(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ウェーハの製造方法、及びチャックテーブル
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20250415BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20250415BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B7/04 A
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2021168724
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2024-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 俊悟
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
(72)【発明者】
【氏名】黒川 浩史
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029131(JP,A)
【文献】特開2009-272557(JP,A)
【文献】特開平11-045866(JP,A)
【文献】特開2013-004666(JP,A)
【文献】特開2018-015825(JP,A)
【文献】特開2002-324831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04,41/00-51/00;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの一方の面の外側に環状にはみ出したはみ出し部を備え該一方の面を保護する保護部材を有した該ウェーハの該一方の面、及び他方の面を研削砥石で研削して均一な厚みのウェーハを製造するウェーハの製造方法であって、
該ウェーハを研削する研削装置に、該ウェーハの該他方の面と同一形状の中央吸引面と、該中央吸引面の外側に環状に配置し該はみ出し部を吸引保持する環状吸引面とを有するチャックテーブルを準備する準備工程と、
該保護部材を該中央吸引面と該環状吸引面とで吸引保持し、該ウェーハの該他方の面を該研削砥石で研削する第1研削工程と、
該第1研削工程で研削した該ウェーハから該保護部材を剥離する剥離工程と、
該剥離工程の後、該ウェーハの該他方の面を該中央吸引面のみで吸引保持し、該ウェーハの該一方の面を該研削砥石で研削する第2研削工程と、を備えるウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ウェーハは、オリエンテーションフラットを備え、
前記保護部材は、外形が円形に形成され、
前記準備工程で準備する前記チャックテーブルは、前記中央吸引面に該オリエンテーションフラットに対応した切り欠き部を備え、前記環状吸引面を囲繞する枠体を有し、
該枠体は、外周が該ウェーハに相似形で枠体切り欠き部を備え、
該準備工程は、前記研削砥石で該中央吸引面と該環状吸引面とを研削する吸引面研削工程を含む、請求項1記載のウェーハの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のウェーハの製造方法に用いるチャックテーブルであって、
前記中央吸引面を有する中央吸引板と、前記環状吸引面を有する環状吸引板と、該中央吸引板の外側面と該環状吸引板の内側面とを仕切るバリアと、を備え、
前記枠体は、該中央吸引板と該バリアと該環状吸引板とを収容する凹部を有し該環状吸引板の外周を囲繞し、
該中央吸引板は、該ウェーハの前記オリエンテーションフラットに対応した前記切り欠き部を備えるチャックテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な厚みのウェーハを製造するウェーハの製造方法、及び該ウェーハの製造方法において用いるチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1、又は特許文献2に開示されているように、インゴットをスライスしてアズスライスウェーハを形成し、その後、うねり、又は反りを有するアズスライスウェーハの両面を研削して均一な厚みのウェーハを製造するウェーハの製造方法では、アズスライスウェーハの一方の面を研削する際に、他方の面に液状樹脂を押し広げて硬化させ、他方の面を保護する保護部材を形成し、一方の面を研削した後、保護部材を剥がして他方の面を研削している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-272557号公報
【文献】特開2020-205358号公報
【文献】特開2018-29131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
該保護部材は、ウェーハの外周から外にはみ出した環状のはみ出し部を備えている。そして、研削装置のチャックテーブルの吸引面は、ウェーハの一方の面を研削する際に保護部材を吸引保持している。該吸引面は、保護部材のはみ出し部を吸引保持していないために、研削砥石の下面にばたついた保護部材が接触することがあり、研削砥石の下面に保護部材が付着して研削砥石の研削力が低下するという問題が有る。
【0005】
また、外周が直線状に切り欠かれてオリエンテーションフラットが形成されているウェーハに保護部材が形成されている場合には、保護部材は全体が円形に形成されているとともに、オリエンテーションフラットに隣接している領域は平面視弓型形状に露出しており、保護部材の該弓型形状の領域は、研削砥石に接触しやすくなる。
【0006】
