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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】膣洗浄具及び膣洗浄具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 31/00 20060101AFI20250408BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20250408BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20250408BHJP
   B65D 35/08 20060101ALI20250408BHJP
   A47K 7/08 20060101ALI20250408BHJP
   A61M 3/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
A61M31/00
B29C49/48
B29C49/04
B65D35/08
A47K7/08
A61M3/02 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116743
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021000392
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕也
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】実公昭33-004788(JP,Y1)
【文献】実開昭51-025494(JP,U)
【文献】特開平08-067791(JP,A)
【文献】特開平10-086922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0184088(US,A1)
【文献】実開平06-003350(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 31/00
B29C 49/48
B29C 49/04
B65D 35/08
A47K 7/08
A61M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動物を貯留するために中空状に形成され上面に開口面を有する有底筒状の貯留本体部、前記開口面を閉じ外力を加えると変形する押し部、及び前記貯留本体部と前記押し部との間に設けられ、前記押し部に外力を加えた場合に折れる折れ起点部を有し、膣洗浄用の流動物が貯められる部分である貯留部と、
前記流動物を外に出すための供給口及び前記供給口と前記貯留部の内部とを通じさせる供給路を有し、前記貯留部に設けられ、膣内に挿入可能に構成された供給部と、
を備え、
前記貯留本体部は、底部と、側部と、中間部とを備え、
前記側部は、前記底部の周囲から前記押し部側に立ち上がり、前記供給路が接続され、
前記中間部は、前記側部の全周にわたって形成され、該側部の前記押し部側の端部から内方に延びて成り、
前記折れ起点部は、前記中間部と前記押し部との間に設けられ、
前記押し部はドーム状に形成されており、
前記押し部は、押し部の表面において、該押し部に対向する前記底部から最も離れた位置に部分的に形成されると共に前記貯留部において前記外力を加える部分であることを示す目印部を有し、
前記押し部のうち前記目印部以外の部分が0.5mm以上0.9mm以下で形成され、かつ前記目印部は0.25mm以上0.5mm以下で形成されている、
膣洗浄具。
【請求項2】
前記目印部は、前記押し部の表面において部分的に形成された平面部である、
請求項1記載の膣洗浄具。
【請求項3】
前記目印部は、前記押し部の表面において部分的に形成された凹部である、
請求項1記載の膣洗浄具。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の膣洗浄具の製造方法であって、
前記押し部を含む面を形成する第一成形面と、前記第一成形面に対向し前記貯留部における前記押し部に対向する底部を含む面を形成する第二成形面と、を有する金型を用いて、ダイレクトブロー成形によって成形する、
膣洗浄具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膣洗浄用の流動物を供給する膣洗浄具及び膣洗浄具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の流動物供給具が記載されている。特許文献1記載の押出式注入軟膏容器は、中空の注入容器本体と、注入容器本体の厚み方向の中央部から突出した筒状の注入容器注入部と、を備える。
