(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置に関する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20250416BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021558723
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020056332
(87)【国際公開番号】W WO2020200664
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレムス-ペーテルス、アリシア、マリスカ
(72)【発明者】
【氏名】バルトゥッセン、サンダー
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジュアンシオン
(72)【発明者】
【氏名】ジリセン、レイニア、テオドルス、マルティヌス
(72)【発明者】
【氏名】ウィットヴィレット、シェトス
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-199284(JP,A)
【文献】特開2001-358056(JP,A)
【文献】特開2004-266051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を通じて放射ビームを基板上に投影する投影システムに対する基板の位置を
ポジショナによって制御するために、当該位置を決定する位置モニタリングシステムであって、当該位置モニタリングシステムの構成要素が前記投影システムの底部に固定される位置モニタリングシステムと、
開口と前記構成要素の間に配置されるバッフルと、
基板に向けてガスを届ける供給ラインと、
を備え、
供給ラインのガス放出端は、バッフルと位置モニタリングシステムの前記構成要素の間に配置される装置。
【請求項2】
前記構成要素は、干渉計の反射面またはリニアエンコーダのスケールを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
バッフルはバッフル幅を有し、
前記構成要素は、バッフル幅と平行に測定される構成要素幅を有し、
バッフル幅は構成要素幅以上である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
基板を支持する基板テーブルを更に備え、
バッフルは、投影システムと基板テーブルの間の方向に延びる実質的な鉛直部を備える、
請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
バッフルの第1部分は、前記構成要素における開口側の第1縁に沿って延び、
バッフルの第2部分および第3部分は、前記構成要素の第2縁および第3縁の少なくとも一部に沿って延び、
第2縁および第3縁は第1縁に隣接する、
請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
バッフルの一部はゲッタおよび/または柔軟素材によって構成され、
投影システムはダイナミックガスロックを更に備え、
投影システムの開口は、ダイナミックガスロックにおける開口に対応する、
請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
バッフルは投影システムと一体的に形成される、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
ガス放出端はガス放出端幅を有し、
位置モニタリングシステムの前記構成要素は、ガス放出端幅と平行に測定される構成要素幅を有し、
ガス放出端幅は構成要素幅以上である、
請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
ガス放出端の第1部分は、前記構成要素における開口側の第1縁に沿って延び、
ガス放出端の第2部分および第3部分は、前記構成要素の第2縁および第3縁の少なくとも一部に沿って延び、
第2縁および第3縁は第1縁に隣接する、
請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の装置を備えるリソグラフィ装置。
【請求項11】
投影システムにおける開口を通じて放射ビームを基板の露光領域上に投影するステップと、
位置モニタリングシステムによって
、投影システムに対する基板の位置を
ポジショナによって制御するために当該位置を決定するステップと、
を備え、
位置モニタリングシステムの構成要素が投影システムの底部に固定され、
開口と前記構成要素の間に、露光領域と前記構成要素の間のガスの流れを逸らすバッフルが設けられ、
基板に向けてガスを届ける供給ラインが設けられ、
供給ラインのガス放出端は、バッフルと位置モニタリングシステムの前記構成要素の間に配置される、
装置の汚染を低減する方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の装置または請求項11に記載の方法を用いるデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2019年4月1日に出願された欧州出願19166555.3号の優先権を主張し、その全体が参照により本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リソグラフィ装置およびそれに関する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に望ましいパターンを適用する装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用される。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)におけるパターンを基板上に形成された放射感応性材料(レジスト)の層の上に投影する。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用いてもよい。この放射の波長は、基板上に形成しうるフィーチャの最小サイズを決定する。4-20nmの範囲内、例えば6.7nmや13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を用いるリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を用いるリソグラフィ装置より小さいフィーチャを基板上に形成するために使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レジスト上に入射する放射は、脱ガス(outgassing)としても知られるレジストからの揮発性有機化合物等の成分の放出を引き起こしうる。脱ガス成分はリソグラフィ装置における要素に付着して汚染を引き起こしうる。リソグラフィ装置における要素の汚染は当該装置の性能および寿命を低減する。
【0006】
性能や寿命に対する汚染の影響を低減するために、または、リソグラフィ装置に関するその他の不利な点を解消するために、改良されたリソグラフィ装置を提供することが望まれている可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、投影システムにおける開口を通じて放射ビームを基板上に投影する投影システムと、投影システムに対する基板の位置を決定する位置モニタリングシステムであって、当該位置モニタリングシステムの構成要素が投影システムの下方に設けられる位置モニタリングシステムと、開口と前記構成要素の間に配置されるバッフルと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0008】
リソグラフィ装置は、例えば基板上のレジストからの脱ガスによって汚染されうる。リソグラフィ装置における要素の汚染は、当該装置の性能および/または寿命を低減する。位置モニタリングシステムの構成要素等の要素の汚染は、投影システムに対する基板の位置を決定する性能を低下させる。リソグラフィ装置にバッフルを設けることによって、基板から前記構成要素上への汚染物質の移動を低減または抑制できる。汚染物質は気体でもよい。これに代えてまたは加えて、汚染物質は液体でも固体でもよく、これらは気体中に分散していてもよい。汚染物質はガス流を介してリソグラフィ装置中を移動しうる。ガスは汚染物質粒子を基板から前記構成要素に運びうる。バッフルはリソグラフィ装置内のガスの流れを逸らすまたは抑制する。バッフルは、開口の下方にある基板の一部から前記構成要素の少なくとも一部へのガス流を逸らす。ガス流を逸らすまたは抑制することによって、前記構成要素上に入射する汚染物質粒子が減る。バッフルは、開口と前記構成要素の一部の間の見通し線をブロックする。バッフルは、前記構成要素の少なくとも一部と開口の直下の基板の領域の間の直接の見通し線をブロックしてもよい。例えば、バッフルは、開口の直下の基板の領域と前記構成要素における開口に近い側から最初の5cmの間の見通し線をブロックしてもよい。基板は基板テーブル上に載置され、当該基板テーブルはリソグラフィ装置の通常の使用において基板の位置と同視しうる。