したがって、ウェーハに保護部材を形成して保護部材を吸引保持してウェーハを研削して平坦なウェーハを製造するウェーハの製造方法においては、研削砥石に保護部材を接触させないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、ウェーハの一方の面の外側に環状にはみ出したはみ出し部を備え該一方の面を保護する保護部材を有した該ウェーハの該一方の面、及び他方の面を研削砥石で研削して均一な厚みのウェーハを製造するウェーハの製造方法であって、該ウェーハを研削する研削装置に、該ウェーハの該他方の面と同一形状の中央吸引面と、該中央吸引面の外側に環状に配置し該はみ出し部を吸引保持する環状吸引面とを有するチャックテーブルを準備する準備工程と、該保護部材を該中央吸引面と該環状吸引面とで吸引保持し、該ウェーハの該他方の面を該研削砥石で研削する第1研削工程と、該第1研削工程で研削した該ウェーハから該保護部材を剥離する剥離工程と、該剥離工程の後、該ウェーハの該他方の面を該中央吸引面のみで吸引保持し、該ウェーハの該一方の面を該研削砥石で研削する第2研削工程と、を備えるウェーハの製造方法である。
例えば、前記ウェーハは、オリエンテーションフラットを備え、前記保護部材は、外形が円形に形成されている場合、前記準備工程で準備する前記チャックテーブルは、前記中央吸引面に該オリエンテーションフラットに対応した切り欠き部を備え、前記環状吸引面を囲繞する枠体を有し、該枠体は、外周が該ウェーハに相似形で枠体切り欠き部を備え、本発明に係るウェーハの製造方法において、該準備工程は、前記研削砥石で該中央吸引面と該環状吸引面とを研削する吸引面研削工程を含むと好ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明は、前記ウェーハの製造方法に用いるチャックテーブルであって、前記中央吸引面を有する中央吸引板と、前記環状吸引面を有する環状吸引板と、該中央吸引板の外側面と該環状吸引板の内側面とを仕切るバリアと、を備え、前記枠体は、該中央吸引板と該バリアと該環状吸引板とを収容する凹部を有し該環状吸引板の外周を囲繞し、該中央吸引板は、該ウェーハの前記オリエンテーションフラットに対応した前記切り欠き部を備えるチャックテーブルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウェーハの製造方法は、保護部材をチャックテーブルの中央吸引面と環状吸引面とで吸引保持してばたつくことが無いようにしつつ、ウェーハの他方の面を研削砥石で研削する第1研削工程を実施し、第1研削工程で研削したウェーハから保護部材を剥離した後、ウェーハの他方の面を中央吸引面のみで吸引保持し、ウェーハの一方の面を研削砥石で研削するため、研削砥石に保護部材を接触させることがない。そのため、研削砥石の研削力を低下させる事が無い。
また、例えば、ウェーハが、オリエンテーションフラットを備え、保護部材が、外形が円形に形成されている場合に、準備するチャックテーブルは、中央吸引面にオリエンテーションフラットに対応した切り欠き部を備え、環状吸引面を囲繞する枠体を有し、枠体は、外周がウェーハに相似形で枠体切り欠き部を備えるものとする。そして、本発明に係るウェーハの製造方法において、まず研削砥石で中央吸引面と環状吸引面とを研削する(セルフグラインドする)ことで、その後、セルフグラインドしたチャックテーブルで吸引保持したウェーハのオリエンテーションフラットを通る砥石軌跡エリアにおいて、ウェーハに掛かる研削圧力が他のエリアより増加してしまうことが無くなり、研削後のウェーハを均一な厚みにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2(A)は、一方の面の外側に環状にはみ出したはみ出し部を備え一方の面を保護する保護部材を有したウェーハの一例を示す斜視図である。
図2(B)は、一方の面の外側に環状にはみ出したはみ出し部を備え一方の面を保護する保護部材を有したウェーハの一例を示す断面図である。
【
図3】実施形態1のチャックテーブルを示す斜視図である。
【
図4】実施形態1のチャックテーブルを示す平面図である。
【
図5】実施形態1のチャックテーブル、回転機構、並びにチャックテーブルに対する吸引力、及びチャックテーブルに対する水やエアの供給経路を説明する断面図である。
【
図6】実施形態2のチャックテーブルを示す平面図である。
【
図7】実施形態1のチャックテーブルに保護部材を有するウェーハが吸引保持された状態を示す平面図である。
【
図8】実施形態1のチャックテーブルに保護部材が剥離された後のウェーハが吸引保持された状態を示す平面図である。
【
図9】枠体切り欠き部が平面視で三日月型形状であるチャックテーブルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す研削装置1は、研削ユニット16によって本発明に係る実施形態1のチャックテーブル3に吸引保持されたウェーハ80を研削する装置である。研削装置1のベース10上の前方(-Y方向側)は、チャックテーブル3に対してウェーハ80の搬入出が行われる領域である搬入出領域となっており、ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削ユニット16によってチャックテーブル3上に吸引保持されたウェーハ80の研削加工が行われる領域である研削領域となっている。なお、研削装置は、研削ユニットとして粗研削ユニットと仕上げ研削ユニットとの2軸備え、回転するターンテーブルでウェーハ80を保持したチャックテーブル3を各研削ユニットの下方に順次位置付け可能な構成となっていてもよい。
【0012】
図2(A)、(B)に示すウェーハ80は、例えば、シリコン等の原材料からなる円柱状のインゴットを、ワイヤーソー等で薄く切断して形成されたアズスライスウェーハである。なお、ウェーハ80は上記例に限定されるものではなく、シリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム、樹脂、セラミックス、又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。例えば、ウェーハ80には、外周部分に結晶方位を示すマークである直線のオリエンテーションフラット805が外周の一部を、外周の接線方向に平行にフラットに切欠くことで形成されている。なお、ウェーハ80には、2つ以上のオリエンテーションフラット805が形成されていてもよい。
