(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-14
(45)【発行日】2025-04-22
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20250415BHJP
【FI】
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2023569103
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2022039275
(87)【国際公開番号】W WO2023119835
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021210654
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 航平
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】野中 昂平
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190681(JP,A)
【文献】特開2014-10097(JP,A)
【文献】特開平5-293448(JP,A)
【文献】特開2020-41929(JP,A)
【文献】特開2012-185179(JP,A)
【文献】特開2004-69482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置であって、
装置外部から供給され、前記自動分析装置の各機構で消費される水を一時的に貯水する給水タンクと、
光源、および前記光源から照射される光を受光する受光部を有し、前記給水タンク内の前記水の量を検知する光学センサと、
前記自動分析装置内の各機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記光源と前記受光部との間に前記給水タンクが配置されており、
前記制御部は、前記給水タンクの前記水を一時的に減らした際の前記受光部から出力される出力電圧に応じて前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無を判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの検出値が前記水なしとなってから一定時間排水を行うことにより、前記給水タンクの前記水を一時的に減らす
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの検出値が前記水なしとなってから一定量排水を行うことにより、前記給水タンクの前記水を一時的に減らす
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光源への入力電圧とその時の前記受光部での出力電圧の値を用いることで、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無を判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光源への複数の入力電圧に対する前記受光部での複数の出力電圧の差の比率を用いることで、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無を判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記光学センサを複数備える
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、複数の前記光学センサの判定を同時に実行する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、複数の前記光学センサの判定を異なるタイミングで個別に実行する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項6に記載の自動分析装置において、
複数の前記光学センサのうち、隣接する前記光学センサは前記光源と前記受光部とが互い違いに配置されている
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無を判定する際に、前記出力電圧が、第1閾値より小さいときはタンク清掃アラームを出力し、第2閾値より小さいときはタンク清掃アラームおよびサービスパーソンへの連絡信号を出力し、第3閾値より小さいときはセンサ故障アラームを出力するとともに前記自動分析装置の稼働を停止する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無の判定が完了した後、一定時間水を供給する、一定量の水を供給する、あるいは水位が所定の水位になるまで水を供給する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無の判定の際に、前記給水タンク内への前記水の供給を断つために前記給水タンクと給水設備との間に設けられる給水電磁弁を閉じたままとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無の判定の際に、前記給水タンク内への前記水の供給を継続するために前記給水タンクと給水設備との間に設けられる給水電磁弁を開いたままとする
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクへの給水を制御する開閉弁の不具合によるオーバーフローの発生を抑制することができる自動分析装置および貯水量制御方法の一例として、特許文献1には、水生成装置から貯水タンクに水を供給する供給管路を開閉制御する第1及び第2開閉弁を直列に配置し、貯水タンク内の水位が正常時における水位変動範囲の上限水位位置以上であることを検出する上限水位検出手段、及び、貯水タンク内の水位が水位変動範囲の下限水位位置以上であることを検出する下限水位検出手段とからの検出信号に基づいて貯水タンク内の水位を検知し、貯水タンク内の水位が上限水位位置以上になってから予め定めた水位下降予定時間が経過しても下限水位位置以下にならない場合には第1及び第2開閉弁の一方に異常が生じていると判定して第1及び第2開閉弁の他方を閉じ、貯水タンクへの水の供給を停止する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置、例えば生化学自動分析装置では、血清や尿などの生体試料の成分分析を行う。こうした生化学自動分析装置では、一般に、分注用プローブを用いて試料と試薬とをそれぞれ反応容器に分注して反応させ、反応液に生じる色調や濁りの変化を、分光光度計等の測光ユニットにより光学的に測定する。
