(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】マスフローコントローラの流量推定
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020211417
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-11-16
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】コチアディフェロー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー パトリック
【審査官】田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110851(WO,A1)
【文献】特開2018-097759(JP,A)
【文献】特開2015-044680(JP,A)
【文献】特開2014-115164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0081643(US,A1)
【文献】国際公開第2010/142999(WO,A2)
【文献】特表2019-512802(JP,A)
【文献】特開2018-151771(JP,A)
【文献】特開2018-147385(JP,A)
【文献】特開2007-163478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
G01F 1/00 - 1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有するブロック本体と、
前記ブロック本体の前記流路内の少なくとも一部に設けられたバルブと、
前記バルブの開閉の程度を測定するバルブ位置センサと、
前記流路を流れる流体の温度を検出するように構成された第1温度センサと、
前記流路における前記バルブの上流側に配置された第1圧力センサと、
前記流路における前記バルブの下流側に配置された第2圧力センサとを備えたマスフローコントローラと、
プロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記バルブ位置センサからバルブ位置データを受信し、
前記第1温度センサから第1温度データを受信し、
前記第1圧力センサから、前記流路内の前記流体に対する第1圧力データを受信し、
前記第2圧力センサから、前記流路内の前記流体に対する第2圧力データを受信し、
前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データに、訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を推定し、
前記訓練済み機械学習モデルが、訓練用バルブ位置データと、訓練用第1温度データと、訓練用第1圧力データと、訓練用第2圧力データと、訓練用流量データとを含む訓練データセットを用いて訓練されたものであり、少なくとも前記流路内の前記流体の流動様式に基づいて前記流量を推定するものであり、
前記流路にリストリクタが設けられておらず、かつ前記流路を流れる流体が複数の潜在的な流動様式を有するものである、マスフローコントローラ。
【請求項2】
前記訓練済み機械学習モデルが、少なくとも1つのスカラー値を出力するように構成された回帰モデルである請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項3】
前記プロセッサがさらに、前記訓練済み機械学習モデルにおいて、前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データから、正規化されたバルブ位置データと、正規化された第1温度データと、正規化された第1圧力データと、正規化された第2圧力データとを決定し、
前記正規化されたバルブ位置データと、前記正規化された第1温度データと、前記正規化された第1圧力データと、前記正規化された第2圧力データに、多項式回帰を少なくとも部分的に適用して、前記流路内の前記流体の流量を推定するように構成されている請求項2に記載のマスフローコントローラ。
【請求項4】
多項式回帰の1又は複数の係数を記憶するメモリをさらに備え、
前記プロセッサが、前記1又は複数の係数に少なくとも部分的に基づいて前記流体の流量を推定するように構成された、請求項3に記載のマスフローコントローラ。
【請求項5】
前記ブロック本体内であって、前記流路における前記バルブの下流側に設けられた第2温度センサをさらに含み、
前記第1温度センサが、前記流路における前記バルブの上流側に配置され、
前記プロセッサが、
前記第2温度センサから第2温度データを受信し、
前記第2温度データに前記訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を推定するようにさらに構成された、請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項6】
前記プロセッサが、
前記訓練済み機械学習モデルにおいて、正規化された第2温度データを決定し、
前記第2温度データに多項式回帰を少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を決定するようにさらに構成された、請求項5に記載のマスフローコントローラ。
【請求項7】
前記訓練済み機械学習モデルが、カスケードフォワードニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークである請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項8】
前記訓練済み機械学習モデルが、前記流路内の前記流体の流動様式を識別するように構成されている請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項9】
前記プロセッサがさらに、前記推定した流量に少なくとも部分的に基づいて、前記バルブに含まれるアクチュエータに駆動信号を送信するように構成され、
前記アクチュエータが、前記駆動信号の受信に応じて、前記バルブの位置を変更するように構成された、請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項10】
前記プロセッサがさらに、前記第1圧力センサと前記第2圧力センサの少なくとも一方の校正後の経過時間に少なくとも部分的に基づいて前記流量を推定するように構成された、請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項11】
前記第1温度センサが前記ブロック本体の壁内に配置されている請求項1に記載のマスフローコントローラ。
