(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-18
(45)【発行日】2025-04-28
(54)【発明の名称】熱成形用シート及びそれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20250421BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250421BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250421BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250421BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20250421BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250421BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/36
B32B27/20 Z
B32B27/30 D
B32B1/00 Z
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021028182
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501034(JP,A)
【文献】特開2009-263589(JP,A)
【文献】特表平06-504742(JP,A)
【文献】特開2006-015605(JP,A)
【文献】特開2014-118547(JP,A)
【文献】特表2019-526476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を構成する表面層と、
裏面を構成する裏面層と、を有
する熱成形用シートであって、
前記表面層及び前記裏面層は、ポリエステルと、ブロッキング防止剤とを含み、
前記表面及び前記裏面は、前記ポリエステルと、前記ブロッキング防止剤とが露出し
、
前記表面層及び前記裏面層は、それぞれ第一層と、
第二層と、を含む積層体であり、
前記第一層は、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであって、かつ非晶性であるポリエステルを含み、前記熱成形用シートの外側に位置し、
前記第二層は、前記第一層の前記ポリエステルよりもガラス転移温度が低いポリエステルを含み、前記熱成形用シートの内側に位置し、
前記第一層は、前記第二層よりも薄い熱成形用シート。
【請求項2】
前記第一層のガラス転移温度は、前記第二層のガラス転移温度よりも高く、
前記第一層のガラス転移温度と前記第二層のガラス転移温度との差は、15℃以上65℃以下である請求項1に記載の熱成形用シート。
【請求項3】
前記ブロッキング防止剤が、ガラスフィラーである、請求項1
または2に記載の熱成形用シート。
【請求項4】
前記ガラスフィラーが、粒状であって、平均粒径1μm以上10μm以下である、請求項
3に記載の熱成形用シート。
【請求項5】
前記ブロッキング防止剤が、ポリジメチルシロキサン樹脂である、請求項1
または2に記載の熱成形用シート。
【請求項6】
前記表面層と前記裏面層との間に存在する中間層を有し、
前記中間層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項1か
ら5のいずれか一項に記載の熱成形用シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱成形用シートを材料とする包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形用シート及びそれを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の包装容器としては、ポリエステル等を含む一層又は複数層の熱成形用シートを成形して製造されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、成形された包装容器を金型から外す際に、包装容器が金型から外しにくいことがある。そのような場合、成形された包装容器を金型から外す際に、包装容器と金型とが擦れ、包装容器に擦れ傷等が発生してしまうことがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、金型を用いて包装容器等を成型する際に金型から外しやすい熱成形用シートと、その熱成形用シートから製造された包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
【0007】
[1]表面を構成する表面層と、裏面を構成する裏面層と、を有し、前記表面層及び前記裏面層は、ポリエステルと、ブロッキング防止剤とを含み、前記表面及び前記裏面は、前記ポリエステルと、前記ブロッキング防止剤とが露出している熱成形用シート。
【0008】
[2]前記ブロッキング防止剤が、ガラスフィラーである、[1]に記載の熱成形用シート。
【0009】
[3]前記ガラスフィラーが、粒状であって、平均粒径1μm以上10μm以下である、[2]に記載の熱成形用シート。
【0010】
[4]前記ブロッキング防止剤が、ポリジメチルシロキサン樹脂である、[1]に記載の熱成形用シート。
