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特許7667105ネガ型感光性樹脂組成物、パターン形成方法、硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、及び電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、パターン形成方法、硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20250415BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250415BHJP
   C08F 20/40 20060101ALI20250415BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20250415BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250415BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/004 501
C08F20/40
C08F20/28
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022014785
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2022151614
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2021049177
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 匡史
(72)【発明者】
【氏名】浦野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
(72)【発明者】
【氏名】竹村 勝也
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-174195(JP,A)
【文献】特開2016-004165(JP,A)
【文献】特開2016-003286(JP,A)
【文献】特開2017-173734(JP,A)
【文献】特開2010-168581(JP,A)
【文献】特開2019-144395(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026549(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084149(WO,A1)
【文献】特開2008-033159(JP,A)
【文献】特開2005-250161(JP,A)
【文献】特開2006-133757(JP,A)
【文献】特開2002-040655(JP,A)
【文献】国際公開第2021/245650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08F 20/40
C08F 20/28
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネガ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物と、
(C)光により酸を発生する化合物と、
(D)熱架橋剤と、
を含有するものであり、
前記(B)成分における前記環化重合してなる構造単位が下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)で表される構造単位の少なくとも1つ以上であることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R 、R 、R 、R 、R および、R はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。)
【請求項2】
前記(B)成分が更に下記一般式(5)又は(5’)で表される構造単位を含むアルカリ可溶性の高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-R-又は-C(=O)-N(ROH)-である。Rは2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、式中の芳香族炭化水素基の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。pは0又は1である。)
【請求項3】
前記(B)成分が更に下記一般式(6)で表される構造単位及び、下記一般式(α)で示される構造単位のどちらか一方又は、その両方を含む架橋性の高分子化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R10はエステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はR10と結合して環を形成してもよい。R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R13は、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R10と結合して環を形成してもよい。mは0又は1である。pは0又は1である。R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。)
【請求項4】
前記(B)成分が更に下記一般式(7)で表される構造単位を含む架橋型アルカリ可溶性高分子化合物であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R14は、水素原子又はメチル基を示し、R15は単結合又は(l+1)価の炭素数1~13の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R16-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-N(R16OH)-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R16は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。lは、0又は1である。)
【請求項5】
前記(B)成分が、下記一般式(3)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(α)のいずれか又はその両方、及び下記一般式(7)で示される構造単位を含む架橋型アルカリ可溶性高分子化合物であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(式中、Rは水素原子又は炭素数が1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-R-又は-C(=O)-N(ROH)-である。Rは2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、式中の芳香族炭化水素基の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R10はエステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はR10と結合して環を形成してもよい。R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R13は、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R10と結合して環を形成してもよい。R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。R14は、水素原子又はメチル基を示し、R15は単結合又は(l+1)価の炭素数1~13の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R16-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-N(R16OH)-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R16は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0又は1である。mは0又は1である。lは、0又は1である。0<a1<1.0、0<a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦b1<1.0、0<a3+b1<1.0、0<a4<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4≦1.0、0<a1+a2+b1+a4≦1.0、0<a1+a2+a3+b1+a4≦1.0のいずれかを満たす。)
【請求項6】
前記(D)成分が、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10~100質量部含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更に(E)塩基性化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、加熱処理を行った基板にアルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
請求項に記載のパターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱、後硬化する工程を含むことを特徴とする硬化被膜形成方法。
【請求項11】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする層間絶縁膜。
【請求項12】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする表面保護膜。
【請求項13】
請求項11に記載の層間絶縁膜又は請求項12に記載の表面保護膜を有するものであることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、該ネガ型感光性樹脂組成物を用いたアルカリ水溶液による現像が可能なパターン形成方法、硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等様々な電子機器の小型化や高性能化に伴い、半導体素子においてもさらなる小型化、薄型化及び高密度化への要求が急速に高まっている。これに伴い、半導体素子の層間絶縁膜、表面保護膜にはより優れた電気特性、耐熱性、機械特性等を併せ持つことが求められている。
【0003】
三次元積層といった高密度実装技術において、基板上にパターン形成可能な感光性絶縁材料は、以前からポリイミド膜が保護被膜や絶縁層として活用されており、その絶縁性、機械特性、基板との密着性等が注目され続け、現在においても開発が旺盛である。
【0004】
上記の要求特性を更に改善するために、様々なアプローチがなされている。特に、後硬化温度の低温化を目的に既閉環ポリイミド樹脂を用いた感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、解像性、機械特性(伸びや引張強度)や密着力と言った硬化膜物性を両立するのは困難であり、改善の余地がある。
【0005】
また、硬化膜の機械強度改善として、(メタ)アクリル樹脂を添加し、リソグラフィー特性と硬化膜物性の両立が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。しかし、メイン樹脂の改質を目的とするため、硬化膜の機械強度の値には、改善の余地がある。
【0006】
一方で、この改善として、ポリイミド、その前駆体、ポリベンゾオキサゾール、その前駆体以外に、環状オレフィン(ノルボルネン型モノマー、無水マレイン酸やマレイミド)に由来する構造単位や、環化重合モノマー単位のように主鎖骨格に環状構造を導入した樹脂での検討が行われている(特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9)。
【0007】
特許文献6、特許文献7において、N-ヒドロキシマレイミド単位とノルボルネン単位を含むアルカリ可溶性樹脂、更には、ノボラック樹脂を添加し、キノンジアジド化合物を用いたポジ型感光性樹脂組成物が提案されているが、微細化に対する詳細な検討はなく、また、硬化膜物性に関する記載がなされていない。
【0008】
また、特許文献8において、(メタ)アクリレート単位とマレイミドからなる共重合体、2官能以上の重合性基を有する化合物、光重合開始剤を用いたネガ型感光性樹脂組成物が提案されているが、微細パターンの解像性や機械的強度に関する記載がなされていない。
【0009】
また、特許文献9において、側鎖に酸基を導入したモノマーと、マレイミド類、及び環状環化モノマーからなる共重合体を用い、側鎖の酸基に不飽和二重結合を導入したアルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤を用いたネガ型感光性樹脂組成物が提案されており、硬化膜の弾性回復率や破壊強度といった機械特性は優れる材料である。しかし、ラジカル架橋を用いた感光特性のため、微細化には、改善の余地がある。
【0010】
このように、今後、チップの高密度化、高集積化に伴い、絶縁保護膜の再配線技術におけるパターンの微細化も益々進むであろうことから、感光性樹脂組成物において、低温加熱によって得られる保護被膜の機械特性の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を具現化できる組成物が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4530284号公報
【文献】特開2006-313237号公報
【文献】特許5884837号公報
【文献】特開2015-129791号公報
【文献】特開2015-200819号公報
【文献】特開2019-045622号公報
【文献】特開2020-170103号公報
【文献】特許第6315204号公報
【文献】特許第6694230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができ、且つ低温域の広い温度域で硬化した場合でも破断伸度、引張強度といった機械特性が良好であるネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、ネガ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物と、
(C)光により酸を発生する化合物と、
(D)熱架橋剤と、
を含有するものであるネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
このようなネガ型感光性樹脂組成物であれば、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができ、且つ低温域の広い温度域で硬化した場合でも破断伸度、引張強度といった機械特性が良好になる。