【請求項12】
流体が流れる流路にリストリクタが設けられておらず、かつ前記流路を流れる流体が複数の潜在的な流動様式を有するマスフローコントローラの使用方法であって、
バルブの開閉の程度を測定するバルブ位置センサにおいて、ブロック本体を通り抜ける
前記流路内の少なくとも一部に設けられたバルブのバルブ位置データを測定するステップと、
第1温度センサにおいて、前記流路内を流れる流体の第1温度データを測定するステップと、
前記流路における前記バルブの上流側に配置された第1圧力センサにおいて、前記流体の第1圧力データを測定するステップと、
前記流路における前記バルブの下流側に配置された第2圧力センサにおいて、前記流体の第2圧力データを測定するステップと、
プロセッサにおいて、
前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データを受信し、かつ
前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データに、訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を推定するステップと、
前記訓練済み機械学習モデルが、訓練用バルブ位置データと、訓練用第1温度データと、訓練用第1圧力データと、訓練用第2圧力データと、訓練用流量データとを含む訓練データセットを用いて訓練されるステップと、
前記訓練済み機械学習モデルが、少なくとも前記流路内の前記流体の流動様式に基づいて前記流量を推定するステップと、を含むマスフローコントローラの使用方法。
【請求項13】
前記訓練済み機械学習モデルが、少なくとも1つのスカラー値を出力するように構成された回帰モデルである、請求項12に記載の使用方法。
【請求項14】
前記流路内の前記流体の流量を推定するステップが、
前記訓練済み機械学習モデルにおいて、前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データから、正規化されたバルブ位置データと、正規化された第1温度データと、正規化された第1圧力データと、正規化された第2圧力データとを決定するステップと、
前記正規化されたバルブ位置データと、前記正規化された第1温度データと、前記正規化された第1圧力データと、前記正規化された第2圧力データとに多項式回帰を適用するステップとを含む、請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
第2温度センサにおいて、前記流路内を流れる前記流体の第2温度データを測定するステップと、
前記プロセッサにおいて、前記第2温度データに前記訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を推定するステップとをさらに含む、請求項12に記載の使用方法。
【請求項16】
前記第1温度センサが、前記流路における前記バルブの上流側に配置され、
前記第2温度センサが、前記流路における前記バルブの下流側に配置されている、請求項15に記載の使用方法。
【請求項17】
前記推定した流量に少なくとも部分的に基づいて、前記バルブに含まれるアクチュエータに駆動信号を送信するステップと、
前記アクチュエータを介して、前記駆動信号の受信に応じて、前記バルブの位置を変更するステップを更に含む、請求項12に記載の使用方法。
【請求項18】
流路を有するブロック本体と、
前記ブロック本体の前記流路内の少なくとも一部に設けられたバルブと、
前記バルブの開閉の程度を測定するバルブ位置センサと、
前記流路を流れる流体の温度を検知するように構成された第1温度センサと、
前記流路における前記バルブの上流側に配置された第1圧力センサと、
前記流路における前記バルブの下流側に配置された第2圧力センサと、
1又は複数の多項式回帰係数を記憶するメモリと、
プロセッサとを備え、
前記プロセッサが、
前記バルブ位置センサからバルブ位置データを受信し、
前記第1温度センサから第1温度データを受信し、
前記第1圧力センサから前記流路内の前記流体の第1圧力データを受信し、
前記第2圧力センサから前記流路内の前記流体の第2圧力データを受信し、
訓練済み機械学習モデルにおいて、前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データから、正規化されたバルブ位置データと、正規化された第1温度データと、正規化された第1圧力データと、正規化された第2圧力データとを決定し、
前記正規化されたバルブ位置データと、前記正規化された第1温度データと、前記正規化された第1圧力データと、前記正規化された第2圧力データに、1又は複数の多項式回帰係数を有する多項式回帰を少なくとも部分的に適用して、さらに、少なくとも前記流路内の前記流体の流動様式に基づいて、前記流路内の前記流体の流量を決定するように構成されて
おり、
前記流路にリストリクタが設けられておらず、かつ前記流路を流れる流体が複数の潜在的な流動様式を有するマスフローコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マスフローコントローラは、マスフローコントローラを流れる流体の流量を高い精度で決定することが望ましい半導体デバイス製造などの用途で頻繁に使用され、通常、流量は、直接測定されるのではなく、流体及びバルブの測定された特性に基づいて演算される。しかしながら、そのような測定された特性と流量との関係は複雑な場合がある。例えば、層流状態と乱流状態との間の遷移が発生するパラメータ空間の領域が存在してもよい。したがって、マスフローコントローラにおける流体の流量を、従来の方法を用いて正確に推定することが困難な場合がある。
【発明の概要】
【0002】
本開示の一態様によれば、流路を有するブロック本体を含むマスフローコントローラが提供される。前記マスフローコントローラは、前記ブロック本体の流路内の、少なくとも一部に設けられたバルブをさらに含んでもよい。前記マスフローコントローラは、バルブ位置センサと、前記流路内を流れる流体の温度を検出するように構成された第1温度センサ、前記流路における前記バルブの上流側に配置された第1圧力センサ及び前記流路における前記バルブの下流側に配置された第2圧力センサをさらに含んでもよい。前記マスフローコントローラは、前記バルブ位置センサからバルブ位置データを受信し、前記第1温度センサから第1温度データを受信するように構成されたプロセッサ(又は演算装置、processor)をさらに含んでもよい。前記プロセッサは、前記第1圧力センサから前記流路内の前記流体の第1の圧力データを受信し、第2の圧力センサから前記流路内の前記流体の第2圧力データを受信するようにさらに構成されてもよい。前記プロセッサは、前記バルブ位置データと、前記第1温度データと、前記第1圧力データと、前記第2圧力データに、訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することにより、前記流路内の前記流体の流量を推定(あるいは算出、estimate)するようにさらに構成されてもよい。
