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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20250414BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250414BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
A61K8/898
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/60
A61K8/81
A61Q1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023520936
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2022017813
(87)【国際公開番号】W WO2022239599
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021081342
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【審査官】辰己 雅夫
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分及び(B)成分を含有する油性化粧料。
(A)下記の一般式(1)で示される重量平均分子量が500~200,000のオルガノポリシロキサン化合物
【化1】
[(1)式中、R1は独立して炭素数1~16のアルキル基、または炭素数3~12のフッ素置換アルキル基であり、R2は独立して下記一般式(2)で表される有機基であり、R3は独立して炭素数6~12のアリール基または炭素数7~14のアラルキル基であり、R4は独立して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン基であり、a、b、c、dはそれぞれ、1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5、0≦d≦1.0、1.1<a+b+c+d<4である。]
【化2】
[(2)式中、R5は、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、又はアルカリ金属カチオンであり、Xは、独立して炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Yは-NR’-、硫黄原子又は酸素原子であり、ここで、R’は、水素原子又は炭素数1~6の低級アルキル基である。mは0又は2であり、m1は0又は1であり、m2は0又は1であるが、mが0及びm2が1の場合はm1は1であり、mが2及びm2が1の場合、m1は0又は1であり、mが2及びm2が0の場合、m1は0である。]
【化3】
[(3)式及び(4)式中、M=R6 3SiO1/2、MR=R6 27SiO1/2、D=R6 2SiO2/2、DR=R67SiO2/2、TR=R7SiO3/2であり、R6は独立して炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基及び炭素数3~12のフッ素置換アルキル基のうちから選択される基であり、R7は独立して炭素数1~5のアルキレン基である。qは2~3の整数である。sは0≦s≦500、tとuはそれぞれ0または1の数である。ただし、式(4)においてtとuの合計は1であり、sとuが同時に1以上となることはない。]
(B)パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン及びマイクロクリスタリンワックスから選択される1種以上の炭化水素系油性固化剤及び/又は炭化水素系以外の油性ゲル化剤
【請求項2】
上記(B)の炭化水素系以外の油性ゲル化剤が、糖骨格を有する脂肪酸エステル及びグリセリン骨格を有する脂肪酸エステルから選択される1種以上の油性ゲル化剤である請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油性化粧料が、口唇化粧料である油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のシロキサン化合物を含有する油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性化粧料には、柔軟性や平滑性を与え、エモリエント効果を持たせる目的で、パラフィン、エステル、高級アルコール、グリセライドなどの油剤を含有したものが用いられている。しかし、これらの化粧料は、油っぽさやべたつき、油膜感が避けられなかった。そこで、このべたつき感を押さえるために分子量が高く、不飽和度の低い油剤を併用した油性化粧料があるが、密着性が充分でないため剥がれ落ちが生じたり、硬さが生じたりする問題があった。
【0003】
また、前記油性化粧料に、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油を配合した化粧料も知られている。しかし、シリコーン油は軽い延びと更に優れた平滑性、撥水性を付与するものの、他の油剤との相溶性が悪く、密着性に劣るため、シリコーン油を配合した化粧料は化粧持ちが悪いという欠点があった。
【0004】
