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特許7665613混合物、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】混合物、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20250414BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20250414BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20250414BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20250414BHJP
【FI】
H10K85/60
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K71/16 164
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2022526672
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020449
(87)【国際公開番号】W WO2021241738
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020094989
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕基
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/101491(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081776(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0037826(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0200899(US,A1)
【文献】特開2012-238577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C09K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物であって、
第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、
前記第一の化合物は、下記一般式(10)で表され、
前記第二の化合物は、下記一般式(20)で表され、
ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である、
混合物。
【化1】
(前記一般式(10)及び前記一般式(20)において、
12は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11、L21及びL22は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar11、Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11~R18、並びにR21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
(前記第一の化合物及び前記第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【請求項2】
12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基である、
請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
21及びL22は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基である、
請求項1又は請求項に記載の混合物。
【請求項4】
21は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、
Ar21は、置換もしくは無置換のナフチル基である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
11は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
Ar11は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
11~R18は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記第一の化合物が、下記一般式(11)で表される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の混合物。
【化2】
(前記一般式(11)において、R11~R18、L11及びAr11は、それぞれ、前記一般式(10)におけるR11~R18、L11及びAr11と同義である。)
【請求項10】
前記第二の化合物が、下記一般式(21)で表される、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の混合物。
【化3】
(前記一般式(21)において、R21~R28、L22及びAr22は、それぞれ、前記一般式(20)におけるR21~R28、L22及びAr22と同義である。)
【請求項11】
前記第二の化合物が、下記一般式(21)で表される、
請求項に記載の混合物。
【化3】
(前記一般式(21)において、R21~R28、L22及びAr22は、それぞれ、前記一般式(20)におけるR21~R28、L22及びAr22と同義である。)
【請求項12】
11~R18は、水素原子である、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項13】
21~R28は、水素原子である、
請求項1から請求項10及び請求項12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
11 ~R 18 は、水素原子であり、
21 ~R 28 は、水素原子である、
請求項11に記載の混合物。
【請求項15】
前記混合物中、前記第一の化合物及び前記第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数1)の関係を満たす、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の混合物。
50≦(M/M)×100<100…(数1)
【請求項16】
混合物であって、
第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、
前記第一の化合物は、下記一般式(20)で表され、
前記第二の化合物は、下記一般式(30)で表され、
ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である、
混合物。
【化4】
(前記一般式(20)及び前記一般式(30)において、
21、L22、L31及びL32は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar31及びAr32は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
31 ~R 38 は、水素原子であり、
21 28 、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
ただし、R22、R23、R26 及びR 27 、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基ではない。)
(前記第一の化合物及び前記第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【請求項17】
31及びL32は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基である、
請求項16に記載の混合物。
【請求項18】
31は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、かつAr31は、置換もしくは無置換のナフチル基である、
請求項16又は請求項17に記載の混合物。
【請求項19】
前記第二の化合物が、下記一般式(31)で表される、
請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の混合物。
【化5】
(前記一般式(31)において、R31、R34、R35、R38、L32及びAr32は、それぞれ、前記一般式(30)におけるR31、R34、R35、R38、L32及びAr32と同義である。)
【請求項20】
31 及びL 32 は、単結合である、
請求項16に記載の混合物。
【請求項21】
前記混合物中、前記第一の化合物及び前記第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数1)の関係を満たす、
請求項16から請求項20のいずれか一項に記載の混合物。
50≦(M/M)×100<100…(数1)
【請求項22】
混合物であって、
第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、
前記第一の化合物は、下記一般式(20)で表され、
前記第二の化合物は、下記一般式(40)で表され、
ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造であり、
前記混合物中、前記第一の化合物及び前記第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数2)の関係を満たす、
混合物。
50<(M/M)×100<100…(数2)
【化6】
(前記一般式(20)及び前記一般式(40)において、
21、L22、L41及びL42は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
41 ~R 48 は、水素原子であり、
21 28 、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
(前記第一の化合物及び前記第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【請求項23】
41及びL42は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基である、
請求項22に記載の混合物。
【請求項24】
41は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、
Ar41は、置換もしくは無置換のナフチル基である、
請求項22又は請求項23に記載の混合物。
【請求項25】
前記第二の化合物が、下記一般式(41)で表される、
