(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-23
(45)【発行日】2025-05-02
(54)【発明の名称】タッチロール及び巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 18/26 20060101AFI20250424BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20250424BHJP
【FI】
B65H18/26
B65H27/00 A
(21)【出願番号】P 2020073492
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019081260
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一郎
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-023158(JP,A)
【文献】特開平06-144667(JP,A)
【文献】特開2017-210304(JP,A)
【文献】特開2005-246962(JP,A)
【文献】特開平08-133537(JP,A)
【文献】特開昭58-193852(JP,A)
【文献】特開昭59-164165(JP,A)
【文献】特開平01-192640(JP,A)
【文献】特開平11-336742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B65H 23/00-23/16
B65H 23/24-23/34
B65H 27/00
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の樹脂フィルムを巻取り軸に巻き取る際に前記樹脂フィルムに接触する接触面を有するタッチロールであって、
ロール本体と、
前記ロール本体の径方向において前記ロール本体の外側に配置された第1層と、
前記接触面を有し、前記径方向において前記第1層の外側に配置された第2層と、
を備え、
前記第2層のAショア硬さは、前記第1層のAショア硬さより小さく、
前記第2層は、両面テープ、又は剥離可能な接着剤によって前記第1層に着脱自在に貼られて
おり、
前記第1層および前記第2層の厚みは、幅方向において均一である、
タッチロール。
【請求項2】
前記第2層のAショア硬さは、前記第1層のAショア硬さの0以上40/50以下である、
請求項1に記載のタッチロール。
【請求項3】
前記第1層のAショア硬さは50~80であり、
前記第2層のAショア硬さは0~40である、
請求項1又は2に記載のタッチロール。
【請求項4】
前記ロール本体における前記第1層と接触する面の材料は金属である、
請求項1~3の何れか一項に記載のタッチロール。
【請求項5】
前記第2層は、
前記接触面を有する外層と、
前記第1層と前記外層との間に設けられた内層と、
を有し、
前記内層及び前記外層のAショア硬さは、前記第1層のAショア硬さより小さく、
前記外層のAショア硬さは前記内層のAショア硬さより大きい、
請求項1~4の何れか一項に記載のタッチロール。
【請求項6】
前記内層のAショア硬さは0~20である、
請求項5に記載のタッチロール。
【請求項7】
前記外層のAショア硬さは、20~40である、
請求項5又は6に記載のタッチロール。
【請求項8】
長尺の樹脂フィルムが巻き取られる巻取り軸と、
請求項1~
7の何れか一項に記載のタッチロールと、
前記タッチロールが有する前記接触面を前記樹脂フィルムに一定の押圧力で接触させるために前記巻取り軸及び前記タッチロールのうち一方を他方に対して移動させる位置調整機構と、
を備える、
巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチロール及び巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の樹脂フィルムを巻取り軸に巻き取り、ロール状の原反ロールを製造することがある。この原反ロールはそれ自体を製品として販売されたり、或いは、次の工程に移送され、その次の工程で使用されたりする。上記樹脂フィルムを巻取り軸に巻き取る際には、巻き取りの際の変形欠陥(例えばシワなど)の発生を防止するために、樹脂フィルムにタッチロールを接触させ、一定に圧力(タッチ圧)を樹脂フィルムに付与しながら巻き取る。タッチロールとしては、例えば、特許文献1,2に記載のタッチロール(タッチローラ)がある。
【0003】
特許文献1に記載のタッチロールは、印刷後のフィルム、紙などを巻き取る際に使用されるタッチロールである。このタッチロールは、円筒状の心金を有し、その心金は、スポンジ状材料で被覆されている。特許文献1に記載されているタッチロールでは、巻き取られるフィルム、紙などにスポンジ状材料が接する。
【0004】
特許文献2に記載のタッチロールは、磁気テープを巻き取る際に使用されるタッチロールである。このタッチロールは、円形芯部材と、その芯部材の外周に設けられた厚手の弾性スポンジ部材と、その弾性スポンジ部材の外周にゴム硬度が50度以下の薄手の弾性ゴム部材とを有している。特許文献2に記載されているタッチロールでは、上記弾性ゴム部材が、巻き取られる磁気テープに接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭62-63248号公報
