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特許7667744硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それからなる剥離コーティング剤、および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それからなる剥離コーティング剤、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20250416BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20250416BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20250416BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20250416BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C09J7/40
C09D183/05
C09D183/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021567642
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048559
(87)【国際公開番号】W WO2021132515
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019233862
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修司
(72)【発明者】
【氏名】田中 英文
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114403(JP,A)
【文献】特開平05-171047(JP,A)
【文献】特開2009-085436(JP,A)
【文献】特表2015-532312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン
(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(D)ヒドロシリル化反応触媒
を含有してなり、
前記の成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が95/5~5/95の範囲にあり、かつ、
成分(A)および成分(B)が、炭素原子数4~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有し、前記アルケニル基中のビニル(CH =CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%であり、かつ、その分子鎖末端がトリアルキルシリル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が90/10~10/90の範囲にある、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
さらに、(E)有機溶媒を含有する、請求項1または請求項2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
さらに、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
さらに、(G)光重合開始剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が70/30~30/70の範囲にあり、
成分(A)および成分(B)中のアルケニル基の合計モル数に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5~5となる量である、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる剥離コーティング剤。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化層とシート状基材とを有するシート状物品。
【請求項9】
粘着剤層が少なくとも1つの剥離層と対向して配置された構造を備えた積層体であって、当該剥離層が、請求項に記載の剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、詳しくは粘着性物質に対してその接着性を低下させることなく、非常に優れた剥離性能を示す硬化皮膜を形成する剥離性硬化皮膜形成性の硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それからなる剥離コーティング剤、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着性物質に対して優れた剥離性能を示す硬化皮膜を形成する剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物としては、従来よりアルケニル基含有オルガノポリシロキサン,オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒からなり、さらに反応抑制剤を添加してなる付加反応型オルガノポリシロキサン組成物が広く使用されている。特許文献1~3では、その性能を向上させるために、これらの成分に、ジメチルシロキサンガムやジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体などのアルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンを加えてなる剥離性硬化皮膜形成用シリコーン組成物が提案されている。しかし、これらの組成物は粘着性物質の接着性が低下したり、シリコーンの移行により皮膜背面の印刷適性が低下したりするなどの欠点があり、用途によっては必ずしも満足できるものではなかった。
【0003】
これらの課題を解決するため、特許文献4において、分子鎖末端に水酸基,アルケニル基およびアルキル基からなる群から選択される官能基を有し、30重量%トルエン溶液の25℃における粘度が500センチストークス以上となる高分子量シロキサン2種類を混合することにより剥離抵抗を低減することが提案されているが、近年、剥離層に求められる剥離性能(特に、剥離抵抗を低減させる効果)はさらに高度化してきており、近年の剥離コーティング剤として要求水準に達しない場合がある。また、高分子量シロキサン2種類を混合しているため、組成物の粘度が高く、より取り扱い作業性(ハンドリング性)にすぐれた組成物が求められている。
【0004】
また、特許文献5では、末端にビニル基を有しシロキサン単位の重合度が3,000~20,000の範囲にある高分子量シロキサンと、25℃での粘度が0.1~500Pa・sであるシロキサンを含む剥離性組成物が提案されているが、基材への密着性についての向上が確認されているものの、粘着性物質に対する軽剥離特性の実現という課題の解決に対しては、未だ性能が不十分であった。
【0005】
さらに、特許文献6では、粘度が50~10,000mPa・sと100,000mPa・s以上のシロキサン2種類を含む剥離性組成物が提案されており、硬化皮膜の滑り性付与の目的は達せられているものの、上記同様に、粘着性物質に対する軽剥離特性の実現という課題の解決に対しては、未だその性能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭53-28943号公報
【文献】特開平2-145650号公報
【文献】特公平3-52498号公報
【文献】特開平9-125004号公報
【文献】特開2004-190202号公報
【文献】特開昭61-159480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、近年、市場で要求される高度な剥離性能の要求に合致した剥離性の硬化皮膜を形成することができ、かつ、粘着性物質の接着性低下の抑制を両立可能な剥離性硬化皮膜形成性の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的する。さらに、同組成物の用途、具体的には、それからなる剥離コーティング剤、および剥離性粘着テープ/シートのように、上記の組成物を用いる剥離層と粘着層を備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意検討の結果、本発明者らは、(A)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン、(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン、(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(D)ヒドロシリル化反応触媒を含有してなり、前記の成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が95/5~5/95の範囲にある、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることで、上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0009】
