(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】固体ソースプリカーサ容器
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20250415BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021073312
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-04-09
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャンチウ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】アンキト・キムティー
(72)【発明者】
【氏名】スダンシュ・ビヤニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ロバート・バッケ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ジェームズ・シェロ
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-112994(JP,A)
【文献】特開2013-028854(JP,A)
【文献】特開2011-127217(JP,A)
【文献】特開2004-068081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0009435(US,A1)
【文献】国際公開第2009/125497(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/034790(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ本体であって、前記コンテナ本体の内部領域を画定する外側壁および底面を有する、コンテナ本体と、
前記コンテナ本体の前記内部領域内に配置された複数のポケットであって、前記複数のポケットのそれぞれが一定量の固体ソースプリカーサを含有するように構成された、複数のポケットと、
前記コンテナ本体を係合するように構成されたふたであって、前記コンテナ本体に接続されると、前記コンテナ本体の前記内部領域を封入する、ふたと、
前記コンテナ本体の前記内部領域内の流体流路であって、前記複数のポケットの上方かつ前記ふたの底面の下方に形成され、前記複数のポケットのそれぞれの少なくとも一部の上を通過する経路に沿って入口端と出口端との間に延在する、流体流路と、
前記コンテナ本体の第1の組の対向側壁間に延在する第1の複数の平行な分割壁と、
前記コンテナ本体の第2の組の対向側壁間に延在する第2の複数の平行な分割壁であって、前記第1および第2の複数の分割壁が交差して前記複数のポケットのマトリクスを画定する、第2の複数の平行な分割壁と、
を含む反応物ソース容器。
【請求項2】
前記ふたの頂面に取り付けられた入口弁および出口弁であって、各弁が前記ふたを通る流体通路に接続している、入口弁および出口弁
をさらに含む、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記ふたが前記コンテナ本体に接続されると、前記入口弁は前記流体流路の前記入口端と流体連通し、前記出口弁は前記流体流路の前記出口端と流体連通する、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記複数のポケットのそれぞれは、
閉鎖底端と、
開放上端と、
前記閉鎖底端と前記開放上端との間に延在する少なくとも1つの側壁表面であって、前記閉鎖底端、前記開放上端および前記少なくとも1つの側壁表面が、前記ポケットの内部容積を画定する、少なくとも1つの側壁表面と、
を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記複数のポケットの各ポケットは共通の寸法を有する、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記複数のポケットの各ポケットは長方形角柱を含む、請求項4に記載の容器。
【請求項7】
前記コンテナ本体の前記内部領域内に配置するために構成されたインサートであって、前記複数のポケットが前記インサート内に形成されている、インサート
をさらに含む、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記インサートは少なくとも第1の層および第2の層を含み、前記第1および第2の層は前記コンテナ本体の前記内部領域内で積み重ねられて集合的に前記複数のポケットを画定する、請求項
7に記載の容器。
【請求項9】
前記インサートの前記第1および第2の層はセラミック材料から形成されている、請求項
7に記載の容器。
【請求項10】