請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の混合物。
【化7】
(前記一般式(41)において、R41~R48、L42及びAr42は、それぞれ、前記一般式(40)におけるR41~R48、L42及びAr42と同義である。)
【請求項26】
22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基である、
請求項16から請求項25のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項27】
前記第一の化合物が、下記一般式(22)で表される、
請求項16から請求項26のいずれか一項に記載の混合物。
【化8】
(前記一般式(22)において、R21~R28、L21及びAr21は、それぞれ、前記一般式(20)におけるR21~R28、L21及びAr21と同義である。)
【請求項28】
21は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基である、
請求項16から請求項27のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項29】
Ar21は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基である、
請求項16から請求項28のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項30】
21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基である、
請求項16から請求項29のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項31】
21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である、
請求項16から請求項29のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項32】
21~R28は、水素原子である、
請求項16から請求項31のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項33】
前記混合物中、前記第一の化合物及び前記第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数3)の関係を満たす、
請求項1から請求項32のいずれか一項に記載の混合物。
60≦(M/M)×100<100…(数3)
【請求項34】
前記第一の化合物及び前記第二の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基である、
請求項1から請求項33のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項35】
前記混合物は、膜又は層ではない、
請求項1から請求項34のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項36】
陽極と、
陰極と、
前記陽極及び前記陰極の間に配置され、請求項1から請求項35のいずれか一項に記載の混合物を同一蒸着源から蒸着して成膜された有機層と、を有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項37】
求項36に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した、電子機器。
【請求項38】
前記第一の化合物と前記第二の化合物とを混合して請求項1から請求項35のいずれか一項に記載の混合物を準備する工程と、
前記混合物を同一蒸着源に導入する工程と、
前記蒸着源を加熱して、前記混合物を基板に成膜する工程と、を含む、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という場合がある。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が発光層に注入され、また陰極から電子が発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子が25%の割合で生成し及び三重項励起子が75%の割合で生成する。
有機EL素子は、携帯電話及びテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されている。有機EL素子の性能向上を図るため、有機EL素子に用いる化合物について様々な検討がなされている。有機EL素子の性能としては、例えば、輝度、発光波長、色度、発光効率、駆動電圧及び寿命が挙げられる。
【0003】
また、有機EL素子が含む有機層の成膜方法についても検討がなされている。例えば、特許文献1には、少なくとも一種の有機発光ホスト材料と少なくとも一種の発光性有機ドーパント材料とを含む蒸着可能な均質固体混合物を蒸着して有機発光デバイスにおける層を形成する含む蒸着方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-25770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL素子における有機層の成膜方法としては、蒸着法及びスパッタリング法等の乾式成膜法が使用されている。ところで、乾式成膜法で有機層を成膜するときに、成膜対象の基板等の支持体だけでなく、成膜装置内に嵩高い付着膜が形成される場合がある。このように、有機層を構成する有機化合物の種類によっては、成膜装置内に嵩高い付着膜が形成される場合がある。嵩高い付着膜が成膜装置内に形成されると、気化した有機材料が基板等の支持体へ向かう経路が狭くなったり、塞がれたりして、所望の領域に有機化合物を選択的に付着させ難くなる。そのため、成膜装置内に嵩高い付着膜が形成された場合には成膜を停止して、付着膜を除去する必要があり、有機EL素子の生産効率が低下する。
【0006】
本発明は、有機EL素子の有機層を乾式成膜法で形成する際に、嵩高い付着膜の形成を抑制できる混合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、性能を維持することができ、かつ製造効率が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することも目的とする。
また、本発明は、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供することも目的とする。
また、本発明は、当該混合物を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、混合物であって、第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、前記第一の化合物は、下記一般式(10)で表され、前記第二の化合物は、下記一般式(20)で表され、ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である、混合物が提供される。
【0008】
【化1】
【0009】
(前記一般式(10)及び前記一般式(20)において、
12は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11、L21及びL22は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar11、Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11~R18、並びにR21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0010】
本発明の一態様によれば、混合物であって、第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、前記第一の化合物は、下記一般式(20)で表され、前記第二の化合物は、下記一般式(30)で表され、ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である、混合物が提供される。
【0011】
【化2】
【0012】
(前記一般式(20)及び前記一般式(30)において、
21、L22、L31及びL32は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar31及びAr32は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
21~R28、並びにR31~R38は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
ただし、R22、R23、R26、R27、R32、R33、R36及びR37は、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基ではない。)
【0013】
本発明の一態様によれば、混合物であって、第一の化合物と、第二の化合物と、を含有し、前記第一の化合物は、下記一般式(20)で表され、前記第二の化合物は、下記一般式(40)で表され、ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造であり、前記混合物中、前記第一の化合物及び前記第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数2)の関係を満たす、混合物が提供される。
50<(M/M)×100<100…(数2)
【0014】
【化3】
【0015】
(前記一般式(20)及び前記一般式(40)において、
21、L22、L41及びL42は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
21~R28、並びにR41~R48は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0016】
(前記第一の化合物及び前記第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0017】
本発明の一態様によれば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置され、前述の本発明の一態様に係る混合物を同一層に含む有機層と、を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置され、前述の本発明の一態様に係る混合物を同一蒸着源から蒸着して成膜された有機層と、を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0019】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した、電子機器が提供される。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記第一の化合物と前記第二の化合物とを混合して前述の本発明の一態様に係る混合物を準備する工程と、前記混合物を同一蒸着源に導入する工程と、前記蒸着源を加熱して、前記混合物を基板に成膜する工程と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の一態様によれば、有機EL素子の有機層を乾式成膜法で形成する際に、嵩高い付着膜の形成を抑制できる混合物を提供できる。
