IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/245 20060101AFI20250414BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250414BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250414BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K31/135
A61K47/38
A61K9/107
A61P37/08
A61P43/00 121
A61P43/00 113
A61P29/00
A61K8/41
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211021
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097835
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 洋造
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 安弓
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178867(JP,A)
【文献】特開2018-108992(JP,A)
【文献】特開昭53-113037(JP,A)
【文献】特開2018-197203(JP,A)
【文献】特開2011-032249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 8/00- 8/99
A61Q 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩、並びに(C)ウフェナマートを含み、pHが8.5以下である、水中油型乳化組成物。
【請求項2】
油相配合率が3~30重量%である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
pHが4.8~5.5である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量が0.01~5重量%である、請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の配合量が、0.1~7重量%である、請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩並びに(C)ウフェナマートを含むpHが8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性を向上する方法であって、
水中油型乳化組成物に、前記(A)成分及び前記(C)成分と共に(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩を配合する、乳化安定性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩及び増粘剤を含有する所定pHの水中油型乳化組成物であって、優れた乳化安定性を有する水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミン塩酸塩等のジフェンヒドラミン類は、皮膚の痒みなどのアレルギー症状を引き起こすヒスタミンの作用を抑制し得ることが知られ、抗ヒスタミン剤として医薬品又は医薬部外品の、内用剤又は外用剤に配合して用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジフェンヒドラミン又はその塩及び賦形剤を含有する組成物を造粒した後、該造粒物にカルボキシメチルセルロースカルシウムを含有する崩壊剤を粉末として添加し、得られた混合物を打錠することを特徴とするジフェンヒドラミン含有錠の製造法が記載されている。特許文献2には、(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、及びそれらの塩から選択される少なくとも1種の化合物と、(B)ホウ酸及びその塩から選択される少なくとも1種の化合物と、(C)塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリン、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒアルロン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも4種の化合物とを含有する、眼科用水性組成物が記載されている。
【0004】
また、ジフェンヒドラミン類が外用剤に配合される場合、官能及び有効成分による効果の発現等の点において有利な乳化組成物に配合されることがある。例えば、特許文献3には、(A)液状油性物質、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)ポリグリセリンの2つ以上のヒドロキシル基と脂肪酸とがエステル化した脂肪酸エステル、及び(D)高級アルコール及び/又は高級脂肪酸を含有する油中水型乳化組成物が安定であり、(A)成分としてジフェンヒドラミン等が用いられてよいことが記載されている。また、特許文献4には、(a)サリチル酸エステル及び(b)テルペンからなる群から選択される少なくとも1種、(c)塩形態の抗ヒスタミン薬、(d)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、(e)ソルビタン脂肪酸エステル、及び(f)HLB10~13の界面活性剤、(g)増粘剤を含む乳化型医薬組成物が安定であり、(c)成分として塩酸ジフェンヒドラミン等が用いられてよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-291045号公報
【文献】特開2013-227343号公報
【文献】特開2014-047158号公報
【文献】特開2015-187085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3及び4の乳化組成物は、一応の乳化安定性は達成されている。しかしながら、特許文献3の乳化組成物は油中水型の剤型にしか対応することができず、特許文献4の乳化組成物は処方上の制約が大きい。このため、これまでの乳化技術では、ジフェンヒドラミン類を含有する乳化組成物の処方の多様化には対応できないケースが増大する。そこで、ジフェンヒドラミン類を含有する乳化組成物において、優れた乳化安定性を発現できる新たな製剤技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明者は、ジフェンヒドラミン類を含有する乳化組成物の製剤処方を検討したところ、乳化組成物にジフェンヒドラミン類を配合するとpHが上昇するところ、外用剤にも適用できるようにpHを低下させると乳化安定性が極度に悪化し、このような乳化安定性の極度の悪化が、粘性の付与に必須の増粘剤の配合により生じるという課題に直面した。
【0008】