【0003】
押出式注入軟膏容器は、柔軟性を有する素材で形成されている。押出式注入軟膏容器は、注入容器本体に対してユーザが外力を加えると、注入容器本体が変形し、軟膏の内圧が高まって、注入容器本体の内部に貯留された軟膏が注入容器注入部から出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-235937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の押出式注入軟膏容器では、注入容器本体が膨らんだ形状に形成されているため、ユーザは直感的に注入容器本体のいずれかの箇所に対して力を加えている。
【0006】
しかしながら、注入容器本体に対してユーザが力を加える際に、力を加える箇所が押出式注入軟膏容器ごとに異なると、注入容器本体の変形の態様が押出式注入軟膏容器ごとに異なり、注入容器注入部から出る軟膏の量にばらつきが生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、複数の異なる流動物供給具としての膣洗浄具において、流動物の供給量のばらつきを抑えることができる膣洗浄具及びその膣洗浄具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の膣洗浄具は、流動物を貯留するために中空状に形成され上面に開口面を有する有底筒状の貯留本体部、前記開口面を閉じ外力を加えると変形する押し部、及び前記貯留本体部と前記押し部との間に設けられ、前記押し部に外力を加えた場合に折れる折れ起点部を有し、膣洗浄用の流動物が貯められる部分である貯留部と、前記流動物を外に出すための供給口及び前記供給口と前記貯留部の内部とを通じさせる供給路を有し、前記貯留部に設けられ、膣内に挿入可能に構成された供給部と、を備え、前記貯留本体部は、底部と、側部と、中間部とを備え、前記側部は、前記底部の周囲から前記押し部側に立ち上がり、前記供給路が接続され、前記中間部は、前記側部の全周にわたって形成され、該側部の前記押し部側の端部から内方に延びて成り、前記折れ起点部は、前記中間部と前記押し部との間に設けられ、前記押し部はドーム状に形成されており、前記押し部は、前記押し部の表面において、該押し部に対向する前記底部から最も離れた位置に部分的に形成されると共に前記貯留部において前記外力を加える部分であることを示す目印部を有し、前記押し部のうち前記目印部以外の部分が0.65mm以上0.9mm以下で形成され、かつ前記目印部は0.25mm以上0.35mm以下で形成されている。
【0009】
また、上記膣洗浄具において、前記目印部は、前記押し部の表面において部分的に形成された平面部であることが好ましい。
【0010】
また、上記膣洗浄具において、前記目印部は、前記押し部の表面において部分的に形成された凹部であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る一態様の膣洗浄具の製造方法は、前記膣洗浄具の製造方法である。膣洗浄具の製造方法は、前記押し部を含む面を形成する第一成形面と、前記第一成形面に対向し前記貯留部における前記押し部に対向する底部を含む面を形成する第二成形面と、を有する金型を用いて、ダイレクトブロー成形によって成形する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る上記態様の膣洗浄具及び膣洗浄具の製造方法は、複数の異なる膣洗浄具において、流動物の供給量のばらつきを抑えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る膣洗浄具の斜視図である。
図2図2は、同上の膣洗浄具の一部破断した側面図である。
図3図3は、図2におけるA部分の拡大図である。
図4図4は、同上の膣洗浄具の押し部に対して、外力を加えた状態の一部破断した側面図である。
図5図5は、同上の膣洗浄具の平面図である。
図6図6(a)は、同上の膣洗浄具の製造方法の第一の工程の概略図である。図6(b)は、同上の膣洗浄具の製造方法の第二の工程の概略図である。図6(c)は、同上の膣洗浄具の製造方法の第三の工程の概略図である。図6(d)は、同上の膣洗浄具の製造方法の第四の工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係る膣洗浄具1は、膣洗浄用の流動物を貯留する容器であり、貯留された流動物を身体に対して供給することができる。膣洗浄具1は、図1に示すように、貯留部2と、供給部6と、を備える。
【0015】