【0009】
リソグラフィ装置はEUVリソグラフィ装置でもよい。開口は投影システムの最下端にあってもよい。最下端は投影システムにおける基板側の端と解釈される。開口は、投影システムから基板上への放射ビームの投影を許容する。開口は、放射ビームを通過させる一方で、ガスの流れを防ぐ膜を備えてもよい。位置モニタリングシステムは、例えば干渉計またはリニアエンコーダを備えてもよい。位置モニタリングシステムはリソグラフィ装置と関係付けられる。位置モニタリングシステムの構成要素は、位置モニタリングシステムの下方に設けられる。前記構成要素は開口に近い側でもよい。前記構成要素は基板および/または基板を支持する基板テーブルに近い側でもよい。
【0010】
前記構成要素は、干渉システムに関係付けられた反射面等の反射面を備えてもよい。位置モニタリングシステムはレーザビームを反射面から反射してもよい。前記構成要素は、例えばリニアエンコーダに関係付けられたスケール等のスケールを備えてもよい。前記構成要素はセンサを備えてもよい。バッフルは反射面、スケール等の一部上の汚染を低減するように設けられる。
【0011】
バッフルはバッフル幅を有する。バッフル幅は、基板から前記構成要素に向かう方向および開口から前記構成要素に向かう方向に直交する方向に測定される。バッフル幅はスキャン方向と同一でもよい。バッフルはバッフル幅に沿って延びた断面形状を有してもよい。位置モニタリングシステムの前記構成要素は、バッフル幅と平行に測定された構成要素幅を有する。バッフル幅は構成要素幅以上である。好ましくは、構成要素幅以上のバッフル幅を有するバッフルは、開口と前記構成要素の間の全ての見通し線をブロックする。直接の見通し線をブロックすることで、より効率的にガス流を逸らし、汚染物質が前記構成要素に衝突する可能性を低くできる。
【0012】
リソグラフィ装置は基板テーブルを備えてもよい。基板テーブルは基板を支持する。リソグラフィ装置の通常の使用では、基板は基板テーブル上に載置される。バッフルは、投影システムと基板テーブルの間の方向に延びる実質的な鉛直部を備える。鉛直部は露光領域から前記構成要素へのガス流を逸らす。好ましくは、これによって露光領域から前記構成要素への汚染物質の移動が低減される。露光領域は開口の下方の基板の領域である。露光領域は、リソグラフィ装置の稼働中に放射を受ける基板の領域と定義される。鉛直部は、露光領域と前記構成要素の少なくとも一部の間の直接の見通し線をブロックしてもよい。鉛直部は、例えば、露光領域と前記構成要素における開口に近い側からの最初の5cmの間の見通し線をブロックしてもよい。
【0013】
バッフルの第1部分は、前記構成要素の第1縁に沿って延びてもよい。第1縁は開口に近い側の縁である。バッフルの第2部分および第3部分は、前記構成要素の第2縁および第3縁に沿って延びてもよい。第2縁および第3縁は、第1縁に隣接する。第2縁および第3縁は、第1縁に直交してもよい。バッフルは、前記構成要素の開口側の端の周囲に延在する。例えば、第1部分、第2部分、第3部分は、前記構成要素の端の周囲に延在するC字状のバッフルを形成してもよい。あるいは、第2部分および第3部分は第1部分によって結合されてv字状を形成してもよい。この例では、第2部分および第3部分は前記構成要素の開口側の端の周囲に延在し、第1部分、第2部分、第3部分は第1縁に沿って延在する。前記構成要素の端の周囲に延在するバッフルを設けることで、露光領域と前記構成要素の間のより多くの直接の見通し線をブロックできる。このように、露光領域と前記構成要素の間のガスの流れをより効果的に逸らすことができる。従って、前記構成要素上に入射する汚染物質を低減できる。
【0014】
バッフルの一部はゲッタを構成してもよい。つまり、バッフルは接触してくる分子を優先的に捕捉する表面を有する。この例における捕捉は、吸収、吸着、化学結合、汚染物質をバッフルに付着させる他の任意のプロセスを含んでもよい。ゲッタは、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、チタン、レアアース元素等の反応性素材を含む。ゲッタは、バッフルへの表面コーティングによって形成されてもよい。
【0015】
バッフルの一部は柔軟素材によって形成されてもよい。柔軟素材は柔軟性を有し、第2の物体と接触すると曲がる。当該部分は例えばプラスチック素材やゴムである。以上に加えてまたは代えて、バッフルの一部は柔軟構造を備えてもよい。つまり、柔軟構造は柔軟性を有し、第2の物体と接触すると曲がる。例えば、バッフルは複数の剛毛部材や中空構造を備えてもよい。バッフルは少なくとも一つのプラスチックチューブを備えてもよい。柔軟素材および/または構造が設けられるバッフルは、バッフル-基板の衝突による衝撃を最小化しうる。 つまり、バッフルが基板に衝突しても、基板および/またはバッフルへのダメージは最小化される。
【0016】
投影システムはダイナミックガスロックを更に備えてもよい。投影システムの開口は、ダイナミックガスロックにおける開口に対応する。開口は、放射は実質的に透過できる一方で、ガスの流れをブロックする膜を更に備えてもよい。ダイナミックガスロックはガスを基板テーブルに向ける。基板と投影システムの間に存在するガス(静的であれ動的であれ)は、基板から飛散する汚染物質に対する障壁を形成する。例えば、ダイナミックガスロックを通じて基板に向かう方向にガスを流す場合のようにガスが追加的に基板に向かって移動する場合、汚染物質が投影システムに到達しないための追加的な保護手段が実現される。ダイナミックガスロックからのガスの移動が最適化された場合、基板から前記構成要素へのガスの流れが低減される。
【0017】
バッフルは、投影システムと一体的に形成されてもよい。バッフルは、ダイナミックガスロックと一体的に形成されてもよい。この例では、バッフルは開口に近いダイナミックガスロックから基板に向かう方向への投影を構成する。
【0018】
リソグラフィ装置は、基板および/または基板テーブルに向けてガスを届ける供給ラインを更に備えてもよい。供給ラインは投影システムと関係付けられてもよく、特にダイナミックガスロックから始まってもよい。ガスは水素でもよい。あるいは、ガスはアルゴン等の不活性ガスでもよい。ガスは、基板と前記構成要素の間にガスカーテンを形成するために供給されてもよい。ガスは、基板から前記構成要素への汚染物質を運ぶガスの流れを抑制するためのパージを提供してもよい。
【0019】
供給ラインのガス放出端は開口と前記構成要素の間に配置されてもよい。ガス放出端は投影システム、特にダイナミックガスロックと関係付けられてもよい。
【0020】
供給ラインのガス放出端は、バッフルと前記構成要素の間に配置されてもよい。バッフルに関するガスの流れを最適化することで、基板から前記構成要素へのガスの流れを更に逸らすことができる。このように、汚染物質が前記構成要素に到達しないための追加的な保護手段が実現される。バッフルにおける前記構成要素側の面の付近にガスを供給することで、バッフルの背後のガス圧が上昇する。背後はバッフルと前記構成要素の間と解釈される。バッフルの背後で上昇したガス圧は、基板から前記構成要素へのガスの流れを低減する。これに代えてまたは加えて、供給ラインのガス放出端は、バッフルにおける基板テーブル側の端に配置されてもよい。ガス供給ラインは、バッフルの内側領域に設けられてもよい。ガス供給ラインおよびガス放出端は、バッフルにおける基板テーブル側の端から基板テーブルへのガス流を供給する。
【0021】
ガス放出端はガス放出端幅を有する。ガス放出端幅は、基板から前記構成要素に向かう方向および開口から前記構成要素に向かう方向に垂直な方向に測定される。ガス放出端幅は、上記の方向のガス放出端の寸法と定義される。ガス放出端はガス放出端幅に沿って連続的でもよいし、例えば、ガス放出端がガス放出端幅に亘って形成される複数の孔を備える場合のように、ガス放出端はガス放出端幅に沿って非連続的でもよい。ガス放出端幅はスキャン方向と同一でもよい。前記構成要素はガス放出端幅に平行に測定される構成要素幅を有する。ガス放出端幅は構成要素幅以上である。好ましくは、構成要素幅以上の幅を有するガス放出端は、開口と前記構成要素の間の全ての点においてガス流を低減できる。
【0022】
