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特許7664051基板の搬送装置、成膜装置、制御方法、成膜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】基板の搬送装置、成膜装置、制御方法、成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20250410BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20250410BHJP
   B65G 47/29 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
C23C14/56 G
H01L21/68 A
B65G47/29 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021018398
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121186
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須志原 友和
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175016(JP,A)
【文献】特開2002-205292(JP,A)
【文献】特開2014-107412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/56
H01L 21/677
B65G 47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体の両側を支持して搬送する搬送装置であって、
搬送方向に向かって前記搬送体の左側を支持して、前記搬送体を搬送する第1の搬送ローラと、
前記搬送方向に向かって前記搬送体の右側を支持して、前記搬送体を搬送する第2の搬送ローラと、
基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した前記ずれを補正するように前記第1および第2の搬送ローラを独立して制御する制御手段と、
を備え
前記検出手段は、前記搬送方向に向かって左右の少なくともいずれかに配置された複数の測距センサを含み、
前記制御手段は、前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離に基づいて、基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出し、前記搬送方向に向かって左右に配置された前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離の差をなくすよう前記第1および第2の搬送ローラへの制御値を設定する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記第1および第2の搬送ローラの回転速度の目標値をそれぞれ計算し、前記目標値になるよう前記第1および第2の搬送ローラへの制御値を設定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離に基づいて前記搬送体の傾きを判定し、前記搬送体の傾きをなくすように前記第1および第2の搬送ローラへの制御値を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
搬送体の両側を支持して搬送する搬送装置であって、
搬送方向に向かって前記搬送体の左側を支持して、前記搬送体を搬送する第1の搬送ローラと、
前記搬送方向に向かって前記搬送体の右側を支持して、前記搬送体を搬送する第2の搬送ローラと、
基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した前記ずれを補正するように前記第1および第2の搬送ローラを独立して制御する制御手段と、
を備え、
前記検出手段は、前記第1および前記第2の搬送ローラのサーボモータの消費電力をモニタし、