なお、本発明において、可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度であり、具体的には、25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値(単位:mm)である。
【0010】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が90/10~10/90の範囲にあることが好ましい。また、同組成物は、成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が70/30~30/70の範囲にあり、かつ、成分(A)および成分(B)中のアルケニル基の合計モル数に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.5~5となる量であることが特に好ましい。
【0011】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、成分(A)および成分(B)が、炭素原子数4~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%であり、かつ、その分子鎖末端がトリアルキルシリル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0012】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物において(E)有機溶剤は任意成分であり、組成物は有機溶剤を含んでいても、含まなくてもよい。特に、本発明の組成物は任意で、(E)有機溶剤を含む任意の形態、例えば、溶液及び懸濁液であることができ、溶液であることが特に好ましい。
【0013】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、さらに、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよく、(G)光重合開始剤を含有してもよい。
【0014】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、剥離コーティング剤として好適に使用できる。
【0015】
本発明の課題は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる硬化層とシート状基材とを有するシート状物品により解決される。特に、当該硬化層は、剥離性硬化皮膜であることが好ましい。
【0016】
本発明の課題は、また、粘着剤層が少なくとも1つの剥離層と対向して配置された構造を備えた積層体であって、当該剥離層が、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層である、積層体により解決される。
【発明の効果】
【0017】
当該硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材、例えば基材フィルム上にコーティングし、硬化させて得られる剥離シートにおいて、本組成物からなる剥離層は粘着性物質に対する優れた剥離性能を有し、かつ、当該粘着性物質の接着性の低下を抑制可能である。また、本発明に係る組成物からなる剥離コーティング剤を提供することができる。同様に、剥離性粘着テープ/シートのように、上記の組成物を用いる剥離層と粘着層を備える積層体を提供することができる。
【0018】
具体的には、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を剥離層に使用して得られる剥離シートは、その粘着物質に対する剥離性に優れている。具体的には、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化層の表面に粘着性物質を塗工して乾燥、硬化させた場合、塗工した粘着性物質から剥離シートを剥離する際の抵抗を低減することができる。
【0019】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化層を備える剥離性シート、本発明に係る粘着物質用剥離性シートは、プラスチックフィルムへの塗工性に優れている。具体的には、本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物である剥離剤組成物をプラスチックフィルム上に塗工して乾燥、硬化させた場合、プラスチックフィルム表面にハジキを生じることなく、均一に塗工可能であり、一様に均一外観を有する剥離性シートを得ることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化層を備える剥離性シートは、その粘着性物質の接着力を維持することに優れている。具体的には、本発明の本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化層の表面に粘着性物質を塗工して乾燥、硬化させ、塗工した粘着性物質から硬化層(剥離層)を剥離した後の粘着性物質の接着力が低下することなく、元の水準を維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(A)25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン、(B)25℃における粘度が1,000mPa・s以下であり、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサン、(C)一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(D)ヒドロシリル化反応触媒を含有してなり、前記の成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}が95/5~5/95の範囲にあり、任意で(E)有機溶剤および/または(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでもよく、特に好ましい態様においては、(G)光重合開始剤を含んでもよい。以下、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の各構成成分、本発明の組成物を用いて製造した剥離シートである粘着性物質剥離用剥離シートについて詳細に説明する。
【0022】
本明細書中に記載した25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度は、回転粘度計により、測定した値である。また、可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度であり、具体的には、25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値(単位:mm)である。
【0023】
[成分(A)]
本発明における成分(A)はいわゆる高重合度のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であり、その物性の範囲は、その重合度の増加等により、高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域に連続的に広がっている。すなわち、オルガノポリシロキサンの重合度の増加等により、25℃における粘度が15,000,000mPa・sを超えると、一般的にその粘度の測定が困難になり、さらに高粘度を呈する領域(液状)から、その物性を可塑度により特定する領域(ガム状)に移行する。
【0024】
