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  • 特許-核酸オリゴマーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】核酸オリゴマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20250416BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C07H21/02
C12N15/10 Z ZNA
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022545096
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2021003351
(87)【国際公開番号】W WO2021153770
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020012789
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮川 卓也
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/022323(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027843(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/212236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
1およびG2は、各々、独立して、水酸基の保護基を示し、Baは、保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、
Rは、保護された水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、そして、
*のついた結合は、核酸の3’末端側への結合を示す。)
で示されるヌクレオチドを5’末端に有する核酸化合物の、ホスホロアミダイト法による製造方法であって、5’末端に式(II):
【化2】
(式中、
1、G2、Ba、Rおよび*は、前記定義のとおりである。)
で示される亜リン酸トリエステル結合を有する前駆体に、40℃以上に加熱処理したヨウ素、ピリジンおよび水を含む酸化溶液を反応させる工程を含む、製造方法。
【請求項2】
亜リン酸トリエステル結合を有する前駆体が、式(4):
【化3】
(式中、
1は、水酸基の保護基を表し、
2は、それぞれ独立して、同一又は相異なる水酸基の保護基を表し、
aは、それぞれ独立して、同一又は相異なり、保護基で保護されていてもよい核酸塩基を表し、
Rは、それぞれ独立して、同一又は相異なって、保護された水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、
Yは、それぞれ独立して、同一又は相異なって、酸素原子または硫黄原子を表し、
nは、1以上200までの何れかの整数を表し、
XがOZを表すとき、WはOV基を表し、Vは水酸基の保護基を表し、
XがR基を表すとき、WはOZで表される基を表し、
Zは、固相担体および連結基からなる構造を有する基である。
そして、nが2以上の整数のとき、式(4)で示される核酸化合物は、それぞれの5’末端と3’末端のヌクレオチドの間の少なくとも1つのヌクレオチドの代わりに、非ヌクレオチドリンカーが組み込まれていてもよい。)
で示される化合物であり、前記酸化溶液を反応させる工程により得られる核酸化合物が、式(5):
【化4】
(式中、
1、G2、Ba、R、n、W、X、およびYは、前記のとおりであり、そして、
式(4)において定義されたとおり、ヌクレオチドの代わりに、非ヌクレオチドリンカーが組み込まれていてもよい。)
で示される核酸化合物であって、
前記非ヌクレオチドリンカーが、アミノ酸骨格からなるリンカーであって、
前記アミノ酸骨格からなるリンカーが、下記式(A14-1)、(A14-2)および(14-3)から選ばれる構造を有するリンカーである、請求項1に記載の製造方法。
【化5】
【請求項3】
式(5)の核酸化合物をアミダイト法で任意に鎖長を伸長した式(5’):
【化6】
(式中、
2、Ba、R、XおよびWは、式(5)について定義されたとおりであり、
5は、水酸基の保護基、もしくは水素原子を表し、
mは、m≧nを満たす整数であり、
Yは、それぞれ独立して、同一又は相異なって、酸素または硫黄を表す。
ただし、少なくとも1つのYは、酸素原子である。)
で示される核酸化合物を得る工程、
式(5’)の化合物から式(6):
【化7】
(式中、
5、Rおよびmは、前記のとおりであり、
cは、それぞれ独立して、同一又は相異なる核酸塩基を表し、
4は、水素原子、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、またはヒドロキシアルキルアンモニウムイオンを表し、
Yは、それぞれ独立して、酸素または硫黄を表し、かつ、少なくとも1つが、酸素原子であり、そして、
1は、水酸基を表し、かつ、W1は、OV基を表し、ここでVは、水酸基の保護基を表すか、あるいは
1は、R基を表し、かつW1は、水酸基を表す。)
で示される化合物を切り出し、
さらに式(6)の化合物を脱保護して、式(7):
【化8】
(式中、
m、Y、G4およびBcは、前記定義のとおりであり、
R’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、
そして、
10およびW10は、それぞれ独立して、水酸基を表すか、あるいは、
10は、R’基を表し、かつ、W10は、水酸基を表す。)
で示される脱保護した核酸オリゴマーを製造する工程を含む、請求項2に記載の核酸オリゴマーの製造方法。
【請求項4】
酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.005~2Mである、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.005~0.2Mである、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.007~0.1Mである、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.008~0.07Mである、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
酸化溶液が、ヨウ素、ピリジンおよび水を混合して調製される、請求項1~の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
酸化溶液が、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含む酸化溶液である、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
酸化溶液が、アセトニトリル溶媒をさらに含む酸化溶液である、請求項またはに記載の製造方法。
【請求項11】
酸化溶液の溶媒が、ピリジン、水、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランを、1~90:1~50:0~90:0~90の体積比率で混合して得られる混合溶媒である、請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
酸化溶液の溶媒が、ピリジン、水、アセトニトリルを、1~90:1~50:0~90の体積比率で混合した混合溶媒である、請求項または10に記載の製造方法。
【請求項13】
酸化溶液が、その調製から核酸合成における酸化反応に使用するまでの保管熟成の温度が、40℃以上~60℃以下である、請求項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
核酸化合物が、リボヌクレオシド(RNA)を含む核酸化合物である、請求項1~13の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
核酸が、リボヌクレオシド(RNA)であり、その2’保護基が、式(12)に示す保護基である、請求項2~14の何れか1項に記載の製造方法。
式(12):
【化9】
(式中、
qは、1~5の整数を表し、
aおよびRbは各々、それぞれ同一又は相異なって、メチル基、エチル基または水素原子を表し、
*印のついた結合は、OQ基の酸素であり、そして、
W基は、電子求引基を表す。)
【請求項16】
aおよびRbが同時に水素原子であり、EWが、シアノ基である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
