチ(RW+RS)は、両線端部分のデータである。
【0095】
(第1の積層体(LA)の製造)
金型(MM1)から、凹凸構造体(S1)(硬化性組成物の硬化物)の凹凸面と反対側の面上に支持部材であるPETフィルム(F1)が積層された第1の積層体(LA1)(積層構造:PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1))を剥離した。
凹凸構造体(S1)の断面構造については、
図1の符号11と符号20を参照されたい。ただし、この時点の凸部の断面形状は、半円状である。
【0096】
(第2の積層体(LB)の製造)
粘着テープ(T1)の粘着層を第1の積層体(LA1)の凹凸構造体(S1)の凹凸面上に重ね、その上からゴムローラーを押し付けながら転がすことで、第1の積層体(LA1)上に粘着テープ(T1)を貼り合わせた。このとき、凹凸構造体(S1)の表面に形成された複数の凹部内の空間部を気体部として残すように、第1の積層体(LA1)上に粘着テープ(T1)を平坦に貼り合わせた。このようにして、気体樹脂複合層を含む第2の積層体(LB1)(積層構造:PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1))を得た。
第2の積層体(LB1)の断面構造については、
図1の符号11と符号20と符号31と符号41を参照されたい。なお、図示するように、積層の過程で、凹凸構造体の断面視半円状の凸部は頭部が加圧されて平坦になり、凸部の高さ(RH)は成形時の15μmから13μmとなった。この工程で得られた第2の積層体(LB1)の凸部の高さを、「加圧後の高さ」と言う。
なお、第2の積層体(LB1)に含まれる気体樹脂複合層において、樹脂部の幅は凸部の幅(RW)であり、気体部の幅(GW)は凸部間距離(RS)である。
凸部の積層後の高さ(RH)と気体部の幅(GW)を、表1に示す。表中の気体部の幅(GW)は、両線端部分のデータである。
【0097】
(第3の積層体(LC)の製造)
第2の積層体(LB1)に対して、UVプリンター(UJF-6042MkII、(株)ミマキエンジニアリング社製)を使用して、着色印刷を行った。
第2の積層体(LB1)のPETフィルム(F1)の外面全体に、シアン色の染料を含むインクをインクジェット印刷し、UVランプで硬化させて、表側の着色層を形成した。
第2の積層体(LB1)の粘着テープ(T1)の外面全体に、マゼンタ色の染料を含むインクをインクジェット印刷し、UVランプで硬化させて、裏側の着色層を形成した。
このようにして、
図1に示したような構造を有する第3の積層体(LC1)(積層構造:表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色))を作製した。
【0098】
シアン色の着色層側から、コニカミノルタ社製の分光測色計(CM-5)を使用して、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、反射率の平均値と分散値を求めたところ、平均値は3.8%、分散値は1.8%2であった。
マゼンタ色の着色層側からについても上記と同様に、コニカミノルタ社製の分光測色計(CM-5)を使用して、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、反射率の平均値と分散値を求めたところ、平均値は3.2%、分散値は1.7%2であった。
コニカミノルタ社製の分光測色計(CM-5)を使用して、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長についてシアン色の着色層側からの反射率とマゼンタ色の着色層側からの反射率とを測定し、シアン色の着色層側からの反射率とマゼンタ色の着色層側からの反射率との差の分散値を求めたところ、3.3%2であった。
これらの評価結果を表3に示す。
【0099】
(第4の積層体(LD)の製造)
第3の積層体(LC1)の両面にそれぞれ、EVAフィルム(F2)とガラス板(G1)とを順次重ねて仮積層体を得た。この仮積層体をフィルムの袋の中に入れ、真空中で袋の口を加熱により封止して真空パックを作り、それを100℃で2時間加熱圧着した。加熱圧着後の積層体を袋から取り出し、
図2に示したような積層構造を有する第4の積層体(LD1)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))を得た。
【0100】
表2には、一対のガラス板で挟持する前の積層体(例1では、第3の積層体(LC1))の積層構成を記載してある。表中、「着色層間の構造」は、表側の着色層と裏側の着色層との間の積層構造である。表側の着色層と裏側の着色層のうち一方を形成しなかった例では、「着色層間の構造」に対応する部分の積層構造を記載してある。
なお、便宜上、第3の積層体(LC1)および第4の積層体(LD1)において、「表側(視認側)」と「裏側」は便宜上定めたものであり、いずれの側も表側(視認側)として使用できる。
【0101】
[例2~例4]
(第3、第4の積層体(LC)、(LD)の製造)