また、本発明の一態様によれば、性能を維持することができ、かつ製造効率が高い有機EL素子を提供できる。
また、本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る有機EL素子を搭載した電子機器を提供できる。
また、本発明の一態様によれば、本発明の一態様に係る混合物を用いて有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
図2A】実施例1に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図2B】実施例1に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図3A】実施例2に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図3B】実施例2に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図4A】実施例3に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図4B】実施例3に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図5A】実施例4に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図5B】実施例4に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図6A】実施例5に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図6B】実施例5に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図7A】比較例1に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図7B】比較例1に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
図8A】比較例2に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)である。
図8B】比較例2に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0024】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0025】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0026】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0027】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0028】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0029】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0030】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0031】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0032】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0033】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基、
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0037】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0038】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0039】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0040】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0041】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0042】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0043】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCHである。ただし、X及びYのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYの少なくともいずれかがNH、又はCHである場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCHから1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0047】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及びビフェニリルキナゾリニル基。
【0048】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0049】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0050】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0051】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、X及びYの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びX及びYの一方がCHである場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0052】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0053】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0054】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0055】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0056】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0057】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0058】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0059】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基。
【0060】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0061】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0062】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0063】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0064】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0065】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0066】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0067】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0068】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0069】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0070】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0071】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0072】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0073】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0074】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0075】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0076】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0077】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0078】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0079】
【化8】
【0080】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0081】
【化9】
【0082】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合位置を表す。
【0083】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0084】
【化10】
【0085】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合位置を表す。
