(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の試料台の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250417BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2024518198
(86)(22)【出願日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2023044323
(87)【国際公開番号】W WO2024180858
(87)【国際公開日】2024-09-06
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/007182
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】一野 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】魏 嘉興
(72)【発明者】
【氏名】田中 優貴
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 友昭
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150186(JP,A)
【文献】特開2008-177285(JP,A)
【文献】特開2017-084523(JP,A)
【文献】特開2016-072477(JP,A)
【文献】特開2020-126900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部の処理室の内部に配置され、その上面に処理対象のウエハが載置される試料台を有し、前記処理室の内部にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理装置であって、
前記試料台の内部に配置された円筒形または円板形を有する金属製の基材と、
前記基材の上面に配置され、誘電体材料により構成され、前記ウエハが載置される載置面を構成する誘電体膜と、
前記誘電体膜の内部に配置された膜状のヒータと、
前記基材の内部に、前記基材の中心周りに同心状または螺旋状に多重に配置され、その内部を冷媒が通流する冷媒流路と、
前記冷媒流路と前記ヒータとの間の前記基材の内部で、前記中心周りに多重に配置され、その内部が所定の真空度に低減されて密封された少なくとも1つの円弧状の空間と、を備え、
多重に配置された前記円弧状の空間同士の間の前記基材の部分の領域である架橋部は、上方から見て、隣接する2つの前記冷媒流路同士の間で、前記冷媒流路同士を区切る前記基材の中間部分の領域に投影されて重なる位置に配置さ
れ、
前記架橋部を挟んで隣接して配置された2つの前記円弧状の空間を連通する連通路を備えた、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
請求
項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記連通路の開口の上下方向の大きさは、連通される前記円弧状の空間の上端から下端までの大きさに等しくされたプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求
項1また
は2に記載のプラズマ処理装置であって、
多重に配置された前記円弧状の空間同士の間に前記基材の部分の領域であって多重に配置された複数の架橋部と、
複数の架橋部の各々に配置された複数の前記連通路を備え、
前記複数の連通路の開口が前記基材の中心から外周に向かう方向についての投影面が重なって配置された、プラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記架橋部の半径方向の大きさは前記冷媒流路の隣接する2つの流路同士の間の前記中間部分の半径方向の大きさより小さくされた、プラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記基材の上面と前記円弧状の空間の上端との間の距離は、前記冷媒流路の上端と前記円弧状の空間の下端との間の距離よりも大きくされた、プラズマ処理装置。
【請求項6】
真空容器の内部の処理室の内部に配置され、その上面に処理対象のウエハが載置される試料台を有し、前記処理室の内部にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理装置の試料台の製造方法であって、
前記試料台は、
前記試料台の内部に配置された円筒形または円板形を有する金属製の基材と、
前記基材の上面に配置され、誘電体材料により構成されて前記ウエハが載置される載置面を構成する誘電体膜と、
前記誘電体膜の内部に配置された膜状のヒータと、
前記基材の内部に前記基材の中心周りに同心状または螺旋状に多重に配置され、その内部を冷媒が通流する冷媒流路と、
前記冷媒流路と前記ヒータとの間の前記基材の内部で、前記中心周りに多重に配置され、その内部が所定の真空度に低減されて密封された少なくとも1つの円弧状の空間と、を備え、
多重に配置された前記円弧状の空間同士の間の前記基材の部分の領域である架橋部は、上方から見て、隣接する2つの前記冷媒流路同士の間でこれらを区切る前記基材の中間部分の領域に投影されて重なるものであって、
前記円弧状の空間は、接合されて前記基材を構成する上方部材および下方部材の少なくとも一方の部材に予め形成された凹み部と他方の部材とを、前記所定の真空度に近似した空間内で接合して形成さ
れ、
前記架橋部を挟んで隣接して配置された2つの前記円弧状の空間を連通する連通路を備えた、
プラズマ処理装置の試料台の製造方法。
【請求項7】
請求
項6に記載のプラズマ処理装置の試料台の製造方法であって、
前記連通路の開口の上下方向の大きさは、連通される前記円弧状の空間の上端から下端までの大きさに等しくされたプラズマ処理装置の試料台の製造方法。
【請求項8】
請求
項6また
は7に記載のプラズマ処理装置の試料台の製造方法であって、
多重に配置された前記円弧状の空間同士の間に前記基材の部分の領域であって多重に配置された複数の架橋部と、
複数の架橋部の各々に配置された複数の前記連通路を備え、
前記複数の連通路の開口が前記基材の中心から外周に向かう方向についての投影面が重なって配置された、プラズマ処理装置の試料台の製造方法。
【請求項9】
請求
項6に記載のプラズマ処理装置の試料台の製造方法であって、
前記架橋部の半径方向の大きさは前記冷媒流路の隣接する2つの流路同士の間の前記中間部分の半径方向の大きさより小さくされた、プラズマ処理装置の試料台の製造方法。
【請求項10】
請求
項6に記載のプラズマ処理装置の試料台の製造方法であって、
前記基材の上面と前記円弧状の空間の上端との間の距離は、前記冷媒流路の上端と前記円弧状の空間の下端との間の距離よりも大きくされた、プラズマ処理装置の試料台の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の試料台の製造方法に係り、特に半導体基板などの被処理材の加工に好適なプラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の試料台の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、プラズマを用いたドライエッチングが行われる場合がある。ドライエッチングを行うためのプラズマ処理装置は様々な方式が使用されている。
【0003】