例2~例4の各例においては、例1と同様にして得られた第2の積層体(LB1)の少なくとも一方の外面の全体に、例1と同様の方法で、表2に示す色の着色層を形成して、第3の積層体(LC2)~(LC4)を得た。得られた第3の積層体(LC)の両面にそれぞれ、例1と同様の方法で、EVAフィルム(F2)とガラス板(G1)とを積層して、比較用の第4の積層体(LD2)~(LD4)を得た。
各例で得られた第4の積層体(LD)の積層構造は、以下の通りである。
【0102】
例2:(LD2)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0103】
例3:(LD3)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0104】
例4:(LD4)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(裏側の着色層、シアン色)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0105】
例2~例4の各例において、例1と同様にして、表側の着色層側からと裏側の着色層側からについてそれぞれ、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、反射率の平均値と分散値を求めた。
例2~例4の各例において、例1と同様にして、表側の着色層側からと裏側の着色層側からについてそれぞれ、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、表側の着色層側からの反射率と裏側の着色層側からの反射率との差の分散値を求めた。
これらの評価結果を表3に示す。
【0106】
[例1~例4の評価]
例1~4の各例において得られた第4の積層体(LD)について、意匠性を目視評価した。向きを変えながら、第1のガラス板(G1)側から、得られた第4の積層体(LD)を観察した。
いずれの例においても、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られた。特に、観察者から見た観察面において、気体部の幅方向を鉛直方向とし、気体部の長さ方向を水平方向とし、水平方向の中心を通る鉛直方向を軸にして左右に-45°~45°の範囲で回転させたときに、コントラストが顕著に変化し、山と谷が繰り返し連なる山脈のように立体的に見えた。
【0107】
裏側の着色層を形成しなかった例2、表側の着色層を形成しなかった例3、および表側の着色層と裏側の着色層を同じ色とした例4で得られた第4の積層体(LD2)~(LD4)では、向きを変えたときに、コントラストの変化は見られたものの、色の変化は見られなかった。
【0108】
これに対して、凹凸構造体を挟んで、表側の着色層と裏側の着色層を形成し、これらの色を変えた例1で得られた第4の積層体(LD1)では、向きを変えたときに、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高かった。
例1で得られた第4の積層体(LD1)はまた、第1のガラス板(G1)側から観察したときは青色であり、第2のガラス板(G1)側から観察したときは紫色であった。第4の積層体(LD1)は、使用者または観察者が、好みあるいは気分等に応じて、第1のガラス板(G1)側と第2のガラス板(G1)側のいずれの側を表側(視認側)とするかを自由に選択できるリバーシブルタイプであることが確認された。
【0109】
評価結果を表3に示す。外観判定は目視判定により行い、コントラスト変化による立体的視認性と、色の変化による立体的視認性と、それらを総合した視認性についてそれぞれ、◎(優良)、○(良)、△(可)、×(不良)の4段階で評価した。
【0110】
[例5~例8]
(第3、第4の積層体(LC)、(LD)の製造)
例5では、例1で得られた第3の積層体(LC1)の裏側の着色層の全面に、散乱層として白色顔料を含む白色層を形成して、
図3に示したような断面構造の第3の積層体(LC5)を得た。
例6では、例1で得られた第3の積層体(LC1)の裏側の着色層の全面に、散乱層として白色層を形成し、さらにその上に押さえ印刷層として黒色顔料を含む黒色層を形成して、
図4に示すような断面構造の第3の積層体(LC6)を得た。
例7では、例2で得られた第3の積層体(LC2)の粘着テープ(T1)の全面に、散乱層として白色顔料を含む白色層を形成して、第3の積層体(LC7)を得た。
例8では、例4で得られた第3の積層体(LC4)の裏側の着色層の全面に、散乱層として白色顔料を含む白色層を形成して、第3の積層体(LC8)を得た。
例5~例8において、白色層は、UVプリンター(UJF-6042MkII、(株)ミマキエンジニアリング社製)を使用し、白色顔料を含むインクをインクジェット印刷し、UVランプで硬化させて形成した。
例5~例8において、黒色層は、UVプリンター(UJF-6042MkII、(株)ミマキエンジニアリング社製)を使用し、黒色インクをインクジェット印刷し、UVランプで硬化させて形成した。
【0111】
例5~例8の各例において、得られた第3の積層体(LC)の両面にそれぞれ、例1と同様の方法で、EVAフィルム(F2)とガラス板(G1)とを積層して、第4の積層体(LD5)~(LD8)を得た。各例で得られた第4の積層体(LD)の積層構造は、以下の通りである。