前記流路は前記入口端と前記出口端との間に非直接的流路を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
前記第1の複数の分割壁および前記第2の複数の分割壁はそれぞれ、前記第1の組の対向側壁および前記第2の組の対向側壁間に等しく間隔を置いている、請求項
1に記載の容器。
【請求項12】
前記第1および第2の複数の分割壁は、前記入口端と前記出口端との間に前記流体流路を画定するように高さが異なる、請求項
1に記載の容器。
【請求項13】
コンテナ本体であって、前記コンテナ本体の内部領域を画定する外側壁および底面を有する、コンテナ本体と、
前記コンテナ本体の第1の組の対向側壁間に延在する第1の複数の平行な分割壁と、
前記コンテナ本体の第2の組の対向側壁間に延在する第2の複数の平行な分割壁であって、前記第1および第2の複数の分割壁は交差して前記コンテナ本体の前記内部領域内にポケットのマトリクスを画定し、ポケットの前記マトリクスのそれぞれは一定量の固体ソースプリカーサを含有するように構成された、第2の複数の平行な分割壁と、
前記コンテナ本体を係合するように構成されたふたであって、前記コンテナ本体に接続されると、前記コンテナ本体の前記内部領域を封入する、ふたと、
前記ふたの底面、前記コンテナの前記外側壁並びに前記第1および第2の複数の分割壁によって画定された流体流路であって、前記流体流路は入口端と出口端との間に延在し、ポケットの前記マトリクスのそれぞれの上面の上を通過する、流体流路と、
を含む反応物ソース容器。
【請求項14】
ポケットの前記マトリクスはそれぞれ共通の寸法を有する、請求項
13に記載の容器。
【請求項15】
前記流体流路は前記入口端と前記出口端との間に非直接的流路を含む、請求項
13に記載の容器。
【請求項16】
前記ふたの頂面に取り付けられた入口弁および出口弁であって、各弁は前記ふたを通る流体通路に接続しており、前記ふたが前記コンテナ本体に接続されると、前記入口弁は前記流体流路の前記入口端と流体連通し、前記出口弁は前記流体流路の前記出口端と流体連通する、入口弁および出口弁
をさらに含む、請求項
13に記載の容器。
【請求項17】
反応物ソース容器で用いるための方法であって、
前記反応物ソース容器のコンテナ本体の内部領域にアクセスするステップであって、前記内部領域は複数の個別ポケットを含む、ステップと、
圧縮固体プリカーサの事前形成ブロックを前記複数の個別ポケットのそれぞれに挿入するステップと、
前記コンテナ本体にふたを取り付けて前記内部領域を封入するステップと、
前記反応物ソース容器の温度を上げるとともに、前記反応物ソース容器の前記内部領域を通って流路入口端と流路出口端との間に延在する流路を通してキャリアガスを導くステップであって、前記キャリアガスは蒸発プリカーサを前記容器から除去する、ステップと、
を
含み、
前記反応物ソース容器は、
前記コンテナ本体の第1の組の対向側壁間に延在する第1の複数の平行な分割壁と、
前記コンテナ本体の第2の組の対向側壁間に延在する第2の複数の平行な分割壁であって、前記第1および第2の複数の分割壁が交差して前記複数の個別ポケットのマトリクスを画定する、第2の複数の平行な分割壁と、
を含む、
方法。
【請求項18】
前記キャリアガスは、前記流路入口端と前記流路出口端との間を通過するとき、前記複数の個別ポケットのそれぞれの頂面の上で導かれる、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記キャリアガスは前記流路入口端と前記流路出口端との間の少なくとも部分的に蛇行する経路の上で導かれる、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に気相リアクタおよびシステムに関する。特に、本開示は、固体ソースプリカーサから反応ガスを送達するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面(たとえば、半導体ウエハ)上に材料を堆積させてエッチングすることを含む、さまざまな用途のために、化学蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、および原子層堆積(ALD)のような、気相リアクタシステムを用いることができる。たとえば、気相リアクタシステムを用いて基板上に層を堆積および/またはエッチングし、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイデバイス、光起電デバイス、微小電気機械システム(MEMS)、などを形成することができる。
【0003】
気相リアクタシステムにおいて、異なる反応物の反応ガス(本明細書では「プリカーサガス」とも呼ぶ)が反応チャンバにおける1つまたは複数の基板に送達される。反応チャンバは通常、1つまたは複数の基板ホルダ(サセプタのような)上に支持された1つまたは複数の基板を含み、基板および基板ホルダは所望のプロセス温度に維持されている。反応ガスは互いに、または基板の表面と反応して基板上に薄膜を形成することができ、成長率は、とりわけ、反応ガスの温度または量によって制御されている。