【0013】
図2(A)、(B)に示す保護部材81は、ウェーハ80の直径よりも大径の円形状のシート813上に、紫外線硬化型の液状樹脂を塗布し、ウェーハ80で液状樹脂を押し広げ、紫外線を照射して液状樹脂が硬化されウェーハ80の一方の面801全面を覆う樹脂層812を備えている。そして、保護部材81は、ウェーハ80の外周縁からシート813及び樹脂層812がはみ出したはみ出し部814を備えている。なお、液状樹脂は、熱硬化型でもよい。また、ウェーハ80の一方の面801全面に液状樹脂を塗布し、液状樹脂のみで保護部材81を構成してもよい。なお、保護部材81は、保護テープであってもよいし、熱接着シートであってもよい。
ウェーハ80の上側を向いている他方の面802は、研削装置1において最初に研削される面となる。
【0014】
図1に示す研削装置1のベース10の正面側(-Y方向側)には、複数のウェーハ80を棚状に収容可能なカセットを載置する第1のカセットステージ150及び第2のカセットステージ151が設けられており、第1のカセットステージ150には複数の加工前のウェーハ80が棚状に収容される第1のカセット153が載置され、第2のカセットステージ151には複数の加工後のウェーハ80が棚状に収容される第2のカセット154が載置される。
【0015】
図1に示す第1のカセット153の+Y方向側の開口の後方には、第1のカセット153から加工前のウェーハ80を搬出するとともに第2研削加工後のウェーハ80を第2のカセット154に搬入するロボット14が配設されている。ロボット14は、ウェーハ80を吸引保持可能なロボットハンド140を備え、ロボットハンド140をZ軸方向に上下動可能とし、かつ、水平面内(X軸Y軸平面内)を旋回移動及び直動可能とする多関節アーム141を備える。また、ロボットハンド140は、その吸引面を上下反転することが可能となっている。
【0016】
ロボット14に隣接する位置には、仮置きテーブル157が設けられており、仮置きテーブル157に仮置きされ吸引保持された研削加工前のウェーハ80は、仮置きテーブル157が低速で回転することで、仮置きテーブル157の上方に配設された中心位置検出部156のカメラによってウェーハ外周縁の例えば3か所が撮像される。そして、中心位置検出部156によって、外周縁の3点のエッジ座標に基づく幾何学的演算処理により、ウェーハ80の正確な中心位置が検出される。また、中心位置検出部156は、形成した撮像画像を基にウェーハ80のオリエンテーションフラット805の位置を検出する。
【0017】
仮置きテーブル157と隣接する位置には、ウェーハ80を保持した状態で旋回するローディングアーム158が配置されている。ローディングアーム158は、仮置きテーブル157においてオリエンテーションフラット805の位置、及び中心の位置が検出されたウェーハ80を保持し、近傍まで移動してきたチャックテーブル3へ搬送する。ローディングアーム158の隣には、加工後のウェーハ80を保持した状態で旋回するアンローディングアーム159が設けられている。アンローディングアーム159と近接する位置には、アンローディングアーム159により搬送された加工後のウェーハ80を洗浄する枚葉式の洗浄ユニット106が配置されている。第2研削加工が施され洗浄ユニット106により洗浄・乾燥されたウェーハ80は、ロボット14により第2のカセット154に搬入される。
【0018】
ベース10上の研削領域の後方(+Y方向側)には、コラム102が立設されており、コラム102の-Y方向側の前面には研削ユニット16をZ軸方向(鉛直方向)に研削送りする研削送りユニット17が配設されている。研削送りユニット17は、Z軸方向の軸心を有するボールネジ170と、ボールネジ170と平行に配設された一対のガイドレール171と、ボールネジ170の上端に連結しボールネジ170を回動させるモータ172と、内部のナットがボールネジ170に螺合し側部がガイドレール171に摺接する昇降板173と、昇降板173に連結され研削ユニット16を保持するホルダ174とを備えており、モータ172がボールネジ170を回動させると、これに伴い昇降板173がガイドレール171にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ174に保持された研削ユニット16がZ軸方向に研削送りされる。
【0019】
チャックテーブル3に保持されたウェーハ80を研削加工する研削ユニット16は、軸方向がZ軸方向である回転軸160と、回転軸160を回転可能に支持するハウジング161と、回転軸160を回転駆動するモータ162と、回転軸160の下端に接続された円環状のマウント163と、マウント163の下面に着脱可能に装着された研削ホイール164と、を備える。
【0020】
研削ホイール164は、円環板状のホイール基台165と、ホイール基台165の底面に環状に配置された略直方体形状の複数のセグメント砥石とを備える。セグメント砥石は、例えば、レジンボンドやビトリファイドボンド等でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。そして、複数の環状に並んだセグメント砥石によって、環状の研削砥石166が形成される。なお、セグメント砥石を隙間の無い円環状に配列した研削砥石、即ち、いわゆるコンティニュアス配列の研削砥石をホイール基台165の下面に配置してもよい。
【0021】
回転軸160の内部には、研削水の通り道となる図示しない流路が回転軸160の軸方向に貫通して形成されている。この流路はマウント163を通り、ホイール基台165の底面において研削砥石166に向かって研削水を噴出できるように開口している。噴出した研削水は、研削砥石166とウェーハ80との接触部位に到達して、接触部位を冷却、及び洗浄する。
【0022】
図1に示すように、ウェーハ80を研削する際の高さ位置まで下降した研削ホイール164の近傍となる位置には、例えば、研削中においてウェーハ80の厚さを接触式の一対のハイトゲージによって測定する厚さ測定部18が配設されている。なお、厚さ測定部18は、検査光をウェーハ80に照射して反射光の光路差からウェーハ80の厚みを測定する非接触式タイプであってもよい。
