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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-21
(45)【発行日】2025-04-30
(54)【発明の名称】光回転プローブの校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20250422BHJP
【FI】
G01B11/24 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021052206
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149877
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】川田 善之
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006848(WO,A1)
【文献】特開2019-074470(JP,A)
【文献】特開2017-187335(JP,A)
【文献】国際公開第2011/120526(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ軸に対して垂直な方向に測定光を出射可能であり且つ前記測定光の出射方向を前記プローブ軸を中心に回転自在な光回転プローブの校正方法であって、
前記測定光の出射方向を、事前に設定した基準方向から微小角度だけ変更する変更ステップと、
前記変更ステップが行われた後、前記測定光の出射方向を前記プローブ軸を中心に回転しつつ、前記光回転プローブと基準物との相対位置を変化させながら、前記光回転プローブから前記基準物に向かって前記測定光を出射することにより、前記基準物の形状誤差を取得する取得ステップと、
前記測定光の出射方向が前記基準方向に一致している場合に得られる前記基準物の形状誤差の理論値と、前記取得ステップで得られた前記基準物の形状誤差の測定値とに基づき、前記基準方向に対する前記測定光の出射方向の調整誤差を算出する調整誤差算出ステップと、
を含む、光回転プローブの校正方法。
【請求項2】
前記微小角度を変えて前記変更ステップ及び前記取得ステップをそれぞれ複数回行い、
前記調整誤差算出ステップは、前記微小角度ごとに取得した前記基準物の形状誤差に基づき、前記基準方向に対する前記測定光の出射方向の調整誤差を算出する、
請求項1に記載の光回転プローブの校正方法。
【請求項3】
前記取得ステップは、前記光回転プローブと前記基準物との距離が一定となるように前記光回転プローブと前記基準物との相対位置を変化させる、
請求項1又は2に記載の光回転プローブの校正方法。
【請求項4】
前記取得ステップは、前記測定光の焦点位置±焦点深度の範囲に前記基準物の被測定面が位置するように前記光回転プローブと前記基準物との相対位置を変化させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光回転プローブの校正方法。
【請求項5】
前記基準物は、前記プローブ軸に対して平行に配置されたピンゲージである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の光回転プローブの校正方法。
【請求項6】
前記取得ステップは、前記基準物の形状誤差として前記ピンゲージの半径誤差を取得する、
請求項5に記載の光回転プローブの校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回転プローブから出射される測定光の出射方向を校正するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の形状を測定する形状測定装置として、例えば、光プローブを用いて測定対象物の様々な測定ポイントの三次元座標値を非接触で検出することにより測定対象物の形状を得る三次元座標測定装置が知られている。光プローブは、測定対象物の測定ポイントに向けて光源からの測定光を照射し、且つこの測定ポイントにて反射された測定光の反射光を受光する。そして、形状測定装置は、干渉計を用いた公知の測定方法により光プローブから測定ポイントまでの距離を検出した結果に基づき、測定対象物の形状を測定する。
【0003】
このような光プローブとして、特許文献1のようなプローブの長手軸の軸周りに回転走査を行うことができる光回転プローブが知られている。光回転プローブを搭載した三次元座標測定装置では、光回転プローブの回転走査を行うことで、例えば円筒状の測定対象物の内面形状を測定したり、表面形状を同時測定したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-098180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、測定対象物の形状測定において局所的部分の大きな曲率の形状を測定するというニーズがある。しかし、特許文献1に記載の三次元測定装置では、校正時に光回転プローブの測定光の出射方向を基準方向に対して正確に設定することが困難であり、このような局所的部分の大きな曲率の形状を測定する場合には測定誤差が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光回転プローブから出射される測定光の出射方向を高精度に校正できる光回転プローブの校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプローブ軸に対して垂直な方向に測定光を出射可能であり且つ測定光の出射方向をプローブ軸を中心に回転自在な光回転プローブの校正方法は、測定光の出射方向を、事前に設定した基準方向から微小角度だけ変更する変更ステップと、変更ステップが行われた後、測定光の出射方向をプローブ軸を中心に回転しつつ、光回転プローブと基準物との相対位置を変化させながら、光回転プローブから基準物に向かって測定光を出射することにより、基準物の形状誤差を取得する取得ステップと、測定光の出射方向が基準方向に一致している場合に得られる基準物の形状誤差の理論値と、取得ステップで得られた基準物の形状誤差の測定値とに基づき、基準方向に対する測定光の出射方向の調整誤差を算出する調整誤差算出ステップと、を含む。
【0008】
上記態様に係る光回転プローブの校正方法によれば、基準方向に対する測定光の出射方向の調整誤差を算出することができるため、出射方向の校正後に残った調整誤差があった場合でも、算出された調整誤差に基づいて出射方向を再校正することができる。これにより、光回転プローブの出射方向の校正精度を向上させ、延いては、光回転プローブを搭載した三次元座標測定装置の測定誤差を低減させることが可能になる。
【0009】
好ましくは、微小角度を変えて変更ステップ及び取得ステップをそれぞれ複数回行い、調整誤差算出ステップは、微小角度ごとに取得した基準物の形状誤差に基づき、基準方向に対する測定光の出射方向の調整誤差を算出する。
【0010】
好ましくは、取得ステップは、光回転プローブと基準物との距離が一定となるように光回転プローブと基準物との相対位置を変化させる。
【0011】
好ましくは、取得ステップは、測定光の焦点位置±焦点深度の範囲に基準物の測定面が位置するように光回転プローブと基準物との相対位置を変化させる。
