(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】高抵抗率試験試料を測定する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20250411BHJP
【FI】
H01L21/66 B
(21)【出願番号】P 2023553334
(86)(22)【出願日】2022-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022030447
(87)【国際公開番号】W WO2022251086
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-11-12
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オスターベウ フレデリク ヴェスタゴー
(72)【発明者】
【氏名】カールハウゲ クリストファー グラム
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ミッケル フォート
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0100289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0072993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0310295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0164872(US,A1)
【文献】国際公開第2020/205236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
G01R 27/00
G01R 31/26
G01B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層試験試料の電気特性を決定するための方法であって、
前記多層試験試料を提供するステップであって、前記多層試験試料は、
第1導電性又は半導電性層を構成する底層、
界面層、並びに
第2導電性又は半導電性層を構成する最上層であって、前記界面層が、前記底層と前記最上層との間に配列されており、前記界面層は、前記底層及び前記最上層よりも小さい導電率を有し、前記界面層は、前記界面層が実質的にオーム導体を構成するような、及び量子トンネルによる前記界面層を通る電子伝達が、前記界面層を通る総電子伝達と比較して無視可能であるような厚さを有する、最上層
を含む、ステップと、
微視的多端子プローブを提供するステップであって、前記微視的多端子プローブは、前記最上層に接触するための接触プローブのセットを有する、ステップと、
前記最上層を前記接触プローブのセットと接触させるステップと、
接触プローブの複数の間隔のそれぞれについて複数の電圧又は抵抗を測定するステップであって、1対の接触プローブが、それぞれの抵抗又は電圧測定について使用される、ステップと、
前記界面層の抵抗面積積を決定するためのモデルを提供するステップであって、前記モデルは、前記複数の電圧又は抵抗を入力として受け取り、前記抵抗面積積を出力として返す、ステップと、
前記抵抗面積積を前記モデルによって決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
量子トンネルによる前記界面層を通る前記電子伝達は、測定ノイズによって覆い隠されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
量子トンネルによる前記界面層を通る前記電子伝達は、前記界面層を通る前記総電子伝達の1%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触プローブのセットの第1対の接触プローブを用いて前記試験試料に第1電流を注入するステップであって、前記第1対の接触プローブは、それらの間に第1距離を有する、ステップと、
前記接触プローブのセットの第2対の接触プローブを用いて前記試験試料に第2電流を注入するステップであって、前記第2対の接触プローブは、それらの間に第2距離を有する、ステップと、
前記接触プローブのセットの第3対の接触プローブを用いて前記試験試料に第3電流を注入するステップであって、前記第3対の接触プローブは、それらの間に第3距離を有する、ステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2導電性又は半導電性層上に、或いは前記第2導電性又は半導電性層に接続された接触パッド上に、前記接触プローブのセットを載置するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触プローブのセットは、4つよりも多い接触プローブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1導電性又は半導電性層は、ウェーハ基板を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記底層内の前記半
