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特許7665016シート、ハンドリング用シート、ハンドリング方法、薄型デバイスのハンドリング方法、薄化ウエハの取り出し方法、モールド封止再配置素子の取り出し方法、薄化ウエハの製造方法、モールド封止再配置素子、及びパッケージの製造方法
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  • 特許-シート、ハンドリング用シート、ハンドリング方法、薄型デバイスのハンドリング方法、薄化ウエハの取り出し方法、モールド封止再配置素子の取り出し方法、薄化ウエハの製造方法、モールド封止再配置素子、及びパッケージの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】シート、ハンドリング用シート、ハンドリング方法、薄型デバイスのハンドリング方法、薄化ウエハの取り出し方法、モールド封止再配置素子の取り出し方法、薄化ウエハの製造方法、モールド封止再配置素子、及びパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20250411BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250411BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/68 N
H01L21/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023516425
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2022017084
(87)【国際公開番号】W WO2022224814
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021072011
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英人
(72)【発明者】
【氏名】大和田 保
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026433(JP,A)
【文献】特開昭61-086248(JP,A)
【文献】特開昭60-251642(JP,A)
【文献】特開2011-216671(JP,A)
【文献】特開2014-185285(JP,A)
【文献】特開2010-258136(JP,A)
【文献】特開平03-062548(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006604(WO,A1)
【文献】特開2012-140590(JP,A)
【文献】特開2007-216493(JP,A)
【文献】特開2002-329461(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097266(WO,A1)
【文献】特開平8-143094(JP,A)
【文献】特開2018-93120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さが50ミクロンから500ミクロンであり、直径が10ミクロンから1mmの円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmであり、太さが10ミクロンから1mmの角柱状の複数の構造体を表面上に有し、前記複数の構造体が等間隔で配置した構造、あるいは、前記複数の構造体が、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍未満となるように配列した構造を表面上に有し、熱硬化性樹脂により成型されたものであり、
薄化ウエハ又はモールド封止再配置素子のハンドリングに使用されることを特徴とするシート。
【請求項2】
高さが50ミクロンから500ミクロンであり、直径が10ミクロンから1mmの円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmであり、太さが10ミクロンから1mmの角柱状の複数の構造体を表面上に有し、前記複数の構造体が等間隔で配置した構造、あるいは、前記複数の構造体が、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍未満となるように配列した構造を表面上に有し、熱硬化性エラストマーを含み、
薄化ウエハ又はモールド封止再配置素子のハンドリングに使用されることを特徴とするシート。
【請求項3】
前記熱硬化性エラストマーが、アクリル系熱硬化性エラストマー、シリコーン系熱硬化性エラストマー、ウレタン系熱硬化性エラストマー及びフッ素系熱硬化性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載のシート。
【請求項4】
基材と、
前記基材上に積層された請求項1~3いずれか一項に記載のシートと
を含むものであることを特徴とするハンドリング用シート。
【請求項5】
厚さ300ミクロン以下の薄化ウエハ又はモールド封止再配置素子請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とするハンドリング方法。
【請求項6】
厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルを、請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とする薄型デバイスのハンドリング方法。
【請求項7】
キャリアに支持された薄化ウエハを請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着した状態で前記キャリアを前記薄化ウエハから剥離することを特徴とする薄化ウエハの取り出し方法。
【請求項8】
キャリアに支持されたモールド封止再配置素子を請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着した状態で前記キャリアを前記モールド封止再配置素子から剥離することを特徴とするモールド封止再配置素子の取り出し方法。
【請求項9】