【0086】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0087】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0088】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0089】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0090】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-68)のいずれかの基である。
【0091】
【化11】
【0092】
【化12】
【0093】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合位置を表す。
【0094】
【化13】
【0095】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合位置を表す。
【0096】
【化14】
【0097】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合位置を表す。
【0098】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0099】
【化15】
【0100】
【化16】
【0101】
【化17】
【0102】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0103】
【化18】
【0104】
【化19】
【0105】
【化20】
【0106】
【化21】
【0107】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0108】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0109】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0110】
【化22】
【0111】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0112】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環Qを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0113】
【化23】
【0114】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環Qを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環Q及び環Qは、R922を共有する。
【0115】
【化24】
【0116】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環Q及び環Qは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環Q、及び環Qは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環Qと環Qとは、環Qと環Qとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環Qがベンゼン環であれば、環Qは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環Qがナフタレン環であれば、環Qは、縮合環である。
【0117】
「不飽和の環」とは、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を意味する。「飽和の環」とは、脂肪族炭化水素環、又は非芳香族複素環を意味する。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の元素で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環Qは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の元素とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環Qを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0118】
ここで、「任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。任意の元素において(例えば、炭素元素、又は窒素元素の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素元素以外の任意の元素を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0119】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0120】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0121】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0122】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0123】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0124】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0125】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【0126】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る混合物は、2種以上の化合物が混合された混合物である。本実施形態に係る混合物は、少なくとも第一の化合物及び第二の化合物を含有する。本実施形態に係る混合物が含有する2種以上の化合物は、互いに異なる構造を有する化合物である。本明細書において、本実施形態に係る混合物が含有する2種以上の化合物同士が水素原子の種類(軽水素、重水素及び三重水素)のみで相違する場合は、互いに異なる構造ではない。
本実施形態に係る混合物が含有する2種以上の化合物は、下記一般式(10)で表される化合物、一般式(20)で表される化合物、一般式(30)で表される化合物及び一般式(40)で表される化合物からなる群から選択される2種以上の化合物である。
【0127】
本実施形態に係る混合物は、例えば、以下の第1、第2又は第3の態様に係る混合物であることが好ましい。
【0128】
(第1の態様に係る混合物)
第1の態様に係る混合物は、第一の化合物として、下記一般式(10)で表される化合物を含有し、第二の化合物として、下記一般式(20)で表される化合物を含有し、ただし、第一の化合物と第二の化合物とは、互いに異なる構造である。
【0129】
【化25】
【0130】
(前記一般式(10)及び前記一般式(20)において、
12は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11、L21及びL22は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar11、Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
11~R18、並びにR21~R28は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0131】
本実施形態において、第一の化合物及び第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。
【0132】
第1の態様に係る混合物において、L12は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0133】
第1の態様に係る混合物において、第一の化合物が、下記一般式(11)で表されることが好ましい。
【0134】
【化26】
【0135】
(前記一般式(11)において、R11~R18、L11及びAr11は、それぞれ、前記一般式(10)におけるR11~R18、L11及びAr11と同義である。)
【0136】
第1の態様に係る混合物において、L11は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0137】
第1の態様に係る混合物において、Ar11は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。
【0138】
第1の態様に係る混合物において、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることが好ましい。
【0139】
第1の態様に係る混合物において、R11~R18は、水素原子であることが好ましい。
【0140】
第1の態様に係る混合物において、R21~R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0141】
第1の態様に係る混合物において、R21~R28は、水素原子であることが好ましい。
【0142】
第1の態様に係る混合物において、L21及びL22は、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、Ar21及びAr22は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。
【0143】
第1の態様に係る混合物において、L21は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、Ar21は、置換もしくは無置換のナフチル基であることが好ましい。
【0144】
第1の態様に係る混合物において、第二の化合物が、下記一般式(21)で表されることが好ましい。
【0145】
【化27】
【0146】
(前記一般式(21)において、R21~R28、L22及びAr22は、それぞれ、前記一般式(20)におけるR21~R28、L22及びAr22と同義である。)
【0147】
第1の態様に係る混合物中、第一の化合物及び第二の化合物の合計質量Mと、第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。
50≦(M/M)×100<100…(数1)
【0148】
(第2の態様に係る混合物)
第2の態様に係る混合物は、第一の化合物として、下記一般式(20)で表される化合物を含有し、第二の化合物として、下記一般式(30)で表される化合物を含有し、ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である。
【0149】
【化28】
【0150】
(前記一般式(20)及び前記一般式(30)において、
21、L22、L31及びL32は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar31及びAr32は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