Rが保護された水酸基であるとき、その保護基が、2’-tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、2’-ビス(2-アセトキシ)メチル(ACE)基、2’-(トリイソプロピルシリロキシ)メチル(TOM)基、2’-(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、2’-(2-シアノエトキシ)メチル(CEM)基、及び2’-パラ-トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基からなる群より選ばれる保護基である、請求項1~14の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
核酸が40鎖長以上のリボヌクレオシド(RNA)である、請求項1~17の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
さらに請求項1に記載の酸化溶液を調製する工程を含む、請求項1~18の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
1が以下の基
【化10】
(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、同一又は相異なって水素又はアルコキシ基を表す。)
である、請求項1~19の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
固相担体が無機多孔質担体を含む、請求項2~20の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2020-012789号(2020年1月29日出願)に基づく優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
本発明は、核酸オリゴマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸オリゴマーであるDNAやRNAは、DNAプローブ、RNAプローブ、アンチセンス、リボザイム、siRNA、アプタマーなどとして利用可能であり、有用な素材である。
【0003】
核酸オリゴマーは、固相合成法により合成可能であり、固相合成法ではヌクレオシドのホスホロアミダイト(以下、「アミダイト」と称する)が原料として用いられる。固相担体上で、カップリング、酸化および脱保護の工程を経て核酸を伸長して合成された核酸オリゴマーは、固相担体から切り出し、次いで、保護基を除いて、目的とする核酸オリゴマーが製造されている。このようにして合成された核酸オリゴマーの純度は、必ずしも満足いくものではなく、合成は効率的ではなかった(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Tetrahedron 69 (2013) 3615-3637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、核酸オリゴマーの効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、核酸オリゴマーの合成において、ホスホロアミダイトを用いたカップリング反応により生成する亜リン酸エステルを酸化する際に使用する酸化溶液として、ヨウ素、水およびピリジンを含み、加熱処理した酸化溶液を使用することにより、効率的に核酸オリゴマーを製造することができることを見出した。本発明は、核酸オリゴマーの効率的な製造法を提供する。
【0007】
本発明は、以下の態様を包含するが、これらに限定されるものではない。
項1. 式(I):
【化1】
(式中、
1およびG2は、各々、独立して、水酸基の保護基を示し、Baは、保護基で保護されていてもよい核酸塩基を示し、
Rは、保護された水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、そして、
*のついた結合は、核酸の3’末端側への結合を示す。)
で示されるヌクレオチドを5’末端に有する核酸化合物の、ホスホロアミダイト法による製造方法であって、5’末端に式(II):
【化2】
(式中、
1、G2、Ba、Rおよび*は、前記定義のとおりである。)
で示される亜リン酸トリエステル結合を有する前駆体に、40℃以上に加熱処理したヨウ素、ピリジンおよび水を含む酸化溶液(以下、本明細書中、「本発明の酸化溶液」と称す)を反応させる工程を含む、製造方法。
【0008】
項2. 亜リン酸トリエステル結合を有する前駆体が、式(4):
【化3】
(式中、
1は、水酸基の保護基を表し、
2は、それぞれ独立して、同一又は相異なる水酸基の保護基を表し、
aは、それぞれ独立して、同一又は相異なり、保護基で保護されていてもよい核酸塩基を表し、
Rは、それぞれ独立して、同一又は相異なって、保護された水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、
Yは、それぞれ独立して、同一又は相異なって、酸素原子または硫黄原子を表し、
nは、1以上200までの何れかの整数を表し、
XがOZを表すとき、WはOV基を表し、Vは水酸基の保護基を表し、
XがR基を表すとき、WはOZで表される基を表し、
Zは、固相担体および連結基からなる構造を有する基である。
そして、nが2以上の整数のとき、式(4)で示される核酸化合物は、それぞれの5’末端と3’末端のヌクレオチドの間の少なくとも1つのヌクレオチドの代わりに、非ヌクレオチドリンカーが組み込まれていてもよい。)
で示される化合物であり、リン酸トリエステル結合を有する化合物が、式(5):
【化4】
(式中、
1、G2、Ba、R、n、W、X、およびYは、前記のとおりであり、そして、
式(4)において定義されたとおり、ヌクレオチドの代わりに、非ヌクレオチドリンカーが組み込まれていてもよい。)
で示される核酸化合物である項1に記載の製造方法。
【0009】
項3. 式(5)の核酸化合物をアミダイト法で任意に鎖長を伸長した式(5’):
【化5】
(式中、
2、Ba、R、XおよびWは、式(5)について定義されたとおりであり、
5は、水酸基の保護基、もしくは水素原子を表し、
mは、m≧nを満たす整数であり、
Yは、それぞれ独立して、酸素または硫黄を表す。
ただし、少なくとも1つのYは、酸素原子である。)
で示される核酸化合物を得る工程、
式(5’)の化合物から式(6):
【化6】
(式中、
5、Rおよびmは、前記のとおりであり、
cは、それぞれ独立して、同一又は相異なる核酸塩基を表し、
4は、水素原子、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、またはヒドロキシアルキルアンモニウムイオンを表し、
Yは、それぞれ独立して、酸素または硫黄を表し、かつ、少なくとも1つが、酸素原子であり、そして、
1は、水酸基を表し、かつ、W1は、OV基を表し、ここでVは、水酸基の保護基を表すか、あるいは
1は、R基を表し、かつW1は、水酸基を表す。)
で示される化合物を切り出し、
さらに式(6)の化合物を脱保護して、式(7):
【化7】
(式中、
m、Y、G4およびBcは、前記定義のとおりであり、
R’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、水酸基、水素原子、フッ素原子、メトキシ基、2-メトキシエチル基、またはOQ’基を表し、
Q’は、それぞれ独立して、同一又は相異なって、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表し、
そして、
10およびW10は、それぞれ独立して、水酸基を表すか、あるいは、
10は、R’基を表し、かつ、W10は、水酸基を表す。)
で示される脱保護した核酸オリゴマーを製造する工程をさらに含む、項2に記載の核酸オリゴマーの製造方法。
【0010】
項4. 非ヌクレオチドリンカーが、アミノ酸骨格からなるリンカーである、前項2または3のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
項5. アミノ酸骨格からなるリンカーが、下記式(A14-1)、(A14-2)および(14-3)からなる群から選ばれる構造を有するリンカーである、前項4に記載の製造方法。
【化8】
【0012】
項6. 酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.005~2Mである、前項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
項7. 酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.005~0.2Mである、前項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
項8. 酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.007~0.1Mである、前項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