【0004】
いくつかの用途において、反応ガスはガス状形態で反応物ソース容器に保管される。このような用途において、反応蒸気は周囲(すなわち、通常)圧力および温度でしばしばガス状である。このようなガスの例は、窒素、酸素、水素、およびアンモニアを含む。しかしながら、いくつかの場合において、周囲圧力および温度で液体または固体であるソース化学物質(「プリカーサ」)の蒸気が用いられる。これらのソース化学物質は、反応プロセスのために十分な量の蒸気を生むように加熱されねばならないことがある。いくつかの固体物質(本明細書では「固体ソースプリカーサ」と呼ぶ)は、室温での蒸気圧が非常に低いため、十分な量の反応蒸気を生むように加熱、および/または非常に低い圧力で維持されなければならない。
【0005】
典型的な固体ソースプリカーサ配送システムは、固体ソースプリカーサ容器および加熱システム(たとえば、放射熱ランプ、抵抗性ヒータなど)を含む。容器は固体プリカーサ(たとえば、粉末形態で)を含む。加熱システムは容器を加熱して容器におけるプリカーサガスの蒸気圧を増加させる。別に述べない限り、加熱システムは、固体プリカーサが蒸発する(たとえば、昇華する)ように固体プリカーサを加熱する。したがって、容器は昇華器と呼ばれるときがある。容器は、容器を通して不活性キャリアガス(たとえば、窒素)を流して蒸発プリカーサを基板反応チャンバに運搬するための入口および出口を有する。通常、容器を通る経路は、キャリアガスが容器を通って移動する距離を増加させ、これによってキャリアガスの蒸発プリカーサとの飽和度を増加させるように非直接的経路である。キャリアガスはそれとともに容器出口を通してプリカーサ蒸気を押して最終的に基板反応チャンバに流す。容器は通常、容器の内容物を容器外部から流体隔離するための隔離弁を含む。
【0006】
このセクションに記載した、課題および解決策の議論を含む、いかなる議論も、単に本開示に文脈を提供する目的で本開示に含められており、議論のいくつかまたはすべてが、発明がなされたときに知られていた、またはさもなければ先行技術を構成しているという自認として取られるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この概要は、簡素化された形態における概念の選択を導入するために提供される。これらの概念は、以下の開示の例の実施形態の詳細な説明においてさらに詳細に説明する。この概要は、特許請求された主題の重要な特徴または必須の特徴を必ずしも特定するようには意図されず、特許請求された主題の範囲を限定するために用いられるようにも意図されない。
【0008】
本開示は一般に固体ソースプリカーサ配送システムを対象とする。より具体的には、本開示は固体ソースプリカーサ容器を対象とし、これは、容器内に保管された一定量の固体プリカーサを蒸発させるために利用される。開示されたソース容器は、一定量のプリカーサを保管するとともに容器を通してキャリアガスを導くために用いられる単一の蛇行チャネルを、容器の内部内の複数の個別キャビティまたはポケットと置き換えている。各個別ポケットをプリカーサで充填することができる。一構成において、粉末状プリカーサを蛇行チャネルに詰めるときに達成することができるより通常高い密度を有する圧縮プリカーサの事前形成ブロックでポケットを充填することができる。固体プリカーサ材料の密度の増加により、ソース容器の容量が増加し、その結果、ソース容器の交換および/または補充の間隔が長くなる。
【0009】
一構成において、コンテナ本体およびふたを含む反応物ソース容器が提供される。ふたは、コンテナ本体に付着して、1つまたは複数の側壁および底面によって画定されたコンテナ本体の内部領域を封入するように構成されている。一定量の固体ソースプリカーサを保持するようにそれぞれ構成されている複数の個別ポケットが、コンテナ本体の内部領域内に形成されている。一構成において、ポケットは一様なサイズとする(たとえば、共通の寸法を有する)ことができる。個別ポケットは任意の構成を有することができる。たとえば、ポケットは円筒状、長方形角柱状などとすることができる。一般に、各ポケットは、閉鎖下方または底端、1つまたは複数の側壁および開放上端を有する。このような一構成において、ポケットは圧縮固体プリカーサの事前形成ブロックを受容することができる(たとえば、開放上端を通して)。この構成により、ソース容器を充填することが容易になる。ソース容器の内部内の複数の個別ポケットはそれぞれ、流体経路入口端と流体経路出口端との間で容器の内部を通過する流体流経路に露出している。この流体経路はソース容器内の各個別ポケットの上を通過し、ソース容器から蒸発プリカーサを運搬することが可能になる。各ポケットの開放端の上で流体経路を決めるため、経路は流体経路入口端と流体経路出口端との間で非直接的(たとえば、蛇行)とすることができる。