キャリアに支持された薄化ウエハを請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着した状態で前記キャリアを前記薄化ウエハから剥離することを含むことを特徴とする取り出された薄化ウエハの製造方法。
【請求項10】
キャリアに支持されたモールド封止再配置素子を請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着した状態で前記キャリアを前記モールド封止再配置素子から剥離することを含むことを特徴とする取り出されたモールド封止再配置素子の製造方法。
【請求項11】
キャリアに支持された薄化ウエハ又はモールド封止再配置素子を請求項1~3いずれか一項に記載のシートに接着した状態で前記キャリア又は前記モールド封止再配置素子を前記薄化ウエハから剥離する工程を有するパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート、薄化ウエハハンドリング用シート、薄型ウエハのハンドリング方法及び薄型デバイスのハンドリング方法に関する。特に、本発明は、300ミクロン以下に薄化された薄型シリコンウエハ、あるいは化合物半導体ウエハ、あるいは1ミリメートル以下の角型ガラスパネル、ガラスウェハを破損することなく扱うための接着用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高密度化のために、従来の500ミクロンを超える厚みから、300ミクロン以下、特に100ミクロン以下のウエハ厚を使用した半導体素子製造が盛んに実施されている。
【0003】
また、半導体デバイスの3次元化のために、1ミリメートル以下、特に500ミクロン以下に薄化したガラスパネルの上に、300ミクロン以下、特に100ミクロン以下のウエハ厚を使用した半導体素子を機能上必要な構成に再配置してパッケージとする製造方法も多く開発されている。
【0004】
このような薄型ウエハの製造や薄型パネルを使ったパッケージ製造に関して、例えば、三次元半導体素子実装の重要なプロセスであるTSV(Through Silicon Via)プロセスでは、シリコンウエハの表裏両面に回路形成を施し、それを導通させるため、TSV(Through Silicon Via)、いわゆる貫通電極形成が実施されるが、この電極形成のためには、半導体素子となるシリコンウエハをキャリアと呼ばれる支持のためのガラスウエハと、仮接着剤(Temporary Glue 剤)を介して接着させ、そのうえで、シリコンウエハの薄化、さらには回路形成等が実施される。
【0005】
また、薄型パネルを使ったパッケージ製造に関して、例えば、薄型ガラスパネルの上にAI用のFPGA素子や多段積層DRAMであるHBM素子を再配置して構成され、一つの機能をなす。ガラスパネル上への素子の再配置後、パネルはモールド樹脂などで封止され、その後薄型化、平坦化を行い、電極を露出させ回路形成等が実施される。
【0006】
上記に示した二つの薄型基板を取り扱う方法では、回路形成時には、キャリアであるシリコンウエハやガラスウエハが支持基材となり、当該プロセスの実施が進行するが、プロセス終了後、300ミクロン、場合によっては、100ミクロン以下に薄化された回路形成されたシリコンウエハやモールドで封止した再配置素子を取り出す必要がある。
【0007】
従来、この薄化シリコンウエハやモールド封止再配置素子の取り出し時には、一般的にUV剥離方式を利用したダイシングテープを利用して、ガラスキャリアが接続された状態で、取り出すべきシリコンウエハにこのダイシングテープを張り、その状態で、キャリアをレーザー剥離方式等により除去することが一般的である。
【0008】
ただし、このようにして取り出された、ダイシングテープ上に張られた回路形成された薄化シリコンウエハの表面には、通常、薄化プロセス中に使用された仮接着剤樹脂が残存している。
この残存樹脂は、溶剤洗浄法等で、溶解除去する必要がある。
【0009】
一方、ダイシングテープの接着用の糊は、未硬化のアクリル樹脂等を利用している場合が多く、この仮接着剤の残渣樹脂の溶剤洗浄工程で、使用する溶剤に溶解してしまい、剥離、膨潤等の問題を引き起こすことが知られており、使用可能な洗浄溶剤が非常に限られるという問題を有している。
【0010】
特許文献1には、先端がマッシュルーム形状であるマイクロファイバを含む乾式接着性繊維構造体(dry adhesive fiber structure)に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2015/0368519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先に説明した状況にあって、従来、上記記載の3次元実装などの目的に多用されるシリコンウエハや化合物半導体の薄化工程のための、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を容易に扱うことができるツールであって、耐薬品性に優れたツールの開発が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を容易に扱うことができる、耐薬品性に優れたシート、該シートを含む薄化ウエハハンドリング用シート、並びに該薄化ウエハハンドリング用シートを用いた薄型ウエハのハンドリング方法及び薄型デバイスのハンドリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、高さが50ミクロンから500ミクロンであり、直径が10ミクロンから1mmの円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmであり、太さが10ミクロンから1mmの角柱状の複数の構造体を表面上に有し、前記複数の構造体が等間隔で配置した構造、あるいは、前記複数の構造体が、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍未満となるように配列した構造を表面上に有し、熱硬化性樹脂により成型されたものであることを特徴とするシートを提供する。
【0015】
このようなシートであれば、ウエハを容易に且つ十分な接着力で接着できる一方、剥離にほとんど力を必要としないため、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を、破損することなく、容易に扱うことができる。
【0016】