【0003】
この概要は、以下の詳細な説明にさらに記載されている複数の概念の選択を簡略化した形で紹介するためのものである。この概要は、特許請求の範囲に記載された対象の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、請求の範囲に記載された対象の範囲を限定するために使用されることを意図したものでもない。さらに、請求の範囲に記載された対象は、本開示のいずれかの部分に記載された任意の又は全ての欠点を解決する実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】バルブ及びリストリクタを有する従来のマスフローコントローラを示す図。
【
図2】本開示の一実施形態に係る、バルブ及びリストリクタを有するマスフローコントローラの一例を示す図。
【
図3】
図2の実施形態に係る、訓練済み機械学習モデルが実行された場合の、マスフローコントローラのプロセッサを示す模式図。
【
図4】
図2の実施形態に係る、訓練済み機械学習モデルの一例を示す模式図。
【
図5】
図2の実施形態に係る、訓練済み機械学習モデルの訓練過程を示す模式図。
【
図6】
図2の実施形態に係る、マスフローコントローラの校正時の配置の一例を示す図。
【
図7A】
図2のマスフローコントローラで実施され得る方法の一例を示すフローチャート。
【
図7B】いくつかの実施形態で
図7Aの方法に追加して実施され得るステップを示す図。
【
図7C】いくつかの実施形態で
図7Aの方法に追加して実施され得るステップを示す図。
【
図7D】いくつかの実施形態で
図7Aの方法に追加して実施され得るステップを示す図。
【
図7E】いくつかの実施形態で
図7Aの方法に追加して実施され得るステップを示す図。
【
図8】
図2のマスフローコントローラで使用される方法が実行され得る演算環境の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
従来のマスフローコントローラ110の構成の一例を
図1に示す。
図1のマスフローコントローラ110は、流路114を形成するブロック本体112を含む。
図1の例では、マスフローコントローラ110内の流体は、流路114に沿って左から右へと流れる。従来のマスフローコントローラ110は、マスフローコントローラ110を流れる流体の流量を制御するように開閉されるように構成されたバルブ116をさらに含む。バルブ116は、アクチュエータ134によって開閉されてもよい。さらに、マスフローコントローラ110は、流体の流量を減少させるように構成されたリストリクタ118を含む。例えば、リストリクタ118は、流量に上限を課すように構成されてもよい。
図1の例では、リストリクタ118は、バルブ116の下流側にある。
【0006】
図1の従来のマスフローコントローラ110は、第1圧力センサ120、第2圧力センサ122及び第3圧力センサ124をさらに含む。第1圧力センサ120は、流路114上のバルブ116の上流側に配置されている。第2圧力センサ122は、バルブ116とリストリクタ118との間に配置され、第3圧力センサ124は、リストリクタ118の下流側に配置される。第1圧力センサ120、第2圧力センサ122及び第3圧力センサ124は、それぞれの圧力測定値を、プロセッサ130にそれぞれ送信してもよい。
【0007】
プロセッサ130は、第1圧力センサ120、第2圧力センサ122、及び第3圧力センサ124から受信した圧力測定値に基づいて、流体の流量推定値を演算するように構成されている。流量を決定するための1つの従来の方法によれば、プロセッサ130は、圧力測定値を、所定の係数を有する多項式の回帰式に入力してもよい。
【0008】
しかしながら、
図1に示されたマスフローコントローラ110の従来の構成は、特定の次世代半導体製造プロセスのような、例えば非常に高い精度を要する、いくつかの用途において、性能に悪影響を及ぼす可能性のある潜在的な欠点を有している。マスフローコントローラ110のリストリクタ118は、マスフローコントローラ110に、ボリューム及びデッドスペースを追加し、ここに流体が閉じ込められる可能性がある。さらに、流体は、リストリクタ118及びリストリクタ118を収容する流路114に追加されたボリュームを通過しなければならないので、流量を高速で変化させる場合に、リストリクタ118は、マスフローコントローラ110の応答時間を短縮する可能性がある。また、リストリクタ118をマスフローコントローラ110に導入することは、マスフローコントローラ110の製造の複雑さ及びコストを増大させ、マスフローコントローラの動作中における、経年劣化、故障及び/又は性能低下の更なるリスクをもたらす可能性がある。
【0009】
図1のマスフローコントローラ110に代わり、本開示の1つの実施形態に係る、マスフローコントローラ10が
図2に示されている。
図2のマスフローコントローラ10は、流路14を有するブロック本体12を含み、流路14は、ブロック本体12を通り抜ける。
図2の例では、
図1と同様に、流路14は、左から右へと流れるように示されている。マスフローコントローラ10は、ブロック本体12の流路14内の、少なくとも一部に設けられたバルブ16をさらに含む。バルブ16は、流路14に沿った流体の流れを制御するように開閉されてもよい。しかしながら、
図1の従来のマスフローコントローラ110とは異なり、一例である
図2のマスフローコントローラ10は、リストリクタ118を含まない。したがって、リストリクタを使用することで生じる上述の問題は回避され得る。
【0010】
図2のマスフローコントローラ10は、バルブ16の開閉の程度を測定するように構成されたバルブ位置センサ20をさらに含んでもよい。バルブ位置センサ20は、例えば、全閉状態と全開状態との間の範囲内でバルブ位置を測定してもよい。
【0011】
マスフローコントローラ10は、流路14におけるバルブ16の上流側に配置された第1圧力センサ26をさらに含んでもよい。さらに、マスフローコントローラ10は、流路14におけるバルブ16の下流側に配置された第2の圧力センサ28をさらに含んでもよい。したがって、第1圧力センサ26及び第2圧力センサ28は、バルブ16を横切って発生する圧力差を測定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、共通のマニホールドを共有する複数のマスフローコントローラは、下流側にある共通の第2圧力センサ28を共有してもよい。
【0012】
マスフローコントローラ10は、流路14内を流れる流体の温度を検出するように構成された第1温度センサ22をさらに含んでもよい。
