(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】TRPV3活性化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20250417BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250417BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250417BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250417BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P43/00 111
A61P1/02
A61K8/34
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020213351
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】森 泰生
(72)【発明者】
【氏名】森 誠之
【審査官】宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-212740(JP,A)
【文献】特表2012-522753(JP,A)
【文献】特開2013-014580(JP,A)
【文献】AK Vogt-Eisele et al.,Monoterpenoid agonists of TRPV3,British Journal of Pharmacology,2007年,Vol. 151,p. 530-540
【文献】Cassandra E. Deering-Rice et al.,Activation of TRPV3 by Wood Smoke Particles and Roles in Pneumotoxicity,Chem. Res. Toxicol.,2018年,Vol. 31, No. 5,p. 291-301
【文献】Kangjiao Yan et al.,Pharmacological Activation of Thermo-Transient Receptor Potential Vaniloid 3 Channels Inhibits Hair Growth by Insucing Cell Death of Hair Follicle Outer Root Sheath,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2019年,Vol. 370, No. 2,p. 299-307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、A61Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-メチル-4-イソプロピルフェノールを有効成分とする、TRPV3活性化剤。
【請求項2】
3-メチル-4-イソプロピルフェノールを
口腔用組成物に配合することにより、当該
口腔用組成物に対して、TRPV3活性化作用および/またはその作用に起因する機能を付与することを特徴とする、3-メチル-4-イソプロピルフェノールの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPV3の活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感覚は、外部から受けた刺激が電気信号に変換され、神経細胞を通じて脳に伝達されることで生じる。外部刺激を電子信号に変換するには、その外部刺激を感知する受容体の存在が必要である。かかる受容体のうち、温度感覚を感知する受容体としてカプサイシン受容体(TRPV1)が、1997年に同定された(非特許文献1)。TRPV1は、カプサイシンのほかに43℃以上の熱刺激で活性化されることから、温度感覚の受容体であると予想されていた。更に、TRPV1欠損マウスが熱刺激に対して鈍い反応しか示さないことから、TRPV1が熱受容体として機能することが確認されている(非特許文献2)。しかしながら、TRPV1の活性化温度である43℃は生体に痛みを生じさせる温度であること、更に化学リガンドであるカプサイシンは温感物質であると同時に発痛物質であることから、TRPV1は痛みの受容体として機能すると考えられている(非特許文献3)。
【0003】
TRPV3は、TRPV1と同じTRP(Transient Receptor Potential)ファミリーに属するイオンチャネルであり、2002年に同定された温度受容体である(非特許文献4)。この受容体は活性化閾値が30℃台であることから、痛みではなく温かい温度の受容体であると予想されている。更に、TRPV3欠損マウスを用いた解析から、TRPV3が皮膚での温度受容に関与することが確認されている(非特許文献5)。
【0004】
