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特許7662525樹脂組成物、硬化物の形成方法、及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物の形成方法、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20250408BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20250408BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20250408BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C08L63/00
C08K7/06
C08K7/18
C08K3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021542709
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2020030596
(87)【国際公開番号】W WO2021039380
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019152675
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】縫田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】細川 仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 博
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110183(JP,A)
【文献】特開2019-073622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 7/06
C08K 7/18
C08K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径が0.1~20μmである銅粒子、
(B)リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)とを反応させて得られるリン酸変性エポキシ樹脂、及び
(C)硬化剤を含有し、
前記(A)~(C)成分の総量100質量部に対する、前記(B)成分の含有量が0.1~30質量部であり、前記(C)成分の含有量が0.1~5質量部であり、
前記(A)成分が、粒状の銅粒子及びフレーク状の銅粒子の両方を含有し、
前記(A)成分の総量100質量部に対する、前記粒状の銅粒子の含有量が、75~95質量部であり、
前記(A)成分の総量100質量部に対する、前記フレーク状の銅粒子の含有量が、5~25質量部である樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、(D)キシレン樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂(但し、前記(B)成分を除く)からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有し、
前記(A)~(C)成分の総量100質量部に対する、前記(D)成分の含有量が1~30質量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール樹脂が、レゾール型フェノール樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を基体上に塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物が塗布された前記基体を加熱して前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む硬化物の形成方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が塗布された前記基体を50~250℃で1~200分間加熱する請求項に記載の硬化物の形成方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粒子と特定の樹脂を含有する樹脂組成物、この樹脂組成物の硬化物を形成する方法、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性金属を含有する樹脂組成物は、回路配線やタッチパネル、太陽電池、センサーなどを形成するための材料の一つとして用いられている。現在、製造コストの低い銅粒子が導電性金属として特に注目されており、銅粒子を含有する樹脂組成物が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、銅粉、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、多価フェノールモノマー、及び反応性ゴムエラストマーを含有する導電性銅ペースト組成物が開示されている。また、特許文献2には、フレーク状銅粉、電解球状銅粉、還元剤、及び水系樹脂を含有する水系銅ペースト材料が開示されている。さらに、特許文献3には、銅粒子、レゾール型フェノール樹脂、及びビニルフェノール系ポリマーを含有する銅ペースト組成物が開示されている。また、特許文献4には、銅粒子、レゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及び有機酸を含有する導電性銅ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-12937号公報
【文献】特開2013-115004号公報
【文献】特開2018-92864号公報
【文献】特開2018-181558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4で開示されているような樹脂組成物等を用いて形成した塗膜を硬化させた硬化物は、体積抵抗値が高く、導電性が低下しやすいことが問題となっていた。
【0006】