【0015】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、前記(B)成分における前記環化重合してなる構造単位が下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)で表される構造単位の少なくとも1つ以上であることが好ましい。
【化1】
(式中、R、R、R、R、Rおよび、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。)
【0016】
このように主鎖に環構造を有することで、低温で硬化した場合でも破断伸度や引張強度といった機械特性が良好となり、更に耐熱性が向上する。
【0017】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、前記(B)成分が更に下記一般式(5)又は(5’)で表される構造単位を含むアルカリ可溶性の高分子化合物であることが好ましい。
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-R-又は-C(=O)-N(ROH)-である。Rは2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、式中の芳香族炭化水素基の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。pは0又は1である。)
【0018】
このようなネガ型感光性樹脂組成物であれば、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができる。
【0019】
更に、前記(B)成分が更に下記一般式(6)で表される構造単位及び、下記一般式(α)で示される構造単位のどちらか一方又は、その両方を含む架橋型アルカリ可溶性高分子化合物であることが好ましい。
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R10はエステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はR10と結合して環を形成してもよい。R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R13は、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R10と結合して環を形成してもよい。mは0又は1である。pは0又は1である。式中、R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。)
【0020】
このようなアルカリ可溶性高分子化合物は、架橋性に優れる架橋性基が存在するため、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基と架橋反応し、低温で硬化した場合でも破断伸度や引張強度といった機械特性が良好となり、更に耐熱性が向上する。
【0021】
更に、前記(B)成分が更に下記一般式(7)で表される構造単位を含む架橋型アルカリ可溶性高分子化合物であることが好ましい。
【化4】
(式中、R14は、水素原子又はメチル基を示し、R15は単結合又は(l+1)価の炭素数1~13の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R16-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-N(R16OH)-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R16は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。lは、0又は1である。)
【0022】
このような高分子化合物であれば、アルカリ溶解性を維持しつつ、(D)熱架橋剤と反応するため、高解像なパターンを得ることが出来る。
【0023】
更に、前記(B)成分が、下記一般式(3)、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(α)のいずれか又はその両方、及び下記一般式(7)で示される構造単位を含む架橋型アルカリ可溶性高分子化合物であることが好ましい。
【化5】
(式中、Rは水素原子又は炭素数が1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-R-又は-C(=O)-N(ROH)-である。Rは2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、式中の芳香族炭化水素基の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R10はエステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はR10と結合して環を形成してもよい。R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R13は、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R10と結合して環を形成してもよい。R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。R14は、水素原子又はメチル基を示し、R15は単結合又は(l+1)価の炭素数1~13の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R16-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-N(R16OH)-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R16は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0又は1である。mは0又は1である。lは、0又は1である。0<a1<1.0、0<a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦b1<1.0、0<a3+b1<1.0、0<a4<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4≦1.0、0<a1+a2+b1+a4≦1.0、0<a1+a2+a3+b1+a4≦1.0のいずれかを満たす。)
【0024】
このような架橋性の高分子化合物であれば、十分なアルカリ溶解性を維持しつつ、高解像なパターンを得ることが出来る。また、主鎖骨格に環構造が導入され、且つ架橋性に優れる架橋性基も存在するため、低温で硬化した場合でも破断伸度や引張強度といった機械特性が良好となる。
【0025】
また、前記(D)成分が、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものであることが好ましい。
【0026】
このような(D)成分であれば、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性が好適なものとなり、リソパターニングにおけるPEB(Post Exposure Bake)温度で、十分に架橋反応が進行し、良好なリソパターンニングが可能となる。
【0027】
また、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10~100質量部含有するものであることが好ましい。
【0028】
この範囲内であれば、リソグラフィー特性を維持したまま、十分な硬化膜の機械特性、特に、伸度と引張強度を得ることが出来る。
【0029】
更に(E)塩基性化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0030】
(E)成分の塩基性化合物を含むことで、リソパターング時の溶解コントラストを向上出来るだけでなく、パターン形状を制御することが出来る。また、(F)成分の熱酸発生剤は、架橋、硬化反応をより一層進行させることで、得られたパターンもしくは被膜の機械的強度、耐薬品性、密着性等をより一層向上させることが出来る。更に、(G)成分の酸化防止剤は、高湿試験や熱衝撃試験などの信頼性試験時での硬化膜の酸化劣化による物性劣化を抑制することが出来、より好適な硬化皮膜を形成することが出来る。また、(H)成分のシラン化合物は、得られたパターンもしくは被膜の基板への密着性をより一層向上させることが出来る。
【0031】
また、本発明は、(1)上記のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、加熱処理を行った基板にアルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0032】
このようなパターン形成方法であれば、上記ネガ型感光性樹脂組成物を用いることにより、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることが出来る。
【0033】
また、本発明は、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱、後硬化する工程を含む硬化被膜形成方法を提供する。
【0034】
このような硬化被膜形成方法であれば、低温で硬化した場合でも機械特性が良好な硬化皮膜(パターン)を形成することが出来る。
【0035】
また、本発明は、上記ネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものである層間絶縁膜を提供する。
【0036】
また、本発明は、上記ネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものである表面保護膜を提供する。
【0037】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜は、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びアルカリ性剥離液等に対する薬品耐性に優れ、それを保護用被膜とした半導体素子の信頼性にも優れるため、電気・電子部品、半導体素子等の保護用被膜(層間絶縁膜あるいは表面保護膜)として好適である。
【0038】
また、本発明は、上記層間絶縁膜又は上記表面保護膜を有するものである電子部品を提供する。
【0039】
このような保護用被膜(層間絶縁膜又は表面保護膜)は、その耐熱性、薬品耐性、絶縁性から、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜等に有効であり、信頼性に優れた電子部品とすることが出来る。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明であれば、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができ、且つ低温域の広い温度域で硬化した場合でも高伸度、高強度で機械特性が良好であり、密着力も優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】密着力測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上述のように、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができ、且つ低温で硬化した場合でも機械特性が良好である感光性樹脂組成物が求められていた。
【0043】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ネガ型感光性樹脂組成物であって、(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物と、(C)光により酸を発生する化合物と、(D)熱架橋剤とを含有するものであることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られたパターンは、微細パターン形成可能で、且つ得られる硬化膜の機械特性が良好になることを見出した。
【0044】
さらに、上記ネガ型感光性樹脂組成物を用い、パターン形成、加熱によって得られた保護被膜は、高温高湿試験後の密着力に優れることを見出した。即ち、上記ネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成したパターンを有して得られた硬化被膜が、電気、電子部品保護被膜、絶縁保護被膜として優れることを見出して、本発明を完成させた。なお、本明細書においては、電気・電子部品をまとめて「電子部品」ともいう。
【0045】
即ち、本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物と、
(C)光により酸を発生する化合物と、
(D)熱架橋剤と、
を含有するものであるネガ型感光性樹脂組成物である。
【0046】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物について説明する。
【0048】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物と、(C)光により酸を発生する化合物と、(D)熱架橋剤と、を含有する。上記ネガ型感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能である。また、上記ネガ型感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分以外に、必要に応じて(E)塩基性化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物などを更に含有することができる。以下、これら成分について詳細に説明する。
【0049】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明で用いる(A)アルカリ可溶性樹脂は、ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれる。上記樹脂(A)は、上記構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂であれば特に限定されないが、下記一般式(8)及び/又は(9)で表される構造を含むものであることが好ましい。
【0050】
【化6】
(式中、Xは4価の有機基であり、sは0又は1を表し、Zは2価の結合基であり、s=0のとき、式中の2つの芳香環は結合基を介さず直結する。)
【化7】
(式中、Xは2価の有機基であり、s及びZは上記と同様である。)
【0051】
上記一般式(8)中のXは、4価の有機基であるが、4価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の4価の有機基であり、さらに好ましくは下記式(10)で示される4価の有機基である。また、
の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0052】