TRPV3は、ヒノキの樹精の含有成分であるカンファーや、タイムやオレガノの含有成分であるチモールやカルバクロールなどの植物由来成分により活性化されることが知られている(非特許文献6)。過去において、TRPV3を活性化する化合物の探索が行われ(非特許文献7)、カルバクロール等のテルペン類がTRPV3活性化能を示すことが開示されている。
【0005】
ところで、イソプロピルメチルフェノール(以下、単に「IPMP」とも称する)は、幅広い抗菌スペクトルに加えて、高い安全性を有し、また環境負荷の低い抗菌剤(殺菌剤)であることから、従来より、医薬品(例えば、傷消毒薬、軟膏等)、及び医薬部外品(例えば、ハンドソープ、育毛トニック、デオドラント[防臭剤]、制汗剤、薬用化粧品、歯磨き剤等)の有効成分、並びに化粧品等の防腐剤等として、広く使用されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、TRPチャネルへの作用は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Nature 389,816-824,1997
【文献】Science 288,306-313,2000
【文献】総研大ジャーナル 10,40-45,2006
【文献】Science 296,2046-2049,2002
【文献】Science 307,1468-1472,2005
【文献】British Journal of pharmacology 151,530-540,2007
【文献】British.J.Pharmacol.,151,530-540,2007
【文献】The FASEB Journal Vol.29,No.1,182-192,2018
【文献】Pflugers Arch - Eur J Physiol 458,1093-1102,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、IPMPについて新たに見出した機能に基づいて、IPMPの新規用途を提供することを課題とする。具体的には、IPMPを有効成分とするTRPV3活性化剤を提供することを課題とする。また、IPMPのTRPV3活性化作用に基づく新たな用途(使用方法)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、IPMPについて新たな機能を見出すべく研究を進めていたところ、IPMPに、TRPチャネルの一種であるTRPV3を活性化する機能があることを見出した。本発明は、当該知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
【0010】
(I)TRPV3活性化剤
(I-1)IPMPを有効成分とする、TRPV3活性化剤。
【0011】
(II)IPMPの使用方法
(II-1)IPMPを組成物に配合することにより、当該組成物に対して、TRPV3活性化作用および/または当該作用に起因する機能を付与することを特徴とする、IPMPの使用方法。
【発明の効果】
【0012】
IPMPは、細胞中のTRPV3を活性化する作用を有しており、TRPV3活性化剤として有用である。このため、IPMPはTRPV3の活性化に起因する種々の機能を発揮することができる。また、IPMPを、組成物(例えば、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、化粧品等)に添加配合することで、当該組成物に対して、TRPV3活性化作用を付与し、当該作用に起因する種々の機能を付与することができる。かかる機能として、制限されないものの、例えば、TRPV3受容体を介したカルシウムイオンチャネル活性化による温感の感受性付与機能、及び各種生理機能(例えば、上皮細胞、表皮細胞または真皮線維芽細胞の増殖促進機能や組織修復機能)を挙げることができる(非特許文献8)。このため、IPMP及びこれを含む組成物は、温感剤として、また上皮細胞、表皮細胞または真皮線維芽細胞の増殖促進剤や組織修復剤などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
IPMP
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)は、チモールの異性体であり、化学名を3-メチル-4-イソプロピルフェノールという針状結晶形態を有する化合物である。広範囲の抗菌・抗真菌スペクトルを有し、各種の細菌、酵母、カビ類(例えば、O-157、MRSA、セラチア、及び白癬菌など)に対して殺菌効果を発揮するとともに、低臭性、低味性、低刺激性、及び非感作性という特性を有するため、医薬品及び医薬部外品をはじめ、ハミガミや洗口剤などの口腔用組成物、化粧品や日用品にも、殺菌剤、抗菌剤または防腐剤として広く使用されている。IPMPは商業的に入手することができ(例えば、大阪化成株式会社など)、また制限されないものの、水性製品に容易に配合できる製品として「BIOSOL(登録商標)-LIQUID」(大阪化成株式会社製)も販売されている。
【0014】
(I)TRPV3活性化剤
温度感受性Transient Receptor Potential(TRP)チャネルは、生体の温感センサーとして発見された受容体である。熱いものや冷たいものに触れたり、極端に暑いまたは寒い環境におかれたりすると、生体に備わっている温感センサーのTRPチャネルが活性化して、脳に危険性を伝える。このとき、TRPチャネルは、温度だけでなく多くの化学的・物理的刺激を感受するセンサーとして多様な生体機能に関わっている。