【文献】実開昭56-165747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂フィルムを巻き取る際の変形欠陥を防止可能なタッチロール及び巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るタッチロールは、長尺の樹脂フィルムを巻取り軸に巻き取る際に上記樹脂フィルムに接触する接触面を有するタッチロールであって、ロール本体と、上記ロール本体の径方向において上記ロール本体の外側に配置された第1層と、上記接触面を有し、上記径方向において上記第1層の外側に配置された第2層と、を備え、上記第2層のAショア硬さは、上記第1層のAショア硬さより小さい。
【0008】
本明細書において、Aショア硬さは、JIS K 6253に定めるデュロメータ タイプAの硬度(ショアA)である。
【0009】
上記タッチロールは、ロール本体側から順に第1層と第2層と有する。上記第2層のAショア硬さは、上記第1層のAショア硬さより小さい。すなわち、第2層は第1層より柔らかい層である。タッチロールを樹脂フィルムに接触させる際には、第2層が樹脂フィルムに接する。第2層は、第2層より硬い第1層で支持されるため、タッチロールを樹脂フィルムに押しつけた際の反力は第1層で吸収され得る。更に、第2層は第1層より柔らかいので、第1層を直接樹脂フィルムに接触させる場合より、樹脂フィルムの表面の凹凸に追従できる。その結果、タッチロールを樹脂フィルムに接触させながら樹脂フィルムを巻き取ることで、樹脂フィルムの長手方向に直交する方向に沿って均一な圧力を樹脂フィルムに付与しやすく、空気の巻き込みを防止できる。そのため、樹脂フィルムを巻き取る際の変形欠陥を防止可能である。
【0010】
上記第2層のAショア硬さは、上記第1層のAショア硬さの0以上40/50以下であってもよい。この場合、樹脂フィルムの長手方向に直交する方向に沿って均一な圧力を樹脂フィルムに付与し易い。
【0011】
上記第1層のAショア硬さは50~80であり、上記第2層のAショア硬さは0~40であってもよい。この場合、上記反力を吸収しやすい。
【0012】
上記第2層は、上記第1層に着脱自在に取り付けられていてもよい。第2層が劣化、損傷などした場合に、取り替えなどが容易である。
【0013】
上記ロール本体における上記第1層と接触する面の材料は金属であってもよい。
【0014】
上記第2層は、上記接触面を有する外層と、上記第1層と上記外層との間に設けられた内層と、を有し、上記内層及び上記外層のAショア硬さは、上記第1層のAショア硬さより小さく、上記外層のAショア硬さは上記内層のAショア硬さより大きくてもよい。
【0015】
上記構成では、第2層は、第1層より柔らかい一方、内層より硬い外層を有し、外層が樹脂フィルムに接する。外層によって第2層の劣化、損傷等を防止し易い。更に、内層によって、樹脂フィルムの表面の凹凸に追従可能である。これにより、樹脂フィルムに、更に一定の圧力を付与しやすい。
【0016】
上記内層のAショア硬さは、0~20であってもよい。上記外層のAショア硬さは、20~40であってもよい。
【0017】
本発明の他の側面に係る巻取装置は、長尺の樹脂フィルムが巻き取られる巻取り軸と、本発明の一側面に係る上記タッチロールと、上記タッチロールが有する上記接触面を上記樹脂フィルムに一定の押圧力で接触させるために上記巻取り軸及び上記タッチロールのうち一方を他方に対して移動させる位置調整機構と、を備える。
【0018】
上記巻取装置は、本発明の一側面に係るタッチロールを備える。そのため、樹脂フィルムを巻き取る際の変形欠陥を防止しながら樹脂フィルムを巻取り軸に巻き取ることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂フィルムを巻き取る際の変形欠陥を防止可能なタッチロール及び巻取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るタッチロールを用いた巻取装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した巻取装置の一部の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、光学積層体(樹脂フィルム)の一例の概略構成図である。
【
図4】
図4は、タッチロールの一例の斜視図である。
【
図5】
図5は、タッチロールの樹脂フィルムへの接触状態を説明するための図面である。
【
図6】
図6は、タッチロールの樹脂フィルムへの接触状態を説明するための図面である。
【
図7】
図7は、原反ロールの検査方法を説明する図面である。
【
図8】
図8は、タッチロールの他の例を説明するための図面である。
【
図9】
図9は、タッチロールの更に他の例を説明するための図面である。
【
図10】
図10は、タッチロールの配置位置の変形例を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0022】
図1は、一実施形態に係るタッチロールを利用した巻取装置の概略構成を示す図面である。
図2は、
図1に示した巻取装置の一部の概略斜視図であり、タッチロールと樹脂フィルムとの接触領域を説明するための図面である。
【0023】
