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特許7668766アルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物、半導体装置製造用基板、保護膜の形成方法、及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】アルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物、半導体装置製造用基板、保護膜の形成方法、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20250418BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20250418BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250418BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
H01L21/30 573
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C08G73/10
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022079075
(22)【出願日】2022-05-12
(65)【公開番号】P2023107180
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022008034
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】新井田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】澤村 昂志
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193325(JP,A)
【文献】特開2021-130763(JP,A)
【文献】特開2016-177262(JP,A)
【文献】特開平09-008078(JP,A)
【文献】特開2018-173521(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0555076(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/095
G03F 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(I)及び(II)のうちのいずれかで表されるフッ素原子及び水酸基を有する重合体、又は下記(III)で表されるフッ素原子を有する重合体と水酸基を有する重合体との混合物、
(I)下記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、
(II)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位とを有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、
(III)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体との混合物、及び
(B)有機溶剤
を含有するものであることを特徴とするアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化1】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化2】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化3】
(式中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化4】
【化5】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化6】
【請求項2】
前記一般式(1A)中のWに少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項3】
前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1E)で示される基であることを特徴とする請求項2に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化7】
【請求項4】
前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1F)で示される基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化8】
【請求項5】
さらに、(A’)成分として、下記一般式(4A)で示される繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(2C)で示される基のものである重合体(IV)を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化9】
(式中、Wは4価の有機基であり、Wは2価の有機基である。)
【化10】
(式中、Rは炭素数1~10の1価の有機基を表し、n1は0または1の整数を表し、n2およびn3は、1≦n2≦6および0≦n3≦6であり、かつ、1≦n2+n3≦6の関係を満たす。)
【請求項6】
前記(A)成分の重量平均分子量が、1000~10000であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項8】
前記保護膜形成組成物が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項9】
前記保護膜形成組成物が、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示す保護膜を与えるものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項10】
前記保護膜形成組成物が、前記保護膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、前記保護膜の剥がれが観察されないものであることを特徴とする請求項9に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【請求項11】
基板上に、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の保護膜形成組成物が硬化した保護膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
【請求項12】
半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする保護膜の形成方法。
【請求項13】
半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする保護膜の形成方法。
【請求項14】
前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の保護膜の形成方法。
【請求項15】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の保護膜の形成方法。
【請求項16】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(I-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項17】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(II-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成する工程、
(II-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項18】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(III-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(III-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(III-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(III-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項19】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(IV-1)被加工基板上に請求項1に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(IV-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(IV-3)前記無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成する工程、
(IV-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(IV-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(IV-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(IV-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項20】
前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項18又は請求項19に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記(I-6)工程、又は(II-6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記被加工基板にパターンを転写する工程を有することを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を有することを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項23に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項28】
前記被加工基板として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする請求項27に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程で使用されるウェットエッチング液に耐性を示す保護膜を与える保護膜形成組成物、該組成物を用いた半導体装置製造用基板、保護膜の形成方法、及び多層レジスト法によるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高集積化と高速度化は、汎用技術として光露光を用いたリソグラフィー技術(光リソグラフィー)における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化によって達成されてきた。このような微細な回路パターンを半導体装置基板(被加工基板)上に形成するためには、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられる。しかしながら、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しないため、近年では多層レジスト法による基板加工が一般化している。この方法は、フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この方法は、被加工基板上に有機樹脂含有組成物からなる有機下層膜材料を用いて塗布、焼成することにより有機下層膜(以下、有機膜)を成膜し、その上にケイ素含有樹脂含有組成物からなるレジスト中間膜材料を用いて塗布、焼成することによりケイ素含有膜(以下、ケイ素中間膜)として成膜し、その上に一般的な有機系フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜)を形成する。当該レジスト上層膜をパターニングした後、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行うと、有機系のレジスト上層膜はケイ素中間膜に対して良好なエッチング選択比を取ることが出来るため、レジスト上層膜パターンをケイ素中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持たないレジスト上層膜や、被加工基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト上層膜を用いても、通常、ケイ素中間膜はレジスト上層膜に比べて同等以下の膜厚であるため、容易にケイ素中間膜にパターンを転写することができる。続いてパターン転写されたケイ素中間膜をドライエッチングマスクとして酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングで有機下層膜にパターン転写すれば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機下層膜にパターン転写することができる。このパターン転写された有機下層膜パターンをフッ素系ガスや塩素系ガスなどを用いてドライエッチングで基板にパターン転写することが出来る。
【0004】
一方、半導体装置の製造工程における微細化は、光リソグラフィー用光源の波長に由来する本質的な限界に近づきつつある。そのため、近年においては微細化に頼らない半導体装置の高集積化が検討されており、その方法の一つとしてマルチゲート構造等の複雑な構造を有する半導体装置が検討されており、一部は既に実用化されている。このような構造を多層レジスト法で形成する場合、被加工基板上で形成されたホール、トレンチ、フィン等の微小パターンを空隙なく膜で埋め込んだり、段差やパターン密集部分とパターンのない領域を膜で埋め込んで平坦化(planarization)可能な有機膜材料を適用することが出来る。このような有機膜材料を用いて段差基板上に平坦な有機下層膜表面を形成することによって、その上に成膜するケイ素中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、光リソグラフィーの焦点裕度やその後の被加工基板の加工工程におけるマージン低下を抑制することが出来る。これにより、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。一方、単層レジスト法では、段差やパターンのある被加工基板を埋めるためには、上層レジスト膜の膜厚が厚くなり、それによる露光現像後のパターン倒れや、露光時の基板からの反射によりパターン形状劣化など、露光時のパターン形成裕度が狭くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが困難である。
【0005】
上記のような有機膜材料にはドライエッチングによる加工でアスペクト比の高いパターンを形成する必要があるため、有機膜には上記で述べた埋め込み・平坦化性能だけでなく、高いドライエッチング耐性も求められる。さらに有機膜の上のケイ素中間膜に対しても高いドライエッチング耐性が求められるため、スピンコートで形成されるケイ素中間膜よりもドライエッチング耐性が高いCVD、ALD法などで形成される無機系のハードマスクをケイ素中間膜として選択されることも多く、このハードマスクを形成する際の温度が通常300℃以上であるため、有機膜にはこれらに耐える高耐熱性も求められている。また、CVD、ALD法による無機系のハードマスク形成時に基板との剥がれが生じることがあるため被加工基板への密着力も求められている。プロセス裕度に優れた有機膜材料にはこれらの性能を具備することが重要となる。
【0006】
更に次世代の半導体装置の高速度化の手法として、例えば、歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等の精密材料の適用も検討され始めている。しかしながら、このような新規精密材料が適用されている被加工基板では、上記のような有機下層膜材料による平坦化膜形成時の条件、例えば空気中、300℃以上の成膜条件においては、空気中の酸素によって当該材料が腐食され、半導体装置の高速度化が材料設計どおりの性能を発揮することが出来ず、工業的な生産として成り立つ歩留まりに達成しない可能性がある。そこで、このような高温条件下の空気による基板の腐食に起因する歩留まりの低下を避けるため、不活性ガス中で成膜出来る有機下層膜材料が期待されている。更には、化学薬品を用いたウェットエッチングによる基板加工が必要とされる場合もあり、その場合、加工マスクとなる有機下層膜には、ウェットエッチング液耐性も求められることとなる。
【0007】
ここで、多層レジスト法に関してウェットエッチングプロセスに対応した材料が望まれる背景について、詳述する。半導体装置の性能向上のため、最先端の半導体装置では、3次元トランジスタや貫通配線等の技術が使用されている。このような半導体装置内の構造を形成するために使用されるパターニング工程においても、上記の多層レジスト法によるパターニングが行われている。このようなパターニングにおいては、パターン形成後、当該パターンにダメージを与えることなくケイ素中間膜を除去する工程が求められる場合がある。この除去が不十分である場合、即ち洗浄対象物を残存させたまま次工程の製造プロセスへウエハーを流品させた場合、デバイス製造歩留まりを確実に低下させてしまう。このように、素子の微細化に伴い、洗浄工程に要求される清浄度は高くなってきている。しかしながら、従来のケイ素中間膜の主要構成元素と半導体装置基板の主要構成元素はいずれもケイ素の場合が多く、ドライエッチングによりケイ素中間膜を選択的に除去しようとしても構成成分が近似しており、半導体装置基板へのダメージを抑えることは困難であった。この問題は、通常のフッ酸系剥離液を用いたウェットエッチングを行っても、解決することができない。そこで、半導体装置基板に対してダメージを与えない剥離液として、半導体製造プロセスにて一般的に使用されているSC1(Standard Clean-1)と呼ばれるアルカリ性過酸化水素水のウェットエッチング液としての適用が考えられる。この場合、逆に有機下層膜にはアルカリ性過酸化水素水耐性が必要となる。
【0008】
他に、有機下層膜をエッチングマスクとして、アルカリ性過酸化水素水を用いて窒化チタン等の被加工基板をウェットエッチングするプロセスが検討されている。この場合も、有機下層膜にはアルカリ性過酸化水素水耐性が必要となる。
【0009】