【0012】
好ましくは、基準物は、プローブ軸に対して平行に配置されたピンゲージである。
【0013】
好ましくは、取得ステップは、基準物の形状誤差としてピンゲージの半径誤差を取得する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光回転プローブから出射される測定光の出射方向について基準方向に対する調整誤差を算出することができるので、光回転プローブの校正を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】三次元座標測定装置の概略図である。
図2】光回転プローブの断面図の一例である。
図3】光回転プローブを用いたワークの測定面の形状測定を説明するための説明図である。
図4】光回転プローブの測定光の出射方向の校正方法の概要を示すフローチャートである。
図5】基準方向の設定手順を示すフローチャートである。
図6】ビームプロファイラを用いた基準方向の設定を説明する図である。
図7】リングゲージを用いた光路長の設定を説明する図である。
図8】相対角度を校正する手順を示すフローチャートである。
図9】校正球を用いた相対角度の校正において、回転角度が0°及び90°である場合の光回転プローブと校正球との位置関係を示す図である。
図10】校正球を用いた相対角度の校正において算出される、回転角度に対するS角誤差を示すグラフと、回転角度に対する仰角誤差を示すグラフである。
図11】出射方向の調整誤差を測定する際の光回転プローブとピンゲージとの位置関係を示す斜視図である。
図12射方向の調整誤差を測定する際のXY平面上における光回転プローブとピンゲージとの位置関係を示す図である。
図13】光回転プローブのS角の基準角度誤差に対する、ピンゲージの半径の測定誤差の理論値を示すグラフである。
図14】第1実施形態に係る出射方向の再校正方法を示すフローチャートである。
図15】第1実施形態における光回転プローブの回転の微小角度に対する誤差の理論値と誤差の測定値とを示すグラフである。
図16】ビーム径の違いによって生じる測定光の強度分布の違いを説明する図である。
図17】第2実施形態に係る出射方向の再校正方法を示すフローチャートである。
図18】第2実施形態に係る調整誤差の校正方法を説明する図である。
図19】第2実施形態における光回転プローブの回転の微小角度に対する形状誤差を示すグラフである。
図20】第3実施形態に係る治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態について説明する。なお、光回転プローブの校正方法についての説明に先立ち、三次元座標測定装置の構成について説明する。
【0017】
[三次元座標測定装置の構成]
図1は、三次元座標測定装置10の概略図である。図1中のX軸、Y軸、及びZ軸は、三次元座標測定装置10に固有の機械座標原点に基づいて定められる機械座標系である。
【0018】
図1に示すように、三次元座標測定装置10は、光回転プローブ26を用いて、ワークWの形状測定、例えば円筒状のワークWの内周面の形状測定を行う。なお、ここでいうワークWの形状には、ワークWの三次元形状、二次元形状、表面形状、輪郭形状、及び長さ又は径などの各種の寸法形状などが含まれる。また、測定対象のワークWの形状及び種類は特に限定はされない。
【0019】
三次元座標測定装置10は、架台12と、架台12上に設けられたテーブル14(定盤)と、テーブル14の両端部に立設された右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lと、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lの上部を連結するXガイド18と、を備える。右Yキャリッジ16Rと左Yキャリッジ16LとXガイド18とにより門型フレーム19が構成される。
【0020】
テーブル14のX軸方向の両端部の上面と側面には、Y軸方向に沿って右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lが摺動する摺動面が形成されている。なお、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lには、テーブル14の摺動面に対向する位置にエアベアリング(図示は省略)が設けられている。これにより、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、Xガイド18と共にY軸方向に移動自在となる。
【0021】
Xガイド18には、Xキャリッジ20が取り付けられている。このXガイド18には、Xキャリッジ20が摺動する摺動面がX軸方向に沿って形成されている。また、Xキャリッジ20には、Xガイド18の摺動面に対向する位置にエアベアリング(図示は省略)が設けられている。これにより、Xキャリッジ20はX軸方向に移動自在となる。
【0022】
Xキャリッジ20には、Zキャリッジ22(Zスピンドルともいう)が取り付けられている。また、Xキャリッジ20には、Zキャリッジ22をZ軸方向に案内するZ軸方向案内用のエアベアリング(図示せず)が設けられている。これにより、Zキャリッジ22は、Xキャリッジ20によってZ軸方向に移動可能に保持されている。このZキャリッジ22の下端には、光回転プローブ26を含む公知の各種プローブを選択的に着脱自在に保持する測定ヘッド24が設けられている。
【0023】
なお、三次元座標測定装置10には、図示は省略するが、門型フレーム19をY軸方向に移動させるY軸駆動部と、Xキャリッジ20をX軸方向に移動させるX軸駆動部と、Zキャリッジ22をZ軸方向に移動させるZ軸駆動部と、が設けられている。これにより、測定ヘッド24(光回転プローブ26)を、互いに直交する3軸方向(XYZ軸方向)に移動させることができる。
【0024】
テーブル14の右Yキャリッジ16R側の端部には、Y軸リニアスケール(図示せず)が設けられている。また、Xガイド18にはX軸リニアスケール(図示せず)が設けられ、Zキャリッジ22にはZ軸リニアスケール(図示せず)が設けられている。
【0025】
一方、右Yキャリッジ16Rには、Y軸リニアスケールを読み取るY軸検出部(図示せず)が設けられている。また、Xキャリッジ20には、X軸リニアスケール及びZ軸リニアスケールをそれぞれ読み取るX軸検出部(図示せず)とZ軸検出部(図示せず)とが設けられている。各検出部の検出結果は、コントローラ70を介して制御装置72へ出力される。
【0026】
測定ヘッド24には、光回転プローブ26を、Z軸方向に平行な回転軸の軸周り方向及びZ軸に垂直な回転軸の軸周り方向にそれぞれ回転させるモータなどのヘッド駆動部(図示は省略)が設けられている。これにより、測定ヘッド24は、2つの回転軸の軸周り方向において、光回転プローブ26の回転角度を無段階に調整することができる。その結果、光回転プローブ26の姿勢を任意に変位(回転)させることができる。
【0027】
なお、測定ヘッド24には、光回転プローブ26の回転角度をそれぞれ検出するロータリエンコーダ等のプローブ回転角度検出部(図示せず)が設けられている。このプローブ回転角度検出部による検出結果は、コントローラ70を介して制御装置72へ出力される。
【0028】