【0023】
図1に示す研削装置1のベース10の-X方向側の側方には、簡略化して示す剥離機構107が配設されている。剥離機構107は、後述する第1研削工程で他方の面802が研削された後のウェーハ80の一方の面801から保護部材81を剥離する。剥離機構107は、例えば、特許文献3に開示されているように、保護部材81のウェーハ80からはみ出したはみ出し部814をメカニカルクランプによって把持して、メカニカルクランプとウェーハ80とを水平方向、又は鉛直方向に相対的に離間させるように移動させることで、保護部材81をウェーハ80の一方の面801から剥離することができる。
【0024】
図1に示すように、研削装置1は、本発明に係るチャックテーブル3(以下、実施形態1のチャックテーブル3とする)を備えている。
図1、及び
図3に示すチャックテーブル3は、中央吸引面300を有する中央吸引板30と、環状吸引面320を有する環状吸引板32と、中央吸引板30の外側面と環状吸引板32の内側面とを仕切るバリア34と、環状吸引面320を囲繞する枠体31と、を備えている。
【0025】
図3、
図4に示すように、中央吸引板30は、例えば、ポーラスセラミックス、ポーラスシリコン、又はポーラスシリコンカーバイド等のポーラス部材で構成されており、その円形の外周部分を外周の接線方向に平行に直線的に一部切欠いた形状となっている。即ち、本実施形態1のチャックテーブル3は、保持する
図1に示すウェーハ80がオリエンテーションフラット805を備えているため、中央吸引板30にオリエンテーションフラット805に対応し外周を一部フラットに切り欠いて形成された切り欠き部303を備えている。なお、ウェーハ80に形成されているオリエンテーションフラット805が2つ以上である場合には、チャックテーブル3もこれに対応して切り欠き部303を2つ以上備えていてもよい。
【0026】
中央吸引板30の外側面に当接するバリア34は、非通気性の硬質材からなり中央吸引板30の外周と平面視相似形に形成されている略円環状の壁である。バリア34の上端面は、中央吸引板30の中央吸引面300及び環状吸引板32の環状吸引面320と面一に形成されている。
【0027】
図3、
図4に示す環状吸引板32は、中央吸引板30と同様のポーラス部材で形成されており、円である外周と、中央吸引板30の切り欠き部303に対応して一部が内側に向かってその他の部分よりも幅を広くしてフラットに形成された内周とを備えている。そして、環状吸引板32の上面の幅を広くした部分は、環状吸引面320の一部であり平面視弓型の弓型吸引面322となる。
【0028】
図3、
図4、
図5に示す枠体31は、例えば、セラミックスなどの緻密体で構成されており、外形が平面視円形に形成されている
図5に示す枠体基部311と、枠体基部311の上面の外周領域に所定の高さで立設する環状壁312とを備えている。そして、環状壁312の上面を、中央吸引面300、バリア34の上面、及び環状吸引面320と面一な枠体31の上面とする。
【0029】
図5に示す環状壁312の内側の領域は中央吸引板30が収容される凹部315となっている。そして、凹部315に中央吸引板30、バリア34、及び環状吸引板32が一体となって嵌合し、環状壁312によって環状吸引板32の外側面が囲繞される。また、例えば、
図4に示すように、枠体基部311の上面の最外周領域には、周方向に一定の間隔をおいて複数(例えば45度間隔で8つ)のボルト挿通穴319が厚み方向(Z軸方向)に向かって貫通形成されている。この枠体基部311の上面のボルト挿通穴319が形成された領域は、
図3に示すカバー103の下方に位置する。
【0030】
図4に示す枠体31の環状壁312の上面は、
図2に示す外周にオリエンテーションフラット805を備えるウェーハ80と相似形となっている。即ち、枠体31の環状壁312の中央吸引板30の切り欠き部303に対応する部分は、その他の部分よりも外周側が一部段差を設けるようにフラットに切り欠かれて薄くなっており、環状壁312の該切り欠き部303に対応する部分の上面は段差面となっている。そして、
図4に示すように、枠体31は、枠体31の円弧状の外周に対応する円弧状上面313と、円弧状上面313と同じ高さにある欠け部対応上面314と、欠け部対応上面314よりも一段低い段差面とを備えており、該段差部分を枠体切り欠き部317として備えている。
【0031】
図5に示すように、枠体31の凹部315の底面(枠体基部311の上面)の中央吸引板30に対応する領域には、枠体基部311の中心を中心とするように形成された同心円状の複数の中央吸引溝316(
図5においては、1つのみ図示)と、枠体基部311の中心から放射状に延びて中央吸引溝316同士を連通させる図示しない放射状吸引溝が形成されている。また、枠体31の凹部315の底面のバリア34よりも外側の環状吸引板32に対応する領域には、円環状の環状吸引溝318が形成されている。
【0032】
図5に示すように、チャックテーブル3は、円形板状のテーブルベース33の上面に固定されており、回転機構38によって回転可能となっているとともに、図示しないボールネジ機構等によってY軸方向に往復移動可能となっている。
【0033】
回転機構38は、例えば、プーリ機構であり、テーブルベース33の下面に接続されチャックテーブル3に対して垂直に延在する回転軸380を備えている。軸方向がZ軸方向である回転軸380を回転させる駆動源となるモータ381のシャフトには、主動プーリ382が取り付けられており、主動プーリ382には無端ベルト383が巻回されている。回転軸380には従動プーリ384が取り付けられており、無端ベルト383は、この従動プーリ384にも巻回されている。回転軸380の軸心は、チャックテーブル3の上面中心、即ち、中央吸引板30の中央吸引面300及び環状吸引板32の環状吸引面320で形成されるチャックテーブル3の円形の保持面の中心と合致している。
【0034】
