(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-25
(45)【発行日】2025-05-08
(54)【発明の名称】検出器及びガス分析計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/37 20060101AFI20250428BHJP
【FI】
G01N21/37
(21)【出願番号】P 2022503275
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2021005588
(87)【国際公開番号】W WO2021172082
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020030558
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】生田 卓司
(72)【発明者】
【氏名】武田 あや
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊哉
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-177094(JP,A)
【文献】米国特許第06166383(US,A)
【文献】特開2004-061207(JP,A)
【文献】特開平10-339698(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145112(WO,A1)
【文献】特開2002-131218(JP,A)
【文献】特開昭52-138982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0032514(US,A1)
【文献】特開昭61-133841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01J 1/00-1/60
G01J 3/00-3/52
G01J 5/00-5/90
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光の強度を検出する検出器において、
酸性のガス成分を含むガスで満たされており、赤外光が透過する第1ガス室と、
前記ガス成分を含むガスで満たされており、前記第1ガス室を透過した赤外光が透過する第2ガス室と、
前記第1ガス室及び第2ガス室を連絡する連絡路と、
前記連絡路を流れるガスの流量を検出するフローセンサと、
通路によって前記第1ガス室又は第2ガス室に繋がっており、酸性の乾燥剤が入っている乾燥容器が収容される収容室とを備え
、
前記乾燥容器にて、前記収容室に設けられた前記通路の通路口に対向する場所とは異なる場所にガスの出入口が設けられており、
前記出入口は前記通路と連絡している
検出器。
【請求項2】
前記ガス成分は一酸化窒素であり、
前記乾燥剤は、五酸化二リン、塩化カルシウム又は硫酸マグネシウムである
請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
赤外光の強度を検出する検出器において、
ガスで満たされており、赤外光が透過する第1ガス室と、
ガスで満たされており、前記第1ガス室を透過した赤外光が透過する第2ガス室と、
前記第1ガス室及び第2ガス室を連絡する連絡路と、
前記連絡路を流れるガスの流量を検出するフローセンサと、
通路によって前記第1ガス室又は第2ガス室に繋がっており、乾燥剤が入っている乾燥容器が収容される収容室と
を備え、
前記乾燥容器にて、前記収容室に設けられた前記通路の通路口に対向する場所とは異なる場所にガスの出入口が設けられており、
前記出入口は前記通路と連絡している
検出器。
【請求項4】
分析対象のガスに含まれ、赤外光の特定の波長成分を吸収する特定のガス成分の濃度を分析するためのガス分析計において、
請求項1から請求項
3のいずれか1つに記載の検出器と、
赤外光を発光する光源と、
前記分析対象のガスが流れるセルと
を備え、
前記第1ガス室及び前記第2ガス室に満たされているガスは、前記特定のガス成分を含み、
前記光源が発光した赤外光は、前記セルを透過し、
前記セルを透過した赤外光は前記検出器の前記第1ガス室を透過し、
前記フローセンサが検出した流量に基づいて前記濃度が算出される
ガス分析計。
【請求項5】
前記検出器の数は2であり、
前記セルを透過した赤外光は、一方の検出器の第1ガス室を透過し、
前記一方の検出器の第2ガス室を透過した赤外光は、他方の検出器の第1ガス室を透過し、
2つの検出器が有する2つのフローセンサが検出した2つの流量に基づいて前記濃度が算出される
請求項
4に記載のガス分析計。
【請求項6】
前記他方の検出器の前記第1ガス室及び第2ガス室に含まれる前記特定のガス成分の濃度は、前記一方の検出器の第1ガス室及び第2ガス室に含まれる前記特定のガス成分の濃度よりも高い
請求項
5に記載のガス分析計。
【請求項7】
前記セルは、前記光源が発光した赤外光が透過する透過窓を有し、
前記光源は、
赤外光を発光する発光素子と、
一面が開放された箱体状をなし、前記発光素子を収容しており、前記発光素子が発光した赤外光を反射する反射体と、
前記反射体の開口の周縁部と、前記透過窓の周縁部とに密着する環状の密着部材と