以上のように、酸素を含まない不活性ガス下においても300℃以上の耐熱性、高度な埋め込み/平坦化特性、及び基板への密着性を備えるとともに、ウェットエッチングプロセスへの高い適合性(即ち、アルカリ性過酸化水素水耐性)をも備える半導体装置製造用有機下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法が求められている。
【0010】
良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有する保護膜として特許文献1などが提案されている。しかしながら、該材料はアルカリ性過酸化水素水耐性を有するものの、段差基板上での平坦化性能および、該保護膜上にCVD、ALD法などでハードマスクを形成する際の高耐熱性という点では不十分であるという問題があった。
【0011】
また、本発明に示されているイミド構造を有する例として特許文献2~6に記載されるイミド構造を有する化合物や、特許文献7~9に記載されるポリイミド構造を有する樹脂、ビスマレイミド構造を有する化合物を用いた特許文献10などが知られている。これらの材料についてはアルカリ性過酸化水素水耐性に関する記述はなく、ポリイミド構造を有する樹脂のアルカリ性過酸化水素水耐性については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2017-191767号
【文献】WO2019-146378号
【文献】特開2020-177225号公報
【文献】特開2021-091841号公報
【文献】特開2021-130763号公報
【文献】特開2021-152639号公報
【文献】特開2013-137334号公報
【文献】特開2010-122297号公報
【文献】特開2020-193325号公報
【文献】WO2018-212116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板への密着性が良好な保護膜を形成できるとともに、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性を備えた保護膜を形成できるイミド基を含有する重合体を用いた保護膜形成組成物、及び該材料を用いた半導体装置製造用基板、保護膜の形成方法、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記(I)及び(II)のうちのいずれかで表されるフッ素原子及び水酸基を有する重合体、又は下記(III)で表されるフッ素原子を有する重合体と水酸基を有する重合体との混合物、
(I)下記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、
(II)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位とを有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、
(III)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体との混合物、及び
(B)有機溶剤
を含有するものであるアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物を提供する。
【化1】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化2】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化3】
(式中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化4】
【化5】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化6】
【0015】
このような保護膜形成組成物であれば、末端架橋基の作用により空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化する。また、ポリイミド骨格により主鎖を構成されているため高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性をも併せ持つ保護膜を形成することができるとともに、イミド基を含有する重合体中にフッ素原子および水酸基が存在することにより優れたアルカリ性過酸化水素水耐性を有する保護膜を形成することができる保護膜形成組成物となる。また、1種類以上のWとW、WとW、又はWとWを上記のような有機基の組み合せとすることで熱流動性、耐熱性、密着性をより良いものとすることができる。
【0016】
また、前記一般式(1A)中のWに少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含むことが好ましい。
【0017】
このような部分構造を主鎖に有することが密着性、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性の両立の観点から好ましい。
【0018】
また、前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1E)で示される基であることが好ましい。
【化7】
【0019】
このような部分構造を主鎖に有することが耐熱性、平坦性、密着性、さらにはアルカリ性過酸化水素水耐性の観点から好ましい。
【0020】
また、前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1F)で示される基のうちのいずれかであることが好ましい。
【化8】
【0021】
このような部分構造を主鎖に有することが耐熱性と平坦性、さらにはアルカリ性過酸化水素水耐性の観点から好ましい。
【0022】
さらに、(A’)成分として、下記一般式(4A)で示される繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(2C)で示される基のものである重合体(IV)を含有することが好ましい。
【化9】
(式中、Wは4価の有機基であり、Wは2価の有機基である。)
【化10】
(式中、Rは炭素数1~10の1価の有機基を表し、n1は0または1の整数を表し、n2およびn3は、1≦n2≦6および0≦n3≦6であり、かつ、1≦n2+n3≦6の関係を満たす。)
【0023】
末端基に水酸基を有する重合体(IV)を含有することが、アルカリ性過酸化水素水耐性の観点から好ましい。
【0024】
また、前記(A)成分の重量平均分子量が、1000~10000であることが好ましい。
【0025】
このようなMw範囲の(A)重合体を含む保護膜形成組成物であれば、有機溶剤への溶解性を損なわず、ベーク時のアウトガスを抑制できる。
【0026】
また、前記(B)成分が、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0027】
このような保護膜形成組成物であれば、上記の(A)重合体に高沸点溶剤の添加による膜の熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ保護膜形成組成物となる。
【0028】
また、前記保護膜形成組成物が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0029】
このような成分を含む保護膜形成組成物であれば、塗布性、又は埋め込み/平坦化特性のより優れた保護膜形成組成物とすることができる。
【0030】
また、前記保護膜形成組成物が、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示す保護膜を与えるものであることが好ましい。
【0031】
さらには、前記保護膜形成組成物が、前記保護膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、前記保護膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0032】
このような保護膜形成組成物であれば、十分なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するものとなるため、加工可能な被加工基板やウェットエッチングで除去可能なケイ素中間膜等の選択肢を増やすことができる。
【0033】
また、本発明では、基板上に、上記の保護膜形成組成物が硬化した保護膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供する。
【0034】
本発明の保護膜形成組成物が硬化した保護膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による保護膜表面の凹凸のない保護膜となる。このような保護膜で平坦化された半導体装置製造用基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0035】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る保護膜の形成方法を提供する。
【0036】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る保護膜の形成方法を提供する。
【0037】
本発明の方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される保護膜は、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0038】
このとき、前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることが好ましい。
【0039】
本発明の保護膜形成組成物であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物を発生することなく十分に硬化し、また、基板への密着性に優れる保護膜を形成することができる。
【0040】
また、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の保護膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な保護膜を形成する場合に特に有用である。
【0042】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(I-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0043】
さらに、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(II-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成する工程、
(II-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0044】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(III-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(III-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(III-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(III-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0045】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(IV-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(IV-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(IV-3)前記無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成する工程、
(IV-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(IV-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(IV-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(IV-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0046】
本発明の保護膜形成組成物は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。更に、上記のように本発明の保護膜形成組成物を用いて形成した保護膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスにも適用可能である。
【0047】
また、前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0048】
本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスクを形成することができる。
【0049】
また本発明では、前記(I-6)工程、又は(II-6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有するパターン形成方法とすることができる。
【0050】
本発明の保護膜形成組成物を用いて形成した保護膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでケイ素含有レジスト中間膜の除去を行うことができる。
【0051】
また本発明では、前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記被加工基板にパターンを転写する工程を有するパターン形成方法とすることができる。
【0052】
本発明の保護膜形成組成物を用いて形成した保護膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで被加工基板へのパターン転写を行うことができる。
【0053】
また本発明では、前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を有するパターン形成方法とすることができる。
【0054】
このようなパターン形成方法は、特に表面に凹凸を有する基板のイオン打込み加工に好適である。
【0055】
このとき、前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有するようにしてもよい。
【0056】
本発明の保護膜形成組成物を用いて形成した保護膜は良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、上記のようにアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングでイオン打込みによるパターン加工後のケイ素含有レジスト中間膜の除去を行うこともできる。
【0057】
また、前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0058】
また、前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0059】
本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0060】
また、前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0061】
このとき、前記被加工基板として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0062】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工基板を加工してパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0063】
以上説明したように、本発明の保護膜形成組成物は、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化膜が形成でき、高度な埋め込みおよび平坦化特性を併せ持つ保護膜を形成するために有用である。また、本発明の保護膜形成組成物は、埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性、密着性、アルカリ性過酸化水素水耐性等の諸特性を兼ね備えた保護膜を形成する材料となる。そのため、例えば、2層レジスト法、ケイ素含有中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素含有中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における保護膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の保護膜形成組成物から形成される保護膜は、耐熱性に優れるため、当該保護膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適である。さらに、ウェットエッチング加工プロセスが用いられるパターン形成方法にも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明における平坦化特性の説明図である。
図2】本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例の説明図である。
図3】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
図4】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても副生物が発生することなく、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な保護膜を形成できるとともに、当該保護膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても、熱分解による保護膜の膜厚変動のなく、さらにはウェットエッチングプロセスへの高い適合性(即ち、アルカリ性過酸化水素水耐性)を有する保護膜形成組成物の開発が求められていた。
【0066】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、上記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子および水酸基を含むポリイミド構造を主骨格に有し、上記一般式(1B)、(1C)で示される、Rで示される三重結合を熱硬化基として有する基を末端基として導入した重合体、上記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含むポリイミド構造と上記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含むポリイミド構造とを主骨格に有し、上記一般式(1B)、(1C)で示される末端基を導入した重合体、又は上記一般式(2A)で示されるポリイミド構造を主骨格に有し上記一般式(1B)、(1C)で示される末端基を導入した重合体と、上記一般式(3A)で示されるポリイミド構造を主骨格に有し上記一般式(1B)、(1C)で示される末端基を導入した重合体との混合物を保護膜形成組成物に用いることで、空気中のみならず、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の熱硬化性を有し、かつ、熱流動性に優れるため高度な埋め込み/平坦化特性を有することを見出した。
