(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】PPARγ2産生活性化剤、アディポネクチン産生活性化剤、及びMCP-1産生抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/906 20060101AFI20250409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250409BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20250409BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20250409BHJP
【FI】
A61K36/906
A61P43/00 111
A23L33/105 ZNA
A61K131:00
(21)【出願番号】P 2020113973
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】恩田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉野 七海
(72)【発明者】
【氏名】菅原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西 甲介
(72)【発明者】
【氏名】石田 萌子
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】化学と生物,2016年,54, [7],p.500-507
【文献】エタノールによるウコンからのクルクミン抽出への温度の寄与, [online], (2017.05.05), slidesshare, [2024.05.14検索],インターネット, <https://www.slideshare.net/fukudarika/ss-75704665>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/906
A61P 43/00
A61P 3/00-3/14
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルダモンの
種子のアルコール抽出物を有効成分として含む、PPARγ2産生活性化剤。
【請求項2】
前記
アルコール抽出物が、
100%エタノール抽出物である、請求項1に記載のPPARγ2産生活性化剤。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のPPARγ2産生活性化剤及び食品材料を含む、PPARγ2産生活性化用食品組成物。
【請求項4】
カルダモンの
種子のアルコール抽出物を有効成分として含む、アディポネクチン産生活性化剤。
【請求項5】
前記
アルコール抽出物が、
100%エタノール抽出物である、請求項4に記載のアディポネクチン産生活性化剤。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載のアディポネクチン産生活性化剤及び食品材料を含む、アディポネクチン産生活性化用食品組成物。
【請求項7】
カルダモンの
種子のアルコール抽出物を有効成分として含む、MCP-1産生抑制剤。
【請求項8】
前記
アルコール抽出物が、
100%エタノール抽出物である、請求項7に記載のMCP-1産生抑制剤。
【請求項9】
前記請求項7又は8に記載のMCP-1産生抑制剤及び食品材料を含む、MCP-1産生抑制用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPARγ2産生活性化剤、アディポネクチン産生活性化剤、及びMCP-1産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(peroxisome proliferator-activated receptor;PPAR)は、核内レセプタースーパーファミリーのメンバーであり、PPARα、PPARγ、及びPPARδの3つのサブタイプが知られている。炭化水素、脂質、タンパク質等の細胞内代謝と細胞の分化に関与している転写因子群であると考えられている。
前記PPARγには、3つのアイソフォームが知られており、PPARγ1は、心臓、筋肉、及び結腸などの多くの組織に発現している。PPARγ2は、PPARγ1よりも30アミノ酸残基長いポリペプチドであり、主として脂肪組織に発現している。また、PPARγ3はマクロファージ、大腸、白色脂肪組織で発現している。
PPAR活性化剤として、ウコンに含まれるクルクミン及びグローブ抽出物等(特許文献1)、トマトに含まれるアポリコペノイド(特許文献2)、トケイソウ抽出物(特許文献3)、又はシークワーサー抽出物(特許文献4)が、PPARγを活性化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-027014号公報
【文献】特開2020-19758号公報
【文献】特開2018-48103号公報
【文献】特開2019-23176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全性に優れ、日常的かつ長期的な摂取が可能なPPARγ産生活性化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、安全性に優れ、日常的かつ長期的な摂取が可能なPPARγ産生活性化剤について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、カルダモンの粉砕物又は抽出物がPPARγ2、及びアディポネクチン産生を活性化する作用を有することを見出した。また、カルダモンの粉砕物又は抽出物が、MCP-1産生を抑制する作用を有することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]カルダモンの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む、PPARγ2産生活性化剤、