図2に示すように、第1温度センサ22は、流路14におけるバルブ16の上流側に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、マスフローコントローラ10は、第2温度センサ24をさらに含んでもよい。第2温度センサ24は、流路14におけるバルブ16の下流側に配置されてもよい。したがって、第1温度センサ22及び第2温度センサ24は、バルブ16を横切って発生する温度差を測定するように構成されてもよい。第1温度センサ22及び第2温度センサ24は、それぞれ、少なくとも部分的にブロック本体12内に配置されてもよい。
【0013】
図2のマスフローコントローラ10は、プロセッサ30をさらに含む。さらに、マスフローコントローラ10は、プロセッサ30に動作可能に結合されたメモリ32を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ30及びメモリ32は、マスフローコントローラ10に物理的に組み込まてもよい。あるいは、プロセッサ30及び/又はメモリ32は、有線信号及び/又は無線信号を介して、マスフローコントローラ10の構成要素と通信するように構成された別個の物理的コンピューティングデバイスに含まれてもよい。プロセッサ30及びメモリ32の機能は、いくつかの実施形態では、通信可能に接続された複数のコンピューティングデバイスの間で分散されてもよく、このコンピューティングデバイスは、1つ以上のクライアントコンピューティングデバイス及び/又は1つ以上のサーバコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0014】
マスフローコントローラ10に含まれる各センサは、
図3に示すように、その測定値をプロセッサ30に送信するように構成されてもよい。プロセッサ30は、バルブ位置センサ20からバルブ位置データ40を受信するように構成されてもよい。さらに、プロセッサ30は、第1温度センサ22から第1温度データ42を受信するように構成されてもよい。マスフローコントローラ10が第2温度センサ24を含む実施形態では、プロセッサ30は、第2温度センサ24から第2温度データ44を受信するようにさらに構成されてもよい。さらに、プロセッサ30は、流路14内の流体について、第1圧力センサ26から第1圧力データ46を受信し、第2圧力センサ28から第2圧力データ48を受信するようにさらに構成されてもよい。
【0015】
プロセッサ30は、流路14内の流体の流量を推定するようにさらに構成されてもよい。マスフローコントローラ10は、
図1のマスフローコントローラ110のリストリクタ118を含まないので、
図2のマスフローコントローラ10を流れる流体は、複数の潜在的な流動様式(flow regime)を有していてもよい。したがって、
図2のマスフローコントローラ10を流れる流体の流動状態(dynamics)は、
図1のマスフローコントローラ110の場合より複雑であってもよい。多項式回帰のみを用いてマスフローコントローラ10を流れる流体の流量をモデル化すると、不正確な流量推定値が得られる可能性がある。
【0016】
流量推定に多項式回帰のみを使用する代わりに、プロセッサ30は、バルブ位置データ40、第1温度データ42、第1圧力データ46及び第2圧力データ48に訓練済み機械学習モデル50を少なくとも部分的に適用することによって、流路14内の流体の流量を推定するように構成されてもよい。マスフローコントローラ10が第2温度センサ24を含む実施形態では、プロセッサ30は、訓練済み機械学習モデル50を第2温度データ44に少なくとも部分的に適用することによって、流路14内の流体の流量を推定するようにさらに構成されてもよい。
【0017】
図4の例に示すように、訓練済み機械学習モデル50は、入力層53、1つ以上の隠れ層55及び出力層57を含むディープニューラルネットワークであってもよい。例えば、訓練済み機械学習モデル50は、カスケードフォワードニューラルネットワークであってもよい。別の例として、訓練済み機械学習モデル50は、畳み込みニューラルネットワークであってもよい。他のタイプの機械学習モデルが代替的に使用されてもよい。
図4に示すように、入力層53、出力層57及び1つ以上の隠れ層55は、それぞれ1つ以上のニューロン51を含む。訓練済み機械学習モデル50の各ニューロン51は、他の層のニューロンとの接続を有してもよく、異なる層のニューロンのペア間の各接続は、関連付けられた重みを有してもよい。さらに、各ニューロン51は、それぞれのバイアス値を有していてもよい。さらに、訓練済み機械学習モデル50の各ニューロン51は、それぞれの伝達関数を有していてもよい。訓練済み機械学習モデル50のニューロン51に対する伝達関数は、例えば、線形伝達関数であってもよいし、対数シグモイド伝達関数であってもよい。伝達関数は、各ニューロンへの入力信号の総和が与えられた場合に、ニューロンが信号を出力するか、するならばどの程度の信号を出力するかを決定する。
【0018】
図3に戻ると、訓練済み機械学習モデル50は、少なくとも1つのスカラー値を出力するように構成された回帰モデルであってもよい。いくつかの実施形態では、スカラー値は、推定流量52であってもよい。他の実施形態では、スカラー値は、プロセッサ30が推定流量52を生成するような、更なる処理を適用可能な中間値であってもよい。例えば、訓練済み機械学習モデル50において、プロセッサ30は、バルブ位置データ40、第1温度データ42、第1圧力データ46及び第2圧力データ48から、正規化されたバルブ位置データ60、正規化された第1温度データ62、正規化された第1圧力データ66及び正規化された第2圧力データ68を決定するように構成されてもよい。マスフローコントローラ10が第2温度センサ24を含む実施形態では、プロセッサ30は、正規化された第2温度データ64を決定するようにさらに構成されてもよい。正規化されたバルブ位置データ60、正規化された第1温度データ62、正規化された第2温度データ64、正規化された第1圧力データ66及び正規化された第2圧力データ68は、それぞれ、正規化されたデータに対して実行される演算結果が、不適切な単位(mismatched units)を有する項を含む式とならないような無次元量として表現されてもよい。一例では、値は、0と1との間の値となるように正規化されてもよい。
【0019】