【0067】
また、上記保護膜形成組成物は、CVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い高い耐熱性と基板への良好な密着性を有することを見出した。さらには、上記(I)、(II)で示される重合体、(III)で示される重合体の混合物を検討することにより、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性を有する保護膜形成組成物を与えるものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0068】
即ち、本発明は、(A)下記(I)及び(II)のうちのいずれかで表されるフッ素原子及び水酸基を有する重合体、又は下記(III)で表されるフッ素原子を有する重合体と水酸基を有する重合体との混合物、(I)下記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、(II)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位とを有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、(III)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体との混合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであるアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物である。
【化11】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化12】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化13】
(式中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化14】
【化15】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化16】
【0069】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
<(A)成分>
本発明における(A)成分は、下記の重合体(I)及び重合体(II)のいずれか、又は重合体の混合物(III)である。
【0071】
重合体(I)
本発明の保護膜形成組成物に用いられる保護膜形成用の重合体は、下記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体(重合体(I))である。
【化17】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化18】
【化19】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化20】
【0072】
上記(1A)、(1B)、(1C)のように予め閉環したポリイミド構造にしておくことでポリアミド酸などのポリイミド化合物の前駆体が熱閉環する際に副生する脱水などの脱離反応がなくなり、膜シュリンクが抑制され保護膜の平坦性を損なうことが無い。また、予め安定なイミド構造にしておくことによりポリアミド酸などのポリイミド化合物前駆体の平衡反応による分解などを抑制することができ保存安定性面でも優位となる。また、ポリイミド構造は耐熱性付与と伴に基板への密着力向上にも寄与する。密着力が向上することによりCVD法やALD法を用いた無機ハードマスクを保護膜直上に形成する際の膜剥がれを防止しプロセス裕度に優れた保護膜が形成可能となる。さらに、上記(1A)で示されるポリイミド構造の主骨格中にフッ素原子および水酸基を存在させることによりアルカリ性過酸化水素水耐性向上にも寄与する。これは、フッ素原子による保護膜のアルカリ性過酸化水素水への撥水性の効果と、水酸基による保護膜と被加工基板との密着性向上の効果が両方得られるため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチング中の剥離が抑制され、結果として良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を示すものと考えられる。
【0073】
上記式(1D)で示されるRは熱架橋基として機能する。硬化性、耐熱性、原料入手の容易さからエチニル基、エチニルフェニル基であることが好ましい。
【0074】
上記一般式中のWとしては下記構造式などを例示することができ、これらの芳香環上に置換基を有してもよい。また、置換基としては、水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基、アルケニル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数3~10のアルキニルオキシ基、アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。
【0075】
【化21】
【0076】
【化22】
【0077】
【化23】
【0078】
【化24】
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
上記一般式中のWとしては下記構造式などを例示することができ、これらの芳香環上に置換基を有してもよい。また、置換基としては、水酸基、トリフルオロメチル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基、アルケニル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、炭素数3~10のアルキニルオキシ基、アルケニルオキシ基、炭素数6~10のアリール基、チオール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、スルホン酸基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。
【0082】
【化27】
【0083】
【化28】
【0084】
【化29】
【0085】
【化30】
【0086】
1種類以上のWとWを上記のような有機基の組み合せとすることで熱流動性、耐熱性、密着性をより良いものとすることができる。WとWはそれぞれ1種類ずつでもよく、2種類以上の組み合わせでもよい。ただし、アルカリ性過酸化水素水耐性の観点から、選択されるWとWには少なくとも1つ以上のフッ素原子および水酸基を含まなくてはならない。即ち、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。
【0087】
さらに本発明の保護膜形成組成物に用いられる重合体(I)は、前記一般式(1A)中のWに少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含むことが好ましい。
【0088】
このような部分構造を主鎖に有することが密着性、優れたアルカリ性過酸化水素水耐性の両立の観点から好ましい。
【0089】
さらに本発明の保護膜形成組成物に用いられる重合体(I)は、前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1E)で示される基であることが好ましい。
【化31】
【0090】
ヘキサフルオロイソプロピリデン基は主鎖に屈曲性が導入されることでイミド基同士の凝集が抑制するため、高度な埋め込み/平坦化特性と耐熱性とを両立することができる。さらに、上記一般式(1E)はヘキサフルオロイソプロピリデン基と水酸基を同時に有しているため、ヘキサフルオロイソプロピリデン基による保護膜のアルカリ性過酸化水素水への撥水性の効果と、水酸基による保護膜と被加工基板との密着性向上の効果が効率よく発揮されるため、アルカリ性過酸化水素水耐性の観点からも特に好ましい。
【0091】
さらに本発明の保護膜形成組成物に用いられる重合体は、前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1F)で示される基であることが好ましい。
【化32】
【0092】
ヘキサフルオロイソプロピリデン基は主鎖に屈曲性が導入されることでイミド基同士の凝集が抑制するため、高度な埋め込み/平坦化特性と耐熱性とを両立することができる。さらに、ヘキサフルオロイソプロピリデン基はアルカリ性過酸化水素水への撥水性を向上できるので、アルカリ性過酸化水素水耐性の観点からも好ましい。また、上記の中でも主鎖の連結基としてヘキサフルオロイソプロピリデン基及びエーテル結合を有す構造が特に好ましい。エーテル結合は柔軟な連結基として機能し、熱流動性、溶剤溶解性を付与することが可能となるため、より高度な埋め込み/平坦化特性と耐熱性とを両立することができる。
【0093】
さらに上記の重合体(I)のMw(重量平均分子量)が1000~10000であることが好ましく、1000~8000であることがより好ましく、1500~5000であることがさらに好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とすることができる。
【0094】
このような分子量であれば、有機溶剤への溶解性を確保でき、ベーク時に生じる昇華物を抑制することができる。また(A)成分の重合体(保護膜形成用重合体)の熱流動性が良好なものとなるため、保護膜形成組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる保護膜を形成することができる。
【0095】
重合体(II)
また(A)フッ素原子及び水酸基を有する重合体としては、下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位とを有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体(重合体(II))とすることもできる。
【化33】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化34】
(式中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化35】
【化36】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化37】
【0096】
本発明で用いる(A)重合体は、ポリイミド構造の主骨格中にフッ素原子および水酸基を存在させることによりアルカリ性過酸化水素水耐性向上に寄与する。このため、(A)重合体は、一つの繰り返し単位中にフッ素原子および水酸基の両方を有する重合体(I)に限られず、フッ素原子のみを有する繰り返し単位と水酸基のみを有する繰り返し単位との共重合体(重合体(II))であってもよい。重合体(I)と同様、重合体(II)も良好な埋め込み/平坦化特性、耐熱性、密着性、及びアルカリ性過酸化水素水耐性を与えるものである。
【0097】
上記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であれば特に限定はされないが、例えば、Wの具体例として上述したもののうち、水酸基を含まない基とすることができる。Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であれば特に限定はされないが、例えば、Wの具体例として上述したもののうち、水酸基を含まない基とすることができる。ただし、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。
【0098】
上記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であれば特に限定はされないが、例えば、Wの具体例として上述したもののうち、フッ素原子を含まない基とすることができる。Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であれば特に限定はされないが、例えば、Wの具体例として上述したもののうち、フッ素原子を含まない基とすることができる。ただし、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。
【0099】
重合体(II)の末端基の構造、及び重量平均分子量については、重合体(I)で説明した通りである。
【0100】
重合体の混合物(III)
また、本発明の(A)成分は、上記一般式(2A)で示される繰り返し単位と上記一般式(3A)で示される繰り返し単位との共重合体(重合体(II))の他にも、上記一般式(2A)で示される繰り返し単位を有する重合体(重合体(III-1))と上記一般式(3A)で示される繰り返し単位を有する重合体(重合体(III-2))との混合物(重合体の混合物(III))とすることもできる。
【0101】
重合体(III-1)は、上記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が上記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体である。重合体(III-1)中、上記一般式(2A)で示される繰り返し単位、上記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される末端基の構造、及び重量平均分子量については、重合体(II)のところで説明した通りである。
【0102】
重合体(III-2)は、上記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が上記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体である。重合体(III-2)中、上記一般式(3A)で示される繰り返し単位、上記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される末端基の構造、及び重量平均分子量については、重合体(II)のところで説明した通りである。
【0103】
本発明における(A)成分は、必ずしもポリイミド構造の主骨格中のフッ素原子および水酸基の両方が同じ重合体中に含まれていなくてもよく、ポリイミド構造の主骨格中のフッ素原子とポリイミド構造の主骨格中の水酸基とが別々の重合体中に含まれていても、同様にアルカリ性過酸化水素水耐性を向上させることができる。したがって、重合体(I)、(II)と同様、重合体の混合物(III)も良好な埋め込み/平坦化特性、耐熱性、密着性、及びアルカリ性過酸化水素水耐性を与えるものである。
【0104】
[(A)重合体の製造方法]
(A)成分の重合体の製造方法を、重合体(I)を例に説明するが、重合体(II)、重合体(III-1)、及び重合体(III-2)も同様の方法で製造することができる。
【0105】
本発明の保護膜形成組成物に用いられる重合体を得る手段としては、下記に示されるジアミンとテトラカルボン酸無水物のいずれかを過剰に仕込み、末端にアミノ基またはカルボン酸無水物活性末端を有するポリアミド酸中間体(STEP1)を得る。その後、末端封止剤としてRを置換基として持つフタル酸無水物誘導体またはアニリン誘導体によりポリイミド前駆体(STEP2)を合成後、さらに熱的または化学的イミド化(STEP3)を行うことにより(A)成分の重合体を合成することが出来る。STEP1のポリアミド酸化合物を合成する際に用いるジアミン化合物またはテトラカルボン酸無水物、STEP2の末端封止に用いるフタル酸無水物誘導体またはアニリン誘導体は単独または2種以上用いることもできる。これらは要求される特性に応じて適宜選択し組み合わせることができる。下記式中のW、W、Rは先記と同じである。
【0106】
(ジアミン過剰条件)
【化38】
【化39】
【化40】
【0107】
(テトラカルボン酸過剰条件)
【化41】
【化42】
【化43】
【0108】
STEP1で示されるポリアミド酸中間体の合成は、通常、有機溶媒中で室温または必要に応じて冷却または加熱下で行うことが出来る。用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類等を例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0109】
これらの合成には必要に応じて塩基触媒を用いることも可能であり、塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の有機塩基類が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
反応方法としてはジアミン化合物、テトラカルボン酸無水物を溶媒中に一括で仕込む方法、ジアミン化合物、テトラカルボン酸無水物を各々または混合し、分散または溶解したものを滴下して仕込む方法、ジアミン化合物、テトラカルボン酸無水物のいずれか一方を溶媒中に分散または溶解後、溶剤に分散または溶解したもう一方を滴下して仕込む方法などがある。また、ジアミン化合物、テトラカルボン酸無水物をそれぞれ複数種類仕込む場合は、あらかじめ混合し反応させる方法としてもよいし、個別に順次反応させることもできる。触媒を用いる場合は、ジアミン化合物またはテトラカルボン酸無水物と一括に仕込む方法、触媒をあらかじめ分散または溶解した後に滴下する方法などが挙げられる。ジアミン化合物とテトラカルボン酸無水物を所望のMw範囲になるように任意の割合で仕込比率を調整することが可能である。例えば、次工程の末端封止剤としてアニリン誘導体を用いる際はジアミン化合物に対してテトラカルボン酸無水物を過剰に用いればよく、末端封止剤としてフタル酸無水物を用いる際はテトラカルボン酸無水物に対してジアミン化合物を過剰に用いることでポリアミド中間体を合成できる。得られたポリアミド酸中間体の反応溶液はSTEP2の末端封止反応に続けて進むこともできるが、反応中間体として系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄や貧溶剤で晶出して粉体として回収することもできる。
【0111】
STEP2の末端封止工程は、上記のポリアミド酸中間体の反応液(粉体で回収した場合はあらかじめ溶液化後)について、末端封止剤との反応を行う。反応溶剤、反応触媒はSTEP1のポリアミド酸中間体と同じものを用いることができる。また、反応方法については基質がジアミン化合物とテトラカルボン酸無水物の代わりにポリアミド酸中間体と末端封止剤としてアニリン誘導体またはフタル酸無水物を用いるだけで、STEP1と同様の方法で行うことができる。得られたポリイミド前駆体の反応溶液はSTEP3のイミド化反応に続けて進むこともできるが、反応中間体として系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄や貧溶剤で晶出して粉体として回収することもできる。