光回転プローブ26は、測定ヘッド24に着脱自在に取り付けられている。光回転プローブ26は、波長掃引光源28から光ファイバーケーブル30及びファイバーサーキュレータ32を介して入力された測定光LAをワークWの測定面(ここでは内周面)に向けて出射する。また、光回転プローブ26は、ワークWの測定面で反射された反射光LBを受光し、この反射光LB及び後述の参照光LC(図3参照)を、ファイバーサーキュレータ32及び光ファイバーケーブル34を介して光検出器36へ出力する。
【0029】
また、詳しくは後述するが、光回転プローブ26は、その先端部分(回転光学系42、図2参照)が後述の長手軸62a(本発明のプローブ軸に相当。図2参照)の軸周り方向に回転可能に構成されている。これにより、光回転プローブ26は、その先端部分を回転させることで、ワークWの測定面に沿って測定光LAを回転走査することができる。
【0030】
図2は、光回転プローブ26の断面図である。図2に示すように、光回転プローブ26は、測定ヘッド24に固定される固定光学系40と、固定光学系40によって光回転プローブ26の長手軸62aの軸周り方向に回転される回転光学系42と、を備える。
【0031】
固定光学系40は、光ファイバーケーブル44と、ヘッド取付部46と、コリメータレンズ48と、中空モータ50と、を備える。
【0032】
この光ファイバーケーブル44(他の光ファイバーケーブル30,34も同様)としては、シングルモード光ファイバーケーブル及び偏波保持光ファイバーケーブル等の公知の各種の光ファイバーケーブルが用いられる。
【0033】
光ファイバーケーブル44の一端側は、測定ヘッド24内及びZキャリッジ22内等を挿通してファイバーサーキュレータ32に接続されている。また、光ファイバーケーブル44の他端側はヘッド取付部46に接続される。この光ファイバーケーブル44の他端側の端面は、波長掃引光源28から光ファイバーケーブル30等を介して入力された測定光LAを出射し且つワークWの測定面にて反射された反射光LB等が入射する出入射端44aとなる。なお、図中の符号Pは測定光LA及び反射光LBの光路である。
【0034】
また、波長掃引光源28等から光ファイバーケーブル44に入力された測定光LAの一部は、出入射端44aにて参照光LC(図3参照)として反射される。
【0035】
ヘッド取付部46は、光路P(長手軸62a)に平行な方向に延びた中空の筒体である。ヘッド取付部46の一端側は既述の測定ヘッド24に着脱自在に取り付けられる。また、ヘッド取付部46の他端側には中空モータ50が固定されている。さらに、ヘッド取付部46の一端側には、光ファイバーケーブル44の他端側が接続されるケーブル接続部46aが設けられている。ケーブル接続部46aは、光ファイバーケーブル44の出入射端44aをヘッド取付部46の内部で且つヘッド取付部46の中心軸と一致(略一致を含む、以下同じ)する位置に保持する。
【0036】
コリメータレンズ48は、ヘッド取付部46の内部であって且つ出入射端44aと中空モータ50との間の位置に設けられている。このコリメータレンズ48の光軸は、光路Pの中心線に一致している。コリメータレンズ48は、出入射端44aから出射された測定光LAを平行光に変換した後、この測定光LAを後述のシャフト62内の結像レンズ64に向けて出射する。これにより、固定光学系40と回転光学系42とのアライメントずれに起因する反射光LBの受光感度低下を防止することができる。また、コリメータレンズ48は、結像レンズ64から入射した反射光LBを出入射端44aに向けて出射する。
【0037】
中空モータ50は、後述のシャフト62をその長手軸62aを中心とする軸周り方向(以下、単に長手軸周り方向と略す)に回転させる。この中空モータ50は、不図示のコイルを巻き回してなる中空のステータ52(固定子ともいう)と、このステータ52の内部で長手軸周り方向に回転する中空のロータ54(回転子ともいう)と、を備える。なお、中空モータ50の詳細構造については公知技術であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0038】
ロータ54には、光路Pが通る中空部54aであって且つこの光路P(長手軸62a)に平行な方向に延びた中空部54aが形成されている。これにより、コリメータレンズ48から出射された測定光LAが中空部54a内を通って後述の結像レンズ64に入射し、且つ結像レンズ64から出射した反射光LBが中空部54a内を通ってコリメータレンズ48に入射する。
【0039】
ロータ54は、コントローラ70からのステータ52に対する駆動信号(電圧)の印加に応じて、長手軸62aを中心として回転する。なお、中空モータ50には、ロータ54の回転角度をそれぞれ検出するロータリエンコーダ等のロータ回転角度検出部(図示せず)が設けられている。このロータ回転角度検出部による検出結果は、コントローラ70を介して制御装置72へ出力される。なお、ロータ回転角度検出部を用いる代わりに、例えば公知のサーボ制御によりロータ54の回転角度等を制御することで、ロータ54の回転角度を検出可能にしてもよい。
【0040】
また、ロータ54の回転光学系42に対向する側の円環状の先端面54bには、回転光学系42を構成する後述のシャフト保持板60が固定されている。
【0041】
なお、中空モータ50は、図2に示した構成(構造)に限定されるものではなく、公知の各種中空モータを代わりに用いてもよい。
【0042】
回転光学系42は、ロータ54の回転に応じて長手軸周り方向に回転する。この回転光学系42は、シャフト保持板60と、シャフト62と、結像レンズ64と、直角プリズムミラー66と、を備える。
【0043】
シャフト保持板60は、ロータ54の先端面54bと略同形状(円環状)に形成されており、先端面54bに対して平行な姿勢で先端面54b上に固定されている。シャフト保持板60には、光路Pが通る嵌合穴であって且つこの光路P(長手軸62a)に平行な方向に延びた嵌合穴が形成されている。この嵌合穴にはシャフト62の一端部が嵌合する。これにより、シャフト保持板60は、シャフト62を、その長手軸62aを光路Pの中心線に一致させた状態で保持する。
【0044】
シャフト62は、光路Pに平行方向に延びた中空の円筒であり、光路Pに平行な長手軸62aを有している。そして、シャフト62の一端部がシャフト保持板60に固定されている状態において、長手軸62aが光路Pの中心線に一致(略一致)し、且つシャフト62の内面62bが光路Pを取り囲む。
【0045】
また、シャフト62の内部であって且つシャフト62の既述の一端部とは反対側の他端部には、結像レンズ64が設けられている。また、シャフト62の他端部には、シャフト62の他端部側の開口部を覆うように直角プリズムミラー66が設けられている。
【0046】
結像レンズ64は、その光軸が光路Pの中心線に一致する位置に配置される。結像レンズ64は、コリメータレンズ48から入射した測定光LAを、直角プリズムミラー66を通してワークWの測定面に結像させる。また、結像レンズ64は、直角プリズムミラー66を通して入射した反射光LBをコリメータレンズ48に向けて出射する。
【0047】
直角プリズムミラー66は、シャフト62の内部及び結像レンズ64を通して入射した測定光LAをワークWの測定面に向けて反射させる。具体的に、直角プリズムミラー66は、結像レンズ64から入射した測定光LAを90°(略90°を含む)屈折させて、直角プリズムミラー66等の回転平面[長手軸62a(回転軸)に垂直な面]に平行な光束にした後、ワークWの測定面に向けて出射する。
