IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友精化株式会社の特許一覧

特許7663497メチレンジスルホネート化合物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】メチレンジスルホネート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 327/00 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
C07D327/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021534057
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028366
(87)【国際公開番号】W WO2021015219
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019135408
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦辺 成矢
(72)【発明者】
【氏名】坂東 誠二
(72)【発明者】
【氏名】増原 悠策
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/026266(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108840852(CN,A)
【文献】国際公開第2007/125736(WO,A1)
【文献】IN 2018-21043808 A (SINGH, R. ) 19.07.2019 (2019-07-19)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 327/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、2個のXは、ともに水素原子を示す。R及びRは、同一又は異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す。nは1~4の整数を示し、nが2~4の整数であるとき、n個のRはそれぞれ同一又は異なってよく、n個のRはそれぞれ同一又は異なってよい。)
で表されるスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄の存在下で反応させることを含み、
前記三酸化硫黄の使用量は、前記スルホン酸化合物1.0モルに対して、2.0~10モルである、
式(3):
【化2】
(式中、R、R、及びnは、前記に同じ。)で表されるメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【請求項2】
反応容器中に、前記スルホン酸化合物および三酸化硫黄を入れ、攪拌下にホルムアルデヒド化合物を添加する、請求項1に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ホルムアルデヒド化合物が、パラホルムアルデヒド、無水ホルムアルデヒド、トリオキサン、及びメチラールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【請求項4】
前記スルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄及び脱水剤の存在下で反応させることを含む、請求項1~3のいずれかに記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【請求項5】
前記脱水剤が五酸化リンである、請求項4に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メチレンジスルホネート化合物の製造方法等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
メチレンジスルホネート化合物は、動物の白血病治療薬等の医薬品や二次電池用電解液の安定剤等として有用であることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジスルホニルクロリドと炭酸銀とを反応させて得られるジスルホン酸銀をジヨードメタンと反応させて、メチレンジスルホネート化合物を製造する方法が開示されている。
【0004】
【化1】
【0005】
また例えば、特許文献2には、アルカンジスルホン酸等とメチレンジアセテート等とを反応させて、メチレンジスルホネート化合物を製造する方法が開示されている。
【0006】
【化2】
【0007】
また例えば、特許文献3には、メタンジスルホン酸を塩化チオニル等の塩素化剤を用いてメタンジスルホン酸クロリドに変換し、これとホルムアルデヒドを反応させて、メチレンジスルホネート化合物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表昭61-501089号公報
【文献】特開2005-336155号公報
【文献】中国特許出願公開第102344436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法は、使用する炭酸銀やジヨードメタンが高価であることに加え、反応の進行が遅く、満足のいく収率で目的物を得ることができない場合がある上に、難溶性のヨウ化銀が化学量論量副生するため、移送や濾過工程においてはハンドリング性が課題となる場合がある。
【0010】
特許文献2の方法は、使用するメチレンジアセテートの入手が困難で、高価であるという問題がある。
【0011】
特許文献3の方法は、多段階の反応プロセスであるため製造工程が煩雑となることに加え、塩素化剤が引き起こす副反応により、有毒な副生物を生じるという問題がある。
【0012】
以上のように、従来公知のいずれの方法も、工業規模の大量製造を実施する上で、必ずしも満足できる製造方法とはいえない。
【0013】
本発明者らは、容易にメチレンジスルホネート化合物を製造可能な新規製造方法を提供することを目的に、検討を行った。具体的に、本発明者らは、三酸化硫黄(SO、無水硫酸ともいう)存在下でスルホン酸化合物とホルムアルデヒド化合物とを反応させることにより、メチレンジスルホネート化合物を製造できる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0014】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1
式(1):
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、2個のXは、同一又は異なって、水素原子又はアルカリ金属を示す。R及びRは、同一又は異なって、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す。nは1~4の整数を示し、nが2~4の整数であるとき、n個のRはそれぞれ同一又は異なってよく、n個のRはそれぞれ同一又は異なってよい。)
で表される化合物、および
式(2):
【0017】
【化4】
【0018】
(式中、Yはアルカリ土類金属を示す。R、R、及びnは、前記に同じ。)
で表される化合物
からなる群から選ばれた少なくとも1種のスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄の存在下で反応させることを含む、
式(3):
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、R、R、及びnは、前記に同じ。)で表されるメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