を有する請求項
4から請求項
6のいずれか1つに記載のガス分析計。
【請求項8】
送風機を備え、
前記光源は、前記反射体の側面を覆う筒状の覆い体を有し、
前記覆い体には複数の開口が設けられ、
前記送風機は前記覆い体に向けて風を送る
請求項
7に記載のガス分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、赤外光の強度を検出する検出器と、検出器を備えるガス分析計とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの成分分析を行うために非分散赤外線吸収法が用いられている。ガスの成分分析を行う装置として、赤外光の強度を検出する検出器を用いたガス分析計がある。このガス分析計で用いる検出器の1つとして、特定のガス成分を含むガスが封入されている検出器が挙げられる。特定のガス成分は、赤外光の特定の波長成分を吸収する成分である。ガスが封入されている検出器を用いたガス分析計では、赤外光を発光する光源と、分析対象のガスが流れるセルと、検出器とが並んでいる。光源が発光した赤外光はセルを透過する。セルを透過した赤外光は検出器に入射される。
【0003】
分析対象のガスは、赤外光の特定の波長成分を吸収する特定のガス成分が含まれている。分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の量が多い程、即ち、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分の濃度が高い程、セル内で吸収される赤外光の量が多いので、検出器に入射される赤外光の特定の波長成分の強度は弱い。
【0004】
検出器では、第1ガス室及び第2ガス室は特定のガス成分を含むガスで満たされている。第1ガス室及び第2ガス室は連絡路によって連絡されている。検出器に入射された赤外光は第1ガス室及び第2ガス室の順に透過する。第1ガス室では、特定のガス成分が赤外光の特定の波長成分を吸収する。第1ガス室を透過した赤外光の特定の波長成分は、第2ガス室に入っているガスの特定のガス成分によって吸収される。赤外光が吸収された場合、第1ガス室及び第2ガス室に入っているガスは膨張する。赤外光の吸収量が大きい程、ガスは大きく膨張する。
【0005】
検出器に入った赤外光に関して、特定の波長成分の大部分は、第1ガス室に満たされているガスによって吸収され、第2ガス室に満たされているガスによって吸収される赤外光の量は少ない。このため、検出器に赤外光が入射した場合、連絡路を介して第1ガス室から第2ガス室にガスが流れる。検出器では、連絡路を流れるガスの流量を検出する。検出器に入射される赤外光の特定の波長成分の強度が強い程、第1ガス室及び第2ガス室内のガスによって吸収される赤外光の量の差が大きい。第1ガス室及び第2ガス室内のガスによって吸収される赤外光の量の差が大きい程、連絡路を流れるガスの流量は多い。従って、ガスの流量の検出は赤外光の特定の波長成分の強度の検出に相当する。
【0006】
分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の量が多い程、即ち、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度が高い程、検出器に入射される赤外光の強度は弱く、連絡路を流れるガスの流量は少ない。検出器が検出したガスの流量に基づいて、特定のガス成分の濃度が算出される。このようなガス分析計の例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特定のガス成分が吸収する赤外光の波長領域が、水分が吸収する赤外光の波長領域と重なる場合がある。この場合において、検出器に水分が含まれているとき、検出器が検出したガスの流量は、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分の濃度に応じた流量とは異なる。従って、検出器に水分が含まれている場合、即ち、検出器が乾燥していない場合、特定のガス成分の濃度を正確に測定することができない。
【0009】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1ガス室及び第2ガス室が乾燥している検出器と、検出器を備えるガス分析計とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る検出器は、赤外光の強度を検出する検出器において、酸性のガス成分を含むガスで満たされており、赤外光が透過する第1ガス室と、前記ガス成分を含むガスで満たされており、前記第1ガス室を透過した赤外光が透過する第2ガス室と、前記第1ガス室及び第2ガス室を連絡する連絡路と、前記連絡路を流れるガスの流量を検出するフローセンサと、通路によって前記第1ガス室又は第2ガス室に繋がっており、酸性の乾燥剤が入っている乾燥容器が収容される収容室とを備える。
【0011】
上記の態様によれば、第1ガス室及び第2ガス室に含まれているガスは乾燥容器に入り、ガスに含まれている水分は乾燥剤によって吸収される。このため、第1ガス室及び第2ガス室は乾燥している。また、酸性のガス成分がガスに含まれおり、乾燥剤として、酸性の物質が用いられる。このため、ガス成分と乾燥剤との中和反応が起こらず、第1ガス室及び第2ガス室に含まれているガスが適切に乾燥される。