【0011】
[5]前記表面層及び前記裏面層は、それぞれ、第一層と、第二層と、を含む積層体であり、前記第一層は、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであって、かつ非晶性であるポリエステルを含み、前記熱成形用シートの外側に位置し、前記第二層は、前記第一層の前記ポリエステルよりもガラス転移温度が低いポリエステルを含み、前記熱成形用シートの内側に位置し、前記第一層は、前記第二層よりも薄い、[1]から[4]のいずれか一項に記載の熱成形用シート。
【0012】
[6]前記表面層と前記裏面層との間に存在する中間層を有し、前記中間層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の熱成形用シート。
【0013】
[7][1]から[6]のいずれか一項に記載の熱成形用シートを材料とする包装容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型から外しやすい包装容器を製造するための熱成形用シートと、その熱成形用シートから製造された、金型から外しやすい包装容器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の一例である熱成形用シート1の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態の一例である熱成形用シート6の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、熱成形用シートを材料とする包装容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る熱成形用シートについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0017】
<熱成形用シート>
本明細書において、「熱成形用シート」は、合成樹脂製品、例えば、包装容器、を製造するためのシートである。以下の説明では、「熱成形用シート」を「シート」と称することもある。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の一例である熱成形用シートの構成を示す断面図である。
図1に示す通り、シート1は、表面層2と、中間層3と、裏面層4と、を含む。シート1は、表面層2、中間層3、裏面層4の順に積層された積層体である。以下に各層について説明する。
【0019】
本明細書において、樹脂の名前を言及した場合、その樹脂自体を指す。例えば「ポリエステル」と言及した場合、ポリエステル自体を指す。一方、組成物を言及した場合、樹脂を含む組成物全体を指す。例えば、「樹脂組成物」又は「ポリエステル組成物」と言及した場合、樹脂を含む組成物全体、又はポリエステルを含む組成物全体を指す。
【0020】
本明細書において、シート1の全体の厚さ、又はシート1を構成する層の厚さを説明する場合、特に前置きがなければ、厚さは、成形前のシートの厚さを指すものとする。
【0021】
(表面層及び裏面層)
表面層2及び裏面層4の表面は、それぞれ、シート1の表面1a及び裏面1bである。包装容器への成形後に、表面1aは外界側の最外層になり、裏面1bは内容物側の最外層になる。
【0022】
表面層2及び裏面層4は、樹脂を主として含む。表面層2及び裏面層4に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン(6-ナイロン、6,6-ナイロンなど)等のポリアミド、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。表面層2及び裏面層4に含まれる樹脂としては、ポリエステルが好ましい。
【0023】
表面層2及び裏面層4は、例えば、ポリエステルを主として含む。本明細書において、表面層2及び裏面層4が「ポリエステルを主として含む」とは、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、ポリエステルの含有率が少なくとも50質量%以上であることを意味する。
【0024】
表面層2及び裏面層4は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、ポリエステルを80質量%以上含むことが好ましい。表面層2及び裏面層4は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、ポリエステルを90質量%以上含むことがより好ましい。含有量の上限値は特に限定はされないが、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、ポリエステルが99質量%以下であることが好ましい。
【0025】
表面層2及び裏面層4において、ポリエステル以外の任意の成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料等の添加物を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「ポリエステル」は、コポリエステルを包含する。表面層2及び裏面層4に含まれるポリエステルとしては、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであって、かつ非晶性であるポリエステルである。その他のポリエステルとしては、例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位を持つ非晶性であるポリエステル、又はスピログリコール、若しくはイソソルビド、などのジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0027】