[2]前記抽出物が、アルコール抽出物である、[1]に記載のPPARγ2産生活性化剤、
[3]前記[1]又は[2]に記載のPPARγ2産生活性化剤及び食品材料を含む、PPARγ2産生活性化用食品組成物、
[4]カルダモンの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む、アディポネクチン産生活性化剤、
[5]前記抽出物が、アルコール抽出物である、[4]に記載のアディポネクチン産生活性化剤、
[6]前記[4]又は[5]に記載のアディポネクチン産生活性化剤及び食品材料を含む、アディポネクチン産生活性化用食品組成物、
[7]カルダモンの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む、MCP-1産生抑制剤、
[8]前記抽出物が、アルコール抽出物である、[7]に記載のMCP-1産生抑制剤、及び
[9]前記[7]又は[8]に記載のMCP-1産生抑制剤及び食品材料を含む、MCP-1産生抑制用食品組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のPPARγ2産生活性化剤によれば、脂肪細胞を分化させ、そして小型化することができる。本発明のアディポネクチン産生活性化剤によれば、動脈硬化を改善することができる。本発明のMCP-1産生抑制剤によれば、炎症を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】マウス由来3T3-L1前駆脂肪細胞にカルダモン抽出物を添加する2つのスキームを示した図である。
【
図2】カルダモン抽出物のスキーム1(A)及びスキーム2(B)における、MCP-1産生に対する影響を示したグラフである。
【
図3】カルダモン抽出物のスキーム1(A)及びスキーム2(B)における、MCP-1遺伝子発現に対する影響を示したグラフである。
【
図4】カルダモン抽出物のスキーム1(A)及びスキーム2(B)における、アディポネクチン遺伝子発現に対する影響を示したグラフである。
【
図5】カルダモン抽出物のスキーム1(A)及びスキーム2(B)における、PPARγ遺伝子発現に対する影響を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のPPARγ2産生活性化剤、アディポネクチン産生活性化剤、又はMCP-1産生抑制剤は、カルダモンの粉砕物又は抽出物を有効成分として含む。
【0009】
《カルダモン》
カルダモンには、グリーンカルダモンと、ブラックカルダモンとがある。本発明で用いるカルダモンは、グリーンカルダモン(Elettaria cardamomum)の果実から得られる香辛料である。グリーンカルダモンは、インド、スリランカ、及びマレー半島を原産とするショウガ科のショウズク属の多年草であり、ショウズク(小荳▲く▼)とも称される。成長すると草丈2~5mとなり、葉は長さ40cm程度、幅7~10cm程度であり、葉の基部は鞘状になっている。地面の近くに薄緑の白に赤紫の入った花をつけ、成熟すると1~2cmの卵型の実をつける。実の内部は3室に分かれ、暗褐色ないし黒褐色の種子が入っている。ショウズクの緑色の果実は、種子を含んだまま乾燥され、そのまま、又は挽いて粉にして、香辛料として使用される。
【0010】
《粉砕物》
本発明において、粉砕物とは、カルダモンが粉砕された状態のものであればよく、例えば粉末状、粒状、又はペースト状であることができる。粉砕物は、好ましくは粉末である。また、粉末状にしたものを、例えばキューブ状、ブロック状、又は顆粒状に成型又は造粒したものも好ましく使用できる。粉砕物又は粉末に加工するための処理は、特に限定されないが、例えばクラッシャー、ミル、ブレンダー、ミキサー、及び石臼などの粉砕用の機器又は器具を用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕前に、植物体を乾燥してもよい。
【0011】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンが粉砕物である場合、限定されるものではないが、例えばカルダモンの粉砕物の平均最長径が、0.01~4mm、好ましくは、0.02~1mm、より好ましくは0.02~0.5mmのものを使用することができる。また、カルダモンの粉砕物の90重量%以上が、0.01~4mm、好ましくは、0.02~1mm、より好ましくは0.02~0.5mmの最長径を有するものを使用することができる。また、カルダモンの粉砕物の90重量%以上が、JIS試験篩いメッシュ換算表において、4.7メッシュ(4mm)16メッシュ(1mm)、又は30メッシュ(0.5mm)、を通過するものを使用することができる。カルダモンの粉砕物の最長径が1mm以下であると、本発明のPPARγ2発現が向上することから、最長径4mm以下のものを使用することが好ましい。
カルダモンの平均最長径の計測は、粒径を計測するための公知の機器を使用して行うことができる。また、カルダモンの粉砕物の中から任意で100個を選択して、それらの最長径を、実体顕微鏡を用いて測定し、それらの平均を計算することで算出することもできる。