【0010】
一構成において、コンテナ本体は二片構造を有する。この構成において、コンテナ本体は、複数のポケットが形成されているインサートを受容するベースを有することができる。さらなる一構成において、インサートは、複数のポケットを形成するように積み重ねられている多層に形成することができる。このような構成は、硬いおよび/または砕けやすい材料で作業するときに有益であり得る。
【0011】
別の一構成において、複数のポケットは、コンテナ本体の内部内で集合的にポケットのマトリクスを画定する複数の交差分割壁によって形成することができる。一構成において、分割壁は、コンテナ本体全体での熱伝導を強化するように均等に間隔を置くことができる。このような一構成において、コンテナ本体は高度の対称性を有することができる。
【0012】
これらおよび他の実施形態は、添付の図面を参照するいくつかの実施形態の次の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。本開示は、開示されたいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【0013】
次の例示的な図面に関連して考慮されるときの詳細な説明および特許請求の範囲を参照することによって、本開示の例示的な実施形態のより完全な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】気相リアクタシステムの一実施形態を示す図である。
【
図2】固体プリカーサソース容器の一実施形態を示す図である。
【
図3A】先行技術の固体プリカーサソース容器のコンテナ本体を示す図である。
【
図3B】先行技術の固体プリカーサソース容器のコンテナ本体を示す図である。
【
図4】固体プリカーサソース容器の二片コンテナ本体の一実施形態を示す図である。
【
図5A】
図4の二片コンテナ本体で用いるためのインサートを示す図である。
【
図7】固体ソースプリカーサ容器の一片コンテナ本体の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面における要素は簡素化および明確化のために例示され、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されるであろう。たとえば、図面における要素のいくつかの寸法を他の要素に対して誇張して、本開示の例示された実施形態の理解を向上させることに役立てることができる。
【0016】
以下に提供する例示的な実施形態の説明は単に例示的であり、説明の目的のみが意図されている。次の説明は本開示または請求項の範囲を限定するように意図されない。また、述べられた特徴を有する複数の実施形態の記載は、追加の特徴を有する他の実施形態またはその述べられた特徴の異なる組み合わせを組み込んでいる他の実施形態を除外するように意図されない。
【0017】
本開示は一般に、改善された固体ソースプリカーサ容器、装置および方法に関する。開示された実施形態により、反応物蒸気をすぐに利用できるようにしながら、固体ソースプリカーサ容器の改善された保守容易性(たとえば、再充填)を提供することが可能になる。
【0018】
図1は例示的な気相リアクタシステム100を概略的に示し、これは、反応チャンバ104、処理中に基板116を保持するサセプタ106、基板116の表面に1つまたは複数の反応物を分配するガス分配システム108を含む、リアクタ102、固体反応物ソース110、第2の反応物ソース112およびキャリア/パージガスソース114を含む。反応物ソースおよびキャリア/パージガスソースは、流体導管およびさまざまな弁またはコントローラを介して反応チャンバ104に流体結合されている。このシステムはまた真空ソース118を含む。固体反応物ソースは、固体プリカーサソース容器20から生成された気相反応物を気相リアクタ102内へ供給するように構成されている。固体ソース容器20はプリカーサまたはソース化学物質(図示せず)を含有し、これは標準状態(すなわち、室温および大気圧)下で固体である。固体プリカーサはソース容器20内で蒸発し、これはプリカーサの蒸発温度以上に維持することができる。結果として生じた蒸発反応物は次いで反応チャンバ104内へ供給される。ソース容器20は反応物ソースキャビネット12に配置することができ、これは個別に排気および/または熱制御することができる。例示的なシステム100は、限定しないが、堆積、たとえば、化学蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)または原子層堆積(ALD)に用いることができる。
【0019】