前記制御手段は、前記消費電力に基づいて基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを判定し、前記第1および第2の搬送ローラのサーボモータへの制御値を設定することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1および第2の搬送ローラのサーボモータの消費電力が上昇するタイミングの差に基づいて基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを判定することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、所定の時点における前記第1および第2の搬送ローラのサーボモータの前記消費電力の差に基づいて基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを判定することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項7】
搬送体の搬送経路の側方に配置され、前記第1および第2の搬送ローラによって搬送される前記搬送体に当接して前記搬送体の搬送方向を変化させるサイドローラをさらに備えることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている搬送体に対して、成膜材料を蒸着する蒸発源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送された搬送体と、マスクとのアライメントを行うアライメント装置と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
搬送体を搬送するための搬送装置の制御方法であって、
基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出する検出工程と、
前記検出工程において検出した前記ずれを補正するように、搬送体の搬送方向に向かって左側で前記搬送体を搬送する第1の搬送ローラと、前記搬送方向に向かって右側で前記搬送体を搬送する第2の搬送ローラとを独立して制御する制御工程と、
を含み、
前記検出工程は、前記搬送方向に向かって左右の少なくともいずれかに配置された複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離に基づいて、基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出し、
前記制御工程は、前記搬送方向に向かって左右に配置された前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離の差をなくすよう前記第1および第2の搬送ローラへの制御値を設定する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
搬送体を搬送するための搬送装置の制御方法であって、
基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出する検出工程と、
前記検出工程において検出した前記ずれを補正するように、搬送体の搬送方向に向かって左側で前記搬送体を搬送する第1の搬送ローラと、前記搬送方向に向かって右側で前記搬送体を搬送する第2の搬送ローラとを独立して制御する制御工程と、
を含み、
前記検出工程は、前記第1および前記第2の搬送ローラのサーボモータの消費電力をモニタし、
前記制御工程は、前記消費電力に基づいて基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを判定し、前記第1および第2の搬送ローラのサーボモータへの制御値を設定する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の制御方法によって搬送装置を制御することで、前記搬送体を搬送する工程と、
前記搬送体を搬送しながら成膜を行う成膜工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の搬送装置、成膜装置、制御方法、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイの製造では、TFT(薄膜トランジスタ)を形成した基板上に有機材料が成膜される。有機材料の成膜方法としては、真空蒸着が主流となっており、TFTが形成された面を下向きにして基板の下方から蒸着材料を上向きに成膜する方法が使用される。TFTを形成した基板には、複数のパネル領域が配置されることがあり、マザーガラスと呼ばれうる。近年、マザーガラスのサイズが大きくなっているため、従来のガラス基板を静止させた状態での成膜方法から基板を移動させながら成膜するインライン成膜方式が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-141706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インライン成膜方式の成膜装置においては、ガラス基板のみを搬送しながら成膜することが難しく、マスク機能を持たせたトレイ上にガラス基板を積載して搬送する必要がある。インライン成膜方式においては搬送中の蛇行を抑制する目的でガイド機能をするサイドローラが設けられる。このサイドローラに接触することで、パーティクルの発生や、基板とトレイのずれが発生するという課題がある。