【化8】
(式中、点線は結合を表す。)
【0053】
上記一般式(8)中のsは、0又は1を表し、s=0の場合、上記一般式(8)中の2つの芳香環は2価の結合基Zを介さず直結する。
【0054】
一方、s=1の場合、上記一般式(8)中の2つの芳香環は、2価の結合基Zを介して結合する。Zは、2価の基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の2価の有機基であり、さらに好ましくは下記式(11)で示される2価の結合基である。また、Zの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0055】
【化9】
(式中、q、q、及びqは、1~6の整数を表し、q及びqは1~10の整数を表す。点線は結合を表す。)
【0056】
特に、好ましい2価の結合基Zは、下記式(12)又は(13)で示される2価の基である。
【化10】
(式中、点線は結合を表す。)
【0057】
上記一般式(8)で示される構造単位としては、上記一般式(8)におけるZが上記式(12)で示される基である場合、下記一般式(8-1)で示される構造単位が好ましく、上記一般式(8)におけるZが上記式(13)で示される基である場合、下記一般式(8-2)で示される構造単位が好ましい。
【化11】
【化12】
(式中、Xは上記と同様である。)
【0058】
上記一般式(8-1)のように、2価の結合基であるZが上記式(12)で示されるヘキサフルオロプロピレン基であって、フェノール性水酸基のp-位に位置する場合、ヘキサフルオロプロピレン基が電子吸引性の基であることから、上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0059】
同様に、上記一般式(8-2)のように、2価の結合基であるZが上記式(13)で示されるスルホン基であって、フェノール性水酸基のp-位に位置する場合、スルホン基も電子吸引性の基であることから、上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0060】
上記一般式(9)中のXは、2価の有機基であり、2価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂肪族鎖長構造もしくは脂環式脂肪族基又は芳香族基の2価の有機基である。さらに好ましくは下記式(14)で示される2価の有機基である。また、Xの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0061】
【化13】
(式中、R17、R18は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~6のアルキル基であり、q6は1~30の整数であり、点線は結合を表す。)
【0062】
上記一般式(9)中のXが脂肪族鎖長構造である2価の有機基である場合、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜の機械的強度、特に伸度が高くなることから好ましい。
【0063】
上記一般式(9)中のs、Zは上記と同様であり、Zはアルカリ水溶液の現像液に対する溶解性の観点から、上記式(12)または(13)が好ましい。この場合も、上記一般式(8-1)、(8-2)の場合と同様に、フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液である現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0064】
また本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂(A)は、上記一般式(8)、(9)で示される構造単位に加え、更に、下記一般式(15)で示される構造単位(以下、構造単位(15)とも言う)を含んでいても良い。
【化14】
(式中、XはXと同様である。Xは2価の有機基である。)
【0065】
上記一般式(15)中のXは、2価の有機基であり、2価の有機基であれば限定されるものではないが、炭素数6~40の2価の有機基であることが好ましく、置換基を有した芳香族環もしくは脂肪族環を1~4個含有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基もしくはシロキサン基であることがより好ましい。さらに好適なXとしては、下記式(16)又は下記一般式(17)で示される構造が挙げられる。また、Xの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0066】
【化15】
(式中、点線はアミノ基との結合を表す。)
【0067】
【化16】
(式中、点線はアミノ基との結合を表し、R19はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、又はトリフルオロメチル基を表し、qは2~20の整数を表す。)
【0068】
また、本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂(A)は、上記一般式(8)、(9)で示される構造単位に加え、更に、下記一般式(18)で示される構造単位(以下、構造単位(18)とも言う)を含有していることが好ましい。
【化17】
(式中、Xは上記Xと同一もしくは異なる4価の有機基であり、Xは下記一般式(19)で示される基である。)
【化18】
(式中、R20~R23はそれぞれ独立に炭素数2~10の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、mは1~40の整数、m2、はそれぞれ独立に0~40の整数である。)
【0069】
上記一般式(18)中のXは、Xについて挙げた4価の有機基、例えば、上記式(10)で示される4価の有機基であることができる。また、X(上記一般式(19)で示される基)において、好ましく用いることのできる有機基としては、具体的には下記のものを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【化19】
【0070】
アルカリ可溶性樹脂(A)がこのような構造単位(19)を含むことで、柔軟性が生まれ高伸度かつ低反りである硬化膜を得ることができる。
【0071】
更に、本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂(A)は、下記一般式(20)もしくは(21)で示される構造単位(以下構造単位(20)、構造単位(21))を含有することが出来る。
【化20】
【化21】
(式中、X10は上記Xと同一もしくは異なる4価の有機基であり、X11はXと同一もしくは異なる2価の有機基であり、s、Zは上記と同じである。R24及びR25はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、又は下記一般式(22)で示される有機基であり、R24及びR25の少なくとも1つが下記一般式(22) で示される有機基である。)
【化22】
(式中、点線は結合を表す。R26 は水素原子又は炭素数1~3の有機基であり、R27 及びR28 はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の有機基であり、oは2~10の整数である。)
【0072】
上記構造単位(20)、(21)中のX10は、4価の有機基であるが、上記のXと同一もしくは異なってもよく、4価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の4価の有機基であり、さらに好ましくは上記式(10)で示される4価の有機基である。また、X10の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0073】
一方、上記構造単位(21)中のX11は、2価の有機基であるが、上記のXと同一もしくは異なってもよく、2価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数6~40の2価の有機基であることが好ましく、置換基を有した芳香族環もしくは脂肪族環を1~4個含有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基もしくはシロキサン基であることがより好ましい。さらに好適なX11としては、上記式(16)又は一般式(17)で示される構造が挙げられる。また、X11の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0074】
上記構造体(20)、(21)中のR24及びR25は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、又は上記一般式(22)で示される有機基であり、R24及びR25の少なくともいずれか1つが上記一般式(22)で示される有機基である。
【0075】
上記一般式(22)中のR26は、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の感光特性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0076】
上記一般式(22)中のR27及びR28は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。
【0077】
上記一般式(22)中のoは、2~10の整数であり、感光特性の観点から好ましくは2~4の整数である。さらに好ましくは、oは2である。
【0078】
[(B)環化重合してなる構造単位を有する高分子化合物]
本発明で用いる高分子化合物(B)は、環化重合してなる構造単位を有するものであれば特に限定されない。
【0079】
環化重合してなる構造単位を得るためのモノマーとして、好ましく用いることのできる例は、ジアリル4級アンモニウム塩、エーテル型パーフルオロ1,6-ジエンと、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0080】
更に、基板との密着性を向上させるために、上記(B)成分における上記環化重合してなる構造単位が下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)及び下記一般式(4)で表される構造単位の少なくとも1つ以上であることがより好ましい。
【化23】
【0081】
ここで、式中、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である。
【0082】
環化重合してなる構造単位を形成するためのモノマー単位として、特に、以下の一般式(23)、(24)で挙げるモノマー単位が好ましい。これらのモノマーは、単独で使用しても、2種以上使用してもよい。
【0083】
【化24】
(式中、R、R、およびRは、前記の通り。)
【0084】
特に、市販で用いることが出来る具体例として、アクリキュア RDシリーズ、アクリキュア REシリーズ(日本触媒(株)製、商品名)が挙げられる。
【0085】
特に、重合性や安定性の観点から、上記一般式(3)の構造単位、上記モノマー単位(23)がより好ましい。
【0086】
更に、アルカリ溶解性を付与し、架橋密度を向上させるため、(B)成分の高分子化合物は下記一般式(5)又は(5’)で表される構造単位を含有することがより好ましい。
【化25】
【0087】
ここで、式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-R-又は-C(=O)-N(ROH)-である。Rは2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、式中の芳香族炭化水素基の水素原子はメチル基に置換されていてもよい。pは0又は1である。
【0088】
また、一般式(5)で表される構造は、フェノール性水酸基のp-位に電子吸引性の基であるエステル基、又はアミド基を有することが好ましく、この場合上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上する。上記一般式(5)及び(5’)の構造単位を形成するためのモノマーとして好ましく用いることのできる例として、具体的には下記に例示することができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0089】
【化26】
(式中、Rは上記の通り。)
【0090】
【化27】
(式中、Rは上記の通り。)
【0091】
一般式(5)及び(5’)で示される構造は、アルカリ溶解性に加えて架橋を促進させるユニットとして有効であり、環化重合してなる構造単位と併用することによって硬化膜の機械特性をより一層向上させることが可能になる。
【0092】
更に、架橋密度を向上させるために、(B)成分の高分子化合物には下記一般式(6)で表されるエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマー、又は、下記一般式(α)で示されるブロックイソシアネート基を有するモノマーを共重合させることが好ましい。
【化28】
【0093】
ここで、式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xはそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R10はエステル基、エーテル基、芳香族炭化水素基を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はR10と結合して環を形成してもよい。R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R13は、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R10と結合して環を形成してもよい。mは0又は1である。pは0又は1である。また、R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。
【0094】
上記一般式(6)の構造単位を形成するためのモノマーの例としては、下記のものが挙げられる。
【化29】
(式中、Rは上記の通り。)
【0095】
【化30】
(式中、Rは上記の通り。)
【0096】
【化31】
(式中、Rは上記の通り。)
【0097】
なお、エポキシ基、オキセタニル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーの一部
は、特開2003-55362号公報、特開2005-8847号公報、特開2005-
18012号公報に開示されている。
【0098】
ここで、一般式(α)中、R’は、水素原子又はメチル基を示し、R’は、単結合又はアルキレン基を示し、R’は、ブロックイソシアネート基である。
【0099】
上記ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基(-N=C=O)が適当な保護基によりブロックされた有機基である。ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基とブロック化剤を反応させることにより形成することができる。