【0012】
本開示の一態様に係る検出器では、前記ガス成分は一酸化窒素であり、前記乾燥剤は、五酸化二リン、塩化カルシウム又は硫酸マグネシウムである。
【0013】
上記の態様によれば、第1ガス室及び第2ガス室には、一酸化窒素を含むガスが入っており、乾燥剤として、五酸化二リン、塩化カルシウム又は硫酸マグネシウムが用いられる。
【0014】
本開示の一態様に係る検出器では、前記乾燥容器にて、前記収容室に設けられた前記通路の通路口に対向する場所とは異なる場所にガスの出入口が設けられており、前記出入口は前記通路と連絡している。
【0015】
上記の態様によれば、乾燥剤が収容室に収容されている場合において、乾燥剤が潮解性を有するとき、乾燥剤は水分を吸収し、乾燥剤の一部が液状に変化する。検出器へのガスの封入は、検出器の収容室に乾燥剤が収容されている状態で、検出器内を真空にした後に行われる。検出器内を真空にする工程において乾燥剤が潮解していた場合、潮解した液が飛散する可能性がある。液が飛散した場合、潮解した液が第1ガス室又は第2ガス室に設けられた赤外光の透過窓等に付着し、結果、曇りが発生する可能性がある。赤外光が曇っている透過窓を透過した場合、赤外光の強度が減衰する。
【0016】
この場合、フローセンサが検出するガスの流量は、第1ガス室に入射された赤外光の特定の波長成分の強度を正確に示さない。しかしながら、乾燥容器において、ガスの出入口は通路口に対向する場所とは異なる場所に設けられている。このため、たとえ、液が飛散した場合であっても、飛散した液が第1ガス室又は第2ガス室に入りにくく、透過窓において曇りが発生する可能性は低い。
【0017】
本開示の一態様に係る検出器は、赤外光の強度を検出する検出器において、ガスで満たされており、赤外光が透過する第1ガス室と、ガスで満たされており、前記第1ガス室を透過した赤外光が透過する第2ガス室と、前記第1ガス室及び第2ガス室を連絡する連絡路と、前記連絡路を流れるガスの流量を検出するフローセンサと、通路によって前記第1ガス室又は第2ガス室に繋がっており、乾燥剤が入っている乾燥容器が収容される収容室とを備え、前記乾燥容器にて、前記収容室に設けられた前記通路の通路口に対向する場所とは異なる場所にガスの出入口が設けられており、前記出入口は前記通路と連絡している。
【0018】
上記の態様によれば、第1ガス室及び第2ガス室に満たされているガスは乾燥容器に入り、ガスに含まれている水分は乾燥剤によって吸収される。このため、第1ガス室及び第2ガス室は乾燥している。乾燥容器において、収容室に設けられた通路の通路口に対向する場所とは異なる場所にガスの出入口が設けられている。このため、前述したように、たとえ、液が飛散した場合であっても、飛散した液が第1ガス室又は第2ガス室に入りにくく、透過窓において曇りが発生する可能性は低い。
【0019】
本開示の一態様に係るガス分析計は、分析対象のガスに含まれ、赤外光の特定の波長成分を吸収する特定のガス成分の濃度を分析するためのガス分析計において、前述した検出器と、赤外光を発光する光源と、前記分析対象のガスが流れるセルとを備え、前記第1ガス室及び前記第2ガス室に満たされているガスは、前記特定のガス成分を含み、前記光源が発光した赤外光は、前記セルを透過し、前記セルを透過した赤外光は前記検出器の前記第1ガス室を透過し、前記フローセンサが検出した流量に基づいて前記濃度が算出される。
【0020】
上記の態様によれば、セルを流れる分析対象のガスに含まれる特定のガス成分の濃度に応じて、特定のガス成分が吸収する赤外光の量が変動するので、セルを透過した赤外光の特定の波長成分の強度が変動する。セルを透過した赤外光の特定の波長成分の強度に応じて、検出器の連絡路を流れるガスの流量、即ち、フローセンサが検出するガスの流量が変動する。従って、フローセンサが検出した流量に基づいて濃度が検出される。ガスの流量の検出は、赤外光の特定の波長成分の強度の検出に相当する。
【0021】
本開示の一態様に係るガス分析計では、前記検出器の数は2であり、前記セルを透過した赤外光は、一方の検出器の第1ガス室を透過し、前記一方の検出器の第2ガス室を透過した赤外光は、他方の検出器の第1ガス室を透過し、2つの検出器が有する2つのフローセンサが検出した2つの流量に基づいて前記濃度が算出される。
【0022】
上記の態様によれば、分析対象のガスに、特定のガス成分の他に、吸収する赤外光の波長領域が、特定のガス成分が吸収する赤外光の波長領域と重なっている干渉ガス成分が含まれている場合、赤外光がセルを透過したときに生じる赤外光の減衰量は、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分及び干渉ガス成分全体の濃度を示す。一方の検出器を透過した赤外光に関して、特定の波長成分の強度はゼロに近い。このため、一方の検出器を透過した赤外光の減衰量は、干渉ガス成分の濃度を示し、この濃度に応じたガスの流量は他方の検出器によって検出される。従って、2つの検出器の出力に基づいて、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度を正確に算出することができる。
【0023】
