(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-24
(45)【発行日】2025-05-07
(54)【発明の名称】状態検出装置、状態検出方法及び状態検出システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20250425BHJP
G01R 31/374 20190101ALI20250425BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20250425BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20250425BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20250425BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250425BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250425BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20250425BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/374
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
B60R16/033 Z
(21)【出願番号】P 2020172958
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 真司
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-29430(JP,A)
【文献】特開2019-113524(JP,A)
【文献】特開2017-34781(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107064800(CN,A)
【文献】特開2017-10727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出装置であって、
前記二次電池の温度並びに電流及び/又は電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶手段と、
事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率との関係を格納したデータベースと、
前記充電履歴情報
と、前記放電履歴情
報のいずれか一つ、又は前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出手段と、
前記使用履歴と前記データベースから前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出手段と、
を備える状態検出装置。
【請求項2】
前記寿命確率は、同じ使用履歴の複数の二次電池において新品時の実測容量に対する実測容量の比が所定の値以下である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において実測容量に対する新品時の実測容量の比が所定の値以上である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において前記車両に搭載されたエンジンの始動時の電圧が所定の値以下である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値が所定の値以上である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値に対する新品時の内部抵抗値の比が所定の値以下である二次電池の数量の割合、又は同じ使用履歴の複数の二次電池において新品時の内部抵抗値に対する内部抵抗値の比が所定の値以上である二次電池の数量の割合を示す
請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項3】
前記充電履歴情報は、前記二次電池の充電量であり、前記放電履歴情報は、前記二次電池の放電量である
請求項1又は請求項2に記載の状態検出装置。
【請求項4】
前記使用履歴は、前記二次電池の温度、前記二次電池のSOC、前記二次電池のSOH、定格容量、前記二次電池の放電深度、前記二次電池のOCV、前記車両に搭載されたエンジンの始動時の前記二次電池の電圧のうち少なくとも1つ以上で重みづけされている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の状態検出装置。
【請求項5】
前記使用履歴から前記二次電池の単位期間あたりの使用量を算出し、前記使用量に基づいて前記二次電池が寿命に至るまでの期間、又は所定の期間後の寿命確率を算出する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の状態検出装置。
【請求項6】
車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出方法であって、
前記二次電池の温度並びに電流及び/又は電圧を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶ステップと、
前記充電履歴情報と、前記放電履歴情報のいずれか一つ、又は前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出ステップと、