項9. 酸化溶液のヨウ素の濃度が、0.008~0.07Mである、前項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
項10. 酸化溶液が、ヨウ素、ピリジンおよび水を混合して調製される、前項1~9の何れか一項に記載の製造方法。
項11. 酸化溶液が、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒を含む酸化溶液である、前項10に記載の製造方法。
項12. 酸化溶液が、アセトニトリル溶媒をさらに含む酸化溶液である、前項10または11に記載の製造方法。
項13. 酸化溶液の溶媒が、ピリジン、水、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランを、1~90:1~50:0~90:0~90の体積比率で混合して得られる混合溶媒である、前項11に記載の製造方法。
項14. 酸化溶液の溶媒が、ピリジン、水、アセトニトリルを、1~90:1~50:0~90の体積比率で混合した混合溶媒である、前項11または12に記載の製造方法。
項15. 酸化溶液が、その調製から核酸合成における酸化反応に使用するまでの保管熟成の温度が、40℃以上~60℃以下である、項1~14の何れか一項に記載の製造方法。
項16. 核酸化合物が、リボヌクレオシド(RNA)を含む核酸化合物である、前項1~15の何れか1項に記載の製造方法。
項17. 核酸が、リボヌクレオシド(RNA)であり、その2’保護基が、式(12)に示す保護基である、前項2~16の何れか1項に記載の製造方法。
式(12):
【化9】
(式中、
qは、1~5の整数を表し、
aおよびRbは各々、それぞれ同一又は相異なって、メチル基、エチル基または水素原子を表し、
*印のついた結合は、OQ基の酸素であり、そして、
W基は、電子求引基を表す。)
項18. RaおよびRbが同時に水素原子であり、EWが、シアノ基である、項17に記載の製造方法。
項19. 核酸が40鎖長以上のリボヌクレオシド(RNA)である、前項1~18の何れか1項に記載の製造方法。
項20. さらに項1に記載の酸化溶液を調製する工程を含む、前項1~19の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、効率的な核酸オリゴマーの製造方法を提供する。本発明の製造方法により、製造される核酸オリゴマーの純度向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の製法の工程(1)から(6)のスキームを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記式(I)で示されるヌクレオチドを5’末端に有する核酸化合物のホスホロアミダイト法による製造方法であって、5’末端に前記式(II)で示される亜リン酸トリエステル結合を有する前駆体に、ヨウ素、ピリジンおよび水を含み、加熱処理した酸化溶液(本発明の酸化溶液)を反応させる工程を含む、高品質核酸オリゴマーの製造方法について説明する。
【0016】
亜リン酸トリエステル結合を有する核酸前駆体に、ヨウ素、ピリジンおよび水を含む酸化溶液を反応させ、リン酸トリエステル結合に酸化する工程を含む核酸化合物の製造方法であって、前記酸化溶液が加熱処理した酸化溶液である、製造方法について説明する。
【0017】
酸化剤として、ヨウ素を使用することができ、ヨウ素、ピリジンおよび水を含む酸化溶液中のヨウ素の濃度は、通常、0.005~2M、好ましくは0.005~0.2M、より好ましくは、0.007~0.1M、更に好ましくは、0.008~0.07Mに調整される。
【0018】
酸化溶液はヨウ素の他、水、ピリジンを含み、溶媒には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)およびこれらの溶媒を任意の割合で混合して用いることもでき、好ましくは、ピリジンおよび水の混合溶媒、または、ピリジン、水およびアセトニトリルの混合溶媒である。
【0019】
溶液組成は、溶液の総体積当たり、典型的にはピリジンを1~90容積%、水を1~50容積%、アセトニトリルを0~90容積%、テトラヒドロフランを0~90容積%の体積比率で、任意に混合して100容積%とした溶媒を用いることができ、好ましくは、ピリジンを5~90容積%、水を2~30容積%、アセトニトリルを0~80容積%、テトラヒドロフランを0~80容積%の体積比率で任意に混合して100容積%とした溶媒であり、より好ましくは、ピリジンを90容積%、水を10容積%で混合した溶媒もしくはピリジンを6容積%、水を30容積%、アセトニトリルを64容積%で混合した溶媒である。
【0020】
酸化溶液を調製する時に反応系の攪拌は必須ではないが、通常、攪拌動力Pvが0.0~0.5kW/m3の範囲で攪拌を行い、Pvが0.1~0.3kW/m3の攪拌が好ましい。
【0021】
最終的に得られる酸化溶液のヨウ素濃度よりも高いヨウ素濃度で酸化溶液を加熱処理することもできる。その場合は、保管熟成後使用前に溶媒で希釈することにより最終的に調製したヨウ素濃度に調整する。
【0022】
本発明の製法における酸化工程において使用する、酸化溶液はその調製から核酸合成における酸化反応に使用するまでの保管熟成の温度は、20℃以上~80℃以下であり、好ましくは例えば40℃以上~60℃以下であり、典型的には60℃が挙げられる。また、その保管熟成の期間は、1時間以上であり、好ましくは例えば24時間~1週間であり、典型的には24時間が挙げられる。
【0023】
酸化溶液の保管には、ガラス製容器、プラスチック製容器、または金属製容器を使用することができる。プラスチック製容器としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン製等の容器を使用することができ、そして金属製容器としては、SUS製容器またはハステロイ製容器を用いることができる。
【0024】
空気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下で酸化溶液を保管することができ、不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、二酸化炭素またはヘリウム等を使用することができる。
【0025】
亜リン酸(ホスファイト)トリエステル結合を含む化合物としては、前記式(4)の化合物が例示される。酸化溶液を作用させて生成する核酸化合物としては、前記式(5)で示される核酸化合物が例示される。
式(4)および(5)において、Q’で表される、それぞれ独立して同一又は相異なって、リボースの4’位の炭素原子と結合しているメチレン基、4’位の炭素原子と結合しているエチレン基、または4’位の炭素原子と結合しているエチリデン基を表す化合物として、下記式(8)の構造が示される。
【0026】
【化10】
(式中、Baは、保護されていてもよい核酸塩基を表す。)
【0027】
Zで示される、固相担体、および固相担体と核酸オリゴマーの3’末端のリボースの2’位もしくは3’位の水酸基の酸素原子とをつなぐ連結部からなる基としては、より具体的には、Zは、下記式(9)で示される構造を表し、
【化11】
式(9)において、Spは、スペーサーを表す。
スペーサー(Sp)としては、例えば、下記式(10)に示す構造式を有するものが例示される。
【0028】
【化12】
【0029】
Linkerは、例えば、下記式(11)に示す構造でもよいし、または式(11)の構造においてヘキサメチレンアミノ基部分を有さない構造であって、アミノプロピル基がSiに結合した構造でもよい。または、Linkerは下記式(15)で示す構造でもよい。
【化13】
(式中、
Aは、水酸基、アルコキシ基、またはアルキル基のいずれかであってもよい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基およびエトキシ基が挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基が挙げられる。Siは、担体表面の水酸基の酸素と結合していることを示す。)
Solid supportとしては、無機多孔質担体や有機系樹脂担体などが挙げられる。無機多孔質担体には、例えば、Controlled Pore Glass(CPG)が挙げられる。有機系樹脂担体には、例えば、ポリスチレンからなる担体が挙げられる。
【0030】
本発明で使用される核酸オリゴマー内に含まれるヌクレオシド(リボース、およびデオキシリボース)としては、DNA、RNA、2’-O-MOE(2’-O-メトキシエチル)、2’-O-Me、2’-F RNA、および前記のLNAが例示されるが、前記ヌクレオシドは、これらに限定されない。
【0031】
前記の酸化溶液による酸化工程を含む固相合成法による核酸オリゴマーの合成方法は、典型的には、以下の工程を含む。
(1)固相担体にリンカーを介して結合している水酸基が保護されたヌクレオシドの5’位の水酸基を脱保護する工程、
(2)前記工程で生成した5’位の水酸基をホスホロアミダイト化合物とカップリング反応させて亜リン酸トリエステル化合物を得る工程、