一般に、プラズマ処理装置は、真空処理室、真空処理室に接続されたガス供給装置、真空処理室の内部の圧力を所望の値に維持する真空排気装置、被処理材である試料(半導体ウエハ)がその上面に載置される電極(以下、試料台)、真空処理室の内部にプラズマを発生させるための電界または磁界を形成し供給するプラズマ形成部等から構成されている。真空処理室の内部には、ガス導入口を有するシャワープレートのような部材が配置され、ガス供給装置からの処理ガスはシャワープレートの複数のガス導入口を介して真空処理室の内部に供給される様に構成されている。試料であるウエハの表面には予め処理対象の膜層を含む複数層の膜が形成されているものとする。プラズマ形成部から供給された電界または磁界を用いて、真空処理室内部に供給された処理ガスを励起し、解離あるいは電離させてプラズマ化することで、試料台の上面に保持されたウエハの表面に形成された処理対象の膜層のエッチング処理が行われる。
【0004】
ウエハをその上面に載置する試料台は、静電気力でウエハを試料台の上面を構成する載置面の上面に吸着して保持する機能、試料台の内部に配置された流路内を循環して通流する冷媒やウエハの裏面と試料台の上面との間に供給される伝熱性のガス等を用いてウエハの温度をエッチング処理に適した範囲内の値に調節する機能、高周波電力を試料台内部の電極に供給してバイアス電位を形成しウエハにプラズマ中のイオンを引き込んで上下方向についてエッチングを促進する機能を持つものがある。試料台によるウエハの温度を調節する機能として、試料台の上面に配置された誘電体材料を用いて構成された膜の内部に膜状のヒータを配置し、ヒータに供給する電流の量を調節して所望のウエハの温度または所望のウエハの温度の分布を実現して、ウエハの上の処理対象の膜層のエッチング処理を行うことが考えられている。このような技術(ヒータによるウエハ温度の制御技術)では、ウエハの温度またはウエハの温度の分布を、試料台の内部に配置された冷媒の温度を変更する場合よりも高速に変更することができるという利点がある。
【0005】
このような技術の一例として、例えば、特開2011-258614号公報(特許文献1)に開示のものが知られている。本特許文献1の例では、試料台の内部に配置された金属製の基材と、この基材の内部に形成され、冷媒を流通させる冷媒流路と、基材上面に配置され溶射により形成された誘電体の膜と、この誘電体製の膜内部に配置された膜状のヒータと、誘電体膜上に配置された接着層と、この接着層によって誘電体膜上に接続されたセラミクス等の誘電体材料製の焼結板とを備える試料台の構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の技術は、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じていた。
【0008】
すなわち、特許文献1では、試料台の上面において、金属と膜状のヒータを内側に含む誘電体製の膜が、金属製の基材の上面全体を被覆した構成である。この構成では、誘電体製の膜内部のヒータと基材内部の冷媒流路との間でヒータからの熱が逃げ易い構成である。このため、ウエハ温度または試料台温度を低下させる場合においてヒータによる熱量は速やかに基材内部に伝達され冷媒流路を流れる冷媒との間で熱交換可能な構成でもある。
【0009】
一方、ウエハの温度を所望の値に上昇させ或いは保持しようとする場合、ヒータは基材に伝達される熱量を含めた大きな量の発熱をすることが必要となる。このため、試料台またはウエハの温度を増大させてウエハを処理した後に温度を急速に低下する必要がない場合には、ヒータの消費電力が大きくなってしまう。また、ヒータにより実現するウエハの温度が大きくなる(高くなる)に伴って、ウエハの温度を上昇させ保持することに貢献しない基材に伝達される熱量も大きくなるため、必要以上に大きな容量のヒータ用電源が必要になる。
【0010】
このように、特許文献1の技術では、試料台またはウエハの温度を増加させるヒータを駆動するための消費電力が大きかったため、プラズマ処理装置の運転コストが高かったという問題について考慮されていなかった。
【0011】
本開示の目的は、以上の課題を鑑みたものであって、試料台の内部のヒータによるウエハ温度の上昇あるいは温度の保持を高い効率で行え、消費電力の増大を抑制できる技術(プラズマ処理装置またはプラズマ処理装置の試料台の製造方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態によれば、以下の技術が提供される。
【0013】
真空容器の内部の処理室の内部に配置され、その上面に処理対象のウエハが載置される試料台を有し、前記処理室の内部にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台の内部に配置された円筒形または円板形を有する金属製の基材と、前記基材の上面に配置され、誘電体材料により構成され、前記ウエハが載置される載置面を構成する誘電体膜と、前記誘電体膜の内部に配置された膜状のヒータと、前記基材の内部に、前記基材の中心周りに同心状または螺旋状に多重に配置され、その内部を冷媒が通流する冷媒流路と、前記冷媒流路と前記ヒータとの間の前記基材の内部で、前記中心周りに多重に配置され、その内部が所定の真空度に低減されて密封された少なくとも1つの円弧状の空間と、を備え、多重に配置された前記円弧状の空間同士の間の前記基材の部分の領域である架橋部は、上方から見て、隣接する2つの前記冷媒流路同士の間で、前記冷媒流路同士を区切る前記基材の中間部分の領域に投影されて重なる位置に配置され、前記架橋部を挟んで隣接して配置された2つの前記円弧状の空間を連通する連通路を備えた。
【発明の効果】
【0014】
本願における開示のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0015】
すなわち、試料台の内部のヒータによるウエハ温度の上昇あるいは温度の保持を高い効率で行え、消費電力の増大を抑制できる。このことにより、プラズマ処理装置の処理の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す実施例の試料台の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図2に示す実施例の真空断熱空間と冷媒流路を説明する概略的な平面図である。
【
図4】
図3に示す実施例の変形例に係る試料台の真空断熱空間の構成の概略を示す平面図である。
【
図5】
図3に示す実施例の別の変形例に係る試料台の真空断熱空間の構成の概略を示す平面図である。
【
図6A】
図4、
図5に示す変形例に係る試料台内部の隣接する真空断熱空間同士を連通するスリット部を備えた架橋部の第1の構成例の概略を説明する斜視図である。
【
図6B】
図4,
図5に示す変形例に係る試料台内部の隣接する真空断熱空間同士を連通するスリット部を備えた架橋部の第2の構成例の概略を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を説明すれば、次の通りである。
【0018】
一実施の形態におけるプラズマ処理装置は、プラズマが形成される処理室を内部に備えた真空容器と、上記処理室内の下部に配置され、処理対象の半導体ウエハがその上に載せられる載置面を備えた試料台と、処理室内に供給されたガスを用いて処理室内にプラズマを形成するため電界または磁界を形成しこれを処理室に伝達する電磁界形成部と、を有する。
【0019】