図1に見られるように、プリカーサソース容器20は導管22を介してリアクタ102に流体結合されている。導管22における弁24を選択的に開くことにより、プリカーサソース容器20からリアクタ102へ気相反応物(たとえば、蒸発した固体プリカーサ)を供給することが可能になる。蒸発プリカーサのためのキャリアガスとして好ましくは非活性または不活性ガスが用いられる。キャリアガス(たとえば、窒素またはアルゴン)は、キャリアガス供給導管26を通してプリカーサソース容器20内へ供給することができる。この点において、プリカーサソース容器20は、キャリアガス供給導管26への接続のための少なくとも1つの入口弁44および導管22を介したリアクタ102への接続のための少なくとも1つの出口弁42を含む。キャリアガス供給導管26は少なくとも1つの弁28を含み、これは、キャリアガスのソース(図示せず)からソース容器20の内部を流体隔離するために用いることができる。
【0020】
プリカーサソース容器20は反応物ソースキャビネット12内に配置することができる。キャビネット12の内部空間18を減少圧力に維持して、たとえば、キャビネット12内の構成要素(たとえば、ソース容器)の放射加熱を促進するとともにこのような構成要素を互いに熱隔離して一様な温度場を容易にすることができる。他の変形例において、キャビネットは排気されず、対流強化デバイス(たとえば、ファン、クロスフローなど)を含む。図示のキャビネット12は、放射線ヒータのような、1つまたは複数の加熱デバイス8を含む。加えて、リフレクタ(図示せず)を設けることができ、これは、キャビネット12内の構成要素を包囲して加熱デバイス8によって生成された放射熱をキャビネット12内に配置された構成要素へ反射させるように構成することができる。キャビネット12の内壁、天井および/または床にリフレクタを設けることができる。導管22およびキャビネット12とリアクタ102との間の任意の弁を加熱するための追加のヒータ(図示せず)を設けて、プリカーサガスが凝縮することを防止することができる。
【0021】
図2は固体プリカーサソース容器20の一実施形態を示す。図示のように、プリカーサソース容器20はコンテナ本体30およびふた40を含む。図示のように、ふた40はコンテナ本体30から除去される。しかしながら、ふた40は、組み立てると、コンテナ本体30に固定されることが理解されるであろう。図示の容器20は、ねじまたはナットおよびボルトの組み合わせのような、固定要素(図示せず)によって互いに固定される。固定要素は、ふたの周囲およびコンテナ本体30のフランジの周囲に延在する並んだ嵌合孔(たとえば、ボルト穴)内へ、またはこれを通って延在するように適合している。当業者は、さまざまな代替方法によってこのアセンブリを互いに固定することができるということを理解するであろう。本明細書に記載するように、コンテナ本体30は一定量の固体プリカーサを保持するように構成されている。ふた40は、コンテナ本体の内部流路を通してガス流(たとえば、キャリアガス)を導いて蒸発プリカーサ(たとえば、反応ガス)を除去するように構成されている。固体ソースプリカーサが枯渇して交換の必要があるとき、ソース容器20全体を、ソース化学物質の全量を有する新たなものと交換することが習慣的である。
【0022】
図示の実施形態において容器のふた40は入口弁44および出口弁42を含む。入口弁44は、キャリアガス導管26(
図1参照)を介してキャリアガスを受け取る入口を有する。入口弁44は、コンテナ本体を通る内部流路の入口端と流体連通している出口を有する。すなわち、入口弁44の出口は、ソース容器が組み立てられると、コンテナ本体の内部と連通しているふたを通る流体通路に接続する。出口弁42は、コンテナ本体を通る内部流路の出口端と流体連通している(たとえば、ふたを通る流体通路を介して)入口を有する。出口弁は、ソース容器20とリアクタとの間に延在する流体導管22と流体連通している出口を有する。流体導管と出口弁との間に、さまざまな弁、マニフォールドおよび導管を配置することができる。使用中、キャリアガスは入口弁44を通ってソース容器内へ流れ、コンテナ本体30の内部を通って出口弁42から流出し、ソース容器を出る。図示の実施形態において、ふた40は、入口および出口弁44、42間に配置された通気孔またはパージ弁46をさらに含む。パージ弁46は、コンテナ本体を通る内部流路の中間部分と流体連通している(たとえば、ふたを通る流体通路を介して)入口を有する。パージ弁はまた排気出口を有する。使用中、パージ弁は、内部流路からのガス流を容器から排出するように開くことができ、パージガスのソース(図示せず)に接続可能な入口およびコンテナ本体を通る内部流路の中間部分と流体連通している出口を有する。動作中、パージ弁を用いてソース容器20の内部からガス(たとえば、キャリアガスおよび/または反応ガス)を追放することができる。
【0023】