導電性層は、ウェーハ基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記界面層は、1000オームμm
2よりも大きい抵抗面積積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抵抗面積積は、10メガオームμm
2よりも大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記微視的多端子プローブは、少なくとも4μmの隣接する接触プローブの間の距離を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微視的多端子プローブは、3mm未満の前記接触プローブの2つの最外のものの間の距離を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面層は、2nmよりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記界面層は、前記底層又は前記最上層の導電率の10倍未満の導電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記モデルは、前記第1導電性又は半導電性層、前記界面層、及び前記第2導電性又は半導電性層の電気等価回路を構成する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ウェーハのような多層試験試料の、抵抗面積積等の電気特性を測定/決定することに関する。具体的には、本開示は、高抵抗率を有する(すなわち、不良導体である)層の抵抗面積積を測定/決定することを含む。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月10日に出願された欧州特許出願第21207514号、及び2021年5月24日に出願された米国特許出願第63/192102号の優先権を主張し、これらの出願の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
微視的多端子プローブを使用して電気特性測定を行うことが望ましい。これは、電流が試験試料に注入されるように試験試料に接触するための複数の接触プローブを有するプローブであって、マイクロメートル範囲内の接触プローブの間のピッチを有する。しかしながら、接触プローブと高抵抗率層との間に電気接続を確立することは困難である場合がある。微視的プローブを使用することはまた、プローブ接触端子が大きすぎるか、又は試料に損傷を与えることがあるので、可能ではない。
【0004】
特許文献1等において、微視的多端子プローブを使用してトンネル接合を測定して、等価回路モデルによってトンネル接合の電気特性を決定することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような試験試料は、3層の試験試料である。したがって、底導電層及び最上絶縁/高抵抗率層が付随する試験試料ではない。更に、トンネル接合試験試料は、トンネル障壁内にオーム電子伝達が存在しないので、高抵抗率層を有する試験試料ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
微視的多端子プローブを使用して、試験試料の高抵抗率層の抵抗面積積を測定するという目的を達成するために、導電性最上層が、高抵抗率層の最上部上の試験試料に付加されることにより、試験試料は、最上導電層と底導電層との間に挟まれた高抵抗率層を含む3層構造を有する。抵抗面積積は、注入された電流の値及び測定された電圧又は抵抗を入力として有する等価回路モデルを使用して決定される。
【0008】
本開示の第1態様は、多層試験試料の、抵抗面積積等の電気特性を決定するための方法である。多層試験試料は、導電性又は半導電性層を構成する底層(例えば、ウェーハ基板)と、界面層と、導電性又は半導電性層を構成する最上層と、を有する。界面層は、底層と最上層との間に配列され、底層及び最上層よりも小さい導電率を有し、界面層が実質的にオーム導体を構成し、量子トンネルによる界面層を通る電子伝達が無視可能である(例えば、界面層を通る総電子伝達の1%未満である)ような厚さを有する。界面層を通るこの電子伝達は、測定ノイズによって覆い隠されていることがある。この方法は、試験試料を提供することと、最上層に接触するための接触プローブのセットを有する微視的多端子プローブを提供することと、最上層を接触プローブのセットと接触させることと、複数の接触プローブの間隔のそれぞれについて複数の電圧又は抵抗を測定することと、を含む。1対の接触プローブが、それぞれの抵抗又は電圧測定について使用される。界面層の抵抗面積積を決定するためのモデルが提供される。モデルは、複数の電圧又は抵抗を入力として受け取り、抵抗面積積を出力として返す。抵抗面積積は、モデルによって決定される。