試料台は、さらに、載置面を構成する円板形状の焼結体であって内部に静電気による処理対象の試料である半導体ウエハを吸着して焼結体上に保持する静電吸着用電極が配置された焼結体と、焼結体の下方に配置され誘電体材料により構成された誘電体膜と、誘電体膜の内部に膜状に形成され直流電力もしくは交流電力が内部に供給されるヒータと、その上面が誘電体膜により被覆された金属製の基材と、基材の内部にその中心について同心状または螺旋状に多重に配置され内部を冷媒が循環して通流する冷媒流路と、を備えている。さらに、基材の内部には、ヒータと冷媒流路の間に位置して、基材の中心に対して同心状または螺旋状に多重に配置された空間であって内部が所定の真空度の真空圧にされて処理室を含む外部から気密に封止されて区画された真空断熱空間を有している。このような真空断熱空間は、上下に接合されて基材の少なくとも一部を構成する上下の2つの部材であって、少なくとも一方の部材の接合される面に同心状または螺旋状に配置された凹部または溝部を備えた2つの部材同士を、所定の真空度またはこれに近似した真空度に減圧された環境内で接合し、凹み部または溝部により形成される上記空間が部材外部の空間と気密に封止することにより、形成される。
【0020】
上記上方または下方の部材が接合され基材を構成した状態で基材の強度を高くするため、凹部または溝部同士の間でこれらを区切る壁部の先端の面は他方の部材の接合面と対向してこれに接合する環状の面を構成する。他方の部材と接合する当該先端の面を有して隣接する真空断熱空間同士の間を区切る壁部を架橋部211と称する。さらに、試料台を上方から見た場合において、架橋部211先端の環状の接合面の投影領域は、基材内部の多重に配置された隣接する冷媒流路同士の金属製の基材の部材に重なって配置されている。すなわち、架橋部211は、隣接する冷媒流路の基材の部材の上方で下方の部材と接合されている。
【0021】
冷媒流路は、下方の部材の内部に配置されていても良く、下方の部材のさらに下方でこれに接続され基材を構成する別の部材の内部に配置されていても良い。
【0022】
上記の構成により、ヒータで形成された熱は、基材内部の多重に配置された各真空断熱空間を区切る架橋部211を経由して、架橋部211の接合された下方の部材を介して基材内部の冷媒流路を循環する冷媒との間で伝達され、熱交換が生じる。ヒータと冷媒流路との間に真空断熱空間が位置しているため熱伝達の経路の長さが長くなり、経路の断面積も小さくされる。このため、伝達される熱の量を小さくして、冷媒流路の冷媒に伝達されるヒータの熱の量を低減し、同じウエハ温度を実現するために必要なヒータ用の電力の増大を抑制できる。
【0023】
これにより、試料台内部のヒータによるウエハまたは試料台の温度の上昇あるいは温度の維持を高い効率で行うことが可能となる。さらに、エッチング処理を行うプラズマ処理装置の運転コストを小さくすることができる。
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0025】
以下、本開示の実施例を
図1、
図2および
図3を用いて説明する。
図1は、本開示の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1に示す実施例のウエハ載置用電極120の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。
図3は、
図2に示す実施例の真空断熱空間205と冷媒流路152を説明する概略的な平面図である。
【0026】
図1を用いて、本開示の実施例に係るプラズマ処理装置の構成例を説明する。特に、
図1に示すプラズマ処理装置は、プラズマを用いたエッチング処理装置を示している。エッチング処理装置は、プラズマを形成するための電界としてマイクロ波の電界を用いるものであって、マイクロ波の電界と磁界とを用いて処理室内にECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起してプラズマを形成し、プラズマを用いて半導体ウエハなどの基板状の試料の上面に予め形成された複数の膜層に含まれる処理対象の膜層を当該複数の膜層に含まれるマスク層をマスクとしてエッチング処理する。
【0027】
図1に示すプラズマ処理装置100は、プラズマが形成される処理室104を内部に備えた真空容器101を有している。処理室104は、少なくとも一部が円筒形状を有している。真空容器101は処理室104の外周を囲むように設けられており、真空容器101の上部は円筒形状を有している。真空容器101の円筒形の上部の側壁の上方には、円板形状を有した石英等の誘電体製の窓部材103が設けられている。窓部材103は、窓部材103の外周縁部の裏面を真空容器101の側壁の上端の上方に蓋部材として載せられており、真空容器101の一部を構成している。窓部材103の周縁部の裏面は、窓部材103が円筒形の真空容器101の側壁の上端の上方に載せられた状態で、円筒形の側壁の上端との間にOリング等のシール部材が挟まれて配置されている。これにより、真空容器101内部の処理室104内が排気されて減圧されると、窓部材103が真空容器101に押し付けられることでシール部材が変形し、真空容器101または処理室104の内部と真空容器101または処理室104の外部との間が気密に区画される。
【0028】
真空容器101の下部には、処理室104の下部の空間に面して円形の開口を有した真空排気口110が配置され、真空排気口110は真空容器101の下方に配置されて接続された真空排気装置(図示省略)と連通されている。真空容器101の上部の窓部材103の下面の下方には、円板状を有した石英等の誘電体製のシャワープレート102が備えられている。シャワープレート102は、処理室104に面して設けられており、処理室104の円形の天井面を構成している。シャワープレート102の中央部には、シャワープレート102を貫通して配置された複数のガス導入孔102aを有しており、ガス供給装置(図示省略)からの処理ガスとしてのエッチング処理用のガスがガス導入孔102aを通して処理室104に上方から導入される。ガス供給装置と接続されたガス供給管またはガス配管(図示省略)は、例えば、窓部材103とシャワープレート102との間の真空容器101の側壁に設けることができる。
【0029】
真空容器101の上部の上方側の箇所には、プラズマ116を処理室104の内部に生成するための電界および磁界を形成する電界および磁界形成部(以下、電界・磁界形成部という)160が配置されている。電界・磁界形成部160は、以下の構成を含んでプラズマエッチング装置100に備えられている。
【0030】
すなわち、電界・磁界形成部160は、導波管105と、円筒形部分1051と、を有している。導波管105は、窓部材103の上方に配置され且つプラズマ116を生成するため処理室104内に導入される所定の周波数の高周波帯の電界が内部を伝播される。円筒形部分1051は、導波管105の下端部と窓部材103との間に配置され、窓部材103と同径または僅かに大きな径を有する。円筒形部分1051の円形の天井は窓部材103の上面の中央部の上方で窓部材103より径の小さい導波管105の下端部と接続されている。導波管105の下端部は円形導波管1052とされ、円形導波管1052の水平方向の断面は円形形状を有している。円筒形部分1051の内部の空間は導波管105の内部を伝播されてきた高周波帯の電界の特定のモードが生起される円筒形の空洞となっている。
【0031】
導波管105は、水平方向に軸を有して断面が矩形を有する方形導波管(矩形導波管)1053を備え、方形導波管1053の一端が上下方向に軸を有する円形導波管1052の上端部に接続され、方形導波管1053の他方の端部に導波管105の内部を伝送される高周波の電界を発信して形成する電界発生用電源106が備えられている。電界発生用電源106の発振する電界の所定の周波数は、特に限定されないが、本実施の形態では2.45GHzのマイクロ波が使用される。
【0032】
処理室104の窓部材103の上方の導波管105の円形導波管1052および円筒形の空洞ならびに真空容器101の円筒形の側壁の外周側の周囲には、磁界を発生するコイル107がこれらを囲み上下方向に複数の段状に配置されている。コイル107は、直流電流が供給されて磁場を形成する電磁石およびヨークから構成されているソレノイドコイルである。