【0048】
また、直角プリズムミラー66は、ワークWの測定面にて反射された反射光LBを、結像レンズ64に向けて反射する。これにより、反射光LBが直角プリズムミラー66からコリメータレンズ48を経て光ファイバーケーブル44の出入射端44aに入射される。
【0049】
回転光学系42を構成するシャフト保持板60、シャフト62、結像レンズ64、及び直角プリズムミラー66は、ロータ54の回転に応じて、長手軸周り方向に一体的に回転する。そして、直角プリズムミラー66が長手軸周り方向に回転されることにより、ワークWの測定面に沿って測定光LAが回転走査される。
【0050】
図1に戻って、コントローラ70は、三次元座標測定装置10が手動測定モードである場合、不図示の操作部に対する操作入力に応じて、不図示の各駆動部(XYZ駆動部及びヘッド駆動部)を駆動して光回転プローブ26の位置及び姿勢を変位させると共に、中空モータ50を駆動して直角プリズムミラー66等を長手軸周り方向に回転させる。また、コントローラ70は、三次元座標測定装置10が自動測定モードである場合、制御装置72の制御の下、各駆動部及び中空モータ50を駆動して、光回転プローブ26の位置及び姿勢を変位させると共に、直角プリズムミラー66等を長手軸周り方向に回転させる。
【0051】
また、コントローラ70には前述の不図示の各検出部(XYZ軸検出部、プローブ回転角度検出部、及びロータ回転角度検出部)が接続されており、これら各部から出力された信号等を制御装置72へ出力する。
【0052】
図3は、光回転プローブ26を用いたワークWの測定面の形状測定を説明するための説明図である。図3と、既述の図1及び図2とに示すように、波長掃引光源28は、光ファイバーケーブル30を介してファイバーサーキュレータ32へ測定光LAを出射する。この測定光LAは、一定の波長掃引周期(一定の波長掃引周波数)ごとに一定波長帯で波長が正弦波状に変化する波長掃引光である。
【0053】
ファイバーサーキュレータ32は、光ファイバーケーブル30を介して波長掃引光源28に接続し、且つ光ファイバーケーブル34を介して光検出器36に接続し、且つ光回転プローブ26の光ファイバーケーブル44に接続している。
【0054】
ファイバーサーキュレータ32は、例えば非往復方式且つ1方向型デバイスであって3つのポートを有しており、光ファイバーケーブル30を介して波長掃引光源28から入力された測定光LAを光ファイバーケーブル44に出力する。これにより、光回転プローブ26に波長掃引光源28からの測定光LAが入力される。その結果、ワークWの測定面にて反射された反射光LBと、出入射端44aにて反射された参照光LCと、が光ファイバーケーブル44を介してファイバーサーキュレータ32に入力される。
【0055】
また、ファイバーサーキュレータ32は、光回転プローブ26から入力された反射光LB及び参照光LCの干渉信号SGを、光ファイバーケーブル34を介して光検出器36に出力する。
【0056】
光検出器36は、例えばシリコンフォトダイオード、InGaAs(インジウムガリウム砒素)フォトダイオード、光電管、及び光電子倍増管等が用いられる。光検出器36は、制御装置72の制御の下、ファイバーサーキュレータ32から光ファイバーケーブル34を介して入力された干渉信号SGを電気信号に変換及び増幅して制御装置72へ出力する。
【0057】
制御装置72は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置72の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0058】
制御装置72は、例えば自動測定モード時には、予め定められた測定プログラムに従って既述の不図示の各駆動部及び中空モータ50を駆動して、光回転プローブ26の位置及び姿勢の変位と、直角プリズムミラー66等の長手軸周り方向の回転と、を実行する。これにより、ワークWの測定面に対する光回転プローブ26の測定光LAの回転走査が実行され、この測定面の複数の測定ポイントごとの干渉信号SGが光検出器36で検出される。その結果、光検出器36から制御装置72に対して測定ポイントごとの干渉信号SGの検出結果が入力される。なお、制御装置72は、手動測定モード時には、不図示の操作部に対する操作入力に応じて、上述の測定光LAの回転走査を実行させる。
【0059】
また、制御装置72は、自動測定モード及び手動測定モードの双方において、光検出器36により検出された測定ポイントごとの干渉信号SGの検出結果に基づき、直角プリズムミラー66からワークWの測定面の測定ポイントまでの距離L2を、測定ポイントごとに演算する。
【0060】
具体的に制御装置72は、測定ポイントごとの干渉信号SGの検出結果に基づき、出入射端44aから直角プリズムミラー66までの距離L1と、既述の測定ポイントごとの距離L2との距離合計値(L1+L2)を、測定ポイントごとに演算する。なお、距離合計値の演算方法については公知技術(例えば特開2016-024086号公報及び特開2018-084434号公報)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0061】
次いで、制御装置72は、測定ポイントごと距離合計値の演算結果と既知の距離L1とに基づき、測定ポイントごとの距離L2を演算する。そして、制御装置72は、測定ポイントごとの光回転プローブ26の位置及び姿勢と、測定ポイントごとの直角プリズムミラー66等の長手軸周り方向の回転角度と、測定ポイントごとの距離L2の演算結果と、に基づき、測定ポイントごとの三次元座標を演算する。これにより、制御装置72は、測定光LAで走査されたワークWの測定面の形状を演算することができる。
【0062】
なお、図2及び図3に示す光回転プローブは一例にすぎず、当然ながら、光回転プローブの構成を限定する趣旨ではない。
【0063】
[第1実施形態に係る光回転プローブの校正方法]
次に、図4から図16を用いて、第1実施形態に係る光回転プローブ26の校正方法について説明する。図4は、測定光LAの出射方向の校正方法の概要を示すフローチャートである。以下、X軸方向を、出射の基準となる基準方向とする場合について説明するが、基準方向を限定する趣旨ではない。
【0064】
まず、図4に示すように、測定光LAの出射の基準方向を設定する。ここでは、XY平面におけるX軸方向に対する測定光LAの出射の基準方向、言い換えると、光回転プローブ26のX軸方向に対する回転角度sがs=0°になる方向を設定する(ステップS10)。
【0065】
<出射の基準方向の設定>
測定光LAの出射の基準方向の設定は、好ましくは、例えばビームプロファイラ80を用いて設定する。これにより、精度良く測定光LAの出射方向の設定を行うことができる。以下、図5を参照しつつ、ビームプロファイラ80を用いてXY平面における出射の基準方向を設定する方法について説明する。図6に、ビームプロファイラ80を用いて測定光LAの強度のピークの位置を検出する様子を示す。
【0066】