一方、油性化粧料の中でも口唇化粧料においては、密着性を上げるため、従来から種々の検討がなされている。例えば、塗布後に液状の油剤が揮発し、塗布面に色材及びワックス成分のみを残して化粧持ちを改善させるよう揮発性油剤を配合する試みがある。また、揮発性油剤に高分子の皮膜形成剤を溶解させて配合し、塗布乾燥後、高分子皮膜を皮膚表面に形成させ持ちを改善する試みもある。更に、密着性の良いピロリドンカルボキシル基(ピロリドンカルボン酸残基)を持つPCA変性ジメチコンを配合することにより化粧持ちを改善するなど検討されている(特許文献1及び2)。
【0005】
しかし、揮発性油剤を配合する油性化粧料においては、皮膚の乾燥感やツヤの低下、あるいは密着性に欠け、またPCA変性ジメチコンを配合する場合は、油性化粧料の骨格となる炭化水素系油性固化剤や炭化水素系以外の油性ゲル化剤との相溶性が悪く、油性化粧料に配合するためには、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等と併用する必要がある。しかし、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは油性化粧料に使用される固化剤やゲル化剤を分散し、油性化粧料の硬さを維持できなくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-238334号公報
【文献】特開2003-261415公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、軽い延びとサラッとした使用感、優れた撥水性を有しながら、密着性、柔軟性、平滑性、ツヤ、エモリエント効果を付与し、自然な仕上がりを与え、更に色移りや色落ちがなく化粧持ちに優れる油性化粧料の開発が望まれていた。特に口唇化粧料においては、唇が渇くことなくしっとりと仕上がり、ツヤ、密着性に優れ、にじみのない化粧持ちの良い油性化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ピロリドンカルボキシル基及び芳香族基を有するオルガノポリシロキサン化合物と、油性固化剤及び/又は油性ゲル化剤とを含む油性化粧料は、成形性に優れ、軽い延びとサラッとした使用感、そして汗、水に強い撥水性を有することを見出した。また、該油性化粧料は、柔軟性、平滑性、エモリエント効果、ツヤ、自然な仕上がりを与え、更に色移りや色落ちがなく化粧持ちに優れる特徴を有することがわかった。特に、該油性化粧料を含む口唇化粧料は、唇にエモリエント効果を与え、ツヤ、密着性に優れた化粧持ちの良いものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の油性化粧料を提供するものである。
【0010】
[1]
下記の(A)成分及び(B)成分を含有する油性化粧料。
(A)下記の一般式(1)で示される重量平均分子量が500~200,000のオルガノポリシロキサン化合物
【化1】
[(1)式中、R1は独立して炭素数1~16のアルキル基、または炭素数3~12のフッ素置換アルキル基であり、R2は独立して下記一般式(2)で表される有機基であり、R3は独立して炭素数6~12のアリール基または炭素数7~14のアラルキル基であり、R4は独立して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン基であり、a、b、c、dはそれぞれ、1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5、0≦d≦1.0、1.1<a+b+c+d<4である。]
【化2】
[(2)式中、R5は、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、又はアルカリ金属カチオンであり、Xは、独立して炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Yは-NR’-、硫黄原子又は酸素原子であり、ここで、R’は、水素原子又は炭素数1~6の低級アルキル基である。mは0又は2であり、m1は0又は1であり、m2は0又は1であるが、mが0及びm2が1の場合はm1は1であり、mが2及びm2が1の場合、m1は0又は1であり、mが2及びm2が0の場合、m1は0である。]
【化3】
[(3)式及び(4)式中、M=R6 3SiO1/2、MR=R6 27SiO1/2、D=R6 2SiO2/2、DR=R67SiO2/2、TR=R7SiO3/2であり、R6は独立して炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基及び炭素数3~12のフッ素置換アルキル基のうちから選択される基であり、R7は独立して炭素数1~5のアルキレン基である。qは2~3の整数である。sは0≦s≦500、tとuはそれぞれ0または1の数である。ただし、式(4)においてtとuの合計は1であり、sとuが同時に1以上となることはない。]
(B)炭化水素系油性固化剤及び/又は炭化水素系以外の油性ゲル化剤

[2]
上記(B)の炭化水素系油性固化剤が、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン及びマイクロクリスタリンワックスから選択される1種以上の油性固化剤である[1]に記載の油性化粧料。

[3]
上記(B)の炭化水素系以外の油性ゲル化剤が、糖骨格を有する脂肪酸エステル及びグリセリン骨格を有する脂肪酸エステルから選択される1種以上の油性ゲル化剤である[1]に記載の油性化粧料。