訓練済み機械学習モデル50が正規化されたデータを生成するように構成されている実施形態では、プロセッサ30は、正規化されたバルブ位置データ60、正規化された第1温度データ62、正規化された第1圧力データ66及び正規化された第2圧力データ68に多項式回帰58を少なくとも部分的に適用して、流路14内の流体の流量を推定するようにさらに構成されてもよい。プロセッサ30が正規化された第2温度データ64を生成するようにさらに構成される実施形態では、プロセッサ30は、流量を推定する場合に、多項式回帰58を、正規化された第2温度データ64に適用するようにさらに構成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、メモリ32は、多項式回帰58の1つ以上の多項式回帰係数72を記憶してもよい。そのような実施形態では、プロセッサ30は、1つ以上の多項式回帰係数72に少なくとも部分的に基づいて流体の流量を推定するようにさらに構成されてもよい。例えば、1つ以上の多項式回帰係数72は、テイラー級数展開の係数であってもよい。さらに、又は代替的に、訓練済み機械学習モデル50が畳み込みニューラルネットワークとして構成されている場合、メモリ32は、ニューラルネットワーク係数を記憶してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、訓練済み機械学習モデル50は、流路14内の流体の流動様式74(層流又は乱流のような)を識別するように構成されてもよい。流動様式74は、予め定められた複数の流動様式74の中から選択されてもよい。そのような実施形態において、プロセッサ30は、複数の流動様式74に対応する多項式回帰係数72の複数の潜在的なセットから、選択した流動様式74に対応する1つ以上の多項式回帰係数72を選択するようにさらに構成されてもよい。したがって、そのような実施形態では、訓練済み機械学習モデル50は、正規化されたセンサデータに対応する1つ以上のスカラー値を出力するように構成された回帰モデルではなく、流動様式74の分類を出力するように構成された分類モデルであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1圧力センサ26及び/又は第2圧力センサ28の校正後の経過時間56が、訓練済み機械学習モデル50の追加入力として使用されてもよい。したがって、プロセッサ30は、第1圧力センサ26及び第2圧力センサ28の少なくとも一方の校正後の経過時間56に少なくとも部分的に基づいて流量を推定するようにさらに構成されてもよい。例えば、いくつかのタイプの圧力センサは、校正後、同じ方向に(より高い圧力測定値又はより低い圧力測定値に向かって)ドリフトする傾向がある。そのような圧力センサが第1圧力センサ26及び/又は第2圧力センサ28として使用される場合、訓練済み機械学習モデル50は、第1圧力センサ26及び第2圧力センサ28の少なくとも一方又は両方の校正後の経過時間56に少なくとも部分的に基づいて、第1圧力データ46及び/又は第2圧力データ48を調整するように構成されてもよい。
【0023】
図2に示すように、バルブ16は、バルブ16の位置を変更するように構成されたアクチュエータ34をさらに含んでもよい。
図3に戻ると、プロセッサ30は、推定流量52に少なくとも部分的に基づいて駆動信号54をアクチュエータ34に送信するように構成されてもよい。アクチュエータ34は、駆動信号54の受信に応じて、バルブ16の位置を変更するように構成されてもよい。このように、プロセッサ30は、推定流量52に基づいてバルブ16の位置を制御するように構成されてもよい。
【0024】
ここで、
図5に目を向けると、訓練済み機械学習モデル50の訓練過程が描かれている。訓練済み機械学習モデル50は、訓練用バルブ位置データ80、訓練用第1温度データ82、訓練用第1圧力データ86、訓練用第2圧力データ88及び訓練用流量データ90を含む訓練データセット76を用いて訓練されてもよい。マスフローコントローラ10が第2温度センサ24を含む実施形態では、訓練データセット76は、訓練用第2温度データ84をさらに含んでもよい。プロセッサ30は、まだ訓練されていない訓練前機械学習モデル(予備的な機械学習モデル、preliminary machine learning model)70から出発して、訓練済み機械学習モデル50を訓練するように構成されてもよい。訓練前機械学習モデル70は、例えば、ランダムに選択された重みで初期化されてもよい。別の例として、初期重みは正規分布であってもよい(正規分布に従ってもよい)。
【0025】
プロセッサ30は、訓練用バルブ位置データ80、訓練用第1温度データ82、訓練用第1圧力データ86及び訓練用第2圧力データ88を、訓練前機械学習モデル70の入力層への例示的な入力として使用するように構成されてもよい。また、マスフローコントローラ10が第2温度センサ24を含む実施形態において、訓練用第2温度データ84を例示的な入力として使用してもよい。訓練用バルブ位置データ80、訓練用第1温度データ82、訓練用第2温度データ84、訓練用第1圧力データ86及び訓練用第2圧力データ88は、訓練前機械学習モデル70の入力層73に含まれる各ニューロン71で受信されてもよい。入力層73に含まれる各ニューロン71は、訓練前機械学習モデル70の隠れ層75に出力値を送信してもよく、隠れ層75に含まれる各ニューロン71は、別の隠れ層75に出力値を送信してもよいし、出力層77に出力値を送信してもよい。
【0026】
訓練済み機械学習モデル50が、第1圧力センサ26及び/又は第2圧力センサ28の校正後の経過時間を入力として使用するように構成されている実施形態では、訓練データセット76は、第1圧力センサ26及び/又は第2圧力センサ28の校正後の複数の訓練時間94をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、入力層73に含まれる1つ以上のニューロン71に校正後の複数の訓練時間94を直接入力するのではなく、プロセッサ30は、訓練用第1圧力データ86及び/又は訓練用第2圧力データ88を訓練前機械学習モデル70に入力する前に、校正後の訓練時間94に基づく所定の補正関数を使用して、訓練用第1圧力データ86及び/又は訓練用第2圧力データ88を修正するように構成されていてもよい。例えば、補正関数は、校正後の訓練時間94の関数として線形であってもよい。
【0027】
訓練用流量データ90は、プロセッサ30が訓練前機械学習モデル70の出力を比較するようにさらに構成された例示的な出力データとして使用されてもよい。一例では、訓練前機械学習モデル70の出力を、訓練用流量データ90に一致させるように誤差逆伝播法(バック・プロパゲーション)が使用されてもよい。そのような実施形態では、訓練前機械学習モデル70の出力と訓練用流量データ90とを比較する誤差関数、例えば平均二乗誤差関数が使用されてもよい。さらに、誤差逆伝播法を用いて訓練前機械学習モデル70を訓練する際に、予め設定された学習率を用いてもよい。他の実施形態では、プロセッサ30は、ベイズ正規化誤差逆伝播法を使用するように構成されてもよい。訓練済み機械学習モデル50が、正規化されたバルブ位置データ60、正規化された第1温度データ62、正規化された第1圧力データ66及び正規化された第2圧力データ68を出力するように構成されている実施形態では、プロセッサ30は、多項式回帰58を訓練前機械学習モデル70の出力値に適用して、推定流量52を生成するようにさらに構成されてもよい。