【0112】
STEP3で示されるイミド化工程は、熱的または化学的イミド化により行うことができる。これらの方法は目的とするイミド化合物の架橋基の熱安定性、導入された置換基と化学的イミド化時に使用する試薬との反応性に応じて適宜、選択することができる。
【0113】
熱的イミド化を行う場合は、STEP2で得られたポリアミド酸の反応液(粉体で回収した場合はあらかじめ可溶な溶剤に溶解したもの)に、水と共沸可能な溶剤を添加し、100℃~250℃に加熱し、生成する水を除去しながら脱水閉環反応によりイミド化を行う。
【0114】
水と共沸可能な溶剤としては、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドなどの極性溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの非極性溶媒などを用いることができ、これらの溶剤を単独または混合して加熱を行い閉環によって生成した水を系外に留出させながら脱水を行うことが好ましい。
【0115】
化学的イミド化を行う場合は、STEP2で得られたポリイミド前駆体の反応液(粉体で回収した場合はあらかじめ可溶な溶剤に溶解したもの)に、塩基触媒と脱水剤として酸無水物などを添加し加熱しイミド化を行う。
【0116】
化学的イミド化に用いる塩基触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、この中でピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。脱水剤としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、トリフルオロ酢酸無水物、ポリリン酸、五酸化リン、五塩化リン、塩化チオニルなどを挙げることができ、反応後の精製の観点から無水酢酸が好ましい。また、塩基触媒、脱水剤は各々、単独または2種類以上混合して用いても良く、これらは目的とする化合物の要求性能に合せてイミド化率を触媒量、脱水剤量、反応温度、反応時間を調節することにより適宜、コントロールすることができる。
【0117】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類等を例示でき、これらを単独または混合して用いることができる。
【0118】
反応終了後、保護膜形成組成物としてそのまま用いてもよいが、系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄を行って回収することもできる。
【0119】
分液洗浄に使用する有機溶剤としては、化合物を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物等を挙げることができる。この際に使用する洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0120】
分液洗浄の際に系内の未反応原料または酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0121】
更に、分液洗浄の際に系内の未反応原料、金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0122】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0123】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0124】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、保護膜形成組成物を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0125】
このときの溶剤としては、反応生成物((A)成分の重合体)を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0126】
上記のポリイミドの合成には、重合体の主鎖を構成するジアミン化合物、テトラカルボン酸無水物誘導体、末端封止めに用いられるフタル酸誘導体、アニリン誘導体を要求性能に合わせて組み合わせることが可能である。具体的には溶剤溶解性、密着性、埋め込み/平坦化特性の向上に寄与する置換基、エッチング耐性、成膜性に寄与する置換基、アルカリ性過酸化水素水耐性に寄与する置換基などを所望の要求性能に合せて導入することができる。これらの重合体を用いた保護膜形成組成物は埋め込み/平坦化特性と耐熱性、アルカリ性過酸化水素水耐性を高い次元で両立することが可能である。
【0127】
以上のように、(A)成分の重合体であれば、400℃以上の耐熱性、高度な埋め込み/平坦化特性及びアルカリ性過酸化水素水耐性を併せ持つ保護膜形成組成物を与えるものとなる。
【0128】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の保護膜形成組成物であれば、例えば、図1に示されるように、基板1上に保護膜形成組成物3’を塗布し、加熱して保護膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の保護膜形成組成物によって平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0129】
<保護膜形成組成物>
本発明では、アルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物であって、(A)上述の重合体又は重合体の混合物、及び(B)有機溶剤を含有する保護膜形成組成物を提供する。なお、本発明の保護膜形成組成物において、上述の(A)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
本発明の保護膜形成組成物において使用可能な有機溶剤としては、上記のベースポリマー、及び後述の酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等の材料に含まれる構成成分が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。有機溶剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは200~10,000質量部、より好ましくは300~5,000質量部である。
【0131】
このような保護膜形成組成物であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような(A)成分を含有するため、400℃以上の耐熱性、高度な埋め込み/平坦化特性及びアルカリ性過酸化水素水耐性を併せ持つ保護膜形成組成物となる。
【0132】
更に、本発明の保護膜形成組成物には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、(A)成分を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0133】
上記、高沸点溶剤の沸点は、保護膜形成組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、更に好ましくは200℃~300℃である。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高いためベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0134】
また、上記高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
【0135】
このような保護膜形成組成物であれば、上記の(A)成分に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、より高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ保護膜形成組成物となる。
【0136】
<(A’)成分>
重合体(IV)
本発明の保護膜形成用組成物は、上記(A)成分に加えて、(A’)成分として、下記一般式(4A)で示される繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(2C)で示される基のものである重合体(IV)をさらに含有することができる。
【化44】
(式中、Wは4価の有機基であり、Wは2価の有機基である。)
【化45】
(式中、Rは炭素数1~10の1価の有機基を表し、n1は0または1の整数を表し、n2およびn3は、1≦n2≦6および0≦n3≦6であり、かつ、1≦n2+n3≦6の関係を満たす。)
【0137】
また、重合体(IV)は、(A)成分100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましく、1~10質量部とすることがより好ましい。このような配合量であれば、耐熱性を劣化させることなく、末端の水酸基によって基板との密着性が向上し、アルカリ性過酸化水素水耐性を向上させることができる。
【0138】
ORで表される置換基は、流動性付与のためアルキルオキシ基、不活性ガス下での硬化性付与のためアルケニル、アルキニルオキシ基など、使用用途に合わせて適宜選択することも可能である。ORで表される置換基を有することにより、適切な溶剤溶解性を示すことができるとともに、硬化後には優れた溶剤耐性及び耐熱性を示すことができる。
【0139】
さらに上記の重合体(IV)のMw(重量平均分子量)が1000~10000であることが好ましく、1000~8000であることがより好ましく、1500~5000であることがさらに好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とすることができる。
【0140】
上記一般式(4A)中、Wの具体例としては、例えば、Wの具体例として上述したものがある。
【0141】
上記一般式(4A)中、Wの具体例としては、例えば、Wの具体例として上述したものがある。
【0142】
上記一般式(2C)で示される末端基としては下記構造式などを例示することができる。
【0143】
【化46】
【0144】
なお、重合体(IV)も、上述の(A)重合体の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0145】
本発明の保護膜形成組成物においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0061)~(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0146】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、(A)成分100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0147】
本発明の保護膜形成組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部である。
【0148】
また、本発明の保護膜形成組成物には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0149】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。架橋剤を添加する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0150】
また、本発明の保護膜形成組成物には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0151】
また、本発明の保護膜形成組成物には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。上記液状添加剤又は熱分解性重合体を添加する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0152】
【化47】
(式中、Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Yは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0153】
【化48】
(式中、R6aは炭素数1~4のアルキル基である。Yは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0154】
なお、本発明の保護膜形成組成物は、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示す保護膜を与えるものであることが好ましい。このような保護膜形成組成物であれば、良好なアルカリ性過酸化水素水耐性を有する保護膜を形成できるため、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングプロセスにも適用可能である。
【0155】
アルカリ性過酸化水素水は、半導体ウエハー洗浄に一般的に用いられている。特に、脱イオン水5質量部、29質量%アンモニア水1質量部、30質量%過酸化水素水1質量部の混合液はSC1(Standard Clean-1)と呼ばれ、ウエハー表面の有機不純物、微粒子の洗浄除去用の標準的薬液となっている。この他、アルカリ性過酸化水素水により、一部の金属、金属化合物の他、ウェット剥離用に設計されたケイ素含有レジスト中間膜の剥離あるいはエッチング加工が可能である。これらの加工に用いられるアルカリ性過酸化水素水の組成は特に制限されないが、典型的には、脱イオン水、過酸化水素、アンモニアの混合物である。その場合の、過酸化水素の濃度としては、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.2~5質量%であり、アンモニアの濃度としては、0.1~10質量%が好ましく、より好ましくは0.2~5質量%である。処理温度としては、0~90℃が好ましく、より好ましくは20~80℃である。
【0156】
ここで、保護膜のアルカリ性過酸化水素水耐性試験について説明する。まず、3cm角に切断したシリコンウエハー上に、後述する成膜条件に準じて、保護膜形成組成物を膜厚約100nmとなるように成膜する。このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬し、続いて、脱イオン水でリンス後に、目視によりウエハーからの保護膜の剥離の有無を検査することができる。保護膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供した保護膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断される。
【0157】
即ち、本発明の保護膜形成組成物から形成される保護膜は、保護膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、上記保護膜の剥がれが観察されないものであることが好ましい。
【0158】
以上のように、本発明の保護膜形成組成物であれば、400℃以上の耐熱性、高度な埋め込み/平坦化特性及びアルカリ性過酸化水素水耐性を併せ持つ保護膜形成組成物となる。従って、本発明の保護膜形成組成物は、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスクを用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法の保護膜形成組成物として、極めて有用である。また、本発明の保護膜形成組成物は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。さらに、ウェットエッチング加工プロセスが用いられるパターン形成方法にも極めて有用である。
【0159】
<半導体装置製造用基板>
また、本発明では、基板上に、上記の保護膜形成組成物が硬化した保護膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供する。
【0160】
本発明の保護膜形成組成物が硬化した保護膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による保護膜表面の凹凸のない保護膜となる。このような保護膜で平坦化された半導体装置製造用基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。さらに、アルカリ性過酸化水素水耐性を有する保護膜となるので、ウェットエッチングプロセスへの高い適合性をも備える。
【0161】
<保護膜形成方法>
保護膜を形成するための加熱成膜工程は1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。1段ベークによる成膜は、例えば、100℃以上600℃以下の温度で5~3600秒間の範囲で行うが、150℃以上500℃以下の温度で10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で保護膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による保護膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない保護膜を形成することができる。
【0162】
CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で保護膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0163】
一方、2段ベークによる成膜は、一段目のベークとして、空気中の酸素による基板の腐食の影響を考えると、空気中での処理温度の上限は、例えば、300℃以下好ましくは250℃以下で10~600秒間の範囲で行う。2段目のベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、600℃以下好ましくは500℃以下の温度で、10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で保護膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による保護膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない保護膜を形成することができる。
【0164】
2段ベークでCVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で保護膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0165】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される保護膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、被加工基板を酸素濃度1%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する保護膜の形成方法を提供する。