まず、制御装置72は、不図示の各駆動部(XYZ駆動部及びヘッド駆動部)を駆動して光回転プローブ26のシャフト62がZ軸方向に平行になるように光回転プローブ26の姿勢を設定する(ステップS110)。続いて、図6に示すように、光回転プローブ26から測定光LAをX軸方向にビームプロファイラ80に向かって出射させる(ステップS112)。制御装置72は、ビームプロファイラ80に対して光回転プローブ26をX軸方向に距離Lだけ相対的に移動させながら(図6の矢印の方向)、ビームプロファイラ80を用いて測定光LAの強度分布を測定し、測定光LAの強度のピークの位置(座標)の変位量を検出する(ステップS114)。ステップS114の検出結果に基づいて、XY平面において測定光LAがX軸方向からずれている角度(ずれ角度)を下記の(1)式により算出する(ステップS116)。
【0067】
θ=atan(Ly/L) ・・・(1)
ここで、各記号の意味は以下のとおりである。
【0068】
θ:X軸方向に対する測定光LAの出射方向のずれ角度
L:X軸方向における、光回転プローブ26の相対移動量
Ly:Y軸方向における測定光LAのピークの位置の変位量
制御装置72は、ステップS114において算出されたX軸方向からのずれ角度に基づいて、メモリ内の制御ソフトウェアの数値を更新し、光回転プローブ26の回転角度sがs=0°になる基準方向を設定する(ステップS118)。これにより、XY平面についての基準方向の設定が完了する。XZ平面において測定光LAがX軸方向からずれている角度(ずれ角度)については、例えば、ユーザが、機械的調整機構(ゲージ等)を用いて調整する。この設定についての説明は省略する。
【0069】
なお、上記の説明では、ビームプロファイラ80を用いて測定光LAの出射の基準方向を設定する方法について説明したが、測定光LAの出射の基準方向を目視で設定してもよい。
【0070】
<光路長の校正>
図4に戻って、このように測定光LAの出射の基準方向を設定した後(ステップS10)、光回転プローブ26の測定光LAの光路長を校正する(ステップS20)。測定光LAの光路長の校正は、例えば、光回転プローブ26のシャフト62の長さLSを所定の長さに設定することにより行われる。ここで、図2においてプリズムミラー66の反射面と光路Pとの交点をPXとすると、シャフト62の長さLSは光ファイバーケーブル44の出入射端44aから交点PXまでの距離に相当する。
【0071】
以下、図7を参照して、一例としてリングゲージ81を用いた測定光LAの光路長の校正について説明する。図7に示すように、制御装置72は、光回転プローブ26を長手軸62a周りに回転させて、既知の内径Dを持つリングゲージ81の内径を測定する。なお、校正に用いるリングゲージ81の直径は、好ましくは、光回転プローブ26の長手軸62aから測定光LAの焦点までの距離の約2倍である。
【0072】
続いて、リングゲージ81の内径の測定値がリングゲージ81の既知の内径Dと合うように、以下の式(2)に基づいて光回転プローブ26のシャフト62の長さLSを設定する。これにより、測定光LAの光路長は校正される。
【0073】
長さLS=光回転プローブ26による実際の測長値-D/2 ・・・(2)
<相対角度の校正手順>
続いて、図4に戻って、測定光LAの光路長を校正した後(ステップS20)、基準角度からの相対角度を校正する(ステップS30)。ここで、光回転プローブ26の回転角度sとは、光回転プローブ26の長手軸62a(以下、S軸と称する場合もある)周りの回転方向における回転角度(すなわち、測定光LAの出射方向における長手軸62a周りの回転角度)をいう。また、ステップS10において光回転プローブ26の測定光LAの出射方向を基準方向(X方向)にあわせたときの状態を基準角度(s=0°)とし、その基準角度から光回転プローブ26が長手軸62a周りに回転したときの回転角度(すなわち、基準角度からの相対角度)を「光回転プローブの回転角度s」として表す。以下、図8及び図9を参照して、一例として、校正球82を用いた相対角度の校正方法について説明する。図8は、相対角度の校正手順を示すフローチャートであり、図9は、校正球82を用いた相対角度の校正において、回転角度s=0°及びs=90°の場合の光回転プローブ26と校正球82との位置関係を示す図である。
【0074】
図9に示すように、制御装置72は、光回転プローブの長手軸62a周りに光回転プローブ26を所定の回転角度sだけ回転させ、その位置で測定光LAの焦点をできるだけ校正球82の表面に合わせる(ステップS210)。例えば、回転角度sが90.0°の位置で校正球82を測定する場合に、制御装置72は、光回転プローブ26を90.0°だけ長手軸62a周りに回転(後述の自転)させ、更に、光回転プローブ26を90.0°だけ光回転プローブ26を校正球82周りに回転(後述の公転)させる。この結果、回転角度s=90°光回転プローブ26と校正球82とは図9に示すような位置関係になる。ここで、好ましくは、校正球82の表面が、測定光LAの焦点位置から±焦点深度/2程度の位置にある。
【0075】
続いて、制御装置72は、測定光LAの出射方向を変えずに(すなわち光回転プローブ26を長手軸62a周りを回転させずに固定した状態で)、三次元座標測定装置10のX軸駆動部とY軸駆動部とZ軸駆動部とを駆動させて測定光LAで校正球82の表面上を走査し、その回転角度sにおいて校正球82の表面上の複数の測定点の三次元座標を測定する(ステップS212)。図9には、例として、回転角度s=0°及びs=90°における測定点Mを校正球82上に示す。
【0076】
続いて、制御装置72は、その回転角度sについて、校正球82の表面上の測定点の三次元座標値から校正球82の中心の三次元座標を算出する(ステップS214)。この算出において、例えば、校正球82の既知の球径を使って最小二乗法を用いてもよい。
【0077】
制御装置72は、ステップS210からステップS214を、複数の回転角度sについて繰り返す。例えば、光回転プローブ26の回転角度sを、s=0°、7.5°、15.0°、・・・352.5°のように7.5°間隔で変え、各回転角度sにおいてステップS210からステップS214を繰り返す(ステップS216:YES)。なお、当然ながら、測定時の光回転プローブ26の回転角度sの間隔は7.5度間隔に限定されない。
【0078】
全ての回転角度sについてステップS210からステップS214を行った後(ステップS216:NO)、さらに、各回転角度sについて算出した校正球82の中心の三次元座標が、回転角度s=0°について算出した校正球82の中心の三次元座標と一致するように、制御装置72はメモリ内の制御プログラムの数値を補正する(ステップS218)。例として、以下に2つの補正方法について説明する。
【0079】
1つ目は、ステップS210で得た測定値を用いて補正する方法である。例えば、理想的な場合、回転角度s=90°について算出した校正球82の中心の三次元座標は回転角度s=0°について算出した校正球82の中心の三次元座標と一致するため、測定光LAのベクトル成分は(x,y,z)=(0,1,0)である。
【0080】
誤差のために回転角度sが正しく90°になっていない場合、回転角度s=90°について算出した校正球82の中心の三次元座標が、回転角度s=0°について算出した校正球82の中心の三次元座標と一致するように、例えば、制御装置72は測定光LAのベクトル成分を(x,y,z)=(0.055,0.992,0.110)に補正する。なお、測定値がない回転角度sについては、測定値が存在する複数の回転角度sについて線形補間を行って測定光LAのベクトル成分の補正値を算出する。