【0005】
そのため、プローブの汚れ等は分注の精度に影響し、結果として自動分析装置の信頼性にも影響を与える。したがって、試料等を分注した後は、プローブの外面や内面に付着した試料等を洗浄槽にて洗浄液により洗浄を行っている。
【0006】
生化学自動分析装置では、これらの分注や洗浄に水を使用する。水は、本体と切りはなされた製造装置で作られることから、供給される水に気泡が含まれていた場合でも装置内部に入らないように、水流が安定する程度の十分な大きさを備えた貯水槽(給水タンク)を備えている。
【0007】
特許文献1には、貯水タンクに内部に貯留された水の水位を検出するための水位検出機構を設け、水位検出機構は、水位検出器として上下方向に移動可能なフロートスイッチを有していることが記載されている。
【0008】
水流が安定した給水タンクでは、給水タンク内面に汚れや菌が発生しやすい。給水タンク内に汚れや菌が蓄積された状態で装置を使用した場合、汚れた水が装置へ供給されることにより、分析性能に影響を及ぼすことが懸念される。そのため、従来の製品においては、顧客による月1回程度の給水タンク清掃が必要となっている。
【0009】
しかしながら、分析性能へ影響を与えるメンテナンスかつ定期的な清掃は顧客への負担となっている。また、水へ接する物体を増やすことは汚れの蓄積箇所を増やすこと、かつ清掃箇所を増やすことにつながるため、給水タンク外側から水位を監視できることが望ましい。
【0010】
給水タンク外側から水位を監視する方法として一般的に用いられる光学センサでは、光源からの光を受光部で受光した際の受光量に応じた電圧を出力する。この電圧値から水位が光軸より高いか低いかを検知するものである。
【0011】
しかし、光源の劣化等により光量が低下した場合や、光軸上に汚れが付着した場合には水位の誤検知の可能性も考えられる。そのため、水位の検出に加えて、光源の光量低下や給水タンク内の汚れも検知することで、より適切なタイミングでの給水系のメンテナンスを実行できることが望ましい。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、最適なタイミングでセンサ交換、給水タンク清掃を促すことでメンテナンス頻度を低減させることが可能な自動分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自動分析装置であって、装置外部から供給され、前記自動分析装置の各機構で消費される水を一時的に貯水する給水タンクと、光源、および前記光源から照射される光を受光する受光部を有し、前記給水タンク内の前記水の量を検知する光学センサと、前記自動分析装置内の各機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記光源と前記受光部との間に前記給水タンクが配置されており、前記制御部は、前記給水タンクの前記水を一時的に減らした際の前記受光部から出力される出力電圧に応じて前記光学センサの異常、あるいは前記給水タンク内の汚れの有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、最適なタイミングでセンサ交換、給水タンク清掃を促すことでメンテナンス頻度を低減させることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施例に係る自動分析装置の給水部の構成図。
【
図3】実施例に係る自動分析装置の給水タンクを上面から見た図。
【
図4】実施例に係る自動分析装置の給水タンクを水平方向から見た際のセンサ配置図。
【
図6】実施例に係る自動分析装置の光源への入力電圧と受光部での出力電圧の関係。
【
図7】実施例に係る自動分析装置の光量低下、汚れの有無の判定の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の自動分析装置の実施例について
図1乃至
図7を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
最初に、自動分析装置の全体構成について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は自動分析装置100の全体構成を概略的に示す図、
図2は給水設備50から分析部101へ水を供給するための流路構成である。
【0018】
図1に示す自動分析装置100は、主に、血液等の試料と試薬とを混合して反応させ、反応液の吸光度を測定するための構成である分析部101と、分析部101の各機構に対して水を供給するための機構である給水部102の一部と、コントローラ24と、の3つの領域に分けられる。
【0019】
分析部101は、複数の反応容器2に試料と試薬を各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定する様々な機構で構成されており、反応ディスク1、試薬ディスク9、試料搬送機構17、試薬分注機構7,8、試薬用シリンジ19、試料分注機構11,12、試料用シリンジ18、洗浄機構3、光源4a、分光光度計4、撹拌機構5,6、洗浄槽13,14,30,31,32,33等を備えている。
【0020】
反応ディスク1には、試料と試薬とを混合して反応させるための反応容器2が円周上に複数個並んでいる。反応ディスク1の近くには血液等の試料が含まれた試料容器15を載せた試料ラック16を移動する試料搬送機構17が設置されている。
【0021】