貯留部2は、図2に示すように、流動物を貯留するために中空状に形成されている。貯留部2は、外力を加えると変形する押し部5を有する。供給部6は、貯留部2に設けられている。供給部6は、流動物を外に出すための供給口62と、供給口62と貯留部2の内部とを通じさせる供給路61とを有する。
【0016】
押し部5は、図1に示すように、貯留部2において外力を加える部分であることを示す目印部51を有する。
【0017】
このため、ユーザは、目印部51を視覚又は/及び触覚によって確認し、目印部51に対して外力を加えることで、貯留部2に対して、ほぼ同じように力を加えることができる。これにより、複数の異なる膣洗浄具1において、同じような態様で押し部5を変形させることができ、流動物の供給量のばらつきを抑えることができる。
【0018】
(1.2)詳細
以下、本実施形態に係る膣洗浄具1について、詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る膣洗浄具1は、図1に示すように、身体に対して膣洗浄用の流動物を供給する医療器具である。本実施形態に係る膣洗浄具1は、供給部6が膣口に挿入された状態で、膣に対して洗浄体を供給し得る。
【0020】
本実施形態に係る膣洗浄具1は、膣内に対し、流動物としての洗浄体を供給することで、膣内を洗浄する。膣内に供給される洗浄体は、例えば、精製水、イオン交換水、超純水、純水、蒸留水、水道水、薬剤等が挙げられる。洗浄体は、液体等のような粘度の低い流体、及び軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等のような粘度の高い流体を含む。
【0021】
ただし、本開示に係る膣洗浄具1は、洗浄のみを目的とするものでなくてもよく、例えば、炎症、傷等の患部への薬液の塗布、潤滑剤の供給等を目的として、流動物を供給してもよい。また、流動物としては、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤等のような粘度の高い流動物であってもよいし、液剤、水等のような粘度の低い流動物であってもよい。
【0022】
本実施形態に係る膣洗浄具1は、合成樹脂製である。本実施形態に係る膣洗浄具1では、後述の「(1.4)製造方法」で詳細に説明するように、ダイレクトブロー成形によって成形されている。本実施形態に係る膣洗浄具1はポリエチレン製である。ダイレクトブロー成形を行う場合の合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。その他の成形方法による場合の合成樹脂としては、前記の他、シリコンゴム、軟質ポリ塩化ビニル等も挙げられる。膣洗浄具1は、図1に示すように、貯留部2と、供給部6と、を備える。
【0023】
ここで、説明の便宜上、図1に示すように、貯留部2と供給部6とが並ぶ方向を「前後方向」として定義し、前後方向のうち、貯留部2から供給部6に向かう方向を「前方向」とし、その反対方向を「後ろ方向」として定義する。また、図1の矢印で示す方向を「上下方向」として定義し、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向として定義する。ただし、これらの定義は、説明の便宜上、定義しているに過ぎず、使用態様を特定する意図はない。
【0024】
(1.2.1)貯留部
貯留部2は、流動物を貯留するために中空状に形成された部分である。本実施形態に係る貯留部2は、少なくとも一部(ここでは押し部5)が柔軟性を有しており、この一部に外力を加えると変形する。本開示で言う「外力」は、貯留部2の外から内に向かう一方向の力であり、ユーザが指で加えることができる程度の力を意味する。本実施形態に係る外力は、一例として、押し部5に対して加わる下方向に向く力のことである。貯留部2は、図2に示すように、貯留本体部3と、折れ起点部4と、押し部5と、を備える。
【0025】
(1.2.1.1)貯留本体部
貯留本体部3は、貯留部2の主体を構成する部分である。本実施形態に係る貯留本体部3は、上面に開口面34を有する有底筒状に形成されている。ただし、貯留本体部3の開口面34は、押し部5によって閉じられており、この状態で、貯留本体部3は押し部5を保持している。貯留本体部3は、図2に示すように、底部31と、側部32と、中間部33と、を備える。
【0026】
底部31は、貯留部2において下端部を構成する部分である。本実施形態に係る底部31は、押し部5に対向する位置に形成されている。底部31の下面(要するに、貯留部2の下面)は、下方向を向く面である。ここでいう「下方向を向く面」とは、底部31の下面の法線ベクトルを鉛直方向と水平方向とに分解したときに、下方向の分力が水平方向の分力よりも大きい面を意味する。
【0027】