[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の油性化粧料が、口唇化粧料である油性化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油性化粧料は、成形性に優れ、塗布時のべたつきや重さがなくさらっとして延び広がりも軽く、後肌も、さらっとしたなめらかなしっとりした感触を有し、更に汗、水に強い撥水性を持つと共に、塗布する事により、肌への密着性、柔軟性、平滑性、エモリエント性やツヤを付与し、自然な仕上がりを与える等、使用性に優れたものである。特に口唇化粧料においては、健康的なツヤを与え、唇が渇くことなくしっとりと仕上がり、密着性が高いためにじみがなく、色移りや色落ちがなく、持続性に優れた仕上がりが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
(A)成分
本発明に(A)成分として使用される重量平均分子量が500~200,000のオルガノポリシロキサン化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化4】
[上記式中、R1は独立して炭素数1~16のアルキル基、または炭素数3~12のフッ素置換アルキル基であり、R2は独立して下記一般式(2)で表される有機基であり、R3は独立して炭素数6~12のアリール基または炭素数7~14のアラルキル基であり、R4は独立して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン基であり、a、b、c、dはそれぞれ、1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5、0≦d≦1.0、1.1<a+b+c+d<4である。]
【化5】
[上記式中、R5は、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、又はアルカリ金属カチオンのいずれかであり、Xは、独立して炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Yは-NR’-、硫黄原子又は酸素原子であり、ここで、R’は、水素原子又は炭素数1~6の低級アルキル基である。mは0又は2であり、m1は0又は1であり、m2は0又は1である。ただし、mが0及びm2が1の場合、m1は1であり、mが2及びm2が1の場合、m1は0又は1であり、mが2及びm2が0の場合、m1は0である。]
【化6】
[上記式中、M=R6 3SiO1/2、MR=R6 27SiO1/2、D=R6 2SiO2/2、DR=R67SiO2/2、TR=R7SiO3/2であり、R6は独立して炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基及び炭素数3~12のフッ素置換アルキル基のうちから選択される基であり、R7は独立して炭素数1~5のアルキレン基である。qは2~3の整数である。sは0≦s≦500である。tとuはそれぞれ0または1の数である。ただし、式(4)においてtとuの合計は1であり、sとuが同時に1以上となることはない。]
【0014】
1のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。フッ素置換アルキル基の具体例としては、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。また、R1全体の50%以上がメチル基であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上がメチル基である。また、全てのR1がメチル基であってもよい。
【0015】
2は下記一般式(2)で表される有機基である。
【化7】
【0016】
上記式中、R5は、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、又はアルカリ金属カチオンのいずれかである。R5における低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。アルカリ金属カチオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられる。R5は、好ましくは、水素原子、メチル基、ナトリウムイオン、カリウムイオンであり、より好ましくは水素原子である。Xは、独立して炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。Xにおけるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などが挙げられる。Yは-NR’-、硫黄原子又は酸素原子である。ここで、R’は、水素原子又は炭素数1~6の低級アルキル基である。R’における低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、R’は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素原子である。mは0又は2であり、m1は0又は1であり、m2は0又は1である。ただし、mが0及びm2が1の場合、m1は1であり、mが2及びm2が1の場合、m1は0又は1であり、mが2及びm2が0の場合、m1は0である。
【0017】
3は独立して炭素数6~12のアリール基または炭素数7~14のアラルキル基である。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられ、前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。R3は、好ましくはフェニル基である。
【0018】
4は独立して下記一般式(3)または一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン基である。
【化8】