反応ディスク1と試料搬送機構17の間には、回転および上下動可能な試料分注機構11,12が設置されており、それぞれ試料プローブ11a,12aを備えている。試料プローブ11a,12aには試料用シリンジ18が接続されている。試料プローブ11a,12aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料搬送機構17により試料分注位置に搬送された試料容器15から反応容器2への試料の分注を行う。
【0022】
試料分注機構11の稼動範囲には試料プローブ11aを洗浄水により洗浄する洗浄槽13、および特別な洗浄水により洗浄する洗浄容器(図示の都合上省略)が配置されている。同様に、試料分注機構12の稼動範囲には試料プローブ12aを洗浄水により洗浄する洗浄槽14、および特別な洗浄水により洗浄する洗浄容器(図示省略)が配置されている。
【0023】
試薬ディスク9は、その中に複数の試薬ボトル10が円周上に載置可能な構造である。試薬ディスク9は保冷されており、吸引口(図示省略)が設けられたカバーによって覆われている。試薬ボトル10は、試料の分析に用いる試薬を収容したボトルである。
【0024】
反応ディスク1と試薬ディスク9との間には回転および上下動可能な試薬分注機構7,8が設置されており、それぞれ試薬プローブ7a,8aを備えている。試薬プローブ7a,8aには試薬用シリンジ19が接続されている。試薬プローブ7a,8aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、吸引口から試薬ディスク9内にアクセスし、試薬ボトル10から反応容器2への試薬の分注を行う。
【0025】
試薬分注機構7の稼動範囲には試薬プローブ7aを洗浄水により洗浄する洗浄槽32が配置され、試薬分注機構8の稼動範囲には試薬プローブ8aを洗浄水により洗浄する洗浄槽33が配置されている。
【0026】
反応ディスク1の周囲には、反応容器2に分注された試料と試薬との混合液(反応液)を攪拌する撹拌機構5,6、光源4aから反応容器2の反応液を介して得られる透過光を測定することにより反応液の吸光度を測定する分光光度計4、使用済みの反応容器2を洗浄する洗浄機構3等が配置されている。
【0027】
撹拌機構5,6は、水平方向への回転動作および上下動作が可能なように構成されており、反応容器2に挿入することにより試料と試薬の混合液(反応液)の攪拌を行う。撹拌機構5,6の稼動範囲には、撹拌機構5,6を洗浄水により洗浄する洗浄槽30,31が配置されている。また、洗浄機構3には、洗浄用ポンプが接続されている。
【0028】
コントローラ24は、上述された自動分析装置100内の機器に接続されており、自動分析装置100内の各機器・機構の動作を制御する。このコントローラ24は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、分光光度計4の検出結果から検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0029】
本実施例では、コントローラ24は、給水タンク53の水を一時的に減らした際の受光部301から出力される出力電圧に応じて光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定する。その詳細は後述する。
【0030】
コントローラ24による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。記憶装置には、検体の測定に用いる各種プログラムの他に、入力装置を介して入力された各種パラメータや測定対象検体の情報(検体種別情報など)、測定結果などが記憶される。
【0031】
なお、コントローラ24で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0032】
表示部24aは、各種パラメータや設定の入力画面、初回検査あるいは再検査の分析検査データ、測定結果、試薬情報等の自動分析装置100における各種情報をオペレータに対して表示する液晶ディスプレイ等の表示機器である。なお、入力部を兼ねたタッチパネル式とすることができる。
【0033】
給水部102は、分析部101に水を供給する機能を有しており、純水設備50、給水電磁弁51、光学センサ52、給水タンク53、給水ポンプ54等を備えている。
【0034】
純水設備50は、自動分析装置100の外部から自動分析装置100内部の給水タンク53へ水を供給する設備であり、基本的には自動分析装置100の設置された病院や検査センターなどの施設の設備である。
【0035】
給水タンク53は、装置外部の純水設備50から供給された、自動分析装置100の各機構で消費される水を一時的に貯水しているタンクであり、給水タンク53に貯水される水のオーバーフローや枯渇を防止するために光学センサ52を備えている。
【0036】
給水タンク53への水の供給は常には行われず、必要な時に給水タンク53へ水の供給が行われるようにするため、給水設備50から給水タンク53への配管には給水電磁弁51が備えられている。この給水電磁弁51は、光学センサ52からの水位情報に基づいてコントローラ24からの指令信号により開閉の制御が実行される。
【0037】
給水ポンプ54は、給水タンク53から分析部101の各機構に供給流路64を介して水を供給する。この際、コントローラ24は、水が消費される箇所の手前に設けられている電磁弁3a,18a,19a,30a,31a,32a,33a,40a,42aのいずれか1つ以上を開き、水を供給させる。
【0038】
これに対し、分析部101で水が消費されない場合は、循環流路65から給水タンク53へ水を循環させる。
【0039】
給水設備50から分析部101へ水を供給するための流路は、給水電磁弁51、光学センサ52、給水タンク53、給水ポンプ54に加え、分岐管20、圧力センサ21、リリーフ弁22、廃液管23にて構成されている。
【0040】
分岐管20は、分析部101へ水を供給する流路64、給水タンク53への戻り流路65、水を装置外へ排出する流路63を分岐するために備えられている。また、分岐管20の内部には流路内に混在する可能性のある汚れを除去するためのフィルタ20aを備えている。
【0041】
圧力センサ21は、配管の屈曲や電磁弁からのリークなどの流路状態の変化による圧力変化を検知し、配管および配管の構成部品の異常を検知することが可能である。