すなわち、本発明の成分(A)は、25℃における粘度測定が可能であり、粘度が1,000,000mPa・s以上の液状を呈する重合度等を有するものから、さらに高重合度となる領域を含み、25℃における粘度測定が困難であり、可塑度により物性を特定すべき重合度等の領域に至るガム状のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物を含むものである。特に、前記の成分(A)が、25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物であることが好ましい。最も好適には、前記の成分(A)は、25℃における可塑度が0.5~3.0mmのガム状を呈するオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物である。
【0025】
成分(A)は、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサンであり、分子鎖末端にアルケニル基等の反応性官能基を有しないことを発明の特徴の一つとする。分子鎖末端にアルケニル基を有する場合、本発明の技術的効果である、高度な剥離特性と、粘着性物質に対する接着性の低下抑止という効果が両立できない場合がある。
【0026】
好適には、成分(A)は、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%であり、かつ、その分子鎖末端がトリアルキルシリル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0027】
より好適には、成分(A)は、炭素原子数2~12のアルケニル基としてヘキセニル基を分子の側鎖のみに有し、かつ、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。特に、成分(A)中のヘキセニル基以外の官能基が実質的にメチル基またはフェニル基のみであることが好ましい。
【0028】
成分(A)は、オルガノポリシロキサン、分岐鎖状オルガノポリシロキサン、および一部環状構造を含む直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンから選択することができるが、工業的な観点からは、下記化学式(1)で表わされる直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化1】
【0029】
式(1)中、Rは、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1~20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6~22のアリール基(例えば、フェニル基等)である。Rは、各々独立に、Rまたは水酸基から選ばれる基であり、Rであることが好ましい。Rは、炭素原子数2~12のアルケニル基である。mは0以上の数であり、nは1以上の数であり、m+nは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃において可塑度を有するガム状となる範囲の数である。なお、m、n、R、RおよびRは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサン分子中の炭素原子数2~12のアルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%となる数であることが好ましい。
【0030】
例えば、式(1)のRが炭素原子数2~12のアルケニル基であるとき、当該アルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量は下記式:

(Rのビニル部分の分子量:約27)×m/全体の分子量×100(質量%)

で表わされ、成分(A)は、上記式(1)において、炭素原子数2~12のアルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲、より好適には0.5~2.0質量%の範囲となる条件を満たすオルガノポリシロキサンである。
【0031】
成分(A)中のアルケニル基中のビニル部分の含有量が上記の下限未満では、硬化反応性が著しく低下することにより、粘着性物質へのシリコーンポリマーの移行量が増大し、粘着性物質の接着性が低下したり、粘着性物質からの剥離シートの剥離が困難となるおそれがある。一方、アルケニル基中のビニル部分の含有量が上記の上限を超えると、硬化層から粘着性物質を剥離することが困難となるおそれがある。また、成分(A)の粘度や可塑度が上記の範囲から外れた場合には、本組成物の意図する剥離抵抗の低減効果が得られなくなるおそれがある。
【0032】
さらに、成分(A)では、式(1)中のm+nは、上記式(1)で表わされるオルガノポリシロキサンが高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域の範囲の数であり、特に、25℃での粘度が1,000,000mPa・s以上の液状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数であることが好ましい。
【0033】
より具体的には、成分(A)として、下記化学式(2)で表される、炭素原子数2~12のアルケニル基としてヘキセニル基を分子の側鎖のみに有し、前記ヘキセニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲にあり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが特に好ましい。
【化2】

(式(2)中、m1は0以上の数でありn1は各々正の数であり、n1は式(2)で表される分子中のヘキセニル基(-(CHCH=CH)中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲、より好ましくは0.5~2.0質量%の範囲となる数である。また、m1+n1は、式(2)で表わされるオルガノポリシロキサンが高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域の範囲の数であり、特に、25℃での粘度が1,000,000mPa・s以上の液状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈するオルガノポリシロキサンとなる数であることが好ましい。
【0034】
成分(A)の25℃における粘度は、液状乃至ガム状(通常、粘度10,000,000mPa・s以上であり、可塑性を有する半固体状の高重合度シリコーンポリマー)である。先に説明した通り、本発明で好適な成分(A)である高重合度のオルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン混合物の物性の範囲は、その重合度の増加等により、高粘度液状を呈する領域から、可塑度を有するガム状を呈する領域に連続的に広がっている。すなわち、オルガノポリシロキサンの重合度が増加等し、25℃における粘度が15,000,000mPa・sを超えると、一般的にその粘度の測定が困難になり、さらに高粘度を呈する領域(液状)から、その物性を可塑度により特定する領域(ガム状)に移行する。
【0035】
成分(A)の25℃における粘度の上限はないが、取り扱いが困難にならないためには、25℃において粘度が1,000,000mPa・s以上の液状乃至25℃における可塑度が3.0mm以下のガム状を呈することが好ましい。
【0036】
成分(A)は2種類以上の異なる成分(A)のの混合物であってもよい。なお、25℃における粘度が1,000,000mPa・s未満の液状乃至25℃における可塑度が3.0mmを超えるガム状のオルガノポリシロキサンであっても、他のオルガノポリシロキサンとの混合物にすることで、好適に取り扱うことができる場合があり、そのような態様も本発明の範囲内である。
【0037】
成分(A)が2種類以上のオルガノポリシロキサンの混合物であり混合物全体としてガム状である場合は、その可塑度(JIS K 6249に規定される方法に準拠して可塑度計で測定した可塑度:25℃で4.2gの球状試料に1kgfの荷量を3分間かけたときの値)が0.5~10.0mmの範囲内であることが好ましく、特に0.5~3.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0038】
[成分(B)]
成分(B)は、25℃における粘度が1,000mPa・s以下の液状を呈し、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有する鎖状オルガノポリシロキサンである。成分(B)は粘度、すなわちシロキサン重合度が成分(A)と大きく異なるが、分子鎖末端にアルケニル基等の反応性官能基を有さない点では、成分(A)および成分(B)は共通した構造を有しており、分子鎖末端にアルケニル基を有する場合、本発明の技術的効果である、高度な剥離特性と、粘着性物質に対する接着性の低下抑止という効果が両立できない場合がある。
【0039】