(3)前記工程で生成した亜リン酸トリエステルを酸化してリン酸トリエステル結合に変換して伸長した核酸分子を製造する工程、あるいは、チオリン酸トリエステルに変換する任意の工程、
(4)前記工程(1)~(3)、すなわち、生成した核酸分子の5’位の水酸基の脱保護工程、5’位の水酸基とアミダイト化合物とのカップリング工程、および、生成した亜リン酸トリエステルの酸化工程、から構成される一連の反応のサイクルを、任意の回数繰り返し、固相担体上に核酸分子を合成する工程、および
(5)工程(4)で生成した固相担体上の核酸分子を、切り出し、切り出された核酸分子を脱保護反応に供することにより、固相担体から遊離させて、保護基が除かれた核酸オリゴマーを製造する工程。
ただし、前記核酸オリゴマーの合成方法においては、工程(2)または(3)に続けて、ホスホロアミダイト化合物とのカップリング反応が進行しなかった5’位の水酸基をキャッピングする工程を含んでいてもよく、工程(4)を構成する一連の反応のサイクルの何れかの工程の間にキャッピング工程が付加されていてもよい。
【0032】
前記(5)の工程は、より具体的には、工程(4)で生成した固相担体上の核酸分子を、以下の工程(5-1)および(5-2)の反応の順に実施し、次いで工程(5-3)の反応に供することにより実施される。ここで工程(5-1)の反応の実施は、任意であってもよいし、工程(5-2)の反応の実施は、特許第4705716号公報に記載の方法を用いてもよい。その結果、固相担体から遊離した核酸分子から保護基が除かれた核酸オリゴマー、あるいは、水酸基が保護された核酸オリゴマーを製造することができる。
(5-1)核酸分子の5’末端の水酸基の保護基を脱保護する反応、
(5-2)核酸分子を固相担体から切りだして遊離させる反応、および、
(5-3)核酸分子を構成するリボースの2’位もしくは3’末端の水酸基の3’位の水酸基の保護基を脱保護する反応。
【0033】
前記工程(1)から(6)のスキームを、図1に示す。図1に示される工程(3)または工程(4)における酸化反応が、前記の酸化溶液を用いて実施される。スキームAにおける化学式中の置換基の定義は、前記定義のとおりである。
【0034】
式(5)の核酸化合物は、さらにアミダイト法によりヌクレオチド型または非ヌクレオチド型のリンカーを用いて任意の鎖長だけ伸長し、前記式(5’)で示される核酸化合物の製造に使用することができる。前記式(5’)の固相担体に結合した核酸化合物から核酸化合物のみを切り出して、前記式(6)で示される核酸オリゴマーを得たのち、更に脱保護して前記式(7)で示される核酸オリゴマーを得ることもできる。
以下、各式中の置換基についてさらに詳細に説明する。
【0035】
aで示される保護基で保護されていてもよい核酸塩基は、特に限定されない。当該核酸塩基としては、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、シュードウラシル、1-メチルシュードウラシルなどが挙げられる。また、核酸塩基は、置換基により置換されていてもよい。そのような置換基としては、例えば、フルオロ基やクロロ基やブロモ基やヨード基のようなハロゲン原子、アセチル基のようなアシル基、メチル基やエキル基のようなアルキル基、ベンジル基のようなアリールアルキル基、メトキシ基のようなアルコキシ基、メトキシエチル基のようなアルコキシアルキル基、シアノエチル基のようなシアノアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アシルオキシメチル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、およびニトロ基など、並びにそれらの2種類以上の置換基の組み合わせが挙げられる。
【0036】
核酸塩基が環外にアミノ基を有する場合、当該アミノ基の保護基としては、特に限定されず、公知の核酸化学で用いられる保護基を使用することができ、そのような保護基としては、例えば、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、フェニルアセチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、および(ジメチルアミノ)メチレン基など、並びにそれらの2種類以上の保護基の組み合わせが挙げられる。
【0037】
aは、より具体的には、
【化14】
【0038】
(上記式中、
4は、水素原子、メチル基、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はベンゾイル基を表し、
5は、水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表し、
6は、水素原子、フェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、フェニルアセチル基、アセチル基又はイソブチリル基を表し、
7は、2-シアノエチル基を表し、
8は、水素原子、メチル基、ベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基又は4-メチルベンゾイル基を表し、そして、
9は、ジメチルアミノメチレン基を表す。)
のいずれかで表される基を表す。
【0039】
1としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。
【0040】
1は、好ましくは、以下の基である。
【化15】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、同一又は相異なって水素又はアルコキシ基を表す。)
【0041】
1、R2及びR3は、1つが水素であり、残りの2つが同一または相異なり(同一が好ましい)アルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
【0042】
2としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。G2としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクリルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、シリル基、シリルオキシアルキル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリルオキシアルキル基などが挙げられ、これらは1つ以上の電子求引基で置換されていてもよい。
【0043】
2は、好ましくは、電子求引基で置換されたアルキル基である。当該電子求引基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、トリハロメチル基、トリアルキルアミノ基などが挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0044】
2としては、特に好ましいのは、例えば以下の基である。
【化16】
【0045】
3は、2つのG3が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。G3としては、両方がイソプロピル基であることが好ましい。
【0046】
前記R1、R2、R3およびG2の定義におけるアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。具体的なアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。前記置換基の定義におけるアルコキシ基を構成するアルキル基部分は、ここでのアルキル基の定義と同じ定義を有する。
【0047】
また、本発明の方法において、アミダイト化合物は、フリーの状態又は塩の状態で使用することができる。アミダイト化合物の塩としては、塩基付加塩または酸付加塩が挙げられるが、特に制限されない。塩基付加塩としては、具体的には、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩;及びアンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;および、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。アミダイト化合物には、塩、水和物、溶媒和物、結晶多形などの形態も含まれる。
【0048】
Rが、保護された水酸基を示すとき、その保護基は、アミダイト法において使用できるものであればよく、例えば、2’-tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、2’-ビス(2-アセトキシ)メチル(ACE)基、2’-(トリイソプロピルシリロキシ)メチル(TOM)基、2’-(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、2’-(2-シアノエトキシ)メチル(CEM)基、2’-パラ-トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基、2’-EMM基(国際公開2006/022323号)の他に、国際公開第2013/027843号および国際公開第2019/208571号に記載のものが使用できる。これらのリボヌクレオシド(RNA)の2’保護基のうち、前記式(12)で示される保護基が好ましい保護基として例示される。さらに好ましくは、EWで示される電子求引基として、シアノ基を有する式(13)で示される保護基が例示される。