本発明は、ジフェンヒドラミン類を含有する乳化組成物において、粘性を付与しながらも優れた乳化安定性を発現できる製剤技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ジフェンヒドラミン類を含有するpH8.5以下の乳化組成物において、様々な増粘剤の中でもカルボキシメチルセルロース及び/又はその塩が、乳化安定性を向上させるという特異な作用を示すことを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩を含み、pHが8.5以下である、水中油型乳化組成物。
項2. さらに(C)ウフェナマートを含む、項1に記載の水中油型乳化組成物。
項3. 油相配合率が3~30重量%である、項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。項4. pHが4.8~5.5である、項1~3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項5. 前記(A)成分の含有量が0.01~5重量%である、項1~4のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項6. 前記(B)成分の配合量が、0.1~7重量%である、項1~5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項7. (A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含むpHが8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性を向上する方法であって、
水中油型乳化組成物に、前記(A)成分と共に(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩を配合する、乳化安定性向上方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジフェンヒドラミン類を含有する乳化組成物において、粘性を付与しながらも優れた乳化安定性を発現できる製剤技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書において、「乳化安定性」とは、水中油型乳化組成物を室温にて一定期間静置した後に、不均一化又は分離が抑制される特性を意味する。「乳化安定性」の判断方法としては、特に限定されないが、水中油型乳化組成物の外観を目視にて観察して判断することができる。より具体的には、実施例の「<乳化安定性>」に記載の方法で判断することができる。本明細書において、「乳化安定性向上方法」とは、水中油型乳化組成物の「乳化安定性」を向上させる方法を意味する。
【0013】
本発明の水中油型乳化組成物における「油相」とは、油性成分及び油性基剤を含んだ相を意味する。
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物における油相配合率とは、油性成分及び油性基剤の総量を意味する。
【0015】
1.水中油型乳化組成物
本発明の水中油型乳化組成物は、(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩(以下、「(A)成分」とも記載する。)、並びに(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩(以下、「(B)成分」とも記載する。)を含み、pHが8.5以下であることを特徴とする。以下、本発明の水中油型乳化組成物について詳述する。
【0016】
(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩
本発明の水中油型乳化組成物は、(A)成分としてジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含有する。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用があることが知られている公知の薬剤である。
【0017】
ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の水中油型乳化組成物において、ジフェンヒドラミン及びその塩の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の水中油型乳化組成物においては、ジフェンヒドラミン及びその塩の中でも、好ましくはジフェンヒドラミンが挙げられる。
【0020】
本発明の水中油型乳化組成物における(A)成分の含有量については、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、総量で0.01~5重量%が挙げられる。
【0021】
(A)成分は、乳化組成物への配合量が多いほど急激なpH上昇を引き起こし、pH調整後における乳化安定性の悪化を顕著にするが、本発明の入荷組成物は乳化安定性に優れているため、(A)成分が比較的多く含まれている場合でも、効果的に乳化安定性を向上できる点で有用性が高い。このように本発明の有用性を高める観点から、(A)成分の含有量の好適な例としては、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.3~5重量%、さらに好ましくは0.6~5重量%、一層好ましくは0.8~5重量%、1.0~3重量%が挙げられる。
【0022】
また、乳化安定性をより一層高める観点から、(A)成分の含有量としては、好ましくは0.01~3重量%、より好ましくは0.01~2重量%、さらに好ましくは0.01~1.5重量%、一層好ましくは0.01~1.2重量%が挙げられる。
【0023】
(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩
本発明の水中油型乳化組成物は、(B)成分としてカルボキシメチルセルロース及び/又はその塩を含有する。カルボキシメチルセルロースは、増粘剤として公知の成分である。(B)成分は、水中油型乳化組成物に粘性を付与するとともに、ジフェンヒドラミン類を含有するpH8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性の顕著な悪化をもたらす他の一般的な増粘剤とは異なり、乳化安定性を向上するという特異な作用を示す。
【0024】
カルボキシメチルセルロースの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの塩の中でも、乳化安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0025】
(B)成分の粘度としては、25℃、1重量%水溶液の粘度として、例えば10mPa・s~6000mPa・sが挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(B)成分の粘度としては、好ましくは100mPa・s~5000mPa・s、より好ましくは300mPa・s~4000mPa・s、さらに好ましくは600mPa・s~3000mPa・s、一層好ましくは800mPa・s~2500mPa・s、より一層好ましくは1000mPa・s~2000mPa・sが挙げられる。
【0026】