【0100】
ブロックイソシアネート基は、常温では安定であるが、ある温度以上で、ブロック化剤が脱離(脱ブロック)して、(A)成分中のヒドロキシ基又はカルボキシル基とイソシアネート基が反応し架橋構造を形成する。ブロック化剤としては、イソシアネートと反応可能な活性水素含有化合物であり、例えばアルコール、フェノール、多環フェノール、アミド、イミド、イミン、チオール、オキシム、ラクタム、活性水素含有複素環、活性メチレン含有化合物が挙げられる。
【0101】
なお、好適なブロックイソシアネート基は、特許6601628号公報の段落[0015]~[0025]に記載されており、その化合物を用いることができる。
【0102】
特に、重合性が良好で、市販に用いることが出来る点で、下記に示すモノマー単位がより好ましい。また、これらのモノマーは、単独で使用しても、2種以上使用してもよい。
【化32】
(式中、R’は上記の通り。)
【0103】
更に、当該感光性組成物の回転塗布後加熱処理(プリベーク)や、露光後加熱処理(ポストエクスポージャベーク(PEB)で脱ブロックせず、現像後加熱処理による後硬化で、脱ブロックし、アルカリ可溶性樹脂と架橋反応することが好ましい。
【0104】
従って、140℃から200℃までの範囲で、脱ブロックする下記に示すモノマー単位がより好ましい。
【0105】
【化33】
(式中、R’は、前記の通り。)
【0106】
特に、市販で用いることが出来る具体例として、カレンズ MOIシリーズ、AOIシリーズ(昭和電工(株)製、商品名)が挙げられる。
【0107】
更に、リソパターニング時の架橋反応性をより向上させ、アルカリ現像液に対する未露光/露光部の溶解コントラストを向上させるといった観点から、(B)成分の高分子化合物には下記一般式(7)の構造単位を共重合させることが好ましい。
【化34】
【0108】
ここで、式中、R14は、水素原子又はメチル基を示し、R15は単結合又は(l+1)価の炭素数1~13の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。Xはそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-O-R16-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-N(R16OH)-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R16は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。lは、0又は1である。
【0109】
上記一般式(7)の構造単位を形成するためのモノマーの例としては、下記のものが挙げられる。
【化35】
(式中、R14は上記の通り。)
【0110】
【化36】
(式中、R14は上記の通り。)
【0111】
【化37】
(式中、R14は上記の通り。)
【0112】
ここで、上記一般式(1)~(4)で示される環化重合してなる構造単位は、機械強度や耐熱性に優れるが、架橋性、アルカリ溶解性がないため、(B)成分の高分子化合物にはアルカリ溶解性に優れる上記一般式(5)、(5’)、上記一般式(7)で表される構造単位と、架橋性を有する上記一般式(6)で表されるエポキシ基、オキセタニル基、上記一般式(α)で表されるブロックイソシアネート基で表される構造単位と共重合することが好ましい。このようなものであれば、各一般式(1)~(7)で示される構造単位のみからなるポリマーよりも、機械特性、アルカリ溶解性、架橋性すべてを両立することが容易である。
【0113】
従って、このように繰り返し単位を共重合する場合は、下記式(1a)の繰り返し単
位を有することが好ましい。
【化38】
(式中、0<a1<1.0、0<a2<1.0、0≦a3<1.0、0≦b1<1.0、0<a3+b1<1.0、0<a4<1.0であり、0<a1+a2+a3+a4≦1.0、0<a1+a2+b1+a4≦1.0、0<a1+a2+a3+b1+a4≦1.0のいずれかを満たす。R、R、R~R13、R14、R15、R’~R’、X、X、X、m、pとlは、前記と同じである。
【0114】
本発明に用いる(B)成分の高分子化合物は、上記一般式(1)~(4)で表される環化重合してなる構造単位を得るためのモノマー(以下、aと表記する)、上記一般式(5)、一般式(7)で表される水酸基を有する繰り返し単位を得るモノマー(以下、b、cと表記する)、一般式(6)、一般式(α)で示される(A)成分のアルカリ可溶性樹脂と架橋する基を有する繰り返し単位を得るモノマー(以下、dと表記する)による繰り返し単位と、をベースとすることができるが、基板への密着性、硬化膜の柔軟性を向上させ、機械特性及び耐熱衝撃性をより向上させるために下記一般式(25)に表される繰り返し単位を得るモノマー(以下、eと表記する)を共重合させてもよい。
【0115】
【化39】
ここで、一般式(25)中、R29は、水素原子又はメチル基を示し、R30は、1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基、炭素数4~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数6~10の脂環式基を有してもよい。X12は-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-が好ましい。0≦e<1である。
【0116】
上記一般式(25)に表される繰り返し単位を得るモノマーとして、以下の具体例が挙げられる。アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレート、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0117】
更に、上記一般式(25)に表される繰り返し単位を得るモノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが可能であり、具体例として、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラデシルエステル、(メタ)アクリル酸ペンタデシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシルエステル、(メタ)アクリル酸オクタデシルエステル、(メタ)アクリル酸ノナデシルエステル、(メタ)アクリル酸エイコシルエステル等が挙げられる。
【0118】
更に、硬化膜の機械強度を向上させる目的で、スチレン類、ビニルナフタレン類、ビニルアントラセン類、ビニルカルバゾール類、アセナフチレン類、インデン類などの芳香族基を有するオレフィン類fや、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類などの脂環のオレフィン類gを共重合してもよい。
【0119】
上記繰り返し単位a1、a2、a3、a4、b1、e、f、gにおいて、繰り返し単位の比率は、0<a1<0.8、0<a2≦0.8、0≦a3≦0.8、0<a4≦0.8、0≦b1≦0.6、0≦e≦0.8、0≦f≦0.8、0≦g≦0.8が好ましい。より好ましくは、0<a1≦0.5、0.1≦a2≦0.6、0.1≦a3≦0.6、0.1≦a4≦0.7、0≦b1≦0.4、0≦e≦0.4、0≦f≦0.4、0≦g≦0.4である。更に好ましくは、0<a1≦0.4、0.1≦a2≦0.4、0.1≦a3≦0.4、0.2≦a4≦0.7、0≦b1≦0.2、0≦e≦0.4、0≦f≦0.4、0≦g≦0.4の範囲である。なお、a1+a2+a3+a4=1、a1+a2+b1+a4=1、a1+a2+a3+b1+a4=1、a1+a2+a3+b1+a4+e+f+g=1のいずれかを満たすものであることが好ましく、これら繰り返し単位の合計は全繰り返し単位の合計量の100モル%であることが好ましい。
【0120】
本発明のネガ型感光性組成物に用いられる(架橋性の)高分子化合物(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000~500,000、特に2,000~30,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000以上であればガラス転移温度が十分に高く、ネガ型感光性樹脂組成物の現像後の熱架橋においてパターンが変形せず、500,000以下であれば塗布時にピンホール欠陥、または、リソパターンで形成されるパターンでアルカリ可溶性樹脂と層分離を引き起こす恐れがない。なお、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0121】
また、このとき(架橋性の)高分子化合物(B)の添加量はアルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対し、10質量部以上100質量部以下であることが好ましい。添加量が10質量部以上であると上述したようなアルカリ可溶性樹脂(A)との硬化膜において、靭性が高く、100質量部以下であれば、硬化膜の引張強度が低下しないため、(架橋性の)高分子化合物(B)の添加量は上記の範囲とすることが好ましい。(B)成分の添加量はより好ましくは10質量部以上70質量部以下であり、更に好ましくは、30質量部以上50質量部以下である。この範囲とすることで、リソグラフィーパターニング性能と硬化膜物性のバランスが良好となる。
【0122】
[(C)光により酸を発生する化合物]
本発明に用いる(C)光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な化合物としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド型、ベンゾインスルホネート型、ピロガロールトリスルホネート型、ニトロベンジルスルホネート型、スルホン型、グリオキシム誘導体型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0123】
スルホニウム塩はスルホニウムカチオンとスルホネートの塩であり、スルホニウムカチオンとしてトリフェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2-ナフチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4-メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2-オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられ、スルホネートとしては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4-(4-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0124】
ヨードニウム塩はヨードニウムカチオンとスルホネートの塩であり、ヨードニウムカチオンとしてジフェニルヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、4-tert-ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンと、スルホネートとしてトリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4-(4-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのヨードニウム塩が挙げられる。
【0125】
スルホニルジアゾメタンとしては、ビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1-メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2-メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2-ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4-メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert-ブチルカルボニル-4-メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2-ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4-メチルフェニルスルホニル-2-ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert-ブトキシカルボニル-4-メチルフェニルスルホニルジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタンとスルホニルカルボニルジアゾメタンが挙げられる。
【0126】
N-スルホニルオキシイミド型光酸発生剤としては、コハク酸イミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタル酸イミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸イミド等のイミド骨格とトリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等の組み合わせの化合物が挙げられる。
【0127】
ベンゾインスルホネート型光酸発生剤としては、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ベンゾインブタンスルホネート等が挙げられる。
【0128】
ピロガロールトリスルホネート型光酸発生剤としては、ピロガロール、フロログリシン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンのヒドロキシ基の全てをトリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等で置換した化合物が挙げられる。
【0129】
ニトロベンジルスルホネート型光酸発生剤としては2,4-ジニトロベンジルスルホネート、2-ニトロベンジルスルホネート、2,6-ジニトロベンジルスルホネートが挙げられ、スルホネートとしては、具体的にトリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2-トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられる。またベンジル側のニトロ基をトリフルオロメチル基で置き換えた化合物も同様に用いることができる。
【0130】
スルホン型光酸発生剤の例としては、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2-ナフチルスルホニル)メタン、2,2-ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(2-ナフチルスルホニル)プロパン、2-メチル-2-(p-トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2-(シクロヘキシルカルボニル)-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、2,4-ジメチル-2-(p-トルエンスルホニル)ペンタン-3-オン等が挙げられる。