本実施形態に係る底部31は、下方向に膨出したドーム状に形成されている。より詳しく説明すると、底部31は、直線D1と底部31との交点部分に近付くに従って、下方向に行くようなドーム状に形成されている。ここで、「直線D1」は、押し部5に対して加えられる外力の向きに平行で、かつ押し部5の中心を通る。本実施形態では、「直線D1と底部31との交点部分」は、上方から見た(以下、平面視)底部31の中心となる部分に相当し、「底部31の中心」とは、平面視における底部31の図心を意味する。すなわち、実施形態に係る底部31は、平面視で底部31の中心に近付くに従って、下方向(すなわち、押し部5とは反対側)に行くようなドーム状に形成されている。
【0028】
また、本開示で言う「ドーム状」とは、前後方向に直交する断面と、左右方向に直交する断面とのいずれにおいても、円弧状をなすような曲面を意味する。したがって、本開示に係るドーム状に形成された底部31には、例えば、半球面状、トロイダル面状等の底部31も含む。ここでいう、トロイダル面とは、前後方向に直交する断面における底部31の下面の曲率と、左右方向に直交する断面における底部31の下面の曲率とが異なる曲面のことである。本実施形態に係る底部31は、トロイダル面状に形成されているが、本開示に係る底部31としては、ドーム状のほか、例えば、平面状、シリンドリカル面状等に形成されてもよい。
【0029】
側部32は、平面視において、底部31及び押し部5の周囲を囲む部分である。本実施形態に係る側部32の表面は、水平方向を向く面である。ここでいう「水平方向を向く面」とは、側部32の表面の法線ベクトルを鉛直方向と水平方向とに分解したときに、水平方向の分力が鉛直方向の分力よりも大きい面を意味する。側部32と底部31とは、稜線で区切られてもよいし、境界が現れず連続してもよい。
【0030】
本実施形態に係る側部32は、底部31の周囲から立ち上がっている。側部32は、側部32を前後方向に貫通した開口部321を有する。開口部321は、後述の供給部6の供給路61に通じており、すなわち、供給口62に通じている。したがって、貯留部2に貯められた流動物は、開口部321及び供給路61を通って、供給口62から出る。
【0031】
開口部321の中心は、図2に示すように、仮想平面35に対して下側にずれている。仮想平面35は、押し部5を押す方向(ここでは下方向)に直交し、かつ押し部5を押す方向における貯留部2の中央を通る。本実施形態に係る開口部321の全体は、仮想平面35よりも下側に位置している。ここで、本開示で言う「開口部321の中心」は、開口部321における貯留部2に面する開口面の図心を意味する。したがって、例えば、開口部321が、前方向に行くに従って上方向に行くように、水平面に対して傾斜している場合には、開口部321における貯留部2に面する開口面の図心が、仮想平面35に対して下側にずれていればよい。また、本実施形態に係る開口部321の前記開口面は、略円形であるが、本開示では、円形に限らず、例えば、多角形、楕円形、星形、十字形等であってもよい。
【0032】
本実施形態に係る仮想平面35は、水平面に平行であるが、本開示に係る仮想平面35は、水平面に平行であることに限らず、例えば、押し部5を押す方向が鉛直面に対して傾いていれば、仮想平面35も水平面に対して傾くこととなる。
【0033】
中間部33は、側部32と押し部5との間に設けられた部分である。中間部33が設けられていることで、側部32に対してリブ効果を作用させ、これにより側部32の剛性を高めることができる。この結果、押し部5に外力を加えても、貯留本体部3の変形を抑えることができ、押し部5だけを変形させ得る。本実施形態に係る中間部33は、側部32の上端から、平面視で貯留本体部3の中央に向かって延びている。中間部33は、側部32と一体に形成されており、側部32と比べて略同じ厚さに形成されている。
【0034】
本実施形態に係る中間部33は、図3に示すように、側部32に対して交差しており、具体的には、中間部33は側部32に対して略直交している。本実施形態に係る中間部33は、側部32の全周にわたって形成されており、言い換えると、押し部5の外周の全周にわたって形成されている。
【0035】
ここで、図3において、側部32、中間部33及び押し部5の各々の境界を想像線36,37で示す。想像線36は、側部32と中間部33との境界線であり、想像線37は、中間部33と押し部5との境界線である。中間部33の幅寸法H1(ここでは、側部32の表面と直交する面の幅寸法)は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1.0mm以上3mm以下である。なお、図3において表す想像線36,37は、実際の製品には表れない。
【0036】
(1.2.1.2)折れ起点部