ガス放出端の第1部分は前記構成要素の第1縁に沿って延在する。第1縁は開口側の縁である。ガス放出端の第2部分および第3部分は、前記構成要素の第2縁および第3縁の少なくとも一部に沿って延在する。第2縁および第3縁は第1縁に隣接する。第2縁および第3縁は第1縁に直交してもよい。ガス放出端は、前記構成要素における開口側の端の周囲に延在する。例えば、第1部分、第2部分、第3部分は、前記構成要素の端の周囲に延在するC字状のガス放出端を形成してもよい。前記構成要素の端の周囲に延在するガス放出端を設けることで、露光領域と前記構成要素の間のガス流を低減できる。前記構成要素の端の周囲に延在するガス放出端を設けることで、前記構成要素のより大きい部分に対して汚染物質を含まないパージガス流を供給できる。このように、前記構成要素上に入射する汚染物質を低減できる。
【0023】
本発明の第2の態様では、リソグラフィ装置の汚染を低減する方法が提供される。
この方法は、投影システムにおける開口を通じて放射ビームを基板の露光領域上に投影するステップと、位置モニタリングシステムによって投影システムに対する基板の位置を決定するステップと、を備える。位置モニタリングシステムの構成要素が投影システムの下方に設けられ、開口と前記構成要素の間に、露光領域と前記構成要素の間のガスの流れを逸らすバッフルが設けられる。
【0024】
リソグラフィ装置はEUVリソグラフィ装置でもよい。開口は投影システムの最下端にあってもよい。最下端は投影システムにおける基板側の端と解釈される。開口は、投影システムから基板上への放射ビームの投影を許容する。開口は、放射ビームを通過させる一方で、ガスの流れを防ぐ膜を備えてもよい。開口は、投影システムの下部に配置されてもよい。下部は、投影システムの基板側の端と解釈される。位置モニタリングシステムは、例えば干渉計またはリニアエンコーダを備えてもよい。位置モニタリングシステムはリソグラフィ装置と関係付けられる。位置モニタリングシステムの構成要素は、位置モニタリングシステムの下方に設けられる。前記構成要素は開口に近い側でもよい。前記構成要素は基板および/または基板を支持する基板テーブルに近い側でもよい。
【0025】
リソグラフィ装置は、例えば基板上のレジストからの脱ガスによって汚染されうる。リソグラフィ装置における要素の汚染は、当該装置の性能および/または寿命を低減する。位置モニタリングシステムの構成要素等の要素の汚染は、投影システムに対する基板の位置を決定する性能を低下させる。リソグラフィ装置にバッフルを設けることによって、基板から前記構成要素上への汚染物質の移動を低減または抑制できる。汚染物質は気体でもよい。これに代えてまたは加えて、汚染物質は液体でも固体でもよく、これらは気体中に分散していてもよい。汚染物質はガス流を介してリソグラフィ装置中を移動しうる。ガスは汚染物質粒子を基板から前記構成要素に運びうる。バッフルはリソグラフィ装置内のガスの流れを逸らすまたは抑制する。バッフルは、開口の下方にある基板の一部から前記構成要素の少なくとも一部へのガス流を逸らす。ガス流を逸らすまたは抑制することによって、前記構成要素上に入射する汚染物質粒子が減る。バッフルは、開口と前記構成要素の間の直接の見通し線をブロックする。バッフルは、前記構成要素と開口の直下の基板の領域の間の直接の見通し線をブロックしてもよい。バッフルは、開口から基板に向かう方向および開口から前記構成要素に向かう方向に直交する方向に延びた断面形状を有する。延在するバッフルによって、前記構成要素の全ての部分と開口の全ての部分の間に直接の見通し線がなくなる。
【0026】
前記構成要素は、干渉システムに関係付けられた反射面等の反射面を備えてもよい。位置モニタリングシステムはレーザビームを反射面から反射してもよい。前記構成要素は、例えばリニアエンコーダに関係付けられたスケール等のスケールを備えてもよい。前記構成要素はセンサを備えてもよい。バッフルは反射面、スケール等の一部上の汚染を低減するように設けられる。
【0027】
方法は、露光領域と前記構成要素の少なくとも一部の間の見通し線をブロックするバッフルを設置するステップを更に備える。バッフルはバッフル幅を有する。バッフル幅は、基板から前記構成要素に向かう方向および開口から前記構成要素に向かう方向に直交する方向に測定される。バッフル幅はスキャン方向と同一でもよい。前記構成要素は、バッフル幅と平行に測定された構成要素幅を有する。バッフル幅は構成要素幅以上である。バッフルは、開口から基板に向かう方向および開口から前記構成要素に向かう方向に直交する方向に延びた断面形状を有する。好ましくは、構成要素幅以上の幅を有するバッフルは、開口と前記構成要素の間の全ての直接の見通し線をブロックする。直接の見通し線をブロックすることで、より効率的にガス流を逸らし、汚染物質が前記構成要素に衝突する可能性を低くできる。
【0028】
方法は、投影システムと基板の間の方向のバッフルの寸法と定義されるバッフル高さを有するバッフルを提供するステップを更に備える。バッフル高さは、露光領域と前記構成要素における開口に近い側から少なくとも最初の5cmの間の全ての見通し線をブロックするように設定される。
【0029】
方法は、バッフルの一部に形成されたゲッタによって、汚染物質粒子を捕捉するステップを更に備える。つまり、バッフルは接触してくる分子を優先的に捕捉する表面を有する。この例における捕捉は、吸収、吸着、化学結合、汚染物質をバッフルに付着させる他の任意のプロセスを含んでもよい。ゲッタは、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、チタン、レアアース元素等の反応性素材を含む。ゲッタは、バッフルへの表面コーティングによって形成されてもよい。
【0030】
方法は、投影システムから基板に向けて追加的なガス流を供給するステップを更に備える。ガス流はガス供給ラインによって供給される。供給ラインは投影システムと関係付けられてもよく、特にダイナミックガスロックから始まってもよい。ガスは水素でもよい。あるいは、ガスはアルゴン等の不活性ガスでもよい。ガスは、基板と前記構成要素の間にガスカーテンを形成するために供給されてもよい。ガスは、基板から前記構成要素への汚染物質を運ぶガスの流れを抑制するためのパージを提供してもよい。供給ラインは、バッフルに向けてガスを届けてもよい。バッフルに関するガスの流れを最適化することで、基板から前記構成要素へのガスの流れを更に逸らすことができる。このように、汚染物質が前記構成要素に到達しないための追加的な保護手段が実現される。供給ラインのガス放出端の一部は開口と前記構成要素の間に配置されてもよい。ガス放出端の一部は、バッフルにおける基板テーブル側の端に配置されてもよい。供給ラインは一つでも複数でもよい。一または複数の供給ラインはバッフルの内側領域に配置される。
【0031】
投影システムはダイナミックガスロックを更に備えてもよい。投影システムの開口は、ダイナミックガスロックにおける開口に対応する。ダイナミックガスロックはガスを基板テーブルに向ける。基板と投影システムの間に存在するガス(静的であれ動的であれ)は、基板から飛散する汚染物質に対する障壁を形成する。例えば、ダイナミックガスロックを通じて基板に向かう方向にガスを流す場合のようにガスが追加的に基板に向かって移動する場合、汚染物質が投影システムに到達しないための追加的な保護手段が実現される。ダイナミックガスロックからのガスの移動が最適化された場合、基板から前記構成要素へのガスの流れが低減される。バッフルは、ダイナミックガスロックの一部によって形成されてもよい。この例では、バッフルは開口に近いダイナミックガスロックから基板に向かう方向への投影を構成する。ガス放出端は投影システム、特にダイナミックガスロックに関係付けられてもよい。
【0032】
方法は、バッフルと前記構成要素の間に上昇したガス圧を供給するステップを更に備える。バッフルにおける前記構成要素側の面の付近にガスを供給することで、バッフルの背後のガス圧が上昇する。背後はバッフルと前記構成要素の間と解釈される。バッフルの背後で上昇したガス圧は、基板から前記構成要素へのガスの流れを低減する。
【0033】
本発明の第3の態様では、上記の装置または方法を用いて製造されたデバイスが提供される。デバイスは集積回路でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下、模式的な図面を参照しながら、本発明の実施形態を例示的に説明する。
【
図1】リソグラフィ装置および放射源を備えるリソグラフィシステムを示す。
【
図2】バッフルを備える投影システムの一部を示す。
【
図3】他の配置例におけるバッフルを備える投影システムの一部を示す。
【
図4】他の配置例におけるバッフルを備える投影システムの一部を示す。
【