以下の説明では、上記シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであってかつ非晶性であるポリエステルを、ポリエステルAと称することがある。
【0028】
ポリエステルAは、自身で製造したもの、又は市販物を使用してもよい。市販物としては、例えば、トライタンFX-200(イーストマン・ケミカル・カンパニー社)がある。
【0029】
表面層2及び裏面層4に含まれるポリエステルのガラス転移温度(Tg)は60℃以上が好ましい。より好ましくは、70℃以上である。ポリエステルのTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0030】
ポリエステルAのガラス転移温度(Tg)は105℃以上が好ましい。より好ましくは、115℃以上である。ポリエステルAのTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0031】
表面層2及び裏面層4は、同じ組成であってもよい。または、表面層2及び裏面層4は、互いに異なる組成でもよい。
【0032】
表面層2及び裏面層4は、ブロッキング防止剤を含む。本明細書において、「ブロッキング防止剤」とは、シートの摩擦係数を下げて、シートから成形された包装容器を金型から外しやすくするための添加物である。ブロッキング防止剤は、マトリクスであるポリエステルと相溶しないため、当然に表面1a及び裏面1bに露出している。
【0033】
シートから成形された包装容器を金型から外す際に、包装容器が金型から外しにくいことがある。そのため、成形された包装容器を金型から外す際に、包装容器と金型とが擦れ、包装容器に擦れ傷等が発生してしまうことがある。ブロッキング防止剤を添加することで、成形された包装容器を金型から外しやすくすることができ、包装容器に擦れ傷等が発生するのを抑えることができる。
【0034】
本明細書において、成形された包装容器の金型からの外しやすさは、成形された包装容器の摩擦係数の値で評価される。成形された包装容器の摩擦係数の値が小さい場合、成形された包装容器は「金型から外しやすい」と評価される。「成形された包装容器を金型から外しやすい」と評価される静止摩擦係数及び動摩擦係数の値は、例えば、0.40以下である。より好ましくは、0.39以下である。さらにより好ましくは、0.38以下である。静止摩擦係数及び動摩擦係数の値は、JISK7125「プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法」に準拠して測定される。
【0035】
また、本明細書において、包装容器に擦れ傷等が付くのを抑えて成形できることを「成形性が良い」という。「成形性の良さ」は、真空成型機(フォーミング480、成光産業株式会社)を使用して、評価される。例えば、加熱温度200℃で一定、加熱時間20秒としたときの成形性が評価される。
【0036】
(ブロッキング防止剤1)
ブロッキング防止剤としては、例えば、ガラスが挙げられる。ガラスはフィラーであり、粒状であることが好ましい。ガラスフィラーの平均粒径は0.1μm以上が好ましい。より好ましくは、1μm以上である。ガラスフィラーの平均粒径は50μm以下が好ましい。より好ましくは、20μm以下である。さらにより好ましくは、10μm以下である。
【0037】
ガラスフィラーは、それ自体をシートの原料に添加してもよいが、ポリエステルに混ぜてからシートの原料に添加してもよい。その際、ガラスフィラーを混ぜるためのポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである。ガラスフィラーを混ぜるためのポリエステルは、シートの原料となるポリエステルと同一でもよく、異なってもよい。以下の説明では、「ガラスフィラーとガラスフィラーを混ぜるためのポリエステルとの混合物」を、ブロッキング防止混合物と称することがある。
【0038】
ブロッキング防止混合物は、ブロッキング防止混合物の全量に対して、ガラスフィラーを0.1質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上である。ブロッキング防止混合物は、ブロッキング防止混合物の全量に対して、ガラスフィラーを25質量%以下で含むことが好ましい。より好ましくは、20質量%以下である。さらにより好ましくは、15質量%以下である。
【0039】
ブロッキング防止混合物は、自身で製造したもの、又は市販物を使用してもよい。市販物としては、例えば、スムースマスターG(ガラスフィラーの平均粒径:5μm、ガラスフィラーの含有率:10質量%、大日精化工業株式会社)がある。
【0040】