【0112】
例5:(LD5)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色)/散乱層(白色層)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0113】
例6:(LD6)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色)/散乱層(白色層)/押さえ印刷層(黒色層)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0114】
例7:(LD7)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/散乱層(白色層)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0115】
例8:(LD8)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層/散乱層(白色層)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0116】
[例5~例8の評価]
例5~例8の各例において得られた第4の積層体(LD)について、意匠性を目視評価した。向きを変えながら、第1のガラス板(G1)側から、得られた第4の積層体(LD)を観察し、例1~例4と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0117】
凹凸構造体を挟んで、表側の着色層と裏側の着色層を形成し、これらの色を変えた例5、例6で得られた第4の積層体(LD5)、(LD6)では、例1と同様、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られた。特に、観察者から見た観察面において、気体部の幅方向を鉛直方向とし、気体部の長さ方向を水平方向とし、水平方向の中心を通る鉛直方向を軸にして左右に-45°~45°の範囲で回転させたときに、コントラストが顕著に変化し、山と谷が繰り返し連なる山脈のように立体的に見えた。これらの例で得られた第4の積層体(LD5)、(LD6)では、向きを変えたときに、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高かった。
【0118】
これらの例で得られた第4の積層体(LD5)、(LD6)は、裏側の着色層上に散乱層として白色層を形成したことで、例1に比して、第1のガラス板(G1)側から見たときの色がより鮮やかとなった。
凹凸構造体を挟んで表側の着色層と裏側の着色層を設け、さらに裏側の着色層の奥に散乱層を配置する構成では、表側の着色層と裏側の着色層の両層を透過した光が散乱層の表面で散乱される。例5、例6で得られた第4の積層体(LD5)、(LD6)では、表側の着色層を透過した光のうちの一部の波長域の光が凹凸層の表面で反射され、表側の着色層と裏側の着色層の両層を透過した波長域の光が散乱層の表面で散乱され、それらの光の波長域が異なる結果、より鮮やかな色を呈することができた。例6では、散乱層の奥にさらに押さえ印刷層としての黒色層を形成したことで、上記作用効果を有し、さらに遮光性のある積層体が得られた。
【0119】
例7と例8で得られた第4の積層体(LD7)、(LD8)では、向きを変えても、コントラストの変化はほとんど見られなかった。これは、1色の着色層しかなかったため、凹凸層の表面で反射された光と散乱層の表面で散乱された光のスペクトルが同等となり、凹凸層における異方性を持った反射が相対的に弱くなったためと考えられる。
【0120】
[例9]
(第3、第4の積層体(LC)、(LD)の製造)
UVプリンター(UJF-6042MkII、(株)ミマキエンジニアリング社製)を使用して、第2の積層体(LB1)の粘着テープ(T1)の全面に、裏側の着色層として、マゼンタインクと白色顔料インクとを質量比9:1で混合した混合インクをスクリーン印刷し、UVランプで硬化させた以外は例1と同様にして、第3の積層体(LC9)を得た。得られた第3の積層体(LC9)の両面にそれぞれ、例1と同様の方法で、EVAフィルム(F2)とガラス板(G1)とを積層して、第4の積層体(LD9)を得た。得られた第4の積層体(LD9)の積層構造は、以下の通りである。
【0121】
例9:(LD9)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(マゼンタ色と白色との混合(質量比9:1))/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0122】
例1と同様にして、表側の着色層側からと裏側の着色層側からについてそれぞれ、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、反射率の平均値と分散値を求めた。
例1と同様にして、表側の着色層側からと裏側の着色層側からについてそれぞれ、390nmから620nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)にて、各測定波長について反射率を測定し、表側の着色層側からの反射率と裏側の着色層側からの反射率との差の分散値を求めた。