巻取装置2は、長尺の樹脂フィルム4を巻き取るための装置である。樹脂フィルム4は、例えば押出成形によって製造され得る。樹脂フィルム4の長手方向の長さは、特に限定されないが、例えば1000m以上10000m以下、好ましくは1000m以上6000m以下の範囲である。樹脂フィルム4の幅方向の長さは、特に限定されないが、例えば2.5m以下であってもよい。
【0024】
樹脂フィルム4の例は、以下の光学フィルムである。光学フィルムは、単層であってもよいし、2以上の層が積層された光学積層体であってもよい。単層の光学フィルムとしては、後述の熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
【0025】
光学積層体を構成する層としては、偏光子、熱可塑性樹脂フィルム、光学機能層、接着剤層、粘着剤層、セパレートフィルム、プロテクトフィルム、タッチセンサパネル等が挙げられる。
【0026】
図3は、光学積層体の一例を示す模式図である。
図3に示した光学積層体100は、偏光板102と、第1粘着剤層104と、第1光学機能層106と、接着剤層108と、第2光学機能層110と、第2粘着剤層112と、セパレートフィルム114とを有する。第1粘着剤層104、第1光学機能層106、接着剤層108、第2光学機能層110、第2粘着剤層112及びセパレートフィルム114は、この順に偏光板102上に積層されている。以下、光学積層体100の各層を詳述する。
【0027】
[偏光板]
偏光板102は、偏光子102aと、偏光子102aの片面又は両面に積層された熱可塑性樹脂フィルム102bとを有する。
【0028】
(偏光子)
偏光子102aは、直線偏光特性を有する層である。偏光子102aの材料及び製造方法は、当分野における公知のものでよい。偏光子102aの厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子102aの厚みを薄くすることは、偏光板102の薄膜化に有利である。偏光子102aの厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0029】
(熱可塑性樹脂フィルム)
熱可塑性樹脂フィルム102bとしては、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム;等、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルム102bの厚みは、偏光板102の薄型化の観点から薄いことが好ましいが、薄すぎると強度が低下して加工性に劣る傾向があることから、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0031】
[第1粘着剤層]
第1粘着剤層104は、偏光板102と第1光学機能層106との間に介在してこれらを接合する層である。第1粘着剤層104は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。これらのなかでも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。第1粘着剤層104は、当分野の公知の方法により形成することができる。
【0032】
[第1光学機能層]
第1光学機能層106は、所望の光学機能を付与するための、偏光子102a以外の他の光学機能を有する層である。第1光学機能層106の好適な一例は位相差層である。位相差層としては、例えばλ/2の位相差を与える層、λ/4の位相差を与える層(ポジティブAプレート)及びポジティブCプレート等が挙げられる。位相差層は、配向層及び基材を含んでいてよいし、液晶層、配向層及び基材をそれぞれ2以上有していてもよい。位相差層の厚みは、偏光子102aの場合と同じとし得る。位相差層の材料及び製造方法は、当分野における公知のものでよい。
【0033】
第1光学機能層106の他の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等が挙げられる。上記他の例それぞれの材料及び製造方法は、当分野における公知のものでよい。
【0034】
[接着剤層]
接着剤層108は、第1光学機能層106と第2光学機能層110との間に介在してこれらを接合する層である。接着剤層108は、硬化性の樹脂成分を水に溶解又は分散させた公知の水系組成物(水系接着剤を含む。)及び活性エネルギー線硬化性化合物を含有する公知の活性エネルギー線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化性接着剤を含む。)等から構成される。
【0035】
[第2光学機能層]
第2光学機能層110は、所望の光学機能を付与するための、偏光子102a以外の他の光学機能を有する層である。第2光学機能層110の例は、第1光学機能層106の例を含む。よって、第2光学機能層110としては、第1光学機能層106の説明が引用され得る。通常、第2光学機能層110は、第1光学機能層106とは異なる光学機能を有する。例えば、第1光学機能層106及び第2光学機能層110のうち一方がλ/2の位相差を与える層である場合、他方はλ/4の位相差を与える層である。
【0036】
第2光学機能層110は、接着剤層108の代わりに粘着剤層を介して第1光学機能層106に接合されていてもよい。ここで用いられる粘着剤層としては、第1粘着剤層104の記載を引用することができる。
【0037】
[第2粘着剤層]