【0166】
この保護膜形成方法では、例えば、まず、上述の本発明の保護膜形成組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、300℃以下でベークした後、酸素濃度1%以下の雰囲気で2段目のベークする。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の保護膜形成組成物であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した保護膜を形成することができる。
【0167】
また、本発明の保護膜の形成方法では、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが出来る。上述のように、本発明の保護膜形成組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、本発明の保護膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な保護膜を形成する場合に特に有用である。
【0168】
なお、形成される保護膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0169】
また、上記の保護膜の形成方法は、本発明の保護膜形成組成物を用いてパターン形成用の保護膜を形成する場合と、平坦化膜用の保護膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0170】
本発明では、半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る保護膜の形成方法を提供する。
【0171】
さらに本発明では、半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒、好ましくは10~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下、好ましくは250℃以上の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得る保護膜の形成方法を提供する。
【0172】
本発明の方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される保護膜は、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0173】
この保護膜形成方法では、まず、上述の本発明の保護膜形成組成物を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。スピンコート法を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、保護膜形成組成物中の溶媒を蒸発させることができるため、保護膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にも、ミキシングを防止することができる。
【0174】
<パターン形成方法>
[ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(I-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0175】
被加工基板としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0176】
被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0177】
なお、被加工基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0178】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0179】
被加工基板上に本発明の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する際には、上述の本発明の保護膜形成方法を適用すればよい。
【0180】
次に、保護膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、保護膜形成組成物として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造またはポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0181】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料をスピンコート後、60~180℃で10~300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0182】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0183】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fレーザー光(157nm)、Krレーザー光(146nm)、Arレーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0184】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0185】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0186】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして保護膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機物に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う保護膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、保護膜パターンを形成することが出来る。
【0187】
次に、パターンが転写された保護膜をマスクにして被加工基板にパターンを形成するが、例えば、パターンが転写された保護膜をマスクにして被加工基板にエッチングでパターンを転写する。次の被加工基板(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0188】
本発明の保護膜形成組成物を用いて得られる保護膜は、上記のような被加工基板のエッチング時のエッチング耐性に優れたものとすることができる。
【0189】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
さらに、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(II-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成する工程、
(II-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0190】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0191】
有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いてスピンコートで形成することができる。
【0192】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(III-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(III-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(III-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(III-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0193】
なお、この方法は、保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0194】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300~500℃となるために、下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明の保護膜形成組成物を用いて形成される保護膜は高い耐熱性を有しており、300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された保護膜の組み合わせが可能である。
【0195】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(IV-1)被加工基板上に上記の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、
(IV-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、
(IV-3)前記無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成する工程、
(IV-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、
(IV-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、
(IV-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び
(IV-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、
を有するパターン形成方法を提供する。
【0196】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0197】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0198】
ここで、本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を図2(A)~(F)に示す。3層レジスト法の場合、図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の保護膜形成組成物を用いて保護膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、保護膜3を酸素プラズマエッチングし、保護膜パターン3aを形成する。更に、図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、保護膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0199】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0200】
(特殊加工プロセス)
さらに、本発明のパターン形成方法を適用すれば、上記の一般的加工プロセスに加えて、様々な特殊加工プロセスの構築が可能となり、産業上の価値が高い。
【0201】
(第一態様)
まず、ケイ素含有レジスト中間膜の剥離に関しては、一般的には上記の通り、ドライエッチング剥離が必須であるが、本発明のパターン形成方法においては、保護膜がアルカリ性過酸化水素水耐性を有するため、アルカリ性過酸化水素水を用いてケイ素含有レジスト中間膜のみをウェット剥離することも選択肢となる。即ち、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(I-6)工程、又は(II-6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0202】
(第二態様)
また、被加工基板がW、TiNなどの場合、本発明のパターン形成方法を適用すれば、アルカリ性過酸化水素水による基板のウェットエッチング加工も選択肢となりうる。即ち、本発明の3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程のエッチング方法が、パターンが転写された保護膜をマスクにして、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、被加工基板にパターンを転写する工程であってもよい。
【0203】
その場合のプロセスの一例では、まず、被加工基板上に保護膜を成膜、その上に必要に応じてケイ素含有レジスト中間膜を成膜した後、レジスト上層膜を成膜する。続いて、常法によりレジスト上層膜をパターニング、続いてエッチングによりパターンを保護膜まで転写する。最後に、保護膜をマスクとして、被加工基板をウェットエッチングによりパターニングすることができる。
【0204】
(第三態様)
また、本発明の3層、4層レジストプロセスによるパターン形成方法では、上記の(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程を、パターンが転写された保護膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、被加工基板をパターン加工する工程としてもよい。このとき、イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を追加してもよい。
【0205】
また、本発明のパターン形成方法は、高さ30nm以上の構造体又は段差を有するような段差基板の加工にも好適である。以下、このようなプロセスの一例について説明する。
【0206】
まず、段差基板上に、保護膜を成膜して埋込・平坦化を行い、必要に応じてケイ素含有レジスト中間膜を成膜した後、レジスト上層膜を成膜する。次に、常法によりレジスト上層膜をパターニング、続いてエッチングによりパターンを保護膜まで転写する。次に、保護膜をマスクとして、イオン打込みにより基板をパターン加工することができる。残存したケイ素含有レジスト中間膜の剥離は、必要に応じて、ドライエッチング、ウェットエッチングから選択して行うことができる。最後に、保護膜をドライエッチングにより除去できる。
【0207】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例
【0208】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0209】
合成例 保護膜形成組成物用重合体、及び末端基に水酸基を有する重合体の合成
保護膜形成組成物用の重合体(又は重合体の混合物)(A1)~(A9)、及び末端基に水酸基を有する重合体(A10)~(A12)の合成には下記に示すテトラカルボン酸無水物(B1)~(B5)、ジアミン化合物(C1)~(C8)、末端封止剤となるアニリン誘導体、フタル酸無水物誘導体として(D1)~(D10)を用いた。
【0210】
テトラカルボン酸無水物:
【化49】
【0211】
ジアミン化合物:
【化50】
【0212】
末端封止剤:
【化51】
【0213】
[合成例1]重合体(A1)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)17.77g、ジアミン化合物(C1)10.65gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)120gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D1)3.15gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン150gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン400gを加え、有機層を3%硝酸水溶液100gで2回洗浄後、さらに純水100gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)100gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0214】
【化52】
(A1):Mw=3750、Mw/Mn=1.66
【0215】
[合成例2]重合体(A2)の合成
テトラカルボン酸無水物(B2)15.61g、ジアミン化合物(C2)2.51g及びジアミン化合物(C3)1.94gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)90gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D2)5.80gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン120gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン300gを加え、有機層を3%硝酸水溶液75gで2回洗浄後、さらに純水75gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)75gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A2)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0216】
【化53】
(A2):Mw=2480、Mw/Mn=1.42
【0217】
[合成例3]重合体(A3)の合成
テトラカルボン酸無水物(B3)19.28g、ジアミン化合物(C4)1.92g及びジアミン化合物(C5)1.30gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)90gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D3)4.22gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン120gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン300gを加え、有機層を3%硝酸水溶液75gで2回洗浄後、さらに純水75gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)75gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A3)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0218】
【化54】
(A3):Mw=2180、Mw/Mn=1.28
【0219】
[合成例4]重合体の混合物(A4)の合成
重合体の混合物(A4)に用いる重合体(A4-1)と重合体(A4-2)は、それぞれ以下のように合成した。
【0220】
[合成例4-1]重合体(A4-1)の合成