図5に示す中央吸引溝316から回転軸380にかけては中央吸引路370が形成されている。該中央吸引路370は、回転軸380を囲繞するように配設されたロータリージョイント373、及び外部の中央吸引配管を介してエジェクター機構又は真空発生装置等の吸引源37に連通している。ロータリージョイント373は、吸引源37が生み出す吸引力を遺漏無く回転している状態の回転軸380側に移送する。チャックテーブル3が、例えば保護部材81が剥離された後のウェーハ80を中央吸引面300でバキュームリーク無く吸引保持しているか否かは、
図5に示す圧力計374の示す圧力値によって確認可能となっている。
【0035】
中央吸引配管には、中央吸引路370が例えば吸引源37と連通する状態と連通しない状態とを切り換え可能な中央用バルブ378が配設されている。さらに、中央吸引配管は、図示しない三方管等を介して、コンプレッサー等で構成され圧縮エアを供給可能なエア供給源391に連通しているとともに、ポンプ等からなり純水等を送出可能な水供給源392に連通している。
【0036】
また、環状吸引溝318から回転軸380にかけては環状側吸引路375が形成されている。該環状側吸引路375は、ロータリージョイント373、及び外部の環状側吸引配管を介して吸引源37に連通している。環状側吸引配管には、環状側吸引路375が例えば吸引源37と連通する状態と連通しない状態とを切り換える環状用バルブ379が配設されている。さらに、環状側吸引配管は、図示しない三方管等を介して、エア供給源391及び水供給源392に連通している。
【0037】
例えば、チャックテーブル3の中央吸引面300及び環状吸引面320によって保護部材81を介して吸引保持されているウェーハ80を、中央吸引面300及び環状吸引面320にから離脱させる場合に、中央吸引面300及び環状吸引面320に対して、エア供給源391からエアを供給して、中央吸引面300及び環状吸引面320と保護部材81との間に残存する真空吸着力を排除することができる。また、ウェーハ80の研削を複数枚連続して実行していくことで、中央吸引板30や環状吸引板32の内部にウェーハ80から発生した研削屑が溜まってしまった場合に、エア供給源391からエアを供給しつつ、水供給源392から水を供給して、中央吸引面300や環状吸引面320から溜まっていた研削屑を水とエアとが混合された二流体によって排出させてもよい。
【0038】
図5に示す中央吸引板30、中央吸引板30を囲繞するバリア34、及びバリア34を囲繞する環状吸引板32が、枠体31の凹部315に嵌め込まれ、図示しない接着剤等によってそれぞれが接着され、チャックテーブル3として一体になる。そして、チャックテーブル3は、
図1に示す研削装置1のベース10内に配置されたテーブルベース33(
図5参照)の上面に形成された図示しないねじ穴と枠体基部311のボルト挿通穴319とを重ね合わせて、ボルト挿通穴319を通した固定ボルトをテーブルベース33のねじ穴に螺合させ締め付けることにより、研削装置1に配設された状態になる。なお、中央吸引板30の中央吸引面300は、例えば、
図2に示すウェーハ80の他方の面802よりも少しだけ小さい相似形、又は他方の面802と合同である。また、中央吸引板30の中央吸引面300、バリア34の上端面、及び環状吸引板32の環状吸引面320を合わせたチャックテーブル3の上面(保持面)は、例えば、ウェーハ80に貼着されている保護部材81の下面よりも少しだけ小さい相似形、又は保護部材81の下面と合同である。
【0039】
図1に示すように、研削装置1において、テーブルベース33に固定されたチャックテーブル3は、カバー103によって周囲から囲まれており、カバー103及びカバー103に連結された蛇腹カバー104の下方に配設された図示しないテーブル移動手段によって、ベース10上をY軸方向に往復移動可能となっている。図示しないテーブル移動手段は、電動スライダー等である。
【0040】
研削装置1に配設されるチャックテーブルは、
図3~
図5に示す上記実施形態1のチャックテーブル3に限定されるものではなく、例えば、
図6に示す実施形態2のチャックテーブル36であってもよい。チャックテーブル36は、
図2に示す研削するウェーハ80が、オリエンテーションフラット805を備えない完全な円形のウェーハである場合に用いられる。
【0041】
図6に示す実施形態2のチャックテーブル36の実施形態1のチャックテーブル3と相違する構成要素は、チャックテーブル36は、中央吸引板30が切り欠き部303を備えない円形となっており、バリア34も中央吸引板30を囲繞する円形となっており、また、環状吸引板32も弓型吸引面322を備えない平面視円環状となっている。そして、枠体31の環状壁312は、
図4に示す枠体切り欠き部317を備えず、その上面が面一な円環面となっている。その他の構成は、実施形態1のチャックテーブル3と実施形態2のチャックテーブル36とは同一となっている。
【0042】
以下に、
図1に示す研削装置1を用いて本発明に係るウェーハの製造方法を実施する場合の研削装置1の各構成要素の動作、及び各工程について説明する。
【0043】
(1-1)準備工程におけるチャックテーブルの準備
まず、
図1に示す研削装置1に、オリエンテーションフラット805を備えるウェーハ80の他方の面802と同一形状の中央吸引面300と、中央吸引面300の外側に環状に配置しはみ出し部814を吸引保持する環状吸引面320とを有する
図3に示す実施形態1のチャックテーブル3を準備する。
【0044】
(1-2)準備工程における吸引面研削工程
本実施形態においては、ウェーハ80は、オリエンテーションフラット805を備え、保護部材81は、外形が円形に形成され、
図3に示す準備した実施形態1のチャックテーブル3は、中央吸引面300にオリエンテーションフラット805に対応した切り欠き部303を備え、環状吸引面320を囲繞する枠体31を有し、枠体31は、外周がウェーハ80に相似形で枠体切り欠き部317を備えている。そして、以下に説明する吸引面研削工程を実施して、中央吸引面300、バリア34の上面、環状吸引面320、及び枠体31の上面でなるチャックテーブル3の上面全体を研削(セルフグラインド)して、チャックテーブル3の上面を、研削砥石166の下面に平行にし、ウェーハ80を均一な厚みに研削できる最適な状態にする。なお、セルフグラインドの実施に使用する研削ホイールは、チャックテーブル3の上面を研削するために適しており、