【0012】
《抽出物》
本発明のPPARγ2産生活性化剤等は、カルダモンの抽出物を含むことができる。本発明のPPARγ2産生活性化剤等は、カルダモンの粉砕物と抽出物との両方を含むこともできる。本発明のPPARγ2産生活性化剤等の有効成分の抽出に用いるカルダモンは、果実を生のまま用いてもよく、又は乾燥させたものを用いてもよい。また、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工してもよい。
【0013】
有効成分の抽出には、植物に由来する成分の抽出に用いられる通常の抽出方法、例えばこれらに限定されるものではないが、水蒸気蒸留法、溶剤抽出法、圧搾法(直接、高温、若しくは低温)、又は超臨界抽出法を用いることができる。これらの抽出法の組み合わせ、例えば圧搾した後に溶剤抽出する方法を用いてもよい。
【0014】
溶剤抽出法で抽出する場合に用いられる抽出溶媒は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、例えば有機溶媒、水性溶媒、又は有機溶媒及び水性溶媒の混合物を使用することができる。
【0015】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物は、有機溶媒、例えばアルコール、アセトン、ベンゼン、エステル、酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルム、及びジエチルエーテルなどにより抽出されることができる。アルコールとしては、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びブチルアルコール等の炭素数1~5の一価アルコールを使用することができる。1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールを使用することもできる。好ましいアルコールは、炭素数1~5の一価アルコールであり、より好ましいアルコールは、メタノール及びエタノールであり、最も好ましいアルコールは、エタノールである。
【0016】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物は、水性溶媒により抽出することができる。水性溶媒としては、水を含んでいる限りにおいて限定されるものではなく、例えば水、生理食塩水、又は緩衝液などを使用することができる。緩衝液としては、リン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、炭酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及びトリス緩衝液などが挙げられる。前記水性溶媒のpHは、特に制限されない。
【0017】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物は、有機溶媒と水性溶媒との混合物により抽出されることができる。抽出溶媒中に含まれる水性溶媒の量は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることができる限りにおいては限定されないが、抽出溶媒の全体量に対して、例えば50重量%以上、70重量%以上、又は90重量%以上であることができる。
【0018】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物を溶剤抽出法で抽出する場合、抽出温度は、抽出液中に有効成分が充分に抽出されることのできる温度である限り、特に限定されるものではないが、-50℃~100℃であることが好ましく、0℃~100℃であることがより好ましく、5℃~100℃であることが最も好ましい。
【0019】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物の抽出時間は、例えばカルダモンの状態、すなわち、生若しくは乾燥物であるか、又は破砕物若しくは粉体の状態に加工した場合にはその加工状態に応じて適宜決定することができる。更に、抽出時間は、例えば抽出液の温度、又は撹拌若しくは振盪の有無などの抽出条件に応じて適宜決定することができる。抽出時間は、5秒~1週間であることが好ましく、5秒~1日であることが更に好ましく、5秒~3時間であることが最も好ましい。また、本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれるカルダモンの抽出物を溶剤抽出法で抽出する場合、抽出効率が向上するように、撹拌又は振盪しながら実施することが好ましい。
【0020】
圧搾法とは、カルダモンに物理的に圧力をかけて、カルダモンの抽出物を抽出する方法である。常温で行う直接圧搾法、高温で行う高温圧搾法、及び低温で行う低温圧搾法がある。本発明の苦味抑制用組成物に含まれる抽出物は、いずれの圧搾法を用いても抽出可能である。
【0021】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等に含まれる抽出物は、超臨界抽出法を用いて抽出可能である。超臨界抽出法とは、超臨界状態にある物質を用いて特定の植物から抽出物を抽出する方法である。超臨界状態にある物質としては、例えば二酸化炭素は、強力な溶解力を有するため、コーヒーの脱カフェイン、又は植物などの天然原料からの香料及び医薬品成分抽出に一般に用いられている。
【0022】
《PPARγ2》
ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプターγ2(PPARγ2)は、核内レセプタースーパーファミリーであるPPARの3つのサブタイプ(PPARα、PPARγ、及びPPARδ)の1つである。また、PPARγには3つのアイソフォーム(PPARγ1、PPARγ2、PPARγ3)が知られており、PPARγ2は主に脂肪組織に発現している。PPARγ2の発現が増加することにより、アディポネクチンの発現が向上すると考えられている。また、PPARγ2の発現が増加することにより、aP2及びPPARαの発現が向上することが報告されている。
本発明のPPARγ2産生活性化剤は、PPARγ2の発現を増加させ、PPARγ2の作用を活性化することができる。
【0023】
《アディポネクチン》
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるタンパク質である。
本発明のアディポネクチン産生活性化剤は、アディポネクチンの発現を増加させ、アディポネクチンの作用を活性化することができる。
【0024】
《MCP-1》
MCP-1(Monocyte chemotactic protein 1)は、CCL2とも呼ばれるケモカインであり、単球に対する走化性亢進作用、活性酸素やリソゾーム酵素の産生放出増加作用、又は腫瘍に対する増殖抑制活性示すことが報告されている。また、好塩基球に対する脱顆粒作用、ヒスタミンやロイコトリエンC4産生放出活性、骨髄由来マスト細胞の遊走性の亢進作用も報告されている。
本発明のMCP-1産生抑制剤は、MCP-1の発現を減少させ、MCP-1の作用を抑制することができる。
【0025】
本発明における有効成分である、カルダモンの粉砕物又は抽出物は、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、対象[動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]に有効量で投与することができる。また、ヒト以外の動物には、飼料として飲食物の形で与えることも可能である。
【0026】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等は、カルダモンの粉砕物又は抽出物から成るものでもよく、また、カルダモンの粉砕物又は抽出物を含むものでもよい。本発明のPPARγ2産生活性化剤等が、カルダモンの粉砕物又は抽出物を含むものである場合、他の添加剤を含むことができる。
【0027】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等の投与剤型としては、特には限定がなく、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は非経口剤を挙げることができる。
【0028】
前記経口剤は、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0029】
非経口剤としては、例えば注射剤を挙げることができる。注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
【0030】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等は、限定されるものではないが、例えばカルダモンのエタノール抽出物を濾過及び乾燥することにより得られた乾固物として、例えば0.01~500mg/mL、好ましくは、0.1~400mg/mL、より好ましくは0.5~300mg/mL、更に好ましくは1~200mg/mL、更に好ましくは2~150mg/mL、最も好ましくは1~100mg/mLで含有することができる。
【0031】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等の投与量は、適宜決定することができるが、例えばエタノール抽出物を濾過及び乾燥することにより得られた乾固物として、1~3000mg/kg体重/日、好ましくは、5~2000mg/kg体重/日、より好ましくは10~1500mg/kg体重/日、更に好ましくは15~1000mg/kg体重/日、更に好ましくは20~800mg/kg体重/日、最も好ましくは25~400mg/kg体重/日であることができる。
【0032】
また、本発明のPPARγ2産生活性化剤等を用いる場合の投与量は、水性溶媒により得られた抽出物の凍結乾燥粉末として、0.1~1000mg/kg体重/日、好ましくは0.5~500mg/kg体重/日、より好ましくは1~250mg/kg体重/日、更に好ましくは3~100mg/kg体重/日、更に好ましくは5~50mg/kg体重/日、又は最も好ましくは8~30mg/kg体重/日であることができる。
【0033】
もちろん、上記の投与法は一例であり、他の投与法であってもよい。ヒトへのPPARγ2産生活性化剤等の投与方法、投与量、投与期間、及び投与間隔等は、管理された臨床治験によって決定されることが望ましい。
【0034】
本発明のPPARγ2産生活性化剤等は、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物であってもよく、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、及びリス等のペット;牛及び豚等の家畜;マウス、ラット等の実験動物;並びに、動物園等で飼育されている動物等が挙げられる。
【0035】
本明細書における食品組成物の1つの態様としては、本発明のPPARγ2産生活性化剤と、食品材料とを含むPPARγ2産生活性化用食品組成物を意味する。