テトラカルボン酸無水物(B4)6.36g及びジアミン化合物(C6)3.84gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)60gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D4)2.34gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン80gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン200gを加え、有機層を3%硝酸水溶液50gで2回洗浄後、さらに純水50gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)50gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル200gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル150gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A4-1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0221】
【化55】
(A4-1):Mw=2310、Mw/Mn=1.45
【0222】
[合成例4-2]重合体(A4-2)の合成
テトラカルボン酸無水物(B4)6.36g及びジアミン化合物(C3)2.58gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)60gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D4)2.34gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン80gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン200gを加え、有機層を3%硝酸水溶液50gで2回洗浄後、さらに純水50gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)50gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル200gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル150gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A4-2)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0223】
【化56】
(A4-2):Mw=2190、Mw/Mn=1.43
【0224】
[合成例5]重合体(A5)の合成
テトラカルボン酸無水物(B3)9.64g、ジアミン化合物(C7)2.20gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)45gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D2)3.48gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン60gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン150gを加え、有機層を3%硝酸水溶液40gで2回洗浄後、さらに純水40gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)40gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル150gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル120gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A5)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0225】
【化57】
(A5):Mw=2230、Mw/Mn=1.22
【0226】
[合成例6]重合体(A6)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)10.88g、ジアミン化合物(C7)12.82gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)100gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D5)1.95g及び末端封止剤(D6)2.61gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン130gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン350gを加え、有機層を3%硝酸水溶液90gで2回洗浄後、さらに純水90gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)90gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル350gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル250gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A6)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0227】
【化58】
(A6):Mw=3950、Mw/Mn=1.70
【0228】
[合成例7]重合体(A7)の合成
テトラカルボン酸無水物(B5)15.71g、ジアミン化合物(C7)3.66gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)75gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D3)3.51gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン90gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン250gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル250gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル180gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A7)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0229】
【化59】
(A7):Mw=1950、Mw/Mn=1.21
【0230】
[合成例8]重合体(A8)の合成
テトラカルボン酸無水物(B5)7.86g、ジアミン化合物(C8)9.07g及びジアミン化合物(C7)2.75gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)75gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D7)4.30gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン90gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン250gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル250gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル180gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A8)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0231】
【化60】
(A8):Mw=2560、Mw/Mn=1.41
【0232】
[合成例9]重合体(A9)の合成
テトラカルボン酸無水物(B5)7.54g、ジアミン化合物(C2)0.80g及びジアミン化合物(C7)0.88gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)40gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D4)1.69gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン45gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン120gを加え、有機層を3%硝酸水溶液30gで2回洗浄後、さらに純水30gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)30gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル120gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル90gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A9)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0233】
【化61】
(A9):Mw=2010、Mw/Mn=1.29
【0234】
[合成例10]重合体(A10)の合成
テトラカルボン酸無水物(B3)16.07g、ジアミン化合物(C2)3.34gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)75gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D8)3.27gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン90gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン250gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル250gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル180gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A10)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0235】
【化62】
(A10):Mw=1970、Mw/Mn=1.24
【0236】
[合成例11]重合体(A11)の合成
テトラカルボン酸無水物(B3)16.07g、ジアミン化合物(C7)3.66gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)75gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D9)4.17gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン90gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン250gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル250gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル180gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A11)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0237】
【化63】
(A11):Mw=2010、Mw/Mn=1.23
【0238】
[合成例12]重合体(A12)の合成
テトラカルボン酸無水物(B5)15.71g、ジアミン化合物(C8)5.18gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)75gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D10)4.78gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン90gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン250gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル250gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル180gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(A12)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0239】
【化64】
(A12):Mw=2100、Mw/Mn=1.25
【0240】
比較例用の重合体(R1)~(R9)の合成には下記に示す化合物(E1)~(E10)および先記のテトラカルボン酸無水物(B1)、(B3)、(B5)、ジアミン化合物(C1)、(C7)、(C8)および末端封止剤(D3)、(D6)、(D7)を用いた。(E10)については60:40の異性体混合物を用いた。
【0241】
【化65】
【0242】
[合成例13]重合体(R1)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)7.11g、ジアミン化合物(C7)14.65gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)120gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤として(E1)7.11gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン150gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン400gを加え、有機層を3%硝酸水溶液100gで2回洗浄後、さらに純水100gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)100gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0243】
【化66】
(R1):Mw=2250、Mw/Mn=1.32
【0244】
[合成例14]重合体(R2)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)13.33g、ジアミン化合物(C7)4.40gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)90gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤として(E2)3.35gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン120gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン300gを加え、有機層を3%硝酸水溶液75gで2回洗浄後、さらに純水75gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)75gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R2)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0245】
【化67】
(R2):Mw=2140、Mw/Mn=1.29
【0246】
[合成例15]重合体(R3)の合成
テトラカルボン酸無水物(B5)12.57g、ジアミン化合物(C7)14.65gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)120gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤として(E3)3.92gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にo-キシレン150gを加え、内温180℃で生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン400gを加え、有機層を3%硝酸水溶液100gで2回洗浄後、さらに純水100gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)100gを加え均一溶液とした後、ジイソプロピルエーテル400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R3)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0247】
【化68】
(R3):Mw=2360、Mw/Mn=1.36
【0248】
[合成例16]重合体(R4)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)30.00gにN-メチルピロリドン150gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で均一溶液とした後、アミン化合物(E4)14.74gを加え内温40℃で3時間反応を行いアミド酸溶液を得た。得られたアミド酸溶液にo-キシレン200gを加え、内温150℃で生成する低沸物および生成する水を系内から除去しながら9時間反応し脱水イミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しジイソプロピルエーテル1000gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル500gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することでイミド化合物(R4’)を得た。
【0249】
【化69】
【0250】