第2粘着剤層112は、光学積層体100を、画像表示素子又は他の光学部材に貼合するための層である。第2粘着剤層112に用いられる粘着剤、粘着剤組成物、厚み及び作製方法としては、第1粘着剤層104の項において述べた説明が引用される。
【0038】
[セパレートフィルム]
セパレートフィルム114は、第2粘着剤層112上(第2光学機能層110と反対側)に設けられ、第2粘着剤層112へのゴミなどの付着及び第2粘着剤層112が、巻き取りの際に光学積層体100(樹脂フィルム4)の他の部分に貼合されることを防止するためのものである。セパレートフィルム114は、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。セパレートフィルム114は、光学積層体100を、画像表示素子又は他の光学部材に貼合する際には、剥離除去される。
【0039】
光学積層体100は、その表面(典型的には、偏光板102の熱可塑性樹脂フィルム102bの表面)を保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板102が貼合された後、プロテクトフィルムが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
【0040】
プロテクトフィルムは、例えば基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂といった熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0041】
プロテクトフィルムの厚みとしては、特に限定されないが、20μm以上200μm以下の範囲とすることが好ましい。プロテクトフィルムの厚さが20μm以上であると、光学積層体100に強度が付与され易くなる傾向にある。
【0042】
上記光学積層体100において、例えば、熱可塑性樹脂フィルム102bが第1光学機能層106又は第2光学機能層110が有する光学機能を有してもよい。この場合、光学積層体100は、第1光学機能層106又は第2光学機能層110のうち、熱可塑性樹脂フィルム102bと同じ光学機能を有する層を有しない。熱可塑性樹脂フィルム102bは、例えば、プロテクトフィルムとしての機能を有してもよい。この場合、光学積層体100は、偏光板102からみて第1粘着剤層104と反対側のプロテクトフィルムを有しない。
【0043】
樹脂フィルム4は、
図1に示したように、搬送機構の一部である搬送ロールRによって搬送され、巻取装置2で巻き取られる。巻取装置2で巻き取られたロール状の樹脂フィルム4を原反ロールWRとも称する。説明の都合上、巻き取り中のロール状の樹脂フィルム4も原反ロールWRと称する場合もある。
【0044】
巻取装置2は、巻取り軸6と、タッチロール8と、位置調整機構10とを備える。
【0045】
巻取り軸6は、樹脂フィルム4を巻き取るための芯部である。本実施形態では、巻取り軸6がモータなどによって回転駆動されることによって、樹脂フィルム4が巻取り軸6の周りに巻き取られる。断らない限り、本実施形態の巻取装置2は、巻取り軸6の回転で樹脂フィルム4を巻き取る中心駆動巻取方式(センタードライブ方式)を採用している。
【0046】
タッチロール8は、巻取り軸6で巻き取られる樹脂フィルム4を押圧し、一定の圧力(以下、「タッチ圧」とも称す)を付与するためのロールである。樹脂フィルム4に対するタッチ圧は、例えば、500N/m以下であり、好ましくは400N/m以下であり、より好ましくは330N/m以下である。タッチ圧の下限は、通常、10N/m、好ましくは100N/mなどである。タッチロール8は、樹脂フィルム4に接する接触面8aを有する。接触面8aは、タッチロール8の最外面である。接触面8aの幅(タッチロール8の回転軸方向の長さ)は、一般に、樹脂フィルム4の幅(樹脂フィルム4の長手方向に直交する方向の長さ)以上の長さを有する。タッチロール8の径(直径)の例は、30mm~300mm、好ましくは50mm~200mm、より好ましくは120mm~160mmである。タッチロール8は、ニップロール、ライダーロール、プレスロールなどと称される場合もある。
【0047】
タッチロール8は、一対の支持部材12(
図2参照)によって回転可能に支持されている。支持部材12は、板状でもよいし、棒状でもよい。
【0048】
位置調整機構10は、タッチロール8が有する接触面8aを、
図1中の白抜き矢印で示したように、樹脂フィルム4に一定のタッチ圧を付与する押圧力で接触させるために、巻取り軸6及びタッチロール8のうち一方を他方に対して移動させる機構である。
【0049】
図1に例示した実施形態では、タッチロール8を、巻取り軸6に対して移動させる場合を示している。
図1に例示した実施形態では、位置調整機構10はシリンダである。位置調整機構10は、シリンダ本体14と、シリンダ本体14に対して伸縮可能なシリンダロッド16とを有する。シリンダロッド16は、支持部材12に連結されている。位置調整機構10であるシリンダの例は、油圧シリンダ及びエアシリンダを含む。位置調整機構10は、アクチュエータでもよい。位置調整機構10は、例えばスイング式でもよい。例えば、一対の支持部材12のうちタッチロール8と反対側の端部が支持軸に揺動可能に取り付けられてもよい。この場合、支持軸が位置調整機構10として機能する。上記一対の支持部材12は、位置調整機構10の一部であってもよい。