21~R28、並びにR31~R38は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
ただし、R22、R23、R26、R27、R32、R33、R36及びR37は、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基ではない。)
【0151】
第2の態様に係る混合物において、R31~R38は、水素原子であることが好ましい。
【0152】
第2の態様に係る混合物において、L31及びL32は、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0153】
第2の態様に係る混合物において、L31は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、かつAr31は、置換もしくは無置換のナフチル基であることが好ましい。
【0154】
第2の態様に係る混合物において、第二の化合物が、下記一般式(31)で表されることが好ましい。
【0155】
【化29】
【0156】
(前記一般式(31)において、R31、R34、R35、R38、L32及びAr32は、それぞれ、前記一般式(30)におけるR31、R34、R35、R38、L32及びAr32と同義である。)
【0157】
第2の態様に係る混合物中、第一の化合物及び第二の化合物の合計質量Mと、第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。
50≦(M/M)×100<100…(数1)
【0158】
前記一般式(20)で表される第一の化合物及び前記一般式(30)で表される第二の化合物を含有する第2の態様に係る混合物は、電気励起に対し安定である。そのため、第2態様に係る混合物を用いて製造した有機EL素子は、駆動中に劣化しにくい。
【0159】
(第3の態様に係る混合物)
第3の態様に係る混合物は、第一の化合物として、下記一般式(20)で表される化合物を含有し、第二の化合物として、下記一般式(40)で表される化合物を含有し、ただし、前記第一の化合物と前記第二の化合物とは、互いに異なる構造である。
第3の態様に係る混合物中、第一の化合物及び第二の化合物の合計質量Mと、前記第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数2)の関係を満たす。
50<(M/M)×100<100…(数2)
【0160】
【化30】
【0161】
(前記一般式(20)及び前記一般式(40)において、
21、L22、L41及びL42は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar21、Ar22、Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
21~R28、並びにR41~R48は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0162】
第3の態様に係る混合物において、R41~R48は、水素原子であることが好ましい。
【0163】
第3の態様に係る混合物において、L41及びL42は、それぞれ独立に、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、Ar41及びAr42は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。
【0164】
第3の態様に係る混合物において、L41は、置換もしくは無置換のフェニレン基であり、Ar41は、置換もしくは無置換のナフチル基であることが好ましい。
【0165】
第3の態様に係る混合物において、第二の化合物が、下記一般式(41)で表されることが好ましい。
【0166】
【化31】
【0167】
(前記一般式(41)において、R41~R48、L42及びAr42は、それぞれ、前記一般式(40)におけるR41~R48、L42及びAr42と同義である。)
【0168】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、L22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、Ar22は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。
【0169】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、第一の化合物が、下記一般式(22)で表されることが好ましい。
【0170】
【化32】
【0171】
(前記一般式(22)において、R21~R28、L21及びAr21は、それぞれ、前記一般式(20)におけるR21~R28、L21及びAr21と同義である。)
【0172】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、L21は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0173】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、Ar21は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~18のアリール基であることが好ましい。
【0174】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、R21~R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることも好ましい。
【0175】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、R21~R28は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることも好ましい。
【0176】
第2の態様及び第3の態様の混合物の少なくともいずれかに係る混合物において、R21~R28は、水素原子であることが好ましい。
【0177】
本実施形態に係る混合物中、第一の化合物及び第二の化合物の合計質量Mと、第一の化合物の質量Mとが、下記数式(数3)の関係を満たすことが好ましく、下記数式(数4)の関係を満たすことがより好ましく、下記数式(数4A)の関係を満たすことがさらに好ましく、下記数式(数5)の関係を満たすことがよりさらに好ましい。
60≦(M/M)×100<100…(数3)
70≦(M/M)×100<100…(数4)
70≦(M/M)×100<98…(数4A)
70≦(M/M)×100≦90…(数5)
【0178】
本実施形態に係る混合物の第一の化合物及び第二の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0179】
本実施形態に係る混合物の形態は、特に限定されない。本実施形態に係る混合物の形態としては、例えば、固体、粉末、溶液、膜及び層などが挙げられる。本実施形態に係る混合物は、粉末の第一の化合物と、粉末の第二の化合物とが混合された、粉末状の混合物であることも好ましい。本実施形態に係る混合物が固体であることも好ましく、第一の化合物及び第二の化合物を溶融させて混合後、冷却固化させた固体状の混合物であることも好ましい。本実施形態に係る混合物が固体である場合、本実施形態に係る混合物は、粉末の第一の化合物と、粉末の第二の化合物とを用いて成形されたペレット状の混合物でもよい。
本実施形態に係る混合物は、膜又は層ではないことが好ましい。
【0180】
本実施形態に係る混合物によれば、閉塞現象が抑制されることが見出された。
本実施形態に係る第一の化合物を真空蒸着法等の乾式成膜法で成膜していると、経時に伴い、蒸着速度の低下又は蒸着速度の変動が生じ易い傾向にあった。これは、本実施形態に係る第一の化合物は、真空蒸着等の成膜中に防着板及び坩堝端などに付着して結晶成長し易く、結晶成長して形成された第一の化合物の嵩高い膜が蒸着源からの気化ビームを閉塞するためと考えられる。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、第一の化合物に第二の化合物を所定の条件で混合することにより、閉塞現象が抑制されることを見出した。第二の化合物を、第一の化合物に混合することにより、第一の化合物単体を成膜する際に起こり易い結晶成長が抑制され、嵩高い付着物の発生を抑えることができたと考えられる。第二の化合物が第一の化合物と異なる結晶形態を有する化合物であれば、第一の化合物に少量の第二の化合物を混合することで、それぞれの結晶成長が阻害され、嵩高い付着物の発生を抑制できると考えられる。
【0181】
本実施形態に係る混合物によれば、有機EL素子の有機層を乾式成膜法で形成する際に、嵩高い付着膜の形成を抑制できる。
【0182】
(第一の化合物及び第二の化合物の製造方法)
本実施形態に係る第一の化合物及び第二の化合物は、公知の方法により製造でき、又は当該方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることで、製造できる。
【0183】
(第一の化合物及び第二の化合物の具体例)
本実施形態に係る第一の化合物及び第二の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。本実施形態に係る混合物の具体例は、例えば、前述の第1、第2及び第3の態様に係る混合物の条件に合致するように、以下の化合物の群から選択した第一の化合物及び第二の化合物を含有する。ただし、本発明は、これら具体例に限定されない。
【0184】
【化33】
【0185】
【化34】
【0186】
【化35】
【0187】
【化36】
【0188】
【化37】
【0189】
【化38】
【0190】
【化39】
【0191】
【化40】
【0192】
【化41】
【0193】
【化42】
【0194】
【化43】
【0195】
【化44】
【0196】
【化45】
【0197】
【化46】
【0198】
【化47】
【0199】
【化48】
【0200】
【化49】
【0201】
【化50】
【0202】
【化51】
【0203】
【化52】
【0204】
【化53】
【0205】
【化54】
【0206】
【化55】
【0207】
混合物の具体例が表1~表40に示される。表には、本明細書で例示した化合物H-1~H-225からなる群から選択される互いに異なる2つの化合物を組み合わせて含有する混合物について、番号1~22500が付されている。例えば、番号1の混合物を混合物1と称する。
表中の行に記された化合物及び列に記された化合物によって混合物が含有する化合物の組合せが特定される。例えば、表1において、行に記された化合物H-1及び列に記された化合物H-2を含有する混合物の番号は、1であり、また、行に記された化合物H-10及び列に記された化合物H-5を含有する混合物の番号は、895であり、その他の混合物における化合物の組み合わせについても同様に特定される。表1~表40には、混合物1~22500のそれぞれが含有する化合物の組合せについて示されている。