したがって、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、銅粒子と特定の樹脂を含有する、体積抵抗値の低い硬化物を製造することが可能な樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記樹脂組成物を用いる硬化物の形成方法、及び上記樹脂組成物を硬化させた硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含有する樹脂組成物が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、(A)平均粒径が0.1~20μmである銅粒子、(B)リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)とを反応させて得られるリン酸変性エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤を含有し、前記(A)~(C)成分の総量100質量部に対する、前記(B)成分の含有量が0.1~30質量部であり、前記(C)成分の含有量が0.1~5質量部である樹脂組成物が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記の樹脂組成物を基体上に塗布する塗布工程と、前記樹脂組成物が塗布された前記基体を加熱して前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む硬化物の形成方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記の樹脂組成物を硬化させた硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅粒子と特定の樹脂を含有する、体積抵抗値の低い硬化物を製造することが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記樹脂組成物を用いる硬化物の形成方法、及び上記樹脂組成物を硬化させた硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態の樹脂組成物は、(A)平均粒径が0.1~20μmである銅粒子(以下、「(A)成分」とも記す);(B)リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)とを反応させて得られるリン酸変性エポキシ樹脂(以下、「(B)成分」とも記す);及び(C)硬化剤(以下、「(C)成分」とも記す)を必須成分として含有する樹脂組成物である。
【0013】
(A)成分は、平均粒径が0.1~20μmである銅粒子である。銅粒子の種類は、特に限定されるものではなく、周知一般の銅粒子を用いることができる。また、銅粒子の平均粒径は0.1~20μmであり、0.5~10μmであることが好ましく、1.0~5μmであることがさらに好ましい。なお、銅粒子の平均粒径は、レーザー光回折法による粒子径分布測定装置を用いて測定及び算出される、体積基準の粒度分布における累積50%となる粒子径(D50)を表す。銅粒子の形状は特に限定されるものではなく、粒状、針状、フレーク状などの銅粒子を1種類又は2種類以上使用することができる。なかでも、得られる硬化物の導電性が高いことから、粒状の銅粒子を含有することが好ましく、粒状の銅粒子及びフレーク状の銅粒子の両方を含有することがさらに好ましい。なお、本明細書において、鱗片状の銅粒子及び板状の銅粒子は、いずれもフレーク状の銅粒子に含まれる。(A)成分の総量100質量部に対する、粒状の銅粒子の含有量は70~100質量部であることが好ましく、75~95質量部であることがさらに好ましい。また、(A)成分の総量100質量部に対する、フレーク状の銅粒子の含有量は0~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。
【0014】
銅粒子が空気などにより酸化されている場合には、無機酸や有機酸を溶解させた水溶液を用いて、銅粒子を予め洗浄しておくことが望ましい。銅粒子を洗浄する水溶液としては、例えば、硫酸を溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
【0015】
(B)成分は、リン酸変性エポキシ樹脂である。この(B)リン酸変性エポキシ樹脂は、リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)との反応物である。リン酸類(b1)は、その分子内にリン酸結合を有する化合物であれば特に制限されない。そのようなリン酸類(b1)としては、例えば、リン酸(オルトリン酸:HPO)、亜リン酸(HPO)、次亜リン酸(HPO)、ホスホン酸(HPO)、二リン酸(ピロリン酸:H)、及び三リン酸等のポリリン酸等を挙げることができる。これらのなかでも、得られる硬化物の導電性が高いことから、リン酸(HPO)が好ましい。
【0016】
エポキシ化合物(b2)としては、その分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物であれば特に制限されない。そのようなエポキシ化合物(b2)としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、C12~C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、及び3級カルボン酸グリシジルエステル等のエポキシ基を1つ有する反応性希釈剤;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ基を2つ有する反応性希釈剤;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及びグリセリントリグリシジルエーテル等のエポキシ基を3つ有する反応性希釈剤;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、及びテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物であるエポキシ化物、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;並びにフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物(b2)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記のエポキシ化合物(b2)の具体例のなかでも、入手が容易で安価であり、硬化物の物性が良好な、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂を使用することが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することがさらに好ましい。