[上記式中、M=R6 3SiO1/2、MR=R6 27SiO1/2、D=R6 2SiO2/2、DR=R67SiO2/2、TR=R7SiO3/2であり、R6は独立して炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基及び炭素数3~12のフッ素置換アルキル基のうちから選択される基であり、R7は炭素数1~5のアルキレン基である。qは2~3の整数である。sは0≦s≦500である。tとuはそれぞれ0または1の数である。ただし、式(4)においてtとuの合計は1であり、sとuが同時に1以上となることはない。]
【0019】
上記一般式(3)または一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン基の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【化9】
【0020】
6は、独立して炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基及び炭素数3~12のフッ素置換アルキル基のうちから選択される基である。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基等のフッ素置換アルキル基等を挙げることができる。R6は、好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0021】
6は全体の50%以上がメチル基であることが好ましく、さらに好ましくは70%以がメチル基である。また、全てのR6がメチル基であってもよい。
【0022】
7は炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。
【0023】
qは2~3の整数である。sは0≦s≦500である。tとuはそれぞれ0または1の数である。ただし、式(4)においてtとuの合計は1であり、sとuが同時に1以上となることはない。
【0024】
式(1)中、aは、1.0~2.5、好ましくは1.2~2.3である。aが1.0より小さいと使用感が悪くなり、2.5より大きいと、ツヤや密着性が悪くなる。
bは0.001~1.5、好ましくは0.005~0.5である。bが0.001より小さいと自然な仕上がりが得られなくなったり、密着性が悪くなったりする。bが1.5より大きいと、親水性が高くなりすぎる為、ベタつきが発生してしまう。
cは0.001~1.5、好ましくは0.05~1.0である。cが0.001より小さいと、エモリエント効果が得られなくなり、ツヤも得られなくなる。cが1.5より大きいと、高粘度になり過ぎて使用感が悪くなる傾向にある。
dは0~1.0、好ましくは0~0.5である。dが1.0より大きいと、ツヤや密着性が得られなくなる。
1.1<a+b+c+d<4であり、好ましくは1.2<a+b+c+d<2.5である。
【0025】
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、500~200,000であり、1,000~100,000であることが好ましい。重量平均分子量が500未満であると、撥水性が得られなくなったり、化粧持ちが悪くなったりする。また、重量平均分子量が200,000より大きいと使用感が悪くなり、仕上がりも悪くなる。本明細書において、重量平均分子量は、下記測定条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の値として求めたものをいう。
【0026】
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperHM-N(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2500(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のTHF溶液)
【0027】
本発明で(A)成分として使用するオルガノポリシロキサン化合物は、1級アミノ基を有するオルガノポリシロキサンとイタコン酸又はそのエステルとを反応させることによって合成できる。前記1級アミノ基を有するオルガノポリシロキサンは、市販されているものを用いてもよく、合成してもよい。一般的な合成方法としては、アミノアルキルメチルジメトキシシランの加水分解により得られたシロキサンオリゴマーと環状シロキサン及び塩基性触媒を用いて側鎖アルキルアミノ基変性オルガノポリシロキサンを合成する方法がある。
また、アミノアルキルメチルジメトキシシランの加水分解物のかわりに、ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを用いると、両末端アミノプロピル基変性オルガノポリシロキサンが得られる。
【0028】
上記オルガノポリシロキサン化合物は、イタコン酸又はそのエステルを1級アミノ基1モルに対して0.5~1.5モル、好ましくは1.0モルを使用し、高温でイタコン酸又はそのエステルが1級アミノ官能基と反応するのに十分な時間反応させることによって、容易にかつ直接的に調製することができる。特には、1級アミノ基1モルに対して0.5~1.5モル、好ましくは0.9~1.1モルのイタコン酸又はそのエステルを反応させると、実質上全てのイタコン酸と全ての1級アミノ官能基が反応し、1つ以上のピロリドンカルボキシル基及び/又はそのエステルを有するオルガノポリシロキサン化合物が生成される。
【0029】
上記の反応は、溶媒なしで、又はアルコール、炭化水素溶媒及び塩素化された炭化水素溶媒等の溶媒中で、好ましくは90~160℃で行うことができる。反応は容易に進行し、イタコン酸又はそのエステルと1級アミノ基との完全な反応は約1時間~約5時間で起こる。反応の完結は、常法によりアミン価及び酸価の分析や、副生する水及び/又はアルコールの放出量の測定によって決定することができる。