【0050】
位置調整機構10は、巻取り軸6に巻かれる樹脂フィルム4の量に応じて、樹脂フィルム4に一定のタッチ圧を付与可能にタッチロール8の位置を調整するために例えば上記シリンダを制御する制御部を備えていてもよい。制御部は例えばシリンダが備えていてもよい。
【0051】
位置調整機構10によって、巻取り軸6に樹脂フィルム4が連続的に巻き取られることで原反ロールWRの径が変化しても、それに応じてタッチロール8が後退する。その結果、接触面8aと樹脂フィルム4の表面との接触領域A(
図2に一点鎖線で囲い且つハッチングで示した領域)に、一定のタッチ圧が付与され得る。接触領域Aは、樹脂フィルム4の幅方向に延在している矩形を有する。
【0052】
次に、タッチロール8を、
図4を利用して詳細に説明する。タッチロール8は、ロール本体18と、第1層20と、第2層22とを有する。
【0053】
ロール本体18はタッチロール8の芯材である。ロール本体18は、円筒24と、一対の端壁25と、一対の軸部26とを有する。円筒24の材料の例は、金属、カーボン及びCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含む。金属の例は、鉄、ステンレス、アルミニウム等を含む。円筒24の表面が、ロール本体18において第1層20と接する面である。一対の端壁25は、円筒24の両端の開口部を塞いでいる。円筒24と一対の端壁25は、中空の胴部を形成している。一対の軸部26、一対の端壁25に、円筒24の軸線と同心で設けられている。
図2においては、一対の端壁25及び一対の軸部26のうち一方の端壁25及び一方の軸部26が図示されている。一対の軸部26は、一対の支持部材12によって回転可能に支持されている。ロール本体18は、一対の端壁25を貫通する一つの軸部を有してもよい。
【0054】
本実施形態において、第1層20は、ロール本体18の径方向においてロール本体18の外側(具体的には円筒24の外側)に配置されている。第1層20は、ロール本体18が有する円筒24の表面を被覆している。本実施形態において、第1層20は弾性を有する層である。第1層20は、第2層22に対する下地層である。第1層20の材料の例はゴムである。第1層20は、例えばゴムシートを円筒24の周方向に巻き付けることで形成されてもよいし、予め、上記ゴムシートによって筒部を形成し、その筒部をロール本体18に取り付けることによって形成してもよい。
【0055】
第1層20のAショア硬さは通常50~80である。第1層20は、タッチロール8を樹脂フィルム4に押しつけた場合の押圧力の反力(又は当たり)を吸収するための層である。例えば、タッチロール8の自重によってタッチロール8自体がたわむのを防止する点で、第1層20は厚すぎないことが好ましい。タッチロール8自体のたわみを防止することにより、樹脂フィルム4の幅方向に沿ってタッチ圧を均一に付与しやすくなる。一方、上記反力が分散しやすくする点で、第1層20が薄すぎないことが好ましい。上記反力を分散することにより、樹脂フィルム4の幅方向に沿ってタッチ圧を均一に付与しやすくなる。そのため、第1層20の厚さは、通常2mm~15mmであり、好ましくは、3mm~15mmであり、より好ましい範囲は、3mm~12mmである。
【0056】
第1層20のAショア硬さは、第1層20と同じ材料で形成されており厚さが6mmの試験片をJIS K 6253に従ってデュロメータ タイプAの硬度(ショアA)で試験した結果の硬さである。
【0057】
第1層20は、例えば第1層20となるべきシートをロール本体18に巻き付けることによって形成してもよいし、第1層20となるべき円筒状のシートにロール本体18を挿入することによって、形成されてもよい。
【0058】
第2層22は、上記径方向において第1層20の外側に配置されている。第2層22の表面が接触面8aである。第2層22のAショア硬さは、第1層20のAショア硬さより小さい。すなわち、第2層22は、第1層20より柔らかい層である。第2層22のAショア硬さの例は、第1層20のAショア硬さの0以上40/50以下である。例えば、第1層20のAショア硬さが50~80である場合、第2層22のAショア硬さは0~40である。
【0059】
第2層22の厚さは、特に限定されないが、例えば0.5mm~10mm、好ましくは1mm~10mm、より好ましくは1mm~7mmである。
【0060】
本実施形態では、第2層22は多孔質層である。多孔質層としては、特に限定されず、樹脂から構成されるフォーム材(いわゆる発泡体)が挙げられる。多孔質層を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0061】
第2層22は、例えば、1枚のフォーム材を第1層20の周方向に巻くことによって形成されてもよいし、複数の矩形(又は短冊状)のフォーム材で第1層20の外面を隙間が生じないように被覆することによって形成されてもよい。複数の矩形(又は短冊状)のフォーム材で第1層20の外面を被覆する際には、例えば、複数の矩形(又は短冊状)のフォーム材の長手方向がタッチロール8の回転軸線の方向と一致するように配置して周方向に複数配置させてもよいし、複数の矩形(又は短冊状)のフォーム材の長手方向がタッチロール8の回転軸線の方向を横切るように(或いはらせん状に)第1層20に巻き付けてもよい。
【0062】