【0018】
(B)リン酸変性エポキシ樹脂は、その末端にエポキシ基を有するリン原子含有エポキシ化合物である。(B)リン酸変性エポキシ樹脂は、リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)とを反応させて得ることができる。好ましくは、リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)とを20~100℃で反応させて得ることができる。リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)を溶媒の存在下で反応させた後、溶媒を除去してもよい。エポキシ化合物(b2)中のエポキシ基数が、リン酸類(b1)中の活性水素数よりも多くなるように、リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)を反応させることが好ましい。複数のエポキシ化合物(b2)を用いる場合には、以下のようにして(B)リン変性エポキシ樹脂を合成することが好ましい。まず、リン酸類(b1)中の活性水素数が、エポキシ化合物(b2)中のエポキシ基数よりも多い条件で、リン酸類(b1)と少なくとも1種のエポキシ化合物(b2)とを反応させて、リン酸類(b1)由来の活性水素が残存したリン変性エポキシ化合物(中間体)を合成する。次いで、合成したリン変性エポキシ化合物(中間体)を他の少なくとも1種のエポキシ化合物(b2)と反応させて、その末端にエポキシ基を有するリン原子含有エポキシ化合物を(B)成分として最終的に得ることができる。
【0019】
リン酸類(b1)とエポキシ化合物(b2)を反応させる際に用いる溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、及び酢酸n-ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、及び塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;並びにクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素を挙げることができる。これらのなかでも、反応後の除去が容易である等の点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンがさらに好ましい。
【0020】
エポキシ化合物(b2)として用いることのできるビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂は、繰り返し単位が単一でなく、これらの全体構造を化学式や一般式を用いて定義することは困難である。さらに、(B)リン酸変性エポキシ樹脂の合成過程で、エポキシ化合物(b2)から生成したヒドロキシ基が、エポキシ化合物(b2)中の他のエポキシ基と反応するといった副反応が起こる可能性もあるため、(B)リン酸変性エポキシ樹脂の構造は複雑となり得る。したがって、(B)リン酸変性エポキシ樹脂の構造は一様ではなく、バラエティに富み、その構造を一律の化学結合や一般式で定義することは実質的に不可能である。以上より、(B)リン酸変性エポキシ樹脂は、その製造方法によって定義せざるをえない。
【0021】
(B)リン酸変性エポキシ樹脂の製造過程において、出発物質のエポキシ化合物(b2)の変性剤として使用される化合物は、リン酸類(b1)のみであることが好ましい。
【0022】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、0.1~30質量部である。樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、得られる硬化物の導電性がより高まることから、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがさらに好ましい。(B)成分の含有量が、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して0.1質量部未満であると、(B)成分を含有させたことによる効果が現れにくい。一方、(B)成分の含有量を、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して30質量部超としても、(B)成分を含有させたことによる効果は向上しにくい。
【0023】
(C)成分は、エポキシ化合物である(B)リン酸変性エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤である。(C)硬化剤としては、例えば、潜在性硬化剤、酸無水物、ポリアミン化合物、ポリフェノール化合物、及びカチオン系光開始剤等を挙げることができる。
【0024】
潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、及び三級アミン等を挙げることができる。これらの潜在性硬化剤を用いると、硬化物形成用の添加剤を含有させる樹脂組成物を、取り扱い容易な一液型の硬化性樹脂組成物とすることができるので好ましい。
【0025】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル,4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、及び1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種イミダゾール類;これらの各種イミダゾール類と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、及び蓚酸等の多価カルボン酸との塩類を挙げることができる。なかでも、2-エチル-4-メチルイミダゾールが、硬化性及び保存安定性の面から好ましい。市販品としては、例えば、商品名「2P4MHZ-PW」、「2P4MHZ」、及び「2E4MZ」(いずれも四国化成工業社製)等を挙げることができる。
【0026】
酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、及び2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物等を挙げることができる。