【0030】
(A)成分のオルガノポリシロキサン化合物は、ピロリドンカルボキシル基を含む有機基を含有することにより、肌への密着性やエモリエント性の高いものとなる。また、アリール基またはアラルキル基の芳香族基を含有することにより、油性化粧料の骨格である油性固化剤や油性ゲル化剤との相溶性が上がり、様々な油性化粧料を調製できるようになる。更に、非常に屈折率の高い油剤となるため、(A)成分を配合した化粧料は健康的なツヤを与えるものとなる。
【0031】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサン化合物の化粧料への配合量としては、化粧料全体の0.1質量%から60質量%が好ましく、より好ましくは1質量%から40質量%である。(A)成分の配合量が0.1質量%未満の場合は、密着性は少し向上するものの、ツヤが十分満足のできるものではなく、60質量%を超えると、密着性が高すぎて延びの重さを感じるようになる。またこのオルガノポリシロキサン化合物は必要に応じて1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(B)成分
本発明に使用される(B)成分は、炭化水素系油性固化剤及び/又は炭化水素系以外の油性ゲル化剤である。
【0033】
炭化水素系油性固化剤
本発明に(B)成分として使用される炭化水素系油性固化剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリイソブテン、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ポリアミド樹脂等が挙げられるが、前記パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックスが特に好ましい。
【0034】
炭化水素系以外の油性ゲル化剤
また、本発明に(B)成分として使用される炭化水素系以外の油性ゲル化剤としては、例えば、糖骨格を有する脂肪酸エステル、グリセリン骨格を有する脂肪酸エステル、金属石鹸、有機変性粘土鉱物等が挙げられ、その中でも糖骨格を有する脂肪酸エステル、グリセリン骨格を有する脂肪酸エステルが好ましい。
【0035】
糖骨格を有する脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル等が挙げられ、より詳しくは、例えばパルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸イヌリン等が挙げられる。
また、グリセリン骨格を有する脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルの縮合物が挙げられ、より詳しくは、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル-10、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0036】
金属石鹸としては、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム等が挙げられ、有機変性粘土鉱物としては、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイト、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンヘクトライト、ジステアルジモニウムヘクトライト等が挙げられる。
【0037】
(B)成分の化粧料への配合量としては、化粧料全体の0.1質量%から40質量%が好ましく、0.1質量%未満の場合は、硬さが十分ではなく、経時で沈降が起こる等の問題があり、また40質量%を超える場合は、油性化粧料が硬すぎ、感触の悪いものになる。(B)成分の化粧料への配合量は、より好ましくは化粧料全体の1質量%から20質量%である。
前記炭化水素系油性固化剤及び/又は炭化水素系以外の油性ゲル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の油性化粧料は、特に密着性、柔軟性、ツヤ、エモリエント性に特に優れているため、口唇化粧料に好適である。
【0039】
任意成分
本発明の油性化粧料には、上記オルガノポリシロキサン化合物、油性固化剤及び油性ゲル化剤の他に、その目的に応じて他の油剤を用いることができる。該油剤としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、揮発性油剤及び揮発性油剤以外の油剤(固体、半固体又は液状油剤)のいずれのものも使用することができる。
【0040】
本発明の油性化粧料は揮発性油剤として、揮発性シリコーン油、揮発性有機油を含むことができる。
揮発性シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(2量体、3量体、4量体、5量体)、カプリリルメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン等が挙げられる。
揮発性有機油としては炭化水素油やエステル油が挙げられ、具体的には、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、酢酸ブチル等が挙げられる。