【0042】
コントローラ24は、光学センサ52、圧力センサ21の信号に基づいて、給水ポンプ54のON/OFF、給水電磁弁51、リリーフ弁22の開閉を制御する。
【0043】
給水部102では、リリーフ弁22が解放されると廃液管23へと水が排出される。
【0044】
以上が自動分析装置100の構成である。
【0045】
なお、自動分析装置100の構成は
図1に示すような生化学の分析項目の分析を実行する生化学分析装置の場合に限られず、免疫の分析項目の分析を実行する免疫分析装置など、他の分析項目の分析を実行する分析装置とすることができる。また、生化学分析装置についても
図1に示す形態に限られず、他の分析項目、例えば電解質を測定する分析機器を別途搭載したものとすることができる。
【0046】
また、自動分析装置100は
図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0047】
上述のような自動分析装置100による検査試料の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0048】
まず、試料搬送機構17によって反応ディスク1近くに搬送された試料ラック16の上に載置された試料容器15内の試料を、試料分注機構11,12の試料プローブ11a,12aにより反応ディスク1上の反応容器2へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク9上の試薬ボトル10から試薬分注機構7,8により先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、撹拌機構5,6で反応容器2内の試料と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0049】
その後、光源4aから発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器2を透過させ、透過光の光度を分光光度計4により測定する。分光光度計4により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介してコントローラ24に送信する。そしてコントローラ24によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部24a等にて表示させるとともに、記憶部(図示省略)に記憶させる。
【0050】
次に、自動分析装置100内で水が消費される個所について説明する。装置内での主要な用途は、反応ディスク1の保温用の循環水、試薬ディスク9の保冷用の循環水、試薬プローブ7a,8aや試料プローブ11a,12aの洗浄水である。
【0051】
反応ディスク1では、試料と試薬とを一定温度で反応させるために一定温度(例えば37度)に保たれた水を循環ポンプ40により循環させている。この水を用いて反応容器2を一定温度に保ち、試料と試薬とを一定条件の下で反応させている。
【0052】
上述のように、反応容器2は水により温度を保っているため、光源4aから発生させた光は反応容器2だけでなく、反応槽を流れる水も透過することになる。ここで、光源4aと分光光度計4とを結ぶ直線上に気泡が存在すると、光源4aから発生させた光は、気泡により拡散してしまい、分析結果が正常に判定されない可能性がある。そのため、一般的には、反応槽を循環する流路に脱気装置(図示省略)を設けて、反応槽の内部での気泡の発生を防止しているとともに、タンク清掃により、装置流路内に汚れが供給されることを防止している。
【0053】
試薬ディスク9では、試薬の劣化を防止するために冷却機で冷却した水を循環ポンプ42で循環させることで、試薬ディスク9の内部を低温に保っている。
【0054】
試薬の吸引、分注に使用している試薬プローブ7a,8aや試料の吸引、分注に使用している試料プローブ11a,12aは使い捨てではなく、同一のプローブを連続して使用している。
【0055】
ここで、前の分注動作で吐出を行った試薬や試料がプローブ内に残留すると、次動作で吸引を行う試薬や試料に前の試薬あるいは試料が混ざるコンタミネーションを発生させてしまい、分析結果が正常に判定されない可能性がある。このため、同一プローブを使用する場合は、一般的には、試薬プローブ7a,8a外面の洗浄を洗浄槽32,33内において、試料プローブ11a,12a外面の洗浄を洗浄槽13,14内において、当該プローブ外面に向けて洗浄水を吐出する洗浄を行っている。プローブ内面の洗浄は、洗浄槽13,14,31,32内においてポンプで高圧にした洗浄水を当該プローブから吐出することで行っている。洗浄水を高圧にするためにはギアポンプ41が用いられることが多い。
【0056】
上述したように、分析部101の様々な機構で水は使用される。そのため、供給される水に気泡や汚れ等の異物が混入した場合、分析性能の低下や装置故障の原因となる。
【0057】
そこで、給水タンク53は供給される水に気泡が混入した場合でも給水ポンプ54へ供給されないよう、給水タンク53内の水流が安定する程度の十分な大きさを備えている。一方で、給水タンク53内の水流が安定することで給水タンク53内に長時間とどまる水が生まれ、雑菌が繁殖して給水タンク53の内面に汚れが蓄積される恐れがある。その汚れた水が給水ポンプ54を介して分析部101へ供給されると、分析性能へ影響を及ぼすことが懸念される。
【0058】
その対策として、顧客による給水タンク53の清掃が定期的に行われているが、顧客への負担となっている。
【0059】
ここで、給水タンク53の水位監視方法としての水位センサは、給水タンク53の内側から水位を監視するフロート型センサや静電容量式センサ、外側から水位を監視する光学センサや超音波センサなどが用いられている。しかしながら、水へ接する物体を増やすことは汚れの蓄積箇所を増やすこと、かつ清掃箇所を増やすことにつながるため、給水タンク53外側から水位を監視できることが望ましい。
【0060】
そのための光学センサ52の詳細について
図3以降を用いて説明する。
図3は本実施例における給水タンク53を上面から見た図である。