前記使用履歴と、事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率の関係を格納したデータベースとから、前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出ステップと、
を備える状態検出方法。
【請求項7】
状態検出装置とサーバ装置とを有し、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出システムであって、
前記状態検出装置は、
前記二次電池の温度並びに電流及び/又は電圧を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶手段と、
前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報を前記サーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、
前記サーバ装置から送信される寿命確率を前記制御装置を介して受信する寿命確率受信手段と、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記情報送信手段で送信された前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報を受信する情報受信手段と、
事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率との関係を格納したデータベースと、
前記情報受信手段が受信した
前記充電履歴情報と、前記放電履歴情報のいずれか一つ、又は前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出手段と、
前記使用履歴と前記データベースから前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出手段と、
前記寿命確率を前記状態検出装置へ送信する寿命確率送信手段と、
を有する
状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態検出装置、状態検出方法及び状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の劣化の判定や寿命の予測を行う発明として、例えば特許文献1-3に開示された発明がある。特許文献1に開示された発明は、予め実験或いはシミュレーションにより求めた余寿命マップを記憶し、蓄電池の使用履歴に対応した余寿命マップを用いて蓄電池の余寿命を算出する。特許文献2に開示されている発明は、経時的に充放電を繰り返して二次電池を使用する過程で、その時点から寿命に至るまでに充放電可能な回数を推算し、交換日時を表示する。特許文献3に開示されている発明は、鉛バッテリの充電量の値、鉛バッテリの放電量の値、及び鉛バッテリの放電深度の値を取得し、充電量取得値、放電量取得値、及び放電深度取得値に基づいて鉛バッテリの劣化を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-020804号公報
【文献】特開平6-089745号公報
【文献】特許第6605008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の発明によれば、二次電池の寿命までの期間を知ることができるものの、二次電池の劣化の程度を知ることができない。また、特許文献3の発明によれば、鉛バッテリの劣化を判定できるものの、二次電池の寿命までの期間を知ることができない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用履歴に応じた二次電池の劣化の程度と寿命の関係を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る状態検出装置は、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出装置であって、前記二次電池の温度並びに電流及び又は電圧を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶手段と、事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率との関係を格納したデータベースと、前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出手段と、前記使用履歴と前記データベースから前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出手段と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記寿命確率は、同じ使用履歴の複数の二次電池において新品時の実測容量に対する実測容量の比が所定の値以下である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において実測容量に対する新品時の実測容量の比が所定の値以上である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において始動時の電圧が所定の値以下である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値が所定の値以上である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値に対する新品時の内部抵抗値の比が所定の値以下である二次電池の数量の割合、又は同じ使用