【0131】
グリオキシム誘導体型の光酸発生剤の例としては、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(メタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(トリフルオロメタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(1,1,1-トリフルオロエタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(tert-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(パーフルオロオクタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(シクロヘキシルスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(ベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-フルオロベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-tert-ブチルベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(キシレンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(カンファースルホニル)-α-ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0132】
中でも好ましく用いられる光酸発生剤としては、ビススルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミドである。
【0133】
更に、WO2004/074242 A2で示されるオキシムタイプの酸発生剤を添加
することもできる。
【0134】
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。オニウム塩は矩形性向上効果に優れ、ジアゾメタン誘導体及びグリオキシム誘導体は定在波低減効果に優れるため、両者を組み合わせることによりプロファイルの微調整を行うことが可能である。
【0135】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における光酸発生剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.05~20質量部、特に1~10質量部が好ましい。配合量が0.05質量部以上であれば十分なコントラスト(露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度差)が得られ、20質量部以下であれば酸発生剤自身の光吸収により解像性が悪化する恐れがない。
【0136】
[(D)熱架橋剤]
本発明に用いる(D)熱架橋剤は、上述の(B)成分以外の(A)成分と架橋する基を有した化合物であれば、いずれでもかまわない。ここで使用可能な架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの2重結合を含む化合物、ベンジルアルコールを有する化合物等、特開平2-60941号公報、特開平2-99537号公報、特開平2-115238号公報記載のオキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。
【0137】
前記架橋剤の具体例のうち、更にエポキシ化合物を例示すると、トリス(2,3-エポ
キシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリ
メチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエー
テルなどが例示される。
【0138】
または、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジ
メチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5
-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2
,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-t-ブチル
フェノール、3-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2-フェニルフェ
ノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノ
ール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4
-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾル
シノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-t-ブチルカテコール、2-メ
トキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフ
ェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフ
ェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-t
-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-
(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル-4,4’-(
9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル-4,4’-(9
H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ-4,4’-(9
H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル-4,4’-(9
H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ-4,4’-(9
H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-
(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメ
チル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’
-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テト
ラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’
-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジ
メチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1
,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオールのヒドロキシ基をグリシジルエーテル
化したもの、あるいは前記フェノール性化合物のノボラック樹脂のヒドロキシ基をグリシ
ジルエーテル化したものが挙げられる。
【0139】
メラミン化合物を具体的に例示すると、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメ
チルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化
した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメ
ラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した
化合物又はその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグア
ナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメ
チロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナ
ミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロー
ル基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。グリコールウリル化
合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、
テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロー
ル基の1~4個がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコ
ールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が
挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレ
ア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又
はその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。
【0140】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソ
シアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙
げられ、アジド化合物としては、1,1’-ビフェニル-4,4’-ビスアジド、4,4
’-メチリデンビスアジド、4,4’-オキシビスアジドが挙げられる。
【0141】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、
トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル
、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテ
ル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエー
テル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエ
ーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニル
エーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、ト
リメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0142】
更には、特開平11-100378号公報、特開2003-231860号公報、特開
2005-146038号公報、特開2005-290052号公報、特開2006-1
99790号公報、特開2006-273748号公報に記載の環状エポキシ化合物、特
開2006-348252号公報に記載の環に結合したオキシラン環を有する架橋剤、特
開2008-24920号公報に示されるデンドリマー、ハイパーブランチポリマーをベ
ースとするエポキシ架橋剤、特開2001-310937号公報に記載のヒドロキシ基と
オキセタニル基の両方を有する架橋剤、特許3824286号公報にはヒドロキシ基とエ
ポキシ基の両方を有する架橋剤が挙げられる。
【0143】
エポキシ基は環の歪みが大きく反応性が高いが、オキセタンは塩基性が高く酸と結合し
易い。エポキシ基にオキセタニル基を組み合わせることによってカチオン重合の反応性が
格段に向上することが報告されている。
【0144】
更に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物における(D)成分は、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤であることがより好ましい。
【0145】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えばホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物、又はホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物が挙げられる。
【0146】
上記、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性して、下記一般式(26)で示される変性メラミンとする。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1~4のアルコールが好ましい。
【0147】
【化40】
(式中、R31は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1~4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又は上記アルコキシメチル基である。)
【0148】
上記R31としては、例えば、メチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基及び水素原子等が挙げられる。
【0149】
上記一般式(26)で示される変性メラミンとして、具体的にはトリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。
【0150】
次いで、上記一般式(26)で示される変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0151】
また、上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルムアルデヒドでメチロール化して変性し、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性する。
【0152】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えば、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
【0153】
なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0154】