好適には、成分(B)は、炭素原子数2~12のアルケニル基を分子の側鎖のみに有し、前記アルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%であり、かつ、その分子鎖末端がトリアルキルシリル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0040】
成分(B)は、直鎖状オルガノポリシロキサン、分岐鎖状オルガノポリシロキサン、および一部環状構造を含む直鎖状または分岐鎖状オルガノポリシロキサンから選択することができるが、工業的な観点からは、下記化学式(3)で表わされる直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化3】
【0041】
式(3)中、R11は、各々独立に、非置換またはハロゲン原子により置換された炭素原子数1~20のアルキル基(例えば、メチル基等)、炭素原子数6~22のアリール基(例えば、フェニル基等)である。R12は、各々独立に、R11または水酸基から選ばれる基であり、R11であることが好ましい。R13は、炭素原子数2~12のアルケニル基である。m’は0以上の数であり、n’は1以上の数であり、m’+n’は、上記式(3)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が1,000mPa・s以下となる範囲の数である。なお、m’、n’、R11、R12、およびR13は、上記式(3)で表わされるオルガノポリシロキサン分子中の炭素原子数2~12のアルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%となる数である。
【0042】
例えば、式(3)のR13が炭素原子数2~12のアルケニル基であるとき、当該アルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量は下記式:

(R13のビニル部分の分子量:約27)×m/全体の分子量×100(質量%)

で表わされ、成分(B)は、上記式(3)において、炭素原子数2~12のアルケニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲、より好適には0.5~2.0質量%の範囲となる条件を満たすオルガノポリシロキサンである。
【0043】
成分(B)中のアルケニル基中のビニル部分の含有量が上記の下限未満では、硬化反応性が著しく低下することにより、粘着性物質へのシリコーンポリマーの移行量が増大し、粘着性物質の接着性が低下したり、粘着性物質からの剥離シートの剥離が困難となるおそれがある。一方、アルケニル基中のビニル部分の含有量が上記の上限を超えると、硬化により得られる剥離層から粘着性物質を剥離することが困難となるおそれがある。
【0044】
成分(B)では、式(3)中のm’+n’は、上記式(3)で表わされるオルガノポリシロキサンが25℃において1,000mPa・s以下の液状を呈する範囲であり、5~500mPa・sの範囲となることが特に好ましい。成分(B)の粘度が1,000mPa・sを超えた場合には、成分(A)と併用した場合であっても、本組成物の意図する剥離抵抗の低減効果が得られなくなるおそれがある。
【0045】
より具体的には、成分(B)として、下記化学式(4)で表される、炭素原子数2~12のアルケニル基としてヘキセニル基を分子の側鎖のみに有し、前記ヘキセニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲にあり、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基により封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが特に好ましい。
【0046】
【化4】

(式(4)中、m1’は0以上の数でありn1’は正の数であり、n1’は式(4)で表される分子中のヘキセニル基(-(CHCH=CH)中のビニル(CH=CH-)部分の含有量が0.5~3.0質量%の範囲、より好ましくは0.5~2.0質量%の範囲となる数である。また、m1’+n1’は、式(4)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃での粘度が1,000mPa・s以下となる数であることが好ましい。
【0047】
成分(B)は2種類以上の異なる成分(B)の混合物であってもよい。なお、25℃における粘度が1,000mPa・sを超えるオルガノポリシロキサンであっても、他のオルガノポリシロキサンとの混合物にすることで、好適に取り扱うことができる場合があり、そのような態様も本発明の範囲内である。
【0048】
成分(B)が2種類以上のオルガノポリシロキサンの混合物である場合は、25℃における混合物の粘度が1,000mPa・s以下であり、5~500mPa・sの範囲となることが特に好ましい。
【0049】
[成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}]
本発明は、類似したシロキサン構造を有し、その粘度(シロキサン重合度)が大きく異なる成分(A)と成分(B)を、特定の質量比の範囲で併用することにより、優れた剥離特性と、粘着性物質に対する粘着力の低下を抑制するという技術的効果を両立させることが可能である。
【0050】
具体的には、成分(A)と成分(B)の質量比{(A)/(B)}は、95/5~5/95の範囲にあることが好ましく、90/10~10/90の範囲にあることがより好ましく、70/30~30/70の範囲にあることがさらに好ましい。質量比(A)/(B)が95/5より大きいと、剥離抵抗の低減が十分な水準に至らず、粘着性物質から剥離シートを剥離することが困難になるおそれがある。また、質量比(A)/(B)が5/95より小さいと、プラスチックフィルム等のシート状基材上へ均一に塗工することが困難となり、剥離シートの外観が不良となるおそれがある。
【0051】
[成分(C)]
成分(C)は、一分子中に2以上のケイ素結合水素原子(Si-H)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、上記成分(A)、および成分(B)の架橋剤である。成分(C)は、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましく、その水素原子の分子中における結合位置は特に限定されない。また、水素原子以外で、成分(C)が含有するケイ素原子に結合する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびオクチル基等のアルキル基が例示され、メチル基であることが好ましい。また、成分(C)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、および分岐状環状のいずれか又はそれらの1つ以上の組み合わせが例示される。なお、ケイ素結合水素原子の一分子中の数は全分子の平均値である。
【0052】
成分(C)の25℃における粘度は1~1,000mPa・sであり、好ましくは5~500mPa・sである。これは、25℃における成分(C)の粘度が1mPa・s未満であると、成分(C)がそれを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物中から揮発し易くなり、1,000mPa・sを超えると、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間が長くなるからである。
【0053】
このような成分(C)は、特に限定されないが、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、および環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が例示される。成分(C)は、下記一般式(5)で示される1種類のオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたは2種類以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であり、成分(A)および成分(B)に含まれるケイ素原子結合アルケニル基と付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより、硬化したオルガノポリシロキサンの層を形成することができる。
【化5】
【0054】
式(5)中、R21は非置換もしくは置換のアルキル基またはアリール基であり、好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のハロゲン化アルキル基、またはフェニル基である。R22はそれぞれ独立して、R12で表わされる基または水素原子(-H)であるが、q=0のときは、R22は水素原子(-H)である。p及びqは0以上の数であり、p+qは、上記式(5)で表わされるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が1~1,000mPa・sとなる範囲の数である。