【0081】
2つ目は、三角関数を用いて補正する方法である。この方法では、XY平面内においてX軸方向に対する測定光LAの出射方向の回転角度の誤差Δs(以下、単にS角誤差と称する)、及び、XY平面に対する測定光LAの出射方向の誤差角度Δφ(以下、単に仰角誤差と称する)を、以下の式(3)及び式(4)から算出する。
【0082】
【数1】
【0083】
【数2】
ここで、各記号の意味は以下の通りである。
【0084】
s:校正球の測定時の回転角度(°)
Δs:S角誤差(°)、
(XY平面内においてX軸方向に対する測定光LAの出射方向の誤差角度)
Δφ:仰角誤差(°)
(XY平面に対する測定光LAの出射方向の誤差角度)
:光回転プローブ26の長手軸62aから焦点までの距離
(x、y、z):各回転角度sにおいて測定した校正球82の中心座標
i:ステップS210での測定時の回転角度
(7.5°,15°,…,352.5°)
図10の符号10Aは、上記の式(3)に基づいて各回転角度sについて算出したS角誤差Δsのグラフであり、符号10Bは、上記の式(4)に基づいて各回転角度sについて算出した仰角誤差Δφのグラフである。制御装置72は、算出されたS角誤差Δs及び仰角誤差Δφに基づいて、メモリに格納されている制御ソフトウェアの数値を更新する。
【0085】
<光路長の再校正>
図4に戻って、ステップS30で相対角度を校正した後、測定光LAの光路長を再校正する(ステップS40)。光路長を再校正する手順はステップS20と同じであるため、説明は省略する。
【0086】
<出射の基準方向の再校正>
更に、ステップS10で設定した出射の基準方向を再校正する(ステップS50)。ステップS10で基準方向の設定を行うが、後述する図16を用いた説明のように、この設定では、その精度により、意図した出射の基準方向(この例ではX軸方向)からずれが発生し、S角の基準角度に誤差を持ってしまう。この出射方向の再校正が本発明の特徴の1つである。ここで、S角とは、XY平面内においてX軸方向(基準方向)に対する測定光LAの出射方向の回転角度を意味する。
【0087】
以下、ステップS50における出射方向の再校正の原理について説明する。本実施形態では、例として、既知の半径Rを持つ、円柱形のピンゲージ83(本発明の基準物に相当)を用いて出射方向の調整誤差を測定し、測定された調整誤差に基づいて出射方向の再校正を行う。図11及び図12は、それぞれ、出射方向の調整誤差を測定する際における光回転プローブ26とピンゲージ83との位置関係を示す斜視図、及び、XY平面図である(詳しくは後述する)。図11に示すように光回転プローブ26の長手軸62aに平行にピンゲージ83の長手軸を配置する。そして、図12に示すように、測定光LAの出射方向が、XY平面において基準方向(この例ではX軸方向)に対してS角の基準角度誤差Δs0を有する状態でピンゲージ83の半径Rを測定すると、測定値には誤差ΔRが生じる。この誤差ΔRはS角の基準角度誤差Δs0の関数として下記の式(5)で示すことができる。
【0088】
【数3】
ここで、Fは光回転プローブ26の長手軸62aからの焦点距離であり、符号a及びbは以下の式(6)及び(7)で示される。
【0089】
【数4】
【0090】
【数5】
図13に、半径R=0.25mm、且つ、距離F=10.0mmである場合について、式(5)に基づいて算出された半径の誤差のグラフを示す。図13において、横軸はS角の基準角度誤差Δs0(°)であり、縦軸は半径の誤差ΔR(μm)である。
【0091】
本発明では、校正後の光回転プローブ26の測定光LAの出射方向を、ステップS10で設定した基準方向に対して故意に微小角度Δs1だけずらした角度、メモリ内の制御ソフトウェアの数値を更新することにより、基準方向の角度を仮に変更する。ステップS10の設定より微小角度Δs1ずらした基準角度の状態でピンゲージ83の半径Rを測定し、半径Rの誤差ΔRを算出する。光回転プローブ26の測定光LAの出射方向にS角の基準角度誤差Δs0がない状態であれば、算出された誤差ΔRは理論的なΔRと一致するはずである。そこで、本発明では、この算出した誤差ΔRと理論的なΔRとの差に基づいて、基準方向に対する校正後の光回転プローブ26の出射方向のS角の基準角度誤差Δs0を、調整誤差として算出する。算出された調整誤差に基づいて出射方向を再校正することにより、光回転プローブ26の校正精度を向上させ、延いては、光回転プローブ26による測定誤差を低減させる。
【0092】
以下、図11から図16を用いて出射方向の再校正方法について説明する。図14は出射方向の再校正する手順を示すフローチャートである。図14に示すように、まず、光回転プローブ26と所定の位置関係になるようにピンゲージ83を配置する(ステップS310)。ピンゲージ83の半径Rは、好ましくは、測定光LAのビーム径の十倍から数十倍程度である。図11及び図12は、それぞれ、出射方向の調整誤差を測定する際における光回転プローブ26とピンゲージ83との位置関係を示す図である。図11に示すように光回転プローブ26の長手軸62aに平行にピンゲージ83を配置する。ここで、好ましくは、光回転プローブ26とピンゲージ83との距離は一定であり、且つ、ピンゲージ83の表面がなるべく測定光LAの焦点距離にあるように光回転プローブ26とピンゲージ83との距離を設定する。
【0093】
より具体的には、ピンゲージ83の表面が、測定光LAの焦点位置から±焦点深度/2程度の位置にあるように、光回転プローブ26とピンゲージ83との距離を設定することが好ましい。図11及び図12に示す例では、光回転プローブ26の長手軸62aとピンゲージ83の測定面との距離は焦点距離Fに等しくなっている。
【0094】
また、図12の例では、光回転プローブ26の長手軸62aをXY平面上の原点に配置し、ピンゲージ83の断面円の中心CをX軸上に配置する。
【0095】
上記のステップS10からステップS40までの校正手順によって、理想的には、光回転プローブ26は、回転角度s=0°において測定光LAの出射方向が基準方向であるX軸方向に一致するように調整されている。従って、理想的には、光回転プローブ26の回転角度s=0°において、ピンゲージ83の軸方向に垂直に、かつ、ピンゲージ83の頂点に向かって測定光LAが出射されるはずである。
【0096】
このような位置関係に光回転プローブ26及びピンゲージ83を配置した後、制御装置72は、測定ヘッド24のヘッド駆動部(不図示)によって光回転プローブ26を長手軸62a(S軸)周りに、ステップS10で設定した基準角度から所定の微小角度Δs1だけ変更させた角度を仮の基準角度と設定する(ステップS312)。この時の光回転プローブ26の変更は図12の破線の矢印Aで示す動きに対応する。
【0097】
続いて、制御装置72は、三次元座標測定装置10のXYZ駆動部を制御してピンゲージ83を中心とした回転軌跡(図12において実線で示す矢印B方向)に沿って光回転プローブ26を移動させつつ、光回転プローブ26を長手軸(回転軸)62a周りに連続的に回転させながら(すなわち、光回転プローブ26の回転角度sを連続的に変化させながら)、光回転プローブ26から測定光LAをピンゲージ83に向けて出射してピンゲージ83の半径Rを測定する(ステップS314)。
【0098】