また、(B)成分のエーテル化度としては、例えば0.1~3.0が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(B)成分のエーテル化度としては、好ましくは0.3~2.0、より好ましくは0.5~1.5、さらに好ましくは0.6~1、一層好ましくは0.7~0.9が挙げられる。
【0027】
(B)成分については市販のものを利用することもでき、例えば第一工業製薬株式会社から販売されているセロゲン(登録商標)シリーズPR-S(25℃、2重量%水溶液の粘度が20mPa・s~40mPa・s、エーテル化度0.70~0.85)、P-715A(25℃、2重量%水溶液の粘度が80mPa・s~140mPa・s、エーテル化度0.60~0.70)、F-SC(25℃、2重量%水溶液の粘度が300mPa・s~400mPa・s、エーテル化度0.70~0.85)、AGガムM(25℃、2重量%水溶液の粘度が900mPa・s~1500mPa・s、エーテル化度0.70~0.85)、P-815C(25℃、1重量%水溶液の粘度が1000mPa・s~2000mPa・s、エーテル化度0.70~0.85)等、ダイセル化学工業株式会社から販売されているCMCダイセルシリーズ、日本製紙ケミカル株式会社から販売されているサンローズFシリーズ等が利用できる。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物において、カルボキシメチルセルロース及びその塩の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物における(B)成分の含有量については、付与すべき乳化安定性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、総量で0.1~7重量%が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは0.3~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%、さらに好ましくは1~2重量%、一層好ましくは1.2~1.8重量%が挙げられる。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の1重量部当たりの(B)成分の量として、例えば0.1~20重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(A)成分の1重量部当たりの(B)成分の量として、好ましくは0.3~15重量部、より好ましくは0.5~5量部、さらに好ましくは0.7~3重量部、一層好ましくは1.0~2重量部、特に好ましくは1.2~1.8重量部が挙げられる。
【0031】
(C)ウフェナマート
本発明の水中油型乳化組成物は、(C)成分としてウフェナマートを含有することができる。(C)成分は、ジフェンヒドラミン類を含有するpH8.5以下の乳化組成物において乳化安定性をさらに悪化させるが、本発明の皮膚外用組成物は乳化安定性に優れているため、(C)成分を配合しても効果的に優れた乳化安定性を発現することができる。
【0032】
ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも呼ばれ、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。
【0033】
本発明の水中油型乳化組成物において、(C)成分の含有量については、付与すべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは2~10重量%、さらに好ましくは3~7重量%、特に好ましくは4~6重量%が挙げられる。
【0034】
本発明の水中油型乳化組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の1重量部当たりの(C)成分の含有量として例えば0.5~50重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(A)成分の1重量部当たりの(C)成分の含有量として、好ましくは1~20重量部、より好ましくは3~10重量部、さらに好ましくは4~8重量部、特に好ましくは4~7重量部が挙げられる。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物において、(B)成分に対する(C)成分の比率については、(B)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(B)成分の1重量部当たり、(C)成分が例えば0.5~30重量部が挙げられる。乳化安定性をより一層高める観点から、(B)成分の1重量部当たり、好ましくは1~15重量部、より好ましくは1.5~10重量部、さらに好ましくは2~8重量部、特に好ましくは2.5~6重量部が挙げられる。
【0036】
油性基剤
本発明の水中油型乳化組成物は、油相の基剤成分を含む。油性基剤としては薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、油類(中鎖脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類・ロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル等)、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等)、コレステロール、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等が挙げられる。
【0037】
これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
これらの油性基剤の中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは油類、高級アルコール、シリコーンオイルが挙げられ、より好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリド、スクワラン、ステアリルアルコール(特に、ポリオキシエチレンアラキルエーテル・ステアリルアルコール混合物の形態のもの)、及びジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0039】
本発明の水中油型乳化組成物における油相配合率(つまり、油性成分と油性基剤との総量)については、水中油型に乳化できることを限度として特に限定されないが、例えば3~30重量%が挙げられる。
【0040】
本発明の水中油型乳化組成物は水中油型の乳化安定性に優れているため、本来的に乳化安定化が難しいはずの油相配合率が低い組成であっても効果的に乳化安定性を向上できる点で有用性が高い。また、油相配合率が低いほど使用感に優れる点でも好ましい。このように本発明の有用性及び/又は使用感を高める観点から、本発明の水中油型乳化組成物における油相配合率の好適な例としては、3~25重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは3~15重量%、さらに好ましくは3~12重量%、一層好ましくは3~10重量%、より一層好ましくは3~9重量%、特に好ましくは3~7.5重量%が挙げられる。
【0041】
また、本発明の水中油型乳化組成物の乳化安定性をより一層高める観点から、油相配合率としては、好ましくは4~30重量%、より好ましくは5~30重量%、さらに好ましくは6~30重量%が挙げられる。