【0027】
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びトリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及び3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン;m-キシレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン;m-フェニレンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、及び2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミンを挙げることができる。
【0028】
ポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3-トリス(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。
【0029】
(C)成分としては、潜在性硬化剤を用いることが好ましく、なかでもイミダゾール化合物を用いることがさらに好ましい。
【0030】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、0.1~5質量部である。樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、0.3~4質量部であることが好ましく、0.5~3質量部であることがさらに好ましい。(C)成分の含有量が、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して0.1質量部未満であると、樹脂組成物が硬化しにくくなる。一方、(C)成分の含有量を、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して5質量部超としても、(C)成分を含有させたことによる効果は向上しにくい。
【0031】
本発明の一実施形態である樹脂組成物は、さらに、(D)キシレン樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂(但し、前記(B)成分を除く)からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。(A)成分、(B)成分、及び(C)成分と、(D)成分とを組み合わせて用いることで、より体積抵抗値の低い硬化物を製造しうる樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
キシレン樹脂としては、例えば、レゾール型キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、ノボラック型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、エチレンオキシド変性キシレン樹脂等を用いることができる。なかでも、レゾール型キシレン樹脂を用いることが好ましい。なお、市販品も使用することができる。キシレン樹脂の市販品としては、例えば、レゾール型キシレン樹脂(フドー社製、商品名:PR-1440、PR-1440M)、アルキルフェノール変性キシレン樹脂(フドー社製、商品名:GHP-150、HP-120、HP-100、HP-210、HP-70)、ノボラック型キシレン樹脂(フドー社製、商品名:NP-100、GP-212、P-100、GP-200、HP-30)、ポリオール変性キシレン樹脂(フドー社製、商品名:K-100)、エチレンオキシド変性キシレン樹脂(フドー社製、商品名:L5)等を挙げることができる。
【0033】
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂などを用いることができる。なかでも、レゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。なお、市販品も使用することができる。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、粉末状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップ、PGA-4528、PGA-2473、PGA-4704、PGA-4504、住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-UFC-504、PR-EPN、PR-ACS-100、PR-ACS-150、PR-12687、PR-13355、PR-16382、PR-217、PR-310、PR-311、PR-50064、PR-50099、PR-50102、PR-50252、PR-50395、PR-50590、PR-50590B、PR-50699、PR-50869、PR-51316、PR-51326B、PR-51350B、PR-51510、PR-51541B、PR-51794、PR-51820、PR-51939、PR-53153、PR-53364、PR-53497、PR-53724、PR-53769、PR-53804、PR-54364、PR-54458A、PR-54545、PR-55170、PR-8000、PR-FTZ-1、PR-FTZ-15)、フレーク状フェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-12686R、PR-13349、PR-50235A、PR-51363F、PR-51494G、PR-51618G、PR-53194、PR-53195、PR-54869、PR-F-110、PR-F-143、PR-F-151F、PR-F-85G、PR-HF-3、PR-HF-6)、液状フェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-50087、PR-50607B、PR-50702、PR-50781、PR-51138C、PR-51206、PR-51663、PR-51947A、PR-53123、PR-53338、PR-53365、PR-53717、PR-54135、PR-54313、PR-54562、PR-55345、PR-940、PR-9400、PR-967)、レゾール型液状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップPL-4