図5】バッフルおよびガス供給ラインを備える投影システムの一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、放射源SOおよびリソグラフィ装置LAを備えるリソグラフィシステムを示す。放射源SOはEUV放射ビームBを生成し、当該EUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給する。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持する支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持する基板テーブルWTを備える。基板はウェーハとしても知られている。基板テーブルWTは基板サポートとも呼ばれる。
【0036】
図1に示される放射源SOは、例えば、レーザ生成プラズマ(LPP)源とも呼ばれるタイプである。レーザシステム1は、例えばCO
2レーザを含み、燃料放出器3等から供給されるスズ(Sn)等の燃料内にレーザビーム2によるエネルギーを投入する。本実施形態ではスズを例示するが、任意の適当な燃料を利用できる。燃料は、例えば、液状でもよいし、金属または合金でもよい。燃料放出器3は、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って、例えば小滴状のスズを向けるためのノズルを備えてもよい。レーザビーム2はプラズマ形成領域4におけるスズ上に入射する。スズ内へのレーザエネルギーの投入によって、プラズマ形成領域4においてスズプラズマ7が生成される。EUV放射を含む放射は、プラズマのイオンによる電子の脱励起および再結合の間にプラズマ7から放射される。なお、放射源SOは、放電生成プラズマ(DPP)源、自由電子レーザ(FEL)、その他のEUV放射を生成可能な放射源でもよい。
【0037】
照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMA上に入射する前に、当該EUV放射ビームBを調整する。照明システムILはファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11を含んでもよい。ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11の組合せは、所望の断面形状および所望の強度分布のEUV放射ビームBを供給する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11に加えてまたは代えて他のミラーやデバイスを含んでもよい。
【0038】
以上の調整後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果として、パターン付与されたEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターン付与されたEUV放射ビームB’を基板W上に投影する。この目的のために、投影システムPSは、基板テーブルWTによって保持された基板W上にパターン付与されたEUV放射ビームB’を投影する複数のミラー13、14を備えてもよい。放射ビームB’は、投影システムPSにおける開口16を通過して投影システムPSを出た後、基板Wの部分E上に投影される。パターン付与された放射ビームB’が照射される基板Wの部分Eは、一般的に開口16直下の基板Wの領域に対応し、露光領域Eとも呼ばれる。
【0039】
露光中等の通常動作時、基板Wは基板テーブルWT上に支持される。所定の位置にある場合、基板Wは一般的に基板テーブルWTに平行である。しかし、いくつかの場合では基板Wはなくてもよい。このように、基板Wに関する方向についての表現(例えば基板Wに向かう方向)は、基板テーブルWTに関する方向についての表現(例えば基板テーブルWTに向かう方向)と同義に解釈されうる。
【0040】
本発明を明確化するために、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は三つの軸、すなわち、x軸またはx方向、y軸またはy方向、z軸またはz方向を有する。三つの各軸は他の二つの軸に対して直交する。本装置の説明においては、
図1に示されるように、x軸およびy軸を基板テーブルWTの平面内に取り、z軸を基板テーブルWTに直交するように取る。x軸は更に開口16からミラー18に向かう方向に平行に取られる。リソグラフィ装置は、基板Wの部分に亘って放射がスキャンされる方向であるスキャン方向を有する。本実施形態では、スキャン方向がy方向に取られる。座標系の使用は例示を目的としており、本発明を限定するものではない。本発明の範囲を逸脱しない限り、上記とは異なる方法で本装置を方向付けしてもよい。例えば、本実施形態では開口16からミラー18に向かう方向がスキャン方向に直交するが、開口16およびミラー18を結ぶ方向は、スキャン方向に平行でもよいし、その他の任意の方向でもよい。
【0041】
方向についての表現も本発明の明確化のために用いられる。投影システムPSは、基板テーブルWTより「上方」にあると解釈しうる。このように、パターン付与された放射ビームB’は投影システムPSから、当該投影システムより「下方」にある基板Wの露光領域Eまで伝わる。「上方」および「下方」の用語は、
図1において定義されたz軸に関して定まる相対的なものと解釈してもよい。方向についての表現は本発明を限定するものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、上記とは異なる方法で本装置を方向付けしてもよい。
【0042】
投影システムPSは、パターン付与されたEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャより小さいフィーチャの像を形成してもよい。例えば、4または8の縮小係数が適用される。本実施形態では投影システムPSが
図1において二つのミラー13、14のみを有するが、投影システムPSは異なる任意の数(例えば6または8)のミラーを含んでもよい。
【0043】
基板Wは形成済みのパターンを含んでもよい。この場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付与されたEUV放射ビームB’によって形成された像を、基板W上に形成済のパターンに位置合わせする。
【0044】
基板テーブルWTは、投影システムPSに対して基板サポートWTおよび基板Wを正確に位置決め可能なものでもよい。例えば、基板サポートWTはリニアモータポジショナ等のポジショナに接続されてもよい。
【0045】
二つの位置モニタリングシステムPMSが、投影システムPSに対する基板サポートWTおよび基板Wの位置を監視するために設けられてもよい。図示の例では、位置モニタリングシステムPMSは干渉システムによって構成される。しかし、他の実施形態では、位置モニタリングシステムPMSは、例えば、センサ、スケールを備えるリニアエンコーダでもよい。多くの位置モニタリングシステムPMSが本技術分野において知られている。位置モニタリングシステム18の構成要素は、概して投影システムPSより下方の領域に関係付けられる。構成要素18は、投影システムPSの下方に配置されてもよいし、例えば、投影システムPSの底部に固定されてもよい。構成要素18は、例えば、干渉システムにおけるミラーまたはリニアエンコーダにおけるスケールのような、位置モニタリングシステムPMSの要素でもよい。構成要素はセンサでもよい。部分18の一つの目的は、投影システムPSに関する参照面を提供し、投影システムに対する基板テーブルWTの位置の決定を支援することである。図示の例では、ミラー18を備える干渉システムPMSについて本発明が記述される。しかし、これは本発明を限定するものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、ミラー18は位置モニタリングシステムPMSの異なる構成要素によって置き換えられてもよい。
【0046】
図示の例では、各位置モニタリングシステムPMSは反射面18を備える。以下、反射面18をミラーまたは位置決めミラー18ともいう。ミラー18は、投影システムPSの下方に設けられる。ミラー18は、レーザビームL等のコヒーレント光源から受け取った光を反射することで、投影システムPSに対する基板テーブルWTおよび基板Wの変位を決定するために用いられてもよい。
【0047】
ミラー18は投影システムPSに関係付けられてもよい。ミラー18は投影システムPSに固定されてもよい。また、ミラー18は基板テーブルWTに関係付けられてもよい。ミラー18は基板テーブルWTに固定されてもよい。ミラー18は、追加的なシステム要素を介して、投影システムPSまたは基板テーブルWTに関係付けられてもよい。例えば、エアマウント等によってミラー18と投影システムPSおよび/または基板テーブルWTが取り付けられるフレームを設けてもよい。