【0061】
光学センサ52は、光源302、および光源302から照射される光を受光する受光部301を有しており、光源302と受光部301とを結ぶ光軸303が給水タンク53の一部を遮るように配置されている。光学センサ52は、光源302から照射された光を受光部301で受光し、その受光量に応じた電圧検出値をコントローラ24に出力する。コントローラ24は、上述のように光学センサ52の受光部301から出力された電圧測定値に基づいて水位を検出する。
【0062】
具体的には、水位が光軸303より低い場合、光軸303上には給水タンク53のみが存在する。この時、給水タンク53は、光源302の波長を透過する材質であること、光軸303上の給水タンク面に平面部304を備えることにより、受光部301では光源302から放出された光を受光する。それにより受光部301は電圧を出力する。
【0063】
一方で、水位が光軸303より高い場合は、光軸303上には給水タンク53のほかに水も存在する。水は光源302の光の波長を吸収するため、受光部301では光源の光を受光出来ない。それにより受光部301の出力電圧はほぼ0になる。
【0064】
受光部301の出力電圧と予め定められた閾値との大小関係を比較することで、水位が光軸303より高いか低いか判定を行うことが出来る。
【0065】
なお、給水タンク53の形状は
図3のような平面部304を備える形状に限定されず、光源302からの光が透過可能な材質や構造を備えているあらゆる形状、材質の給水タンクが対象となる。
【0066】
図4は本実施例の給水タンク53を水平方向から見た図である。
【0067】
図4に示すように、本実施例においては、光学センサ52を鉛直方向に4つ並んで備えている。しかし、センサ数は監視したい水位数に応じて任意に変更することが可能であり、最低1つ以上とすることができる。
【0068】
図4のように、4つの光学センサ52は、それぞれ水位A,B,C,Dを監視しており、水位Aには受光部301aと光源302aからなる光学センサ52が設けられ、光軸303aが存在する。
【0069】
同様に、水位Bには受光部301bと光源302bからなる光学センサ52が、水位Cには受光部301cと光源302cからなる光学センサ52が、水位Dには受光部301dと光源302dからなる光学センサ52がそれぞれ設けられており、それぞれ光軸303b,303c,303dが存在する。
【0070】
また、本実施例においては、複数の光学センサ52のうち、設置距離が近い、隣接する光学センサ52は光源302と受光部301とが互い違いに配置されている。
【0071】
これは、
図5に示すように、光源302a,302b,302cから放出される光が広がりを持って進むためである。光源302a,302b,302cから放出される光が広がりを持つことにより、光学センサ52の設置距離が近く、光源302と受光部301とがそれぞれ同一方向に配置される場合(
図5の上側参照)、ひとつの光源302から照射された光が隣接するセンサの受光部301でも受光してしまう恐れがあるためであり、
図5の下側に示すように光源302と受光部301とが互い違いに配置されていることで、隣接するセンサの光源302からの光を不要に検出することを避けることが望ましい。
【0072】
なお、隣接する光学センサ52間の距離が光源302からの光の広がり以上に十分に離れている場合は光源302と受光部301とが交互に配置される必要はなく、同一方向に配置することができる。
【0073】
ここで、光学センサ52のデメリットとして、光源302の劣化等の原因により光源302の光量が低下した場合や、給水タンク53内面の光軸303上に汚れが付着した場合には、受光部301での受光量が低下し、水位の誤判定をする可能性がある、というものがある。
【0074】
これに対し、コントローラ24において、光源302への入力電圧とその時の受光部301での出力電圧の値を用いることで、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定し、最適なタイミングでセンサ交換、給水タンク53清掃を促すことが可能となる。これにより、さらに分析性能、信頼性の高い自動分析装置を提供することができる。また、定期的に行う必要があったメンテナンスの頻度を低減することが可能である。
【0075】
以下、光源302の光量低下、光軸303上の汚れの検知の処理の流れについて
図6および
図7を用いて説明する。
図6は光源302への入力電圧を変動させた際の受光部301での出力電圧の変化を示しており、
図7は本実施例における光源302の光量低下、光軸303上の汚れ有無のチェック実行時のフローチャートを示している。
【0076】
まず、チェックの際の好ましいコントローラ24の制御について説明する。
【0077】
図6に示すように、光源302に入力される電圧が所定電圧V
Sより小さい際は、入力電圧に比例した光量の光が放出され、受光部301の検出値とそれに比例する出力電圧値も比例して上昇する。そして、光源302はある所定値の電圧V
S以上の電圧が入力されると、一定光量の光を放出するため、受光部301の検出値とそれに比例する出力電圧値も一定値V
maxで飽和する。
【0078】
これは、光学センサ52を水位検知に用いる場合、光源302に定格電圧VNを入力した際の、水位が光軸303より低くなった場合の受光部301での出力は、受光部301の表示可能範囲の最大値をオーバーシュートするよう設計することが一般的であり、本実施例の光学センサ52でもそのように設計することが想定されるためである。
【0079】
そこで、コントローラ24は、通常の水位検出の際は、光源302への入力電圧はある所定値の電圧VS以上の電圧、例えばある所定値の電圧VNを印加するものとする。
【0080】
これに対し、光源302の光量低下、光軸303上の汚れの検知のチェック処理の際の光源302への印加電圧は通常の水位チェックの際の印加電圧VNより小さい値、例えば入力電圧に比例した光量の光が放出される領域の電圧VLや電圧VLより大きい電圧VHとすることが望ましい。これにより、光源302の光量低下や光軸303上に汚れが付着した際にも出力値が最大値のままとなり、検知が出来ない、といった不具合が生じることを確実に避けることができる。