履歴の複数の二次電池において新品時の内部抵抗値に対する内部抵抗値の比が所定の値以上である二次電池の数量の割合を示すことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記使用履歴は、前記二次電池の充電量、前記二次電池の放電量、前記二次電池の取り付け以降に計時された時間のうち少なくとも1つ以上で構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記使用履歴は、前記二次電池の温度、前記二次電池のSOC、前記二次電池のSOH、定格容量、前記二次電池の放電深度、前記二次電池のOCV、前記二次電池の電圧のうち少なくとも1つ以上で重みづけされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記使用履歴から前記二次電池の単位期間あたりの使用量を算出し、前記使用量に基づいて前記二次電池が寿命に至るまでの期間、又は所定の期間後の寿命確率を算出することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る状態検出装置は、前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報を、前記データベースを記憶したサーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、前記情報送信手段により送信された前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記サーバ装置において算出された前記二次電池の使用履歴と、前記サーバ装置が記憶している前記データベースとから前記サーバ装置において算出された前記寿命確率を、前記サーバ装置から前記制御装置を介して受信する寿命確率受信手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る状態検出方法は、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出方法であって、前記二次電池の温度並びに電流及び/又は電圧を測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶ステップと、前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出ステップと、前記使用履歴と、事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率の関係を格納したデータベースとから、前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出ステップと、を備える。
【0013】
本発明の一態様に係る状態検出システムは、状態検出装置とサーバ装置とを有し、車両に搭載された二次電池の状態を検出する状態検出システムであって、前記状態検出装置は、前記二次電池の温度並びに電流及び/又は電圧を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された温度並びに電流及び/又は電圧に応じて前記二次電池の充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶手段と、前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報を前記サーバ装置へ制御装置を介して送信する情報送信手段と、前記サーバ装置から送信される寿命確率を前記制御装置を介して受信する寿命確率受信手段と、を有し、前記サーバ装置は、前記情報送信手段で送信された前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報を受信する情報受信手段と、事前に評価された前記二次電池の使用履歴と前記二次電池の寿命確率との関係を格納したデータベースと、前記情報受信手段が受信した前記充電履歴情報及び前記放電履歴情報から前記二次電池の使用履歴を算出する使用履歴算出手段と、前記使用履歴と前記データベースから前記二次電池の寿命確率を算出する寿命確率算出手段と、前記寿命確率を前記状態検出装置へ送信する寿命確率送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用履歴に応じた二次電池の劣化の程度と寿命の関係を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。
【
図2】
図2は、状態検出装置が備える制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、充電履歴情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、放電履歴情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、重みづけテーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、データベースの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、時間の経過と累積使用履歴の経過の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付している。
【0017】
[実施形態]