表面層2及び裏面層4に添加するガラスフィラーの量又は濃度は、適切に調節することができる。表面層2及び裏面層4に添加するガラスフィラーの終濃度は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、0.05質量%以上が好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上である。表面層2及び裏面層4に添加するガラスフィラーの終濃度は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、10質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以下である。さらにより好ましくは、1質量%以下である。
【0041】
(ブロッキング防止剤2)
ブロッキング防止剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン樹脂が挙げられる。ポリジメチルシロキサン樹脂は、それ自体をシートの原料に添加してもよいが、シリコーンに混ぜてからシートの原料に添加してもよい。その際、ポリジメチルシロキサン樹脂を混ぜるためのシリコーンは、ポリジメチルシロキサン樹脂でもよく、その他のシリコーンでもよい。ポリジメチルシロキサン樹脂を混ぜるためのシリコーンは、例えば、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸変性ポリジメチルシロキサン、フルオロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、又はシラノール変性ポリジメチルシロキサン等である。以下の説明では、「ポリジメチルシロキサン樹脂とポリジメチルシロキサン樹脂を混ぜるためのシリコーンとの混合物」を、ブロッキング防止シリコーンと称することがある。
【0042】
ブロッキング防止シリコーンは、ブロッキング防止シリコーンの全量に対して、ポリジメチルシロキサン樹脂を20質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、40質量%以上である。ブロッキング防止シリコーンは、ブロッキング防止シリコーンの全量に対して、ポリジメチルシロキサン樹脂を、80質量%以下で含むことが好ましい。より好ましくは、60質量%以下である。
【0043】
ブロッキング防止シリコーンは、自身で製造したもの、又は市販物を使用してもよい。市販物としては、例えば、MB50-010(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社)がある。
【0044】
表面層2及び裏面層4に添加するポリジメチルシロキサン樹脂の量又は濃度は、適切に調節することができる。表面層2及び裏面層4に添加するポリジメチルシロキサン樹脂の終濃度は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、0.1質量%以上が好ましい。より好ましくは、1質量%以上である。表面層2及び裏面層4に添加するポリジメチルシロキサン樹脂の終濃度は、表面層2及び裏面層4を構成する全量に対して、10質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以下である。
【0045】
表面層2は、第一層21と第二層22とを含んでもよい。また、裏面層4は、第一層41と第二層42とを含んでもよい。第一層21及び第一層41の組成は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。第二層22及び第二層42の組成は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。
【0046】
表面層2及び裏面層4は、「外側に位置する第一層と内側に位置する第二層とを含み」、「第一層が第二層よりも薄く」、さらに、「第一層の組成物のTgが第二層の組成物のTgよりも高い」と、シートの耐熱性と成形のしやすさを両立することができる。第一層の組成物のTgと第二層の組成物のTgとの差は、15℃以上65℃以下が好ましい。より好ましくは、25℃以上55℃以下である。
【0047】
成形のしやすさを求めて表面層2及び裏面層4をTgの低い樹脂組成物を用いた単層にした場合、耐熱性が悪くなる。一方で、耐熱性を求めて表面層2及び裏面層4をTgの高い樹脂組成物を用いた単層にした場合、成形が難しくなる。
【0048】
表面層2及び裏面層4の外側に位置する第一層の樹脂組成物のTgを、その内側に位置する第二層の樹脂組成物のTgよりも高くする。さらに、第一層の厚みを、第二層よりも薄くする。それによって、耐熱性と成形のしやすさを両立することができる。
【0049】
耐熱性の評価は、成形機を想定して行われる。2枚の加熱板を上下に設置し、加熱板の間隔を100mmとし、2枚の加熱板の中間の位置に、各シートを加熱板に触れないように挿入する。例えば、加熱板の温度を120℃とする。シートを所定の位置に挿入後、加熱板の熱でシートが熱せられ、シートが柔らかくなる。柔らかくなったシートが、下方の加熱板に垂れてくるまでの時間を計測して、耐熱性を評価する。
【0050】
第一層21は、ポリエステルAを主として含む。第一層21は、熱成形用シート1の外側に位置する。
【0051】
第二層22は、ポリエステルAよりもTgが低いポリエステルを主として含む。第二層22は、熱成形用シートの内側に位置する。
【0052】
第一層21と第二層22との、厚さの比は適切に調節することができる。第一層21は、第二層22よりも薄いことが好ましい。
【0053】
第一層41は、ポリエステルAを主として含む。第一層41は、熱成形用シート1の外側に位置する。
【0054】