【0208】
【表1】
【0209】
【表2】
【0210】
【表3】
【0211】
【表4】
【0212】
【表5】
【0213】
【表6】
【0214】
【表7】
【0215】
【表8】
【0216】
【表9】
【0217】
【表10】
【0218】
【表11】
【0219】
【表12】
【0220】
【表13】
【0221】
【表14】
【0222】
【表15】
【0223】
【表16】
【0224】
【表17】
【0225】
【表18】
【0226】
【表19】
【0227】
【表20】
【0228】
【表21】
【0229】
【表22】
【0230】
【表23】
【0231】
【表24】
【0232】
【表25】
【0233】
【表26】
【0234】
【表27】
【0235】
【表28】
【0236】
【表29】
【0237】
【表30】
【0238】
【表31】
【0239】
【表32】
【0240】
【表33】
【0241】
【表34】
【0242】
【表35】
【0243】
【表36】
【0244】
【表37】
【0245】
【表38】
【0246】
【表39】
【0247】
【表40】
【0248】
〔第二実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明の第二実施形態に係る有機EL素子について説明する。
本実施形態に係る有機EL素子は、陽極および陰極の両電極間に有機層を備える。この有機層は、有機化合物で構成される層を少なくとも一つ含む。あるいは、この有機層は、有機化合物で構成される複数の層が積層されてなる。有機層は、無機化合物をさらに含んでいてもよい。本実施形態に係る有機EL素子の有機層は、第一実施形態に係る混合物を含有する。
【0249】
本実施形態に係る有機EL素子は、例えば、例えば、以下の第1又は第2の態様に係る有機EL素子であることが好ましい。
【0250】
(第1の態様に係る有機EL素子)
第1の態様に係る有機EL素子は、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に配置され、第一実施形態に係る混合物を同一層に含む有機層と、を有する。
同一層に含むとは、有機EL素子が複数の有機層を有する場合、複数の有機層のうち1つの同じ層の中に第一実施形態に係る混合物を含有していることを意味する。例えば、第一の有機層が第一の化合物を含有し、当該第一の有機層に直接又は他の有機層を介して接する第二の有機層が第二の化合物を含有する場合は、混合物を構成する第一の化合物及び第二の化合物が、1つの同じ層の中に含まれていないので、同一層に含む場合に該当しない。
【0251】
第1の態様に係る有機EL素子が第1の態様に係る混合物を含有する場合、第二の化合物は、L21が置換もしくは無置換のフェニレン基であり、Ar21が、置換もしくは無置換のナフチル基である場合の化合物であることが好ましい。
【0252】
第1の態様に係る有機EL素子が第1の態様に係る混合物を含有する場合、第二の化合物が、前記一般式(21)で表される化合物であることが好ましい。
【0253】
(第2の態様に係る有機EL素子)
第2の態様に係る有機EL素子は、陽極と、陰極と、陽極及び陰極の間に配置され、第一実施形態に係る混合物を同一蒸着源から蒸着して成膜された有機層と、を有する。
蒸着源は、例えば、第一実施形態に係る混合物を収容可能な坩堝等である。
【0254】
図1に、本実施形態に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、発光層5、電子輸送層8、および電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
本発明は、図1に示す有機EL素子の構成に限定されない。
【0255】
本実施形態に係る有機EL素子の構成についてさらに説明する。以下、符号の記載は省略することがある。
【0256】
(発光層)
本実施形態の有機EL素子において、有機層のうち少なくとも一層は、発光層である。有機層は、例えば、一つの発光層で構成されていてもよいし、有機EL素子に採用され得る層を含んでいてもよい。有機EL素子に採用され得る層としては、特に限定されないが、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層及び障壁層からなる群から選択される少なくともいずれかの層が挙げられる。
本実施形態の有機EL素子は、同一の発光層に、第一実施形態に係る混合物を含有することが好ましい。
【0257】
(発光層のゲスト材料)
発光層は、発光性の高い物質を含む層であり、種々の材料を用いることができる。例えば、発光性の高い物質としては、蛍光を発光する蛍光性化合物又は燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。蛍光性化合物は、一重項励起状態から発光可能な化合物であり、燐光性化合物は三重項励起状態から発光可能な化合物である。
ゲスト材料は、ドーパント材料、エミッター又は発光材料と称する場合もある。
【0258】
発光層に用いることができる青色系の蛍光発光材料として、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。
【0259】
発光層に用いることができる緑色系の蛍光発光材料として、芳香族アミン誘導体等を使用できる。具体的には、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)]-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。
【0260】
発光層に用いることができる赤色系の蛍光発光材料として、テトラセン誘導体、ジアミン誘導体等が使用できる。具体的には、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)などが挙げられる。
【0261】
発光層に用いることができる青色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体が使用される。具体的には、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2-(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)などが挙げられる。
【0262】
発光層に用いることができる緑色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体等が使用される。トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2-ジフェニル-1H-ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。
【0263】
発光層に用いることができる赤色系の燐光発光材料として、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体が使用される。具体的には、ビス[2-(2’-ベンゾ[4,5-α]チエニル)ピリジナト-N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。
また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0264】
(発光層のホスト材料)
発光層としては、上述した発光性の高い物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料は、マトリックス材料と称する場合もある。発光性の高い物質を分散させるための物質としては、各種のものを用いることができ、発光性の高い物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
発光性の高い物質を分散させるための物質(ホスト材料)としては、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、若しくは亜鉛錯体等の金属錯体、2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、若しくはフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、4)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、若しくはクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、3)トリアリールアミン誘導体、若しくは縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物が使用される。具体的には、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα-NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。また、発光性の高い物質(ゲスト材料)を分散させるための物質(ホスト材料)は複数種用いることができる。
具体的には、金属錯体としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などが挙げられる。
複素環化合物としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などが挙げられる。
縮合芳香族化合物としては、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセンなどが挙げられる。
芳香族アミン化合物としては、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα-NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどが挙げられる。
【0265】
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、発光層は、例えば、ホスト材料を発光層の全質量の50質量%以上、含有する。有機EL素子が複数の発光層を有する場合、例えば、複数の発光層は、それぞれ、各発光層の全質量の50質量%以上、ホスト材料を含有する。また、例えば、「ホスト材料」は、発光層の60質量%以上、発光層の70質量%以上、発光層の80質量%以上、発光層の90質量%以上、又は発光層の95質量%以上含まれていてもよい。また、例えば、「ホスト材料」は、発光層の99質量%以下含まれていてもよい。
発光層がホスト材料とドーパント材料とを含有する場合、ホスト材料及びドーパント材料の合計含有率の上限は、100質量%である。
【0266】
本実施形態に係る有機EL素子が同一の発光層に第一実施形態に係る混合物を含有する場合、第一の化合物及び第二の化合物の少なくともいずれかがホスト材料であることが好ましく、第一の化合物及び第二の化合物の両方がホスト材料であることが好ましい。発光層がホスト材料として複数の化合物を含有する場合、ホスト材料としての複数の化合物の合計量が、「層の50質量%以上」である。
【0267】