これらの評価結果を表3に示す。
【0123】
[例9の評価]
例9で得られた第4の積層体(LD9)について、意匠性を目視評価した。向きを変えながら、第1のガラス板(G1)側から、得られた第4の積層体(LD)を観察し、例1~例4と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0124】
凹凸構造体を挟んで、表側の着色層と裏側の着色層を形成し、これらの色を変えた例9で得られた第4の積層体(LD9)では、例1と同様、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られた。特に、観察者から見た観察面において、気体部の幅方向を鉛直方向とし、気体部の長さ方向を水平方向とし、水平方向の中心を通る鉛直方向を軸にして左右に-45°~45°の範囲で回転させたときに、コントラストが顕著に変化し、山と谷が繰り返し連なる山脈のように立体的に見えた。この例で得られた第4の積層体(LD9)では、向きを変えたときに、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高かった。
【0125】
この例で得られた第4の積層体(LD9)では、裏側の着色層として、マゼンタ色インクと白色顔料インクとを質量比9:1で混合したインクを用いて、散乱層として機能する着色層を形成したことで、例1に比して、第1のガラス板(G1)側から見たときの色がより鮮やかとなった。
凹凸構造体を挟んで表側の着色層と裏側の着色層を設け、さらに裏側の着色層が散乱層として機能する構成では、表側の着色層を透過し裏側の着色層に入射した光が散乱層として機能する裏側の着色層内で散乱される。例9で得られた第4の積層体(LD9)では、表側の着色層と裏側の着色層の吸収波長域が異なるため、表側の着色層を透過した光のうちの一部の波長域の光が凹凸層の表面で反射され、表側の着色層と裏側の着色層の両層を透過した波長域の光が散乱層の表面で散乱され、それらの光の波長域が異なる結果、より鮮やかな色を呈することができた。
【0126】
[例10]
(第5の積層体(LE)の製造)
例1で得られた第1の積層体(LA1)の凹凸構造体(S1)の凹凸面上に、スパッタ法により反射層としてZnS(屈折率:2.3)を60nm厚成膜し、第5の積層体(LE10)(積層構造:ZnS反射層/凹凸構造体(S1)/PETフィルム(F1)(支持部材))を作製した。
【0127】
(第6の積層体(LF)の製造)
第5の積層体(LE10)の両面(ZnS反射層の外面およびPETフィルム(F1)の外面)に対してそれぞれ、UVプリンター(UJF-6042MkII、(株)ミマキエンジニアリング社製)を使用して、表2に示す色の着色層を形成した(断面構造については、
図5を参照されたい。)。
さらに、例6と同様にして、裏側の着色層上に、散乱層として白色層を形成し、さらにその上に押さえ印刷層として黒色層を形成した。このようにして、第6の積層体(LF10)(積層構造:表側の着色層(シアン色)/ZnS反射層/凹凸構造体(S1)/PETフィルム(F1)(支持部材)/裏側の着色層(マゼンタ色)/散乱層(白色層)/押さえ印刷層(黒色層))を作製した。
【0128】
(第7の積層体(LG)の製造)
得られた第6の積層体(LF10)の両面にそれぞれ、例1と同様の方法で、EVAフィルム(F2)とガラス板(G1)とを積層して、第7の積層体(LG10)を得た。得られた第7の積層体(LG10)の積層構造は、以下の通りである。
例10:(LG10)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色)/ZnS反射層/凹凸構造体(S1)/PETフィルム(F1)(支持部材)/裏側の着色層(マゼンタ色)/散乱層(白色層)/押さえ印刷層(黒色層)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板))。
【0129】
[例10の評価]
例10で得られた第7の積層体(LG10)について、意匠性を目視評価した。向きを変えながら、第1のガラス板(G1)側から、得られた第7の積層体(LG10)を観察し、例1~例4と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0130】
凹凸構造体を挟んで、表側の着色層と裏側の着色層を形成し、これらの色を変えた例10で得られた第7の積層体(LG10)では、例1と同様、面内位置によって明暗の変化が異なって様々なコントラストの変化が見られた。特に、観察者から見た観察面において、気体部の幅方向を鉛直方向とし、気体部の長さ方向を水平方向とし、水平方向の中心を通る鉛直方向を軸にして左右に-45°~45°の範囲で回転させたときに、コントラストが顕著に変化し、山と谷が繰り返し連なる山脈のように立体的に見えた。この例で得られた第7の積層体(LG10)では、向きを変えたときに、コントラストの変化に加えて色の変化が見られ、外観の変化がより複雑で、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高かった。