【0033】
上記の構成において、図示しないガス源と接続されたガス供給装置を通して流量、速度が調節された希釈用のガスおよび処理用のガスが、真空容器101に接続された図示しないガス供給管路を通して窓部材103とシャワープレート102との間の空間に供給され、処理対象のウエハが搬送されて密封された処理室104内にガス導入孔102aから処理室104内に処理用のガスが導入される。また、処理室104は、真空排気装置の動作により真空排気口110から処理室104の内部のガスが排気されて減圧される。処理室104の内部の圧力は、ガス導入孔102aからのガス量と排気されるガス量とのバランスにより所定の範囲の圧力に調節される。
【0034】
電界発生用電源106より発振されたマイクロ波の電界は、導波管105の内部を伝播して窓部材103およびシャワープレート102を透過して、処理室104に上方から下向きに供給される。さらに、コイル107に供給された直流電流により生起された磁界が処理室104内に供給され、マイクロ波の電界と相互作用を生じさせ、ECR(Electron Cyclotron Resonance)を生起する。ECRにより、処理用のガスの原子または分子が励起され、解離または電離して処理室104内にプラズマ116が生成される。
【0035】
プラズマ116が形成される空間の下方の処理室104の下部には、試料台を構成するウエハ載置用電極(第1の電極)120が配置されている。ウエハ載置用電極120は、基材108のその上部の中央部が外周側より上面が高くされた円筒形の突起(凸状)部分を備えており、凸状部の上面に試料(処理対象)である半導体ウエハ(以降、単にウエハとも言う)109が載せられる載置面120aを備えている(
図2参照)。載置面120aは、シャワープレート102または窓部材103に対向するように配置されている。
【0036】
図2に示すように、ウエハ載置用電極120の上部を構成する基材108の凸部の上面120bが誘電体膜140で被覆され、誘電体層140の上面が載置面120aを構成する。誘電体層140は複数の層およびこれらを構成する複数の材料から構成され、特定の層の内部には、
図1に示す高周波フィルタ125を介して直流電源126と接続された静電吸着用の複数の導電体製の膜である導電体膜111が配置されている。ウエハ載置用電極120は、サセプタリング113により保持される。接地箇所112は、基準電位としての接地電位と接続される箇所を示している。
【0037】
ここで、導電体膜111は、膜状の静電吸着用電極である。導電体膜111は、静電気による半導体ウエハ吸着用の直流電力が内部に供給され、導電体膜111を覆う誘電体層140の特定の層の上部を挟んでウエハ109を吸着させる静電気力を形成する。本実施例の導電体膜111は、上方から視て、円形形状または円形形状とみなせる程度に近似した形状を有しており、相互に所定の水平方向の距離だけ距離をあけて配置され、絶縁された複数の膜である。これにより、各導電体膜111の領域毎に異なる静電気力を形成することも可能となり、領域に応じでウエハ109を吸着する作用の大きさを異ならせることができる。
【0038】
本実施例において、導電体膜111を構成する複数の膜状の電極は、双極型でも、単極型でもよい。双極型の場合、複数の膜状の電極の一方と他方とには異なる極性が付与される。単極型の場合、複数の膜状の電極の一方と他方とには同じ極性が付与される。
図1では、単一の導電体膜111のみが開示されているが、本実施例は双極型の静電吸着電極として各々異なる極性が付与される複数の導電体膜111が誘電体層140の特定の層の内部に配置される。
【0039】
図1に示すように、ウエハ載置用電極120の内部に配置された金属等の導電体製の円形、円板形または円筒形状を有した基材108は、高周波電源124と整合器129を介して同軸ケーブル等の配線を含む給電経路を通して接続されている。高周波電源(第1の高周波電源)124と整合器129とは、高周波フィルタ125と導電体膜111との間の距離より近い箇所に配置されている。さらに、高周波電源124は、接地箇所112において基準電位としての接地電位に接続されている。
【0040】
本実施例において、ウエハ109の処理中には、高周波電源124からの所定の周波数の高周波電力が基材108に供給され、ウエハ載置用電極120の誘電体層140の上面の上に吸着されて保持されたウエハ109の上方にプラズマ116の電位との差に応じた分布を有するバイアス電位が形成される。言い換えると、試料台は、プラズマ116が形成されている間に高周波電源124から高周波電力が供給されるウエハ載置用電極120を有している。
【0041】
また、ウエハ載置用電極120の誘電体層140を構成する別の層の内部には、後述の通り、載置面120aの表面の温度またはウエハ109の温度を調節する複数の膜状のヒータ201が配置されている。本実施例では、この別の層は導電体膜111が配置される特定の層の下方に配置された層となっている。このヒータ201には電力を供給するヒータ電極用直流電源127が電気的に接続されている。ヒータ電極用直流電源127は、接地箇所112において基準電位としての接地電位に接続されている。
【0042】
さらに、基材108の内部には、ウエハ載置用電極120を処理に適した範囲の温度にするために、冷媒流路152が配置されている。冷媒流路152は、基材108またはウエハ載置用電極120の上下方向の中心軸周りに螺旋状または同心状に多重に配置され、冷媒流路152の内部には、温度が所定の範囲に調節された冷媒が通流する。基材108に伝達された熱が冷媒との間で、所謂、熱交換されることで、基材108に伝えられたヒータ201による熱が冷媒によりウエハ載置用電極120の外部に取り出され、基材108の内部の熱が低減される。
【0043】
冷媒流路152のウエハ載置用電極120への入口及び出口は、プラズマ処理装置100が設置される建屋の床面の下方に配置された図示しない冷凍サイクルを備えた温度調節器(温調器203:
図2参照)と管路300(
図2参照))とに接続されて、冷媒が温度調節器とウエハ載置用電極120の冷媒流路152との間を循環して通流する。冷媒流路152を通り熱交換により温度が変化した冷媒は、管路を介し温度調節器に流入し、冷凍サイクルとの間の熱交換によって所定の範囲内の温度に冷却された後に、基材108の内部の冷媒流路152に供給されて循環する。
【0044】
本実施例では、電界・磁界形成部160の電界発生用電源106、コイル107、高周波電源124、高周波フィルタ125、直流電源126、整合器129、或いはヒータ電極用直流電源127、冷媒温度を調節する温度調節器、さらに後述する真空排気装置やガス供給量を調節するマスフローコントローラ等のプラズマ処理装置100の動作を調節する装置は、各々が出力や流量、圧力等の動作の状態を検知する検知器を備えると共に、制御器170と有線または無線を介して通信可能に接続されている。これら装置の各々に備えられた検知器から出力される当該動作の状態を示す信号が制御器170に伝達されると、制御器170の演算器は、制御器170の内部の記憶装置に記憶されたソフトウエアを読み出して実行する。制御器170の演算器は、ソフトウエアによって記述されたアルゴリズムに基づいて、受信した検知器の信号からその状態の量を検出し、これを適切な値に調節するための指令信号を算出して電界・磁界調節系あるいは圧力調節系等に発信する。指令信号を受信した電界・磁界調節系あるいは圧力調節系等に含まれる装置は指令信号に応じて動作を調節する。
【0045】