(基板)
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英及びプラスチック等を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、プラスチック基板等が挙げられる。プラスチック基板を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0268】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0269】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0270】
陽極上に形成されるEL層のうち、陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることができる。
【0271】
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0272】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0273】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0274】
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0275】
(正孔注入層)
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層であればよい。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
なお、有機EL素子中の正孔注入層が複数の化合物を含む場合、それらの化合物の定量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて行うことができる。
正孔注入層に含まれる複数の化合物それぞれについて、単体の膜におけるTOF-SIMSの分子イオンのシグナル強度を測定し、有機EL素子中の正孔注入層をスパッタリングガンにより露出させTOF-SIMSにおける分子イオンのシグナル強度と比較することで、質量比を算出することができる。
【0276】
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等やジピラジノ[2,3-f:20,30-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)も挙げられる。
【0277】
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0278】
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の正孔移動度を有する物質である。
【0279】
正孔輸送層には、CBP、9-[4-(N-カルバゾリル)]フェニル-10-フェニルアントラセン(CzPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t-BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0280】
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0281】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様においては、ベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層で構成されていてもよいし、上記物質からなる層が二層以上積層されて構成されていてもよい。
【0282】
また、電子輸送層には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)などを用いることができる。
【0283】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0284】
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0285】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子の各層のうち、第一実施形態に係る混合物を用いて成膜する有機層は、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法及びイオンプレーティング法等の乾式成膜法で形成する。
その他の層の形成方法は、上記で特に言及した以外には制限されないが、前述の乾式成膜法、又は、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法及びインクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
【0286】
本実施形態の有機EL素子の製造方法は、例えば、第一実施形態で説明した第一の化合物と第二の化合物とを混合して第一実施形態に係る混合物を準備する工程と、当該混合物を同一蒸着源に導入する工程と、当該蒸着源を加熱して、当該混合物を基板に成膜する工程と、を含むことが好ましい。第一実施形態に係る混合物を基板に成膜する工程は、基板に直接する成膜するか、又は、予め基板に成膜された他の有機層等の上に成膜する。
【0287】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した場合を除いて限定されない。一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、膜厚が厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常、有機EL素子の各有機層の膜厚は、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0288】
本実施形態によれば、嵩高い付着膜の形成を抑制できる第一実施形態に係る混合物を用いるので、有機EL素子の製造効率を向上させることができる。また、本実施形態に係る有機EL素子は、第一の化合物を単体で用いて成膜した有機層を備える有機EL素子と比べて、同等の素子性能を維持できる。
【0289】
〔第三実施形態〕
(電子機器)
本実施形態に係る電子機器は、上述の実施形態のいずれかの有機EL素子を搭載している。電子機器としては、例えば、表示装置及び発光装置等が挙げられる。表示装置としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0290】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は、本発明に含まれる。
【0291】
例えば、前記実施形態に係る混合物は、第一の化合物及び第二の化合物以外に、さらに化合物を含んでいてもよい。
【0292】
例えば、発光層は、1層に限られず、複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が複数の有機層を有する場合、少なくとも1つの有機層が、第一の化合物及び第二の化合物を含み、第二実施形態で説明した条件を満たしていればよい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、中間層を介して複数の発光ユニットが積層された、いわゆるタンデム型の有機EL素子であってもよい。
【0293】
また、例えば、発光層の陽極側及び陰極側の少なくとも一方に障壁層を隣接させて設けてもよい。障壁層は、発光層に接して配置され、正孔、電子及び励起子の少なくともいずれかを阻止することが好ましい。
例えば、発光層の陰極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、電子を輸送し、かつ正孔が当該障壁層よりも陰極側の層(例えば、電子輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、電子輸送層を含む場合は、発光層と電子輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、発光層の陽極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、正孔を輸送し、かつ電子が当該障壁層よりも陽極側の層(例えば、正孔輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、正孔輸送層を含む場合は、発光層と正孔輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、励起エネルギーが発光層からその周辺層に漏れ出さないように、障壁層を発光層に隣接させて設けてもよい。発光層で生成した励起子が、当該障壁層よりも電極側の層(例えば、電子輸送層及び正孔輸送層等)に移動することを阻止する。
発光層と障壁層とは接合していることが好ましい。
【0294】
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例
【0295】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0296】
<化合物>
実施例1~5、11A、12A及び13Aに係る混合物及び実施例6~13に係る有機EL素子の製造に用いた前記第一の化合物の構造を以下に示す。
【0297】
【化56】
【0298】
実施例1~5、11A、12A及び13Aに係る混合物及び実施例6~13に係る有機EL素子の製造に用いた前記第二の化合物の構造を以下に示す。
【0299】
【化57】
【0300】
【化58】
【0301】
参考例1に係る混合物に用いた化合物の構造を以下に示す。
【0302】
【化59】
【0303】
実施例6~13及び比較例3~4に係る有機EL素子の製造に用いた、他の化合物の構造を以下に示す。
【0304】
【化60】
【0305】
【化61】
【0306】
【化62】
【0307】
<有機層の成膜及び断面SEM観察>
(実施例1)
・材料の単膜成膜
実施例1に係る混合物を用いて、次のようにして有機層を成膜した。
まず、第一の化合物としての化合物BH-Aを198mg、及び第二の化合物としての化合物BH-Bを2mg、混合して、実施例1に係る混合物を調製した。実施例1に係る混合物は、(M/M)×100=99質量%であり、前記数式(数1)を満たしていた。
次いで、基材として、表面をUV洗浄したガラス基板を用意した。
次に、坩堝に、実施例1に係る混合物を200mg入れた。
真空蒸着装置を用いて実施例1に係る混合物を、基材の洗浄処理面側に成膜した。
成膜した有機層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。
図2Aには、実施例1に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図2Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
【0308】