【0131】
例10で得られた第7の積層体(LG10)では、例6で得られた第4の積層体(LD6)と比較して、向きを変えたときの色の変化がより大きく、より立体的に視認しやすく、より意匠性が高かった。これは、表側の着色層を凹凸構造体の凹凸面に沿って形成された反射層の凹凸面上に形成したことで、面内位置によって表側の着色層の厚みが変化し、見る角度によって表側の着色層の厚みが変化したと考えられる。
【0132】
[例11]
(第4の積層体(LD)の製造)
表側と裏側の着色層を以下のように設計変更した以外は例1の第4の積層体(LD1)と同様にして、第4の積層体(LD11)を作製した。
表側の着色層は、平面視20mm角の正方形状の複数のシアン色の着色部と、平面視20mm角の正方形状の複数のマゼンタ色の着色部とを市松模様で配置した構成とした。
裏側の着色層は、平面視20mm角の正方形状の複数の赤色の着色部と、平面視20mm角の正方形状の複数の緑色の着色部とを市松模様で配置した構成とした。
表側のシアン色の着色部と裏側の赤色の着色部とが互いに対向し、表側のマゼンタ色の着色部と裏側の緑色の着色部とが互いに対向するように、設計した。
【0133】
コニカミノルタ社製の分光測色計(CM-5)を使用して、第4の積層体(LD11)のシアン色の着色部と赤色の着色部とが重なった部分について、360nmから740nmまで10nm刻みで測定波長を変え、正反射光除去方式(SCE方式)で反射スペクトルと透過スペクトルを測定した。マゼンタ色の着色部と緑色の着色部とが重なった部分についても、同様に、反射スペクトルと透過スペクトルを測定した。
反射スペクトルを
図21Aに示し、透過スペクトルを
図21Bに示す。シアン色の着色部と赤色の着色部とが重なった部分とマゼンタ色の着色部と緑色の着色部とが重なった部分は、反射スペクトルは大きく異なるが、透過スペクトルはほぼ一致することが確認された。
【0134】
(第8の積層体(LH)の製造)
市販の液晶ディスプレイの表面のガラス板上に透明接着剤(R2)を塗布し、この上になるべく気泡が入らないように、第4の積層体(LD11)を重ねた。このとき、第4の積層体(LD11)の第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板)が、液晶ディスプレイに接するようにした。
次に、第4の積層体(LD11)の第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)側より、シーシーエス社製「UVLED」を用いて紫外線(365nm)を100mW/m2の照度で10秒間照射し、透明接着剤(R2)を硬化させて、第8の積層体(LH11)(積層構造:第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)/第1のEVAフィルム(F2)/表側の着色層(シアン色とマゼンタ色の市松模様)/PETフィルム(F1)(支持部材)/凹凸構造体(S1)/粘着テープ(T1)/裏側の着色層(赤色と緑色の市松模様)/第2のEVAフィルム(F2)/第2のガラス板(G1)(裏側のガラス板)/透明接着剤(R2)/液晶ディスプレイ)を作製した。
【0135】
[例11の評価]
例11で得られた第8の積層体(LH11)について、意匠性を目視評価した。向きを変えながら、第1のガラス板(G1)(表側のガラス板)側から、得られた第8の積層体(LH11)を観察し、例1~例4と同様に評価した。評価結果を表3に示す。液晶ディスプレイの画面の消灯時には、第4の積層体(LD11)と同様に、シアン色とマゼンタ色の市松模様が視認され、高い意匠性が得られた。液晶ディスプレイの画面の点灯時には、シアン色とマゼンタ色の市松模様は視認されず、第8の積層体(LH11)を通して、液晶ディスプレイの画面表示を鮮明に視認できた。
シアン色の着色部と赤色の着色部とが重なった部分とマゼンタ色の着色部と緑色の着色部とが重なった部分は、反射スペクトルは大きく異なるため、液晶ディスプレイの画面の消灯時には表側の市松模様がはっきりと視認できることが確認された。
シアン色の着色部と赤色の着色部とが重なった部分とマゼンタ色の着色部と緑色の着色部とが重なった部分は、透過スペクトルはほぼ一致するため、液晶ディスプレイの点灯時には市松模様は視認されず、液晶ディスプレイ画面表示を鮮明に視認できることが確認された。
液晶ディスプレイの画面の視認性に悪影響を与えることなく、加飾でき、意匠性を高めることが可能な積層体を得ることができた。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
この出願は、2020年3月19日に出願された日本出願特願2020-049285号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0140】
1~5:第1~第5の積層体、11、41:支持部材、20:凹凸構造体、21:第1の平坦層、22:凹凸層(反射層として機能する場合がある)、22A:凸部、22B:凹部、31:第2の平坦層、32:反射層、50:第1の着色層、51、52:着色部、60:第2の着色層、61、62:着色部、81:散乱層、91:押さえ印刷層、111、121:凸部または凹部。