次いで、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’-テトラメトキシメチルビスフェノールA、下記式(D-3)~(D-7)で示される化合物等が挙げられる。
【化41】
【0155】
なお、上記架橋剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0156】
(D)成分は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物のPEB工程において、(C)成分から発生した酸を触媒とし、(A)成分、(B)成分と架橋反応を起こす。更に、続く後硬化において架橋反応を起こし、硬化物の強度をさらに上げる成分である。そのような(D)成分の重量平均分子量は、光硬化性及び耐熱性の観点から、150~10,000が好ましく、特に200~3,000のものが好ましい。
【0157】
更に、(D)成分の配合量は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して0.5~50質量部が好ましく、特に1~30質量部が好ましい。
【0158】
[(E)塩基性化合物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、必須成分である上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分に加え、更に、(E)塩基性化合物を含むものとすることができる。(E)成分の塩基性化合物は、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。このような塩基性化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制され、解像度の向上、露光後の感度変化の抑制や、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0159】
上記、塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0160】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、tert-アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示され、第二級の脂肪族アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示され、第三級の脂肪族アミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0161】
また、混成アミン類としては、例えば、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えば、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2-ニトロアニリン、3-ニトロアニリン、4-ニトロアニリン、2,4-ジニトロアニリン、2,6-ジニトロアニリン、3,5-ジニトロアニリン、N,N-ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p-トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、2H-ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール、N-メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えば、オキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えば、ピロリン、2-メチル-1-ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、ピロリジン、N-メチルピロリジン、ピロリジノン、N-メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4-(1-ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3-メチル-2-フェニルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1-メチル-2-ピリジン、4-ピロリジノピリジン、1-メチル-4-フェニルピリジン、2-(1-エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H-インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えば、キノリン、3-キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10-フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0162】
更に、カルボキシ基を有する含窒素化合物としては、例えば、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えば、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3-アミノピラジン-2-カルボン酸、メトキシアラニン等)などが例示され、スルホニル基を有する含窒素化合物として、3-ピリジンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示され、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2-ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4-キノリンジオール、3-インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’-イミノジエタノール、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、2-(2-ヒドロキシエチル)ピリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、8-ヒドロキシユロリジン、3-クイヌクリジノール、3-トロパノール、1-メチル-2-ピロリジンエタノール、1-アジリジンエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。アミド誘導体としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0163】
なお、塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0~2質量部、配合する場合0.01~2質量部、特に0.01~1質量部を混合したものが好適である。配合量が2質量部以下であれば感度が十分に保たれる。
【0164】
[(F)熱酸発生剤]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、(F)熱によって酸を発生する化合物(熱酸発生剤)を含むものとすることができる。(F)成分の熱によって酸を発生する化合物は、上記のパターン形成後施される温度100~300℃において加熱、後硬化する工程において、熱的に(A)成分と(B)成分、および(D)成分の架橋反応を促す目的で加えることができる。
【0165】
特に(F)成分としては、現像によってパターンが形成されるまでは膜の硬化を促さず、パターン形成を阻害しないものが好ましい。これを実現するために、(F)成分は、感光性樹脂組成物を塗布した後、溶媒を除去、乾燥する工程の温度では酸を発生せず、パターン形成後の熱処理により初めて酸を発生してネガ型感光性樹脂組成物のパターンや被膜の硬化を促すものが好ましい。具体的には、100℃~300℃、好ましくは150℃~300℃の熱処理によって分解し、酸を発生する化合物であることが好ましい。そのような(F)成分を含有することにより、ネガ型感光性樹脂組成物のパターンや被膜をパターン形成後施される温度100~300℃において加熱、後硬化の工程において、架橋、硬化反応がより進んだパターン、被膜に変化させることができる。(F)成分は、架橋、硬化反応をより一層進行させることで、得られたパターンもしくは被膜の機械的強度、耐薬品性、密着性等をより一層向上させることを可能とする。
【0166】
好適な熱によって酸を発生する化合物としては、特開2007-199653号公報の段落[0061]~[0085]に記載された化合物を用いることができる。
【0167】
熱によって酸を発生する化合物の配合量は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物における(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。含有量が0.1質量部以上であることで、架橋反応が促進される。また含有量が30質量部以下であれば、組成物のアルカリ現像性が劣化せず、現像残渣を引き起こさない。
【0168】
[(G)酸化防止剤]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、更に、(G)成分の酸化防止剤を含むものとすることができる。(G)成分の酸化防止剤を含有することで、(A)成分の脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化を抑制する。また、金属材料への防錆作用により、外部からの水分や光酸発生剤、熱酸発生剤などによる金属酸化やそれに伴う密着低下や剥離を抑制することができる。
【0169】
ここで使用可能な酸化防止剤の具体例を列挙すると、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤が好ましく挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。また、これらの酸化防止剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0170】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を例示すると、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1010(商品名))、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1035(商品名))、オクタデシル[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1076(商品名))、オクチル1-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸(BASFジャパン(株)製、イルガノックス1135(商品名))、4,6-ビス(オクチルチオメチル-o-クレゾール)(BASFジャパン(株)、イルガノックス1520L)、スミライザーGA80(住友化学(株)製、商品名)、アデカスタブ AO-20((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-30((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-40((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-50((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-60((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-80((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-330((株)ADEKA製、商品名)、特開WO2017/188153A1号公報記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0171】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、リン系酸化防止剤を例示すると、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリスデシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル-ビス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル-ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)-ビス(エチルフェニル)ホスファイト、フェニル-ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル-ジイソオクチルホスファイト、フェニル-ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル-シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル-イソオクチルホスファイト、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル-イソデシルホスファイト、ジフェニル-シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル-(トリデシル)チオホスファイトなどが挙げられる。
【0172】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、硫黄系酸化防止剤を例示すると、アデカスタブ AO-412S((株)ADEKA製、商品名)、AO-503S((株)ADEKA製、商品名)、スミライザーTP-D(住友化学(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0173】
硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤としては、過酸化物を分解する効果が期待できる。
【0174】
また、(G)成分の酸化防止剤の含有量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。含有量が0.1質量部以上であることで、金属材料に対する密着性を向上するとともに剥離が抑制される。また含有量が10質量部以下であれば、組成物のアルカリ現像性や硬化膜の靭性が劣化することはない。
【0175】
[(H)シラン化合物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、更に、(H)成分のシラン化合物を含むものとすることができる。(H)成分のシラン化合物を含有することで、金属材料に対する密着性を向上するだけでなく、熱衝撃試験や高温高湿試験といった信頼性試験における硬化膜の剥離を抑制することができる。
【0176】