このようなプラズマ装置100では、図示されないが、真空容器101の側壁に別の真空容器である真空搬送容器の内部の真空搬送室が連結されている。真空搬送室は、処理室104と同様の圧力まで減圧されており、真空搬送室の内部にウエハ搬送用のロボットが配置されている。真空搬送室と処理室104との間を連通する通路であるゲートである真空搬送室内に配置されたゲートバルブが設けられている。処理前のウエハ109はロボットのアーム先端の上に載せられる。アーム先端の上に載せられた処理前のウエハ109は、ゲートバルブが開放されると、アームの伸長によって、ゲート内を通りアーム先端の上に載せられた状態で、処理室104の内部に搬入される。さらに、処理室104の内部のウエハ載置用電極120の載置面120aの上方まで搬送されたウエハ109は、リフトピンの上下の移動によりリフトピンの上に受け渡される。処理前のウエハ109は、さらに、載置面120a上に載せられた後、直流電源126から印加される直流電力により形成された静電気力によってウエハ載置用電極120の載置面120aに吸着されて保持される。
【0046】
アームの収縮によって処理室104から真空搬送室の内部に搬送用ロボットが退室した後、ゲートバルブがゲートを真空搬送室から気密に閉塞して、処理室104の内部が密閉される。この状態で、エッチング処理用のガスがガス源と真空容器101との間を接続するガス配管から構成されたガス供給用の管路を通り処理室104内に供給される。ガス配管の経路上には、内部にガスが流れる流路と、流路上に配置されたバルブを有した流路調節器であるマスフローコントローラ(図示省略)とが配置される。マスフローコントローラは、流路の断面積を増減または開閉して流量を所望の範囲内の値に調節する。これにより、その流量または速度が調節されたガスは、ガス配管の端部に接続された真空容器101の側壁に設けた流路から窓部材103と石英製のシャワープレート102の間のすき間の空間に導入される。導入されたガスは、この空間内で拡散した後にシャワープレート102のガス導入孔102aを通して処理室104に導入される。
【0047】
処理室104の内部は、真空排気口110に連結された真空排気装置の動作により、真空排気口110を通して内部のガスや粒子が排気されている。シャワープレート102のガス導入孔102aからのガスの供給量と真空排気口110からの排気量とのバランスに応じて、処理室104内がウエハ109の処理に適した範囲内の所定の値に調整される。
【0048】
また、ウエハ109が吸着保持されている間、ウエハ109とウエハ載置用電極120の載置面120aである誘電体膜140の上面との間のすき間には、誘電体膜140の上面の図示しない開口からHe(ヘリウム)などの熱伝達性を有したガスが供給される。これにより、ウエハ109とウエハ載置用電極120との間の熱伝達が促進される。なお、所定の範囲内の温度に調節された冷媒がウエハ載置用電極120の電極基材(単に、基材とも称する場合もある)108内に配置された冷媒流路152内を通流して循環することで、ウエハ載置用電極120または電極基材108の温度はウエハ109が載置される前に予め調節されている。したがって、熱容量の大きなウエハ載置用電極120または電極基材108との間で熱伝達がされることで、処理前にウエハ109の温度はこれらの温度に近接するように調節される。また、処理の開始後も、ウエハ109からの熱がウエハ載置用電極120または電極基材108に伝達されて、ウエハ109の温度が調節される。
【0049】
この状態で、処理室104の内部にマイクロ波の電界と磁界とが供給されて、ガスを用いてプラズマ116が生成される。プラズマ116が形成されると、電極基材108に高周波電源124から高周波(RF)電力が供給され、ウエハ109の上面の上方にバイアス電位が形成されてプラズマ116の電位との間の電位差に応じてプラズマ116内のイオンなどの荷電粒子がウエハ109の上面に誘引される。さらに、荷電粒子が、ウエハ109の上面に予め配置されたマスクおよび処理対象の膜層を含む膜構造におけるマスクから露出した処理対象の膜層の表面と衝突して、処理対象の膜層の表面のエッチング処理が行われる。エッチング処理中は、処理室104内に導入された処理用のガスや処理中に発生した反応生成物の粒子が真空排気口110から排気される。
【0050】
処理対象の膜層のエッチング処理が進行して、処理対象の膜層のエッチング量が所定のエッチング量まで達したこと、または、処理対象の膜層の膜厚が残り膜厚さまで達したことが図示しない終点検出器や膜厚さ検出器により検出されると、高周波電源124からの高周波電力の供給が停止され、電界発生用電源106およびコイル107への電力の供給が停止され、プラズマ116が消火されて、エッチング処理が停止される。その後、ウエハ109を吸着させるための導電体膜111に、直流電源126から処理中とは逆の電位となるように電力が供給され、静電吸着力の除電処理が実施される。その後、処理室104の内部に希ガスが導入されて、処理室104の内部の処理用のガスが希ガスと置換される。
【0051】
そして、ウエハ109がウエハ載置用電極120の載置面120aからリフトピンにより持ち上げられた後、ゲートバルブが開放されて、ゲートを通って処理室104内に進入した搬送用ロボットのアーム先端にウエハ109が受け渡される。ウエハ109は、アームの収縮によって、処理室104の外部に搬出されて、真空搬送室の内部に搬入される。処理されるべき別のウエハ109が在る場合には、別のウエハ109が搬送用ロボットにより搬入されて、上記と同様に処理が行われる。別のウエハ109が無い場合には、ゲートバルブが気密にゲートを閉塞して処理室104が密封されて処理室104での処理が終了する。
【0052】
図2に示すように、本実施例のウエハ載置用電極120は、基材108と誘電体層140とを備えて構成されている。基材108は、円板形状とされ、アルミニウム(Al)またはチタン(Ti)等の金属またはその合金から構成される。誘電体層140は、基材108の上面120bに接合されて配置され、複数の膜状のヒータ201と複数の静電吸着用電極202とが内部に配置されたAl2O3等の誘電体材料の複数の層を上下に含むように構成されている。誘電体層140に内部に形成される導電体膜111は、複数の膜状のヒータ201と複数の静電吸着用電極202とを含む。
【0053】
基材108の内部には、冷媒が内部を流れる冷媒通路である冷媒流路152が基材108の上下方向の中心軸周りに同心円状またはらせん状に配置されている。冷媒流路152は、冷媒が導入される入口及び排出される出口が真空容器101の外部の温調器203と管路300により連結されている。温調器203が、冷媒流路152を通り循環される冷媒の流量(速度)や冷媒の温度をコントローラ170からの指令信号に応じて調節する。
【0054】
本実施例の冷媒流路152は、基材108を構成する円板形または円筒形を有する金属製の中間部材208と下部部材209とが接合面204にて、例えばろう付け(brazing)や拡散接合(Diffusion welding)などの接合手法により、接合されて構成される。
図2に示す実施例では、冷媒流路152は、下部部材209の上面から下方に凹まされた凹み(へこみ)或いは溝が上下方向の中心軸に対して同心状301あるいは螺旋状302に多重に形成される。下部部材209の上面が中間部材208と接合された状態で、凹みまたは溝の上端部が中間部材208の底面で覆われて蓋をされ、隣接する凹みまたは溝同士の間を区切りその側壁を構成る金属製の部分(中間部分)の上端面が中間部材208と気密に接合されることで、上記同心状または螺旋状の多重な冷媒流路152の形状が構成される。
【0055】
さらに、中間部材208の上方の基材108の内部には、ヒータ201と冷媒流路152との間の熱の伝達を抑制するために、微小な上下方向の高さを有する真空断熱空間(真空断熱層)205が、基材108の上下方向の中心軸の周りに同心円状301に配置されている。真空断熱空間205は、接合面206にて、例えばろう付けや拡散接合などの接合手法により、上部部材207と中間部材208とが接合されることで、形成される。本実施例において、上部部材207と中間部材208との接合は、例えば、不図示の接合処理容器の内側で所定の真空度に減圧された真空環境で行われ、真空断熱空間205の微小な隙間の内部は当該真空度の圧力に近い圧力が維持された密封されて閉じられた空間として形成される。