【0048】
図示の例では、ミラー18は投影システムPSに関係付けられる。動作時には、レーザビームLがレーザLAによって生成される。レーザビームLはビームスプリッタ配列に向けられる。ビームスプリッタ配列は、レーザビームLを第1部分および第2部分に分割するビームスプリッタBSを備える。ビームスプリッタ配列は、レーザビームLの第1部分を検出器DEに向ける少なくとも一つのミラー17を備える。レーザビームLの第2部分は、xy平面に対して45度の角度で基板テーブルWTに固定された45度ミラーM1に向けられる。45度ミラーM1の45度という角度は図示の装置に好適だが、その他の幾何学的配置を選択してもよく、例えば、30度やその他の角度のミラーを使用してもよい。45度ミラーM1はレーザビームLの第2部分をミラー18に向ける。ミラー18は当該第2部分を45度ミラーM1に向けて反射し、続いて当該45度ミラーM1は当該第2部分を光検出器に向ける。光検出器は、投影システムPSに対する基板テーブルWTの変位を決定するために、干渉法を用いてレーザビームLの第1および第2部分の間の位相シフトを決定してもよい。
【0049】
図示の例では、それぞれが一つの位置決めミラー18を備える二つの位置モニタリングシステムPMSが示される。しかし、異なる数の位置モニタリングシステムが設けられてもよい。例えば、一つの位置モニタリングシステムPMSまたは四つの位置モニタリングシステムPMSが設けられてもよい。図示の例は、基板Wのz方向の変位を決定するために好適な配置を示す。基板Wのx方向およびy方向の変位を決定するために、追加的な位置モニタリングシステムおよびミラーが設けられてもよい。投影システムPS内を、大気圧より十分に低い圧力の少量のガス(例えば水素)のみが存在する相対真空としてもよい。基板Wを囲む領域は周囲圧力下にある。基板Wを囲む領域は、基板テーブルWTおよび投影システムPSの端部の間の領域のうち基板テーブルWT側と概括的に定義しうる。この領域はチャンバとしても知られている。
【0050】
リソグラフィ装置を用いた製造プロセスでは、フォトレジストとしても知られる放射感応性材料の層によって少なくとも部分的に覆われた基板W上にパターンが転写される。基板Wをパターン付与された放射ビームB’に露光することでパターンが転写される際に入射する放射がフォトレジストを化学的に改質する結果、後続の処理技術によってパターンに応じて画定されるフォトレジストの一または複数の部分を除去できる。フォトレジストの露光は、炭化水素等の揮発性有機化合物等の成分の放出を引き起こしうる。フォトレジストの露光による成分の放出は脱ガスとしても知られている。脱ガスによって放出された成分は脱ガス成分とも呼ばれる。脱ガス成分は、フォトレジストの露光によらずに放出されることもある。つまり、脱ガスは自発的にも起こりうる。
【0051】
脱ガス成分は例えば気体である。また、脱ガス成分は固体でも液体でもよく、これらは気体中に分散していてもよい。脱ガス成分は、ガス流経路を介してリソグラフィ装置内を流通してもよい。脱ガス成分は汚染物質としても知られている。
【0052】
脱ガス成分はリソグラフィ装置内の他の要素に付着して汚染を引き起こしうる。特に、開口16の下方の基板Wの領域(すなわち基板Wの露光領域)に近いミラー18に汚染物質が付着する可能性が高い。
【0053】
ミラー18の汚染は、位置モニタリングシステムPMSの精度を大きく悪化させる可能性がある。正確な位置モニタリングは、リソグラフィ装置の最適な動作を実現する上で重要である。例えば、正確な位置モニタリングは、露光位置の正確性を向上して露光およびオーバーレイの解像度を高める上で極めて重要である。ミラー18の汚染量が増加すると、リソグラフィ装置の性能が悪化しうる。ミラー18上に汚染物質が継続的に堆積する結果、リソグラフィ装置の性能は時間の経過と共に悪化しうる。
【0054】
ミラー18上の汚染は、位置モニタリングシステムPMSの寿命を大幅に縮める可能性もある。ミラー18に多くの汚染物質が付着するにつれて、位置モニタリングシステムPMSひいてはリソグラフィ装置の性能が低下し、ユーザの性能要求を下回る可能性がある。ミラー18が大量の汚染物質によって覆われてしまった場合、当該ミラーの交換やクリーニングが必要になる。クリーニングが人によって実施される場合、リソグラフィ装置に対する侵襲的な作業が必要になるため、リソグラフィプロセスにおけるダウンタイムが発生する。製造時間の損失を意味するリソグラフィプロセスにおけるダウンタイムは、リソグラフィプロセスの出力または生産性の低下に直結する。クリーニングは自動化することもでき、例えば、水素ラジカル生成等の化学的方法やアクティブヒーティングによって実行できる。しかし、リソグラフィ装置の該当部分における利用可能なスペースが非常に限られているため、これらの自動化されたクリーニング方法は実施が困難である。加えて、これらの自動化されたクリーニング方法は、投入した熱によって基板Wまたはリソグラフィ装置にダメージを与える可能性もある。ミラー18は交換可能であるが、交換費用がかかるだけでなく、交換作業中にリソグラフィプロセスのダウンタイムが発生してしまう。そこで、リソグラフィ装置内の光学要素に対する汚染の可能性を低くすることが極めて重要になる。
【0055】
本発明は、開口16とミラー18の間にバッフル19を設けることで、ミラー18の汚染を低減する。バッフル19は、基板Wの露光領域E(すなわち開口16の下方の基板Wの領域)とミラー18の間の気体の流れを逸らすように設けられる。バッフル19は露光領域Eとミラー18の間の直接の見通し線をブロックしてもよい。結果として、露光領域Eからミラー18への多くのガス流経路がバッフル19によってブロックされてガス流が逸らされる。ガス流が汚染物質を含む場合、ガス流を逸らすことで結果的に汚染物質を逸らすことができる。このように、バッフル19を利用することで、ミラー18の汚染の可能性を低くできる。
【0056】
本明細書では基板Wからミラー18へのガスおよび/または汚染物質の流れについて説明するが、これは基板Wの露光領域Eからのガスおよび/または汚染物質の流れとも解釈できる。汚染物質は一般的に、開口16を通過して基板Wの露光領域E上に入射する放射B’に応じて放出される。
【0057】
バッフル19および周辺領域のサイズ、形状、位置の最適化は、ミラー18の汚染の可能性を低くする上での効率性を向上させうる。以下、いくつかの配置例について詳細に説明する。
【0058】
いくつかの実施例では、基板Wから投影システムPSへのガスの流れを低減するために、ダイナミックガスロック(DGL)が設けられる。DGLは基板テーブルにガスを向けてもよい。投影システムPSから基板テーブルWTに向かうガスの流れは、基板Wから投影システム内に流入する汚染物質に対する障壁を形成する。DGLは、放射は実質的に透過できる一方で、投影システムPS内へのガスの流れをブロックする膜を含んでもよい。この場合、DGLからのガスの流れは、膜上への汚染物質の堆積を防止または低減する。しかし、DGLからのガス流は追加的なガス流経路を形成しうるため、基板Wからミラー18上へ汚染物質が移動する可能性が高くなる恐れもある。このように、DGLを利用する装置では、基板Wからミラー18へのガスの流れを逸らし、リソグラフィ装置の汚染の影響を低減するために、バッフル19が特に有用である。
【0059】
開口16とミラー18の間にバッフル19を備えるリソグラフィ装置のいくつかの実施例を
図2から
図5を参照して説明する。
【0060】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の実施形態に係る投影システムPSおよび基板テーブルWTの一部を示す。投影システムPSは、放射が当該投影システムPSから出る開口16を備える。開口16は模式的に矩形として示されるが、これは例示で本発明を限定するものではなく、他の形状の開口を用いてもよい。例えば、開口は曲線部を含んでもよい。投影システムPSは、二つの位置モニタリングシステムに関係付けられた二つのミラー18を更に備える。位置モニタリングシステムの他の構成要素の図示は簡略化のために省略した。
【0061】
基板Wは、投影システムPSの下方にある基板テーブルWT上に載置される。基板Wは、開口16の下方の基板Wの領域として定義される露光領域Eを有する。つまり、露光領域Eはリソグラフィプロセスの稼働中に放射を受け取る基板Wの領域である。脱ガス成分21は、例えば基板W上のレジストの露光後に基板Wの表面から放出されたものとして示される。
【0062】