【0042】

本発明の水中油型乳化組成物は、水相の基剤成分として水を含む。本発明の水中油型乳化組成物における水の含有量については、水中油型に乳化できることを限度として特に限定されないが、例えば60~95重量%が挙げられる。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は水中油型の乳化安定性に優れているため、本来的に乳化安定化が難しいはずの水が多い組成であっても効果的に乳化安定性を向上できる点で有用性が高い。また、水が多いほど使用感に優れる点でも好ましい。このように本発明の有用性及び/又は使用感を高める観点から、本発明の水中油型乳化組成物における水の含有量の好適な例としては、64~95重量%、好ましくは73~95重量%、より好ましくは75~95重量%、さらに好ましくは78~95重量%、一層好ましくは80~95重量%が挙げられる。
【0044】
また、本発明の水中油型乳化組成物の乳化安定性をより一層高める観点から、水の含有量としては、好ましくは60~90重量%、より好ましくは60~85重量%、さらに好ましくは60~83重量%が挙げられる。
【0045】
界面活性剤
本発明の水中油型乳化組成物は、乳化のための界面活性剤を含む。界面活性剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくはノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル(ステアリン酸グリセリン)、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);グリセリンアルキルエーテル;ステアレス-2;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等);ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレエート、ポリオキシエチレンソルビットモノステアレート等);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリントリイソステアレート等);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(例えば、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート(ステアリン酸ポリオキシル)、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);ポリオキシエチレンアルキル又はアラキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアラキルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等)及びこれらのリン酸又はリン酸塩(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム等);プルロニック(登録商標)型類(例えば、プルロニック(登録商標)等);ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-セチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン-2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン水添ラノリン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリセリンエーテル等);ステアレス-21等が挙げられる。
【0047】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、並びにポリオキシエチレンアルキル又はアラキルエーテル類及びこれらのリン酸又はリン酸塩が挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0049】
界面活性剤のHLB値としては、例えば8~19.5が挙げられる。より優れた乳化安定性を得る観点から、界面活性剤のHLB値としては、好ましくは9~19、より好ましくは10~18が挙げられる。HLB値(親水性-親油性のバランス)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
【0050】
本発明の水中油型乳化組成物において、界面活性剤の含有量については、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~7重量%、好ましくは1~6.5重量%、より好ましくは2~6重量%、さらに好ましくは3~5.5重量%、一層好ましくは4~5重量%が挙げられる。
【0051】
他の成分
本発明の水中油型乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、多価アルコール、増粘剤(上記(B)成分以外)、生体適合性ポリマー、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0052】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)、エチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、より優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくは2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは1,3-ブチレングリコール(BG)、グリセリンが挙げられる。生体適合性ポリマーとしては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマー又はアルキルメタクリレートとのコポリマー等が挙げられ、好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートとのコポリマーが挙げられる。
【0053】
pH調整剤としては、特に限定されないが、無機酸又は有機酸が挙げられ、具体的には、リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのpH調整剤の中でも、水中油型乳化組成物の乳化安定性をより一層向上させる観点から、好ましくはリン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、コハク酸又は酒石酸が挙げられ、より好ましくはリン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム又はリンゴ酸が挙げられ、更に好ましくはリン酸、塩酸、クエン酸又はリンゴ酸が挙げられ、特に好ましくはクエン酸が挙げられ。
【0054】