【0081】
なお、チェック時の印加電圧は小さい電圧値VLからでも大きい電圧値VHからでもよいが、チェックの開始前、もしくはチェック完了後に、水位チェック時の印加電圧VNでの受光部301の出力電圧が一定値Vmaxであるかを確認することが望ましい。
【0082】
次いで、チェックの流れについて
図7を用いて説明する。
【0083】
このチェックは装置が装置立ち上げの際、あるいは分析と分析との間のスタンバイ状態でかつ前回チェック時から24時間以上経過した場合に開始するものとすることができる。前回チェック時から24時間以上経過した時点でオペレーション中の場合は、次スタンバイ時に実行する。しかし、チェック間隔は装置の仕様や使用環境に応じて変更することが可能である。自動で行う以外にも、サービスパーソンやオペレータの指示に基づいて実行するものとしても良い。
【0084】
ここで、光源302a,302b,302c,302dの光量低下、光軸303上の汚れの有無チェックの実行回数をnとしたときに、水位A,B,C,Dの受光部301a,301b,301c,301dの出力電圧の値をそれぞれVAn,VBn,VCn,VDnと表すこととする。
【0085】
また、センサ取付・交換時に実施するセンサキャリブレーション(性能確認)時に、同様に取得した出力をそれぞれVAC,VBC,VCC,VDCと表すこととする。
【0086】
更に、4つある光学センサ52の判定を同時に実行するものとするが、光学センサ52の判定を異なるタイミングで個別に実行することができる。同時に実行する場合はチェック時間を短縮することができ、1つずつ実行する場合はチェック対象となる受光部に対応した光源以外を消灯することで外乱光の影響をより減らすことが可能である。
【0087】
チェック時には、まず、チェック中に給水タンク53への水供給されることを断つため、給水の制御を停止する。具体的には、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定の際に、給水タンク53内への水の供給を断つために給水タンク53と給水設備50との間に設けられる給水電磁弁51を閉じたままとする。
【0088】
なお、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定の際に、給水タンク53内への水の供給を継続するために給水タンク53と給水設備50との間に設けられる給水電磁弁51を開いたままとすることができ、適宜選択できるものとしてもよい。この場合、リリーフ弁22も開いておく必要がある。
【0089】
次に、給水タンク53内の水位を下げるため、コントローラ24は、リリーフ弁22を解放し、同時に給水ポンプ54を稼働させることで排水を行う。(ステップS6010)。本実施例では2L/minの速度で排水するものとするが、もちろんこの値に限定されるものではない。
【0090】
次いで、コントローラ24は、最も低い位置に配置されている水位Dを検出するための光学センサ52による水の有無判定を行う(ステップS6020)。
【0091】
ステップS6020において水なしと判定されたときは処理をステップS6030に進める。これに対し、水ありと判定されたときは、コントローラ24は、圧力センサ21により給水タンク53からの流路の圧力監視を同時に行い、圧力異常の有無を判定する(ステップS6021)。これは光学センサ52の異常により水量を必要以上に下げてしまい、流路に多数の気泡が流入した場合を検知するためである。
【0092】
ステップS6021において圧力異常が検知されたと判定されたときは、コントローラ24は、センサ故障アラームを表示部24aに出力したうえで、サービスパーソンに自動で連絡を行い(ステップS6022)、装置の稼働を停止する(ステップS6023)。
【0093】
これに対し、ステップS6021において圧力異常が検知されなかったと判定されたときは、コントローラ24は、処理をステップS6010に戻し、水位の低下を待つこととする。
【0094】
ステップS6020の判定が水なしと判定されたときは、液面が光軸303直下にある場合、光源302dから照射された光が液面で反射して受光部301dに入射してしまうことを確実に避けるため、コントローラ24は、10秒後に給水ポンプ54を停止し、リリーフ弁22を閉じ、排水を停止する(ステップS6030)。この秒数は、排水速度と給水タンク53の容積、光源302dの光がどこまで広がるかにより算出される値であり、適宜変更可能である。
【0095】
次に、コントローラ24は、各々の受光部301a,301b,301c,301dの出力電圧の測定を行う。以下、例として水位Aの場合を示すが、水位B,C,Dでも同様である。
【0096】
電圧測定時、まず光源302aへの入力電圧を低下させていく。
【0097】
まず、コントローラ24は、受光部301dからの出力電圧値がVACmaxの80%のVAn80となるように光源302aへの入力電圧を下げ、VAn80およびその時の光源302aへの入力電圧VAnHを記憶部に記録する(ステップS6040)。
【0098】
次いで、コントローラ24は、受光部301dからの出力電圧値がVACmaxの20%のVAn20となるように光源302aへの入力電圧を下げ、VAn20および、その時の光源302aへの入力電圧VAnLを記憶部に記録する(ステップS6050)。
【0099】
その後、コントローラ24は、ステップS6040,S6050とセンサキャリブレーション時の出力電圧を記憶部から読み出し、光源302aへの複数の入力電圧に対する複数の受光部301aでの出力電圧の差の比率MAn(=(VAn80‐VAn20)/(VAnH‐VAnL))を算出し、記憶部に記憶する(ステップS6060)。
【0100】
次いで、コントローラ24は、ステップS6060で求めた差の比率MAnとセンサキャリブレーション時に上記同様に取得した差の比率MACとの比MAn/MACを算出する(ステップS6070)。
【0101】
本実施例では、この比MAn/MACの値によって光源302aの光量低下または光軸303a上の汚れの有無を判定し、装置の振る舞いを決定する。
【0102】