本明細書において、食品組成物別の態様としては、本発明のアディポネクチン産生活性化剤と、食品材料とを含むアディポネクチン産生活性化用食品組成物を意味する。
本明細書において、食品組成物の別の態様としては、本発明のMCP-1産生抑制剤と、食品材料とを含むMCP-1産生抑制用食品組成物を意味する。
本明細書において、食品材料とは、カレー又はビールなどの完成した食品又は飲料、カレー又はビールなどの原料となるスパイス、又は味噌又は日本酒などのそのままでも食品又は飲料として食することが可能であり、且つ料理の原料としても用いることのできるものを含む。
【0036】
食品としては、具体的には、サラダなどの生鮮調理品;コロッケ、白身魚フライ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、及びアスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、塩こしょう、ごま塩、みりん、おでんの素、ルウ、シーズニングスパイス等の調味料類;豆腐などの大豆食品;こんにゃく;並びにサプリメントなどを挙げることができる。食品は、好ましくは、ソース(例えばカレー用、シチュー用、グラタン用、若しくはパスタ用のもと)ルウ(例えばカレー用若しくはシチュー用のもの)、ミックススパイス、シーズニングスパイス、又はサプリメントである。更に、食品には、例えばカルダモン抽出物を噴霧したスパイスなども含まれる。
【0037】
飲料としては、例えばコーヒー飲料;ココア飲料;前記の野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。飲料は、好ましくは、スパイスティー(例えばハーブティー又はチャイ)である。
【0038】
本発明の食品組成物は、例えば粉末状、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ペースト状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
【0039】
これらの食品又は飲料には、所望により、酸化防止剤、香料、酸味料、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、香辛料、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、植物油、動物油、糖及び糖アルコール類、ビタミン、有機酸、果汁エキス類、野菜エキス類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品添加物及び食品素材を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。これらの食品素材及び食品添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができる。
【0040】
これらの食品又は飲料は、例えばレトルト及びオートクレーブなどの加熱加圧滅菌、バッチ式殺菌、プレート殺菌、通電加熱殺菌、マイクロ波加熱殺菌、並びに、インジェクション及びインフュージョンなどのスチーム殺菌などの一般的な殺菌処理を行うことができる。
【0041】
食品及び飲料には、機能性食品(飲料)及び健康食品(飲料)が含まれる。本明細書において「健康食品(飲料)」とは、健康に何らかの効果を与えるか、あるいは、効果を期待することができる食品又は飲料を意味し、「機能性食品(飲料)」とは、前記「健康食品(飲料)」の中でも、生体調節機能(すなわち、免疫賦活機能)を充分に発現することができるように設計及び加工された食品又は飲料を意味する。機能性食品及び健康食品は、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
【0042】
食品又は飲料には、動物に対する飼料が含まれる。対象となる動物は、例えばヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
《実施例1》
本実施例では、カルダモンからエタノール抽出物を調製した。
カルダモンの種子の粉末を100mg/mLとなるように100%エタノールに懸濁し、1時間の超音波処理を2回行うことにより抽出を行った。抽出後遠心により上清を回収した。エバポレーターで溶媒を乾固し、残留物の重量を測定した後に、100mg/mLとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、試験サンプルを得た。
【0045】
《実施例2》
本実施例では、マウス細胞を用いて、カルダモンのエタノール抽出物のMCP-1産生に対する作用を検討した。
マウス由来3T3-L1前駆脂肪細胞を用い、
図1のスキーム1に示すように、脂肪細胞への分化誘導剤処理開始と同時にカルダモン抽出物を50μg/mLの濃度で添加し、8日後に細胞を回収した。分化誘導処理は、誘導開始0~2日目までは、MDI分化誘導剤として、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(500μM)、デキサメタゾン(0.25μM)、インスリン(5μg/mL)を、2日目以降はインスリン5μg/mL)のみを添加することによって行った。コントロール(比較例)には、カルダモン抽出物を添加しなかった。
また、成熟脂肪細胞への効果を評価するため、
図1のスキーム2に示すように、脂肪細胞に分化した3T3-L1脂肪細胞(分化誘導後6日目)に、カルダモン抽出物を50μg/mLの濃度で添加し、2日後に細胞と培養液を回収した。コントロール(比較例)には、カルダモン抽出物を添加しなかった。
【0046】