弁42、44および46(利用されれば)のそれぞれは好ましくは、弁によって制限または開放することができるガス流通路を含む、それぞれ、弁ポーティングブロック43、45および47を含む。たとえば、入口弁44のポーティングブロック45は好ましくは、ポーティングブロックの側面から、弁座および可動リストリクタまたは振動板のような、ガスの流れを制限するための内部装置(図示せず)を含むリストリクタ領域まで延在する内部ガス流通路を含む。一実施形態において、可動内部リストリクタまたは振動板は、手作業または自動化された方法のいずれかでノブ(たとえば、弁44のより大きい円筒状上部)を回すことによって移動させることができる。別の内部ガス流通路が好ましくは、リストリクタ領域からポーティングブロック45の反対側を通って、ふた40を通ってソース容器20内へ延在する入口通路まで延在する。
【0024】
図3Aおよび
図3Bは、コンテナ本体30の内部を通る流路の一実施形態を示す。図示のように、コンテナ本体は流路38を含み、これは入口端32と出口端34との間に延在する連続的な蛇行経路である。ソース容器が組み立てられると、入口端32はふたの入口弁の下に配置され、出口端34はふたの出口弁の下に配置される。したがって、ソース容器が組み立てられると、流路38の入口および出口端34、32は、それぞれ、ふたの入口および出口弁と流体連通する。図示の実施形態において、流路38の中間部分は、ソース容器が組み立てられるとパージ弁と流体連通するパージポートマニフォールド36を含む。図示のように、流路38は、交互に隣接した端部で接続されている一連の平行チャネルでコンテナ本体の前と後ろの壁の間に延在する。流路は、キャリアガスがコンテナ本体30を通って流れるときに移動しなければならない曲がりくねった、または蛇行する経路を画定する。使用中、流路38は粉末のような、固体プリカーサソースを含有する。たとえば、固体ソースプリカーサ/化学物質をチャネルの低部に詰め込むことができる。ソース容器を加熱すると、チャネルにおける固体プリカーサの少なくとも一部が蒸発することができる。入口端32と出口端34との間の長い蛇行する流路38を通してキャリアガスを送りながら、キャリアガスを蒸発プリカーサに曝露することにより、キャリアガスに反応物蒸気を運搬させる。すなわち、キャリアガスがプリカーサソースに曝露されながらより長い経路に沿って流れることが要求されるため、これはプリカーサソースにより長い時間曝露され、したがって蒸発プリカーサで飽和する可能性がより高くなる。
【0025】
図3Aおよび
図3Bに示すキャリア本体は固体プリカーサから気相反応物を生成するのに有効であるが、このキャリア本体の実施形態は多くの欠点を有する。具体的には、狭くて深いチャネルを用いて蛇行流路を形成することにより、固体ソースプリカーサ(たとえば、圧粉)の除去および交換が困難になる。さらに、狭くて深いチャネルにより、ソース容器のコンテナ本体に保持することができる固体プリカーサの量が限定される。すなわち、コンテナ本体の内部容積のかなりの量が、蛇行流路を画定する分割壁を形成するために利用されている。本開示の態様は、固体プリカーサの表面積を増加させることにより、より短い流路にわたって効果的にキャリアガスを飽和させることが可能になる一方、コンテナ本体に固体プリカーサの増加した量を保持させることができるという認識に、部分的に基づいている。
【0026】
図4は、本開示のさまざまな態様による二片コンテナ本体130の一実施形態を示す。二片コンテナ本体として示すが、この実施形態は限定ではなく例として提供されることが理解されるであろう。これらの線に沿って、コンテナ本体は、上述したものと同様の単一片コンテナ本体とすることができるということが理解されるであろう。
図4のコンテナ本体130を
図2のコンテナ本体30に交換することができるということがさらに理解されるであろう。すなわち、
図2のふたをコンテナ本体130に利用することができる。図示の実施形態において、コンテナ本体130は基礎部材132および挿入トレー150を含む。基礎部材132は、4つの側壁134a~134d、底面136および略開放上面を有する略長方形の要素である。これらの側壁および底面は集合的に、挿入トレー150を受容するようなサイズの開口/くぼみ(たとえば、内部領域)を画定する。図示の実施形態において、基礎部材132は、その内部内に前壁134aに近接して配置されたシェルフ138をさらに含む。このシェルフ138は、入口マニフォールド144、出口マニフォールド142およびパージ弁マニフォールド146を含む。トレーインサート150が基礎部材132の内部内に配置されると、入口マニフォールド144の側壁における開口が、挿入トレー150を通って延在する流路(図示せず)の第1の端部の開口155b内へ開く。同様に、挿入トレー150が基礎部材132内に配置されると、出口マニフォールド142における開口が、挿入トレーを通って延在する流路の第2の端部の第2の開口155aへ開く。同様に、パージマニフォールド146の側壁における開口が、挿入トレー150を通る流路の中間部分に配置された第3の開口155cに開く。ふた40がコンテナ本体に取り付けられると(たとえば、
図2参照)、入口マニフォールド144は入口弁44の下に配置され、出口マニフォールド142は出口弁42の下に配置される。
【0027】