【化17】
(式中、
q、RaおよびRbは、前記定義のとおりである。ただし、RaおよびRbが同時に水素原子を表すことはない。)
【0049】
式(13)で示される保護基は、例えば国際公開第2013/027843号および国際公開第2019/208571号に記載の方法に従って合成することができ、かかる保護基を有するアミダイト化合物を核酸化合物の製造に使用することができる。
核酸の伸長反応には、図1のスキームAに記載の式(3)のアミダイト化合物が使用される。
非ヌクレオチドリンカーとしては、アミノ酸骨格からなるリンカー(例えば、特許第5157168号公報または特許第5554881号公報に記載されたアミノ酸骨格からなるリンカー)が例示される。具体的には、非限定的な例として、例えば、式(A14-1)、式(A14-2)もしくは式(A14-3)で表されるリンカーが例示される。これらのリンカー以外に国際公開第2012/005368号、国際公開第2018/182008号または国際公開第2019/074110号に記載のリンカーが例示される。
【化18】
【0050】
式(3)におけるR基および式(4)におけるR’基を有するヌクレオチドおよびアミダイトは、特許第3745226号公報などに記載された公知の方法、国際公開第2001/053528号あるいは特開2014-221817号公報およびそれらに引用される公知の方法で合成されるヌクレオシドから製造することもできる。さらには、市販品として入手可能なものを用いて、後述する実施例に記載の方法に則して又はこれらの方法に適宜変更を加えた方法により製造することができる。
【0051】
前記工程(1)から(6)のアミダイト法による核酸化合物の合成は、図1のスキーム中の工程(3)における本発明に関わる酸化反応工程以外は、一般的に公知の方法(例えば、前記の特許第5157168号公報または特許第5554881号公報に記載の方法)に従って、脱保護工程、縮合工程、の各工程を繰り返し行うことにより、核酸伸長反応を行うことができる。以下、各工程について説明する。
【0052】
4は、水素原子、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、またはヒドロキシアルキルアンモニウムイオンを表す。アルカリ金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、およびリチウムイオンが挙げられる。また、アルキルアンモニウムイオンとして、具体的なアルキル基の例としては、例えば、メチル、エチル、n-プロビル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられるが、より具体的には、例えば、アンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、およびジブチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。また、ヒドロキシアルキルアンモニウムイオンとして、具体的なヒドロキシアルキル部分の例としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロビル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシ-n-ブチル、トリスヒドロキシメチルが挙げられるが、より具体的なヒドロキシアルキルアンモニウムイオンの例としては、トリスヒドロキシメチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0053】
5は、水素原子、または保護基を表し、保護基を表す場合はG1と同じ保護基を表す。G5は脱保護された場合には水素原子であるが、その場合のヌクレオチド化合物もまた、一連の核酸伸張反応の工程に供される。
【0054】
(核酸伸長反応)
本明細書において、「核酸伸長反応」とは、ホスホジエステル結合を介して、ヌクレオチドを順次結合させることにより、オリゴヌクレオチドを伸長させる反応を意味する。核酸伸長反応は、一般的なホスホロアミダイト法の手順に従い行うことができる。核酸伸長反応は、ホスホロアミダイト法を採用する核酸自動合成装置等を用いて行ってもよい。
【0055】
核酸オリゴマーの鎖長は、例えば、2~200merや10~150mer、15~110merであってもよい。
【0056】
工程(1)の5’脱保護工程は、固相担体上に担持されるRNA鎖末端の5’ヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程である。一般的な保護基としては、4,4’-ジメトキシトリチル基(DMTr基)や4-モノメトキシトリチル基、4,4’,4”-トリメトキシトリチル基が用いられる。脱保護は、酸を用いて行うことができる。脱保護用の酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0057】
工程(2)の縮合工程は、前記脱保護工程により脱保護したオリゴヌクレオチド鎖末端の5’ヒドロキシル基に対して、図1のスキームAに記載の下記式(3)で示されるヌクレオシドホスホロアミダイトを結合させる反応である。なお、核酸伸長に用いるホスホロアミダイトとしては、式(3)または(A12)で示されるアミダイト化合物を用いる。また、他に使用可能なホスホロアミダイトとして、2’-OMe、2’-F、2’-O-tert-ブチルジメチルシリル基,2’-O-メトキシエチル基,2’-H,2'-フルオロ-2’-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル等が挙げられる。前記ヌクレオシドホスホロアミダイトとしては、5’ヒドロキシル基が保護基(例、DMTr基)で保護されたものを用いる。縮合工程は、前記ヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化する活性化剤を用いて行うことができる。活性化剤としては、例えば、5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(BTT)、1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール(DCI)、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)、N-メチルベンズイミダゾリウムトリフラート(N-MeBIT)、ベンズイミダゾリウムトリフラート(BIT)、N-フェニルイミダゾリウムトリフラート(N-PhIMT)、イミダゾリウムトリフラート(IMT)、5-ニトロベンズイミダゾリウムトリフラート(NBT)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)又は5-(ビス-3,5-トリフルオロメチルフェニル)-1H-テトラゾール等が挙げられる。
【0058】
図1のスキームAに記載の式(3)で示されるヌクレオチドホスホロアミダイト(以下、アミダイトと呼称する)とは、以下のとおりである。
式:
【化19】
(式中、
1、G2、G3、Ba、およびRは、前記の通りである。)で示される化合物。
【0059】
縮合工程の後は、適宜、未反応の5’ヒドロキシル基をキャッピングしてもよい。キャッピングは、無水酢酸-テトラヒドロフラン溶液、フェノキシ酢酸無水物/N-メチルイミダゾール溶液等の公知のキャッピング溶液を用いて行うことができる。
【0060】
工程(3)の酸化工程は、前記縮合工程により形成された亜リン酸基をリン酸基又はチオリン酸基に変換する工程である。本工程は、3価のリンから5価のリンに酸化剤を使用して変換する反応であり、固相担体に担持されているオリゴ核酸誘導体に酸化剤を作用させることにより実施することができる。
亜リン酸基をリン酸基に変換する場合には、「酸化剤」として、例えば、ヨウ素を使用することができる。該酸化剤は、0.005~2Mの濃度になるように調製して使用することができる。酸化の酸素源としては水を用いることができ、反応を進行させる塩基としてはピリジン等を用いることができる。また、溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)又はこれらの任意の割合で混合して使用することもできる。例えば、ヨウ素/水/ピリジン/アセトニトリル、あるいは、ヨウ素/水/ピリジン、あるいはヨウ素/水/ピリジン/THFを用いることができる。反応温度は、5℃~50℃が好ましい。反応時間は、通常1分~30分が適当である。使用する試薬の量は固相担体に担持されている化合物1モルに対して1~100モルが好ましく、より好ましくは1~10モルである。
【0061】