【0015】
本発明が対象とするTRPチャネルは、TRPV3(Transient Receptor Potential Vanilloid 3)である。前述するように、TRPV3は皮膚での温度受容に関与することが確認されている。
【0016】
また、TRPV3は活性化されると、カチオン、主としてカルシウムイオンの輸送を起こす。当該イオンは濃度勾配の低い方へ流れ、脱分極し、次いで神経末端から神経伝達物質の遊離を引き起こす。細胞内にCa2+イオンが流入すると細胞からATPが遊離し、細胞が増殖することが知られている(非特許文献9)。このため、TRPV3を活性化することで細胞の増殖を促進することが可能となる。特に、TRPV3は、歯肉上皮細胞等の上皮細胞、表皮細胞、及び真皮線維芽細胞に存在していることから、TRPV3の活性化を介して、これら上皮細胞、表皮細胞、及び真皮線維芽細胞の増殖を促進し、例えば組織修復に寄与することができると考えられる。ここで上皮細胞には、歯肉上皮細胞、気管支上皮細胞、表皮角化細胞などが制限なく含まれる。好ましくは、歯肉上皮細胞である。
【0017】
実験例で示すように、前述するIPMPはTRPV3を活性化する作用を有する。このため、IPMPはTRPV3活性化剤として使用することができる。つまり、本発明のTRPV3活性化剤はIPMPを有効成分として含有することを特徴とする。
【0018】
本発明のTRPV3活性化剤中に含まれるIPMPの割合としては、対象とするTRPV3活性化剤がTRPV3活性化作用を奏する範囲であればよく、この限りにおいて特に制限されるものではない。例えば、0.0001~0.5質量%、好ましくは0.005~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%の範囲を例示することができる。
【0019】
本発明のTRPV3活性化剤は、それ自体がTRPV3活性化作用を有する外用組成物または口腔用組成物であってもよいし、又はこれらの外用組成物や口腔用組成物にTRPV3活性化作用を付与するために配合される素材(原料)又は製剤であってもよい。
【0020】
ここで外用組成物には、化粧料、外用医薬部外品、および外用医薬品が含まれる。外用組成物の剤形は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン、スティック、軟膏、クリーム等が含まれる。また、不織布等のシートに含浸ないし塗布した形態の製剤も含まれる。化粧料として、制限されないものの、具体的には、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプーなどの皮膚洗浄料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス、育毛料等の毛髪(頭皮)化粧料等を挙げることができる。制限されないものの、日常的な使用が可能であり、塗布直後の洗い流しを要さないリーブオン型の化粧料が好適に例示される。
【0021】
これらの外用組成物には、本発明のTRPV3活性化剤(IPMP)に加えて、各種製品の目的や形態に応じて、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる慣用の成分を配合することができる。
【0022】
外用組成物に対するIPMPの配合量は、TRPV3活性化作用を発揮する有効量であればよく、制限されないものの、最終の外用組成物中に0.0001~0.5質量%の範囲で含まれるように、適宜設定調整することができる。好ましくは0.005~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0023】
前記口腔用組成物には、口腔ケア製品が含まれる。ここで口腔ケア製品とは、通常の使用過程において、口腔内への任意の機能(例えば、清浄、口臭除去、歯石除去、抗炎症、鎮痛、歯周病や歯肉炎の歯肉疾患や虫歯等の予防または治療など)を目的として、一部若しくは全ての、歯表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって、口腔内に保持される製品を意味する。口腔ケア製品には、歯磨剤(ペースト、ゲル、粉末、タブレット、又は液体の製剤を含む)、洗口剤、歯肉用クリーム、歯肉縁下用ゲル、義歯装着用製品、又はチューインガムやグミなどが含まれる。これらの口腔ケア製品には、本発明のTRPV3活性化剤(IPMP)に加えて、各種製品の目的や形態に応じて、慣用の成分を配合することができる。
【0024】
口腔ケア製品に対するIPMPの配合量は、TRPV3活性化作用を発揮する有効量であればよく、制限されないものの、最終の口腔ケア製品中に0.0001~0.5質量%の範囲で含まれるように、適宜設定調整することができる。好ましくは0.005~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0025】
(II)IPMPの使用方法