図示の実施形態において、トレーインサート150の外側表面は、側壁および底面によって画定されるような基礎部材の内部表面に対応して成形されている。挿入されると、挿入トレーの上縁は概して基礎部材132の上縁と同じ高さになる。トレーインサート150は、一定量の固体ソースプリカーサを保持するようにそれぞれ構成されている複数の個別ポケット152を含む。個別ポケットは、それぞれトレーインサートの上縁に近接している開放上端からトレーインサートの底面に近接している閉鎖底端まで延在してトレーインサート内へ形成される。一実施形態において、ポケット152のすべてが同一寸法(たとえば、長さ、幅および深さ)を有し、ポケットが同一の事前準備された量(たとえば、圧縮ブロック)の固体プリカーサを受容することが可能になる。しかしながら、これは厳しい要件ではない。
【0028】
図5A~
図5Cはそれぞれ、挿入トレー150の斜視図、
図5Aの切断線A-A’に沿った挿入トレーの断面図および
図5Aの切断線B-B’に沿った挿入トレーの断面図を示す。図示の実施形態において、トレーインサート150は、トレーインサート150の略長方形の外周を画定する4つの外側壁154a~d(特に言及しなければ今後154)を含む。外側壁のそれぞれは中実の底面156から上縁まで延在する。トレーインサート150の上縁は、ソース容器が組み立てられるとふたの底面を係合するように構成されている。複数のポケット152を提供するため、図示のトレーインサートは、トレーインサート150の前壁154aと後壁154cとの間に延在する第1の複数の分割壁162a~f(特に言及しなければ今後162)を含む。トレーインサートはまた、トレーインサート150の側壁154bと154dとの間に延在する第2の複数の分割壁164a~e(特に言及しなければ今後164)を含む。図示の実施形態において、第1および第2の複数の分割壁162および164は、そのそれぞれの外側壁の対の間で均等に間隔を置くとともに、そのそれぞれの外側壁に略平行である。すなわち、第1の複数の分割壁162は第2の複数の分割壁164を実質的に横切ることができる。この構成において、二組の分割壁162、164は等しいサイズのポケット152のマトリクスを画定する。横断する分割壁の交差によって形成されるとして議論したが、ポケットを他の方法で画定することができるということが理解されるであろう。例として、個別ポケットはそれぞれ、トレーインサート(すなわち、二片コンテナ本体を利用すれば)内またはコンテナ本体(すなわち、一片コンテナ本体を利用すれば)内へくぼませた円筒状孔とすることができる。しかしながら、等しいサイズのポケットのマトリクスを画定する横断分割壁を用いる結果、コンテナ本体がより対称的になる。ソース容器が加熱されると、このような対称性により、より一様な熱性能を提供することができる。
【0029】
図示の実施形態において、ポケット152のそれぞれは略同一の断面寸法を有する。すなわち各ポケット152は、2つの対向する側壁間を測定したときの同一の長さ「L」および対向する側壁の別の対の間を測定したときの同一の幅「W」を有することができる。
図5B参照。さらに、各ポケットは、ポケットの閉じた底面156から開いた頂端158までを測定したときの同一の深さ「D」を有することができる。図示のように、共通のサイズのポケットを用いることにより、事前形成された量の固体プリカーサでポケットを満たすことが可能になる。すなわち、深くて狭いチャネル(たとえば、蛇行する流路)の底部を粉末で満たして、チャネルの低部において粉末を圧縮するよりむしろ、プリカーサ材料の事前形成圧縮ブロック172をポケット152のそれぞれへ挿入することができる。たとえば、ポケット152の内部内にはまるようなサイズのブロック172にプリカーサ粉末を圧縮することができる。圧縮ブロック172を用いることにより、ソース容器内のプリカーサの密度が高くなる。例として、
図3Aおよび
図3Bに示す流路38の深くて狭いチャネルに塩化ハフニウム(HfCl
4)のプリカーサ粉末を詰めることにより通常、結果として最大プリカーサ密度は約2グラム毎立方センチメートル(g/cc)であった。圧縮ブロックを利用することにより、3g/cc以上のプリカーサ密度になることがよくある。
図3Aのコンテナ本体30と
図4のコンテナ本体130の内部容積が等しいとすると、事前圧縮プリカーサブロックを用いることにより、ソース容器の容量が50%増加する。ソース容器の容量のこの増加の結果、ソース容器の交換および/または補充の間隔が長くなる。同様に、これにより製造プロセスにおけるダウンタイムが減少する。
【0030】
注目すべきことに、ポケット152のそれぞれの頂縁または開放端158は通常、挿入トレー150またはコンテナ30の上縁の下方に配置されている。より具体的には、ポケットのそれぞれの上方に空間が存在せねばならず、これによりキャリアガスがコンテナ本体の入口と出口との間でポケットの頂面の上を流れることが可能になる。