折れ起点部4は、中間部33と押し部5との間に設けられており、押し部5に外力が加わったときに折れる部分である。これによって、複数の異なる膣洗浄具1において、押し部5に対して外力を加えた場合に、すべての膣洗浄具1は、図4に示すように、共通して折れ起点部4で折れるため、供給部6の供給口62から出る流動物の量を、略一定の量にすることができる。要するに、本実施形態に係る膣洗浄具1によれば、複数の異なる膣洗浄具1において、流動物の供給量を略均一にすることができる。
【0037】
本開示でいう「折れる」とは、押し部5に外力が加わったときに、折れ起点部4が塑性変形を起こし、押し部5に加わる力を除いても弾性的に復元しないことを意味する。
【0038】
本実施形態に係る折れ起点部4は、中間部33と押し部5との境界であり、薄肉に形成されている。折れ起点部4は、図3に示すように、側部32及び中間部33に比べて、同じ厚さかそれよりも薄い。折れ起点部4は、押し部5に対して外力が加わると、図4に示すように、押し部5が下方向に変位し、折れ起点部4が折れる。このとき、中間部33の形状は保たれる。折れ起点部4が折れると、押し部5の変位した状態が保たれるので、本実施形態に係る膣洗浄具1では、使用済みの膣洗浄具1であることがわかりやすい。
【0039】
図3に示すように、折れ起点部4の厚さ寸法H2は、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.9mm以下である。折れ起点部4を薄くすることで折れ起点部4での折れやすさを向上することができるが、貯留部2の強度と、折れ起点部4での折れやすさの観点から、折れ起点部4の厚さ寸法は、0.6mm以上1mm以下に設定されることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る折れ起点部4は、薄肉に形成されているが、本開示では、押し部5に外力が加わったときに、折れやすい構造であればよく、例えば、段、溝、Vノッチ等によって構成されてもよい。また、折れ起点部4は、長手方向の全長にわたって連続的でなくてもよく、例えば、断続的であってもよい。
【0041】
(1.2.1.3)押し部
押し部5は、貯留部2内に貯留された流動物を供給部6及び供給口62に送るために、ユーザに押される部分である。押し部5は、外力が加えられると変形する。本実施形態に係る押し部5は、上方向を向く面を有しており、この上方向を向く面に対して、下方向に沿う外力が加えられる。
【0042】
ここでいう「上方向を向く面」は、押し部5の表面の法線ベクトルを鉛直方向と水平方向とに分解したときに、上方向の分力が水平方向の分力よりも大きい面を意味する。
【0043】
押し部5は、図2に示すように、ドーム状に形成されている。本実施形態に係る押し部5は、平面視で貯留部2の中央に行くに従って、上方向に行くようなドーム状に形成されている。ただし、本開示に係る押し部5は、底部31と同様、ドーム状のほか、例えば、平面状、シリンドリカル面状等に形成されてもよい。
【0044】
本実施形態に係る押し部5は、底部31から最も離れた部分(ここでは、上端部)に近付くに従って、薄くなるように形成されている。本実施形態に係る押し部5は、上端部に近付くに従って、連続的に薄くなるように形成されているが、本開示では、上端部に近付くに従って、段階的に薄くなるように形成されてもよい。
【0045】
押し部5の上端部は、平面状に形成されており、貯留本体部3の開口面34と略平行である。押し部5のうち貯留本体部3側の端部の厚さ寸法は、0.5mm以上1mm以下で形成されることが好ましく、より好ましくは、0.65mm以上0.9mm以下で形成される。
【0046】
また、押し部5のうちユーザによって直接力が加えられる部分(ここでは上端部)の厚さ寸法は、0.1mm以上0.5mm以下で形成されることが好ましく、より好ましくは、0.25mm以上0.35mm以下で形成される。押し部5のうち、ユーザによって直接力が加えられる部分の厚さ寸法を、0.1mm以上0.5mm以下で形成されることで、ユーザが押し部5に外力を加えたときに、当該部分が、弾性的に伸びて底部31に接触しやすくなる。本開示に係る押し部5では、押し部5の全体を、0.1mm以上0.5mm以下で形成してもよい。
【0047】
本実施形態に係る貯留部2では、貯留本体部3の厚さ寸法は、0.65mm以上1mm以下で形成されており、略一様の厚さに形成されている。また、折れ起点部4の厚さは、貯留本体部3の厚さと同じかそれよりも薄い。そして、本実施形態では、押し部5は、折れ起点部4から、上端部に近付くに従って薄くなるように形成されている。したがって、本実施形態に係る押し部5は、貯留部2における押し部5以外の部分(本実施形態では、貯留本体部3及び折れ起点部4)よりも薄く形成されている。ここでいう「押し部5が押し部5以外の部分よりも薄い」とは、押し部5の厚さ寸法の平均値が、押し部5以外の部分の厚さ寸法の平均値よりも薄いことを意味する。