揮発性油剤として好ましいものはジメチルポリシロキサン(4量体、5量体)、カプリリルメチコン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、軽質イソパラフィン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン、酢酸ブチルである。
これら揮発性油剤の配合量は、好ましくは化粧料全体の1~98質量%、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは3~30質量%である。
【0041】
本発明の油性化粧料は上記揮発性油剤の他にも、さらに化粧品に許容される油剤を含むことができる。このような揮発性油剤以外の油剤としては、不揮発性のシリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、グリセライド油や天然動植物油等の極性油、半合成油、及び/又はフッ素系油等を挙げることができる。これらの油剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
シリコーン油としては、不揮発性のジメチルポリシロキサン、フェニルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(例えば、信越化学工業(株)製;KF-56A)、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の直鎖或いは分岐状のオルガノポリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、高重合度のジメチルポリシロキサン、ガム状アミノ変性オルガノポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及びシリコーンやゴムの環状シロキサン溶液、トリメチルシロキシケイ酸、トリメチルシロキシケイ酸の環状オルガノポリシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、シリコーン樹脂及びシリコーンレジン等が挙げられる。
【0043】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0044】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。
【0045】
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、(カプリン酸/カプリル酸)ヤシアルキル、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、ラウロイルサルコシンイソプロピルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。
【0046】
グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル等が挙げられる。
【0047】
また、天然動植物油類及び半合成油として、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、スクワラン、スクワレン、セラックロウ、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、メドウフォーム油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、落花生油などの天然植物油、肝油、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、鯨ロウ、硬化油、タートル油、豚脂、馬脂、ミンク油、精製キャンデリラロウ、羊脂、ラノリン、液状ラノリン、卵黄油などの天然動物油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、水添ホホバ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、酢酸ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸イソプロピルなどが挙げられる。
【0048】
フッ素系油剤としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0049】
本発明の油性化粧料に許容される揮発性油剤以外の油剤の配合量は、化粧料の剤系によっても異なるが、化粧料全体の1~98質量%、好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは3~30質量%の範囲が好適である。
【0050】
本発明の油性化粧料には、通常の化粧料に使用される成分として、粉体、皮膜形成剤、界面活性剤、粉体、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、香料等を配合することができ、また本発明の効果を妨げない範囲で水、アルコール類、水溶性高分子、保湿剤、抗菌剤、塩類、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分(美白剤、細胞賦活剤、肌荒れ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等を添加することができる。
【0051】
また、本発明の油性化粧料としては、上記化粧料成分を配合してなる、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅等のメイクアップ化粧料、日焼け止めオイルや日焼け止め乳液、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料等が挙げられる。