すなわち、制御装置72は、ピンゲージ83を中心とした光回転プローブ26の回転移動(公転移動)と、光回転プローブ26の長手軸(回転軸)62a周りの回転移動(自転移動)とを同期させて、ピンゲージ83の長手軸方向に対して垂直に、且つ光回転プローブ26とピンゲージ83との距離を一定に保ちながら、光回転プローブ26からピンゲージ83に向けて測定光LAが出射される。この場合、光回転プローブ26をピンゲージ83の周りに1周以上(360°以上)回転させて測定が行われることが望ましい。また、光回転プローブ26から出射される測定光LAはピンゲージ83の頂点に照射されることが望ましい。
【0099】
続いて、制御装置72は、ステップS314で得られた測定結果に基づいて、その所定の微小角度Δs1におけるピンゲージ83の半径Rの誤差ΔRを算出する(ステップS316)。なお、ピンゲージ83の半径Rは既知であり、誤差ΔRの算出は単純な差分計算であるため、説明は省略する。
【0100】
制御装置72は、光回転プローブ26の長手軸62a周りの回転の基準角度を微小角度Δs1だけ変えて、ピンゲージ83の半径Rの測定及び誤差ΔRの算出を繰り返す(ステップS318:YES)。近似式を得るのに十分な回数だけステップS312からS316を繰り返した後(ステップS318:NO)、更に、制御装置72は、微小角度Δs1と誤差ΔRとの関係を示す近似式を得る(ステップS320)。好ましくは、制御装置72は最小二乗法を用いて二次多項式を得る。
【0101】
図15に、ステップS314において測定値から算出された誤差ΔRを、微小角度Δs1を横軸にし、誤差ΔRを縦軸にして、図13のグラフに重ねてプロットしたグラフの一例を示す。図15において、測定値から算出された誤差ΔRは菱形で示し、細い実線は最小二乗法で得た近似式を示す。図15に示す近似式は以下のとおりである。
【0102】
ΔR=-76.044Δs1+35.86Δs1+4.4608
また、太い実線は理論的な誤差ΔRを示す。図15に示すように、理論的な誤差ΔRのグラフと比べ、測定値から算出された誤差ΔRのグラフは縦軸方向にずれており、横軸方向の幅が広がっている。ここで、縦軸方向のずれは、主として、測定光LAの波長掃引光源28に一律な測長誤差に起因する。横軸方向の幅の広がりは、主として、測定位置が測定光LAの焦点位置からずれたことによる測定光LAのビーム径の広がりに起因する。
【0103】
続いて、制御装置72は、ステップS320で得た近似式から、測定光LAの出射方向の調整誤差を算出する(ステップS322)。例えば、最小二乗法による下記の二次多項式(8)は式(9)のように変形することができる。
【0104】
ΔR==AΔs1+BΔs1+C ・・・(8)
【0105】
【数6】
・・・(9)
このことから、制御装置72は、光回転プローブ26の基準角度誤差Δs0(調整誤差)は、式(9)のΔRが極値をもつときの微小角度Δs1であり、「-B/2A」(°)として算出することができる。この調整誤差「-B/2A」」(°)は、ステップS10からステップS40までの校正後に残った測定光LAの出射方向の誤差に相当する。
【0106】
具体的には、図15に示すグラフの場合、制御装置72は、近似式「ΔR=-76.044Δs1+35.86Δs1+4.4608」から、基準角度誤差Δs0(調整誤差)として、35.86/(2×76.044)=0.236°を得ることができる。制御装置72は、算出された調整誤差に基づいて、メモリに格納されている制御ソフトウェアの数値を再度更新することにより、出射方向の再校正を行う(ステップS324)。
【0107】
このように本実施形態における光回転プローブ26の校正方法によれば、光回転プローブ26から出射される測定光LAの出射方向を高精度に校正することができる。したがって、光回転プローブ26の測定誤差を低減させることができる。延いては、光回転プローブ26を搭載する三次元座標測定装置10の測定誤差を低減させることができる。これにより、測定対象の局所的部分の大きな曲率の形状を精度良く測定することが可能になる。
【0108】
<本実施形態に係る出射方向の再校正の利点>
上記のように本実施形態の校正方法は光回転プローブ26の校正精度を向上させることができるが、本実施形態の校正方法には更に以下のような利点がある。
【0109】
まず、微細形状を測定するためには、測定光LAのビーム径を小さく絞る必要がある。測定光LAの焦点位置では、数μmから数十μmのビーム径を得ることができるが、測定光の焦点位置から外れると測定光LAのビーム径が大きくなる。また、ホワイトノイズ等の影響により測定光LAのビーム径が大きくなることもある。
【0110】
図16の符号16Aにビーム径が小さい場合に得られる測定光LAの強度分布を示し、符号16Bにビーム径が大きい場合に得られる測定光LAの強度分布を示す。測定光LAを校正する際、測定光LAの強度分布を測定するが、図16の符号16Bに示すように測定光LAのビーム径が大きい場合、ピーク近傍での強度の勾配が小さくなるために測定光LAの強度のピークの位置を精度よく検出することが困難となる。そのために、従来、光回転プローブ26の測定光LAの出射の基準方向(光回転プローブの回転角度の基準)を精度良く設定できないという問題があった。
【0111】
例えば、光回転プローブ26の結像レンズ64の焦点距離が18mmであり、測定光LAのビーム径が13μmである場合、0.5mmだけ焦点距離からずれると、ビーム径が150μmとなる。このとき、測定光LAの強度のピークの位置の設定精度が3μm程度であり、出射方向の校正精度は、約0.3°となる。光回転プローブ26の長手軸62a(測定光LAの光軸)から焦点距離までの間が10mmである場合、測定位置の誤差は、50μmにもなる。
【0112】
従来、このような大きな誤差により、測定対象の局所的部分の大きな曲率の形状を精度良く測定できないという問題があった。一方、本実施形態では、校正後の光回転プローブ26の測定光LAの出射方向を、ステップS10で設定した基準角度に対して故意に微小角度Δs1だけずらした基準角度をずらした状態でピンゲージ83の半径Rを測定して半径Rの誤差ΔRを算出する。
【0113】
図15に示すように、測定位置が測定光LAの焦点位置からずれたことにより測定光LAのビーム径が広がっている場合、算出した誤差ΔRのグラフは横軸方向に広がるが、グラフは横軸方向での対称性を維持する。そのため、グラフの横軸方向の広がりの幅の広がりは、算出した誤差ΔRの近似式に基づく調整誤差の算出結果に影響を与えない。従って、本実施形態では、たとえ測定光LAのビーム径が広がっている場合であっても、調整誤差の算出結果に基づいて精度良く測定光LAの出射方向を校正することができる。
【0114】
同様に、たとえ校正後に測定光LAの波長掃引光源28に一律な測長誤差が残っている場合であっても、図15に示すように、理論的な誤差ΔRのグラフと比べ、測定値から算出された誤差ΔRのグラフは縦軸方向にずれるだけであり、算出した誤差ΔRの近似式に基づく調整誤差の算出結果に影響を与えない。従って、本実施形態では、たとえ測定光LAの波長掃引光源28に一律な測長誤差がある場合であっても、精度良く測定光LAの出射方向を校正することができる。
【0115】
[第2実施形態に係る出射方向の再校正方法]