矢印はリソグラフィ装置中のガス流経路を示す。バッフル19が設けられない場合、ガス流は露光領域Eの周囲において等方的になる。結果として、ガス中で運ばれる汚染要素は全ての方向に移動し、特にミラー18に向かって移動する。x方向のガス流が妨げられないため、脱ガス成分21の基板Wからミラー18に向かう移動が促進されうる。実際、ガス流経路が逸らされない限り、汚染物質は開口16の周囲の全ての方向において堆積されてしまう。例えば、汚染物質は開口16の周囲にリング状に堆積されてしまい、ミラー18の部分も覆ってしまう。
【0063】
本実施形態ではバッフル19が開口16と各ミラー18の間に配置される(すなわち二つのバッフル19が設けられる)。バッフル19はリソグラフィ装置内のガスの流れを逸らすまたは制限するように配置される。特に、バッフル19は露光領域Eからミラー18に向かうガスの流れを逸らすように配置される。図示されるように、x方向のガス流はバッフル19によって妨げられる。このように、ガスによって運ばれる汚染物質がミラー18に到達して付着する可能性が低くなる。従って、バッフル19によれば、汚染物質粒子21がミラー18上に来る事象の発生可能性を低くできる。
【0064】
バッフル19は、当該バッフルの一部がゲッタとして機能するように最適化される。ゲッタは本技術分野において知られており、接触してくる分子を優先的に捕捉する。ゲッタは特に低圧環境で使用され、望ましくない化合物(すなわち汚染物質)を捕捉する。この例における捕捉は、吸収、吸着、化学結合、汚染物質をゲッタに付着させる他の任意のプロセスを含んでもよい。ゲッタをバッフル19と併せて使用することで、汚染物質がミラー18に到達する可能性を更に低くできる。多くのゲッタが本技術分野において知られており、例えば、ゲッタはアルミニウム、バリウム、マグネシウム、チタン、レアアース元素等の反応性素材を含む。ゲッタはバッフル19の一部でもよいし、バッフル19全体がゲッタであってもよい。ゲッタはバッフル19上に表面コーティングされてもよい。
【0065】
本実施形態では二つのバッフル19が設けられるが、他の実施形態では異なる数のバッフルが設けられてもよい。例えば、一つのミラー18を有する一つの位置モニタリングシステムPMSを備えるリソグラフィ装置では、バッフル19は一つだけあればよい。ミラー18と同数のバッフル19を設けるのが好ましい。
【0066】
バッフル19は、基板テーブルWT側のバッフル19の端から投影システムPS側のバッフル19の端までの距離と定義されるバッフル高さHを有する。バッフル19が投影システムPSに直接的に取り付けられている場合、バッフル高さHは基板テーブルWT側のバッフル19の端から投影システムPSまでの距離に等しい。図示の例では、バッフル高さHはバッフル19のz方向の寸法である。
【0067】
バッフル19は、バッフル19のy方向の寸法と定義されるバッフル幅Wbを有する。バッフル19は、バッフル19のx方向の寸法と定義されるバッフル厚みTを有する。
【0068】
バッフル19は、露光領域Eとミラー18の間の直接の見通し線をブロックしてもよい。バッフル19は、ミラー18における開口16側の縁に沿って延在してもよい。ミラー18はミラー幅Wmを有する。好ましくは、バッフル19はミラー幅Wm以上のバッフル幅Wbを有する。バッフル19はミラー18の縁より長く延在してもよい。ミラー幅Wmより大きいバッフル幅Wbによって、バッフル19は露光領域Eとミラー18の間のより多くの見通し線をブロックできる。
【0069】
バッフル19によって逸らされたガスは、バッフル19の縁の周囲を流れる。ミラー幅Wmより大きいバッフル幅Wbは、バッフル19の周囲のガス流量を低減しうる。ミラー幅Wmより大きいバッフル幅Wbは、バッフル19の縁の周囲を流れるガスがミラー18上に飛散するのを防止しうる。
【0070】
バッフル19は、投影システムPSと基板Wを支持する基板テーブルWTの間に配置される。このように、バッフル19が定在する空間が定義される。この空間はチャンバと言い換えてもよい。チャンバは、基板テーブルWTと投影システムPSの基板テーブルWT側の端の間のz方向の距離と定義されるチャンバ高さC’を有する。
【0071】
リソグラフィプロセスに関する運動や公差のため、チャンバ高さC’は稼働中に変動しうる。例えば、リソグラフィ露光中に放射の焦点を変えるために基板テーブルWTがz方向に駆動されるとチャンバ高さC’が変わる。このように、リソグラフィ装置の通常使用中にチャンバ高さC’は一定範囲内の値を取りうる。チャンバ高さC’およびクリアランスCを考慮する際、通常動作中は基板Wが基板テーブルWT上に支持されていることに注意する必要がある。結果として、基板Wとバッフル19の間の距離はチャンバ高さC’より小さくなる。クリアランスCは、基板Wがある状態でのリソグラフィ装置の通常動作中に、バッフル19が基板Wに接触しない程度に十分に大きい。通常動作はリソグラフィ露光やスキャン等の計画されたイベントを含む。通常動作は地震等の制御不能なイベントを含んでもよい。
【0072】
地震はリソグラフィ装置の使用中に発生しうる。これによって基板テーブルWが、リソグラフィ装置の通常使用中より更に、投影システムPSに向かって移動する可能性がある。このように、基板テーブルWTの運動によってバッフル19が基板Wに衝突するリスクがある。同様のことはリソグラフィ装置の故障時にも発生しうる。バッフル19と基板Wの間の衝撃は、バッフル19および/または基板Wを損傷しうる。基板へのダメージは、品質出力の低下に繋がり、および/または、リソグラフィプロセスのやり直し等の時間ペナルティに繋がる。基板Wが破損した場合は、粉々になった基板Wが追加的な汚染物質としてリソグラフィ装置内に放出されるため、クリーニングが必要になってしまう。クリアランスCは上記のような衝突の可能性が低くなるように設定される。しかし、衝突の可能性を完全に取り除くことはできない。
【0073】
バッフル19がガス流を逸らす際の効果を高めるために、より大きなバッフル高さHを有するバッフル19を設けるのが好ましい。バッフル高さHを大きくすれば、露光領域Eとミラー18の間のより多くの直接の見通し線をブロックできる。バッフル高さHが小さ過ぎる場合、ガスは妨げられることなく露光領域Eからミラー18へ飛散できる。バッフル19は、露光領域Eとミラー18の間のいくつかの直接の見通し線をブロックする。好ましくは、露光領域とミラーの部分の間の全ての見通し線をブロックするのに十分な大きさのバッフル高さHのバッフル19が設けられる。
【0074】
一方で、大きなバッフル高さHは小さなクリアランスCを意味する。クリアランスCが小さ過ぎる場合、衝突のリスクが高くなる。クリアランスCは例えば3mmより大きい。3mmより大きいクリアランスCは、一般的な基板とバッフル19の間の衝突のリスクを低減する上で好ましい。3mmより大きいクリアランスCは、一般的な基板の厚みを用いて計算されたものである。一般的な基板は約775ミクロンの厚みを有する。基板Wの厚みは、例えば不均一な厚みのために、基板面に亘って変動しうる。クリアランスCは、基板Wの厚みを考慮して設定される。厚い基板Wに対してはクリアランスCを大きくするのが好ましい。地震のリスクが低い場所等の他の場合では、3mmより小さいクリアランスCでも十分な場合もある。
【0075】
異なるチャンバ高さH’や異なるフォーカス条件等を有する異なるリソグラフィ装置では、異なるバッフル高さHおよびバッフルクリアランスCとするのが好ましい。このように、バッフル高さHおよびクリアランスCはユーザに合わせて選択される。バッフル高さHは、キャビティ高さC’との関係で考慮されてもよい。例えば、バッフル高さHのキャビティ高さC’に対するバッフル比がH/C’と計算される。露光領域Eからミラー18へのガス流を逸らす上では、20%を超えるバッフル比が好ましい。
【0076】
バッフル高さHは、見通し線をブロックする能力、すなわち、見通し線に沿うガス流を逸らす能力に関して考慮されてもよい。例えば、バッフル高さHは、露光領域Eとミラー18の部分の間の全ての直接の見通し線をブロックするように設定される。この部分は、バッフル19がない場合には大量の汚染物質を受けることになるミラー18の領域である。この領域のサイズはリソグラフィ装置および/またはプロセスによって異なる。例示される実施形態におけるバッフル高さHは、露光領域Eとミラー18における開口に近い側からの最初の5cmの間の見通し線をブロックするように設定される。他のリソグラフィプロセスでは、部材におけるより大きな範囲(例えば10cm)またはより小さな範囲(例えば2cm)への見通し線をブロックするようにしてもよい。
【0077】