図1に示すウェーハ80の研削に用いる研削ホイール164とは別の研削ホイールであってもよい。
【0045】
図1、
図5に示すチャックテーブル3は、例えば、図示しない傾き調整手段によって研削砥石166の下面に対する傾きを調整可能となっていてもよい。傾き調整手段は、例えば、
図5に示すテーブルベース33の下面に周方向に等間隔空けて2つ以上設けられている。即ち、例えば該周方向に120度間隔で、2つの傾き調整手段と、テーブルベース33を固定する図示しない支持柱とが配設されている。2つの傾き調整手段は、例えば、電動又はエアアクチュエータ等であり、テーブルベース33を上下動させて、チャックテーブル3の傾きを調整可能となっている。チャックテーブル3のセルフグラインドを行うために、チャックテーブル3の傾きを調整するのは、例えば、セルフグラインド後のチャックテーブル3の上面を中央吸引面300の中心を頂点とし肉眼では判断できない程度の極めてなだらかな円錐斜面に形成し、研削砥石166とウェーハ80との接触部位から、研削水を適切に排出可能とするためである。
【0046】
図示しないボールネジ機構等が
図1に示すチャックテーブル3を+Y方向に移動させ、研削ユニット16の研削ホイール164の回転中心が
図4に示すチャックテーブル3の回転中心309に対して所定距離だけ水平方向にずれ、回転する研削砥石166の砥石軌跡が回転するチャックテーブル3の回転中心309を通過可能に位置づけられる。なお、チャックテーブル3の回転中心309は、中央吸引面300の円である外周から等距離にある中央吸引面300上の一点である。
【0047】
次いで、
図1に示すモータ162が回転軸160を所定の回転速度で回転駆動し、これに伴って研削ホイール164も例えば+Z方向側から見て時計回り方向に回転する。そして、研削ユニット16が研削送りユニット17により-Z方向へと送られ、回転する研削砥石166が中央吸引面300、バリア34の上面、環状吸引面320、及び枠体31の上面に当接することで研削が行われる。研削中は、チャックテーブル3も回転機構38によって例えば+Z方向側から見て時計回り方向に回転するので、研削砥石166が中央吸引面300、バリア34の上面、環状吸引面320、及び枠体31の上面の全面の研削加工を行う。また、研削水が研削砥石166に対して供給され、接触部位が冷却・洗浄される。そして、所定時間チャックテーブル3の上面全面がセルフグラインドされてから研削砥石166が上昇してチャックテーブル3から離脱することで、チャックテーブル3の上面が中央吸引面300の中心を頂点とし肉眼では判断できない程度の極めてなだらかな円錐斜面に形成される。
【0048】
ここで、
図4に示すチャックテーブル3の回転中心309と枠体切り欠き部317とを通る砥石軌跡R21の長さが、枠体切り欠き部317を通らない砥石軌跡R23の長さに比べて短くなることから、枠体切り欠き部317を通る砥石軌跡エリアにおいて、研削砥石166がチャックテーブル3を下方に押す研削圧力が増える。そのため、研削砥石166が、枠体切り欠き部317を通る砥石軌跡エリアにおいて、チャックテーブル3の上面を枠体切り欠き部317を通らない砥石軌跡エリアより多く研削することで、研削後のチャックテーブル3の上面の枠体切り欠き部317を通る砥石軌跡エリアの高さを枠体切り欠き部317を通らない砥石軌跡エリアの高さよりも低く形成することができる。
【0049】
(2)第1研削工程
次いで、
図1に示す保護部材81をセルフグラインド後のチャックテーブル3の中央吸引面300と環状吸引面320とで吸引保持し、ウェーハ80の上側を向いた他方の面802を研削砥石166で研削する第1研削工程を実施する。具体的には、まず、
図1に示すロボット14が第1のカセット153からウェーハ80を一枚引き出し、ウェーハ80を仮置きテーブル157に移動させる。次いで、中心位置検出部156によってウェーハ80の中心、及びオリエンテーションフラット805が検出された後、ローディングアーム158がウェーハ80の他方の面802を吸引保持しチャックテーブル3上に搬送する。
【0050】
チャックテーブル3の中央吸引面300の回転中心309とウェーハ80の中心とが略合致し、また、切り欠き部303とウェーハ80のオリエンテーションフラット805とが略合致するように位置合わせが行われる。その後、ローディングアーム158が降下して、
図7に示すように、中央吸引面300にウェーハ80が保護部材81を介して載置され、また、中央吸引面300と環状吸引面320とに保護部材81が載置される。保護部材81は、はみ出し部814が枠体31の上面に少しだけはみ出て載置された状態になる。なお、ウェーハ80の中心とは、ウェーハ80の外周のうち円弧状の外周から等距離にある一点である。即ち、ウェーハ80の中心とは、仮にウェーハ80にオリエンテーションフラット805が形成されておらず、外周が真円である場合における円中心である。
【0051】
チャックテーブル3にウェーハ80が載置された後、
図5に示す中央用バルブ378及び環状用バルブ379が開かれた状態で、吸引源37が作動することで生み出された吸引力が中央吸引面300及び環状吸引面320に伝達され、チャックテーブル3によってウェーハ80が保護部材81を介して吸引保持される。その後、ウェーハ80を保持したチャックテーブル3が、研削ユニット16の下まで+Y方向へ移動する。そして、研削砥石166の回転軌跡がチャックテーブル3の回転中心309を通るように位置づけされる。
【0052】
図1に示す研削ホイール164が例えば+Z方向側から見て時計回り方向に所定の回転速度で回転する。そして、研削ユニット16が下降して、回転する研削砥石166がウェーハ80の上側を向いた他方の面802に当接することで研削が行われる。研削中は、