第二層42は、ポリエステルAよりもTgが低いポリエステルを主として含む。第二層42は、熱成形用シートの内側に位置する。
【0055】
第一層41と第二層42との、厚さの比は適切に調節することができる。第一層41は、第二層42よりも薄いことが好ましい。
【0056】
以下の説明では、「ポリエステルAよりもTgが低いポリエステル」を、ポリエステルBと称することがある。ポリエステルBは、例えば、ジエチレングリコール由来、1,4-ブタンジオール由来、1,3-プロパンジオール由来またはイソフタル酸由来の構成単位を含む変性ポリエステル等が挙げられる。
【0057】
第二層22及び42に含まれる、ポリエステルBのTgは60℃以上であることが好ましい。より好ましくは、70℃以上である。第二層22及び42に含まれる、ポリエステルBのTgの上限は、第一層21及び41に含まれるポリエステルAのTgよりも低い限り、特に限定されないが、一般的には120℃以下である。
【0058】
第一層21及び41を構成するポリエステルA組成物のTgは100℃以上であることが好ましい。より好ましくは、105℃以上であってもよく、115℃以上であってもよい。第一層21及び41を構成するポリエステルA組成物のTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0059】
第二層22及び42を構成するポリエステルB組成物のTgは60℃以上であることが好ましい。より好ましくは、70℃以上である。第二層22及び42に含まれるポリエステルB組成物のTgの上限は、第一層21及び41に含まれるポリエステルA組成物のTgよりも低い限り、特に限定されないが、一般的には120℃以下である。
【0060】
表面層2及び裏面層4の厚さは、適切に調節することができる。表面層2及び裏面層4の厚さは、シート1の全体の厚さの60%以上であることが好ましい。より好ましくは、70%以上である。表面層2及び裏面層4の厚さは、シート1の全体の厚さの90%以下であることが好ましい。より好ましくは、80%以下である。
【0061】
表面層2の厚さは適切に調節することができ、例えば、80μm以上である。表面層2の厚さは、例えば、120μm以下である。
【0062】
裏面層4の厚さは適切に調節することができ、例えば、80μm以上である。裏面層4の厚さは、例えば、120μm以下である。
【0063】
(中間層)
中間層3は、水蒸気バリア機能を有する。中間層3は、表面層2と裏面層4との間に設けられる層である。
【0064】
中間層3は、フッ素樹脂を主として含む。中間層3がフッ素樹脂を含むことにより、シート1は、水分の侵入を抑制することができる。
【0065】
中間層3において、フッ素樹脂以外の任意の成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料等の添加物を挙げることができる。
【0066】
中間層3に含まれるフッ素樹脂は、フッ素樹脂の中でも水蒸気バリア性、機械的強度、ガスバリア性、成形のしやすさ等に優れたポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)であることが好ましい。
【0067】
中間層3の厚さは適切に調節することができ、例えば、15μm以上50μm以下である。
【0068】
(接着樹脂層)
接着樹脂層5a及び5bは、それぞれ、表面層2と中間層3との間、及び中間層3と裏面層4との間に配置される層である。接着樹脂層5a及び5bは、それぞれ、表面層2と中間層3とを、及び中間層3と裏面層4とを接着する。
【0069】
接着樹脂層5a及び5bに含まれる接着性樹脂は、公知のものを使用することができる。接着樹脂層5a及び5bは、酸変性ポリオレフィンを主として含むことが好ましい。
【0070】
接着樹脂層5a及び5bにおいて、酸変性ポリオレフィン以外の任意の成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料等の添加物を挙げることができる。
【0071】
接着樹脂層5a及び5bに含まれる酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等を使用することができる。接着樹脂層5a及び5bに含まれる酸変性ポリオレフィンは、酸変性ポリエチレンであることが好ましい。酸変性ポリオレフィンの酸基は、無水マレイン酸であることが好ましい。すなわち、酸変性ポリエチレンは、無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0072】
接着樹脂層5a及び5bの組成は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。
【0073】
接着樹脂層5a及び5bの厚さは特に限定しないが、例えば、10μm以上である。接着樹脂層5a及び5bの厚さは、例えば、30μm以下である。
【0074】
本実施形態のシート1の厚さは適切に調節することができ、例えば、250μm以上である。シート1の厚さは、例えば、400μm以下であり、300μm以下であってもよい。
【0075】
シート1は、表面層2と、中間層3と、裏面層4と、接着樹脂層5aと、接着樹脂層5bと、を含めばよいが、必要に応じてその他の層を、表面層2と裏面層4との間に適宜導入してもよい。その際、導入された層とその他の層との間に、接着樹脂層を導入してもよい。
【0076】
図2は、本発明の実施形態の一例である熱成形用シート6の構成を示す断面図である。シート6は、