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。実施形態に係る状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、及び放電回路15を有している。状態検出装置1は、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13の測定結果に基づいて、車両に搭載された充電可能である二次電池14の寿命を特定する。なお、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、及び放電回路15を別々の構成とするのではなく、これらの一部または全てをまとめた構成としてもよい。
【0018】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジン、及びディーゼルエンジン等のレシプロエンジン、又はロータリーエンジン等によって構成されている。エンジン17は、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し、車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。
【0019】
スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。オルタネータ16は、制御部10によって制御され、発電電圧を調整することが可能とされている。
【0020】
負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、シートヒータ、イグニッションコイル、カーオーディオ、及びカーナビゲーション等によって構成され、二次電池14から供給される電力によって動作する。
【0021】
二次電池14は、電解液を有する充電可能な電池であり、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、又はニッケル水素電池等によって構成されている。二次電池14は、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジン17を始動するとともに、負荷19に電力を供給する。なお、二次電池14は、複数のセルを直列接続して構成されている。
【0022】
なお、
図1の例では、車両をエンジン17のみが駆動力を出力する構成としたが、車両は、例えば、エンジン17をアシストする電動モータを具備したハイブリッド車であってもよい。ハイブリッド車の場合、二次電池14は、リチウム電池等によって構成される高圧システム(電動モータを駆動するシステム)を起動し、高圧システムがエンジン17を始動する。
【0023】
電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、検出した電圧を示す信号を制御部10へ出力する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、検出した電流を示す信号を制御部10に出力する。温度センサ13は、二次電池14の電解液又は二次電池14の周囲の温度を検出し、検出した温度を示す信号を制御部10に出力する。
【0024】
放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチ、及び抵抗素子等によって構成され、制御部10の制御に応じて半導体スイッチをオン/オフすることで、二次電池14を所定の電流で放電させる。
【0025】
制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13からの信号を取得し、取得した信号を用いて二次電池14の寿命確率と寿命となるまでの日数を算出する。また、制御部10は、オルタネータ16の発電電圧を制御することで二次電池14の充電状態を制御する。なお、制御部10がオルタネータ16の発電電圧を制御することで二次電池14の充電状態を制御するのではなく、例えば、図示しないECU(Electric Control Unit)が充電状態を制御するようにしてもよい。
【0026】
図2は、
図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、通信部10d、インターフェース10e、記憶部10f、及びバス10gを有している。なお、CPU10aの代わりに、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成するようにしてもよい。
【0027】
バス10gは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、通信部10d、インターフェース10e、及び記憶部10fを相互に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするための信号線群である。通信部10dは、上位の装置であるECU(Electronic Control Unit)等との間で通信を行い、状態検出装置1が検出した情報、状態検出装置1が特定した二次電池14の寿命に係る情報、制御情報、を上位装置に通知する。インターフェース10eは、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取得するとともに、放電回路15、オルタネータ16、及びスタータモータ18等に駆動電流を供給してこれらを制御する。
【0028】
ROM10bは、不揮発性の半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。また、プログラム10baを実行しているCPU10aは、インターフェース10eが取得した信号を用いて二次電池14の寿命確率と寿命となるまでの日数を算出する。
【0029】
RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、CPU10aがプログラム10baを実行する際に生成されるデータや二次電池14の履歴データ10caを記憶する。RAM10cは、記憶手段の一例である。履歴データ10caは、例えば、二次電池14の使用を開始してからの経過時間、車両の走行時間(例えば、車両のエンジン17が稼働している積算時間)、車両の停止時間(例えば、車両のエンジン17が稼働していない積算時間)、充電時間(例えば、充電の開始及び終了日時や充電状態の積算時間)、放電時間(例えば、放電の開始及び終了日時や放電状態の積算時間)、充電履歴情報(例えば、充電によって二次電池14に流入した積算の電気量)、放電履歴情報(例えば、放電によって二次電池14から流出した積算の電気量)、二次電池14の温度などのデータである。
【0030】
制御部10は、プログラム10baを実行しているCPU10aにより実現するタイマーで計時される時間と、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13から出力される信号を予め定められた周期で受け付け、二次電池14の電圧、電流、温度を測定する。制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13は、測定手段の一例である。また、制御部10は、受け付けた時間と信号に基づいて、履歴データ10caに含まれる経過時間、走行時間、停止時間、充電時間、放電時間、充電履歴情報、放電履歴情報、温度などの最新の測定値を取得し、取得した測定値を前回の測定までに記憶した累積値に加算して履歴データ10caを更新する。この処理を制御部10が繰り返し実行することで、車両の走行中(一時的な停止状態も含む、車両の運転開始から終了までの期間)においても、履歴データ10caが適宜最新の状態に維持される。
【0031】
図3は、履歴データ10caに含まれる充電履歴情報の一例を示す図であり、
図4は、履歴データ10caに含まれる放電履歴情報の一例を示す図である。充電履歴情報は、二次電池14の電圧範囲と温度範囲毎に充電された電気量を積算したものである。例えば制御部10は、二次電池14の温度TeがT3≦Te<T4の範囲内であり、電圧VがV2≦V<V3の範囲内であり、二次電池14が+2Aで2時間充電された場合、
図3に示す充電履歴情報Qc_23に充電された電気量である4Ahを加算し、充電履歴情報を更新する。
【0032】
放電履歴情報は、二次電池14の電圧範囲と温度範囲毎に放電された電気量を積算したものである。制御部10は、例えば二次電池14の温度TeがT3≦Te<T4の範囲内であり、電圧VがV2≦V<V3の状態であり、二次電池14が-2Aで2時間放電された場合、
図4に示す放電履歴情報Qd_23に放電された電気量である-4Ahを加算し、放電履歴情報を更新する。また、制御部10は、経過時間、走行時間、停止時間、充電時間、放電時間について、前周期までの時間に対して、取得した最新の時間を加算することで、各時間を更新する。
【0033】
図2に戻り、記憶部10fは、不揮発性メモリによって構成され、重みづけテーブルTBと、データベース10faを記憶する。
図5は、重みづけテーブルTBの一例を示す図であり、
図6は、データベース10faの一例を示す図である。
【0034】
重みづけテーブルTBは、後述する累積使用履歴の算出の際に用いる重みを格納したテーブルである。重みづけテーブルTBは、二次電池14の電圧範囲と温度範囲毎に、重みづけする値を格納したテーブルである。例えば制御部10は、二次電池14の温度TがT3≦T<T4の範囲内であり、電圧VがV2≦V<V3の状態であるときの充電履歴情報Qc_23及び放電履歴情報Qd_23に対して、
図5に示すw_23の値で重みづけを行い、累積使用履歴を算出する。
【0035】
データベース10faは、二次電池14の寿命確率と寿命となるまでの日数の算出に用いられるデータベースであり、累積使用履歴と寿命確率との関係を示すデータベースの一例である。寿命確率は、実測容量/新品時の実測容量で表される値を健常度と定義し、事前に使用について評価した複数個の二次電池14において、使用に伴い予め定められた健常度以下となった二次電池14の数量の割合を示すものであり、予め定められた健常度を二次電池の寿命とした場合、寿命確率は、寿命に至った二次電池14の割合ということができる。なお、データベース10faは、記憶部10fに記憶されるのではなくROM10bに記憶される構成であってもよい。また、データベース10faは、寿命確率を表す関数として記憶部10fに記憶される構成であってもよい。この場合、累積使用履歴の値を寿命確率の関数に代入することにより、寿命確率を算出することができる。
【0036】
図6に示すデータベース10faは、例えば、健常度が0.5以下となった二次電池14を寿命に達したものとし、複数個の二次電池14について、後述する累積使用履歴と寿命確率との関係を示したものである。
図6に示すデータベース10faの場合、事前に評価した複数個の二次電池14について、累積使用履歴がQxのときの寿命確率が50%となっている。この場合、累積使用履歴がQxのときには、事前に評価した複数個の二次電池14のうち半分が寿命に達したことがわかる。
【0037】
(実施形態の動作例)
次に本実施形態の動作例について説明する。
図7は、制御部10が二次電池14の寿命確率と寿命となるまでの日数を特定する処理の流れを示すフローチャートである。制御部10は、
図7に示す処理を予め定められた周期で実行する。
【0038】