【実施例
【0052】
以下に、製造例、比較製造例、実施例、比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記式において、C65-はフェニル基を示す。また、「%」は「質量%」を示す。
【0053】
[製造例1]
セパラブルフラスコに下記組成式で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンを740g加えた。
【化10】
そこにイタコン酸34gを加え、140℃で3時間攪拌し、エステルアダプターで理論量の水を溜去した。減圧ストリップで未反応物を除去し、下記構造のオルガノポリシロキサン化合物を収率95%で得た。得られた淡黄色透明な液体は、重量平均分子量3,000であった。
【化11】
【0054】
[製造例2]
セパラブルフラスコに下記組成式で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンを200g加えた。
【化12】
そこにイタコン酸5.0gを加え、140℃で3時間攪拌し、エステルアダプターで理論量の水を溜去した。減圧ストリップで未反応物を除去し、下記構造のオルガノポリシロキサン化合物を収率96%で得た。得られた淡黄色透明な液体は、重量平均分子量11,000であった。
【化13】
【0055】
[製造例3]
セパラブルフラスコに下記組成式で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンを500g加えた。
【化14】
そこにイタコン酸ジメチル12.5gを加え、100℃で3時間攪拌し、エステルアダプターで理論量のメタノールを溜去した。減圧ストリップで未反応物を除去し、下記構造のオルガノポリシロキサン化合物を収率95%で得た。得られた淡黄色透明な液体は、重量平均分子量20,000であった。
【化15】
【0056】
[製造例4]
セパラブルフラスコに下記組成式で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンを300g加えた。
【化16】
そこにイタコン酸34.5gを加え、140℃で3時間攪拌し、エステルアダプターで理論量の水を溜去した。減圧ストリップで未反応物を除去し、下記構造のオルガノポリシロキサン化合物を収率95%で得た。得られた淡黄色透明な液体は、重量平均分子量1,300であった。
【化17】
【0057】
[比較製造例1]
セパラブルフラスコに下記組成式で表されるアミノ基含有オルガノポリシロキサンを500g加えた。
【化18】
そこにイタコン酸15gを加え、140℃で3時間攪拌し、エステルアダプターで理論量の水を溜去した。減圧ストリップで未反応物を除去し、下記構造のオルガノポリシロキサン化合物を収率95%で得た。得られた淡黄色透明な液体は、重量平均分子量5,500であった。
【化19】
【0058】
実施例1~4及び比較例1~3:スティック状口紅
次の表1に示す各組成で下記の製造方法に従ってスティック状口紅を製造した。その成形性、使用感及び使用性について下記の評価方法で評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0059】
(製造方法)
A:成分1~10を90℃に加熱して均一に溶解する。
B:成分11~16を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものと成分17とを、上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に流し込み、冷却固化してスティック状口紅を得る。
【0060】
(評価方法)
以上のようにして得られたものについて、スティック状口紅としての成形性を確認したのち、成形された口紅に対しては、女性50名の専門パネルにより使用テストを行い、塗布時の伸び、滑らかさ、密着感、おさまりの良さ、仕上がり後のべたつきのなさ、しっとり感、仕上がりのツヤ、また、色移り、色落ちのなさ、滲みのなさ、化粧持ちの良さについて以下の基準で評価を行ない、その平均点で判定、総合評価を行った。
[成形性の確認]
◎:成形可
×:成形不可

[評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良

[判定]
◎:平均点4.5以上
○:平均点3.5以上4.5未満
△:平均点2.5以上3.5未満
×:平均点2.5未満
【0061】
【表1】
(※)信越化学工業(株)製:KF-54
【0062】
表1の結果から明らかなように、本発明のシロキサン化合物を配合した実施例1~4のスティック状口紅は、比較例2と比べて、塗布時の滑らかさや密着感、おさまりの良さに優れ、しっとりとし、また色移りや色落ち、滲みもなく非常に化粧持ちの良さに優れていることがわかった。また、比較例3と比べても、塗布時の密着感、おさまりの良さに優れ、しっとりとして非常にツヤがあり、また色移りや色落ち、滲みもなく非常に化粧持ちの良さに優れていることがわかった。さらに比較例1のフェニル基を含有しないピロリドンカルボキシル基含有ポリシロキサンを用いた場合は、スティック状に成型することができなかった。
また、実施例1~4のスティック状口紅はエモリエント効果を有し、比較例1~3はエモリエント効果を有さなかった。
【0063】
実施例5:口紅
【表2】
(注3)信越化学工業(株)製:KF-7312J
(デカメチルシクロペンタシロキサン50%+シリコーン樹脂50%の溶解品)
(注4)信越化学工業(株)製:KF-6106
(注5)信越化学工業(株)製:KTP-09W,R,Y,B(KF-9909処理着色無機顔料,W:白・R:赤・Y:黄・B:黒)