図1の表面層2及び裏面層4が同じ組成であって、かつ、表面層2及び裏面層4の間にその他の層を含まない場合のシートである。
【0077】
シート6は、樹脂を主として含む。シート6に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン(6-ナイロン、6,6-ナイロンなど)等のポリアミド、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。シート6に含まれる樹脂としては、ポリエステルが好ましい。
【0078】
シート6は、例えば、ポリエステルを主として含む。本明細書において、シート6が「ポリエステルを主として含む」とは、シート6を構成する全量に対して、ポリエステルの含有率が少なくとも50質量%以上であることを意味する。
【0079】
シート6は、シート6を構成する全量に対して、ポリエステルを50質量%以上含むことが好ましい。シート6は、シート6を構成する全量に対して、ポリエステルを80質量%以上含むことがより好ましい。含有量の上限値は特に限定はされないが、シート6を構成する全量に対して、ポリエステルが99質量%以下であることが好ましい。
【0080】
シート6において、ポリエステル以外の任意の成分としては、公知の安定剤、帯電防止剤、着色料等の添加物を挙げることができる。
【0081】
本明細書において、「ポリエステル」は、コポリエステルを包含する。シート6に含まれるポリエステルとしては、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであって、かつ非晶性であるポリエステルである。その他のポリエステルとしては、例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール由来の構成単位を持つ非晶性であるポリエステル、又はスピログリコール、若しくはイソソルビド、などのジオール成分で変性した非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0082】
シート6に含まれるポリエステルのガラス転移温度(Tg)は60℃以上が好ましい。より好ましくは、70℃以上である。ポリエステルのTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0083】
ポリエステルAのガラス転移温度(Tg)は105℃以上が好ましい。より好ましくは、115℃以上である。ポリエステルAのTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0084】
シート6は、ブロッキング防止剤を含む。ブロッキング防止剤は、マトリクスであるポリエステルと相溶しないため当然に、シート6の表面及び裏面に露出している。
【0085】
さらに、
図2に示すように、シート6は、第一副層71と第二副層72とを、シート6の外側に含んでもよい。すなわち、シート6は、第一副層71と、主層73と、第二副層72とを含んでもよい。すなわち、シート6は、第一副層71、主層73、第二副層72の順に積層される。
【0086】
成形のしやすさを求めてシート6をTgの低い樹脂組成物を用いた単層にした場合、耐熱性が悪くなる。一方で、耐熱性を求めてシート6をTgの高い樹脂組成物を用いた単層にした場合、成形が難しくなる。
【0087】
シート6は、「外側に位置する第一副層71と第二副層72とを含み」、「第一副層71及び第二副層72が主層73よりも薄く」、さらに、「第一副層71及び第二副層72の組成物のTgが主層73の組成物のTgよりも高い」と、シートの耐熱性と成形のしやすさを両立することができる。第一副層71及び第二副層72の組成物のTgと主層73の組成物のTgとの差は、15℃以上65℃以下が好ましい。より好ましくは、25℃以上55℃以下である。
【0088】
耐熱性の評価は、成形機を想定して行われる。2枚の加熱板を上下に設置し、加熱板の間隔を100mmとし、2枚の加熱板の中間の位置に、各シートを加熱板に触れないように挿入する。例えば、加熱板の温度を120℃とする。シートを所定の位置に挿入後、加熱板の熱でシートが熱せられ、シートが柔らかくなる。柔らかくなったシートが、下方の加熱板に垂れてくるまでの時間を計測して、耐熱性を評価する。
【0089】
第一副層71及び第二副層72は、ポリエステルAを主として含む。第一副層71及び第二副層72は、熱成形用シート6の外側に位置する。
【0090】
主層73は、ポリエステルAよりもTgが低いポリエステルを主として含む。主層73は、熱成形用シート6の内側に位置する。
【0091】
第一副層71及び第二副層72と主層73との、厚さの比は適切に調節することができる。第一副層71及び第二副層72は、主層73よりも薄いことが好ましい。
【0092】
以下の説明では、「ポリエステルAよりもTgが低いポリエステル」を、ポリエステルBと称することがある。ポリエステルBは、例えば、ジエチレングリコール由来、1,4-ブタンジオール由来、1,3-プロパンジオール由来またはイソフタル酸由来の構成単位を含む変性ポリエステル等が挙げられる。
【0093】
主層73に含まれる、ポリエステルBのTgは60℃以上であることが好ましい。より好ましくは、70℃以上である。主層73に含まれる、ポリエステルBのTgの上限は、第一副層71及び第二副層72に含まれるポリエステルAのTgよりも低い限り、特に限定されないが、一般的には120℃以下である。