第2層22は、第1層20に着脱自在に取り付けられてもよい。例えば、上記1枚のフォーム材又は複数の矩形(又は短冊状)のフォーム材が第1層20の外面に、両面テープ、剥離可能な接着剤などによって貼られてもよい。
【0063】
第2層22は、第1層20に対して上述したAショア硬さの関係を有すれば、例えば、径方向において複数の積層構造を有してもよい。第2層22が複数の層を有する積層構造を有する場合には、積層構造を有する第2層22が上記Aショア硬さの範囲を満たしていれば、各層の材料は異なっていてもよい。
【0064】
第2層22のAショア硬さは、第2層22と同じ材料で形成された、厚さ6mmの試験片を準備し、JIS K6253に従ってタイプAのデュロメータで試験した結果の硬さである。或いは、第2層22が複数の層を含む積層構造を有する場合、第2層22の各層のAショア硬さは、各層と同じ材料で形成された、厚さ6mmの各試験片におけるJIS K 6253に定めるデュロメータ タイプAの硬度(ショアA)であってもよい。
【0065】
例えば、第1層20がゴム層であり、第2層22がスポンジ層である実施形態では、タッチロール8は、ロール本体18の外面にゴム層が設けられたゴムロールの表面をスポンジ層で被覆したロールに相当する。
【0066】
上記タッチロール8は、ロール本体18側から順に配置された第1層20と第2層22とを有する。第2層22は第1層20よりAショア硬さが小さい。換言すれば、タッチロール8は、ロール本体18の外側に硬い第1層20(下地層)と柔らかい第2層22とを有する。このように、ロール本体18の外側に硬い第1層20と柔らかい第2層22とを有することによる作用効果を、第2層22を有しない場合及び第1層20を有しない場合と比較して説明する。
【0067】
タッチロール8は、
図1及び
図2に示したように、巻取り軸6に巻かれる樹脂フィルム4の表面に一定のタッチ圧を作用させる。
図5に示したように、タッチロール8が押しつけられる樹脂フィルム4の表面に凹凸が生じている場合がある。
図5は、説明のため、タッチロール8と樹脂フィルム4が接触する前の状態を示している。
【0068】
タッチロール8が第2層22を有しない場合、第1層20が樹脂フィルム4の表面に接する。この場合、第1層20が例えば上述したAショア硬さを有する場合、第1層20は樹脂フィルム4の凹凸に追従できない。その結果、
図2に示した接触領域Aにおいてタッチロール8と樹脂フィルム4との間に隙間が生じる場合がある。これによって、接触領域Aに、例えばその幅方向(タッチロール8の回転軸線の方向)に沿ってタッチ圧が不均一に付与される。一方、タッチロール8が第1層20を有しない場合、すなわち、ロール本体18に直接第2層22が設けられている場合、樹脂フィルム4の表面における凸部分にロール本体18の影響で、設計上のタッチ圧より強いタッチ圧が生じやすい。そのため、この場合も
図2に示した接触領域Aに、その幅方向に沿ってタッチ圧が不均一に付与される。上記のように、接触領域Aの幅方向にタッチ圧が不均一に付与されると、巻取り軸6に樹脂フィルム4が巻き取られる際に空気が一緒に巻き込こまれる。樹脂フィルム4は空気を通しにくいため空気の巻き込みの影響を受けやすい。よって、空気が一緒に巻き込まれると、シワといった変形欠陥が樹脂フィルム4に生じやすい。
【0069】
これに対して、ロール本体18の外側に硬い第1層20と柔らかい第2層22とを有する場合、
図6に示したように、第2層22が樹脂フィルム4の表面の凹凸に追従するとともに、ロール本体18と第2層22との間に第1層20が介在していることにより、第1層20の硬さ(或いは弾性)で樹脂フィルム4の凸部分で生じる強い圧力を吸収できる。その結果、接触領域Aに、その幅方向に沿ってタッチ圧を均一に付与できる。そのため、巻取り軸6に巻かれた樹脂フィルム4での上記変形欠陥を防止できる。その結果、巻取り軸6に樹脂フィルム4が巻かれて得られた原反ロールWRから再度樹脂フィルム4を繰り出して、繰り出された樹脂フィルム4を利用して製品を製造する際、良品を製造し易い。
【0070】
第2層22のAショア硬さが、第1層20のAショア硬さの0以上40/50以下であれば、接触領域Aの幅方向においてタッチ圧を均一化し易い。同様に、第1層20のAショア硬さは50~80であり、第2層22のAショア硬さは0~40であれば、接触領域Aの幅方向においてタッチ圧を均一化し易い。
【0071】
上記のように、タッチロール8では、第1層20で樹脂フィルム4の凸部分で生じる強い圧力を吸収しながら、第2層22が樹脂フィルム4の表面の凹凸に追従する。したがって、第2層22の厚さは、第1層20及び第2層22のAショア硬さや接触領域Aのタッチ圧に応じて、適宜選択することができる。例示したように、第2層22の厚さが10mm以下(又は7mm以下)であれば、第1層21を一層有効に活用できる。
【0072】
第2層22が第1層20に対して着脱自在である実施形態では、原反ロールWRの製造コストを低くすることができる。例えば、第2層22は、樹脂フィルム4に押圧されるため、第2層22には劣化、損傷(削れ、摩耗等)が生じる場合がある。このような場合でも、第2層22が第1層20に対して着脱可能であれば、第2層22のみを取り替えればよい。その結果、タッチロール8全体を取り替える場合に比べてコストを低減できる。
【0073】
次に、具体例を説明する。具体例では、3つのタッチロールを準備した。3つのタッチロールを区別するために、3つのタッチロールを、タッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3と称す。タッチロールTR1は比較実験のためのタッチロールである。