【0028】
あるいは、訓練済み機械学習モデル50が流動様式74を出力するように構成された実施形態では、プロセッサ30は、訓練データセット76に含まれる例示的な入力に、1つ以上の多項式回帰係数72を含む多項式回帰58を適用して、推定流量52を生成するようにさらに構成されてもよい。そのような実施形態では、プロセッサ30は、識別された流動様式74に対応する1つ以上の多項式回帰係数72を選択してもよい。プロセッサ30は、推定流量52を訓練用流量データ90と比較し、その比較結果に基づいて、訓練前機械学習モデル70に含まれる1つ以上のニューロン71のニューロン重みを修正するようにさらに構成されてもよい。
【0029】
このように、プロセッサ30は、訓練データセット76に含まれる複数の例示的な入力及び出力を用いて訓練前機械学習モデル70を訓練することにより、訓練済み機械学習モデル50を生成するように構成されてもよい。
図5は、マスフローコントローラ10のプロセッサ30で起こる訓練済み機械学習モデル50の訓練を示しているが、訓練済み機械学習モデル50は、1つ以上の追加のコンピューティングデバイスに含まれる1つ以上の他のプロセッサで代わりに生成されてもよい。訓練済み機械学習モデル50が1つ以上の他のコンピューティングデバイスで訓練される実施形態では、訓練済み機械学習モデル50は、訓練後に1つ以上の他のコンピューティングデバイスからマスフローコントローラ10のメモリ32にロードされてもよい。
【0030】
複数のマスフローコントローラ10が製造された場合、同じ訓練済み機械学習モデル50及び多項式回帰係数72が各マスフローコントローラ10に使用された場合、それらのマスフローコントローラ10の推定流量52が不正確になるような小さな違いがマスフローコントローラ10間に存在することがある。そのため、マスフローコントローラ10が製造された後、そのマスフローコントローラ10の多項式回帰係数72が校正されてもよい。あるいは、訓練前機械学習モデル70の出力層77に対して追加の訓練を行ってもよい。このように、マスフローコントローラ10の製造者は、個々のマスフローコントローラ10の構成要素間の相違を考慮してもよい。
【0031】
図6は、マスフローコントローラ10の校正時の配置の例を示す。
図6の例では、マスフローコントローラ10は、既に校正された上流側のマスフローコントローラ10Aと下流側のマスフローコントローラ10Bとの間に配置されている。多項式回帰係数72又は出力層77を校正することは、例えば、流量が既知の流体をマスフローコントローラ10の流路14に流すことを含んでもよい。この流体は、流路14の上流端に配置された上流側のマスフローコントローラ10Aによって、マスフローコントローラ10を通して流してもよい。また、流路14内の流体の圧力は、流路14の下流端に配置された下流側のマスフローコントローラ10Bによって設定されてもよい。また、上流側のマスフローコントローラ10A及び下流側のマスフローコントローラ10Bにおいて、マスフローコントローラ10の上流側及び下流側のそれぞれの圧力及び/又は温度を測定してもよい。このように、流体の流量及びバルブ16を横切る圧力差が測定されてもよい。そして、推定流量52、第1圧力データ46及び第2圧力データ48は、既知の流量及び圧力差の値と一致するように調整されてもよい。
【0032】
図7Aは、マスフローコントローラで使用するための例示的な方法200のフローチャートを示す。方法200は、
図2のマスフローコントローラ10で使用されてもよいし、代替的にいくつかの他のマスフローコントローラで使用されてもよい。ステップ202において、方法200は、バルブ位置センサにより、マスフローコントローラのブロック本体を通過する流路内に少なくとも部分的に配置されるバルブのバルブ位置データを測定するステップを含んでもよい。ステップ204において、方法200は、第1温度センサにおいて、流路内を流れる流体の第1温度データを測定するステップをさらに含んでもよい。ステップ206において、方法200は、流路におけるバルブの上流側に配置された第1圧力センサにおいて、流体に対する第1圧力データを測定するステップをさらに含んでもよい。ステップ208において、方法200は、流路におけるバルブの下流側に位置する第2圧力センサにおいて、流体の第2圧力データを測定するステップをさらに含んでもよい。
【0033】
ステップ210において、方法200は、バルブ位置データ、第1温度データ、第1圧力データ及び第2圧力データをプロセッサで受信するステップをさらに含んでもよい。プロセッサは、マスフローコントローラに物理的に組み込まれていてもよいし、バルブ位置センサ、第1温度センサ、第1圧力センサ及び第2圧力センサと通信可能に接続された別の物理デバイス内に配置されていてもよい。
【0034】
ステップ212において、方法200は、バルブ位置データ、第1温度データ、第1圧力データ及び第2圧力データに訓練済み機械学習モデルを少なくとも部分的に適用することで、流路内の流体の流量を推定するステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、流量の推定は、第1圧力センサ及び第2圧力センサの少なくとも1つの校正後の経過時間にさらに基づいてもよい。いくつかの実施形態では、訓練済み機械学習モデルは、少なくとも1つのスカラー値を出力するように構成された回帰モデルであってもよい。例えば、少なくとも1つのスカラー値は、推定流量であってもよい。他の実施形態では、訓練済み機械学習モデルは、分類モデルであってもよい。
【0035】
図7Bは、方法200のさらなるステップを示しており、これは訓練済み機械学習モデルが1つ以上のスカラー値を出力するように構成された回帰モデルである場合に流体の流量を推定するように実行され得る。方法200はステップ241を含んでもよく、これは訓練済み機械学習モデルにおいて、正規化されたバルブ位置データと、正規化された第1温度データと、正規化された第1圧力データと、正規化された第2圧力データとを、バルブ位置データと、第1温度データと、第1圧力データと、第2圧力データとから決定するステップである。方法200は、ステップ216において、正規化されたバルブ位置データと、正規化された第1温度データと、正規化された第1圧力データと、正規化された第2圧力データとに、多項式回帰を適用するステップをさらに含んでもよい。バルブ位置データと、第1温度データと、第1圧力データと、第2圧力データの正規化は、不適切な単位を有する最適な多項式(best-fit polynomial)の項を含まない多項式回帰の入力として使用できるようにする。
【0036】