【0056】
言い換えると、プラズマ処理装置の試料台の製造方法において、真空断熱空間205を構成する円弧状の空間は、接合されて基材108を構成する上方部材207および下方部材(この例では、中間部材208に対応する)の少なくとも一方の部材に予め形成された凹み部と他方の部材とを、所定の真空度に近似した接合処理容器の空間内で接合して形成される。真空断熱空間205は、螺旋状302に形成されてもよい。
【0057】
真空断熱空間205は、処理室104と連通させることで処理室104と同等の真空度の圧力を得ることも可能である。この場合には、プラズマ116の粒子が真空断熱空間205の内部に進入したり真空断熱空間205の内部の表面のダメージやデポの堆積が生じたりして、真空断熱空間205の熱的経時変化や機械的経時変化が懸念されるので注意が必要である。
【0058】
一方、真空断熱空間205に真空容器101とは別の管路を接続し、管路に真空ポンプや真空計を配置して排気して減圧された圧力を得ることが可能である。この場合には、プラズマ処理装置100を構成するデバイスが増えるためにコストが増大してしまうことや、運転時に常に適切な圧力を維持するために設備の管理が必要となる。
【0059】
本実施例では、プラズマ処理装置100を製造する工程の1つとして、所定の真空圧が維持された接合処理容器内部の室内で基材108または真空断熱空間205を内部の空間が密封するように形成する。このことで、真空断熱空間205の経時変化やコストの増大が低減または抑制される。
【0060】
真空断熱空間205は、基材108の強度を担保するため、接合面を構成する上部部材207の底面に多重に形成された隣接する凹みあるいは溝同士の間でこれらを区分けて凹みや溝の環状の側壁を構成する部分の下端面が中間部材208の上面との間で接合される接合面を有して、当該接合によって形成される空間の内側が処理室104に対して気密に封止されて密封される。環状に配置される真空断熱空間205の各空間同士の間の接合される部分を架橋部211と称する。
【0061】
図2および
図3に示すように、環状の架橋部211の接合端(
図2のAで示す)は、下部部材209内部で円弧状に配置される隣接する冷媒流路152の2つの流路同士の間でこれらを区切る下部部材209の部分(中間部分、
図2のBで示す)の上方に位置している。すなわち、上方から見た場合に、上部部材207、中間部材208、下部部材209が互いに接合されて基材108が構成された状態で、上部部材208の環状の各架橋部211の接合端Aの領域は、同じく環状の隣接する2つの冷媒流路152同士の間の下部部材209の中間部分Bの上端の領域に重なって投影される。さらに、中間部材208に対する接合面206を構成する真空断熱空間205の環状の架橋部211の接合端Aのウエハ載置用電極120の径方向における幅は、ヒータ201と冷媒流路152との間の熱抵抗を高くするため、真空断熱空間205を気密に接合することが可能な範囲で最小な値にされる。
【0062】
言い換えると、真空断熱空間205は、冷媒流路152とヒータ201との間の基材108の内部で、基材108の上下方向の中心周りに、多重に配置され、その内部が所定の真空度に低減されて密封された少なくとも1つの円弧状の空間とを備えている。また、真空断熱空間205は、多重に配置された円弧状の空間同士の間の基材108の部分の領域(架橋部211)は、上方から見て、隣接する2つの冷媒流路152同士の間で2つの冷媒流路152を区切る基材108の中間部分の領域(中間部分B)に投影されて重なるように構成されている。また、真空断熱空間205の多重に配置された円弧状の空間同士の間の各架橋部211は、上方から見て、隣接する2つの冷媒流路152同士の間を区切る中間部分Bの各々に投影されて重なる位置に配置される様に構成されている。
【0063】
一方で、冷媒流路152の隣接する2つの流路同士の間の部分Bのウエハ載置用電極120の径方向における幅は、冷媒流路152を流れる冷媒が下部部材209の部分Bとの間で十分に熱交換できることが求められ、いたずらに小さくする必要はない。このことから、接合面Aの幅と接合面Bの幅とは、A(の幅)≦B(の幅)にされることが望ましい。言い換えると、架橋部211の半径方向の大きさ(A)は、冷媒流路152の隣接する2つの流路同士の間の中間部分の半径方向の大きさ(B)より小さくされている(A≦B)。
【0064】
ただし、接合端Aの領域の幅が小さいと、上部部材207と中間部材208または下部部材209と接合する工程において、これらに上下方向から機械的な荷重を加えた際に接合端Aに対して、接合させる或いは気密に封止するだけ十分な荷重が加えられず接合不良となる虞がある。一方、本実施例では、上方から見て環状の架橋部211の接合端Aの領域が同様に環状の中間部分Bの領域内に投影されるように配置され、上記荷重が接合端Aの領域に十分印加され、上部部材207と中間部材208または下部部材209との間の接合の不良の生起を抑制することができる。
【0065】
このように基材208が構成されたウエハ載置電極120では、ヒータ201と冷媒流路152との間で熱が伝達される際に、架橋部211の接合端Aの領域の多寡により、接合面206を構成する接合端Aを有する架橋部211を備えた上部部材207と中間部材208との間で単位時間当たりの熱の伝達される量(伝熱の効果)が影響を受ける。このため、ヒータ201からの発熱によりウエハ載置用電極120の載置面120aやウエハ109面上に現れる温度の分布が不均一となる虞がある。
【0066】
このような載置面120aやウエハ109の温度の分布のばらつきを低減するために、本実施例では、真空断熱空間205の上部の基材108の上下方向の厚さ(
図2のCで示す上部部材207の厚さ)が相対的に大きくされている。厚さCの基材108の上部の内部で載置面120aの面内方向についての温度のばらつきを低減することで、載置面120aやウエハ109の面内方向についての温度のバラつきや目標の温度からのズレを低減させることができる。
【0067】
一方、真空断熱空間205と冷媒流路152と間の上下方向の距離、すなわち本実施例では中間部材208の厚さD(
図2のDで示す)は、ウエハ載置電極120またはウエハ109の温度を低減する場合の温度の変化速度あるいは応答性を高くする上で、真空断熱空間205あるいは冷媒流路152を気密に形成可能でプラズマ処理装置100に求められる基材108の平面度を実現する強度を有することのできる最小の厚さであればよい。このことから、基材108内部の厚さCと厚さDの幅は、C≧Dの関係となることが望ましい。言い換えると、基材108の上面と真空断熱空間205の円弧状の空間の上端との間の距離Cは、冷媒流路152の上端と真空断熱空間205の円弧状の空間の下端との間の距離Dよりも大きくされている(C≧D)。
【0068】
以上の形態により、ヒータ201による発熱量は、真空断熱空間205の架橋部211を経由して冷媒流路152に流入することとなり、ヒータ201から見た冷媒流路152までの熱抵抗を大きくでき、意図的に冷却効果を抑えることが可能である。
【0069】
以上の構成を備えたことにより、本実施例では、ウエハ載置用電極120のヒータ201に電力を供給して載置面120aやウエハ109の温度を増大させる際に、基材108の内部の冷媒流路を通流する冷媒と熱交換される熱量を抑制して、より小さな電力でウエハ109を処理に適した温度にし、或いは、これを保持することが可能となる。また、上記の運転をするヒータ201に電力を印加するヒータ電極用直流電源127を過度に大きな電力容量または電流容量にすることを避け、載置面120aやウエハ109の高温保持を高効率に提供することが可能となる。