項2
前記ホルムアルデヒド化合物が、パラホルムアルデヒド、無水ホルムアルデヒド、トリオキサン、及びメチラールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
項3
前記スルホン酸化合物が、式(1)において2個のXがともに水素原子を示す化合物である、項1又は2に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
項4
前記スルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄及び脱水剤の存在下で反応させることを含む、項1~3のいずれかに記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
項5
前記脱水剤が五酸化リンである、項4に記載のメチレンジスルホネート化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
メチレンジスルホネート化合物を容易且つ安価に製造することが可能な製造方法が提供される。当該製造方法においては、工程途中での反応混合物の粘性が比較的低く、工業規模での製造においてもハンドリング性が良好であり、従って工業的にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、メチレンジスルホネート化合物の製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0023】
本開示に包含されるメチレンジスルホネート化合物の製造方法は、特定のスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄の存在下で反応させることを含む。
【0024】
当該特定のスルホン酸化合物は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である。
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
式(1)及び(2)のそれぞれにおいて、R及びRは、それぞれ独立して(つまり同一又は異なって)、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4(1、2、3、又は4)のアルキル基、又は水素原子を示し、nは1~4の整数(1、2、3、又は4)を示す。また、Xは、同一または異なって(好ましくは同一で)、水素原子又はアルカリ金属を示し、Yはアルカリ土類金属を示す。
【0028】
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基におけるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基等が挙げられる。
【0029】
及びRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0030】
式(1)及び式(2)のそれぞれにおいて、nが2~4の整数(2、3、又は4)であるとき、n個のRは、同一又は異なってよく、また、n個のRは、同一または異なってよい。なお、nは1であることが好ましい。
【0031】
Xで表されるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0032】
Yで表されるアルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
【0033】
当該特定のスルホン酸化合物としては、式(1)において2個のXが、同一または異なって、水素原子、ナトリウム、又はカリウムであるものが好ましく、式(1)において2個のXがともに水素原子であるものがより好ましい。
【0034】
式(1)で表されるスルホン酸化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を好ましく挙げることができる。
【0035】
メタンジスルホン酸(X=H、R=R=H、n=1)、1,1-エタンジスルホン酸(X=H、R=CH、R=H、n=1)、1,2-エタンジスルホン酸(X=H、R =R=H、n=2)、1,1-プロパンジスルホン酸(X=H、R=CHCH、R=H、n=1)、1,2-プロパンジスルホン酸(X=H、R=CH及びH、R=H、n=2)、1,3-プロパンジスルホン酸(X=H、R=R=H、n=3)、2,2-プロパンジスルホン酸(X=H、R=R=CH、n=1)、1,4-ブタンジスルホン酸(X=H、R=R=H、n=4)、
メタンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=R=H、n=1)、1,1-エタンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=CH、R=H、n=1)、1,2-エタンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R =R=H、n=2)、1,1-プロパンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=CHCH、R=H、n=1)、1,2-プロパンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=CH及びH、R=H、n=2)、1,3-プロパンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=R=H、n=3)、2,2-プロパンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=R=CH、n=1)、1,4-ブタンジスルホン酸ナトリウム(X=Na、R=R=H、n=4)、
メタンジスルホン酸カリウム(X=K、R=R=H、n=1)、1,1-エタンジスルホン酸カリウム(X=K、R=CH、R=H、n=1)、1,2-エタンジスルホン酸カリウム(X=K、R =R=H、n=2)、1,1-プロパンジスルホン酸カリウム(X=K、R=CHCH、R=H、n=1)、1,2-プロパンジスルホン酸カリウム(X=K、R=CH及びH、R=H、n=2)、1,3-プロパンジスルホン酸カリウム(X=K、R=R=H、n=3)、2,2-プロパンジスルホン酸カリウム(X=K、R=R=CH、n=1)、1,4-ブタンジスルホン酸カリウム(X=K、R=R=H、n=4)。
【0036】
式(2)で表されるスルホン酸化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を好ましく挙げることができる。
【0037】
メタンジスルホン酸カルシウム(Y=Ca、R=R=H、n=1)、1,2-エタンジスルホン酸カルシウム(Y=Ca、R=R=H、n=2)、メタンジスルホン酸マグネシウム(Y=Mg、R=R=H、n=1)、メタンジスルホン酸バリウム(Y=Ba、R=R=H、n=1)、1,2-エタンジスルホン酸バリウム(Y=Ba、R=R=H、n=2)、1,2-プロパンジスルホン酸バリウム(Y=Ba、R=CH及びH、R=H、n=2)、1,3-プロパンジスルホン酸バリウム(Y=Ba、R=R=H、n=3)、1,4-ブタンジスルホン酸バリウム(Y=Ba、R=R=H、n=4)。
【0038】
当該スルホン酸化合物は、市販のものを使用してもよいし、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法により調製したものを用いてもよい。例えば、特開2005-336155号公報を参考に、対応するジスルホニルハライドと水とを反応させる方法によって調製してもよい。Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas,48,949-952(1929)を参考に、ジクロロメタンと亜硫酸アルカリ塩を水溶媒中、150~160℃で反応させて合成してもよい。