亜リン酸トリエステル基をチオリン酸基に変換する場合には、「酸化剤」として、例えば、硫黄、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT)、5-フェニル-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-オン(POS)、[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾリン-3-チオン(DDTT)、およびフェニルアセチルジスルフィド(PADS)を使用することもできる。該酸化剤は、0.001~2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。反応に使用する溶媒としては、反応に関与しなければ特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジン又はこれらの任意の混合溶媒が挙げられる。酸化工程は、前記キャッピング操作の後で行ってもよいし、逆に、酸化工程の後でキャッピング操作を行ってもよいし、この順序は限定されない。
【0062】
工程(5)において、リン酸保護基を脱保護する工程は、所望の配列を有する核酸の合成が完了した後は、リン酸部分の保護基を脱保護するためにアミン化合物を作用させる。アミン化合物としては、例えば、特許第4705716号公報に記載されるジエチルアミン等が挙げられる。
【0063】
伸長の最後に導入したヌクレオシドの5’ヒドロキシル基の保護基は、後述の固相担体からの切り出し及び保護基の脱保護の後、5’保護基をタグとするカラム精製のために使用してもよく、カラム精製後、5’ヒドロキシル基の保護基を脱保護してもよい。
【0064】
工程(5)における、固相担体上で所望の鎖長に伸長した核酸オリゴマーの、固相担体からの切り出しは、通常、切り出し剤として濃アンモニア水を用いて実施される。
【0065】
更にアンモニア又はアミン化合物等を用いて、例えば、固相担体からオリゴヌクレオチド鎖を切断して回収する。アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン等が挙げられる。
【0066】
工程(6)において、工程(5)において固相担体から切り出された核酸化合物(6)のリボースの2位もしくは3位の水酸基の保護基は、国際公開2006/022323号、国際公開第2013/027843号、または国際公開第2019/208571号に記載の方法に従って除くことができて、脱保護した核酸オリゴマー(7)を得ることができる。
【0067】
本発明の製造方法を用いて製造可能な核酸オリゴマーとしては、核酸オリゴマー内に含まれるヌクレオシドが、RNA、DNA、並びに2’-O-MOE、2’-O-Me、2’-Fを有するRNA、およびLNAである核酸オリゴマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Xiulong, Shenら著、Nucleic Acids Research, 2018, Vol. 46, No.46, 1584-1600、およびDaniel O'Reillyら著、Nucleic Acids Research, 2019, Vol. 47, No.2, 546-558に記載された、様々なヌクレオシドの例が挙げられる。
【0068】
本発明の製造方法において使用可能な核酸オリゴマーの典型的な例を、実施例に記載の例に加えて下記の例を示すが、これらに限定されるものではない。
以下、配列の説明中、Uはウリジンを、Cはシチジンを、Aはアデノシンを、またGはグアノシンを示す。
国際公開第2019/060442号に記載されている、下記の配列(B)および(C)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(B):5’-AUGGAAUmACUCUUGGUUmACdTdT-3’(Antisense)(配列番号3) 21mer
配列(C):5’-GUmAACmCmAAGAGUmAUmUmCmCmAUmdTdT-3’(Sense)(配列番号4) 21mer
配列(B)および(C)中、Umは2'-O-メチルウリジンを、Cmは2'-O-メチルシチジンを、またdTはチミジンを示す。
Daniel O'Reillyら著、Nucleic Acids Research, 2019, Vol. 47, No.2, 546-558に記載されている核酸オリゴマー(553頁参照)が挙げられる。典型例として、下記の配列(D)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(D):5’-AGAGCCAGCCUUCUUAUUGUUUUAGAGCUAUGCUGU-3’(配列番号5) 36mer
特許第4965745号公報に記載されている核酸オリゴマーが挙げられる。典型例として、下記の配列(E)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(E):5’-CCAUGAGAAGUAUGACAACAGCC-P-GGCUGUUGUCAUACUUCUCAUGGUU-3’ 49mer。CCAUGAGAAGUAUGACAACAGCC(配列番号6)、GGCUGUUGUCAUACUUCUCAUGGUU(配列番号7)。
配列(E)中、”P”は、以下の式(A5)において波線で区切られる部分構造で示される。
Nucleic Acids Research, 2019, Vol. 47, No. 2: 547に記載されている、下記の配列(F)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(F):5’-ACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号8) 67mer
特表2015-523856, 173頁に記載されている、下記の配列(G)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(E):5’-GUUUUCCCUUUUCAAAGAAAUCUCCUGGGCACCUAUCUUCUUAGGUGCCCUCCCUUGUUUAAACCUGACCAGUUAACCGGCUGGUUAGGUUUUU-3’(配列番号9) 94mer
特表2017-537626に記載されている核酸オリゴマーが挙げられる。典型例として、下記の配列(F)(G)(H)及び(J)を有する核酸オリゴマーを挙げられる。
配列(F):5’-AGUCCUCAUCUCCCUCAAGCGUUUUAGAGCUAGUAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU-3’(配列番号10) 100mer
配列(G):5’-GCAGAUGUAGUGUUUCCACAGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU-3’(配列番号11) 113mer
配列(H):5’-dAdGdTdCdCdTdCdAdTdCdTdCdCdCdTdCdAdAdGdCGUUUAAGAGCUAUGCUGGUAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU -3’(配列番号12) 113mer
配列(H)中、dTはチミジンを、dCは2'-デオキシシチジンを、dAは2'-デオキシアデノシンを、またdGは2'-デオキシグアノシンを示す。
配列(J):5’-AmsGmsUmsCCUCAUCUCCCUCAAGCGUUUAAGAGCUAUGCUGGUAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUmsUmsUmsU-3’(配列番号13) 113mer
配列(J)中、Umは2'-O-メチルウリジンを、Cmは2'-O-メチルシチジンを、Amは2'-O-メチルアデノシンを、Gmは2'-O-メチルグアノシンを、またsはホスホロチオエート修飾を示す。
【実施例
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0070】
<測定方法>
まず、以下の試験で用いた各種測定方法を以下に示す。
【0071】
オリゴヌクレオチド純度は、HPLCを用いて測定した。
HPLC測定条件を下記表1に示す。
(測定方法1:オリゴヌクレオチド純度の測定)
【表1】
【0072】
(測定方法2:オリゴヌクレオチド収量の測定)
前記粗生成物のOD260を測定した。OD260とは1mL溶液(pH=7.5)における10mm光路長あたりのUV260nmの吸光度を表す。一般的にRNAでは1OD=40μgであることが知られていることから、前記OD260の測定値に基づき、収量を算出した。
【0073】
<オリゴヌクレオチドの固相合成>
配列(I):5’-AGCAGAGUACACACAGCAUAUACC-P-GGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUUC-P-G-3’(配列番号1、2) 3mer