【0070】
次に、
図3に示す実施例の変形例を、
図4以下を用いて説明する。
【0071】
図4に示す変形例は、
図3に示す実施例と同様に、ウエハ載置電極120の基材108の内部に多重(本例では3重)に配置された真空断熱層空間205および架橋部211が配置される共に、スリット部210が備えられている。スリット部210は、円筒形または円板形状を有した基材108の上部部材207の中心から半径方向について異なる半径位置に多重に配置された真空断熱層空間205の半径方向について隣接する真空断熱層空間205同士の間を隔てて区画する架橋部211の内周側壁面と外周側壁面との間を貫通して、架橋部211で隔てられた2つの半径方向の位置に配置された多重の真空断熱層空間205同士を連通する。本変形例において、スリット部210を介して連通された異なる半径方向の位置に配置され隣接する真空断熱層空間205同士は、1つの所定の真空度の減圧された空間にされる。このようなスリット部210は、多重に配置されたもののうちの特定の隣接する2つの真空断熱層空間205同士の間を隔てる1つの架橋部211のみでなく、異なる半径方向の位置に配置された複数の架橋部211に配置されても良く、また1つの架橋部211に複数のスリット部210が備えられていても良い。
【0072】
図4に示す本例に示すウエハ載置電極120の基材108は、上部部材207と中間部材208および下部部材が上下方向に相互に接合されて形成される。
図2に示すウエハ載置電極120では、上部部材207の下部において所定の半径方向の幅および深さで同心状またはらせん状に配置され円形の平坦な下面に開口を有した溝が形成され、当該下面と中間部材208の平坦な上面とが当接されて、当該当接された箇所が接合面206として接合された結果、上部部材207の溝の内壁と中間部材208の上面とで囲まれた真空断熱層空間205が構成される。このような基材108の組み立ては、所定の真空度に減圧された図示していない接合用の処理容器の内部において、上部部材207および中間部材208とをろう付け(brazing)や拡散接合(Diffusion welding)等で接合させてことで行われ、所望の熱抵抗を得るものである。
【0073】
この組み立ての工程において、接合面206を介し当接する2つの部材に加熱や加圧等の高い熱や外力が付加されることから、接合面206には2つの部材の表面に残留していた水分等の物質が揮発してアウトガスが発生する虞がある。
図3に示す実施例において、このようなアウトガスが、相互に隔てられて多重に配置された真空断熱層空間205の各々の内部に滞留する場合が考えられる。ここで、各真空断熱層空間205のアウトガスの量が不均一である場合には、各真空断熱層空間205の圧力あるいは真空度がバラついてしまい、各真空断熱層空間205を介した冷媒流路152と半導体ウエハ109または載置面120aとの間の熱抵抗に差が生じてしまう。この結果、ウエハ載置電極120上に載せられた半導体ウエハ109の温度の分布がその面内方向についてバラついて不均一が生じることになる。
【0074】
図4に示す本例では、半径方向について異なる位置で多重に配置された真空断熱層空間205を連通させるスリット部210を備える。これにより、基材108を構成する上部部材207および中間部材208を接合させる際にアウトガスが発生し、真空断熱層空間205の内部に滞留しても、スリット部210により連通された多重の真空断熱層空間205の全体でアウトガスが分散される。このことで、アウトガスの生起による真空断熱層空間205の内部の圧力への影響が減され、真空断熱層空間205の内部を均一な圧力に近づけることが可能となる。
【0075】
また、
図4に示す本例では、同心状またはらせん状に多重に配置された真空断熱層空間205を異なる半径方向の位置で隔て区画する架橋部211は複数のスリット部210を備え、これらのスリット部211は同心状またはらせん状の配置の中心から放射状に外周側に向かう1つの半径方向の直線上に配置されている。つまり、上記中心から当該半径方向の直線の外周方向を見た場合に、複数の架橋部211の内周壁面および外周壁面の間を貫通するスリット部211の複数の開口の投影される領域が重なった位置に備えられている。これら複数のスリット部211の開口は、同じ寸法や形状であっても良く、また異なる形状、寸法であっても良く、上記中心から外周に向かう1つの直線上に各開口の領域が重なって配置することができる。
【0076】
図4に示す本例においても、基材108の上部部材207と中間部材208とが所定の真空度にされた容器内において接合面206で接合される。その際に接合面206からアウトガスが発生した場合、アウトガスは同心状またはらせん状に多重に形成される真空断熱層空間205あるいは上部部材207の底部に形成された多重の溝を隔てる架橋部211となる部分の底面と中間部材208との隙間から半径方向の中心側または外周側へ流出する。このようなアウトガスは、1つの放射状に伸びる半径方向上に多重に重なって配置されたスリット部210を通り、容易に架橋部211で隔てられた異なる半径位置の真空断熱層空間205に拡散する。このことで、効果的にアウトガスによる多重の真空断熱層空間205の内部の圧力のバラつきとこれによる半径方向或いは周方向についての基材108内部の熱伝達率のバラつきを抑制し、ウエハ109の温度の不均一を低減して、ウエハ109の表面内(平面内)の温度を均一化させることが可能である。
【0077】
また、
図4に示した例では、このように中心から放射状に延びる1つの半径方向の直線上に開口を重ねて各架橋部211を貫通する複数のスリット部210が配置されているが、このような複数スリット部210の集合は、
図5に示すように、複数備えることができる。
図5は、
図3に示す実施例の別の変形例に係る試料台の真空断熱空間の構成の概略を示す平面図である。
【0078】
本
図5の例では、上記複数のスリット部210が開口を重ねて配置される中心から外周に向かう直線は、基材108またはウエハ載置電極120の上下方向の中心軸の周りに均等な角度で3つ、つまり、中心軸に垂直な面上において2つの直線同士のなす角度が120°となる3つの直線の各々に其々の集合に属するスリット部210の開口が重なって配置されても良い。このように多重の真空断熱層空間205の隣接する各々を連通する通路の数や通路断面積を増大することで、連通され1つの空間にされた真空断熱層空間205内に、生起したアウトガスが効果的に拡散される。一方で、スリット部210およびその集合を多くすることは接合面206面積が低減することに繋がり基材108の機械的強度が低下する虞があることから、十分な強度を維持できる範囲でスリット部210を配置することが必要である。
【0079】
図6A、
図6Bを用いて、上記実施例および変形例のスリット部210の構成を説明する。
図6Aは、
図4、
図5に示す変形例に係る試料台内部の隣接する真空断熱空間同士を連通するスリット部を備えた架橋部の第1の構成例の概略を説明する斜視図である。
図6Bは、
図4,
図5に示す変形例に係る試料台内部の隣接する真空断熱空間同士を連通するスリット部を備えた架橋部の第2の構成例の概略を説明する斜視図である。
【0080】
図6A、
図6Bは、
図2に示すウエハ載置電極120において、多重に配置された真空断熱層空間205のうちの異なる半径位置に配置された2つのリング状の真空断熱層空間205により内周側と外周側と両側を挟まれてこれらを隔てて区画する架橋部211と、架橋部211を基材108の半径方向に貫通し両側の真空断熱層空間205同士を連通するスリット部210を模式的に示すものである。