【0074】
説明の便宜のため、具体例の説明では、タッチロールTR2及びタッチロールTR3を使用した場合と共に、比較具体例用のタッチロールTR1を使用した場合も、
図1に示した巻取装置2の説明における要素と同等の要素には同じ符号を付し重複する説明を省略する。
【0075】
(タッチロールTR1)
タッチロールTR1は、ロール本体18と、ロール本体18の外面に設けられたゴム層とを有していた。タッチロールTR1では、ゴム層が第1層20に相当する。タッチロールTR1の最表面(接触面8aに相当)はゴム層の表面であった。すなわち、タッチロールTR1は、第2層22を有しないタッチロールであった。タッチロールTR1の幅方向長さは、2m~2.5mであった。ロール本体18は金属製であった。ゴム層の厚さは10mmであった。ゴム層のAショア硬さは、65であった。
【0076】
(タッチロールTR2)
タッチロールTR2は、タッチロールTR1のゴム層(第1層20)の表面を更にスポンジシートで被覆した構成を有していた。したがって、タッチロールTR2は、ロール本体18と、ロール本体18の外面に設けられたゴム層と、ゴム層の外面に設けられたスポンジ層とを有していた。タッチロールTR2では、上記スポンジ層が第2層22に相当する。スポンジ層(第2層22;スポンジシート)の厚さは2mmであり、幅方向長さは、タッチロールTR1の幅方向長さと同じであった。スポンジ層(第2層22)のAショア硬さ、すなわち、タッチロールTR2に使用したスポンジシートのAショア硬さは8であった。
【0077】
(タッチロールTR3)
タッチロールTR3は、タッチロールTR2のスポンジ層の表面を更に、タッチロールTR2で使用したスポンジシートで被覆した構成を有していた。したがって、タッチロールTR3は、ロール本体18と、ロール本体の外面に設けられたゴム層と、ゴム層の外面に順に設けられた2つのスポンジ層とを有していた。2つのスポンジ層が第2層22に相当する。各スポンジ層の厚さは2mmであったので、2つのスポンジ層を1つのスポンジ層とみなした場合、タッチロールTR3は、ゴム層の外側に、厚さ4mmのスポンジ層(第2層22)を有していた。2つのスポンジ層に使用した材料は同じであるため、タッチロールTR3において2つのスポンジ層を有する第2層22のAショア硬さは、タッチロールTR2の場合と同様に、8であった。2つのスポンジ層の幅方向長さは同じであった。
【0078】
次に、
図1に示した巻取装置2において、タッチロール8として、タッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3を使用して樹脂フィルム4の巻き取りを行った。巻き取りに使用した樹脂フィルム4は、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム(厚み40μm~80μm;巻長4000mm)であった。タッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3それぞれを使用した場合に巻き取った樹脂フィルム4は同じであった。
【0079】
樹脂フィルム4の巻き取りにおいて、巻取装置2として、中心駆動巻取方式の巻取機 を使用した。巻取り速度は30m/分~60m/分であった。樹脂フィルム4を巻き取る際の巻取張力(単位幅あたりの張力)は150N/m~250N/mであった。位置調整機構10には、エアシリンダを用いた。位置調整機構10を利用してタッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3を樹脂フィルム4に押しつけた時のタッチ圧は200N/m ~300N/mであった。
【0080】
タッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3をそれぞれタッチロール8として使用する点以外は、樹脂フィルム4及び巻取装置2の構成並びに巻取り条件は同じであった。
【0081】
タッチロールTR1、タッチロールTR2及びタッチロールTR3をそれぞれ利用して樹脂フィルム4を巻き取ることで得られた原反ロールWRの外観検査を行った。
具体的には、
図7に示したように、原反ロールWRの一方の側に配置された光源28から原反ロールWRに光を照射し、原反ロールWRの光源28と反対側から、透過光を目視観察した。光源28には、ポラリオンライト(シーズシー社製)を使用した。
【0082】
巻取装置2を利用して樹脂フィルム4の巻き取り時に例えば空気が巻き込まれ、原反ロールWRに変形欠陥(シワなど)が生じている場合には、その変形欠陥箇所が暗くなる。よって、評価基準となる見本に対する変形欠陥に起因する影(暗さ)の程度で変形欠陥の有無を評価した。
【0083】
タッチロールTR1を使用した場合の原反ロールWRの場合、上記外観検査で変形欠陥の影(暗さ)が確認された。一方、タッチロールTR2、及びタッチロールTR3を使用した場合、上記外観検査で変形欠陥の影(暗さ)が確認されなかった。すなわち、樹脂フィルム4にゴム層が直接接する場合には、樹脂フィルム4の巻き取り時に例えば空気を巻き込んでしまい変形欠陥が生じる一方、Aショア硬さが上記ゴム層より小さいスポンジ層が樹脂フィルム4に接する場合には、変形欠陥を防止できることが分かった。
【0084】