続いて、得られたイミド化合物(R4’)15.00g、アルデヒド化合物(E5)1.36g、及び2-メトキシ-1-プロパノール60gを窒素雰囲気下、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸2-メトキシ-1-プロパノール溶液1.5gをゆっくり加え、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン200gを加え、有機層を純水50gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF50gを加え、ヘキサン200gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して重合体(R4)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0251】
【化70】
(R4):Mw=2820、Mw/Mn=1.72
【0252】
[合成例17]重合体(R5)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)15.55g、ジアミン化合物(E6)14.62gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)120gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D7)5.16gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にピリジン4.00gを加え、さらに無水酢酸12.25gをゆっくりと滴下した後、内温60℃で4時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン400gを加え、有機層を3%硝酸水溶液100gで2回洗浄後、さらに純水100gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)100gを加え均一溶液とした後、メタノール400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R5)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0253】
【化71】
(R5):Mw=4320、Mw/Mn=1.72
【0254】
[合成例18]重合体(R6)の合成
テトラカルボン酸無水物(B1)13.33g、ジアミン化合物(E7)7.32gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)70gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D3)2.11gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にピリジン2.37gを加え、さらに無水酢酸7.35gをゆっくりと滴下した後、内温60℃で4時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン240gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、メタノール240gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール240gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R6)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0255】
【化72】
(R6):Mw=3780、Mw/Mn=1.67
【0256】
[合成例19]重合体(R7)の合成
テトラカルボン酸無水物(B3)7.71g、ジアミン化合物(C8)15.55gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)70gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D7)6.20gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にピリジン2.37gを加え、さらに無水酢酸7.35gをゆっくりと滴下した後、内温60℃で4時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン240gを加え、有機層を3%硝酸水溶液60gで2回洗浄後、さらに純水60gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)60gを加え均一溶液とした後、メタノール240gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール240gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R7)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0257】
【化73】
(R7):Mw=2420、Mw/Mn=1.26
【0258】
[合成例20]重合体(R8)の合成
テトラカルボン酸無水物(E8)18.34g、ジアミン化合物(C8)8.30gにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)100gを加え、窒素雰囲気下、内温40℃で3時間反応を行った。得られたポリアミド酸中間体溶液に末端封止剤(D3)5.62gを追加し、内温40℃でさらに3時間反応を行いポリイミド前駆体溶液を得た。得られた反応液にピリジン3.16gを加え、さらに無水酢酸9.80gをゆっくりと滴下した後、内温60℃で4時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン320gを加え、有機層を3%硝酸水溶液80gで2回洗浄後、さらに純水80gで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF(テトラヒドロフラン)80gを加え均一溶液とした後、メタノール320gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール240gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R8)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0259】
【化74】
(R8):Mw=2240、Mw/Mn=1.27
【0260】
[合成例21]重合体(R9)の合成
化合物(E9)6.32gにTHF50gを加え、窒素雰囲気下、氷浴中で均一溶液とした。あらかじめNMP20gに溶解させたジアミン化合物(E10)4.00gおよびトリエチルアミン3.34gをゆっくりと滴下した後、室温で1時間反応を行った。さらに反応液に化合物(C1)14.28g、NMP100gを追加し、内温40℃で3時間反応を行った後、末端封止剤(D6)11.18gを添加しポリイミド前駆体を得た。得られた反応液にo-キシレン150gを加え、内温180℃で生成する低沸物および生成する水を系内から除去しながら9時間反応を行いイミド化を行った。反応終了後、室温まで冷却しジイソプロピルエーテル600gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ジイソプロピルエーテル200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R9)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
【0261】
【化75】
(R9):Mw=2930、Mw/Mn=1.42
【0262】
保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)の調製
上記重合体(A1)~(A12)および(R1)~(R9)および高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、(S2)γ-ブチロラクトン:沸点204℃、(S3)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃を用いた。FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびシクロヘキサノン(CyHO)を用い表1に示す割合で溶解させた後、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)をそれぞれ調製した。
【0263】
【表1】
【0264】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-22、比較例1-1~1-9)
上記で調製した保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。結果を表2に示す。
【0265】
【表2】
【0266】
表2に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例1-1~1-22)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性が発現していることがわかる。それに対して架橋基がないポリイミドを用いた比較例1-1、1-2、1-4においてはPGMEA処理後の残膜率が70%ほどとなり十分な溶剤耐性が発現しなかった。これらの結果より置換基として導入したRが熱架橋基として有効に機能していることがわかる。
【0267】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-22、比較例2-1~2-9)
上記の保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で60秒間、焼成して200nmの塗布膜を形成し、膜厚Aを測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃でさらに10分間焼成して膜厚Bを測定した。これらの結果を表3に示す。
【0268】
【表3】
【0269】
表3に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例2-1~2-22)は、450℃での焼成後も膜厚減少が1%未満となり、本発明の保護膜形成組成物は450℃焼成後においても高温ベーク前の膜厚を保持しており、高い耐熱性を有していることがわかる。それに対して架橋基がないポリイミドを用いた比較例2-1、比較例2-2、比較例2-4と比較すると本発明の保護膜形成組成物は末端架橋基Rによる熱架橋により緻密な膜が形成され、優れた耐熱性を有する膜が形成されていることがわかる。また、架橋基としてビスマレイミド構造を持つ比較例2-3においては実施例1の条件においては熱架橋により溶剤耐性が発現するが、実施例2のような長時間に渡り高温処理する条件ではビスマレイミド構造による熱架橋では十分な耐熱性が発現しないことがわかる。
【0270】
実施例3 埋め込み特性評価(実施例3-1~3-22、比較例3-1~3-9)
図3のように、上記の保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成し、保護膜8を形成した。使用した基板は図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、保護膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表4に示す。埋め込み特性に劣る保護膜形成組成物を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な保護膜形成組成物を用いた場合は、本評価において、図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく保護膜が充填される。
【0271】
【表4】
【0272】
表4に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例3-1~3-22)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することが確認出来た。一方、比較例3-1~3-4では、ボイドが発生し埋め込み特性が不良であることが確認された。この結果から、本発明の保護膜形成組成物は、熱硬化反応により耐熱性が確保され、埋め込み特性が改善されていることがわかる。一方、比較例3-1~3-4は、溶剤耐性が発現している比較UDL-3であっても耐熱性が不足しているためボイドが発生し、良好な埋め込み特性が得られなかった。
【0273】
実施例4 平坦化特性評価(実施例4-1~4-22、比較例4-1~4-9)
保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiOウエハー基板)上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の保護膜10の段差(図4(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表5に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.2μmの保護膜形成組成物を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【0274】
【表5】
【0275】
表5に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例4-1~4-22)は、比較例4-1~4-4に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の保護膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。比較例4-3においては実施例2の耐熱性評価の結果のとおり耐熱性に劣るため高温ベークによる生じる膜減りが大きいため、段差上部と段差下部の膜厚差が強調され平坦性が悪化するため上記のような結果となった。比較例4-1、4-2、4-4においても同様に非架橋性のポリイミドを用いているため高温処理による膜減りによる影響が大きく平坦性が悪い結果となった。また、高沸点溶剤を添加した実施例4-11~4-13、4-20~4-22と添加していない実施例4-3、4-5、4-7、4-17~4-19とそれぞれ比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。
【0276】
実施例5 アルカリ性過酸化水素水耐性評価(実施例5-1~5-22、比較例5-1~5-9)
上記の保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)を、それぞれ、300nmのSiO膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒焼成し、膜厚200nmの保護膜(レジスト下層膜)を形成した。続いて、ウエハーを2cm幅に切断し、このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、70℃で5分間浸漬、脱イオン水でリンス、乾燥後に、目視によりウエハーからの保護膜の剥離の有無を検査した。保護膜の一部又は全部が剥がれ、シリコンウエハー表面が露出した場合は、試験に供した保護膜はアルカリ性過酸化水素水耐性が不十分と判断される。これらの評価結果を表6に示す。
【0277】
【表6】
【0278】
表6に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例5-1~5-22)は、いずれの場合も保護膜の剥離が見られなかった。一方、比較例5-1~5-9においては耐熱性や溶剤耐性が確保されているものであっても、保護膜の剥離が見られた。このことから、本発明のようなフッ素原子と水酸基が共存するポリイミド化合物は、アルカリ性過酸化水素耐性に優れることが分かった。さらに末端基に水酸基を含有するポリイミドを添加しても、アルカリ性過酸化水素耐性に優れることが分かった。
【0279】
実施例6 パターン形成試験(実施例6-1~6-22、比較例6-1~6-9)
上記の保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)を、それぞれ、300nmのSiO膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒焼成し、膜厚200nmの保護膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にCVD-SiONハードマスクを形成し、更に有機反射防止膜材料(ARC-29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0280】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表7の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0281】
【表7】
【0282】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)に用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【0283】
【化76】
【0284】
【化77】
【0285】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表8の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0286】
【表8】
【0287】
液浸保護膜材料(TC-1)に用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化78】
【0288】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0289】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD-SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして保護膜をエッチングして保護膜パターンを形成した。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0290】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力10.0Pa
RFパワー1,500W
CFガス流量75sccm
ガス流量15sccm
時間15sec
【0291】
ハードマスクパターンの保護膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー500W
Arガス流量75sccm
ガス流量45sccm
時間120sec
【0292】
保護膜パターン形成の可否は、保護膜エッチング後のウエハーを上空SEM観察(top-down SEM view)することにより確認した。続いて、ウエハーを2cm幅に切断し、このウエハー片を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に、70℃で5分間浸漬、脱イオン水でリンス、乾燥後に、光学顕微鏡を用いて観察し、保護膜パターンの剥離有無を評価した。これらの評価結果を表9に示す。