図5Aに最も良く示されるように、分割壁162、164および外側壁154を集合的に利用して挿入トレー150を通る流路170を画定する。この流路はポケット152のそれぞれの頂面(たとえば、開放端158)の上に延在し、ソース容器が使用中であるとき、キャリアガスがそれぞれのポケットから蒸発プリカーサを運搬することが可能になる。外側壁154は通常、組み立てられるとソース容器のふたの底面に接触するように全高を有する。分割壁162は、外側壁の上縁に等しい高さを有する、または容器を通る流体流を導くためにより低い高さ(たとえば、ポケット152の上縁と同じ高さ)を有するようにさまざまに構成される。図示の実施形態において、各ポケット152は4つの側壁によって画定される。側壁の2つが、ソース容器を組み立てるとふたに接触するように全高である一方、2つの他の側壁はより低い高さを有してポケット152の上面にわたって流路を画定する。
図5Aは、入口と出口との間で各ポケット152の頂面の上に延在する流路170の1つの非限定的な実施形態を示す。
【0031】
図5A~
図5Cに示すように、挿入トレー150は一体形成された要素とすることができる。たとえば、挿入トレーは材料の単一ブロックからミリング、または単一片に鋳造することができる。他の作製技術も可能である。
【0032】
図6は挿入トレー150の代替の一実施形態を示す。この実施形態において、挿入トレーは壁固定具160a、160bおよび160cの3層から形成される。これらの壁固定具160a~cの層を積み重ねて挿入トレーを製造することができる。一実施形態において、壁固定具はそれぞれ、上部および低部開放端を有するポケットのマトリクスを画定することができる。このような一実施形態において、固定具は、挿入トレーの底部を形成する平板上に積み重ねることができる。別の一実施形態において、最低部壁固定具160cは底面を含むことができる。3つの層を有するとして示すが、多層挿入トレーがより多いまたは少ない層を有することができるということが理解されるであろう。別個の層から挿入トレーを構成することは、限定しないが、窒化アルミニウムおよび炭化ケイ素のような、セラミック材料から作製される挿入トレーで特に有益であり得る。セラミックおよびステンレス鋼を含むさまざまな材料から挿入トレーおよび/またはコンテナ本体を作製することができるということがさらに理解されるであろう。
【0033】
図7はコンテナ本体230の他の一実施形態を示す。この実施形態において、コンテナ本体は一片構造を有する。すなわち、ポケット152はコンテナ本体30内に一体形成されている。このような一構成において、ポケット152はここでも共通の寸法を有して圧縮プリカーサの共通のサイズのブロックでポケットを充填することを容易にすることができる。図示のように流路170はここでもポケットのそれぞれの開放頂面の上を通過しながら、入口マニフォールド144と出口マニフォールド142との間を通過する。上述のように、ソース容器が組み立てられると、これらのマニフォールドは入口および出口弁と流体連通する。
【0034】
本開示の例示的な実施形態を本明細書に記載しているが、本開示はこのように限定されていないことが理解されるべきである。本明細書に記載のシステムおよび方法のさまざまな修正、変形、および強化を、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本開示の主題は、さまざまなシステム、構成要素、および構成と、本明細書に開示された他の特徴、機能、行為、および/または特性のすべての新規および非自明な組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびにこれらのあらゆる等価物を含む。
【符号の説明】
【0035】
8 加熱デバイス
12 反応物ソースキャビネット
18 内部空間
20 固体プリカーサソース容器
22 流体導管
24 弁
26 キャリアガス供給導管
28 弁
30 コンテナ本体
32 入口端
34 出口端
36 パージポートマニフォールド
38 流路
40 ふた
42 出口弁
43 弁ポーティングブロック
44 入口弁
45 弁ポーティングブロック
46 パージ弁
47 弁ポーティングブロック
100 気相リアクタシステム
102 気相リアクタ
104 反応チャンバ
106 サセプタ
108 ガス分配システム
110 固体反応物ソース
112 第2の反応物ソース
114 キャリア/パージガスソース
116 基板
118 真空ソース
130 二片コンテナ本体
132 基礎部材
134a~134d 側壁
136 底面
138 シェルフ
142 出口マニフォールド
144 入口マニフォールド
146 パージ弁マニフォールド
150 挿入トレー
152 個別ポケット
154a 前壁
154b 側壁
154c 後壁
154d 側壁
155a 第2の開口
155b 第1の端部の開口
155c 第3の開口
156 底面
158 頂端
160a~c 壁固定具
162a~f 第1の複数の分割壁
164a~e 第2の複数の分割壁
170 流路
172 事前形成圧縮ブロック
230 コンテナ本体