【0094】
第一副層71及び第二副層72を構成するポリエステルA組成物のTgは100℃以上であることが好ましい。より好ましくは、105℃以上であってもよく、115℃以上であってもよい。第一副層71及び第二副層72を構成するポリエステルA組成物のTgの上限は特に限定されないが、一般的には130℃以下である。
【0095】
主層73を構成するポリエステルB組成物のTgは60℃以上であることが好ましい。より好ましくは、70℃以上である。主層73を構成するポリエステルB組成物のTgの上限は、第一副層71及び第二副層72を構成するポリエステルA組成物のTgよりも低い限り、特に限定されないが、一般的には120℃以下である。
【0096】
本実施形態のシート6の厚さは適切に調節することができ、例えば、250μm以上400μm以下である。シート6の厚さは、例えば、300μm以下である。
【0097】
<包装容器>
本明細書において、熱成形用シートを材料として合成樹脂製品が製造される。合成樹脂製品は、例えば、包装容器である。包装容器の例としては、プレススルーパックが挙げられる。包装容器の用途は制限されないが、例えば、医薬品等を包装するために使用される。包装容器の一部が、アルミニウム箔等の蓋材に置き換えられていてもよい。
【0098】
図3は、熱成形用シートを材料とする包装容器の断面図である。
図3に示す通り、包装容器8は、容器9と蓋材10とを備える。包装容器の大きさは、内容物の大きさに応じて、適切に調節することができる。内容物は、例えば、医薬品である。
【0099】
容器9は、熱成形用シート1を成形して製造される。前述の通り、熱成形用シート1を材料とした場合、表面層2が表面1aを形成し、容器9の外界側の面9aを形成する。裏面層が裏面9bを形成し、容器9の内容物側の面9bを形成する。
【0100】
蓋材10は、水蒸気バリア性を有する。蓋材10は、熱成形用シート1を成形して製造されてもよい。蓋材10は、公知の蓋材であってよく、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0102】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
<熱成形用シートの作製>
後述する樹脂を用いて、表面層、接着樹脂層、中間層、接着樹脂層、裏面層が順に積層された熱成形用シートを製造した。各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶解したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って、5層からなる熱成形用シートを得た。各層の原料となる樹脂は以下の通りである。
【0104】
表面層及び裏面層には、ポリエステルを使用した。第一層には、ポリエステルAとして、トライタンFX-200(Tg:119℃、イーストマン・ケミカル・カンパニー社)を使用した。第二層には、ポリエステルBとして、クラペットKS710B-8S(Tg:82℃、クラレ社)を使用した。ポリエステルBは、シクロヘキサンジメタノール由来の構成単位を持つポリエステルであってかつ非晶性のポリエステルではない、ポリエステルである。
【0105】
中間層には、PCTFEとして、DF0050-C1(ダイキン工業株式会社)を使用した。
【0106】
接着樹脂層には、無水マレイン酸変性ポリエチレンとして、アドマー(登録商標)無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社)を使用した。
【0107】
(実施例1)
表面層及び裏面層の外側の第一層にはポリエステルAを使用し、内側の第二層にはポリエステルBを使用した。表面層及び裏面層の第一層厚さは、それぞれ20μmとし、第二層の厚さはそれぞれ80μmとした。樹脂接着層には、アドマーを使用した。接着樹脂層の厚さは15μmとした。中間層には、PCTFEを使用した。中間層の厚さは20μmとした。実施例1の全体の厚さは250μmとした。
【0108】
表面層及び裏面層のポリエステルに、ブロッキング防止剤としてガラスフィラーを添加した。ガラスフィラーは、ブロッキング防止混合物の形態で添加した。ブロッキング防止混合物としては、スムースマスターG(ガラスフィラーの平均粒径:5μm、ガラスフィラーの含有率:10質量%、大日精化工業株式会社)を添加した。表面層及び裏面層を構成する全量に対して、ガラスフィラーの終濃度は0.48質量%とした。ブロッキング防止剤は、マトリクスであるポリエステルと相溶しないため、当然に表面に露出すると認められる。
【0109】
(実施例2)
表面層及び裏面層を構成する全量に対してガラスフィラーの終濃度は5質量%とした以外は、実施例1と同じとして、実施例2のシートを製造した。
【0110】
(実施例3)
ブロッキング防止剤としてポリジメチルシロキサン樹脂を添加した以外は、実施例1と同じとして、実施例3のシートを製造した。ポリジメチルシロキサン樹脂はブロッキング防止シリコーンの形態で添加した。ブロッキング防止シリコーンとしては、MB50-010(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社)を添加した。表面層及び裏面層を構成する全量に対して、ポリジメチルシロキサン樹脂の終濃度は1.5質量%とした。ブロッキング防止剤は、マトリクスであるポリエステルと相溶しないため、当然に表面に露出すると認められる。