まず、コントローラ24は、MAn/MACが0.8より大きいか否かの判定を行い(ステップS6080)、MAn/MACが0.8より大きいと判定されたときは、コントローラ24は、光源302aの光量低下および光軸303a上に汚れは発生していないと判定し、処理をステップS6081に進める。
【0103】
これに対し、MAn/MACが0.8以下であると判定されたときは処理をステップS6090に進めて、コントローラ24は、MAn/MACが0.7より大きいか否かの判定を行う(ステップS6090)。
【0104】
MAn/MACが0.7より大きいと判定されたときは光源302aの光量低下または光軸303a上に汚れが発生している可能性があると判定し、処理をステップS6091に進めて、コントローラ24は、装置の稼働は維持しつつ、表示部24aに給水タンク53清掃を促すアラームを表示させ(ステップS6091)、処理をステップS6081に進める。
【0105】
これに対し、MAn/MACが0.7以下であると判定されたときは処理をステップS6100に進めて、コントローラ24は、MAn/MACが0.6より大きいか否かの判定を行う(ステップS6100)。
【0106】
MAn/MACが0.6より大きいと判定されたときは光源302aの光量低下または光軸303a上に汚れが発生している可能性があると判定して、処理をステップS6091に進めて、コントローラ24は、装置の稼働は維持しつつ、表示部24aに給水タンク53清掃を促すアラームを表示させるとともに、サービスパーソンに自動で通知を行い(ステップS6101)、処理をステップS6081に進める。
【0107】
これに対し、MAn/MACが0.6以下であると判定されたときは光源302aが寿命であると判定し、処理をステップS6110に進めて、コントローラ24は、表示部24aにセンサが寿命であることを示すアラームを表示させるとともに、サービスパーソンに自動で通知を行う(ステップS6110)。さらに装置の稼働を停止する(ステップS6120)。
【0108】
このように、コントローラ24は、光源302への複数の入力電圧に対する受光部301での複数の出力電圧の差の比率を用いることで、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定することが望ましい。
【0109】
また、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定する際に、出力電圧が、第1閾値より小さいときは給水タンク53清掃アラームを出力し、第2閾値より小さいときは給水タンク53清掃アラームおよびサービスパーソンへの連絡信号を出力し、第3閾値より小さいときはセンサ故障アラームを出力するとともに自動分析装置100の稼働を停止するものとすることができる。
【0110】
なお、本実施例において、装置の振る舞いを決定するMAn/MACの閾値は、0.8(第1閾値),0.7(第2閾値),0.6(第3閾値)を各々例示していたが、装置、センサの仕様に応じて適宜変更が可能である。他にも、取得したデータと経過時間の関係からセンサの寿命予測をすることも可能であり、その予測から大きく外れるようなデータが取得されれば、突発的な汚れが発生または異物混入のように原因を切り分け、アラーム内容を最適化することも可能である。
【0111】
また、閾値数も3つに限定されるものではなく、それ以上でもそれ以下でも成り立つため、行いたい装置の振る舞い数によって決定することが可能である。
【0112】
図7に戻り、ステップS6080の判定がYESの場合、またはステップS6091、ステップS6101が実行された場合、コントローラ24は、装置の稼働継続に問題はないとして、まず、光源302aへの入力電圧を定格値V
Nに変更する(ステップS6081)。
【0113】
その後、コントローラ24は、給水電磁弁51を解放し、水位が水位Bになるまで水の供給を続ける(ステップS6082)。
【0114】
最後に、コントローラ24は、装置スタンバイ状態に移行し(ステップS6083)、判定を終了する。
【0115】
ここで、コントローラ24は、光学センサ52の検出値が水なしとなってから一定時間排水を行う場合、具体的にはステップS6030での給水タンク53内の水位の下げ方として、水位Dより低くなった10秒後に排水を停止する場合を例示したが、流量計を備える場合等には、コントローラ24は、光学センサ52の検出値が水なしとなってから一定量排水を行うことにより、給水タンク53の水を一時的に減らす形態とすることができる。
【0116】
更に、給水タンク53が空になったことを検知するセンサを備えている場合には給水タンク53が空になるまでとしても良い。
【0117】
また、本実施例のように複数のセンサを備える場合、水位Aの水有無判定が切り替わってから水位Bの判定が切り替わるまでの時間差などから水の供給、排出スピードを把握できるため、それにより光学センサ52が監視していない任意の水位を狙って供給、排出を停止することも可能である。
【0118】
また、水位のあげ方も給水タンク53の水を一時的に減らす場合と同様に特に限定は無く、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定が完了した後、一定時間水を供給する、一定量の水を供給する、あるいは水位が所定の水位になるまで水を供給する形態とすることができる。
【0119】
他にも、装置の振る舞いを決定する指標として、差の比率MAn/MACの値を用いていたが、これに限定されるわけではなく、MAn/MAn-1やVAn80/VAnH、VAn80/VAnHのなどの値を用いることも可能である。
【0120】
更に、電圧測定時に光源302への入力電圧を一時的に下げる形態を例示したが、定格時の受光部301の出力電圧が表示可能範囲の最大値より小さい場合、つまり、定格時に光量低下、汚れの発生により出力電圧が変化する場合には、定格時の出力電圧で評価を行うことも可能である。
【0121】
また、水排出時の異常検知方法として圧力センサ21により流路の圧力監視を行うものとしたが、例えば、流量センサとしても検知可能である。この場合、給水タンク53から廃液管23までの流路に配置される。水位を下げすぎたことにより、気泡が多数流路に流れた場合、この流量センサで測定した流量の変化によって、水位を必要以上に下げてしまっていることを検知できる。