図6Aに示されるE1はスリット部210の高さを示しており、スリット部210の高さE1が真空断熱層空間205の上端(天面)から下端(底面)まで達する高さE0を備える場合を示す(E1=E0)。つまり、
図6Aにおいて上方向であって、真空断熱層空間205またはその内周壁および外周壁を構成する架橋部211の上端(天面)から下端(底面)までの高さE0がスリット部210の開口の上下方向の大きさ(高さ)E1と同じであることを図示している。一方、
図6Bに示されるE2は、スリット部210の開口部の高さであって、その下端部は架橋部211の側壁面の上端(天面)から下端(底面)に至る途中の箇所までの大きさを有している。ここで、高さE2は高さE1および高さE0よりも小さい(E1>E2、E0>E2)ことが示されている。
【0081】
接合面206において上部部材207と中間部材208とを接合する。特に、高温で接合する場合には、接合面206において特定の領域や箇所で温度の値に増減(高低)が生じることがなく、所謂の温度スポットがなく、接合面206の全体で温度のばらつきが抑制された状態にすることが望ましい。この条件(温度スポットがない条件)では、複数の箇所、領域を有する接合面206において、上部部材207および中間部材208の接合の強度のバラつきが低減され、上部部材207および中間部材208の安定した接合の結果を得ることができる。
【0082】
しかしながら、
図6Bに示す第2の構成例の場合、スリット部210の開口部と下方の接合面206の間に架橋部211を構成する上部部材207の一部分が存在している。このため、このスリット部210の開口部下方の接合面206と、架橋部211の高さが真空断熱層空間205またはその内周壁および外周壁の上端(天面)から下端(底面)と同等である箇所とでの熱の伝達の量や特性が異なり、基材108の内部での上下方向の熱の伝達量に局所的なバラつきが生じてしまい、この箇所と他の場所との上方に載せられるウエハ109の温度不均一になるような箇所があることで接合が部分的に脆弱となる虞がある。そこで、本実施例および変形例では、スリット部210の高さE1は、真空断熱層空間205の上端(天面)から下端(底面)まで達する高さE0(E1=E0)を備えた構成にされている。
【0083】
上記の例では、真空断熱層空間205は、多重に配置された各々の冷媒流路152の周に、投影される領域が重なるように、空間が配置されている。すなわち、冷媒流路152の各周の直上方に架橋部211で区切られた環状の真空断熱空間205の周が重なって配置されている。真空断熱空間205と冷媒流路152との配置は、このような構成に限られず、円弧状の真空断熱空間205が下方の冷媒流路152の複数の周の上方に亘って位置して、当該空間を区切る架橋部211が冷媒流路152の複数の周の最外周の外側あるいは最内周の内側を区切る中間部分Bの上方に重なって投影される位置に配置されていても良い。
【0084】
さらに、環状に多重に配置された密封された真空断熱空間205は、単一の空間で構成されていても良いし、あるいは、複数の空間で構成されていてもよい。すなわち、周方向あるいは径方向に複数個の空間から構成されていても良い。真空断熱空間205は、同心状301に配置されたリング状の複数の空間であっても良いし、単一の螺旋状302の空間であっても良い。
【0085】
また、複数の周をなしてリング状に多重に配置された空間の各々の周が複数の円弧状の空間から構成されていても良いし、各円弧状の空間が中心から同じ半径方向の位置に配置されていなくても良い。これらの場合においても、円弧状の空間同士の間の架橋部211の領域が、上方から見て下方の隣接する冷媒流路152同士を区画し区切る中間部分Bの領域に重なっている。
【0086】
また、処理前に予めウエハ109の上面に配置される膜構造に含まれる処理対象の膜層の被エッチング材料はシリコン酸化膜であり、処理室104に供給される当該処理対象膜のエッチング用の処理ガスおよびクリーニング用のクリーニングガスとして、四フッ化メタンガス、酸素ガス、トリフルオロメタンガスが用いられる。また、処理対象の膜層の材料として、シリコン酸化膜だけでなく、ポリシリコン膜、フォトレジスト膜、反射防止有機膜、反射防止無機膜、有機系材料、無機系材料、シリコン酸化膜、窒化シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、Low-k材料、High-k材料、アモルファスカーボン膜、Si基板、メタル材料などを用いることができ、これらの場合においても同等の効果が得られる。
【0087】
また、エッチング用の処理ガスとしては、塩素ガス、臭化水素ガス、四フッ化メタンガス、三フッ化メタンガス、二フッ化メタンガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス、水素ガスなどを使用することができる。さらに、エッチング用の処理ガスとしては、アンモニアガス、八フッ化プロパンガス、三フッ化窒素ガス、六フッ化硫黄ガス、メタンガス、四フッ化シリコンガス、四塩化シリコンガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガスなどを使用することができる。
【0088】
また、本開示は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ウエハ載置用電極120は誘電体層140の内部に電流が供給されて、これらまたはこれらの上に載せられるウエハ109を加熱するヒータ201を備えて、当該ヒータ201の加熱によるウエハ109の温度の調節を制御器170が行っても良い。また、このような温度調節のために、ウエハ載置用電極120は、制御器170と通信可能に配置され、温度を検知する少なくとも1つの温度センサを、基材108の内部に備えても良い。
【0089】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本開示を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる。
【0090】
上記実施の形態では、処理室104内に周波数が2.45GHzのマイクロ波の電界とこれに併せてECRを形成できる磁界を供給し、処理用ガスを放電させてプラズマを形成する構成を説明した。しかしながら、上記実施の形態で説明した構成は、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を用いてプラズマを形成する場合であっても、上記の実施の形態などで説明したものと同様の作用・効果を奏することができる。また、プラズマ処理を行うその他のプラズマ処理装置、例えばプラズマCVD装置、アッシング装置、表面改質装置などで配置されるウエハ載置用電極に、上記実施の形態および変形例を適用した場合についても同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の試料台の製造方法に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0092】
100:プラズマエッチング装置、101:真空容器、102:シャワープレート、102a:ガス導入孔、103:誘電体窓、104:処理室、105:導波管、106:電界発生用電源、107:磁場発生コイル、108:電極基材、109:半導体ウエハ、110:真空排気口、111:導電体膜、112:接地箇所、113:サセプタリング、116:プラズマ、120:ウエハ載置用電極
120a:載置面、120b:上面、124:高周波電源、125:高周波フィルタ、126:静電吸着用直流電源、127:ヒータ用直流電源、129:整合器、140:誘電体膜、152:冷媒流路、160:電界・磁界形成部、170:制御器、201:ヒータ、202:静電吸着用電極、203:温調器、204:接合面、205:真空断熱層、206:接合面。