ここで使用可能なシラン化合物は、アルコキシシリル基を有するものであれば、いずれでもかまわない。また、好適な具体例を以下に示す。γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、特許6414060記載のアミド基含有のシラン化合物、特開WO2016/140024、及び特許5987984記載のチオウレア基含有のシラン化合物、特許2017―044964記載のチオ―ル基含有のシラン化合物などが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。更に、これらのシラン化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0177】
また、(H)のシラン化合物の含有量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、3~6質量部が更に好ましい。0.1質量部以上であると、基板とのより充分な密着性を付与することができ、20質量部以下になると室温保存時においての粘度上昇等の問題をより抑制できる。また、含有量が10質量部未満であることで、組成物のアルカリ現像性が劣化することによる現像残渣をより確実に抑制することができる。
【0178】
[その他の成分]
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分及び(H)成分以外の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、(I)溶解阻止剤、(J)界面活性剤及び(K)溶剤等を挙げることができる。下記に例示する化合物等を好適に用いることができる。ただし、これらに限るものではない。
【0179】
(I)溶解阻止剤としては、重量平均分子量が100~1,000、好ましくは150~800で、かつ分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の該フェノール性水酸基の水素原子を酸不安定基により全体として平均0~100モル%の割合で置換した化合物又は分子内にカルボキシ基を有する化合物の該カルボキシ基の水素原子を酸不安定基により全体として平均50~100モル%の割合で置換した化合物が挙げられる。
【0180】
なお、フェノール性水酸基の水素原子の酸不安定基による置換率は、平均でフェノール性水酸基全体の0モル%以上、好ましくは30モル%以上であり、その上限は100モル%、より好ましくは80モル%である。カルボキシ基の水素原子の酸不安定基による置換率は、平均でカルボキシ基全体の50モル%以上、好ましくは70モル%以上であり、その上限は100モル%である。
【0181】
この場合、かかるフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物又はカルボキシ基を有する化合物として下記式(I1)~(I15)で示されるものが好ましい。
【0182】
【化42】
【0183】
但し、上記式中R201、R202はそれぞれ水素原子、又は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を示す。R203は水素原子、又は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を示す。R204は-(CHi-(i=2~10)、炭素数6~10のアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。R205は炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。R206は水素原子、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はそれぞれ水酸基で置換されたフェニル基又はナフチル基を示す。R208は水素原子又は水酸基を示す。jは0~5の整数である。u、hは0又は1である。s、t、s’、t’、s’’、t’’はそれぞれs+t=8、s’+t’=5、s’’+t’’=4を満足し、かつ各フェニル骨格中に少なくとも1つの水酸基を有するような数である。aは式(I8)、(I9)の化合物の分子量を100~1,000とする数である。
【0184】
溶解阻止剤の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0~50質量部、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~20質量部であり、単独又は2種以上を混合して使用できる。配合量が5質量部以上であればより確実に解像性が向上し、50質量部以下であればパターンの膜減りが生じず、高い解像度が得られる。
【0185】
(J)界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物、非フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0186】
これらの界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、フロラード FC-4430(住友スリーエム(株)製、商品名)、PF-6320(OMNOVA社製、商品名)、PF-636(OMNOVA社製、商品名)、サーフロン S-141及びS-145(以上、旭硝子(株)製、商品名)、ユニダイン DS-401、DS-4031及びDS-451(以上、ダイキン工業(株)製、商品名)、メガファック F-8151(DIC(株)製、商品名)、X-70-093(信越化学工業(株)製、商品名)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード FC-4430(住友スリーエム(株)製、商品名)、PF-6320(OMNOVA社製、商品名)、PF-636(OMNOVA社製、商品名)、X-70-093(信越化学工業(株)製、商品名)である。
【0187】
界面活性剤の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
【0188】
(K)溶剤としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を溶解するものであれば、限定されない。溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコール-モノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。特に、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合溶剤が好ましい。
【0189】
(K)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の配合量の合計100質量部に対して50~2,000質量部が好ましく、特に100~1,000質量部が好ましい。
【0190】
(パターン形成方法)
本発明は、以下の工程を含むパターン形成方法を提供する。
(1)上記ネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で上記感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、加熱処理を行った基板にアルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程。
【0191】
以下、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法に関して、説明を行う。
【0192】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、パターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えばシリコンウエハーあるいはSiO基板、SiN基板、もしくは銅配線等のパターンが形成されている基板に、ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコーティングの手法(スピンコート法)で塗布し、80~130℃、50~600秒間程度の条件でプリベークし、厚さ1~50μm、好ましくは1~30μm、さらに好ましくは1~20μmの感光材皮膜を形成する。
【0193】
スピンコート法では、ネガ型感光性樹脂組成物をシリコン基板上へ5mL程度ディスペンスした後に基板を回転することによって、基板上へネガ型感光性樹脂組成物を塗布することができる。このとき、回転速度を調整することで容易に基板上の感光材皮膜の膜厚を調整することが可能である。
【0194】
次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記の感光材皮膜上にかざし、i線、g線等の波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線を露光量1~5,000mJ/cm程度、好ましくは100~2,000mJ/cm程度となるように照射する。
【0195】
次にホットプレート上で例えば60~150℃、50~600秒間、好ましくは80~120℃、60~300秒間露光後加熱処理(ポストエクスポージャベーク(PEB))を行う。
【0196】
その後、現像を施す。上記の本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、アルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0197】
一方、アルカリ現像に用いることのできる好適なアルカリ水溶液は、2.38%のテトラメチルヒドロキシアンモニウム(TMAH)水溶液である。現像は、スプレイ法、パドル法等通常の方法、現像液に浸漬すること等により行うことができる。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有するレジスト皮膜を得ることができる。
【0198】
(硬化被膜形成方法)
また、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜をオーブンやホットプレートを用いて、温度100~300℃、好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~250℃において加熱、後硬化することで硬化被膜を形成することができる。後硬化温度が100~300℃であれば、ネガ型感光性樹脂組成物の皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性の観点から好ましい。そして、後硬化時間は10分間~10時間とすることができる。
【0199】
上記の形成されたパターンは、配線、回路及び基板等を覆う保護用被膜を目的として使用されるが、これら形成されたパターン及び保護用被膜は、優れた絶縁性を有しながら、被覆する配線、回路のCuのような金属層、基板上に存在する金属電極上、もしくは被覆する配線や回路に存在するSiNのような絶縁基板上で優れた密着力を示し、かつ保護用被膜として相応しい機械的強度を具備したまま、さらに微細なパターン形成を可能にするための解像性能を大幅に改善できるものである。
【0200】
(硬化被膜)
このようにして得られた硬化被膜は、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びアルカリ性剥離液等に対する薬品耐性に優れ、それを保護用被膜とした半導体素子の信頼性にも優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止でき、電気・電子部品、半導体素子等の保護用被膜(層間絶縁膜あるいは表面保護膜)として好適に用いられる。
【0201】
即ち、本発明では、上述のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなる層間絶縁膜あるいは表面保護膜を提供する。
【0202】
上記保護用被膜は、その耐熱性、薬品耐性、絶縁性から、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜、ソルダーマスク、カバーレイフィルム用途等に有効である。
【0203】
さらに、本発明では、上記の層間絶縁膜又は上記の表面保護膜を有する電子部品を提供する。このような電子部品は、耐熱性、薬品耐性、絶縁性を有する保護用被膜(層間絶縁膜又は表面保護膜)を有することから、信頼性に優れたものとなる。
【実施例
【0204】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記
実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリ
スチレン換算重量平均分子量を示す。
【0205】
I.アルカリ可溶性樹脂(A)の合成
下記合成例において、使用した化合物の化学構造式及び名称を以下に示す。
【化43】
【0206】
[合成例1]ポリイミド樹脂(A1)の合成
撹拌機、温度計を具備した1Lのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)30g(81.9mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.6mmol)、N-メチル-2-ピロリドン125gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に室温下、3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)26.7g(86.2mmol)、をN-メチル-2-ピロリドン270gに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後室温下3時間撹拌した。その後、この反応液にキシレン40gを加え、170℃で生成する水を系外へ除きながら3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド樹脂(A1)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量35,000であった。
【0207】
[合成例2]ポリイミド樹脂(A2)の合成
合成例1において2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)30g(81.9mmol)を2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)プロパン(BAP)21.2g(81.9mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A2)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量34,000であった。
【0208】
[合成例3]ポリアミドイミド樹脂(A3)の合成