前記配列(I)において、”A”は、以下の式(A1)において波線で区切られる部分構造で示される。”C”は、以下の式(A2)において波線で区切られる部分構造で示される。”G”は、以下の式(A3)において波線で区切られる部分構造で示される。Uは、以下の式(A4)において波線で区切られる部分構造で示される。”P”は、以下の式(A5)において波線で区切られる部分構造で示される。なお、5‘末端の”A”は、以下の式(A6)において波線で区切られる部分構造で示される。また、3‘末端の”G”は、以下の式(A7)において波線で区切られる部分構造で示される。
AGCAGAGUAC ACACAGCAUA UACC(配列番号1)
GGUAUAUGCU GUGUGUACUC UGCUUC(配列番号2)
【0074】
【化20】
【0075】
【化21】
【0076】
【化22】
【0077】
【化23】
【0078】
【化24】
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
固相担体として、Controlled Pore Glass(CPG)を使用し、核酸合成機としてNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)を用いて、ホスホロアミダイト固相合成法により、上記配列(I)からなるオリゴヌクレオチドを3’側から5’側に向かって合成した。合成は、NTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)を用いた場合には、約1μmolスケールにて実施した。また、合成には、US2012/0035246の実施例2に記載のウリジンEMMアミダイト、実施例3に記載のシチジンEMMアミダイト、実施例4に記載のアデノシンEMMアミダイト、実施例5に記載のグアノシンEMMアミダイトおよび国際公開第2017/188042号に記載の化合物(3)を使用し、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸無水物溶液とN-メチルイミダゾール溶液を使用した。
【0082】
【化27】
【0083】
【化28】
【0084】
【化29】
【0085】
【化30】
【0086】
【化31】
【0087】
次に、本発明の製法により製造される核酸オリゴマーの具体的な製造例を示す。ここで、下記の実施例において本発明の製法により製造されるオリゴヌクレオチドは、前記配列番号1および2を有する核酸オリゴマーである。
また、以下の実施例および比較例中に記載するグアノシン誘導体とは、下記の構造式で示される化合物を意味する。下記構造式において図示されたサークルは、CPGを模式的に示すものである。
【化32】
【0088】
(実施例1)
1.07μmolのグアノシン誘導体を担持したControlled Pore Glass(CPG)と、式(A8)、式(A9)、式(A10)、式(A11)、または式(A12)に示すアミダイトとを用いて、配列(I)に示す核酸オリゴマーをNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)により、3’側から5’側に向かって自動合成した。自動合成の手順は、まず、3%トリクロロ酢酸トルエン溶液を各回1.4mLCPGに送液し、5’位のトリチル保護基を脱保護し、続いて、各種アミダイトを0.3mLと、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを各0.4mL分とを、CPGに送液し、5’位の水酸基にカップリング反応を進行させた。続いて、17mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=35.2:52.9:11.4(重量%)溶液を60℃にて161時間保管した後、合成直前にアセトニトリルを加えることで10mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=58.2:34.2:7.4(重量%)溶液としたものを0.7mL送液し、亜リン酸基をリン酸基に変換した。続いて、キャッピング溶液として0.1Mフェノキシ酢酸無水物アセトニトリル溶液0.5mLと10%N-メチルイミダゾール/10%2,6-ルチジンアセトニトリル溶液0.5mLを使用し、カップリングが進行しなかった反応点にキャッピングを施した。更にこれらの工程を合計52回繰り返し、配列(I)に示される配列の核酸オリゴヌクレオチドをCPG担体上に合成した後、5’位のトリチル保護基を3%トリクロロ酢酸トルエン溶液にて脱保護した。その後、全量のオリゴヌクレオチドを担持したCPG担体に対して、752μLのアンモニア水と252μLのエタノールを用いて、核酸オリゴマーを固相担体から遊離させた後、窒素吹付によりアンモニア水とエタノールを除去した。次いで遊離オリゴヌクレオチドを400μLのジメチルスルホキシドに溶解後、ニトロメタン5.3μLと撹拌子を入れた後、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理を施した1Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)のジメチルスルホキシド溶液530μL(TBAFの量は保護基1モル当たり10.2モル)をスターラーによる撹拌下30℃で流入し、混合物を4時間保温することで2’-EMM保護基の脱保護を行った。粗生成物は沈殿操作により得た。収量は8.6mg、純度は61%であった。得られた粗生成物について、前記測定方法1に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの純度を測定した。また、前記測定方法2に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの収量を測定した。
【0089】
(実施例2)
1.02μmolのグアノシン誘導体を担持したControlled Pore Glass(CPG)と、式(A8)、式(A9)、式(A10)、式(A11)、または式(A12)に示すアミダイトとを用いて、配列(I)に示す核酸オリゴマーをNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)により、3’側から5’側に向かって自動合成した。自動合成の手順は、まず、3%トリクロロ酢酸トルエン溶液を各回1.4mLCPGに送液し、5’位のトリチル保護基を脱保護し、続いて、各種アミダイトを0.3mLと、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを0.4mL分とを、CPGに送液し、5’位の水酸基にカップリング反応を進行させた。続いて、17mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=35.2:52.9:11.4(重量%)溶液を60℃にて24時間保管した後、合成直前にアセトニトリルを加えることで10mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=58.2:34.2:7.4(重量%)溶液としたものを0.7mL送液し、亜リン酸基をリン酸基に変換した。続いて、キャッピング溶液として0.1Mフェノキシ酢酸無水物アセトニトリル溶液0.5mLと10%N-メチルイミダゾール/10%2,6-ルチジンアセトニトリル溶液0.5mLを使用し、カップリングが進行しなかった反応点にキャッピングを施した。更にこれらの工程を合計52回繰り返し、配列(I)に示される配列の核酸オリゴヌクレオチドをCPG担体上に合成した後、5’位のトリチル保護基を3%トリクロロ酢酸トルエン溶液にて脱保護した。その後、全量のオリゴヌクレオチドを担持したCPG担体に対して、752μLのアンモニア水と252μLのエタノールを用いて、核酸オリゴマーを固相担体から遊離させた後、窒素吹付によりアンモニア水とエタノールを除去した。次いで遊離オリゴヌクレオチドを400μLのジメチルスルホキシドに溶解後、ニトロメタン5.3μLと撹拌子を入れた後、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理を施した1Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)のジメチルスルホキシド溶液530μL(TBAFの量は保護基1モル当たり10.2モル)をスターラーによる撹拌下30℃で流入し、混合物を4時間保温することで2’-EMM保護基の脱保護を行った。粗生成物は沈殿操作により得た。収量は7.3mg、純度は59%であった。得られた粗生成物について、前記測定方法1に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの純度を測定した。また、前記測定方法2に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの収量を測定した。
【0090】
(実施例3)