図7に示すチャックテーブル3が例えば+Z方向側から見て時計回り方向に回転して中央吸引面300及び環状吸引面320上に保護部材81を介して吸引保持されたウェーハ80も回転するので、研削砥石166がウェーハ80の他方の面802の全面の研削加工(例えば、本実施形態のような内外研削加工)を行う。また、研削水が研削砥石166とウェーハ80との接触部位に対して供給され、接触部位が冷却・洗浄される。
【0053】
ここで、
図7に示すように、保護部材81のはみ出し部814は、環状吸引面320及び弓型吸引面322により吸引保持されているため、研削中にばたついてしまうことが無く、
図1に示す研削砥石166に接触してしまうことが防がれる。
【0054】
そして、本実施形態においては、
図7に示すウェーハ80が結晶方位を示すオリエンテーションフラット805を有していることに対応して、枠体31に枠体切り欠き部317を備える実施形態1のチャックテーブル3を用いているため、ウェーハ80を均一厚みに研削できる。ここで、例えば、実施形態1のチャックテーブル3が枠体切り欠き部317を備えておらず、枠体31の上面に段差が無く面一であると仮定した場合を想定する。そして、枠体切り欠き部317を備えないと仮定したチャックテーブル3をセルフグラインドした中央吸引面300に、保護部材81を介してウェーハ80を吸引保持させ、研削砥石166でウェーハ80の他方の面802を研削すると、チャックテーブル3の回転中心309と合致しているウェーハ80の中心とウェーハ80のオリエンテーションフラット805とを通る砥石軌跡R11の長さが、オリエンテーションフラット805を通らない砥石軌跡R13の長さに比べて短くなることから、オリエンテーションフラット805を通る砥石軌跡エリアにおいて、研削砥石166がウェーハ80を中央吸引面300に向かって押す研削圧力が増えるため、研削砥石166がウェーハ80のオリエンテーションフラット805を通る砥石軌跡エリアにおいてその他のエリアより多く研削してしまうことで、研削後のウェーハ80のオリエンテーションフラット805に対応するエリアの厚みが他のエリアよりも薄くなってしまうという問題があった。
【0055】
しかし、
図7に示す本実施形態1のチャックテーブル3は、本第1研削工程におけるウェーハ80のオリエンテーションフラット805を通る砥石軌跡エリアにおいても、ウェーハ80に掛かる研削圧力が他の砥石軌跡エリアよりも増加してしまうことが無いようにするために、枠体31の環状壁312の中央吸引板30の切り欠き部303に対応する部分の上面に環状壁312が一部切り欠かれて段差状となる枠体切り欠き部317を設けている。そして、
図7に示す枠体切り欠き部317を備えるチャックテーブル3を先に説明した準備工程においてセルフグラインドしたことで、枠体切り欠き部317を通る砥石軌跡エリアに対応する中央吸引面300、弓型吸引面322、及び枠体31の欠け部対応上面314の高さが、それぞれの枠体切り欠き部317を砥石軌跡が通らない他のエリアより低くなっている。そのため、該セルフグラインド後のチャックテーブル3の中央吸引面300で保持したウェーハ80を研削すると、ウェーハ80のオリエンテーションフラット805に対応する部分が、
図1に示す研削砥石166の下面に対して他の部分より低くなった状態で研削が行われるため、研削後のウェーハ80のオリエンテーションフラット805に対応する部分の厚みが、他の部分よりも薄くなってしまう量を小さくする事ができる。即ち、研削後のウェーハ80をより均一厚みにすることが可能となる。
なお、
図4、
図7、
図8では、枠体切り欠き部317が、平面視で内側辺が直線で外側辺が円弧で形成される弓型形状であるが、
図9に示すように、枠体切り欠き部317を、平面視で内側辺が円弧状で外側辺が円弧で形成される三日月型形状にしてもよい。
このようにして、枠体切り欠き部317を通る砥石軌跡エリアにおいて、研削砥石166がチャックテーブル3を下方に押す研削圧力(ウェーハ80を下方に押す研削圧力)を均一にする。
このようにして、ウェーハ80が所定時間研削された後に、
図1に示す研削ユニット16が上方に引き上げられて、研削砥石166がウェーハ80から離間して他方の面802の研削が終了する。
【0056】
(3)剥離工程
第1研削工程が完了した後、チャックテーブル3が-Y方向に送られて、
図1に示すアンローディングアーム159がウェーハ80の上側を向いている研削後の他方の面802を吸引保持した後、ウェーハ80を洗浄ユニット106に移動させる。そして、洗浄ユニット106において、ウェーハ80の主に他方の面802の洗浄が所定時間行われた後、ウェーハ80がエア乾燥、又はスピン乾燥が行われる。
【0057】
次いで、
図1に示す剥離機構107が洗浄ユニット106のスピンナテーブルに吸引保持されているウェーハ80を、吸引パッド等によって吸引保持した後に上昇させる。そして、下方に向かって露出した保護部材81のウェーハ80からはみ出したはみ出し部814をメカニカルクランプ等によって把持して、メカニカルクランプとウェーハ80とを水平方向、又は鉛直方向に相対的に離間させるように移動させることで、保護部材81をウェーハ80の下面となっている一方の面801から剥離する。
【0058】
(4)第2研削工程
次いで、保護部材81が剥離されたウェーハ80が、
図1に示す洗浄ユニット106のスピンナテーブルに載置され、次いで、ロボット14によって洗浄ユニット106から搬出される。搬送中に、ウェーハ80の他方の面802を上側から吸引保持していたロボットハンド140が上下反転して、ウェーハ80の保護部材81が剥離された一方の面801が上側に向けられる。
【0059】
さらに、
図1に示す仮置きテーブル157上方でロボットハンド140が下降して、ロボットハンド140のU字状の開口内に開口よりも小径の仮置きテーブル157が進入するとともに、ウェーハ80の下方を向いている他方の面802に仮置きテーブル157の吸引面を接触させる。次いで、ローディングアーム158が仮置きテーブル157に載置されたウェーハ80の一方の面801を上方から吸引保持し、ウェーハ80をチャックテーブル3上に搬送する。