図7Cは、訓練済み機械学習モデルが分類モデルである場合に実行され得る方法200の追加のステップを示す。ステップ218において、訓練済み機械学習モデルは、流路内の流体の流動様式を識別するように構成されてもよい。流動様式は、複数の流動様式から選択されてもよい。ステップ220において、方法200は、バルブ位置データと、第1温度データと、第1圧力データと、第2圧力データとに、多項式回帰を適用するステップをさらに含んでもよい。多項式回帰は、識別された流動様式に少なくとも部分的に基づいて選択された1つ以上の多項式回帰係数を有してもよい。
【0037】
図7Dは、いくつかの実施形態において実行され得る方法200のさらなるステップを示す。ステップ222において、方法200は、流路内を流れる流体の第2温度データを第2温度センサで測定するステップをさらに含んでもよい。第1温度センサは、流路におけるバルブの上流側に配置されてもよく、第2温度センサは、流路におけるバルブの下流側に配置されてもよい。このように、第1温度センサ及び第2温度センサは、バルブを横切る温度差を測定してもよい。ステップ224において、方法200は、プロセッサにより、訓練済み機械学習モデルを第2温度データに少なくとも部分的に適用することによって、流路内の流体の流量を推定するステップをさらに含んでもよい。
図7Bに示すステップが実行される実施形態では、正規化された第2温度データは、訓練済み機械学習モデルでさらに決定されてもよい。そのような実施形態では、多項式回帰が正規化された第2温度データにさらに適用されてもよい。あるいは、
図7Cのステップが実行される実施形態では、多項式回帰が第2温度データにさらに適用されてもよい。
【0038】
図7Eは、方法200を実行する際に実行され得る追加のステップを示す。ステップ226において、方法200は、推定流量に少なくとも部分的に基づいて、バルブ内に含まれるアクチュエータに駆動信号を送信するステップをさらに含んでもよい。ステップ228において、方法200は、アクチュエータを介して、駆動信号の受信に応じてバルブの位置を変更するステップをさらに含んでもよい。このように、バルブの位置は、推定流量に基づいて調整されてもよい。
【0039】
上述のシステム及び方法を用いることで、マスフローコントローラが別個のリストリクタを含む場合よりも、リストリクタとして調節可能なバルブを使用する場合に、マスフローコントローラを流れる流体の流量を正確に推定することができる。別個のリストリクタを含まないことにより、マスフローコントローラを製造するためのコスト及び複雑さを低減することができる。さらに、リストリクタとしてバルブを使用することで、流体の流量への調整を、従来のマスフローコントローラで行う場合よりも迅速に行うことができる。流量を推定する場合、多項式回帰に加えて又はこれに代えて、訓練済み機械学習モデルを使用することにより、この単純化されたマスフローコントローラ構成に潜在する、複雑な流動状態(fluid dynamics)をモデル化することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示に記載された方法及びプロセスは、1つ又は複数のコンピューティングデバイスのコンピューティングシステムに関連付けられていてもよい。特に、そのような方法及びプロセスは、コンピュータ・アプリケーション・プログラム又はサービス、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、ライブラリ及び/又は他のコンピュータ・プログラム製品として実施されてもよい。
【0041】
図8は、上述の方法及びプロセスのうちの1つ又は複数を実施することができるコンピューティングシステム300の非限定的な実施形態を模式的に示す。コンピューティングシステム300は、簡略化された形態で示されている。コンピューティングシステム300は、
図2に示された上述のマスフローコントローラ10を具現してもよい。コンピューティングシステム300は、1つ又は複数のパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、タブレットコンピュータ、家庭用コンピュータ、ネットワークコンピューティングデバイス、ゲームデバイス、モバイルコンピューティングデバイス、モバイル通信デバイス(例えば、スマートフォン)及び/又は他のコンピューティングデバイス、ならびにスマートリストウォッチ及びヘッドマウント拡張現実デバイスのようなウェアラブルコンピューティングデバイスの形態をとってもよい。
【0042】
コンピューティングシステム300は、論理プロセッサ302、揮発性メモリ304及び不揮発性記憶装置306を含む。コンピューティングシステム300は、必要に応じてディスプレイサブシステム308、入力サブシステム310、通信サブシステム312及び/又は
図8に示されていない他の構成要素を含んでもよい。
【0043】
論理プロセッサ302は、命令を実行するように構成された1つ以上の物理デバイスを含む。例えば、論理プロセッサは、1つ以上のアプリケーション、プログラム、ルーチン、ライブラリ、オブジェクト、コンポーネント、データ構造又は他の論理構成の一部である命令を実行するように構成されてもよい。そのような命令は、タスクを実行するように、データ型を実施)するように、1つ以上の構成要素の状態を変換するように、技術的効果を達成するように、又は所望の結果に到達するように実装されてもよい。
【0044】
論理プロセッサは、ソフトウェア命令を実行するように構成された1つ以上の物理プロセッサ(ハードウェア)を含んでもよい。加えて、又はこれに代えて、論理プロセッサは、ハードウェア実施ロジック又はファームウェア命令を実行するように構成された1つ以上のハードウェアロジック回路又はファームウェアデバイスを含んでもよい。論理プロセッサ302のプロセッサは、シングルコア又はマルチコアであってもよく、そこで実行される命令は、シーケンシャル処理、パラレル処理及び/又は分散処理に用いられるように構成されてもよい。論理プロセッサの個々の構成要素は、必要に応じて2つ以上の別個のデバイス間で分散されてもよく、このデバイスは、遠隔に配置されてもよく、及び/又は協調処理のために構成されてもよい。論理プロセッサの態様は、クラウドコンピューティング構成で構成され、遠隔からアクセス可能なネットワーク化されたコンピューティングデバイスによって仮想化及び実行されてもよい。そのような場合、これらの仮想化された態様は、様々な異なるマシンの異なる物理的論理プロセッサ上で実行されることが理解されるであろう。
【0045】
不揮発性記憶装置306は、論理プロセッサによって、本開示に記載された方法及びプロセスを実施する命令を実行可能と認識するように構成された1つ又は複数の物理デバイスを含む。そのような方法及びプロセスが実行されるとき、不揮発性記憶装置306の状態は、例えば、異なるデータを保持するように変換されてもよい。
【0046】