まず、制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、及び温度センサ13から出力される信号を取得し、二次電池14の端子電圧、二次電池14に流れる電流、二次電池14の電解液又は周囲の温度を測定する(ステップS101)。ステップS101は、測定ステップの一例である。次に制御部10は、タイマーで計時した時間と、取得した電圧、電流、温度に基づいて履歴データ10caを更新し、履歴データ10caに含まれる充電履歴情報及び放電履歴情報を更新する(ステップS102)。ステップS102は、充電履歴情報及び放電履歴情報を記憶する記憶ステップの一例である。
【0039】
制御部10は、ステップS102の後、例えば以下に示す数1の式に従って充電履歴情報、放電履歴情報、及び重みづけテーブルTBを用いて使用履歴Qを算出する(ステップS103)。数1の式におけるw_klは、重みづけテーブルTBに格納されている重みであり、Qc_klは、履歴データ10caに含まれる
図3に示した充電履歴情報であり、Qd_klは、履歴データ10caに含まれる
図4に示した放電履歴情報である。なお、二次電池14は、高温下においては劣化が進むため、重みづけテーブルTBに格納されている重みは、高温になるほど大きな値となっている。
【数1】
【0040】
制御部10は、ステップS103で算出した使用履歴Qを、予め記憶部10fに記憶されている二次電池14の初期の満充電容量で除算し、規格化された累積使用履歴を算出する(ステップS104)。累積使用履歴は、二次電池14の取り付け以降に計時された時間の一例であり、二次電池14の使用履歴の一例である。制御部10は、使用履歴Qと累積使用履歴を算出する使用履歴算出手段の一例である。また、ステップS103及びステップS104は、使用履歴を算出する使用履歴算出ステップの一例である。
【0041】
次に制御部10は、ステップS104で算出した累積使用履歴と、
図6に示すデータベースfaを用いて、現時点における二次電池14の寿命確率を算出する(ステップS105)。ステップS105は、二次電池14の寿命確率を算出する寿命確率算出ステップの一例である。制御部10は、ステップS105の処理を行うことにより寿命確率を算出し、算出した累積使用履歴にて寿命に至った二次電池14の割合を算出することができる。ここで制御部10は、二次電池14の寿命確率を算出する寿命確率算出手段の一例として機能する。例えば、現時点の累積使用履歴の計算結果がQnである場合、
図6のデータベースfaを参照すると、寿命確率は25%となっている。この場合、現時点の累積使用履歴では、事前に評価した複数個の二次電池14のうち、25%の二次電池が寿命に達したことが算出される。
【0042】
次に制御部10は、ステップS104で算出した累積使用履歴を用いて、二次電池14の1日当たりの使用履歴を算出する(ステップS106)。
図8は、時間の経過と算出した累積使用履歴の経過の関係を示すグラフである。制御部10は、累積使用履歴の算出の履歴を記憶部10fに記憶させており、現時点(tn)からT日前の時点(tp)までの期間内の累積使用履歴がqである場合、q/Tの計算を行うことにより、二次電池14の1日当たりの使用履歴を得ることができる。
【0043】
次に制御部10は、ステップS106で算出した1日当たりの使用履歴を用いて、未来の時点での寿命確率を算出する(ステップS107)。具体的には、まず制御部10は、例えば現時点からt日後の未来の時点での寿命確率を算出する場合、ステップS104で算出した累積使用履歴と、ステップS106で算出した1日当たりの使用履歴を使用し、現時点の累積使用履歴+1日当たりの使用履歴*t日の計算を行う。この計算により、制御部10は、t日後の累積使用履歴(Qn+(q/T)*t)を算出する。次に制御部10は、データベースfaを参照し、取得したt日後の累積使用履歴に対応した寿命確率(p)を算出する。
【0044】
次に制御部10は、ステップS106で算出した1日当たりの使用履歴を用いて、所定の寿命確率となるまでの日数を算出する(ステップS108)。具体的には、制御部10は、例えば寿命確率が所定の50%となるまでの日数を算出する場合、寿命確率が50%となるときの累積使用履歴(Qx)を、データベースfaを参照して算出し、(寿命確率が50%となるときの累積使用履歴-現時点の累積使用履歴)/1日当たりの使用履歴の計算を行う。この計算により、制御部10は、現時点から寿命確率が50%となるまでの日数を算出する。寿命確率が50%となったときを二次電池14の寿命と定義した場合、ステップS108の計算により、二次電池14が寿命となるまでの日数を得ることができる。
【0045】
次に制御部10は、ステップS105で算出した現時点の寿命確率、ステップS107で算出したt日後の寿命確率、及びステップS108で算出した、所定の寿命確率となるまでの日数をECUへ通知する(ステップS109)。なお、ECUは、制御部10から通知される寿命確率と日数を計器パネルで表示してもよい。
【0046】
本実施形態によれば、二次電池14の累積使用履歴に応じた寿命確率を算出することにより、二次電池14の劣化の程度を推定することができる。また、本実施形態によれば、未来の寿命確率を算出することにより、未来における二次電池14の劣化の程度を推定し、二次電池14が寿命となるまので日数を得ることができる。
【0047】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0048】
上述した実施形態においては、データベース10faは、通信部10dによる有線又は無線による通信で外部から取得して記憶部10fに記憶させるようにしてもよい。この構成によれば、車両が搭載している二次電池14に対応したデータベース10faを記憶部10fに記憶させ、二次電池14の寿命確率と二次電池14が寿命となるまでの日数を得ることができる。
【0049】