【0122】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0123】
上述した本実施例の自動分析装置100は、装置外部から供給され、自動分析装置100の各機構で消費される水を一時的に貯水する給水タンク53と、光源302、および光源302から照射される光を受光する受光部301を有し、給水タンク53内の水の量を検知する光学センサ52と、自動分析装置100内の各機構の動作を制御するコントローラ24と、を備え、光源302と受光部301との間に給水タンク53が配置されており、コントローラ24は、給水タンク53の水を一時的に減らした際の受光部301から出力される出力電圧に応じて光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定する。
【0124】
このような構成によって、光源302の光量低下、または光軸303上の汚れ、すなわち給水タンク53内の汚れ、あるいは水の汚れの有無を検知し、最適なタイミングでの光学センサ52の交換や給水タンク53の清掃を促すことができるようになる。従って、オペレータのメンテナンス頻度を低減し、信頼性・分析性能の高い装置が提供可能となる。
【0125】
また、コントローラ24は、光学センサ52の検出値が水なしとなってから一定時間排水を行うこと、あるいは光学センサ52の検出値が水なしとなってから一定量排水を行うことにより、給水タンク53の水を一時的に減らすため、液面が光軸303直下にある状態が生じる可能性をより低減し、光源302dから照射された光が液面で反射して受光部301dに入射してしまうことを確実に避けることができ、誤判定の可能性をより減らすことができる。
【0126】
更に、コントローラ24は、光源302への入力電圧とその時の受光部301での出力電圧の値を用いることで、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定すること、特に光源302への複数の入力電圧に対する受光部301での複数の出力電圧の差の比率を用いることで、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定することで、高精度の判定を実現することができる。
【0127】
また、光学センサ52を複数備えることで、水位検出の精度や給水タンク53内の汚れの有無のチェックの精度をより高めることができる。
【0128】
更に、コントローラ24は、複数の光学センサ52の判定を同時に実行することにより、光学センサ52の異常やタンク内の汚れの有無の判定の効率を高めることができる。
【0129】
また、コントローラ24は、複数の光学センサ52の判定を異なるタイミングで個別に実行することで、他の光学センサ52からの光の影響が及ぶことを確実に避けることができ、検出精度を更に高めることができる。
【0130】
更に、複数の光学センサ52のうち、隣接する光学センサ52は光源302と受光部301とが互い違いに配置されていることにより、他の光学センサ52由来の光の影響が及ぶことを低減することができ、検出精度を更に高めることができる。
【0131】
また、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無を判定する際に、出力電圧が、第1閾値より小さいときは給水タンク53清掃アラームを出力し、第2閾値より小さいときは給水タンク53清掃アラームおよびサービスパーソンへの連絡信号を出力し、第3閾値より小さいときはセンサ故障アラームを出力するとともに自動分析装置100の稼働を停止することで、給水タンク53内の様々な状況に応じた対応をとることができ、必要以上のメンテナンスが為されることを避け、負担の更なる軽減を図ることができる。
【0132】
更に、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定が完了した後、一定時間水を供給する、一定量の水を供給する、あるいは水位が所定の水位になるまで水を供給することにより、確実な給水を行うことができる。
【0133】
また、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定の際に、給水タンク53内への水の供給を断つために給水タンク53と給水設備50との間に設けられる給水電磁弁51を閉じたままとすることで、水の消費量を低減することができる。
【0134】
更に、コントローラ24は、光学センサ52の異常、あるいは給水タンク53内の汚れの有無の判定の際に、給水タンク53内への水の供給を継続するために給水タンク53と給水設備50との間に設けられる給水電磁弁51を開いたままとすることによれば、給水タンク53内に残存した水を新しいものに置換でき、給水タンク53内の水の劣化を抑制することができる。
【0135】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0136】
1…反応ディスク
2…反応容器
3…洗浄機構
3a,18a,19a,30a,31a,32a,33a,40a,42a…電磁弁
4…分光光度計
4a…光源
5,6…撹拌機構
7,8…試薬分注機構
7a,8a…試薬プローブ(分注プローブ)
9…試薬ディスク
10…試薬ボトル
11,12…試料分注機構
11a,12a…試料プローブ(分注プローブ)
13,14…洗浄槽
15…試料容器
16…試料ラック
17…試料搬送機構
18…試料用シリンジ
19…試薬用シリンジ
20…分岐管
20a…フィルタ
21…圧力センサ
22…リリーフ弁
23…廃液管
24…コントローラ
24a…表示部
30,31,32,33…洗浄槽
40…循環ポンプ
41…ギアポンプ
42…循環ポンプ
50…給水設備
51…給水電磁弁
52…光学センサ
53…給水タンク
54…給水ポンプ
63…流路
64…供給流路
65…循環流路
100…自動分析装置
101…分析部
102…給水部
301,301a,301b,301c,301d…受光部
302,302a,302b,302c,302d…光源
303,303a,303b,303c,303d…光軸
304…平面部