【0005】
上記の課題を鑑み、本発明は、搬送中の基板の蛇行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によれば、搬送装置は、
搬送体の両側を支持して搬送する搬送装置であって、
搬送方向に向かって前記搬送体の左側を支持して、前記搬送体を搬送する第1の搬送ローラと、
前記搬送方向に向かって前記搬送体の右側を支持して、前記搬送体を搬送する第2の搬送ローラと、
基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した前記ずれを補正するように前記第1および第2の搬送ローラを独立して制御する制御手段と、
を備え
前記検出手段は、前記搬送方向に向かって左右の少なくともいずれかに配置された複数の測距センサを含み、
前記制御手段は、前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離に基づいて、基準に対する前記搬送体の姿勢のずれを検出し、前記搬送方向に向かって左右に配置された前記複数の測距センサのそれぞれが測定した前記搬送体の端部までの距離の差をなくすよう前記第1および第2の搬送ローラへの制御値を設定する

【発明の効果】
【0007】
これによって、搬送中の基板の蛇行を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る生産ラインの一例を示す概略図。
図2】本実施形態に係る搬送装置によって搬送される基板の一例を示す図。
図3】本実施形態に係る搬送装置によって搬送される基板の別例を示す図。
図4】本実施形態に係る制御装置が実行する処理の一例を示す図。
図5】姿勢検出センサに基づく基板の姿勢の推定法の一例を示す図。
図6】(A)、(B)は複数のサーボモータの消費電力の変化の一例を示す図。
図7】本実施形態に係る搬送装置によって基板の蛇行を抑制する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
図1を参照して、本実施形態に係る生産ラインの一例を説明する。
【0011】
図1に示す生産ラインにおいて基板投入部11よりガラス基板7を投入する。ガラス基板7は投入時に下面が成膜面となるようにして基板投入部11に投入される。基板投入部11に投入されたガラス基板7は基板投入部11に接続された不図示の真空ポンプにより所定の圧力以下となるまで減圧される。本実施形態では、基板投入部11は5.0×10-4Pa以下になるまで減圧処理を行う。そのため、基板投入部11のチャンバー内容量は少ない方が排気にかかる時間が少なくて済むため、本実施形態では基板投入部11においてガラス基板の回転は行われないものとする。このため、ガラス基板7は基板投入部11に成膜面を下面にして投入される。
【0012】
本実施例におけるガラス基板7は第六世代と呼ばれる基板サイズであり、具体的には1850mm×1500mm×0.5tの無アルカリガラスである。ガラス基板7はマスク8の上に積載されており、マスク8のサイズは2050mm×1700mm×50mmである。ガラス基板7には有機ELディスプレイであればTFT回路が形成されている。有機EL照明であれば電極が形成されている。
【0013】
基板投入部11にて所定の圧力以下となるまで不図示の真空ポンプにて排気が行われたら、基板搬送部12内に設置されている真空搬送用ロボット24にてガラス基板7を搬送する。具体的には、基板投入部11と基板搬送部12の間にあるゲートバルブと呼ばれる開閉可能な板状の弁を開け、真空搬送用ロボット24が基板投入部11にあるガラス基板7を受け取ることで搬送を行う。この時、基板搬送部12内の圧力は基板投入部11より低い1.0×10-4Pa以下である。ガラス基板7を受け取った真空搬送用ロボット24は基板搬送部12内にガラス基板7を引き込む。基板搬送部12にガラス基板7を引き込んで所定の位置に達してから、基板投入部11と基板搬送部12の間に設けられた開閉可能な板状の弁を閉じる。基板搬送部12には必要に応じてガラス基板7をストックするバッファ部やガラス基板7の成膜面を活性化する前処理部を設けてもよいが、本実施形態では省略する。
【0014】