826、PL-2390、PL-4690、PL-3630、PL-4222、PL-4246、PL-2211、PL-3224、PL-4329、PL-5208、住友ベークライト社製、商品名:スミライトレジンPR-50273、PR-51206、PR-51781、PR-53056、PR-53311、PR-53416、PR-53570、PR-54387)、微粒状フェノール樹脂(エアウオーター社製、商品名:ベルパール、R800、R700、R600、R200、R100、S830、S870、S890、S895、S290,S190)、真球状フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:マリリンGU-200、FM-010、FM-150、HF-008、HF-015、HF-075、HF-300、HF-500、HF-1500)、固形フェノール樹脂(群栄化学社製、商品名:レヂトップPS-2601、PS-2607、PS-2655、PS-2768、PS-2608、PS-4609、PSM-2222、PSK-2320、PS-6132)等を挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂(但し、(B)成分を除く)としては、以下商品名で、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるAER-X8501(旭化成工業社製)、R-301(三菱化学社製)、YL-980(三菱化学社製);ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF-170(東都化成社製)、YL-983(三菱化学社製)、YL-983U(三菱化学社製);グリシジル基を有するエポキシ樹脂(デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、デナコールEX-211、デナコールEX-212、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321、デナコールEX-411、デナコールEX-421、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-810、デナコールEX-811、デナコールEX-850、デナコールEX-851、デナコールEX-821、デナコールEX-830、デナコールEX-832、デナコールEX-841、デナコールEX-861、デナコールEX-911、デナコールEX-941、デナコールEX-920、デナコールEX-931、デナコールEX-145、デナコールEX-146、デナコールEX-147、デナコールEX-201、デナコールEX-711、デナコールEX-721、オンコートEX-1020、オンコートEX-1030、オンコートEX-1040、オンコートEX-1050、オンコートEX-1051、オンコートEX-1010、オンコートEX-1011、オンコート1012(ナガセケムテックス社製);エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(共栄社化学社製)、オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-210、オグソールEG-250(大阪ガスケミカル社製)、HP4032、HP4032D、HP4700(DIC社製)、ESN-475V(新日鉄住金化学社製);152、154、157S70、YX8800(三菱化学社製)、アデカグリシロールED-503、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4100G、アデカレジンEP-4100E、アデカレジンEP-4100L、アデカレジンEP-4100TX、アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEP-4080E、アデカレジンEP-4082HT、アデカレジンEP-4901、アデカレジンEP-4901E、アデカグリシロールED-501、アデカグリシロールED-509E、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529(ADEKA社製));ポリアルキレンオキシ化したビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEXA-4816(大日本インキ化学工業社製)、EXA-4822(大日本インキ化学工業社製);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であるR-1710(三井石油化学工業社製);フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるN-730S(大日本インキ化学工業社製)、Quatrex-2010(ダウ・ケミカル社製);クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるYDCN-702S(東都化成社製)、EOCN-100(日本化薬社製);多官能エポキシ樹脂であるEPPN-501(日本化薬社製)、TACTIX-742(ダウ・ケミカル社製)、VG-3010(三井石油化学工業社製)、1032S(三菱化学社製)、1032-H60(三菱化学社製);ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP-4032(大日本インキ化学工業社製);脂環式エポキシ樹脂であるEHPE-3150、CEL-3000(ダイセル化学工業社製)、DME-100(新日本理化社製)、EX-216L(ナガセ化成工業社製);脂肪族エポキシ樹脂であるW-100(新日本理化社製);アミン型エポキシ樹脂であるELM-100(住友化学工業社製)、YH-434L(東都化成社製)、TETRAD-X、TETRAD-C(三菱瓦斯化学社製)、630、630LSD(三菱化学社製);レゾルシン型エポキシ樹脂であるデナコールEX-201(ナガセ化成工業社製);ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX-211(ナガセ化成工業社製);ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEX-212(ナガセ化成工業社製);エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂であるデナコールEXシリーズ(EX-810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業社製));ビニルエーテル型エポキシ樹脂であるEXA-4850-1000(大日本インキ化学工業社製)、EXA-4850-150(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂のなかでも、グリシジル基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましい。樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、得られる硬化物の導電性がより高まることから、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して、3~20質量部であることがさらに好ましく、5~15質量部であることが特に好ましい。(D)成分の含有量が、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して1質量部未満であると、(D)成分を含有させたことによる効果が現れにくい。一方、(D)成分の含有量を、(A)~(C)成分の総量100質量部に対して30質量部超としても、(D)成分を含有させたことによる効果は向上しにくい。
【0036】
次に、本発明の一実施形態である硬化物の形成方法について説明する。本実施形態の硬化物の形成方法は、上述してきた樹脂組成物を基体上に塗布する塗布工程と、樹脂組成物が塗布された基体を加熱して樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む。硬化工程では、樹脂組成物が塗布された基体を50~250℃で加熱することが、より導電性の良好な硬化物を得ることができるために好ましく、100~200℃で加熱することがさらに好ましい。また、硬化工程では、樹脂組成物が塗布された基体を1~200分間加熱することが好ましく、10~60分間加熱することがさらに好ましい。なお、必要に応じて硬化工程の前に、基体又は樹脂組成物が塗布された基体を50~150℃に保持して有機溶剤等の低沸点成分を揮発させる乾燥工程をさらに含んでいてもよい。
【0037】
塗布工程において、樹脂組成物を基体上に塗布する方法(塗布方法)としては、スピンコート法、ディップ法、スプレーコート法、ミストコート法、フローコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、刷毛塗り等を挙げることができる。
【0038】
形成される硬化膜を必要な膜厚とするために、塗布工程から任意の工程までを複数回繰り返すことができる。例えば、塗布工程から硬化工程までのすべての工程を複数回繰り返してもよいし、塗布工程と乾燥工程を複数回繰り返してもよい。
【0039】
樹脂組成物を硬化させることで、本発明の一実施形態である硬化物を得ることができる。本実施形態の硬化物の用途としては、例えば、導電層、電極膜、配線等を挙げることができる。
【実施例
【0040】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0041】
<(A)成分>
(A)成分(銅粒子)として、以下に示すA-1及びA-2を用意した。
A-1:粒状銅粒子(D50:3.5μm、商品名「1300Y」、三井金属鉱業社製)
A-2:フレーク状銅粒子(D50:3.1μm、商品名「1200YP」、三井金属鉱業社製)
【0042】
<(B)成分>
(B)成分(リン酸変性エポキシ樹脂)として、以下に示すB-1及びB-2を用意した。
B-1:ADEKA社製の商品名「EP-49-10P」(商品名「アデカレジンEP-4100E」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、ADEKA社製)と、リン酸を60~70℃で反応させた化合物;リン酸変性量1.0質量%)
B-2:ADEKA社製の商品名「EP-49-10P2」(商品名「アデカレジンEP-4100E」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:190g/eq.、ADEKA社製)と、リン酸を60~70℃で反応させた化合物;リン酸変性量1.5質量%)
【0043】
<(C)成分>
(C)成分(硬化剤)として、以下に示すC-1を用意した。
C-1:イミダゾール化合物(商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製)
【0044】
<(D)成分>
(D)成分(樹脂)として、以下に示すD-1~D-3を用意した。
D-1:キシレン樹脂(商品名「PR-1440」、フドー社製)
D-2:フェノール樹脂(商品名「PL-2211」、群栄化学工業社製)
D-3:エポキシ樹脂(商品名「ED-509S」、ADEKA社製)
D-4:エポキシ樹脂(商品名「EP-4100」、ADEKA社製)
【0045】
<樹脂組成物>
(実施例1~7、比較例1~4)
表1に示す組成となるように各成分を混合し、実施例樹脂組成物No.1~7及び比較例樹脂組成物1~4を製造した。
【0046】
【0047】
<硬化物の製造>
実施例樹脂組成物No.1~7及び比較例樹脂組成物1~4をバーコーター法によりガラス基板上に30μmの厚さとなるようにそれぞれ塗布した。大気中、150℃で30分間加熱焼成して、薄膜状の実施例硬化物No.1~7及び比較例硬化物1~4を得た。
【0048】
<体積抵抗値の評価>
(評価例1~7、比較評価例1~4)
高精度抵抗率計(製品名「ロレスタGP」、三菱化学アナリテック社製)を使用し、4探針法によって、実施例硬化物No.1~7及び比較例硬化物1~4の体積抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
表2に示すように、評価例1~7は比較評価例1~4よりも体積抵抗値が低いこと、すなわち、実施例硬化物No.1~7は比較例硬化物1~4よりも導電性に優れていることがわかる。評価例1~7のなかでも、評価例1~6はさらに体積抵抗値が低く、評価例1、4、及び6は特に体積抵抗値が低い。以上の結果から、(i)(A)~(C)成分に加えて(D)成分をさらに含有させること;(ii)粒状の銅粒子及びフレーク状の銅粒子の両方を(A)成分として含有させること;によって、得られる硬化物の導電性が特に向上することがわかる。以上より、本実施形態の樹脂組成物を硬化させた硬化物は、優れた導電性を有する硬化物であることが明らかである。