本発明は、IPMPの使用方法を提供する。
【0026】
前述するように、IPMPは、TRPV3活性化作用を有し、その作用に起因して各種機能を発揮する。このため、IPMPを組成物に配合することで、当該組成物に、TRPV3活性化作用を付与することができ、またその作用に基づいて各種機能を付与することができる。TRPV3活性化作用に基づく機能には、温覚刺激機能、細胞増殖促進機能または組織修復機能が含まれる。対象とする組成物は、付与する機能に応じて、適宜選択することができる。例えば、温覚刺激機能を付与する組成物としては、皮膚外用組成物(化粧料、外用医薬部外品、外用医薬品)、貼付剤、口腔ケア製品、トイレタリー製品、ヘヤーケア製品(頭皮を対象とする製品を含む)、入浴剤、または飲食物等を例示することができる。細胞増殖促進機能を付与する対象の組成物としては口腔ケア製品等の口腔用組成物、外用組成物(化粧料、外用医薬部外品、外用医薬品)等を例示することができる。これらの組成物に配合するIPMPの割合は、制限されないものの、最終の組成物中に0.0001~0.5質量%の範囲で含まれるように、適宜設定調整することができる。好ましくは0.005~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%である。
【0027】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0029】
実験例1
被験化合物として、2-APB (2-Aminoethoxydiphenylborane)、dl-カンフル、及びIPMPを用いて、ヒトTRPV3を発現するHEK293細胞のこれらの被験化合物に対する応答を、[Ca2+]i測定により評価した。
なお、2-APB、及びdl-カンフルはいずれもTRPV3を活性化する作用が知られている化合物である。
【0030】
実験は、下記の方法を用いて行った。
(1)実験方法
(A)細胞培養
ヒト胎児腎細胞由来株HEK293細胞を、10%ウシ胎児血清、30単位/mlペニシリン、および30μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM製)で、5容量%CO2下で培養した。
【0031】
(B)細胞でのhTRPV3 cDNA発現
pCI-neoベクター(Promega Corp.製)を用いて、hTRPV3のcDNAを有する組換えプラスミド(ヒトTRPV3発現ベクター)を調製した。トランスフェクション試薬であるSuperFect Transfection Reagent(Qiagen製)を使用して、HEK293細胞に前記組換えプラスミドをトランスフェクトし、ヒト胎児腎細胞由来株HEK293細胞にTRPV3を強制発現させた。これをポリ-L-リジンでコーティングされたガラスカバースリップの上に播種し、18~36時間培養した後に、下記の[Ca2+]i測定に使用した。
【0032】
(C)細胞内の遊離Ca2+濃度測定([Ca2+]i測定)
2mMのカルシウムを含有するHEPES緩衝生理食塩水(HBS)(107 mM NaCl、6 mM KCl、1.2 mM MgSO4、2 mM CaCl2、11.5 mM D-グルコース、および5 mM HEPESを水に溶解後、NaOHでpH7.4に調整した水溶液)に、カルシウム感受性蛍光色素であるFura2-AM(1μM,Sigma社製)を添加して調製した水溶液を用いて、トランスフェクトしたHEK293細胞を、37℃のCO2インキュベーターにて30分間インキュベートした。斯くして当該HEK293細胞にFura2-AMを取り込ませた後、前記HEPES緩衝生理食塩水(2mMカルシウム水溶液)で洗浄し、[Ca2+]i測定に供した。
【0033】
測定は、前記室温で行い、細胞の蛍光画像を記録し、Caイメージングシステム(cellSenseDemension, オリンパス社製)で分析した。具体的には、細胞を前記HEPES緩衝生理食塩水(2mMカルシウム水溶液)で還流した後、被験物質を約90秒間、還流適用し、細胞内Caイオン濃度の変化を、Caイメージングシステムにて測定し(励起波長:340nm及び380nm、測定波長:510nm)、340nmで励起したときの蛍光強度と380nmで励起したときの蛍光強度との比(340nm/380nmの蛍光比:ratio)を求めた。
【0034】
【0035】
表1は、[Ca2+]i測定において、ヒトTRPV3を発現するHEK293細胞(n=11~29)に各濃度の被験化合物を適用した際のFura-2比(340nm/380nmの蛍光比)を測定し、その被験化合物含有HEPES緩衝生理食塩水還流後のFura-2比の最大値と被験化合物を含まないHEPES緩衝生理食塩水(コントロール)のFura-2比との差(Δratio)の平均値を算出した結果を示す。
【0036】
この結果から、TRPV3活性化剤として知られている2-APB、及びdl-カンフルと同様に、IPMPの適用により、TRPV3発現細胞の[Ca2+]iが増加することが確認された。その活性化の程度は、2-APBには劣るものの、dl-カンフルよりも優位に優れていた。またTRPV3発現細胞の[Ca2+]iは、適用するIPMPの濃度依存的に増加することが確認された。