上記の説明では既知の半径を持つピンゲージ83の半径Rを測定することにより、S角の基準角度誤差Δs0を算出した。しかし、ピンゲージ83の半径Rを測定する代わりに、ピンゲージ83の表面形状を測定してもよい。図17に第2実施形態に係る測定光LAの出射方向の再校正方法を示す。図17に示すように、第2実施形態における出射方向の再校正方法は図14に示すフローチャートとほぼ同じであるが、ステップS314とS316の代わりに、ステップS410及びS412を行う点が異なる。以下、相違点について説明する。
【0116】
第2実施形態では、ステップS410において光回転プローブ26長手軸62a(S軸)周りにS角の基準角度をステップS10の設定から微小角度Δs1だけ変更させた状態で、ピンゲージ83の半径Rの代わりに、ピンゲージ83の表面形状を測定する。図18の符号18Aに、ある微小角度Δs1における表面形状の測定結果を、XY座標にプロットしたグラフを示す。
【0117】
続いて、ステップS412において、制御装置72は、各微小角度Δs1における測定値に基づいて、ピンゲージ83の半径Rの誤差ΔRの標準偏差σ(ΔR)を算出する。以下、図18に示すグラフを参照しながら、ある微小角度Δs1について、標準偏差σ(ΔR)を算出する方法の一例について具体的に説明する。まず、制御装置72は、表面形状の測定結果を最小二乗法で近似することによりピンゲージ83の半径Rの近似値を算出する。符号18Aに示すグラフでは半径Rの近似値が太い実線の円で示されている。符号18Bに、符号18Aに示す各測定点のXY座標のグラフを、ピンゲージ83の中心Cを中心とした回転角度(横軸)に対する半径Rの測定値(縦軸)に変換したグラフである。続いて、制御装置72は、半径Rの近似値と半径Rの測定値との差分である誤差ΔRを算出する。符号18Cに、ピンゲージ83の中心Cとした回転角度s(横軸)に対する誤差ΔR(縦軸)のグラフを示す。更に、制御装置72は、得られた誤差ΔRのバラツキから誤差ΔRの標準偏差σ(ΔR)を算出し、更に、誤差ΔRの正規分布において、全測定点のうちの約95%が含まれる範囲である±2σを形状誤差として算出する。図18の符号18Aから18Cに示すグラフの場合、形状誤差(±2σ)は60μmとなる。制御装置72は、このような形状誤差の計算を複数の異なる微小角度Δs1について行う。
【0118】
以降の手順は第1実施形態と同様である。図19に、光回転プローブ26の長手軸62a周りの回転の微小角度Δs1を横軸にし、ステップS314で算出した形状誤差(±2σ)を縦軸にしてプロットしたグラフを示す。例えば、図19のグラフを最小二乗法で二次多項式に近似すると、「±2σ=-76.508Δs1+36.141Δs1+4.6607」となる(図19の実線のグラフ参照)。
【0119】
このように、表面形状の測定を行う第2実施形態でも、半径Rを測定する第1実施形態とほぼ同様の結果が得られることが分かる。なお、光回転プローブ26の基準角度をステップS10の設定より微小角度Δs1だけ変更することによりピンゲージ83に測定光LAが測定点に垂直に当たらない場合に測定光LAと反射光LBとの干渉信号の幅が広くなる。形状測定を行う第2実施形態の場合、これが誤差の原因になるため、第1実施形態の近似式と第2実施形態の近似式との相違が生じる。
【0120】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、校正精度を向上させることが可能となり、光回転プローブ26の測定誤差を低減させることができる。延いては、光回転プローブ26を搭載する三次元座標測定装置10の測定誤差を低減させることができる。
【0121】
[第3実施形態に係る出射方向の再校正方法]
上記の第1及び第2実施形態において円柱形のピンゲージ83の半径Rを用いて出射方向の再校正を行った。ここで、ピンゲージ83の半径Rは、例えば、測定光LAのビーム径の十倍から数十倍程度である。例えばビーム径が13μmである場合、ピンゲージ83の半径Rは、130μmから数mm程度である。このような半径Rの小さなピンゲージ83を測定するための位置合わせをマニュアルで行うことは容易ではない。
【0122】
そこで、ピンゲージ83の代わりに、図20に示すような直方体のブロック85上にピンゲージ86を垂直に(Z軸方向に)立設した治具84を用いてもよい。なお、ピンゲージ86の垂直度はさほど厳しく要求されない。例えば、半径Rが0.25mmのピンゲージ86の場合、XY平面に対する傾斜角度が1°未満であれば、その傾斜角度が半径Rの測定誤差に与える影響は0.03μmであり、十分に校正に用いることができる。
【0123】
以下、この治具84を用いる場合の再校正方法について説明する。まず、図14に示す再校正を行う前に、治具84のブロック85上でのピンゲージ86の位置を測定する。通常、この測定は治具84について一度行えば十分であり、それ以後は、再校正においてこの測定で得た数値を繰り返し利用する。
【0124】
まず、設計上のピンゲージ86の中心(長手軸)の座標(x0、y0、z0)を仮定する。続いて、治具84のブロック85の三面B1,B2及びB3を測定し、治具84のブロック85のワーク座標系(XYZ直交座標系)を作成し、更に、ピンゲージ86の直径を測定することにより、ピンゲージ86の中心の位置を測定する。ピンゲージの位置度の公差により位置測定結果のずれが発生することがあるため、測定結果は、多くの場合設計上の位置と異なる。また、ピンゲージ86の頂点に垂直に測定光LAが当たらないことにより測定誤差が生じることもある。ここで、測定結果を(x1,y1,z1≒z0)と仮定する。この測定結果と設計上の位置とが異なる場合は、以後、ワーク座標系において測定結果の(x1,y1,z0)にピンゲージ86の中心が位置するものとして治具84を、第1及び第2実施形態において図14に示す再校正に用いる。
【0125】
第3実施形態によれば、図14に示す再校正方法を行う前に、ピンゲージ86の中心の座標はすでにワーク座標系上で特定されているため、治具84を三次元座標測定装置10のテーブル14に載置するだけでピンゲージ86の位置決めができる。これにより、上記の実施形態の効果に加えて、ピンゲージ83の位置合わせを容易に行うことができるようになるという効果が得られる。
【0126】
以上説明したように、第1から第3実施形態によれば、光回転プローブ26から出射される測定光LAの出射方向を高精度に校正できる。したがって、光回転プローブ26の測定誤差を低減させることができる。延いては、光回転プローブ26を搭載する三次元座標測定装置10の測定誤差を低減させることができる。これにより、例えば、測定対象の局所的部分の大きな曲率の形状を精度良く測定することが可能になる。
【0127】
以上、本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0128】
10…三次元座標測定装置,26…光回転プローブ,28…波長掃引光源,36…光検出器,40…固定光学系,42…回転光学系,44…光ファイバーケーブル,44a…出入射端,48…コリメータレンズ,50…中空モータ,52…ステータ,54…ロータ,54a…中空部,62…シャフト,62a…長手軸,62b…内面,64…結像レンズ,66…直角プリズムミラー,70…コントローラ,72…制御装置,80…ビームプロファイラ,81…リングゲージ,82…校正球,83、86…ピンゲージ,84…治具,85…ブロック
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