・SEM観察
上記で作製した有機層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(型番:日立ハイテクノロジーズ製SU8220、観察加速電圧1kV)により観察した。
【0309】
(実施例2~3)
実施例2~3に係る混合物は、それぞれ、第一の化合物の質量M及び第二の化合物の質量Mを表41に示す通りに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。実施例2~3の混合物は、いずれも、前記数式(数1)を満たしていた。
調製した混合物を用いて、真空蒸着装置で実施例1と同様の成膜条件で有機層を成膜した。
図3Aには、実施例2に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図3Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
図4Aには、実施例3に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図4Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
【0310】
(実施例4~5)
実施例4~5に係る混合物は、それぞれ、第二の化合物を表41に示す化合物BH-Cに変更し、第一の化合物の質量M及び第二の化合物の質量Mを表41に示す通りに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。実施例4~5の混合物は、いずれも、前記数式(数1)を満たしていた。
調製した混合物を用いて、真空蒸着装置で実施例1と同様の成膜条件で有機層を成膜した。
図5Aには、実施例4に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図5Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
図6Aには、実施例5に係る混合物を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図6Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
【0311】
(実施例11A)
実施例11Aに係る混合物は、第一の化合物を表41に示す化合物BH-Dに変更し、第二の化合物を表41に示す化合物BH-Cに変更し、第一の化合物の質量M及び第二の化合物の質量Mを表41に示す通りに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。実施例11Aに係る混合物は、前記数式(数1)を満たしていた。
【0312】
(実施例12A)
実施例12Aに係る混合物は、第二の化合物を表41に示す化合物BH-Eに変更し、第一の化合物の質量M及び第二の化合物の質量Mを表41に示す通りに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。実施例12Aに係る混合物は、前記数式(数1)を満たしていた。
【0313】
(実施例13A)
実施例13Aに係る混合物は、第二の化合物を表41に示す化合物BH-Fに変更し、第一の化合物の質量M及び第二の化合物の質量Mを表41に示す通りに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。実施例13Aに係る混合物は、前記数式(数1)を満たしていた。
【0314】
(参考例1)
参考例1に係る混合物は、第二の化合物を化合物BH-Rに変更したこと以外、実施例1と同様にして調製した。参考例1に係る混合物は、前記数式(数1)を満たしていた。
【0315】
実施例11A、12A、13A及び参考例1で調製した混合物を用いて、真空蒸着装置で実施例1と同様の成膜条件で有機層を成膜した。成膜した有機層の断面をSEMで観察した。
【0316】
(比較例1)
比較例1に係る試料として、混合物ではなく、化合物BH-Aだけを含む試料を準備した。比較例1に係る試料を用いて、真空蒸着装置で実施例1と同様の成膜条件で有機層を成膜した。図7Aには、比較例1に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図7Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
【0317】
(比較例2)
比較例2に係る試料として、混合物ではなく、化合物BH-Cだけを含む試料を準備した。比較例2に係る試料を用いて、真空蒸着装置で実施例1と同様の成膜条件で有機層を成膜した。図8Aには、比較例2に係る試料を用いて成膜した有機層の断面SEM像(倍率100倍)が示され、図8Bには、当該有機層の断面SEM像(倍率500倍)が示されている。
【0318】
比較例1に係る試料を用いて成膜した有機層は、化合物BH-Aの単独材料により成膜した結果、比較例1の断面SEM像が示すように、基材上に嵩高く結晶成長していた。比較例1に対して、実施例1~5に係る混合物を用いて成膜すると、実施例1~5のそれぞれの断面SEM像が示すように、緻密で嵩高さが抑制された有機層が成膜されたことが確認された。実施例11A、12A、13A及び参考例1に係る混合物を用いて成膜すると、緻密で嵩高さが抑制された有機層が成膜されたことが確認された。
【0319】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の作製>
有機エレクトロルミネッセンス素子を以下のように作製し、評価した。
【0320】
(実施例6)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄を行った後、UVオゾン洗浄を1分間行った。ITOの膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付き前記ガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして化合物HT-1と、化合物HAとを共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。正孔注入層における化合物HT-1の濃度を97質量%とし、化合物HAの濃度を3質量%とした。
次に、正孔注入層上に、化合物HT-1を蒸着し、膜厚80nmの第一正孔輸送層を形成した。
次に、この第一正孔輸送層上に、化合物HT-2を蒸着し、膜厚10nmの第二正孔輸送層を形成した。
次に、この第二正孔輸送層上に、実施例1に係る混合物(化合物BH-Aと化合物BH-Bとの混合物)と、化合物BD-1とを共蒸着し、膜厚20nmの発光層を形成した。発光層における化合物BH-A及び化合物BH-Bの合計濃度を99質量%とし、化合物BD-1の濃度を1質量%とした。
次に、この発光層上に、化合物ET-1を蒸着し、膜厚10nmの第一電子輸送層を形成した。
次に、この第一電子輸送層上に、化合物ET-2を蒸着し、膜厚20nmの第二電子輸送層を形成した。
次に、この第二電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。
そして、この電子注入層上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、膜厚80nmの金属Al陰極を形成した。
以上のようにして、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製した。
実施例6の有機EL素子の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT-1:HA(10,97%:3%)/HT-1(80)/HT-2(10)/BH-A,BH-B:BD-1(20,99%:1%)/ET-1(10)/ET-2(20)/LiF(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
同じく括弧内において、パーセント表示された数字は、例えば、HT-1:HA(10,97%:3%)の場合、正孔注入層における化合物HT-1及び化合物HAの割合(質量%)が、HT-1:HA=97質量%:3質量%であることを示す。また、BH-A,BH-B:BD-1(20,99%:1%)におけるパーセント表示された数字は、発光層における、化合物BH-A及び化合物BH-Bの合計と、化合物BD-1との割合(質量%)が、(BH-A及びBH-B):BD-1=99質量%:1質量%であることを示す。以下、同様の表記とする。
【0321】
(実施例7~13)
実施例7~13に係る有機EL素子は、それぞれ、発光層の形成に用いた混合物を表41に示す混合物に変更したこと以外、実施例6に係る有機EL素子と同様にして作製した。
【0322】
(比較例3~4)
比較例3~4に係る有機EL素子は、それぞれ、発光層の形成に用いた混合物を表41に示す混合物に変更したこと以外、実施例6に係る有機EL素子と同様にして作製した。
【0323】
<有機EL素子の評価>
実施例6~13並びに比較例3~4で作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表41に示す。
【0324】
・外部量子効率EQE
電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0325】
・寿命(LT95)
電流密度が50mA/cmとなるように素子に電圧を印加し、分光放射輝度計CS-200(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、初期輝度に対して輝度が95%となるまでの時間(単位:h)を測定した。
本明細書において、初期輝度に対して輝度が95%となるまでの時間を「寿命(LT95)」と示す場合がある。
【0326】
・閉塞
閉塞については、上記<有機層の成膜及び断面SEM観察>にて、ガラス基板上に単膜を成膜した状態での測定結果に基づき、次のように判定した。
A:SEM画像にて嵩高さが抑制された緻密な厚膜が観測された。
B:SEM画像にて若干嵩高い厚膜が観測された。
C:SEM画像にて嵩高い厚膜が観測された。
D:SEM画像にて非常に嵩高い厚膜が観測された。
【0327】
【表41】
【0328】
実施例6~13に係る有機EL素子によれば、第一の化合物に対して第二の化合物を添加した混合物を用いて発光層を成膜した場合でも、比較例3及び比較例4に係る有機EL素子と同等の素子性能を発揮した。
前述の実施例1~5、11A、12A及び13Aでの検証結果も踏まえると、前記実施形態に係る第一の化合物及び第二の化合物を含有する混合物を用いて乾式成膜法で有機層を成膜することで、嵩高い付着膜の形成を抑制でき、製造効率の低下及び素子性能を大幅な低下を招くことなく有機EL素子を製造できることが分かった。
【符号の説明】
【0329】
1…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、5…発光層、6…正孔注入層、7…正孔輸送層、8…電子輸送層、9…電子注入層。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B