更に、本発明の水中油型乳化組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピバカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩)、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D,E等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の水中油型乳化安定化剤が配合される乳化組成物において、これらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0055】
pH
本発明の本発明の水中油型乳化組成物のpHは、8.5以下であることを限度として特に限定されない。水中油型乳化組成物のより優れた乳化安定性を得る観点から、好ましくはpH3.0~8.5、より好ましくはpH3.5~8.0、さらに好ましくはpH3.5~7.0、一層好ましくはpH3.5~6.0、特に好ましくはpH4.8~5.5が挙げられる。
製剤形態
【0056】
本発明の水中油型乳化組成物の製剤形態については特に制限されず、例えば、乳液剤、クリーム剤、ローション剤等が挙げられ、好ましくはクリーム剤が挙げられる。
【0057】
本発明の水中油型乳化組成物としては、具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、好ましくは医薬品、医薬部外品が挙げられる。
【0058】
本発明の水中油型乳化組成物としては、好ましくは外用剤、より好ましくは皮膚外用剤が挙げられる。
【0059】
2.乳化安定性向上方法
上述のように、カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩は、ジフェンヒドラミン類を含有するpH8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性を向上する。従って、本発明は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含むpHが8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性を向上する方法も提供する。
【0060】
本発明の乳化安定性向上方法は、(A)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含むpHが8.5以下の水中油型乳化組成物において乳化安定性を向上する方法であって、水中油型乳化組成物に、前記(A)成分と共に(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩を配合することを特徴とする。本発明の乳化安定性向上方法において、使用される成分の種類や配合量、乳化安定性向上方法の製剤形態等については、前記「1.乳化安定性向上方法」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0061】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
試験例
表1~3に示す組成の水中油型乳化組成物(皮膚外用剤)を調製した。具体的には、十分に撹拌している25℃前後の水相に、60℃~80℃に加温した油相と多価アルコールの混和物を徐々に添加することによって、水中油型乳化組成物を調製した。
【0063】
水中油型乳化組成物の調製に用いた各成分の詳細を以下に示す。
アラキデス-20ステアリルアルコール:ポリオキシエチレンアラキルエーテル・ステアリルアルコール混合物、WAX230(日光ケミカルズ)
中鎖脂肪酸トリグリセリド:トリエスターF-810(日光ケミカルズ)
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル:NIKKOL BB-30(日本サーファクタント工業)、HLB18.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20:NIKKOL HCO-20(日本サーファクタント工業)、HLB10.5
トリセテス-5リン酸:ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、NIKKOL TCP-5(日本サーファクタント工業)、HLB10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム:P-815C(第一工業製薬)、25℃、1重量%水溶液の粘度1000mPa・s~2000mPa・s、エーテル化度0.70~0.85
【0064】
得られた水中油型乳化組成物について、以下の評価を行った。
【0065】
<乳化安定性>
ガラス瓶(No.8バイアル瓶)に水中油型乳化組成物を収容し、室温にて一日静置した。静置後の水中油型乳化組成物の外観を目視にて観察し、以下の基準に基づいて乳化安定性を評価した。結果を表1~3に示す。
○:不均一化も分離も認められない
×:不均一化が認められる
××:調製直後より不均一化し、静置後に分離が認められる
【0066】
<粘性>
水平にした皮膚(手の甲の皮膚)に水中油型乳化組成物(乳化安定性評価が○であったもの)0.05gを1cm2の範囲に塗布し、その後、水平にした皮膚を30°傾けた直後における垂れの有無(以下の基準)に基づいて粘性を評価した。結果を表1~3に示す。
○:垂れが生じず、所望の粘性が付与されている
×:垂れが生じ、所望の粘性が付与されていない
【0067】
<使用感>
訓練されたパネラー1名が水中油型乳化組成物(乳化安定性評価が○であったもの)を前腕の内側に塗布し、肌に馴染ませた後における使用感を以下の基準に基づいて評価した。結果を表1~3に示す。
◎:オイル感を感じない。
〇:オイル感をほぼ感じない。
△:オイル感を感じる。
×:オイル感をかなり感じる。


【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
参考例1と参考例2との対比にみられるように、ジフェンヒドラミンを水中油型乳化組成物に加えることによってpHが上昇し、比較例1及び比較例2に示されるとおり、pHを低下させると乳化安定性が極度に悪化した。比較例2と比較例3との対比にみられるように、比較例2等で生じた乳化安定性の極度な悪化は、増粘剤であるヒドロキシプロピルセルロースの配合によって生じていた。つまり、ジフェンヒドラミン及びヒドロキシプロピルセルロースを含みかつpHを低下させた水中油型乳化組成物は、乳化安定性が悪化するということがわかった。なお、比較例4及び比較例5の対比にみられるように、ウフェナマートをさらに加えることで、乳化安定性はさらに悪化した。これに対して、実施例1及び実施例2に示されるように、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを用いると、乳化安定性が顕著に向上した。
【0071】
また、比較例7~16に示されるとおり、カルボキシメチルセルロースナトリウム以外の増粘剤を用いた場合には、比較例2と同様に乳化安定性が極度に悪い一方で、実施例3に新値される通り、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いると乳化安定性が顕著に向上した。同様に、実施例3~10の組成の水中油型乳化組成物についても同様に優れた乳化安定性が認められた。
【0072】
処方例
表4に示す処方の水中油型乳化組成物(皮膚外用剤)を調製した。いずれの水中油型乳化組成物についても、所望の粘性が付与され優れた乳化安定性が発現されていた。
【0073】


【表4】