また、本発明のシートは、熱硬化性樹脂により成形されたものであり、耐薬品性に優れているため、種々の仮接着剤洗浄用樹脂を使用することが可能となる。
【0017】
前記熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル系熱硬化性エラストマー、シリコーン系熱硬化性エラストマー、ウレタン系熱硬化性エラストマー及びフッ素系熱硬化性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0018】
熱硬化性樹脂としてこのような熱硬化性エラストマーを用いることにより、耐薬品性により優れたシートとなる。
【0019】
また、本発明では、基材と、
前記基材上に積層された本発明のシートと
を含むものであることを特徴とする薄化ウエハハンドリング用シートを提供する。
【0020】
このような薄化ウエハハンドリング用シートであれば、本発明のシートを含むので、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を、破損することなく、容易に扱うことができる。
【0021】
更に、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートを使用することで、その接着部は、熱硬化性エラストマーの使用により、耐薬品性に優れるため、種々の仮接着剤洗浄用樹脂を使用することが可能となる。
【0022】
また、本発明では、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを本発明の薄化ウエハハンドリング用シートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とする薄型ウエハのハンドリング方法を提供する。
【0023】
本発明の薄型ウエハのハンドリング方法では、剥離にほとんど力を必要としないため、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハでさえ、容易に、破損することなく取り出すことができる。
【0024】
また、本発明では、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルを、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とする薄型デバイスのハンドリング方法を提供する。
【0025】
本発明の薄型デバイスのハンドリング方法では、剥離にほとんど力を必要としないため、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルでさえ、容易に、破損することなく取り出すことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のシートであれば、ウエハを容易に且つ十分な接着力で接着できる一方、剥離にほとんど力を必要としないため、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を、破損することなく、容易に扱うことができる。また、本発明のシートは、熱硬化性樹脂により成形されたものであり、耐薬品性に優れているため、種々の仮接着剤洗浄用樹脂を使用することが可能となる。
【0027】
また、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートであれば、本発明のシートを含むので、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を、破損することなく、容易に扱うことができる。更に、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートを使用することで、その接着部は、熱硬化エラストマーの使用により、耐薬品性に優れるため、種々の仮接着剤洗浄用樹脂を使用することが可能となる。そのため、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートは、例えば、薄型ウエハのハンドリング方法及び薄型デバイスのハンドリング方法において用いるのに特に有用である。
【0028】
また、本発明の薄型ウエハのハンドリング方法では、剥離にほとんど力を必要としないため、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハでさえ、容易に、破損することなく取り出すことができる。
【0029】
そして、本発明の薄型デバイスのハンドリング方法では、剥離にほとんど力を必要としないため、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルでさえ、容易に、破損することなく取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のシートの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の薄化ウエハハンドリング用シートの一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の薄化ウエハハンドリング用シートの使用部位の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上述のように、上記記載の3次元実装などの目的に多用されるシリコンウエハや化合物半導体の薄化工程のための、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を容易に扱うことができるツールであって、耐薬品性に優れたツールの開発が求められていた。
【0032】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、高さが50ミクロンから500ミクロンである円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmである角柱状の複数の構造体であって、直径又は太さが10ミクロンから1mmである複数の構造体を表面上に有し、これらが等間隔で配置しているか、あるいは、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍未満となるように配列した構造を表面上に有し、熱硬化性樹脂により成型されたものであるシートであれば、ウエハを容易に且つ十分な接着力で接着できる一方、剥離にほとんど力を必要としないため、すでに薄化されたウエハやモールドで封止した再配置素子を、破損することなく、容易に扱うことができ、更には優れた耐薬品性を示すことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0033】