【0009】
最上層は、微視的多端子プローブが最上導電層上に載置し得るように、及び電気的接触が確立され得るようにそれが既に提供されていないならば、界面層/高抵抗率層の最上部上にそれを堆積させることによって提供されてもよい。最上層は、金属又は半導体層であってもよい。最上層は、最上電極とも呼ばれることがある。
【0010】
界面層/高抵抗率層は、例えば、ウェーハの最上部上の酸化物層、又はHigh-k、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)又は相変化材料(PCM)等の材料であってもよい。別の材料も可能である。
【0011】
オーム導体について、それを通る電流は、それを横切る電圧に正比例する(すなわち、オームの法則に従う)。トンネル障壁は、オーム導体ではない。しかしながら、量子力学的トンネルによる電子伝達は、除外され得ないが、量子力学的トンネルによる電子伝達は、測定されるべき材料については無視可能であり、測定ノイズが増加するほど小さくなることを意味する。したがって、測定における信号対雑音比が低すぎるため、測定することができない。
【0012】
接触プローブはまた、ピン/電極として公知である。接触プローブは、それぞれの先端部の間に等間隔/ピッチを有する1つの線に沿って配置されたプローブ(例えば、同一直線上の等距離プローブ)のそれぞれのプローブ先端部/端部を有してもよい。
【0013】
具体的には、3つの異なるピン/接触プローブ構成が使用されてもよい。例えば、第1電流注入/測定のために、2つの最外のピンが、電流を注入するために使用されてもよく、2つの最内のピンが、電圧測定に使用されてもよい。
【0014】
第2電流注入のために、2つの外側の左側ピンが使用されて電流を注入してもよく、2つの外側の右側ピンが使用されて電圧を測定してもよい。
【0015】
第3電流注入のために、中心のピンと一緒に最外のピンを使用して(すなわち、間にある電圧ピンを用いて)電流を注入してもよい。
【0016】
数学的に独立しているべき3つの測定のためには、少なくとも5つのピンを有するプローブが使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の本質及び目的の完全な理解のために、以下の添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照するべきである。
【
図1】3つの層を有する例示的なウェーハを示す図である。
【
図2a】プローブの電流及び電圧ピンの構成を示す図である。
【
図2b】プローブの電流及び電圧ピンの構成を示す図である。
【
図2c】プローブの電流及び電圧ピンの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示が、ここで実施例によってより詳細に以下で説明される。しかしながら、本開示は、以下に示されるものとは異なる形式で具現化されてもよく、本明細書に記載された実施例に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、任意の実施例が、本開示が詳細で完全であるように提供され、本開示の範囲を当業者に十分に伝えることになる。
【0019】
図1は、3つの層を有するウェーハ10を示す。最上層12は、タングステンであってもよく、そして測定されるべき層である界面層14上に堆積される。ウェーハ基板16は、底層を構成する。
【0020】
一般に、最上層12は、Ru、W、又はTiN等の金属材料に容易に接触するはずである。最上層12のシート抵抗は、底層又は底電極のシート抵抗の3倍大きくあり得る。このシート抵抗は、所望の測定結果を提供し得る。
【0021】
底層は、ウェーハ基板16であってもよく、又はウェーハ基板16の最上部上にある層であってもよい。底層は、Ru、W、TiN、又はドープされたSiから形成され得る。
界面層14は、1000オームμm2よりも大きい抵抗面積積を有し得る。例えば、界面層14の抵抗面積積は、10メガオームμm2、100メガオームμm2、又は1000メガオームμm2よりも大きくてもよい。
【0022】
所望の測定結果を提供するために、界面層14は、2nmよりも大きい厚さ、及び底層又は最上層12の導電率の10倍未満の導電率を有してもよい。別の抵抗面積積、厚さ、及び導電率が可能である。これらは単に実施例に過ぎない。
【0023】
このような材料スタックにおける標準微視的4端子測定は、シート抵抗を提供し、3層モデルにおけるこのシート抵抗は、最上層及び底層のシート抵抗と、界面層の抵抗面積積(RA)との組み合わせである。これらのパラメータは、転送長さ(指定されたL又はλ)を規定し、該転送長さは、試料中の電流搬送のための特徴横方向長さスケールである。
【0024】
プローブピッチのLに対する比に応じて、4端子プローブ測定の結果は、実質的に異なり得る。典型的には、小さいプローブピッチは、主に最上層を探査し、大きいプローブピッチは、主に最上層と底層との並列抵抗を探査する。
【0025】