次に基板搬送部12に引き込まれたガラス基板7を基板マスク合体部13へ引き渡す。まず基板マスク合体部13にマスクリターン部21もしくはマスク投入部20からマスク8を投入する。続いて、基板搬送部12と基板マスク合体部13との間に設けられた開閉可能な板状の弁を開け、真空搬送用ロボット24は、ガラス基板7を基板ガラス合体部13の不図示の基板受けへと受け渡す。ガラス基板7の受け渡しが完了したら、真空搬送用ロボット24は基板搬送部12内の所定位置に戻り、基板搬送部12と基板マスク合体部13の間に設けられた開閉可能な板状の弁を閉じる。続いて、ガラス基板合体部13は基板受けに配置されたガラス基板7をマスク8上に移動する。
【0015】
ガラス基板7をマスク8上に配置する際に、ガラス基板合体部13はガラス基板7とマスク8を位置合わせする不図示のアライメント機構により位置合わせ処理を実行する。位置合わせ処理では、ガラス基板7とマスク8を基板マスク合体部13内でそれぞれをセンタリングしてから合体させる方法や、ガラス基板7とマスク8に位置合わせ用のマークを設けて画像処理によるアライメント動作を行う方法を採用することができる。
【0016】
続いて、マスク8上に置かれたガラス基板7の上に、マスク8とガラス基板7とを密着させるための部材を置く。具体的には、マグネットを利用したものやガラス基板の形状を整える機構を有した部材である。マスク8とガラス基板7とを合体させたものを以下ではマスク済み基板100と称する。マスク8は開口を有し、これによってマスク済み基板100の下方から後述する蒸着部から有機材料(以下、蒸着材料とも称する)を放出することで、後述する成膜部15においてガラス基板7上の所定の位置に有機材料を蒸着することができる。
【0017】
マスク済み基板100を積載した状態で基板マスク合体部13、追付き部14、成膜部15、引離し部16、基板マスク分離部17を搬送ローラによる搬送を行う。
【0018】
基板マスク合体部13は、マスク済み基板100を追付き部14へ移動する。基板マスク合体部13からマスク8の下面に接触する搬送ローラが所定の間隔で配置されており、マスク済み基板100の搬送動作を行う。追付き部14においては、先行するマスク済み基板100の間隔を狭める動作を行う。具体的には先行するマスクが成膜速度で搬送されている状態において、成膜速度以上の速度で間隔を狭め、間隔が近くなったら成膜速度とすることで、間隔を狭めることができる。搬送方向で前後のマスク済み基板100の間隔を狭めることができれば、成膜材料の無駄を減らすことができる。しかしながら、マスク済み基板100同士が接触してしまうとパーティクルの発生や、基板7とマスク8との位置ずれや歪みの原因となってしまう。このため、追付き部14は最小限の間隔が確保されていることが好ましい。基板マスク合体部13から搬送ローラ4によってマスク済み基板100を搬送する。
【0019】
追付き部14でマスク済み基板100の間隔を狭めた状態を維持して成膜部15へとマスク済み基板100を搬送していく。搬送中はマスク済み基板100の姿勢を検出して、後述するマスク済み基板100の姿勢制御を行いながら成膜処理を実行する。成膜部15においては不図示の成膜源が設置されていて、蒸着であれば蒸着源、スパッタであればターゲット、化学蒸着法(CVD)であれば電極と成膜ガスの流路が設けられる。本実施形態においては蒸着における例を挙げるがスパッタやCVDにおいても同様に、後述する姿勢制御を使用することができる。
【0020】
成膜部15では一般的に複数層の膜を成膜する。成膜源は固定で、マスク済み基板100を搬送することで、所望の膜をガラス基板に蒸着することができる。単色発光の有機ELデバイスであれば、発光エリアの開口があるマスクを使用する。複数色発光の有機ELデバイスであれば、各色に成膜したいエリアの開口があるマスクを使用することになる。インライン成膜方式では照明用途も含めて単色発光デバイスが主流である。単色発光の有機ELデバイスにおいても、一般的にホール輸送層、発光層、電子輸送層などの複数層の成膜を行う。マスク済み基板100の搬送速度に合わせて各層の成膜レートを調整して所望の膜を所望の膜厚で成膜をすることで有機ELデバイスの成膜を行う。
【0021】
成膜部15にて成膜処理が終了して、マスク済み基板100が引離し部16へ搬送されると、次の基板マスク分離部17にて停止して処理を行う必要があるため、搬送方向で前後のマスク済み基板100の間隔をあける。引離し時は、引離し部16に設けられた不図示の位置確認センサを使用し、マスク済み基板100が所定の位置を過ぎると、マスク済み基板100が乗っている引離し部16の搬送ローラのみの回転速度を上げる。これによって搬送方向で上流のマスク済み基板100との距離を広げることができる。
【0022】
続いて、引離し部16はマスク済み基板100を基板マスク分離部17へと搬送する。基板マスク分離部17に滞留中の基板7またはマスク8がなければ、引き離し速度のままマスク済み基板100を基板マスク分離部17へ搬送してもよい。