【0055】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物における成分(C)の配合量は、成分(A)および成分(B)中のアルケニル基(炭素-炭素二重結合からなるビニル部分を含む)の合計モル数に対するSiH基のモル比が0.5~5.0となる量であり、好ましくは1.0~3.0となる量である。このモル比が前記の下限値よりも小さいと、得られる硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性が低下し、前記の上限を超えると、硬化により得られる剥離層の粘着性物質に対する剥離抵抗が大きくなり、実用的な剥離性が得られなくなるおそれがある。
【0056】
[成分(D)]
成分(D)はヒドロシリル化反応触媒であり、硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に存在するケイ素原子結合アルケニル基と、ケイ素原子結合水素原子との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒である。好ましいヒドロシリル化反応触媒は、白金系金属を含むヒドロシリル化反応触媒であり、具体的には、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とケトン類との錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末の白金系触媒が例示される。特に、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が好ましく使用できる。
【0057】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物への成分(D)の添加量は触媒量であればよく、通常、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の成分 (A)~(C)の合計量に対して、成分(D)が含有する白金系金属量が1~1,000ppmの範囲となる量が好ましく、5~500ppmの範囲となる量がさらに好ましい。
【0058】
[その他の成分(E)~(G)および組成物の全体粘度]
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は(E)有機溶剤を任意で含むことができる。特に、本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は成分(A)の含有量が多いので、取り扱い作業性および塗工性を良好にするために、公知の(E)有機溶剤に、成分(A)~(D)を含む組成物を分散ないし溶解させて使用することが好ましい。ただし、本発明の目的に反しない限り、任意の有機溶剤以外の低粘度の液状オルガノポリシロキサン(例えば、25℃において、0.5~10mPa・s程度の低粘度である鎖状または環状のオルガノポリシロキサン)に、前記の成分(A)~(D)を分散ないし溶解させて使用することも可能である。有機溶剤は、トルエンおよびキシレン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、およびイソパラフィンなどの脂肪族系炭化水素溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルおよび酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテルおよび1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、およびデカメチルシクロペンタシロキサンなどの重合度3~6の環状ポリシロキサン類、並びに、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、トリフルオロメチルベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン及びメチルペンタフルオロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を例示することができる。耐熱性が低いポリオレフィン等のシート状基材に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を薄く塗工する場合には、組成物の硬化性への影響が少ないことから、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤の使用が好ましい。
【0059】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の成分(A)~(D)および任意で成分(E)以外に、常温下でのゲル化および硬化を抑制して保存安定性を向上させるとともに、加熱時には硬化性にするために、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含有することが好ましい。ヒドロシリル化反応抑制剤としては、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、およびオキシム化合物が例示される。具体的な化合物としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、および1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)等のアルキンアルコール;3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、および3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンが例示できる。
【0060】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物への(F)ヒドロシリル化反応抑制剤の添加量は、通常、成分(A)100質量部当り成分(F)0.001~5質量部の範囲内であるが、成分(F)の種類、用いるヒドロシリル化反応触媒の特性と使用量、成分(A)および成分(B)中のC2~C12アルケニル基の含有量、成分(C)中のケイ素原子結合水素原子量、および硬化性組成物に対する所望の可使時間および作業環境に応じて適宜、成分(F)の好ましい使用量を容易に決めることができる。
【0061】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記の成分(A)~(D)、任意選択により、成分(E)、さらに成分(F)を含むものであり、室温または50~200℃の条件下において(D)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応を行わせることにより、優れた剥離特性を有する硬化皮膜を形成できる。
【0062】
さらに、得られる硬化皮膜の物理特性および剥離性が優れていることから、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、エネルギー線(化学作用線ともいう)、例えば、紫外線または電子線、特に紫外線照射により硬化させることが好ましい。この場合、紫外線硬化は、紫外線硬化のみ、あるいは紫外線硬化と加熱硬化とを併用して行うことができる。硬化性組成物の硬化時間は、用いる硬化条件に応じて適宜調節できる。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に良好な紫外線硬化性を付与するためには、(G)光重合開始剤を組成物にさらに配合することが好ましい。以下、成分(G)について説明する。
【0063】