上述した実施形態においては、充電履歴情報及び放電履歴情報は、二次電池14の電圧範囲と温度範囲毎に電気量の積算値を格納しているが、二次電池の電圧範囲に替えて、二次電池のSOC(State Of Charge)の範囲と温度範囲毎に電気量の積算値を格納してもよい。この構成の場合、重みづけテーブルTBは、二次電池の電圧範囲に替えて、二次電池のSOC(State Of Charge)の範囲と温度範囲毎に重みづけの値を格納する。SOCが低い状態で使用されるとSOCが高い状態で使用されるときより二次電池14の劣化が進むため、この場合の重みの値は、SOCの値が小さい範囲、即ち充電率が低くなるにつれて大きな値となっている。また、温度範囲に替えて二次電池14のSOH(State of Health)の範囲、定格容量、SOCの範囲、放電深度の範囲、OCVの範囲、又はエンジン17の始動時の電圧範囲毎に電気量の積算値を格納値し、重みづけテーブルTBにてSOCの範囲、放電深度の範囲、OCVの範囲、又はエンジン17の始動時の電圧範囲毎に重みづけの値を格納し、SOC、放電深度、又はエンジン17の始動時の電圧で重みづけを行ってもよい。
【0050】
上述した実施形態においては、使用履歴Qを算出する際には、充電履歴情報と放電履歴情報を用いているが、充電履歴情報と放電履歴情報のいずれか一方のみを用いる構成としてもよい。また、温度範囲毎に充電時間と放電時間の積算値を記憶し、記憶した積算値に重みづけを行った計算結果を使用履歴Qとしてもよい。また、温度範囲毎に二次電池14の使用を開始してからの経過時間の積算値を記憶し、記憶した積算値に重みづけを行った計算結果を使用履歴Qとしてもよい。これらの充電時間、放電時間、経過時間で算出される値も、二次電池14の取り付け以降から計時された時間の一例である。
【0051】
上述した実施形態においては、寿命確率は、実測容量/新品時の実測容量で表される値を健常度と定義し、事前に使用について評価した複数個の二次電池14において、使用に伴い予め定められた健常度以下となった二次電池14の数量の割合としているが、例えば、新品時の実測容量/実測容量で表される値を健常度と定義し、事前に使用について評価した複数個の二次電池14において、使用に伴い予め定められた健常度以上となった二次電池14の数量の割合としてもよく、同じ使用履歴の複数の二次電池において始動時の電圧が所定の値以下である二次電池の数量の割合であってもよい。また、寿命確率は、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値が所定の値以上である二次電池の数量の割合、同じ使用履歴の複数の二次電池において内部抵抗値に対する新品時の内部抵抗値の比が所定の値以下である二次電池の数量の割合、又は同じ使用履歴の複数の二次電池において新品時の内部抵抗値に対する内部抵抗の比が所定の値以上である二次電池の数量の割合であってもよい。
【0052】
上述した実施形態においては、車両が備える状態検出装置1が現時点の寿命確率の算出や未来の寿命確率の算出、所定の寿命確率となるまでの日数の算出を行っているが、これらの算出を行うのは状態検出装置1に限定されるものではない。例えば、状態検出装置1は、車両に設けられたECU、通信インターフェース及び移動体通信網を介して履歴データ10caを、クラウドサービスを提供するサーバ装置へ送信する。この場合、CPU10a、通信部10d及びECUは、情報送信手段として機能する。ECUは、制御装置の一例である。また、このサーバ装置は、データベース10faを記憶している。なお、サーバ装置が記憶するデータベース10faは、先行して使用されていた車両の履歴データ10caを基に更新してもよい。サーバ装置は、ECUから送信される履歴データ10caを、通信インターフェースで受信する。サーバ装置は、制御部10と同様に、受信した履歴データ10caと記憶しているデータベース10faを用いて現時点の寿命確率の算出、未来の寿命確率の算出、所定の寿命確率となるまでの日数の算出を行う。サーバ装置は、算出した寿命確率と日数を車両が備えるECUへ送信し、ECUは、受信した寿命確率をCPU10aへ送り、サーバ装置から送信された寿命確率と日数を計器パネルで表示してもよい。この場合、サーバ装置のCPUは、履歴情報受信手段、使用履歴算出手段、寿命確率算出手段、寿命確率送信手段として機能する。状態検出装置1とサーバ装置は、状態検出システムの一例である。また、使用履歴Qの算出又は規格化された累積使用履歴の算出をサーバ装置で行い、算出結果を車両が備える状態検出装置1へ送信し、状態検出装置1は、サーバ装置から送信された使用履歴Q又は規格化された累積使用履歴と、記憶しているデータベース10faを用いて現時点の寿命確率の算出や未来の寿命確率の算出、所定の寿命確率となるまでの日数の算出を行ってもよい。また、サーバ装置は、算出した寿命確率と日数を車両が備えるECUへ送信するのではなく、車両のユーザが所有する携帯端末へ送信し、携帯端末は、送信された寿命確率と日数を表示してもよい。また、履歴データ10caの更新については、計時された時間、測定された電圧、電流、温度などをサーバ装置へ送信し、サーバ装置において履歴データ10caの更新を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 状態検出装置
10 制御部
10a CPU
10b ROM
10ba プログラム
10c RAM
10ca 履歴データ
10d 通信部
10e インターフェース
10f 記憶部
10fa データベース
10g バス
11 電圧センサ
12 電流センサ
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷
TB 重みづけテーブル