不揮発性記憶装置306は、取り外し可能及び/又は内蔵された物理デバイスを含んでもよい。不揮発性記憶装置306は、光メモリ(例えば、CD、DVD、HD-DVD、ブルーレイディスクなど)、半導体メモリ(例えば、ROM、EPROM、EEEPROM、FLASHメモリなど)及び/又は磁気メモリ(例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ、MRAMなど)又は他の大容量メモリ技術を含んでもよい。不揮発性記憶装置306は、不揮発性、動的、静的、読み取り/書き込み、読み取り専用、シーケンシャルアクセス、アドレス指定可能、ファイル指定可能及び/又は内容指定可能な装置を含むことができる。不揮発性記憶装置306は、たとえ消費電力がカットされた場合でも命令を保持するように構成されていることが理解されるであろう。
【0047】
揮発性メモリ304は、ランダムアクセスメモリを含む物理デバイスを含んでもよい。揮発性メモリ304は、通常、情報をソフトウェア命令の処理中に一時的に記憶するように論理プロセッサ302によって利用される。揮発性メモリ304は、消費電力がカットされた場合に、命令を記憶し続けないことが理解されるであろう。
【0048】
論理プロセッサ302、揮発性メモリ304及び不揮発性記憶装置306の態様は、1つ以上のハードウェア・ロジック・コンポーネントに一緒に組み込まれてもよい。そのようなハードウェア・ロジック・コンポーネントは、例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGAs)、特定プログラム及び用途向けIC(PASIC/ASICs)、特定プログラム及び用途向け標準製品(PSSP/ASSPs)、システムオンチップ(SOC)及びコンプレックス・プログラマブル・ロジック・デバイス(CPLDs)を含んでもよい。
【0049】
「モジュール」、「プログラム」及び「エンジン」という用語は、コンピューティングシステム300の一側面を説明するために使用されてもよく、このコンピューティングシステム300は、典型的にはプロセッサによってソフトウェアで実装され、揮発性メモリの一部を使用して特定の機能を実行する。そしてこの機能は、機能を実行するためにプロセッサを特別に構成する変形処理が含まる。したがって、モジュール、プログラム又はエンジンは、揮発性メモリ304の一部を使用して、不揮発性記憶装置306によって保持された命令を実行する論理プロセッサ302を介してインスタンス化されてもよい。異なるモジュール、プログラム及び/又はエンジンは、同じアプリケーション、サービス、コードブロック、オブジェクト、ライブラリ、ルーチン、API、関数などからインスタンス化されてもよいことが理解されるであろう。同様に、同じモジュール、プログラム及び/又はエンジンは、異なるアプリケーション、サービス、コードブロック、オブジェクト、ルーチン、API、関数などからインスタンス化されてもよい。モジュール」、「プログラム」及び「エンジン」という用語は、実行可能ファイル、データファイル、ライブラリ、ドライバ、スクリプト、データベースレコードなどの個々の又はグループを包含してもよい。
【0050】
表示サブシステム308を含む場合、この表示サブシステム308は、不揮発性記憶装置306によって保持されたデータの視覚的表現を提示するために使用されてもよい。視覚的表現は、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)の形態をとってもよい。本開示に記載された方法及びプロセスが、不揮発性記憶装置によって保持されるデータを変化させ、それによって不揮発性記憶装置の状態を変換するのと同様に、表示サブシステム308の状態も、保持される(underlying)データの変化を視覚的に表現するように変換されてもよい。表示サブシステム308は、実質的に(virtually)任意のタイプの技術を利用する1つ以上の表示デバイスを含んでもよい。そのような表示デバイスは、共有エンクロージャ内で論理プロセッサ302、揮発性メモリ304及び/又は不揮メモリ306と結合されてもよいし、そのような表示デバイスは周辺表示デバイスであってもよい。
【0051】
入力サブシステム310を含む場合、入力サブシステム310は、キーボード、マウス、タッチスクリーン又はゲームコントローラなどの1つ以上のユーザ入力デバイスで構成されてもよいし、それらが結合されてもよい。いくつかの実施形態では、入力サブシステムは、選択されたナチュラル・ユーザ・インターフェース(NUI)構成要素で構成されてもよいし、結合されてもよい。そのような構成要素は、統合されていてもよいし、周辺機器であってもよく、入力動作の伝達及び/又は処理は、オンボード又はオフボードで処理されてもよい。 例示的なNUI構成要素は、発話及び/又は音声認識に用いるマイク;マシンビジョン及び/又はジェスチャー認識に用いる赤外線、カラー、立体視及び/又は深度カメラ;動き検出及び/又は意図認識に用いるヘッドトラッカー、アイトラッカー、加速度計及び/又はジャイロスコープ;ならびに脳活動の評価に用いる電場感知構成要素;及び/又は他の任意の適切なセンサを含んでもよい。
【0052】
通信サブシステム312を含む場合、通信サブシステム312は、本開示に記載された様々なコンピューティングデバイスが互いに、他のデバイスと通信可能に接続するように構成されてもよい。通信サブシステム312は、1つ以上の異なる通信プロトコルと互換性のある有線及び/又は無線通信デバイスを含んでもよい。非限定的な例として、通信サブシステムは、無線電話ネットワークを介して通信するように構成されてもよいし、Wi-Fi接続を介したHDMIなどの有線又は無線のローカル又は広域ネットワークを介して通信するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、通信サブシステムは、コンピューティングシステム300が、インターネットなどのネットワークを介して他のデバイスにメッセージを送信及び/又は受信することを可能にしてもよい。
【0053】
本開示に記載された構成及び/又はアプローチは、本質的に例示的なものであり、多数の変形が可能であるため、これらの特定の実施形態又は例は、限定的な意味で考慮されるべきではないことが理解されるであろう。本開示に記載された特定のルーチン又は方法は、任意の処理戦略のうちの1つ又は複数を表すことができる。そのように、図示及び/又は記載された様々な行為は、図示及び/又は記載された順序で、他の順序で、並列に又は省略して実行されてもよい。同様に、上述した処理の順序を変更してもよい。
【0054】
本開示の主旨は、本開示に開示された様々なプロセス、システム及び構成、ならびに他の特徴、機能、行為及び/又は特性の、新規かつ非自明なすべての組み合わせ及び部分的な組み合わせ、ならびにそれらの任意及びすべての等価物を含む。