【0023】
基板マスク分離部17は、搬送されたマスク済み基板100のマスク8とガラス基板7とを密着させるための部材を取り外し、基板マスク分離部17内部の機構によりガラス基板7を持ち上げる。持ち上げたガラス基板7は基板搬送部18に設置されている真空搬送用ロボット25にて基板搬送部18へと搬送される。マスク8はマスクリターン部21にて基板マスク合体部13へ送るかマスク排出部23へと搬送される。
【0024】
基板搬送部18へガラス基板7を搬送する際は、基板マスク分離部17と基板搬送部18の間に設けられた開閉可能な板状の弁を開ける。真空搬送用ロボット25が基板マスク分離部17の向きになるように旋回動作を行い、基板マスク分離部17に置かれたガラス基板7の下面にアームを伸ばしてからすくい上げるようにしてガラス基板7を受け取る。ガラス基板7を受け取った真空搬送用ロボット25は基板搬送部18内にガラス基板7を引き込む。基板搬送部18にガラス基板7を引き込んで所定の位置に達してから、基板マスク分離部17と基板搬送部18の間に設けられた開閉可能な板状の弁を閉じる。基板搬送部18には必要に応じて成膜後のガラス基板7をストックするバッファ部や有機膜が劣化することを防止する封止部を設けてもよいが、本実施形態では省略する。
【0025】
基板搬送部18から基板排出部19へとガラス基板7を搬送する際は、基板搬送部18と基板排出部19の間に設けられた開閉可能な板状の弁を開ける。真空搬送用ロボット25が基板排出部19の向きになるように旋回動作を行い、基板排出部19内に設けられたガラス基板積載部にガラス基板7を搬送する。真空搬送用ロボット25が基板搬送部18内の所定の位置に達してから、基板搬送部18と基板排出部19の間に設けられた開閉可能な板状の弁を閉じる。
【0026】
基板排出部19では、後工程が真空環境であれば大気圧に戻す動作は行わない。後工程によっては、窒素雰囲気にするための窒素ベントや大気ベントを行ってもよい。
【0027】
以上、本実施形態を実施するための形態を記載した。なお、上述の形態では、ガラス基板7、または、ガラス基板7とマスク8とが重ねあわされたものを、搬送体として搬送している。これら以外にも、ガラス基板7を保持する基板キャリアを搬送体として用いてもよい。
【0028】
<搬送装置による基板の姿勢制御>
続いて、成膜システムにおける基板の搬送方法及び搬送装置について説明する。図2を参照して搬送ローラ4の一例について説明する。搬送ローラ4は磁気シール3と接続されており、チャンバー外のカップリング2を介してサーボモータ1に接続されている。本実施形態では、1つのサーボモータ1に接続される搬送ローラ4は1つであるものとして説明を行うが、1つのサーボモータ1に複数の搬送ローラ4が接続されてもよい。サーボモータ1をコントロールする制御装置90によってサーボモータ1は同期制御される。図2では、1つの制御装置90がすべてのサーボモータ1を制御するものとして図示されているが、同期制御が実現できれば、複数の制御装置90がサーボモータ1を分担して制御してもよい。
【0029】
制御装置90は、プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、インタフェース(I/F)94を備える。プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、I/F94はバス95を介して通信可能に接続される。
【0030】
プロセッサ91は、ストレージ93に格納されたプログラムをメモリ92に展開し、後述するマスク済み基板100のI/F94を介してサーボモータ1を制御する。また一例では、制御装置90は、姿勢検出センサ6の出力値をI/F94を介して受信する。また一例では、制御装置90は、サーボモータ1の消費電力をモニタする。
【0031】
ここで、制御装置90は、複数のサーボモータ1を同期制御してマスク済み基板100の搬送を行うが、搬送ローラ4の外径のわずかな差や、機械的な組付け精度等によってマスク済み基板100が搬送方向に対して傾き、蛇行する可能性がある。このように、マスク済み基板100の蛇行を防ぐために、搬送ローラ4によって形成される搬送経路の側方には、マスク済み基板100の側方に当接して蛇行を規制するサイドローラ5が取り付けられている。
【0032】