【0048】
これによって、貯留本体部3を指(例えば第二指~第五指)で支えながら、押し部5に対して指(例えば第一指)で外力を加えたときに、貯留本体部3の形状を保ちながら、押し部5を変形させることができる。この結果、押し部5に外力が加わったときに、押し部5に対向する面(底部31の上面)に沿って押し部5が変形しやすく、流動物を貯留部2から供給部6に向かって効果的に送ることができ、貯留部2に残る流動物の量をできる限り減らすことができる。
【0049】
押し部5に外力が加わった際、押し部5の変形と折れ起点部4での折れとを促進する観点から、図3に示すように、押し部5と中間部33とのなす角αが、90°以上180°未満に設定されていることが好ましい。本実施形態では、押し部5と中間部33とのなす角αは115°±10°に設定されている。ここで、「押し部5と中間部33とのなす角α」は、押し部5の中間部33側の端部の表面と、中間部33の表面とのなす角を意味し、押し部5の表面がドーム状等の曲面で構成される場合、押し部5の中間部33側の端の表面における接線と、中間部33の表面とのなす角を意味する。
【0050】
押し部5と中間部33とのなす角が、90°以上180°未満に設定されることで、押し部5に外力が加わったときに、押し部5が変形しながら下方向に変位しやすく、折れ起点部4が折れやすい。
【0051】
本実施形態に係る押し部5は、図5に示すように、貯留部2において外力を加える部分であることを示す目印部51を有する。ユーザは、目印部51を押すことで、貯留部2に対して適切に外力を加えることができるうえに、押し部5の変形と折れ起点部4での折れとを適切に生じさせることができる。この結果、本実施形態に係る膣洗浄具1によれば、複数の異なる膣洗浄具1において、流動物の供給量を略均一にすることができる。
【0052】
本実施形態に係る目印部51は、図5に示すように、平面部511である。平面部511は、押し部5の表面において部分的に形成されている。平面部511は、平面視略楕円形状に形成されているが、形状に制限はなく、例えば、真円状、多角形状等であってもよい。平面部511は、押し部5の上端部に形成されており、要するに、押し部5において、底部31から最も離れた位置に形成されている。本実施形態に係る平面部511は、押し部5に加えられる外力の方向に直交しており、開口部321と略平行に形成されている。
【0053】
このため、押し部5に外力を加えるにあたり、押し部5のうちの最もストロークが長くなる箇所を、予めユーザに知らせることができる。この結果、本実施形態に係る膣洗浄具1によれば、ユーザに対し、貯留部2において、外力を加える適切な位置を把握させることができる。
【0054】
本開示に係る目印部51は、平面部511に限らず、例えば、凹部、一又は複数の突起、微細凹凸を有するシボ面等によって構成されてもよい。凹部等のように形状で構成された目印部51によれば、ユーザが押し部5を押す際に、目印部51に対して指が引っ掛かりやすく、指の滑りを抑えることができるという利点がある。ただし、目印部51は、形状によるものに限らず、例えば、印刷、塗装、光等を利用したものであってもよい。
【0055】
(1.2.2)供給部
供給部6は、貯留部2に設けられており、貯留部2に貯められた流動物を外に出す。本実施形態に係る供給部6は、筒状(ここでは円筒状)のノズルであり、膣内に挿入される。供給部6は、図2に示すように、供給路61と、供給口62と、を備える。
【0056】
供給路61は、貯留部2の開口部321と供給口62とを通じさせる。供給路61は、供給部6(ノズル)の中心軸に沿って形成されている。本実施形態に係る供給部6は、直線状に形成されているため、供給路61も直線状に形成されている。ただし、供給部6及び供給路61は曲線状に形成されてもよい。
【0057】
供給口62は、供給部6の先端部に形成されている。本実施形態に係る供給口62は、供給部6の先端面の開口面であり、前方向に向いている。ただし、本開示に係る供給口62は、供給路61の中心軸に対して直交する方向(つまり供給部6の径方向)に開口していてもよい。この場合の供給口62は、中心軸の周りに間隔をおいて複数形成されてもよい。また、供給口62が形成される箇所は、供給部6の先端部が好ましいが、複数の供給口62は、例えば、供給部6の長手方向に沿って一定の間隔をおいて形成されてもよい。
【0058】