(G)光重合開始剤は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に紫外線硬化性を与える成分であり、付加反応による熱硬化と紫外線硬化を併用することにより、耐熱性の低いプラスチックフィルム基材への熱によるダメージが低減され、本発明の硬化物のプラスチックフィルムへの密着性が向上するという利点がある。さらに、本発明の硬化組成物からなる硬化皮膜表面からシリコーン成分がシート上へ移行し、シートがシリコーン成分により汚染される(これをシリコーンの移行性という)ことを防ぎ、シリコーンの移行性をさらに低減することができるという利点がある。この(G)成分は、紫外線の照射によりラジカルを発生する化合物として公知のもの、例えば、有機過酸化物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、およびアゾ化合物などの中から適宜選択して用いることができる。具体的な化合物としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル〔4-(メチルチオ)フェニル〕2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、およびジエトキシアセトフェノンなどがあげられる。本発明の組成物を紫外線で硬化させる場合、成分(G)としては、ベンゾフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-メチルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。特に好ましい成分(G)としては、ジエトキシアセトフェノンおよび1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
【0064】
上記(G)光重合開始剤は、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。その配合量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲であり、好ましくは0.01~2.5質量部の範囲である。(G)成分の配合量が前述の範囲内であれば、本発明の組成物を硬化させて得られる剥離性硬化皮膜は、シリコーンの移行性が改善され、強度等の物理特性に優れたものとなる。
【0065】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(E)有機溶剤を含む溶液型の硬化性オルガノポリシロキサン組成物として用いるのに適している。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、シート状基材への組成物の良好なコーティング特性を得るために、25℃における組成物全体の粘度が100~100,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、組成物全体の粘度が100~50,000mPa・sであることがより好ましい。
【0066】
[その他の任意成分]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分に加えてそれ以外の任意成分をさらに添加することができる。その他の任意成分としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物からなる接着促進剤;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、およびチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系およびベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、およびアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤などから選択される1種類以上の界面活性剤;帯電防止剤、耐熱剤、染料、および顔料等の公知の添加剤が挙げられ、これらから選択される成分を1種または2種以上組み合わせて、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加することができる。
【0067】
[組成物の製造方法]
本発明の組成物は、前記成分(A)~(D)、任意で成分(E)、成分(F)、成分(G)およびその他の任意成分を用いる場合は、さらにそれらを均一に混合することにより製造することができる。各成分の添加順序は特に限定されるものではないが、混合後、得られた組成物を直ちに使用しない場合は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)を混合したものと、成分(D)とを別々に保存しておき、使用直前に両者を混合することが好ましい。また、成分(A)~(D)、任意で成分(E)成分等のその他の成分からなる組成物において、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤の種類および配合量を調整することにより、常温では架橋せず、加熱すると架橋して硬化するようにした組成物も好ましい。
【0068】
[組成物の使用:剥離コーティング剤および剥離性シート]
上記の本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は剥離コーティング剤として好適に使用することができ、同組成物をシート状基材上に均一に塗工し、成分(A)~(C)がヒドロシリル化反応して架橋するのに十分な条件下で加熱、エネルギー線(例えば、紫外線、電子線など)の照射、あるいはこれらの併用をすると、シート状基材表面に硬化したシリコーン被膜(すなわち硬化したオルガノポリシロキサン)被膜からなる剥離層を有する剥離性シートが得られる。本発明による剥離性シートは、その硬化したシリコーン被膜の上への粘着性物質の塗工性が良好であり、かつ、乾燥後の粘着性物質を基材から剥離しやすく、かつ、当該粘着性物質の粘着性および粘着力を低下させないという特徴を有する。すなわち、そのようにして得られる本発明の剥離シートは、粘着性物質用剥離性シートとして、好適に用いることができる。また、本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化層は柔軟性に優れるため、基材への追従性が良く、非平面状の対象物に貼りつける際にも気泡の巻き込みが少ないという利点を有する。このため、光学ディスプレイやガラス表面の保護フィルムのように、硬化層の剥離特性と保護すべき対象への硬化層の密着特性が共に必要とされる用途に極めて好適に使用することができる。
【0069】
本発明の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を塗工するためのシート状基材としては、特に制限はなく、従来公知の材料の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、ポリエチレンテフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリプロピレンおよびポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ならびにポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられる。このフィルムは単層であってもよいし、同種または異種のプラスチックからなる2層以上の多層から構成されていてもよい。本発明に用いるシート状基材としては、プラスチックフィルム、特にポリエステルフィルムが好ましく、なかでもポリエチレンテフタレートフィルムが好ましい。なかでも、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルムをシート状基材として用いることが好ましい。ポリエチレンテフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくい。したがって、埃等によって生じる、シート状基材への粘着性物質の塗工不良を有効に防止することができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行い、これをシート状基材として用いることも、シート状基材への粘着性物質の塗工不良等の発生の防止に有効である。
【0070】
また、シート状基材の表面に塗工して硬化させた本発明の硬化性オルガノポリシロキサンとシート状基材の表面との間の密着性を向上させるために、所望によりシート状基材の片面または両面に、酸化法または凸凹化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、および紫外線照射処理などが挙げられ、また、凸凹化法としては、例えば、サンドブラスト法、及び溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、シート状基材の種類に応じて適した方法を選択することができるが、シート状基材の表面処理によって得られる所望する効果が高いこと及び操作が簡便であることから、コロナ放電処理法が好ましい方法としてあげられる。
【0071】
シート状基材の厚さは、一般に、10~300μmであり、好ましくは15~200μmであり、特に好ましくは20~125μmである。
【0072】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物のシート状基材上への塗工方法は、公知の任意の方法を用いて行うことができるが、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、およびダイコート法などを用いることができる。