本実施形態においては、サイドローラ5とマスク済み基板100のクリアランスは搬送方向に向かって左右各5mmである。このため、マスク済み基板100は、蛇行が±5mm以下であればサイドローラ5に接触することなく搬送されせることができる。搬送ローラ4による搬送が行われる区間においては、姿勢検出センサ6が配置されている。姿勢検出センサは、搬送されるマスク済み基板100の姿勢に関するパラメータを測定するためのセンサであり、例えば、マスク済み基板100の搬送方向に向かって左右の端部までの距離を測定する測距センサである。本実施形態においては、姿勢検出センサ6はマスク済み基板100の少なくとも3ヵ所を検出できる位置に複数配置することにより連続的にマスク済み基板100の姿勢を検出している。姿勢検出センサ6は初期値として、サイドローラ5に押し当てた状態でベースとなる数値を測定しておき、各位置におけるマスク8の正常な姿勢を記憶しておく。搬送中に正常な姿勢から外れたと判断した場合において、サーボモータ1の回転数を制御してマスク8の姿勢を変更する処理を行う。
【0033】
しかしながら、マスク8および基板7が蛇行し、サイドローラ5に当接すると、基板7とマスク8とのアライメントがずれたり、基板7またはマスク8からパーティクルが発生し、基板7に当接することで成膜不良が生じる場合がある。このため、本実施形態に係る制御装置90は、マスク済み基板100の搬送方向に対する姿勢の基準からのずれを検出して、ずれを補正するよう搬送ローラ4を制御することで、マスク済み基板100の蛇行を抑制する。一例では、制御装置90は、マスク済み基板100がサイドローラ5に当接する前にマスク済み基板100の傾きがなくなるよう制御する。
【0034】
図3にマスク済み基板100が搬送方向に対して傾いている際の状態を示す。図3においては、搬送方向に向かって左前がサイドローラ5に接触する様子を示している。図3のように搬送中においてはサイドローラ5に接触しながら進行していく。なお、図3では制御装置90は省略されている。
【0035】
ここで、図4を参照して、制御装置90が実行する、マスク済み基板100の搬送方向に対する傾きを検出して進行方向を修正する処理について説明する。図4の処理は、搬送装置90のプロセッサ91が、マスク済み基板100の搬送中に、所定の時間間隔で、ストレージ93に格納された命令を実行することで実現される。
【0036】
まず、ステップS401(以下S401とする)で、プロセッサ91は、姿勢検出センサ6、またはサーボモータ1の検出結果に基づいて、マスク済み基板100の姿勢の基準からのずれを検出する。マスク済み基板100の姿勢とは、搬送面における、マスク済み基板100の搬送方向に対する傾き、または左右のサイドローラ5または姿勢検出センサ6までの距離の少なくともいずれかを含む。マスク済み基板100の搬送方向に対する傾きの基準は、0度であってもよく、-1度以上かつ1度以下などの所定の範囲であってもよい。左右のサイドローラ5または姿勢検出センサ6までの距離の基準は、左右のサイドローラ5からマスク済み基板100までの距離が等しいことであってもよい。あるいは、基準は左右のサイドローラ5からマスク済み基板100までの距離の差が1mm以下であることであってもよい。
【0037】
S401の処理は、例えばプロセッサ91がI/F94を介して姿勢検出センサ6の出力値を取得することによって行われる。例えば、制御装置90はまず姿勢検出センサ6a、6b(以下、区別せず姿勢検出センサ6と称することがある)の出力を取得する。続いて、取得した姿勢検出センサ6の出力に基づいて、姿勢検出センサ6a、6bからマスク済み基板100までの距離の差を計算し、距離の差に基づいてマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれを検出することができる。
【0038】
図5を参照して、姿勢検出センサ6とマスク済み基板100との位置に基づいてマスク8の進行方向を計算する方法を示す。図5は、マスク済み基板100が蛇行している状態における搬送方向に向かって左側の搬送ローラ4、姿勢検出センサ6、マスク済み基板100の拡大図を示す。図5では、姿勢検出センサ6a、6bからマスク8までの距離をla、lb、姿勢検出センサ6a-6bまでの距離をdとする。この場合、tanθ=(la-lb)/dとして、搬送方向に対する基板の傾きθを検出することができる。このθが例えば0度の場合には、制御装置9はマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれはないと判定することができる。一方、θが-1度より小さい、または1度より大きい場合には、制御装置9は基板の姿勢が基準からずれていると判定して、ずれを補正するよう搬送ローラ4を制御してもよい。
【0039】
また、S401の処理は、例えば制御装置9がサーボモータ1の消費電力をモニタすることによって行われてもよい。
【0040】