供給部6の中心軸は、本実施形態では、前後方向に平行であり、押し部5に加えられる外力の方向(一方向)に対して直交している。これにより、ユーザは、供給部6を膣に挿入した状態で、押し部5を指で押しやすい。ここでいう「直交」とは、実質的に「直交」であることを意味し、厳密な意味での「直交」だけでなく、数度の誤差を含む。ここでいう「直交」は、ユーザが供給部6を膣に挿入した状態で、押し部5を指で押しやすいという効果を得られるのであれば、例えば、90°±10°程度の誤差も「直交」の範疇である。
【0059】
供給部6は、側部32から前方向に突出しており、側部32に対して固定されている。本実施形態に係る供給部6は、断面円形状に形成されており、要するに円筒状のノズルである。供給部6は、小径部63と、大径部64と、を備えている。大径部64は、小径部63よりも外形が大きい部分であり、小径部63よりも前側に形成されている。
【0060】
本実施形態に係る膣洗浄具1は、図1に示すように、キャップ7を有する。キャップ7は、供給部6の先端部に対し、取外し可能に取り付けられる。キャップ7は、供給部6に取り付けられることで供給口62を塞ぐことができる。
【0061】
(1.3)使用例
本実施形態に係る膣洗浄具1は、例えば、次のように使用される。ユーザは、洗浄体が貯留された膣洗浄具1を、前後方向が水平面に沿いかつ上下方向が水平面に略直交する向きとなるように持つ。ユーザは、膣洗浄具1の向きをそのままにして、前方向に平行移動させ、供給部6を膣に挿入する。
【0062】
その後、ユーザは、第一指で押し部5の目印部51を下方向に押し、押し部5に対して外力を加える。すると、押し部5は下方向に変位し、折れ起点部4が折れ、貯留部2内の洗浄体が供給口62から出る。供給口62から出た洗浄体は、膣内に供給され、膣内を洗浄することができる。
【0063】
この後、膣洗浄具1を後ろ方向に平行移動させ、供給部6を膣から抜く。この状態では、押し部5が下方向に変位した状態を保っているため、一見して、使用済みの膣洗浄具1であることがわかる。
【0064】
なお、上記使用例では、外力を加える方向は下方向であったが、当該方向は、左右方向のいずれかであってもよいし、鉛直面又は水平面に対して傾斜してもよい。
【0065】
(1.4)製造方法
次に、本実施形態に係る膣洗浄具1の製造方法について説明する。本実施形態に係る膣洗浄具1は、ダイレクトブロー成形によって成形される。本実施形態に係るダイレクトブロー成形には、図6(a)~(d)に示すように、押出し機81と、金型9と、ブロー成形機82と、が用いられる。
【0066】
押出し機81は、溶融された樹脂材料を押し出す装置である。押出し機81は、樹脂材料を押し出し、パリソン100を形成する。パリソン100は、パイプ状の樹脂材料を意味する。押出し機81で押し出されたパリソン100は、金型9に供給される。
【0067】
金型9は、パリソン100を挟んだ状態で、ブロー成形機82から空気が吹き込まれることで、パリソン100を成形品に成形する。本実施形態に係る金型9は、第一成形面911を有する第一の金型91と、第二成形面921を有する第二金型9と、を備える。
【0068】
第一成形面911は、膣洗浄具1の押し部5を含む一側面を形成する。第二成形面921は、底部31を含む他側面を形成する。第一成形面911と第二成形面921とで、膣洗浄具1の外側面が形成される。
【0069】
第一金型9と第二金型9とを型閉めすると、第一成形面911と第二成形面921との間にキャビティが形成される。図6(b)に示すように、キャビティ内にパリソン100を配置し、この状態でブロー成形機82から空気が吹き込まれることで、成形品が成形される。
【0070】
ブロー成形機82は、金型9内に配置されたパリソン100に対し、空気を送り込む装置である。ブロー成形機82は、空気を吐出する吐出ノズル821を有する。
【0071】
膣洗浄具1の製造方法は、次のようにして行われる。第一の工程では、図6(a)に示すように、パリソン100を形成する。本実施形態では、押出し機81を用いて樹脂材料を溶融し、樹脂材料をダイ811から押し出す。このとき、押し出された樹脂材料は、パイプ状に形成されたパリソン100を形成する。
【0072】
次に、第二の工程では、図6(b)に示すように、第一の金型91と、第二の金型92との間にパリソン100を配置した状態で、第一の金型91と第二の金型92とを型閉めする。第一の金型91と第二の金型92とが型閉めされると、パリソン100の長手方向の両端が、第一の金型91と第二の金型92とで挟まれる。
【0073】
次に、第三の工程では、図6(c)に示すように、ブロー成形機82の吐出ノズル821から、パリソン100内に向かって空気を吹き込む。すると、金型9の成形面に沿ってパリソン100が膨らみ、成形品が形作られる。
【0074】
次に、第四の工程では、形作られた成形品を冷却して硬化させ、型開きした後、図6(d)に示すように、不要な部分93(例えばバリ等)をカットする。これによって、本実施形態に係る膣洗浄具1が得られる。