【0064】
(実施例5の製造方法)
A:成分1~8を加熱溶解する。
B:成分9~16を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものを上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、成分17を加えて容器に充填し口紅を得る。
【0065】
以上のようにして得られた本発明の口紅(実施例5)は、塗布時の滑らかさに優れ、べたつきがなく延び広がりも軽く、また、密着感に優れ、おさまりも良くツヤのある美しい仕上がりで、滲みや色移り、色落ちがなくて化粧持ちが良く、更に唇の乾きや荒れのない、優れた特徴を有するものであった。
【0066】
実施例6:口紅
【表3】
(注2)信越化学工業(株)製:KP-578
(注6)信越化学工業(株)製:KP-574処理
【0067】
(実施例6の製造方法)
A:成分1~7を加熱溶解する。
B:成分8~15を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものと成分16とを、上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に充填し口紅を得る。
【0068】
以上のようにして得られた本発明の口紅(実施例6)は、塗布時の滑らかさに優れ、べたつきがなく延び広がりも軽く、また、密着感に優れ、おさまりも良くツヤのある美しい仕上がりで、滲みや色移り、色落ちがなくて化粧持ちが良く、更に唇の乾きや荒れのない、優れた特徴を有するものであった。
【0069】
実施例7:リップグロス
【表4】
(注7)信越化学工業(株)製:KP-545
(デカメチルシクロペンタシロキサン70%+アクリルシリコーン30%の溶解品)
(注8)信越化学工業(株)製:KF-99P処理
【0070】
(実施例7の製造方法)
A:成分1~5を加熱溶解する。
B:成分6~10を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものと成分11とを、上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に充填しリップグロスを得る。
【0071】
以上のようにして得られた本発明のリップグロス(実施例7)は、塗布時の伸び、滑らかさに優れ、べたつきがなく、また、密着感に優れ、おさまりも良くしっとりしたツヤのある美しい仕上がりで、滲みや色移り、色落ちがなくて化粧持ちが良く、更に唇の乾きや荒れのない、優れた特徴を有するものであった。
【0072】
実施例8:油性固形ファンデーション
【表5】
(注9)信越化学工業(株)製:KF-56A
(注10)信越化学工業(株)製:KSP-100
(シリコーンゴムをシリコーンレジンで被覆した平均粒子径5μmの複合パウダー)
(注11)信越化学工業(株)製:KMP-591
(注12)信越化学工業(株)製:KF-9901処理
(注13)信越化学工業(株)製:AES-3083処理
【0073】
(実施例8の製造方法)
A:成分1~8を加熱溶解する。
B:成分11~17を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものと成分9~10とを、上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に充填し固形ファンデーションを得る。
【0074】
以上のようにして得られた本発明の油性固形ファンデーション(実施例8)は、延び広がりが軽く、肌へのおさまりも良く、しっとりと仕上がり、また、ツヤ、張りがある化粧膜が得られ、化粧持ちが良く、非常に優れているものであった。
【0075】
実施例9:油性ファンデーション
【表6】
(注14)信越化学工業(株)製:KSG-16
(ジメチルポリシロキサン70-80%+架橋型ジメチルポリシロキサン20-30%の混合物)
(注15)信越化学工業(株)製:KF-6038
(注16)信越化学工業(株)製:TSPL-30-ID
(イソドデカン70%+シリコーン変性プルラン30%の混合物)
【0076】
(実施例9の製造方法)
A:成分1~9を均一に混合する。
B:成分10~17を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものを上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に充填し油性ファンデーションを得る。
【0077】
以上のようにして得られた本発明の油性ファンデーション(実施例9)は、延び広がりが軽く、肌へのおさまりも良く、しっとりと仕上がり、また、ツヤ、張りがある化粧膜が得られ、化粧持ちが良く、非常に優れているものであった。
【0078】
実施例10:油性マスカラ
【表7】
(注17)信越化学工業(株)製:KF-6028
(注18)信越化学工業(株)製:NBN-30-ID
(イソドデカン70%+シリコーン変性ポリノルボルネン30%の混合物)
【0079】
(実施例10の製造方法)
A:成分1~9を加熱溶解する。
B:成分10~15を均一に混合し、ロール処理する。
C:上記Bの工程で得られたものを上記Aの工程で得られたものに添加し均一に混合する。
D:上記Cの工程で得られたものを脱泡した後、容器に充填し油性マスカラを得る。
【0080】
以上のようにして得られた本発明の油性マスカラ(実施例10)は、塗布時の滑らかさに優れ、べたつきがなく延び広がりも軽く、また、密着感に優れ、おさまりも良くツヤのある美しい仕上がりで、滲みがなくて化粧持ちが良く、非常に優れていることがわかった。