本発明は、上述した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0085】
例えば、タッチロールは、
図8に示したタッチロール30でもよい。タッチロール30は、第2層22の代わりに第2層32を備える点でタッチロール8と相違する。第2層32は、内層34と外層36とを有する。内層34及び外層36は、いずれも多孔質層(例えばスポンジ層)である。内層34及び外層36のAショア硬さは、第1層20のAショア硬さより小さく、内層34のAショア硬さは外層36のAショア硬さより小さい。換言すれば、内層34及び外層36は、第1層20より柔らかく、外層36は、内層34より硬い。例えば、内層34のAショア硬さの例は0~20であり、外層36のAショア硬さは20~40である。内層34のAショア硬さは外層36のAショア硬さより小さいため、例示した内層34及び外層36の一方のAショア硬さが20である領域を含む場合、他方のAショア硬さは20である領域を含まない。内層34は、例えば第1層20に着脱自在であってもよい。外層36は、内層34に着脱自在であってもよい。
【0086】
外層36のAショア硬さ(或いは第2層32のAショア硬さ)は、第1層20より小さいため、タッチロール30は、タッチロール8と同様の作用効果を有する。具体的には、タッチロール30が有する第2層32の内層34が外層36より柔らかいので、樹脂フィルム4の表面の凹凸に追従可能である。第2層32は内層34より硬い外層36を有しているため、内層34を直接樹脂フィルム4に接するよりも第2層32の劣化、損傷(削れ、摩耗等)を防止できる。更に、接触領域Aの短手方向の長さが短くなりやすい。そのため、更に一定のタッチ圧で確実に樹脂フィルム4の表面を押圧可能である。
【0087】
タッチロールは、
図9に示したタッチロール38でもよい。タッチロール38は、第2層22の代わりに第2層40を備える点で、タッチロール8と相違する。第2層40の第1層21に対するAショア硬さの関係は、第2層22の場合と同様であり、第2層40の材料の例は、第2層22の場合と同様である。以下、第2層40を、第2層22との相違点を中心にして説明する。
【0088】
第2層40は、幅方向に沿って、第1領域40a、第2領域40b及び第3領域40cをこの順に有する。第1領域40a、第2領域40b及び第3領域40cの厚さは同じである。第1領域40a、第2領域40b及び第3領域40cのうち少なくとも一つの領域のAショア硬さは、他の領域のAショア硬さと異なる。例えば、第1領域40aと第3領域40cのAショア硬さは同じであり且つ第2領域40bのAショア硬さより小さい(又は大きい)。Aショア硬さの違いは、使用する材料の違いで実現し得る。
【0089】
図9では、第2層40が幅方向に3つの領域を有する場合を例示しているが、領域の数は3つに限定されない。第2層40が幅方向に有する複数の領域のAショア硬さ及び各領域の幅方向の長さは、幅方向において樹脂フィルム4に均一のタッチ圧を付与できるように設定されていればよい。
【0090】
タッチロール8を樹脂フィルム4に接触させる場所は
図1及び
図2に示したように、巻取り軸6(又は巻取り軸6に巻かれているロール状の樹脂フィルム4)への樹脂フィルム4の接触箇所(又はその近傍)に限定されない。
図10に示したように、巻取り軸6の周方向において、巻取り軸6に巻かれているロール状の樹脂フィルム4に接するようにタッチロール8が配置されていればよい。
【0091】
ロール本体18は、一対の軸部26を備えなくてもよい。この場合、タッチロール8とは別に回転軸を準備し、ロール本体18自体であるタッチロールに上記回転軸を通し、一対の支持部材12で回転軸を回転可能に支持してもよい。ロール本体18は、例えば、円柱状の胴部(中実の胴部)と、一対の軸部26とを有してもよい。この場合、一対の軸部26は、上記胴部の軸線方向における両端面に、胴部の軸線に同心でそれぞれ設けられる。胴部の材料の例は、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等)である。胴部の表面が、ロール本体18において第1層20と接する面である。
【0092】
位置調整機構10は、巻取り軸6を移動させてもよい。巻取り軸6に樹脂フィルム4を巻き取る手法として、巻取装置2は、タッチロール8とは別の駆動軸(又は駆動ロール)を樹脂フィルム4に押し当て、上記駆動軸を回転駆動し、駆動軸と樹脂フィルム4との間の接触領域Aで生じる摩擦力で、樹脂フィルム4が巻かれた巻取り軸6を回転させることで、巻取り軸6の周りに樹脂フィルム4を巻き取る表面駆動巻取方式を採用してもよい。或いは、巻取装置2は、上記実施形態で例示した中心駆動巻取方式と、上記表面駆動巻取方式とを組み合わせた併用駆動方式を採用してもよい。表面駆動巻取方式では、上記駆動軸の代わりにタッチロール8自体を使用してもよい。
【0093】
第2層22は、Aショア硬さが第1層のAショア硬さより小さい層であれば、第2層22は多孔質層に限定されないし、第2層22の材料はゴムであってもよい。
【0094】
これまで説明した実施形態及び各種変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0095】
2…巻取装置、4…樹脂フィルム、6…巻取り軸、8…タッチロール、8a…接触面、20…第1層、22…第2層、30…タッチロール、32…第2層、34…内層、36…外層。