【0073】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート状基材の上に塗工して硬化させる場合、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さは特に限定されないが、0.01~3μmであることが好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。シート状基材上の硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さが0.01μm未満の場合、これを粘着性物質用剥離シートとして用いたときに、その層が剥離剤層として十分な機能を示さないおそれがある。一方、シート状基材の上の硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の厚さが3μmを超える場合、得られる剥離シートをロール状に巻き取ったときにブロッキングが発生するおそれがある。 さらに、硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層とは反対側のシート状基材の表面、あるいはシート状基材とオルガノポリシロキサン組成物の層との間には、上述した帯電防止層のほか、その他の層を任意選択で設けてもよい。
【0074】
[積層体]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘着性シート等に代表される、剥離性積層体の製造時に、剥離層の形成に用いる剥離層形成性のオルガノポリシロキサン組成物(=剥離コーティング剤)として利用することができる。本発明に係る積層体は、具体的には、粘着剤層が少なくとも1つの剥離層と対向して配置された構造を備えた積層体であって、当該剥離層が、上記の本発明に係る剥離コーティング剤を硬化させてなる硬化物からなる剥離層であることを特徴とする。ここで、剥離層は、シート状基材上に形成されていることが好ましく、本発明に係る組成物は、シート状基材とその上に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工して硬化させて得られる硬化層とを有する粘着性物質用剥離シートとして用いるのに適しており、またこの粘着性物質用剥離シートは、粘着性物質、当該粘着性物質用剥離シートを含む粘着性物質積層体を形成することに適している。
【0075】
この粘着性物質積層体は、本発明の粘着性物質用剥離シートの上、すなわち硬化したポリオルガノシロキサン組成物の面の側に粘着性物質を塗工し、その粘着性物質を乾燥/硬化させる工程を含む方法で作成することができる。より具体的には、任意の塗工方法、たとえば、スロットダイ塗工法やドクターブレード法を使用して、粘着性物質を本発明の粘着性物質用剥離シート上に形成された硬化したオルガノポリシロキサン組成物の層の表面に塗工し、さらに乾燥/硬化させることによって、粘着性物質積層体を形成させる。この後、粘着性物質層に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工した、または塗工していないシート状基材を貼り合わせることは任意である。本発明の粘着性物質用剥離シートは、このような粘着性物質積層体からの剥離性に優れており、粘着性物質に破断などの不具合を発生させることなく、低い剥離力で粘着性物質層から剥離させることができる。これに加えて、上記のとおり、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、粘着性物質からなる粘着剤層の粘着性および粘着力を低下させないという特徴を有する。
【0076】
また別の粘着性物質積層体の形態として、粘着性物質を本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗工していないシート状基材の上に、粘着性物質を乾燥/硬化させた後、本発明の粘着性物質用剥離シートを粘着性物質上に貼り合わせる工程を含む方法でも作成できる。この形態においても、本発明の粘着性物質用剥離シートは、このような粘着性物質積層体からの剥離性に優れており、粘着性物質に破断などの不具合を発生させることなく、低い剥離力で粘着性物質層から剥離させることができ、かつ、粘着剤層の粘着性および粘着力を低下させないという特徴を有する。
【0077】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上述したように粘着性物質用剥離シートとして用いるのに適しているが、用途はそれに限定されず、さまざまなフィルム及びシートの表面処理に用いることができる。特に、本発明の組成物からなる硬化層を有する剥離シートは、液晶パネル、プラズマディスプレイ、偏光板及び位相差板等の光学部品あるいはプリント配線板、IC、トランジスタ、コンデンサ等の電気・電子部品の表面を保護するための表面保護フィルムとしても用いることができ、その場合には、本発明の組成物に帯電防止剤を添加することが好ましい。
【0078】
帯電防止剤は、公知のイオン性または非イオン性の帯電防止剤を特に制限なく用いることができ主成分に親水性基を持つシリコーンオイルを添加する方法(特開昭52-103499号公報)、スルホン酸塩を添加する方法(特公平3-59096号公報)、含フッ素シリコーンオイルを添加する方法(特開平1-83085 号公報、同1-83086号公報、同1-121390号公報)、界面活性剤を含有したシリコーンオイルを添加する方法(特開平1-294099号公報)、導電粉を添加する方法(特開平2-69763号公報、同3-292180号公報、同4-86765号公報)等が例示できる。特に、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物との相溶性の見地から、リチウム塩またはポリエーテル変性ポリシロキサンである帯電防止剤の使用が好適である。これらのイオン性帯電防止剤またはポリエーテル変性ポリシロキサン等は、例えば、特開2009-30028号公報、特開2012-157978号公報、特開2011-178828号公報に開示のものが特に制限なく使用できる。また、帯電防止の見地から、前記の帯電防止剤の添加剤としての使用だけでなく、界面活性剤系、シリコーン系、有機ホウ素系、導電性高分子系、金属酸化物系、蒸着金属系などの帯電防止剤による処理を行ってもよい。
【実施例
【0079】
以下に本発明の実施例を比較例とともに示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、量を示す「部」は質量部を意味し、ビニル(CH=CH-)部分とは、ケイ素原子に結合したアルケニル基中のビニル(CH=CH-)基部分を表し、分子量全体に占める当該ビニル部分の含有量を質量%で表わし、当該アルケニル基がビニル基である場合、単に「ビニル基含有量」という。粘度および可塑度は25℃において測定した値である。可塑度の測定方法は上述したとおりであり、粘度の測定は、デジタル表示B型回転粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVDA2型)を使用して行った。
【0080】
[剥離シートの作成方法]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、メイヤーバーを用いて二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂製、厚さ38μm)表面に、溶剤を除いた固形分換算量で0.15g/m2となる量で塗工した。塗工後に、上記組成物が塗工された基材を、熱風循環式オーブン中で120℃において30秒間加熱処理することにより、ポリエステルフィルム基材表面にオルガノポリシロキサンの硬化層を形成させ、温度25℃、湿度60%の空気中で72時間保管して剥離シートとした。
【0081】
[塗工性評価]
上述の剥離シートを、目視にて塗工面の均一性を観察し、均一な外観のものを合格、不均一な外観のものを不合格とした。
【0082】
[粘着性物質剥離抵抗測定]
TESA社製粘着テープTESA7475テープを得られた剥離シートに貼り合わせ、20g/cmの荷重をかけて、温度25℃、湿度60%の空気中に24時間放置した。この後、引っ張り試験機[株式会社エー・アンド・ディー製テンシロン万能試験機]を用いて、粘着テープを角度180度、剥離速度0.3m/minの条件で引張り、剥離に要した力(mN/50mm)を測定した。この方法による剥離力が55mN/5cm以下であれば剥離特性良好、55mN/50mmを超えた場合は剥離特性不良と判断した。
【0083】
[残留接着率測定]