衝突の影響を低減するために、バッフル19またはバッフル19の一部は、柔軟素材によって形成される。柔軟素材は柔軟性を有し、第2の物体と接触すると曲がる。このため、バッフル19が基板Wに衝突しても、基板Wおよび/またはバッフル19へのダメージが最小化される。柔軟素材は例えばプラスチック素材やゴムである。以上に加えてまたは代えて、バッフル19の一部は、複数の細い剛毛部材や一または複数のプラスチックチューブ等の中空構造等の柔軟構造を備えてもよい。プラスチックチューブを用いる場合、当該チューブは鉛直方向、すなわち投影システムPSから基板Wに向かって延びる方向に設けられる。柔軟構造は、第2の物体と接触すると曲がるという柔軟性を示すように設計された構造と解釈しうる。柔軟素材および/または構造が設けられる場合であっても、バッフル19はガスの流れを逸らすための十分な硬さを有する。つまり、バッフル19は基板Wと接触すると曲がるが、リソグラフィ装置内のガス流が当たってもほとんど変形しない。
【0078】
図2Aおよび
図2Bに示される例では、バッフル19は直方体状である。この形状によってガス流を逸らす障壁が形成される。しかし、バッフル19の形状はチャンバ内のガス流を制御するために最適化されうる。例えば、バッフルに曲線状の縁を設けることで乱流を低減しうる。バッフル形状のその他のいくつかの例については、
図3および
図4を参照して後述する。
【0079】
図3Aおよび
図3Bは、水平部19aおよび鉛直部19bを有するバッフル19を示す。このバッフルはz方向に下向きに延びる前に、x方向に有意な長さに亘って延びる。この例では、バッフル形状は略L字状である。ここで、曲部19cは水平部19aおよび鉛直部19bを相互に連結する。この形状は製造目的に好適である。
【0080】
この例では、投影システムPSがダイナミックガスロック(DGL)20を更に備える。前述したように、DGL20はガスを基板テーブルWTに向ける(
図3Aにおけるガス流の矢印によって示される)。DGL20には、投影システムPSの他の部分または外部のソース(不図示)から繋がる供給ラインを通じてガスが供給される。DGL20は、ガスが投影システムPSに向かって上方に移動する可能性を低くし、基板Wから投影システムPSへ移動する汚染物質21に対する障壁を形成するように形成される。DGL20を利用する装置では、バッフル19の使用による効果が特に高い。これは、追加的なガス流経路が形成され、バッフル19が汚染物質を運ぶガスの流れを逸らし、リソグラフィ装置の汚染の影響を低減するためである。DGL20と組み合わせてバッフル19を使用する場合、バッフル19またはバッフル19の部分19a、19b、19cはDGL20と一体的に形成されてもよい。
【0081】
他のバッフル形状を
図4Aおよび
図4Bに示す。この実施形態では、下方から見たバッフル19が曲がっている。バッフル19はミラー18の近接縁18a(ミラー18における開口16に最も近い縁)に沿って延在する。バッフル19は湾曲しているため、ミラー18の隣接する側縁18b、18cにも部分的に沿って延在する。好ましくは、この形状はミラー18における開口16側の端を部分的に取り囲む。ミラー18の端を部分的に取り囲むことで、基板Wとミラー18の間のより多くの直接の見通し線をブロックできる。このため、汚染物質がミラー18に衝突する可能性が更に低くなる。ここではC字状のバッフル19が例示されるが、ミラーの近接端に隣接するミラー18の側縁18b、18cの周囲に延在するバッフル19のその他の形状によっても同様の効果が得られる。
【0082】
また、バッフル19は下方から見た時の形状が「v字状」でもよい。つまり、一つのバッフル19は、それぞれの一端が相互に連結される第1および第2直線部を備えてもよく、連結部では第1および第2部分が山形またはv字状を形成するように所定の角度をなして連結される。この角度は、狭いまたは広いv字状を形成するために適宜変えてもよい。v字状バッフル19は、ミラー18からのガス流を逸らす上で好適である。v字状バッフル19は、ミラー18の隣接する側縁18b、18cの周囲に延在し、ミラー18における開口16側の端を部分的に取り囲んでもよい。
【0083】
図4Aおよび
図4Bにおける投影システムPSは、DGL20も備える。いくつかの例では、バッフル19と組み合わせたDGL20の使用が有利な効果をもたらす。特に、DGL20からのガスの流れがバッフル19に対して更に最適化され、基板Wからミラー18へのガスの流れを更に効果的に逸らすことができる。加えて、DGL部材内にガス供給ラインが既設されているため、新たなガス供給経路を容易に形成できる。ガス流を最適化するいくつかの実装例について、
図5A~Cを参照して以下で説明する。
【0084】
図5A~Cにおける投影システムPSは、二つのバッフル19と二つのガス供給ライン22を備える。ガス供給ライン22は、基板Wおよび/または基板テーブルWTに向けてガスを届けるために設けられる。このガスは基板Wとミラー18の間にガスカーテンを形成し、基板Wからミラー18へ汚染物質を運ぶガスの流れを低減する。これは、ローカルパージ、パージ流、パージガス流とも呼ばれる。ローカルパージは基板Wからミラー18へのガス流を逸らす効果がある。ローカルパージは、クリーンな(すなわち汚染物質を含まない)ガスがミラー18上を流動する状態を作り出し、汚染物質がミラー18に付着する可能性を更に低くする。パージガスは、ミラー18の周辺における汚染物質を運ぶガスに取って代わる。
【0085】
図示の例では、ガスはDGL20に関係付けられるガス供給ライン22によって供給される。あるいは、ガス供給ライン22は投影システムPSに関係付けられてもよい。例えば、投影システムPSの下側に取り付けられるデリバリチューブを通じてガスが供給される。ガス供給ライン22を用いる場合、バッフル19および/またはミラー18と同数の供給ライン22が設けられる。例えば、バッフル19を一つだけ使用する場合は供給ライン22も一つでよい。あるいは、一つの供給ラインが複数のバッフルの周辺にガス流を供給するために用いられてもよい。あるいは、複数の供給ライン22があってもよい。複数の供給ライン22がある場合、複数の供給ラインが一つのバッフル19に関係付けられてもよいし、複数の供給ラインが複数のバッフルに関係付けられてもよい。ガスは例えば水素である。水素は公知のいくつかのリソグラフィプロセスで既に使用されているため、使用のハードルが低い。ガスは、例えばアルゴン等の不活性ガスのような非反応性ガスでもよい。アルゴンは水素より重い分子であるため、脱ガス成分をより効果的に抑制しうる。一方、アルゴンは水素より入手が困難および/または高価である。
【0086】
供給ライン22はガス放出端24を備える。供給ライン22内のガスは、ガス放出端24から投影システムPSの下方のチャンバ内に入る。供給ライン22のガス放出端24は、基板テーブルWTまたは基板W側のバッフル19の端の間にガス流が供給されるように設けられる。例えば、ガス供給ライン22はバッフル19の内側に配置される。当該供給ラインのガス放出端24はバッフル19の基板テーブルWT側の端に位置する。このように、ガス供給ライン22を介してバッフル19内にガスを注入することで、ガスがバッフル19の端から下方に基板テーブルWTに向かって流れる。バッフル19の端におけるガス流は、露光領域Eからミラー18へのガスの流れを低減する。
【0087】
以上に代えてまたは加えて、供給ライン22のガス放出端24が開口16とミラー18の間に配置されてもよい。特に、供給ライン22はバッフル19のミラー18側の面19aの近傍にガスを運ぶように設けられる。これは、供給ラインのガス放出端24をバッフル19およびミラー18の間に設けることによって実現される。ガス放出端24および供給ライン22は、バッフル19のミラー18側の面19aの近傍のガスを方向付けるように設けられてもよい。この例では、ガスは依然として下向きの方向、すなわち投影システムPSから基板Wに向かう方向に向けられるが、バッフル19の面19aに沿って下方に流れる。面19aの近傍にガスを供給することで、バッフル19とミラー18の間の領域におけるガス圧が上昇する。この領域で上昇したガス圧によって生じた圧力差は、露光領域Eからミラー18へのガスの流れを低減する。
【0088】
ガス供給ライン22はバッフル19と共に使用されてもよい。これによって、汚染物質がミラー18に衝突する可能性を低くするための効果的な方法が実現される。すなわち、バッフル19は露光領域Eとミラー18の間のガス流を逸らし、ガス供給ライン22は、汚染物質を含まないガスのパージガス流を供給すると共に、露光領域Eとミラーの間のガス流を更に低減する。他の例では、ガス供給ライン22がバッフル19なしで使用されてもよい。例えば、バッフルが設けられない場合、ガス供給ライン22のガス放出端24は、開口16とミラー18の間に配置されてもよい。供給ライン22のガス放出端24を開口16とミラー18の間に配置することで、露光領域Eからミラー18へのガスの流れを低減するガスカーテンが形成される。加えて、ガスパージ流を供給することで、ミラー18上に汚染物質を含まないガス流が供給されるため、バッフル19を使用しない場合でも、汚染物質がミラー18に衝突する可能性を十分に低くできる。しかし、リソグラフィ装置の汚染をより効果的に低減する上では、ガス供給ライン22をバッフル19と共に使用するのが好ましい。