1.03μmolのグアノシン誘導体を担持したControlled Pore Glass(CPG)と、式(A8)、式(A9)、式(A10)、式(A11)、または式(A12)に示すアミダイトとを用いて、配列(I)に示す核酸オリゴマーをNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)により、3’側から5’側に向かって自動合成した。自動合成の手順は、まず、3%トリクロロ酢酸トルエン溶液を各回1.4mLCPGに送液し、5’位のトリチル保護基を脱保護し、続いて、各種アミダイトを0.3mLと、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを0.4mL分とを、CPGに送液し、5’位の水酸基にカップリング反応を進行させた。続いて、17mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=35.2:52.9:11.4(重量%)溶液を40℃にて24時間保管した後、合成直前にアセトニトリルを加えることで10mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=58.2:34.2:7.4(重量%)溶液としたものを0.7mL送液し、亜リン酸基をリン酸基に変換した。続いて、キャッピング溶液として0.1Mフェノキシ酢酸無水物アセトニトリル溶液0.5mLと10%N-メチルイミダゾール/10%2,6-ルチジンアセトニトリル溶液0.5mLを使用し、カップリングが進行しなかった反応点にキャッピングを施した。更にこれらの工程を合計52回繰り返し、配列(I)に示される配列の核酸オリゴヌクレオチドをCPG担体上に合成した後、5’位のトリチル保護基を3%トリクロロ酢酸トルエン溶液にて脱保護した。その後、全量のオリゴヌクレオチドを担持したCPG担体に対して、752μLのアンモニア水と252μLのエタノールを用いて、核酸オリゴマーを固相担体から遊離させた後、窒素吹付によりアンモニア水とエタノールを除去した。次いで遊離オリゴヌクレオチドを400μLのジメチルスルホキシドに溶解後、ニトロメタン5.3μLと撹拌子を入れた後、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理を施した1Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)のジメチルスルホキシド溶液530μL(TBAFの量は保護基1モル当たり10.2モル)をスターラーによる撹拌下30℃で流入し、混合物を4時間保温することで2’-EMM保護基の脱保護を行った。粗生成物は沈殿操作により得た。収量は8.1mg、純度は57%であった。得られた粗生成物について、前記測定方法1に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの純度を測定した。また、前記測定方法2に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの収量を測定した。
【0091】
(参考例1)
1.00μmolのグアノシン誘導体を担持したControlled Pore Glass(CPG)と、式(A8)、式(A9)、式(A10)、式(A11)、または式(A12)に示すアミダイトとを用いて、配列(I)に示す核酸オリゴマーをNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)により、3’側から5’側に向かって自動合成した。自動合成の手順は、まず、3%トリクロロ酢酸トルエン溶液を各回1.4mLCPGに送液し、5’位のトリチル保護基を脱保護し、続いて、各種アミダイトを0.3mLと、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを0.4mL分とを、CPGに送液し、5’位の水酸基にカップリング反応を進行させた。続いて、50mMヨウ素を含むピリジン:水=88.7:10.0(重量%)溶液を25℃にて24時間保管したものを0.7mL送液し、亜リン酸基をリン酸基に変換した。続いて、キャッピング溶液として0.1Mフェノキシ酢酸無水物アセトニトリル溶液0.5mLと10%N-メチルイミダゾール/10%2,6-ルチジンアセトニトリル溶液0.5mLを使用し、カップリングが進行しなかった反応点にキャッピングを施した。更にこれらの工程を合計52回繰り返し、配列(I)に示される配列の核酸オリゴヌクレオチドをCPG担体上に合成した後、5’位のトリチル保護基を3%トリクロロ酢酸トルエン溶液にて脱保護した。その後、全量のオリゴヌクレオチドを担持したCPG担体に対して、752μLのアンモニア水と252μLのエタノールを用いて、核酸オリゴマーを固相担体から遊離させた後、窒素吹付によりアンモニア水とエタノールを除去した。次いで遊離オリゴヌクレオチドを400μLのジメチルスルホキシドに溶解後、ニトロメタン5.3μLと撹拌子を入れた後、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理を施した1Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)のジメチルスルホキシド溶液530μL(TBAFの量は保護基1モル当たり10.2モル)をスターラーによる撹拌下30℃で流入し、混合物を4時間保温することで2’-EMM保護基の脱保護を行った。粗生成物は沈殿操作により得た。収量は7.9mg、純度は42%であった。得られた粗生成物について、前記測定方法1に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの純度を測定した。また、前記測定方法2に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの収量を測定した。
【0092】
(参考例2)
1.04μmolのグアノシン誘導体を担持したControlled Pore Glass(CPG)と、式(A8)、式(A9)、式(A10)、式(A11)、または式(A12)に示すアミダイトとを用いて、配列(I)に示す核酸オリゴマーをNTS M-4MX-E(日本テクノサービス社製)により、3’側から5’側に向かって自動合成した。自動合成の手順は、まず、3%トリクロロ酢酸トルエン溶液を各回1.4mLCPGに送液し、5’位のトリチル保護基を脱保護し、続いて、各種アミダイトを0.3mLと、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを0.4mL分とをCPGに送液し、5’位の水酸基にカップリング反応を進行させた。続いて、10mMヨウ素を含むアセトニトリル:水:ピリジン=58.2:34.4:7.2(重量%)溶液を25℃にて24時間保管したものを0.7mL送液し、亜リン酸基をリン酸基に変換した。続いて、キャッピング溶液として0.1Mフェノキシ酢酸無水物アセトニトリル溶液0.5mLと10%N-メチルイミダゾール/10%2,6-ルチジンアセトニトリル溶液0.5mLを使用し、カップリングが進行しなかった反応点にキャッピングを施した。更にこれらの工程を合計52回繰り返し、配列(I)に示される配列の核酸オリゴヌクレオチドをCPG担体上に合成した後、5’位のトリチル保護基を3%トリクロロ酢酸トルエン溶液にて脱保護した。その後、全量のオリゴヌクレオチドを担持したCPG担体に対して、752μLのアンモニア水と252μLのエタノールを用いて、核酸オリゴマーを固相担体から遊離させた後、窒素吹付によりアンモニア水とエタノールを除去した。次いで遊離オリゴヌクレオチドを400μLのジメチルスルホキシドに溶解後、ニトロメタン5.3μLと撹拌子を入れた後、モレキュラーシーブ4Aにて脱水処理を施した1Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)のジメチルスルホキシド溶液530μL(TBAFの量は保護基1モル当たり10.2モル)をスターラーによる撹拌下30℃で流入し、混合物を4時間保温することで2’-EMM保護基の脱保護を行った。粗生成物は沈殿操作により得た。収量は7.8mg、純度は35%であった。得られた粗生成物について、前記測定方法1に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの純度を測定した。また、前記測定方法2に記載の方法を用いて、オリゴヌクレオチドの収量を測定した。
【0093】
実施例1~3、および参考例1~2の結果を、表2に示す。
【表2】
【0094】
上記表の結果より、40℃以上に加熱処理した本発明の酸化溶液を用いた場合には、参考例1および2の酸化溶液を用いた場合と比較して、高純度の核酸オリゴマーを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、効率的な核酸オリゴマーの製造方法を提供する。また、核酸オリゴマーの製造方法に従って製造される核酸オリゴマーの純度向上が期待できる。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列表の配列番号1~13は、本発明の製造方法に従って製造されるオリゴヌクレオチドの塩基配列を表す。
図1
【配列表】
0007667788000001.app