λ近傍のプローブピッチの範囲での測定は、全3つの層の特性を正確に狙うために必要とされる。
【0026】
一実施形態では、Lの値は、100μmと300μm(マイクロメートル)との間の範囲内にある。スタックの最上層又は底層のいずれかが別のものの複数倍(例えば、>5)の抵抗を有するならば、1000μmピッチによる測定は、高抵抗層に対して低い感度を有することになる。それに加えて、このような測定はまた、高抵抗界面層に対して低い感度を有することになる。そのため、このような測定は、全ての層が同様の抵抗を有しない限り、多層スタック内のプロセス変動を監視することの信頼性が低いことがある。
【0027】
図2a~2cは、プローブの電流及び電圧ピンの3つの別個の構成を示す。ここでは、4つのピンのみが示されている。電圧計は、単一円回路記号として示され、電流源は、二重円回路記号として示されている。それぞれの接触プローブ/ピンは、矩形の矢印回路記号として示されている。4つのプローブ/ピンが示されているが、より多くの又はより少ないプローブ/ピンが可能である。一例では、4つより多いプローブ/ピンが使用される。
【0028】
プローブは、少なくとも4μmの隣接する接触プローブの間の距離を有し得るが、別の寸法が可能である。一例では、プローブは、3mm未満の2つの最外の接触プローブの間の距離を有する。
【0029】
以下において、面内電流が界面層内に流れないことが仮定されており、該界面層は、高い抵抗率を有し、最上層及び底層に比べて薄い界面層と等価である。底層は、以下で提示されるモデルを保持し、それを使用可能であるという仮定のために、界面層の100倍を超える導電性であるべきである。
【0030】
プローブが多層試料に係合されるとき、それは、底層(Rb)及び最上層(Rt)の抵抗と界面の抵抗面積積(RA=ρ*t)との組み合わせを測定することになり、ここで、ρ及びtはそれぞれ、界面層の抵抗率及び厚さである。
【0031】
一例では、接触プローブは、導電性又は半導電性の層上、或いは導電性又は半導電性の層に接続された接触パッド上に載置され得る。導電性又は半導電性の層は、最上層12の中にあり得る。
【0032】
同一直線上の等距離プローブ(すなわち、すべての電極が1つの線上にあって等間隔を有するプローブ)については、A、B及びC構成で測定された抵抗が、以下のモデルによって規定される。
【数1】
【数2】
【数3】
【0033】
R
Aは、
図2aに示す構成のプローブによって測定された抵抗である。R
Bは、
図2bに示す構成のプローブによって測定された抵抗である。R
Cは、
図2cに示す構成のプローブによって測定された抵抗である。
【0034】
K
0(x)は、次数0の第2種ベッセル関数であり、sは電極ピッチであり、λは次式で与えられる特徴長さである。
【数4】
【0035】
抵抗面積積は、以下のようなシート抵抗に関連している。
【数5】
【0036】
モデルは次いで、界面層の抵抗面積積(RA)について数値的に解かれてもよい。したがって、界面層の抵抗面積積は、抵抗測定値の関数として決定される。その代替として、測定された抵抗を入力する代わりに、抵抗が電流に対する電圧であるので、注入された電流及び測定された電圧の値が入力されてもよい。
【0037】
一実施形態では、第1電流を注入することは、接触プローブのセットの第1対の接触プローブによって、試験試料に注入される。第2電流が、接触プローブのセットの第2対の接触プローブによって、試験試料に注入される。第3電流が、接触プローブのセットの第3対の接触プローブによって、試験試料に注入される。第1対の接触プローブ、第2対の接触プローブ、及び第3対の接触プローブは、それらの間にある距離を有する。これらの距離は、対を構成するプローブに応じて、同一であっても、異なっていてもよい。
【0038】
制御部は、プローブに結合され、プローブと電気通信し得る。制御部は、典型的には、プログラム可能プロセッサを備え、該プログラム可能プロセッサは、システムの別の要素への結合のための適切なデジタル及び/又はアナログインタフェースとともに、本明細書に記載されている機能を実行するためにソフトウェア及び/又はファームウェア内にプログラムされる。その代替又は追加として、制御部は、結線で接続された及び/又はプログラム可能なハードウェア論理回路を含み、該論理回路は、制御部の機能のうちの少なくとも一部を実行する。実際には、制御部は、本明細書に記載されている信号を受信して出力するための適切なインタフェースを有する、複数の相互接続された制御ユニットを備えてもよい。本明細書で開示された様々な方法及び機能を実施するための制御部に対するプログラムコード又は命令が、制御部内のメモリ又は別のメモリ等の可読記憶媒体に記憶され得る。
【0039】
本開示は、1つ又は複数の特定の実施形態に関して説明されてきたが、本開示の別の実施形態が、本開示の範囲から逸脱することなく行われてもよいことが理解されるであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその合理的な解釈のみによって限定されるものと考えられる。