なお、洗浄ユニット106のスピンナテーブルがロボット14のロボットハンド140のU字状の開口よりも小径であるならば、ロボット14がウェーハ80の一方の面801を下側から吸引保持してスピンナテーブルからウェーハ80を受け取った後、ロボットハンド140を上下反転させ、仮置きテーブル157の吸着面にウェーハ80の他方の面802を吸引保持させてもよい。
【0060】
図8に示すチャックテーブル3の中央吸引面300の回転中心309とウェーハ80の中心とが略合致し、また、切り欠き部303とウェーハ80のオリエンテーションフラット805とが略合致するように位置合わせが行われる。その後、
図1に示すローディングアーム158が降下して、中央吸引面300にウェーハ80が載置され、また、ウェーハ80の外周がバリア34の上面に少しだけはみ出て載置された状態になる。
【0061】
チャックテーブル3にウェーハ80が載置された後、
図5に示す中央用バルブ378が開かれ、環状用バルブ379が閉じられた状態で、吸引源37(
図5参照)が作動することで生み出された吸引力が中央吸引面300に伝達され、中央吸引面300によってウェーハ80の他方の面802が吸引保持される。その後、チャックテーブル3が、
図1に示す研削ユニット16の下まで+Y方向へ移動する。そして、研削砥石166の回転軌跡がウェーハ80の中心を通るように位置合わせが行われる。
【0062】
そして、研削ユニット16が降下して、例えば+Z方向側から見て時計回り方向に回転する研削砥石166がウェーハ80の一方の面801に当接することで研削が行われる。研削中は、チャックテーブル3が例えば+Z方向側から見て時計回り方向に回転して中央吸引面300で吸引保持されたウェーハ80も回転するので、研削砥石166がウェーハ80の一方の面801の全面の研削加工を行う。また、研削水が研削砥石166とウェーハ80との接触部位に対して供給され、接触部位が冷却・洗浄される。ここでも、第1研削工程と同様に、ウェーハ80のオリエンテーションフラット805を通る砥石軌跡R11においても、ウェーハ80に掛かる研削圧力がオリエンテーションフラット805を通らない砥石軌跡R13よりも増加してしまうことが無いため、研削後のウェーハ80のオリエンテーションフラット805に対応する部分の厚みが他の部分よりも薄くなってしまう量を、セルフグラインドした実施形態1のチャックテーブル3を用いることで小さくする事ができる。即ち、研削後のウェーハ80を均一厚みにすることが可能となる。
【0063】
第2研削工程が完了して仕上げ厚さとなったウェーハ80から研削砥石166が離間し、
図1に示すアンローディングアーム159がウェーハ80をチャックテーブル3から搬出して、洗浄ユニット106に搬送する。ウェーハ80の洗浄が完了すると、ロボット14がウェーハ80を洗浄ユニット106から搬出して、第2のカセット154に収納する。
【0064】
上記のように、本発明に係るウェーハの製造方法は、保護部材81をチャックテーブル3の中央吸引面300と環状吸引面320とで吸引保持してばたつくことが無いようにしつつ、ウェーハ80の他方の面802を研削砥石166で研削する第1研削工程を実施し、第1研削工程で研削したウェーハ80から保護部材81を剥離した後、ウェーハ80の他方の面802を中央吸引面300のみで吸引保持し、ウェーハ80の一方の面801を研削砥石166で研削するため、研削砥石166に保護部材81を接触させることがない。そのため、研削砥石166の研削力を低下させる事が無い。
【0065】
本発明に係るウェーハの製造方法の各工程、及びチャックテーブルは上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、ウェーハの製造方法に使用し、チャックテーブルが配設される研削装置1の構成要素も、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0066】
研削装置1で研削する
図2に示すウェーハ80が、例えば、オリエンテーションフラット805を備えない全周が円のウェーハ80である場合には、研削装置1に配設されるチャックテーブルは、実施形態1のチャックテーブル3に代えて、
図6に示す実施形態2のチャックテーブル36であってもよい。この場合においても、本発明に係るウェーハの製造方法は、保護部材81をチャックテーブル36の中央吸引面300と環状吸引面320とで吸引保持し研削中にばたつかせずに、ウェーハ80の他方の面802を研削砥石166で研削する第1研削工程を実施し、第1研削工程で研削したウェーハ80から保護部材81を剥離した後、ウェーハ80の他方の面802を中央吸引面300のみで吸引保持し、ウェーハ80の一方の面801を研削砥石166で研削するため、研削砥石166に保護部材81を接触させることがない。そのため、研削砥石166の研削力を低下させる事が無い。
【符号の説明】
【0067】
1:研削装置 10:ベース 102:コラム 106:洗浄ユニット
107:剥離機構
14:ロボット 140:ロボットハンド
150:第1のカセットステージ 151:第2のカセットステージ 156:中心位置検出部 157:仮置きテーブル
158:ローディングアーム 159:アンローディングアーム
16:研削ユニット 160:回転軸 162:モータ 164:研削ホイール
17:研削送りユニット 18:厚さ測定部
3:実施形態1のチャックテーブル
30:中央吸引板 300:中央吸引面 303:切り欠き部
31:枠体 311:枠体基部 312:環状壁 313:円弧状上面 314:欠け部対応上面 317:枠体切り欠き部
32:環状吸引板 320:環状吸引面 322:弓型吸引面
33:テーブルベース 34:バリア
37:吸引源 370:中央吸引路 373:ロータリージョイント 374:圧力計
375:環状側吸引路 378:中央用バルブ 379:環状用バルブ
38:回転機構 391:エア供給源 392:水供給源
36:実施形態2のチャックテーブル
80:ウェーハ 801:一方の面 802:他方の面 805:オリエンテーションフラット
81:保護部材 813:シート 812:樹脂層 814:はみ出し部