【0111】
(実施例4)
ブロッキング防止剤としてポリジメチルシロキサン樹脂を添加した以外は、実施例1と同じとして、実施例4のシートを製造した。実施例3と同じ組成であるが、表面層及び裏面層を構成する全量に対して、ポリジメチルシロキサン樹脂の終濃度は3質量%とした。
【0112】
(比較例1)
ブロッキング防止剤を添加しなかった以外は実施例1と同じとして、比較例1のシートを製造した。
【0113】
実施例1~4及び比較例1の構成を、表1に示した。以下の表では、PEsAは、ポリエステルAを指す。PEsBは、ポリエステルBを指す。また、括弧内の数値は、各層の厚さを指す。例えば、PEsA(20)は、ポリエステルAを含む層が20μmであることを表す。
【0114】
【0115】
ブロッキング防止剤の添加の有無、ブロッキング防止剤の種類、添加量を、表2に記載した。ブロッキング防止剤としてスムースマスターG(ガラスフィラーの平均粒径:5μm、ガラスフィラーの含有率:10質量%、大日精化工業株式会社)を添加した場合は、「ガラス」と記載し、表面層及び裏面層を構成する全量に対する「ガラスフィラー」の終濃度を記載した。ブロッキング防止剤としてMB50-010(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社)を添加した場合は、「シリコーン」と記載し、表面層及び裏面層を構成する全量に対する「ポリジメチルシロキサン樹脂」の終濃度を記載した。ブロッキング防止剤を添加しなかった場合には、「なし」と記載した。
【0116】
【0117】
<熱成形用シートの評価>
(成形された包装容器の金型からの外しやすさの評価)
JISK7125「プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法」に準拠し、成形した各シートの静摩擦係数μS及び動摩擦係数μDを測定した。摩擦係数の値が小さいと、成形された包装容器を金型から外しやすい。逆に、摩擦係数の値が大きいと、成形された包装容器を金型から外しにくい。結果を表3に示した。
【0118】
ブロッキング防止剤を添加した実施例1~4は、ブロッキング防止剤を添加していない比較例1と比較して、摩擦係数の値が小さかった。よって、ブロッキング防止剤による摩擦係数の低下が示された。
【0119】
(全光線透過率・ヘーズの評価)
JISK7361-1「プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法」に準拠し、成形した各シートの全光線透過率を測定した。全光線透過率とは、試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合である。
【0120】
また、JISK7136「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に準拠し、成形する前の各シートのヘーズを測定した。ヘーズとは、試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad以上それた透過光の百分率である。ヘーズは一般に、透明材料の曇り具合を表す指標として用いられる。ヘーズの数値が50%以上であると、試験対象のシートが曇りガラス様であり、試験対象のシートを通しての物体の視認が困難である。逆に、ヘーズの数値が50%未満であると、試験対象のシートを通しての物体の視認が可能である。結果を表3に示した。
【0121】
ブロッキング防止剤を添加していない比較例1、並びにブロッキング防止剤の添加量が比較的少ない実施例1及び3は、ヘーズの数値が50%未満であり、試験対象のシートを通しての物体の視認が可能であった。一方、ブロッキング防止剤の添加量が比較的多い実施例2及び4は、ヘーズの数値が50%以上であり、試験対象のシートを通しての物体の視認がはっきりとはできなかった。
【0122】
(成形性の評価)
成形性の評価では、真空成型機(フォーミング480、成光産業株式会社)を使用して、真空成型適性を検証した。加熱温度200℃で一定、加熱時間20秒としたときの成形性を検証した。成形品を金型から外す際に擦れ傷等が発生したかどうかを目視で確認した。結果を表3に示した。成形品の擦れ傷等が肉眼で確認できなかった場合には、「A」と表した。成形品の擦れ傷等が肉眼で確認された場合には、「B」と表した。
【0123】
実施例1~4のシートの成形品は、擦れ傷等が目視では確認されず、問題なく成形できた。一方、比較例1のシートの成形品は、成形品を金型から取り出す際に、擦れ傷が発生した。上記の成形された包装容器の金型からの外しやすさの評価の結果と合わせて考えると、比較例1のシートの成形品は、成形された包装容器を金型から外しにくいために擦れ傷が発生したと推測される。しかしながら、実施例1~4のシートの成形品に擦れ傷等がなかったメカニズムは、上述の推定メカニズムに限定はされない。
【0124】
【0125】
以上の結果より、本発明が有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0126】
1:熱成形用シート、1a:表面、1b:裏面、2:表面層、21:第一層、22:第二層、3:中間層、4:裏面層、41:第一層、42:第二層、5a:接着樹脂層、5b:接着樹脂層、6:熱成形用シート、71:第一副層、72:第二副層、73:主層、8:包装容器、9:容器、9a:外界側の面、9b:内容物側の面、10:蓋材