即ち、本発明は、高さが50ミクロンから500ミクロンであり、直径が10ミクロンから1mmの円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmであり、太さが10ミクロンから1mmの角柱状の複数の構造体を表面上に有し、前記複数の構造体が等間隔で配置した構造、あるいは、前記複数の構造体が、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍未満となるように配列した構造を表面上に有し、熱硬化性樹脂により成型されたものであることを特徴とするシートである。
【0034】
また、本発明は、基材と、
前記基材上に積層された本発明のシートと
を含むものであることを特徴とする薄化ウエハハンドリング用シートである。
【0035】
また、本発明は、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを本発明の薄化ウエハハンドリング用シートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とする薄型ウエハのハンドリング方法である。
【0036】
また、本発明は、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルを、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートに接着したうえでハンドリングすることを特徴とする薄型デバイスのハンドリング方法である。
【0037】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
図1は、本発明のシートの一例を示す概略断面図である。図1に示すシート1は、樹脂製の基部1bの一方の表面上に複数の構造体1aを有している。シート1、すなわち複数の構造体1a及び基部1bは、熱硬化性樹脂により成型されたものである。
【0039】
本発明に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂からなり、具体的には熱硬化性エラストマー、より具体的には、例えば、アクリル系熱硬化性エラストマー、シリコーン系熱硬化性エラストマー、ウレタン系熱硬化性エラストマー及びフッ素系熱硬化性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種が使用される。
【0040】
これらの樹脂は、下記に記載される形状に成型可能であり、かつ、接着対象から剥離した際に樹脂成分の移行がないものであることが好ましいが、その範囲や使用に制約はない。
【0041】
本発明のシート1は、樹脂(基部1b)の表に微小な構造体1a、具体的には、高さが50ミクロンから500ミクロンであり、直径が10ミクロンから1mmの円柱状若しくは半円柱状、又は長さが100ミクロンから1mmであり、太さが10ミクロンから1mmの角柱状の複数の構造体1aを有する。なお、本発明において、構造体1aが角柱状である場合、その太さは、構造体1aの断面の外接円の直径を指す。シート1は、複数の構造体1aが等間隔で配置した構造、あるいは、複数の構造体1aが、間隔の最大値1cが間隔の最小値1dの3倍未満となるように配列した構造を表面に有している。間隔の最大値1cは、間隔の最小値1dよりも大きいものである。
【0042】
また、図2に示すように、このシート1をPETやポリオレフィン樹脂シートのようなフィルム(基材2)に張り合わせた形状で使用に供されることが一般的である。
【0043】
張り合わせ後のシート10は、例えば薄化ウエハハンドリング用シートとして使用することができる。図2に示す薄化ウエハハンドリング用シート10は、基材2と、基材2上に積層された本発明のシート1とを含む。図2に示すシート1は、図1に示したシート1と同じ構造を有する。
【0044】
樹脂シートなどの基材2上に生成されるシート1の構造体1aは、その高さが均一で、かつ、その構造体表面が平坦であることが好ましい。また、そのサイズやピッチ(その構造体1aの大きさ及び構造体1a間の間隔)は、任意に選定することが可能であるが、接着対象となる例えば回路形成されたシリコンウエハや化合物半導体ウエハを保持できることが望ましい。
【0045】
次に、本発明の薄化ウエハハンドリングシート10の使用例を説明する。
図3に、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートの使用部位の一例を示す概略断面図を示す。
【0046】
上記薄化ウエハハンドリング用シート10のシート1の複数の構造体1aの表面の一部が例えばダイシングフレーム等のフレーム(例えば金属フレーム)4に接着形成されたのち、複数の構造体1aの表面の他の一部により、キャリア5付きの加工済み薄化ウエハ(例えばシリコンウエハ、化合物半導体ウェハ)3を接着する。接着対象である薄化ウエハ3は、仮接着剤を含む仮接着剤層6を介してキャリア5に仮接着されている。その後、キャリア5である例えばガラスウエハを、仮接着剤層6の仮接着剤の素性に応じ、レーザー剥離方式等で剥離する。キャリア5剥離後は、薄化されたウエハ3上に残存する仮接着剤残渣を適切な有機溶剤系洗浄剤にて洗浄することで、本発明による薄化ウエハハンドリング用シート10上に接着された薄化ウエハ3を取り出すことが可能となる。ここで、本発明のシート1は、熱可塑性樹脂により成型されたものであるため、耐薬品性が高い。したがって、本発明のシート1を用いたハンドリング方法では、仮接着剤残渣を除去するのに、種々の仮接着材洗浄用溶剤や樹脂を用いることができる。
【0047】
以上の工程を経て、当該薄化ウエハハンドリング用シート10に張られた薄化ウエハ3が得られる。薄化ウエハハンドリング用シート10と薄化ウエハ3との接着は、シート1の表面の複数の構造体1aの存在により、ハンドリングに耐えられる必要十分な強さを示すことができる。一方で、ハンドリング後に、例えばウエハエッジの部分に軽い力をかけることで、容易に薄化ウエハ3を薄化ウエハハンドリング用シート10から取り出すことが可能である。薄化ウエハハンドリング用シート10の表面上に形成された複数の構造体1aのために、この剥離にはほとんど力を必要とせず、厚さ300ミクロン以下、更には厚さ30ミクロン以下の300mmシリコンウエハ3でさえ、容易に、破損することなく取り出すことができる。