ここで図6(A)、6(B)を参照して制御装置90がサーボモータ1の消費電力に基づいてマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれを推定する方法について説明する。サーボモータ1は、マスク済み基板100を搬送している際に、基板の重みによって負荷がかかることによって消費電力が変化し得る。この場合、消費電力をモニタすることによって、そのサーボモータ1に対応する搬送ローラ4が現在マスク済み基板100を搬送しているか否かを判定することができる。
【0041】
図6(A)の実線601は搬送方向に向かって左側の搬送ローラ4のサーボモータ1の消費電力の変化を示し、点線602は右側の搬送ローラ4のサーボモータ1の消費電力を示している。この場合、左右のサーボモータ1の消費電力が増加した時点における消費電力の差、図6(A)ではPRよりPLの方が大きいことに基づいて、左側に基板が寄っていると判定することができる。すなわち、左右や前後の搬送ローラ4を駆動するサーボモータ1の消費電力を比較することで、どちらにより重みがかかっているのか、すなわちマスク済み基板100の傾きや基板の重心のずれを判定することができる。
【0042】
また、図6(B)の実線611は搬送方向に向かって左側の搬送ローラ4のサーボモータ1の消費電力の変化を示し、点線612は右側の搬送ローラ4のサーボモータ1の消費電力の変化を示している。このような場合、制御装置90は、サーボモータ1の消費電力が閾値Pthを超えた時刻を特定することで、マスク済み基板100が搬送ローラ4に乗ったタイミングを特定することができる。そして、マスク済み基板100が左右の搬送ローラ4に乗ったタイミングの差に基づいてマスク済み基板100の傾きを判定することができる。図6(B)の例では、右側のサーボモータ1の消費電力が増加したタイミングが左側のサーボモータ1の消費電力が増加したタイミングより早い。このため、制御装置9は、マスク済み基板100の搬送方向に向かって右側が先行していると判定することができる。
【0043】
続いて、S402で制御装置90は、マスク済み基板100の姿勢の制御が必要か否かを判定する。例えば、マスク済み基板の姿勢の基準に対するずれが許容範囲内にあるか否かを判定する。S402では、制御装置90は姿勢検出センサ6の出力値から、マスク済み基板100までの距離が基準から1mm以上ずれているか否かを判定し、ずれている場合にマスク済み基板100の姿勢を補正する必要があると判定してもよい。言い換えると、サイドローラ4とマスク済み基板100とのクリアランスの基準が5mmである場合、制御装置90はクリアランスが4mm以下、または6mm以上であると判定した場合にマスク済み基板100の姿勢を補正する必要があると判定してもよい。姿勢の制御が必要ないと判断した場合は図4の処理を終了する。
【0044】
S403では、S401で特定したマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれに基づいて、左右のサーボモータ1を独立して制御する。例えば、S401で特定したマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれに基づいて、左右の搬送ローラ4の回転速度の目標値をそれぞれ計算し、目標値に対応する制御値を左右のサーボモータ1に設定する。すなわち、制御装置90は左右の搬送ローラを独立して制御する。
【0045】
例えば、図7に示すように、搬送方向に向かって左方向にマスク済み基板100が傾いている場合には、右側の搬送ローラ4より左側の搬送ローラ4の回転速度が上昇するように制御することで、右側より左側のマスク済み基板100の移動の方が大きくなる。このため、マスク済み基板100の傾きを補正することができる。例えば、左右の搬送ローラ4のいずれを制御してもよく、右側の搬送ローラ4の回転速度を減少させ、左側の搬送ローラ4の回転速度を上昇させてもよい。
【0046】
また、S403では、S401で特定した姿勢検出センサ6からマスク済み基板100までの距離に基づいて左右のサーボモータ1の制御値を設定してもよい。例えば、搬送方向に向かって左側の姿勢検出センサ6からマスク済み基板100までの距離が3mmである場合、基準値が5mmであるため、制御装置90はマスク済み基板100が搬送方向に向かって左側に寄っている、または向かっていると判断することができる。このため、搬送方向に向かって左側の搬送ローラ4の搬送速度を、右側の搬送ローラ4の搬送速度より高くなるよう制御することで、マスク済み基板100が左側のサイドローラ5から離れる方向に姿勢を制御することができる。
【0047】