【0039】
なお、スルホン酸化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
ホルムアルデヒド化合物としては、例えば、パラホルムアルデヒド、無水ホルムアルデヒド、トリオキサン、ホルムアルデヒドのアセタール化物(例えばメチラール)等を用いることができる。無水ホルムアルデヒドは例えばパラホルムアルデヒドを加熱処理して得ることができる。またトリオキサンは例えばパラホルムアルデヒドを酸処理して得ることができる。これらの中でも、ホルムアルデヒド化合物としては、パラホルムアルデヒド、無水ホルムアルデヒド、及びトリオキサンが好ましく、パラホルムアルデヒドがより好ましい。なお、ホルムアルデヒド化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
ホルムアルデヒド化合物の使用量は、該スルホン酸化合物1.0モルに対して、例えば0.6~10モルとすることができ、0.7~7.0モルであることが好ましく、0.8~5.0モルであることがより好ましい。
【0042】
ホルムアルデヒド化合物の当該使用量が0.6モル以上であることにより、反応が十分進行して収率がより向上し得る。また、当該使用量が10モル以下であると経済的である。
【0043】
三酸化硫黄の使用量は、該スルホン酸化合物1.0モルに対して、例えば0.1~10モルとすることができ、0.2~8.0モルであることが好ましく、0.3~6.0モルであることがより好ましい。
【0044】
三酸化硫黄の当該使用量が0.1モル以上であることにより、反応が十分進行して収率がより向上し得る。また、当該使用量が10モル以下であると経済的である。
【0045】
上記特定のスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄の存在下で反応させるにあたり、反応を促進する目的で、さらに脱水剤を用いてもよい。脱水剤としては、例えば、五酸化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、塩化チオニル、塩化アセチル、無水酢酸、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から五酸化リンが好適に用いられる。なお、脱水剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
脱水剤の使用量としては、例えば、スルホン酸化合物1.0モルに対して0~10モルとすることができ、0~5.0モルであることが好ましく、0~3.0モルであることがより好ましい。当該範囲の下限は、特に制限はされないが、例えば0.1、0.5、又は1モル程度とすることができる。
【0047】
上記反応においては、必要に応じて溶媒を用いてもよい。溶媒の使用量は、スルホン酸化合物100質量部に対して例えば0~1500質量部とすることができ、0~1000質量部であることが好ましい。当該範囲の下限は、特に制限はされないが、例えば1、5、又は10質量部程度とすることができる。
【0048】
溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、硫酸等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチル-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。アミド系溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル等が挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド等が挙げられる。スルホン系溶媒としては、例えばエチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン等が挙げられる。
中でもエーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、および硫酸が好ましく、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒および硫酸がより好ましく、スルホキシド系溶媒およびスルホン系溶媒がさらに好ましい。
【0049】
上記特定のスルホン酸化合物と、ホルムアルデヒド化合物とを、三酸化硫黄の存在下で反応させるにあたり、反応方法は特に限定されることはないが、例えば、反応容器中にスルホン酸化合物、三酸化硫黄、及び必要に応じて用いられる溶媒や脱水剤を入れ、十分攪拌した状態で、パラホルムアルデヒドを添加する方法や、反応容器にスルホン酸化合物とホルムアルデヒド化合物、必要に応じて使用される溶媒や脱水剤を入れ、十分攪拌した状態で三酸化硫黄を添加する方法や、あるいは、反応容器中にパラホルムアルデヒド化合物、三酸化硫黄、及び必要に応じて用いられる溶媒や脱水剤を入れ、十分攪拌した状態でスルホン酸化合物を添加する方法、等が挙げられる。
【0050】
反応温度は、例えば0~200℃程度とすることができ、10~150℃程度であることが好ましい。また、反応時間は反応温度により異なり得るが、例えば0.1~20時間程度である。
【0051】
上記方法により、式(3):
【0052】
【化8】
【0053】
(式中、R、R及びnは前記に同じ。)で表されるメチレンジスルホネート化合物を得ることができる。
【0054】
式(3)で表されるメチレンジスルホネート化合物の具体例としては、例えば、メチレンメタンジスルホネート(R=R=H、n=1)、メチレン1,1-エタンジスルホネート(R=CH、R=H、n=1)、メチレン1,2-エタンジスルホネート(R=R=H、n=2)、メチレン1,1-プロパンジスルホネート(R=CH CH、R=H、n=1)、メチレン1,2-プロパンジスルホネート(R=CH 及びH、R=H、n=2)、メチレン1,3-プロパンジスルホネート(R=R=H、n=3)、メチレン2,2-プロパンジスルホネート(R=CH、R=CH、n=1)及びメチレン1,4-ブタンジスルホネート(R=R=H、n=4)等を挙げることができる。
【0055】
上記方法で得られるメチレンジスルホネート化合物は、例えば、従来公知の精製、単離操作によって単離することができ、その方法は特に限定されるものではないが、例えば、反応混合物から溶媒等を用いて抽出した後、水洗等を経て晶析させる方法等が挙げられる。また例えば、反応混合物に水等を添加し、三酸化硫黄を分解してから、前記同様、溶媒抽出、水洗等を経て晶析させても良いし、反応混合物に水等の貧溶媒を添加し、粗生成物を析出させ、これを濾別し、再結晶精製をしてもよい。
【0056】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0057】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0058】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン10.0g、及び三酸化硫黄16.0g(0.20モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で3時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して73mol%であった。なお、当該生成収率は、反応液をサンプリングしてHPLC分析して得たピーク面積値から求めた(以下の例でも同様)。