【0089】
供給ライン22のガス放出端24の配置は、パージガスの流れを良好に制御するために選択される。ガス放出端24の二つの例が
図5Bおよび
図5Cに示される。これらの例におけるバッフル19の形状は
図2と同様であるが、他の形状やサイズのバッフル19がガス供給ライン22と共に使用されてもよい。
【0090】
図5Bに示される配置では、ガス放出端24の断面形状が長く延びている。長尺のガス放出端24はスロットと呼んでもよい。ここでの延在方向はy方向である。ガス放出端24の延在幅Wgはミラー幅Wm以上である。これによって、ミラー18のy方向の全長に沿ってガスカーテンが形成される。また、ミラー18のより多くの領域に汚染物質を含まないパージ流が供給されるため、汚染物質がミラー18に付着するリスクを更に低くできる。ガス放出端24の延在幅Wgはバッフル幅Wb以上である。これによって、バッフル19とミラー18の間の全ての点においてガス流を低減できる。
【0091】
図5Cには長尺のガス放出端とは異なる他の配置が示される。この例は、複数の孔を備えるガス放出端24を利用する。この例における複数の孔24は、y方向に延在する孔24の列を形成するように線状に配置される。このような孔の列は延在するスロットと比べて容易に製造可能である。
図5Bの例と同様に、孔の列24の幅はミラー幅Wm以上に延在するのが好ましい。これによって、ミラー18のy方向の全長に沿ってガスカーテンが形成される。また、ミラー18のより多くの領域に汚染物質を含まないパージ流が供給されるため、汚染物質がミラー18に付着するリスクを更に低くできる。孔の列24の幅はバッフル幅Wb以上に延在する。これによって、バッフル19とミラー18の間の全ての点においてガス流を低減できる。四つの孔が図示の例で示されるが、孔の数は任意である。この例では、孔の列24がミラー18の第1の側に沿って延在する。
【0092】
図5Bおよび
図5Cに示される配置では、ガス放出端24がミラー18の開口16側の縁18aに沿って延在する。ガス放出端24は、ミラー18における隣接する側縁18b、18cの一部に沿って更に延在するのが好ましい。例えば、
図3Aおよび
図3Bに示されるバッフル19と同様に、ガス放出端24を湾曲させてミラー18における開口16側の端の周囲に延在させる。ミラー18の端の周囲に延在するガス放出端24によって、基板Wから飛散する汚染物質からミラー18のより大きい部分を保護する効果的な障壁が形成される。ミラー18の端の周囲に延在するガス放出端24によって、ミラー18のより大きい部分に向かう汚染物質を含まないパージガス流が形成される。
【0093】
「投影システム」(PS)の用語は、各種のタイプの投影システムを包含するものと広義に解釈すべきであり、使用される露光放射にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック型、磁気型、電磁気型および/または静電型の光学システムまたはこれらの任意の組合せを含む。
【0094】
リソグラフィ装置の用途に関して集積回路の製造に具体的に言及したが、前述のリソグラフィ装置は他の用途に用いてもよい。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造にリソグラフィ装置は利用可能である。
【0095】
リソグラフィ装置の文脈において本発明の実施形態について具体的に言及したが、本発明の実施形態は他の装置に適用してもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、ウェーハ(または他の基板)やマスク(または他のパターニングデバイス)等のオブジェクトを測定または処理するその他の装置の部分を構成しうる。これらの装置は、一般的にリソグラフィツールと総称される。
【0096】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明は実施形態とは別の態様で実施されてもよい。以上の説明は例示であり、本発明を限定する趣旨ではない。従って、本発明の趣旨から逸脱することなく本発明に変更を加えうることは当業者にとって自明である。
【0097】
項目1:
投影システムにおける開口を通じて放射ビームを基板上に投影する投影システムと、
投影システムに対する基板の位置を決定する位置モニタリングシステムであって、当該位置モニタリングシステムの構成要素が投影システムの下方に設けられる位置モニタリングシステムと、
開口と前記構成要素の間に配置されるバッフルと、
を備えるリソグラフィ装置。
【0098】
項目2:
前記構成要素は、干渉計の反射面またはリニアエンコーダのスケールを含む、項目1に記載のリソグラフィ装置。
【0099】
項目3:
バッフルはバッフル幅を有し、
前記構成要素は、バッフル幅と平行に測定される構成要素幅を有し、
バッフル幅は構成要素幅以上である、
項目1または2に記載のリソグラフィ装置。
【0100】
項目4:
基板を支持する基板テーブルを更に備え、
バッフルは、投影システムと基板テーブルの間の方向に延びる実質的な鉛直部を備える、
項目1から3のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0101】
項目5:
バッフルの第1部分は、前記構成要素における開口側の第1縁に沿って延び、
バッフルの第2部分および第3部分は、前記構成要素の第2縁および第3縁の少なくとも一部に沿って延び、
第2縁および第3縁は第1縁に隣接する、
項目1から4のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0102】
項目6:
バッフルの一部はゲッタを構成する、項目1から5のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0103】
項目7:
バッフルの一部は柔軟素材によって形成される、項目1から6のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0104】
項目8:
投影システムはダイナミックガスロックを更に備え、
投影システムの開口は、ダイナミックガスロックにおける開口に対応する、
項目1から7のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0105】
項目9:
バッフルは投影システムと一体的に形成される、項目1から8のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0106】
項目10:
基板に向けてガスを届ける供給ラインを更に備える、項目1から9のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【0107】
項目11:
投影システムにおける開口を通じて放射ビームを基板の露光領域上に投影するステップと、
位置モニタリングシステムによって投影システムに対する基板の位置を決定するステップと、
を備え、
位置モニタリングシステムの構成要素が投影システムの下方に設けられ、
開口と前記構成要素の間に、露光領域と前記構成要素の間のガスの流れを逸らすバッフルが設けられる、
リソグラフィ装置の汚染を低減する方法。
【0108】
項目12:
前記構成要素は、干渉計の反射面またはリニアエンコーダのスケールを含む、項目11に記載の方法。
【0109】
項目13:
バッフルは、露光領域と前記構成要素の少なくとも一部の間の見通し線をブロックするように配置される、項目11または12に記載の方法。
【0110】
項目14:
バッフルは、投影システムと基板の間の方向のバッフルの寸法と定義されるバッフル高さを有し、
バッフル高さは、露光領域と前記構成要素における開口に近い側から少なくとも最初の5cmの間の全ての見通し線をブロックするように設定される、
項目11から13のいずれかに記載の方法。
【0111】
項目15:
ゲッタによって汚染物質粒子を捕捉するステップを更に備える、項目11から14のいずれかに記載の方法。
【0112】
項目16:
投影システムから基板に向けて追加的なガス流を供給するステップを更に備える、項目11から15のいずれかに記載の方法。
【0113】
項目17:
バッフルと位置モニタリングシステムの部分の間に上昇したガス圧を供給するステップを更に備える、項目16に記載の方法。
【0114】
項目18:
項目1から10のいずれかに記載の装置または項目11から17のいずれかに記載の方法を用いて製造されたデバイス。