【0075】
この製造方法によれば、パリソン100の中心から遠い箇所、すなわち押し部5の上端部では厚みが薄くなり、パリソン100の中心から近い箇所、すなわち貯留本体部3では厚みが厚くなる。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、押し部5と貯留本体部3とで厚みの異なる膣洗浄具1を好適に製造することができる。
【0076】
(2)態様
以上説明したように、第1の態様に係る膣洗浄具1は、膣洗浄用の流動物を貯留するために中空状に形成された貯留部2と、貯留部2に設けられた供給部6と、を備える。貯留部2は、外力を加えると変形するドーム状の押し部5を有する。供給部6は、膣内に挿入可能で、流動物を外に出すための供給口62と、供給口62と貯留部2の内部とを通じさせる供給路61と、を有する。押し部5は、貯留部2において外力を加える部分であることを示す目印部51を有する。
【0077】
この態様によれば、ユーザは、目印部51を視覚又は/及び触覚によって確認し、目印部51に対して外力を加えることで、貯留部2に対して、ほぼ同じように力を加えることができる。これにより、この態様の膣洗浄具1によれば、複数の異なる膣洗浄具1において、同じような態様で押し部5を変形させることができ、流動物の供給量のばらつきを抑えることができる。
【0078】
第2の態様に係る膣洗浄具1では、第1の態様において、目印部51は、押し部5の表面において部分的に形成された平面部511である。
【0079】
この態様によれば、形状によって目印部51を実現できるため、指等による触覚及び視覚によって目印部51を認識することができる。
【0080】
第3の態様に係る膣洗浄具1では、第1又は第2の態様において、目印部51は、押し部5の表面において部分的に形成された凹部である。
【0081】
この態様によれば、形状によって目印部51を実現できるため、指等による触覚及び視覚によって目印部51を認識することができ、さらに、指等を目印部51に載せた状態において、目印部51から指等が滑りにくい。
【0082】
第4の態様に係る膣洗浄具1では、第1~3のいずれか一つの態様において、貯留部2は、押し部5に対向する底部31を有する。目印部51は、押し部5において、底部31から最も離れた位置にある。
【0083】
この態様によれば、最もストロークが長くなる箇所に対し、ユーザが外力を加えることができるため、貯留部2に貯留された流動物を効果的に供給部6に送ることができる。
【0084】
の態様に係る膣洗浄具1の製造方法は、第1~のいずれか一つの態様の膣洗浄具1の製造方法である。膣洗浄具1の製造方法は、金型9を用いて、ダイレクトブロー成形によって成形する。金型9は、第一成形面911と、第一成形面911に対向する第二成形面921と、を有する。第一成形面911は、膣洗浄具1における押し部5を含む面を形成する。第二成形面921は、膣洗浄具1における底部31を含む面を成形する。
【0085】
この態様によれば、上記態様に係る膣洗浄具1を、製造性よく製造することができる。
【0086】
第2~第の態様に係る構成については、膣洗浄具1に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0087】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、押し部5に対して外力を加える方向として、下方向を一例として説明したが、外力を加える方向は、押し部5の位置に応じて、適宜設定することができる。例えば、押し部5の主面が下方向に向く場合、外力を加える方向は上方向である。また、押し部5の主面が後ろ方向を向くように構成されてもよい。
【0088】
上記実施形態に係る膣洗浄具1では、供給部6はノズルであったが、本開示に係る膣洗浄具1では、供給部6は、例えば、柔軟性(可とう性)を持つチューブ、針、シャワーヘッド等であってもよい。
【0089】
記実施形態に係る押し部5は、押し部5の全体が貯留本体部3よりも薄く形成されていたが、本開示では、押し部5のうちの貯留本体部3側の端部のみが、貯留本体部3よりも薄く形成されてもよい。
【0090】
本開示にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0091】
また、本開示において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0092】
膣洗浄
2 貯留部
31 底部
5 押し部
51 目印部
511 平面部
6 供給部
61 供給路
62 供給口
9 金型
91 第一の金型
911 第一成形面
92 第二の金型
921 第二成形面
図1
図2
図3
図4
図5
図6