一例として、サーボモータ1の定格回転速度は2000rpm、サーボモータに取り付けた不図示の減速機は減速比率1/16、搬送ローラ4の直径は50mmである。サーボモータ1の定格回転速度で回転させた場合のマスク8の搬送速度は327mmとなる。今回、サーボモータ1の定格回転速度の約1/3となるようなマスク済み基板100の搬送速度を100mm/secとした。この時のサーボモータ1の回転速度は611rpmである。サーボモータ1の回転速度611rpmを100%とした時に最大で200%までサーボモータ1の回転数を速くする制御を行う。今回の場合、1秒毎に姿勢検出センサ6にて姿勢を検出しサーボモータ1の回転速度の目標値を1%刻みで増やす制御を行った。その結果、約20秒でマスク済み基板100の姿勢を姿勢の基準である、左右のサイドローラからの距離の差を1mm以内に戻すことができた。マスク済み基板100が正常な姿勢に戻ると、制御装置9はサーボモータ1の回転数は定常状態の611rpmに戻す。本実施形態においてはマスク済み基板100の姿勢の基準に対するずれが一番大きい個所に基づいてずれを補正するように制御を行うようにしているが、例えば、左前と右後ろ等など、複数のずれの補正を同時に行ってもよい。
【0048】
また、制御装置90は、マスク済み基板100の傾きからのサーボモータ1の制御値の決定を、例えば円運動モデル、直線運動モデル、キネマティック(力学的)モデルなどのステアリング向けの制御モデルに基づいて行ってもよい。
【0049】
または、制御装置90は、搬送ローラ4の回転速度を所定量、例えば現在の回転速度の1%など、変化させた後、マスク済み基板100の傾きを再度取得し、回転速度の変化とそれに対する傾きの変化とに基づいて、サーボモータ1の制御量を特定してもよい。言い換えると、制御装置90は、フィードバック型の制御モデルを使用して逐次制御を行ってもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、右側の複数のサーボモータ1は同じ制御値が設定され、左側の複数のサーボモータ1は同じ制御値が設定されるものとして説明を行った。これは、搬送方向で前後の搬送ローラ4の回転速度が異なる場合に、マスク済み基板100の滑りや歪みが生じないためである。しかしながら、搬送方向で前後の搬送ローラ4の直径が異なる場合などには、それぞれのサーボモータ1に異なる制御値が入力されてもよい。すなわち、搬送方向で前後の搬送ローラ4の搬送速度を合わせるために、搬送ローラ4の種類に応じて異なる制御値が入力されてもよい。
【0051】
以上説明したように、図4の処理によって、図7の矢印701に示すように搬送方向に向かって左側の搬送用ローラ4によるマスク済み基板100の搬送速度が速くなり、左側のサイドローラ5への接触を防ぐことができる。姿勢検出センサ6はマスク済み基板100の少なくとも3ヵ所の側方までの距離が検出できる位置に配置することにより連続的にマスク済み基板100の姿勢を検出することができる。なお、図2図3図7の例では、姿勢検出センサ6が等間隔に配置されるものとして図示されているが、各姿勢検出センサ6の間隔に関する情報を制御装置90が有していれば、姿勢検出センサ6は異なる間隔で配置されてもよい。
【0052】
本実施形態では、成膜部15においてマスク済み基板100の搬送中の姿勢制御を行うものとして説明を行った。一例では、マスク合体部13からマスク分離部17までの搬送区間において姿勢制御を行ってもよい。
【0053】
また、マスクリターン部21で、マスク8の搬送に姿勢制御を行ってもよい。これによって、マスク8の破損を防ぐことができる。
【0054】
以上説明したように、マスク済み基板100がサイドローラ5に接触する前に制御装置90がマスク済み基板100の姿勢の基準からのずれを補正するため、サイドローラ5にマスク済み基板100が接触することを防ぐことができる。これによって、パーティクルの発生や基板とトレイのズレを減少させることができ、不良品の低下につながり歩留まりを向上することができる。
【0055】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:サーボモータ、 2:カップリング、 3:磁気シール、 4:搬送ローラ、 5:サイドローラ、 6:姿勢検出センサ、 7:ガラス基板、 8:マスク、 11:基板投入部、 12:基板搬送部、 13:基板マスク合体部、 14:追付き部、 15:成膜部、 16:引離し部、 17:基板マスク分離部、 18:基板搬送部、 19:基板排出部、 20:マスク投入部、 21:マスクリターン部、 23:マスク排出部、 24:真空搬送ロボット、 25:真空搬送ロボット、100:マスク済み基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7