【0293】
【表9】
【0294】
表9に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例6-1~6-22)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが保護膜まで良好に転写されており、本発明の保護膜形成組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。さらに、形成した保護膜パターンのアルカリ性過酸化水素水耐性が良好であることも確認できた。比較例6-3においては耐熱性が不足するもののパターンを形成することはできた。さらに比較例6-1、6-2、6-4においては耐熱性と伴に溶剤耐性も不足するがパターンは形成することができた。一方、比較例6-1~6-9においては耐熱性や溶剤耐性が確保されているものであっても、形成した保護膜パターンに剥離が見られた。従って、本発明の保護膜形成組成物及びパターン形成方法はアルカリ性過酸化水素水等を用いた薬液エッチングと多層レジスト法を組み合わせた微細加工による半導体装置製造を可能とする上で特に有用である。
【0295】
実施例7 パターン形成試験(実施例7-1~7-22、比較例7-1~7-9)
上記の保護膜形成組成物(UDL-1~22、比較UDL-1~9)を、それぞれ、トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒焼成した。実施例6と同じ方法で塗布膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行ない、保護膜パターンを形成した。さらに、得られた保護膜パターンをマスクにしてSiO膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0296】
保護膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー2,200W
12ガス流量20sccm
ガス流量10sccm
Arガス流量300sccm
ガス流量60sccm
時間90sec
【0297】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表10に示す。
【0298】
【表10】
【0299】
表10に示されるように、本発明の保護膜形成組成物(実施例7-1~7-22)の結果、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の保護膜形成組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例7-1~7-4においては耐熱性や溶剤耐性が確保されているものであっても、パターンの埋め込みが不良であるためにパターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることが出来なかった。
【0300】
以上のことから、本発明の保護膜形成組成物であれば、酸素を含まない不活性ガス下においても400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる保護膜形成組成物として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できるため、半導体装置製造における微細パターニングのための多層レジストプロセスに好適に用いることができ、特には、ウェットエッチング加工を含む多層レジストプロセスにも適用可能であり、産業上極めて有用である。
【0301】
本明細書は、以下の発明を包含する。
【0302】
[1]:(A)下記(I)及び(II)のうちのいずれかで表されるフッ素原子及び水酸基を有する重合体、又は下記(III)で表されるフッ素原子を有する重合体と水酸基を有する重合体との混合物、(I)下記一般式(1A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、(II)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位とを有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体、(III)下記一般式(2A)で示される少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体と、下記一般式(3A)で示される少なくとも1つ以上の水酸基を含む繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(1B)及び(1C)のいずれかで示される基のものである重合体との混合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とするアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化79】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子又は水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含み、WとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化80】
(式中、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上のフッ素原子を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化81】
(式中、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい4価の有機基であり、Wは1種類以上の水酸基を含んでいてもよい2価の有機基であり、かつWとWのうち少なくとも一方は1つ以上の水酸基を含む。)
【化82】
【化83】
(式中、Rは下記式(1D)で示される基のいずれかであり、2種以上のRを組み合わせて用いてもよい。)
【化84】
【0303】
[2]:前記一般式(1A)中のWに少なくとも1つ以上のフッ素原子及び水酸基を含むことを特徴とする上記[1]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0304】
[3]:前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1E)で示される基であることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化85】
【0305】
[4]:前記一般式(1A)中のWが下記一般式(1F)で示される基のうちのいずれかであることを特徴とする上記[1]、上記[2]、又は上記[3]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化86】
【0306】
[5]:さらに、(A’)成分として、下記一般式(4A)で示される繰り返し単位を有するものであって、末端基が下記一般式(2C)で示される基のものである重合体(IV)を含有することを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、又は上記[4]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【化87】
(式中、Wは4価の有機基であり、Wは2価の有機基である。)
【化88】
(式中、Rは炭素数1~10の1価の有機基を表し、n1は0または1の整数を表し、n2およびn3は、1≦n2≦6および0≦n3≦6であり、かつ、1≦n2+n3≦6の関係を満たす。)
【0307】
[6]:前記(A)成分の重量平均分子量が、1000~10000であることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、又は上記[5]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0308】
[7]:前記(B)成分が、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、又は上記[6]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0309】
[8]:前記保護膜形成組成物が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、又は上記[7]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0310】
[9]:前記保護膜形成組成物が、アンモニア含有過酸化水素水に耐性を示す保護膜を与えるものであることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、又は上記[8]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0311】
[10]:前記保護膜形成組成物が、前記保護膜を成膜したシリコン基板を、アンモニア0.5質量%を含む1.0質量%過酸化水素水に70℃で5分間浸漬した際に、前記保護膜の剥がれが観察されないものであることを特徴とする上記[9]に記載のアルカリ性過酸化水素水に対する保護膜形成組成物。
【0312】
[11]:基板上に、上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物が硬化した保護膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
【0313】
[12]:半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする保護膜の形成方法。
【0314】
[13]:半導体装置の製造工程で適用される保護膜の形成方法であって、被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を回転塗布し、該保護膜形成組成物が塗布された被加工基板を空気中で50℃以上250℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理を加えて硬化膜を得ることを特徴とする保護膜の形成方法。
【0315】
[14]:前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることを特徴とする上記[12]又は上記[13]に記載の保護膜の形成方法。
【0316】
[15]:前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする上記[12]、上記[13]、又は上記[14]に記載の保護膜の形成方法。
【0317】
[16]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(I-1)被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、(I-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、(I-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、(I-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、(I-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び(I-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0318】
[17]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(II-1)被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、(II-2)前記保護膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成する工程、(II-3)前記ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成する工程、(II-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する工程、(II-6)前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び(II-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0319】
[18]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(III-1)被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、(III-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、(III-3)前記無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程、(III-4)前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、(III-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、(III-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び(III-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0320】
[19]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(IV-1)被加工基板上に上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、上記[7]、上記[8]、上記[9]、又は上記[10]に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成する工程、(IV-2)前記保護膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成する工程、(IV-3)前記無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成する工程、(IV-4)前記有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程、(IV-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写する工程、(IV-6)前記パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記保護膜にエッチングでパターンを転写する工程、及び(IV-7)前記パターンが転写された保護膜をマスクにして前記被加工基板にパターンを形成する工程、を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0321】
[20]:前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする上記[18]又は上記[19]に記載のパターン形成方法。
【0322】
[21]:前記(I-6)工程、又は(II-6)工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする上記[16]又は上記[17]に記載のパターン形成方法。
【0323】
[22]:前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてアルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより、前記被加工基板にパターンを転写する工程を有することを特徴とする上記[16]、上記[17]、上記[18]、上記[19]、又は上記[20]に記載のパターン形成方法。
【0324】
[23]:前記(I-7)工程、(II-7)工程、(III-7)工程、又は(IV-7)工程において、前記パターンが転写された保護膜をマスクにしてイオン打込みを行うことにより、前記被加工基板をパターン加工する工程を有することを特徴とする上記[16]、上記[17]、上記[18]、上記[19]、又は上記[20]に記載のパターン形成方法。
【0325】
[24]:前記イオン打込みによって被加工基板をパターン加工する工程の後、更に、アルカリ性過酸化水素水を用いたウェットエッチングで、前記パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜を除去する工程を有することを特徴とする上記[23]に記載のパターン形成方法。
【0326】
[25]:前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする上記[16]、上記[17]、上記[18]、上記[19]、上記[20]、上記[21]、上記[22]、上記[23]、又は上記[24]に記載のパターン形成方法。
【0327】
[26]:前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする上記[16]、上記[17]、上記[18]、上記[19]、上記[20]、上記[21]、上記[22]、上記[23]、上記[24]、又は上記[25]に記載のパターン形成方法。
【0328】
[27]:前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする上記[16]、上記[17]、上記[18]、上記[19]、上記[20]、上記[21]、上記[22]、上記[23]、上記[24]、上記[25]、又は上記[26]に記載のパターン形成方法。
【0329】
[28]:前記被加工基板として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする上記[27]に記載のパターン形成方法。
【0330】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0331】
1…基板、 2…被加工層、 2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、
3…保護膜、 3’…保護膜形成組成物、 3a…保護膜パターン、
4…ケイ素含有レジスト中間膜、 4a…ケイ素含有レジスト中間膜パターン、
5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン、 6…露光部分、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…保護膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…保護膜、
delta10…トレンチ部分と非トレンチ部分の保護膜10の段差。
図1
図2
図3
図4