撹拌機、温度計を具備した500mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.5g(77.8mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.2mmol)、N-メチル-2-ピロリドン118gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に室温下、3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)19.0g(61.4mmol)、をN-メチル-2-ピロリドン192gに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後室温下3時間撹拌した。その後、この反応液にキシレン40gを加え、170℃で生成する水を系外へ除きながら3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、ピリジン3.2g(41.0mmol)を加え、セバシン酸ジクロライド(DC-1)4.9g(20.5mmol)を5℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリアミドイミド樹脂(A3)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量35,000であった。
【0209】
[合成例4]ポリアミド樹脂(A4)の合成
撹拌機、温度計を具備した500mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.5g(77.8mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.2mmol)、N-メチル-2-ピロリドン118gを加え、室温で撹拌し溶解した。次にピリジン13.0g(163.8mmol)を加え、セバシン酸ジクロライド(DC-1)19.6g(81.9mmol)を5℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリアミド樹脂(A4)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量38,000であった。
【0210】
[合成例5]テトラカルボン酸ジエステル化合物(X-1)の合成
撹拌機、温度計を具備した3Lのフラスコ内に3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)100g(322mmol)、トリエチルアミン65.2g(644mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン39.3g(322mmol)、γ-ブチロラクトン400gを加え、室温で撹拌しているところにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)83.8g(644mmol)を滴下後、室温下で24時間撹拌した。その後、氷冷下10%塩酸水溶液370gを滴下し反応を停止させた。反応液に、4-メチル-2-ペンタノン800gを加え有機層を分取した後、水600gで6回洗浄した。得られた有機層の溶媒を留去し、テトラカルボン酸ジエステル化合物(X-1)を180g得た。
【0211】
[合成例6]ポリイミド前駆体(A5)の合成
撹拌機、温度計を具備した1Lのフラスコ内に(X-1)57.1g(100mmol)、N-メチル-2-ピロリドン228gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に氷冷下、塩化チオニル24.4g(205mmol)を反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間撹拌した。続いて2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)34.8g(95mmol)、4-アミノフェノール(PAP)1.1g(10mmol)、ピリジン32.4g(410mmol)をN-メチル-2-ピロリドン144gで溶解した溶液を氷冷下で反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を水3Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド前駆体(A5)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量36,000であった。
【0212】
II.高分子化合物(B)の合成
[合成例]
架橋性の高分子化合物(高分子添加剤)として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、ヘキサンに晶出、乾燥し、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマーB1~B14、比較ポリマーC1、C2)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H-NMR、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0213】
[合成例7]ポリマーB1
分子量(Mw)=11,400
【化44】
【0214】
[合成例8]ポリマーB2
分子量(Mw)=11,000
【化45】
【0215】
[合成例9]ポリマーB3
分子量(Mw)=11,500
【化46】
【0216】
[合成例10]ポリマーB4
分子量(Mw)=11,400
【化47】
【0217】
[合成例11]ポリマーB5
分子量(Mw)=10,300
【化48】
【0218】
[合成例12]ポリマーB6
分子量(Mw)=12,000
【化49】
【0219】
[合成例13]ポリマーB7
分子量(Mw)=11,800
【化50】
【0220】
[合成例14]ポリマーB8
分子量(Mw)=10,800
【化51】
【0221】
[合成例15]ポリマーB9
分子量(Mw)=12,300
【化52】
【0222】
[合成例16]ポリマーB10
分子量(Mw)=11,800
【化53】
【0223】
[合成例17]ポリマーB11
分子量(Mw)=10,700
【化54】
【0224】
[合成例18]ポリマーB12
分子量(Mw)=10,400
【化55】
【0225】
[合成例19]ポリマーB13
分子量(Mw)=9,400
【化56】
【0226】
[合成例20]ポリマーB14
分子量(Mw)=11,000
【化57】
【0227】
[合成例21]比較ポリマーC1
分子量(Mw)=11,300
【化58】
【0228】
[合成例22]比較ポリマーC2
分子量(Mw)=11,800
【化59】
【0229】
III.ネガ型感光性樹脂組成物の調製(実施例1~20、比較例1、2)
上記合成例1~合成例6で合成したアルカリ可溶性樹脂(A1)~(A5)70質量部、合成例7~合成例22で合成した架橋性の高分子化合物(B1)~(B14)、(C1)、(C2)30質量部の割合にしたものをベース樹脂として使用して、表1に記載した組成と配合量で、樹脂換算20質量%の樹脂組成物を調製した。その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製1.0μmフィルターで精密濾過を行ってネガ型感光性樹脂組成物を得た。表中溶剤のPGMEAはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、GBLはγ―ブチロラクトンを示す。
【0230】
【表1】
【0231】
なお、表1中、オキシムスルホネート化合物である光酸発生剤(PAG-1)、架橋剤(CL-1)(CL-2)(CL-3)、塩基性化合物(E-1)、熱酸発生剤(F-1)、(F-2)、酸化防止剤(G-1)、シラン化合物(H-1)、溶解阻止剤(I-1)、界面活性剤(J-1)の詳細は以下の通りである。
【0232】
光酸発生剤(PAG-1)
【化60】
【0233】
架橋剤(CL-1)
【化61】
【0234】
架橋剤(CL-2)
【化62】
【0235】
架橋剤(CL-3)
オキセタン樹脂:東亜合成(株)社製 OXT-121
【0236】
塩基性化合物(E-1)
【化63】
【0237】
熱酸発生剤(F-1)
【化64】
【0238】
熱酸発生剤(F-2)
【化65】
【0239】
酸化防止剤(G-1)
ヒンダートフェノール系酸化防止剤:住友化学(株)社製 スミライザー GA-80
【0240】
シラン化合物(H-1)
アミノシランカップリング剤:信越化学工業(株)社製 KBM-573
【0241】
溶解阻止剤(I-1)
【化66】
【0242】
界面活性剤(J-1)
フッ素系界面活性剤:OMNOVA社製 PF-6320
【0243】
IV.パターン形成
上記の感光性樹脂組成物1~20、比較感光性樹脂組成物1、2をヘキサメチルシラザン処理したシリコン基板上へ5mLディスペンスした後に基板を回転することによって、即ち、スピンコート法によって、パターン形成後に施す後硬化の加熱後に膜厚が2μmとなるように塗布した。即ち、後硬化工程後、膜厚が減少することを予め検討し、後硬化後の仕上がり膜厚が2μmとなるように塗布時の回転数を調整した。
【0244】
次に、ホットプレート上100℃、2分間のプリベークを施した。そして次に、ビーコ社製i線ステッパーAP300Eを用いてi線露光を行った。照射後、110℃、2分間のポストエクスポージャーベーク(PEB)し、その後冷却した。パターン形成においては、ネガ型パターン用のマスクを使用した。該マスクは、縦横1:1配列の2μmのラインアンドスペースパターン(以下、LSパターンと表記する)が形成できるパターンを有し、10μm~2μmまでは1μm刻みでLSパターンが形成できるものである。
【0245】
その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を現像液とし、1分間のパドル現像を未露光部分の塗布膜が溶解するまで実施した後、超純水によるリンスを行った。
【0246】
次いで、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながらパターン付き基板の後硬化を行った。
【0247】
次に、得られたLSパターンの形状が観察できるように、各基板を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてラインパターン形状を観察した。後硬化後の2μmLSラインパターンの形状を評価した。また、これらの結果と合わせ、2μmパターンを形成できた感度、現像回数を表2に示す。
【0248】
なお、LSパターンの形状は下記のような基準で評価し、表2中に評価結果を示した。最小となるLSラインのパターン断面を観察し、パターンの断面の最上部と最下部の幅を比べて、その差が0μm以上0.2μm以下のパターンをA、0.2μmより大きく0.5μm以下のものをBとし、0.5μmより大きく1.0μm以下のものをCとし、1.0μmを超えるものをDとした。
【0249】
V.破断伸度及び引張強度
上記の感光性樹脂組成物1~20、比較感光性樹脂組成物1、2をアルミ基板上へ硬化後の仕上がり膜厚が10μmとなるようにスピンコートした。次に、ホットプレート上100℃、4分間のプリベークを施し、感光性樹脂膜を得た。
【0250】
その後、クインテル社製コンタクトアライナUL-7000を用いて、ブロードバンドの波長、500mJ/cmの露光量で基板全面にコンタクト露光を行った。照射後、110℃、4分間のPEB処理を行い、その後冷却した。その後、オーブンを用いて、180℃、240℃で2時間、窒素パージの2条件で、硬化を行い、感光性樹脂硬化膜を得た。次に、硬化膜付きウェハを、幅10mm、長さ60mmの短冊状に割断し、20質量%の塩酸に浸漬することで硬化膜を基板から剥離した。得られた硬化膜を島津製作所社製オートグラフAGX-1KNを用いて破断伸度及び引張強度の測定を行った。測定は1サンプルにつき10回行いその平均値を表2中に示した。
【0251】
【表2】
【0252】
VI.密着力
上記パターン形成と同じ手順で、上記の感光性樹脂組成物1~20、比較感光性樹脂組成物1、2を用いて、SiN基板上へ硬化後の仕上がり膜厚5μmとなるように、1cm角の正方形パターンをi線露光し、基板上、全面に格子状になるようパターンを得た。なお露光量は、上記LSパターン評価で求めた最小パターンが形成できた露光量とした。また、プリベークは100℃、4分間、及びPEBは、110℃、4分間の処理を行った。また現像は、1分間のパドル現像を未露光部の塗布膜が溶解するまでとし、規定回数行った。
【0253】
その後、180℃で2時間、窒素パージを行い、パターン付き基板の後硬化を行った。次に、硬化した基板を1cm角のパターンに沿って、個片化し硬化膜付きのチップを得た。得られたチップにエポキシ樹脂付きのアルミピンを立て、150℃、1時間で加熱し、アルミピンをチップに接着させ、測定サンプルを作製した。冷却後、Quad Group社製のROMULUSを用い、図1に示すような方法(以後、Stud-pull法と表記する)によって、密着力を測定した。測定条件として、測定スピードは20N/secで行った。図1は密着力測定方法を示す説明図である。なお、図1の1はSiN基板(基板)、2は硬化皮膜、3は接着剤付きアルミピン、4は支持台、5はつかみであり、6は引張方向を示す。得られた数値は10点測定の平均値であり、数値が高いほど硬化皮膜のSiN基板に対する密着性が高い。また剥離界面が硬化被膜/接着剤のものの方が、基板/硬化被膜のものよりも密着力が高い。得られた数値、剥離界面を比較することにより密着性を評価した。
【0254】
更に、高温高湿試験として、得られたチップを、飽和2気圧下、120℃、100%RHのプレッシャークッカー中、168時間放置した。その後、Stud-pull法によって、試験後の密着力を評価し、試験前の結果と合わせ、基板に対する密着力として表3に示した。
【0255】
【表3】
【0256】
表2に示すように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は200℃以下の低温で硬化した場合であっても、良好な機械特性を有する硬化膜を得ることが分かった。また、本発明のネガ型感光性組成物は240℃と低温域(100℃~300℃)の中では高い温度で硬化した場合であっても良好な機械特性を有していた。一方で比較例1、2は本発明のネガ型感光性組成物に対して240℃では機械特性に劣っていた。
【0257】
また、表3に示すように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は200℃以下の低温で硬化した場合であっても、密着力及び高温高湿耐性を有する硬化膜を得ることが分かった。一方で比較例1、2は本発明のネガ型感光性組成物に対して密着力が劣っていた。
【0258】
以上の結果、実施例1~20の組成物は、矩形性良く、2μmの微細なパターンを解像する優れた解像力を示し、感光性材料として十分な特性を示すとともに、その硬化膜は、基板密着性や良好な高温高湿耐性を有し、回路や電子部品の保護膜として有用であるという結果が得られた。
【0259】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するもの、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0260】
1…SiN基板(基板)、 2…硬化皮膜、 3…接着剤付きアルミピン、
4…支持台、 5…つかみ、 6…引張方向。
図1