回収した細胞の培養上清中のMCP-1産生を、MCP-1/CCL2 Mouse Uncoated ELISA Kit(インビトロジェン社)を用いて、添付のプロトコールに従って、測定した。
1次抗体溶液をELISA用96wellプレート(サーモフィッシャー社)に100μL/wellで分注し、4℃で一晩インキュベートした。1次抗体溶液を除去し、プレートをT-PBS(-)で3回洗浄した。洗浄後、ELISA/ELISPOT液を200μL/wellで分注し、室温で1時間インキュベートした。
MCP-1標準液をELISA/ELISPOT液で2段階希釈により、計8点の検量線溶液を作製した。細胞上清をELISA/ELISPOT液で50倍希釈し、サンプル溶液を作製した。プレートをT-PBS(-)で3回洗浄した。洗浄後、検量線溶液、サンプル溶液を100μL/wellで分注し、室温で2時間インキュベートした。
プレートをT-PBS(-)で3回洗浄し、2次抗体溶液を100μL/wellで分注し、室温で1時間インキュベートした。プレートをT-PBS(-)で3回洗浄し、Avidin-HRP溶液を100μL/wellで分注し、室温で30分間インキュベートした。
プレートをT-PBS(-)で4回洗浄し、TMB液を100μL/wellで分注し、十分に発色させた後に、0.5NのH2SO4を50μL/wellで分注し、発色反応を止めた。波長450nmの吸光度を測定した(Reference:595nm)。
図2に示すように、脂肪細胞の分化誘導前及び分化誘導後のいずれにおいても、カルダモンは、MCP-1産生を顕著に抑制した。
【0047】
更に、回収した細胞中のMCP-1遺伝子の発現を、Real-time RT PCRによって測定した。
前培養した細胞上清を除去し、細胞表面をPBS(-)で洗浄した。細胞にSepasol RAN I Super G(ナカライテスク)を1mL加えてピッペッティングにより回収した。更にクロロホルムを200μL加えて2分間激しく転倒混和した。混和後、12,000×gで15分間遠心した。遠心後、水溶液層を498μL回収した。
回収した水溶液層に等量のプロパノールを加え、転倒混和した後10分間氷上で静置した。その後12,000×gで10分間遠心した。遠心後、上清を除去し、75%エタノールを加えて転倒混和し、12,000×gで5分間遠心した。遠心後に上清を除去し、自然乾燥させた後に超純水を添加して氷上で15分間静置した。分光光度計(BioSpec-nano, SHIMADZU)でmRNA液の吸光度を測定し、液中mRNAの濃度を求めた。
マイクロチューブに100ngのRNAを含んだRNA水溶液を滅菌超純水で13.5μLにフィルアップし、0.5μLのオリゴdTプライマーを添加した。mRNAとオリゴdTプライマーの混合液を70℃で5分間加熱後に4℃で冷却した。更に5μLのdNTPと5μLの5×逆転写反応緩衝液、0.5μLのRNaseインヒビター(インビトロジェン社)、0.2μLの逆転写酵素(ニッポンジーン社)、0.3μLの超純水を加えて42℃で60分間加熱した。その後、4℃で冷却した。反応終了後、超純水で40倍に希釈した。
PCR96wellプレートに、cDNAを1μL、MCP-1のフォワードプライマー(5’-CCACTCACCTGCTGCTACTCAT-3’;配列番号1)とリバースプライマー(5’-TGCTGATCCTCTGTAGCTCTCC-3’;配列番号2)をそれぞれ1μL、超純水を3μL、DNA検出溶液を5μL加え、95℃-1分、(95℃-3秒、60℃-30秒)×40サイクルの条件で反応させた。解析は比較Ct法を用いた。β-actinを内在性コントロールとして用い、目的遺伝子発現の補正に使用した。装置は、StepOne Plus(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。
図3に示すように、脂肪細胞の分化誘導前及び分化誘導後のいずれにおいても、カルダモンは、MCP-1遺伝子の発現を顕著に抑制した。
【0048】
《実施例3》
本実施例では、マウス細胞を用いて、カルダモンのエタノール抽出物のアディポネクチンに対する作用を検討した。
MCP-1遺伝子用のプライマーに代えて、以下のアディポネクチン用のフォワードプライマー(5’-AAAGGAGAGCCTGGAGAAGC-3’;配列番号3)及びリバースプライマー(5’-CGAATGGGTACATTGGGAAC-3’;配列番号4)を用いたことを除いては、実施例2のMCP-1遺伝子の検出の操作を繰り返した。
図4に示すように、脂肪細胞の分化誘導前及び分化誘導後のいずれにおいても、カルダモンは、アディポネクチン遺伝子の発現を顕著に増加させた。
【0049】
《実施例4》
本実施例では、マウス細胞を用いて、カルダモンのエタノール抽出物のPPARγに対する作用を検討した。
MCP-1遺伝子用のプライマーに代えて、以下のPPARγ用のフォワードプライマー(5’-AACTCTGGGAGATTCTCCTGTTGA-3’;配列番号5)及びリバースプライマー(5’-GAAGTGCTCATAGGCAGTGCAT-3’;配列番号6)を用いたことを除いては、実施例2のMCP-1遺伝子の検出の操作を繰り返した。
図5に示すように、脂肪細胞の分化誘導前及び分化誘導後のいずれにおいても、カルダモンは、PPARγ遺伝子の発現を顕著に増加させた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のPPARγ2産生活性化剤はPPARγの発現を増加させることができる、本発明のアディポネクチン産生活性化剤は、アディポネクチンの発現を増加させることができる。本発明のMCP-1産生抑制剤は、MCP-1の発現を抑制することができる。
【配列表】