剥離シート上に、日東電工株式会社製粘着テープNo.31Bを貼り合わせ、20g/cmの荷重をかけて温度70℃で20時間放置した。次いで粘着テープをはがし、このはがした粘着テープをステンレス板に貼り付け、20g/cmの荷重をかけて温度25℃、湿度60%の空気中に30分放置した後、引っ張り試験機[株式会社エー・アンド・ディー製テンシロン万能試験機]を用いて、粘着テープを角度180度、剥離速度0.3m/minの条件で引張り、剥離に要した力(gf1)を測定した。また、ブランク試験として、テフロン(登録商標)シートに上記のテープを上記と同様に貼り合わせて、この粘着テープの剥離に要した力(gf2) を上記と同様に測定した。これらの値から、次式に従って残留接着率(%)を算出した。

残留接着率(%)=(gf1/gf2)×100

残留接着率は、95%以上を合格とし、95%未満を不合格とした。
【0084】
[実施例1]組成物1
(A)(a-1)分子鎖両末端がメチル基で封鎖され、側鎖にヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.15、ヘキセニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量0.80質量%)66.7部、(B)(b-1)分子鎖末端がメチル基で封鎖され、側鎖にヘキセニル基を有するジメチルシロキサン(粘度350mPa・s、ビニル基含有量1.20質量%)33.3部、(C)粘度25mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを全組成物中のSiH/Vi比が1.2となる量、(E)トルエン100.0部、および(F)3-メチル-1-ブチン-3-オール1.5部を均一に混合し溶剤含有硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物1-1)を得た。さらに、得られたオルガノポリシロキサン組成物を(E)トルエン/ヘキサン=50/50重量%混合液で希釈して固形分濃度を5.0質量%にし、(D)塩化白金酸・1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を白金金属量が(A)~(C)成分の合計量に対して200ppmとなる量で添加配合したものを使用し、上記の方法で剥離シートを得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0085】
[実施例2]組成物2
実施例1の(A)成分の使用量を50.0部、(B)成分の使用量を50.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物2を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0086】
[実施例3]組成物3
実施例1の(A)成分の使用量を33.3部、(B)成分の使用量を66.7部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物3を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0087】
[比較例1]比較組成物1
実施例1の(B)成分を使用せず、(A)成分の使用量を100.0部、(E)成分の使用量を333.3部、(F)成分の使用量を0.9部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較組成物1を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0088】
[比較例2]比較組成物2
実施例1の(A)成分を使用せず、(B)成分の使用量を100.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして組成物2を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0089】
[比較例3]比較組成物3
実施例1の組成物1の(A)成分として(a-2)分子鎖両末端がビニル基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.50、ビニル含有量0.75質量%)66.7部を使用した以外は、実施例1と同様にして比較組成物3を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0090】
[比較例4]比較組成物4
比較例3の比較組成物3の(A)成分の使用量を50.0部、(B)成分の使用量を50.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較組成物4を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0091】
[比較例5]比較組成物5
比較例3の比較組成物3の(A)成分の使用量を33.3部、(B)成分の使用量を66.7部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較組成物5を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0092】
[比較例6]比較組成物6
実施例1の組成物1の(B)成分として(b-2)分子鎖両末端がヘキセニル基で封鎖され、側鎖にヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン(粘度400mPa・s、ヘキセニル基中のビニル(CH=CH-)部分の含有量0.97質量%)33.3部を使用した以外は、実施例1と同様にして比較組成物6を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0093】
[比較例7]比較組成物7
比較例6の比較組成物6の(A)成分の使用量を50.0部、(B)成分の使用量を50.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較組成物7を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した。
【0094】
[比較例8]比較組成物8
比較例6の比較組成物6の(A)成分の使用量を33.3部、(B)成分の使用量を66.7部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較組成物8を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した
【0095】
[比較例9]比較組成物9
比較例1の比較組成物1の(A)成分として(a-2)分子鎖両末端がビニル基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.50、ビニル含有量0.75質量%)66.7部を使用した以外は、比較1と同様にして比較組成物9を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した
【0096】
[比較例10]比較組成物10
比較例1の比較組成物1の(A)成分として(a-3)分子鎖両末端がメチル基で封鎖され、側鎖にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(可塑度1.50、ビニル含有量0.85質量%)を使用した以外は、比較1と同様にして比較組成物9を得た。このようにして得られた剥離シートの外観の観察、および剥離力、残留接着率の評価を行い、これらを表1に示した
【0097】
表1に、成分(A)を化学式(1)、成分(B)を化学式(3)で表した場合の、成分(a-1)~(a-3)、成分(b-1)、(b-2)の末端および側鎖の官能基を併せてまとめたものを示す。
【化6】

【化7】
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示した結果から明らかなように、成分(A)、成分(B)が共に側鎖のみにアルケニル基を有する組み合わせを使用した組成物(実施例1~3)を硬化させて得られた剥離シートは、外観が優れるとともに、粘着性物質に対する剥離抵抗値が低く、かつ残留接着率も良好な結果であった。一方、比較実験は、本発明の成分(A)、(B)を併用しない場合や、側鎖以外にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを原料に使用したものであるが、比較組成物1、3~10(比較例1、および3~10)では、得られる剥離層の粘着性物質に対する剥離抵抗が高く、良好な剥離特性を実現できない結果であった。また、成分(B)のみを使用した比較組成物2(比較例2)では、組成物を基材フィルム上に均一に塗工することが困難であり、剥離シートの外観不良となったほか、実用的な塗工性を実現することができなかった。