【0048】
また、薄化ウエハ3取り出し後は、その表面に樹脂の移行を生じることがないため、追加の洗浄工程なども不要である。
【0049】
このように、本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10は、例えば、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハ3をハンドリングする薄型ウエハのハンドリング方法において使用することができる。本発明の薄型ウエハのハンドリング方法では、シリコンウエハ又は化合物半導体ウエハ3を本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10に接着したうえでハンドリングすることができる。それにより、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハ3であっても、破損なく、容易に取り出すことができる。
【0050】
一方、複数の構造体1aが円柱状又は半円柱状の構造体であり、高さが50ミクロン未満であるか、高さが500ミクロンを超えるか、直径が10ミクロン未満であるか、又は直径が1mmを超えると、ハンドリングに必要な接着力と優れた剥離容易性とを両立できない。同様に、複数の構造体1aが角柱状の構造体であり、長さが100ミクロン未満であるか、長さが1mmを超えるか、太さが10ミクロン未満であるか、又は直径が1mmを超えると、ハンドリングに必要な接着力と優れた剥離容易性とを両立できない。
【0051】
また、複数の構造体1aが、間隔の最大値が間隔の最小値の3倍を超えるように配列していると、ハンドリングに必要な接着力を示すことができない。
【0052】
そして、本発明は、熱可塑性樹脂、好ましくは熱硬化性エラストマー、より好ましくは、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、フッ素系の熱硬化性エラストマーを目的とする形状に加工したシート1を薄化されたウエハに接着することで、耐薬品性やその他のプロセス適合性に優れた薄化ウエハハンドリング用シート10にすることができる。
【0053】
本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10の用途は、薄型ウエハのハンドリング方法に限られない。例えば、本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10は、薄型デバイスのハンドリング方法においても用いることができる。本発明の薄型デバイスのハンドリング方法では、例えば、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルを、本発明の薄化ウエハハンドリング用シートに接着したうえでハンドリングすることができる。それにより、厚さ300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルであっても、破損なく、容易にハンドリングすることができる。
【0054】
本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10に接着してハンドリングするシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハの厚さの下限は特に限定されないが、例えば、厚さ10ミクロン以上300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハをハンドリングすることができる。また、本発明の薄化ウエハハンドリング用シート10に接着してハンドリングする角型ガラスパネル又は金属パネルの厚さの下限は特に限定されないが、例えば、厚さ10ミクロン以上300ミクロン以下のシリコンウエハ又は化合物半導体ウエハを搭載する厚さ0.1ミリメートル以上1.5ミリメートル以下の角型ガラスパネル又は金属パネルをハンドリングすることができる。
【実施例
【0055】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
厚さ100ミクロンのペットシート上に熱硬化性エラストマーであるウレタン樹脂を高さ200ミクロン、直径500ミクロンの円柱構造を、その間隔が500ミクロン間隔(等間隔)、総厚み500ミクロンとなるよう成型した。これにより、薄化ウエハハンドリング用シートを得た。
【0057】
一方、300mmのガラスウエハ(厚み700ミクロン)をキャリアとして使用し、このガラスキャリアに信越化学工業株式会社製のUVレーザー剥離式テンポラリ材(SPIS-TA401+SPIS-TA501)を仮接着剤層として用いて、TSV形成済みの厚さ775ミクロンのウエハを接着した。次いで、TSV形成済みのウエハを50ミクロン厚まで薄化して、TSVの端子を形成、さらに、TEOSを用いてプラズマCVDにてSiO膜を形成して、薄化シリコンウエハを得た。この薄化シリコンウエハに、上記で得られた薄化ウエハハンドリング用シートをダシングフレームに形成後、張り合わせた。

【0058】
このガラスキャリア、仮接着剤層、薄化シリコンウエハ、及び当該薄化ウエハハンドリング用シートからなる積層体に対して、まず、ガラスキャリア面から、UVレーザーを前面に照射し、カラスキャリアを剥離した。その後、シリコンウエハ上に残存した仮接着剤樹脂残渣を、信越化学株式会社製クリーナーSPIS-TA-Cleaner-25にて、溶解洗浄した。
【0059】
この時、薄化シリコンウエハを支持している薄化ウエハハンドリング用シートに、はがれ、浮き、等の異常は認められなかった。すなわち、薄化ウエハハンドリング用シートと薄化シリコンウエハとの接着は、薄型ウエハのハンドリングに耐えるのに十分な強度であった。
【0060】
最後に、薄化ウエハハンドリング用シートの裏面より薄化シリコンウエハのエッジ部分からシートの引きはがしを行うと、シートは容易に剥離し、50ミクロン厚のウエハにクラック等のダメージは生じず、また、樹脂の糊残り等も生じなかった。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3