【0060】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0061】
次に、該反応混合物に塩化メチレン及び水を添加して分液し、有機層を水洗した。得られた有機層を濃縮し、析出した結晶を濾別して、この結晶を40℃、10mmHgで6時間乾燥することにより、メチレンメタンジスルホネートを12.2g得た。メタンジスルホン酸に対する収率は65mol%であった。
【0062】
なお、この結晶がメチレンメタンジスルホネートであることを1H-NMR分析により確認した。
1H-NMR(400MHz、CD3CN)δ(ppm):5.33(s,2H),6.00(s,2H)。
【0063】
[実施例2]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン10.0g、及び三酸化硫黄16.0g(0.20モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、40℃で3時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して80mol%であった。
【0064】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0065】
[実施例3]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン10.0g、及び三酸化硫黄16.0g(0.20モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、30℃で3時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して82mol%であった。
【0066】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0067】
[実施例4]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン10.0g、及び三酸化硫黄24.0g(0.30モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で1時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して80mol%であった。
【0068】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0069】
[実施例5]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン10.0g、及び三酸化硫黄27.2g(0.34モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド5.6g(ホルムアルデヒドとして0.17モル)を添加した後、55℃で3時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して90mol%であった。
【0070】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0071】
[実施例6]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン60.0g、及び三酸化硫黄38.4g(0.48モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド13.2g(ホルムアルデヒドとして0.40モル)を添加した後、100℃で2時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して86mol%であった。
【0072】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0073】
[実施例7]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン40.0g、三酸化硫黄19.2g(0.24モル)、及び五酸化リン7.1g(Pとして0.05モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド6.6g(ホルムアルデヒドとして0.20モル)を添加した後、100℃で2時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して74mol%であった。
【0074】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0075】
[実施例8]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、及び三酸化硫黄24.0g(0.30モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で2時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して47mol%であった。
【0076】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0077】
[実施例9]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、ジメチルスルホキシド10.0g、及び三酸化硫黄24.0g(0.30モル)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で1時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して64mol%であった。
【0078】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0079】
[実施例10]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、スルホラン80.0g、及び60%発煙硫酸(60質量%の三酸化硫黄を含有する硫酸)64.1g(三酸化硫黄としては38.4gで0.48モルに相当し、硫酸としては25.6g)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で1時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して69mol%であった。
【0080】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0081】
[実施例11]
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.10モル)、及び60%発煙硫酸(60質量%の三酸化硫黄を含有する硫酸)40.0g(三酸化硫黄としては24.0gで0.30モルに相当し、硫酸としては16.0g)を仕込み、攪拌下、室温で91%パラホルムアルデヒド3.3g(ホルムアルデヒドとして0.10モル)を添加した後、55℃で1時間攪拌した。メチレンメタンジスルホネートの生成収率は、メタンジスルホン酸に対して47mol%であった。
【0082】
次に該反応混合物を25℃まで冷却したところ、25℃下においても反応混合物の粘性は低く、流動性に優れるものであった。
【0083】
以上の結果から分かるように、上記製造方法によれば、反応の進行に伴う副生物の析出や反応混合物の粘度増加等を伴うことなく、良好に反応を進行させることができる。すなわち、反応時の攪拌性悪化や移送負荷増大等のハンドリング性不良を伴うことなく、メチレンジスルホネート化合物を容易且つ安価に製造することが可能となり、工業規模の製造に適している。