本開示の一態様に係るガス分析計では、前記他方の検出器の前記第1ガス室及び第2ガス室に含まれる前記特定のガス成分の濃度は、前記一方の検出器の第1ガス室及び第2ガス室に含まれる前記特定のガス成分の濃度よりも高い。
【0024】
上記の態様によれば、一方の検出器を透過した赤外光の強度は弱い。しかしながら、他方の検出器の第1ガス室及び第2ガス室に含まれる特定のガス成分の濃度は高いので、ガスの流量を容易に検出することができる。
【0025】
本開示の一態様に係るガス分析計では、前記セルは、前記光源が発光した赤外光が透過する透過窓を有し、前記光源は、赤外光を発光する発光素子と、一面が開放された箱体状をなし、前記発光素子を収容しており、前記発光素子が発光した赤外光を反射する反射体と、前記反射体の開口の周縁部と、前記透過窓の周縁部とに密着する環状の密着部材とを有する。
【0026】
上記の態様によれば、反射体及び透過窓の間に隙間が存在しないので、風が反射体内に入り込まず、発光素子の温度が風により変動することがない。通常、発光素子が発光する赤外光の強度は発光素子の温度に応じて変動する。しかし、発光素子の温度が風により変動しないので、光源が発光する赤外光の強度は安定する。
【0027】
本開示の一態様に係るガス分析計は、送風機を備え、前記光源は、前記反射体の側面を覆う筒状の覆い体を有し、前記覆い体には複数の開口が設けられ、前記送風機は前記覆い体に向けて風を送る。
【0028】
上記の態様によれば、熱伝導率が高い部材、例えば、金属によって反射体が構成されている場合、発光素子が発生させた熱は反射体に伝導し、反射体は放熱する。送風機の風は、覆い体の複数の開口を通って反射体に当たり、反射体に当たった風は複数の開口を通って光源の外部に出る。このため、反射体は効率的に放熱を行い、発光素子の温度上昇が抑制される。
【発明の効果】
【0029】
上記の態様によれば、第1ガス室及び第2ガス室は乾燥している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施の形態1におけるガス分析計の概略を示す断面図である。
【
図2】ガス分析計を用いたガス分析装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1のA-A線における検出器の断面図である。
【
図5】検出器内にガスを封入する工程の説明図である。
【
図6】
図1のB-B線における検出器の断面図である。
【
図9】実施の形態2におけるガス分析計の概略を示す断面図である。
【
図12】実施の形態3におけるガス分析計の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1におけるガス分析計1の概略を示す断面図である。ガス分析計1は、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分、例えば、一酸化窒素(NO)の濃度の分析に用いられる。特定のガス成分は酸性のガス成分である。ガス分析計1では、光源2、チョッパ3、セル4及び2つの検出器5,6を備える。検出器5,6それぞれには、ガスが封入されている。光源2、セル4及び2つの検出器5,6は、この順に並んでいる。光源2は、セル4に向けて、強度が一定である連続した赤外光を発光する。赤外光は、波長が赤外線の範囲に属する光である。
図1において、実線は赤外光の伝播経路を示している。チョッパ3は羽根車を有する。チョッパ3では、羽根車を一定速度で回転させる。羽根車が回転した場合、羽根車は、光源2及びセル4間を通り、光源2が発光した赤外光を周期的に遮断する。光源2が発光した赤外光は断続的にセル4に入射される。
【0032】
セル4は両端面が開放された筒体40を有する。筒体40の一方の端面は光源2に対向している。筒体40の他方の端面は検出器5に対向している。筒体40において、光源2側の端面の開口部に、赤外光を透過する透過窓41が嵌め込まれ、検出器5側の端面の開口部にも赤外光を透過する透過窓42が嵌め込まれている。光源2が発光した赤外光は、透過窓41を介して筒体40内に入射し、透過窓42を介して筒体40から検出器5に向けて出射する。以上のように、光源2が発光した赤外光は、セル4の筒体40を透過する。筒体40を透過した赤外光は検出器5に入射される。
【0033】
筒体40の外面の光源2側には、分析対象のガスを注入する注入口40aが設けられている。筒体40の外側の検出器5側には、分析対象のガスが排出される排出口40bが設けられている。破線の矢印で示すように、分析対象のガスは注入口40aから注入される。注入された分析対象のガスはセル4の筒体40を流れる。筒体40を流れた分析対象のガスは、破線の矢印で示すように、排出口40bから排出される。筒体40内に分析対象のガスが注入されている状態で、赤外光が筒体40を透過した場合、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分は、赤外光の特定の波長成分を吸収する。特定のガス成分の濃度が高い程、赤外光の吸収量が多く、赤外光の減衰量は大きい。
【0034】
なお、分析対象のガスには、吸収する赤外光の波長領域が、特定のガス成分が吸収する赤外光の波長領域と重なる干渉ガス成分、例えば、水分(H2 O)が含まれている場合がある。この場合において、赤外光が筒体40を透過したとき、分析対象のガスに含まれている干渉ガス成分も赤外光を吸収する。干渉ガス成分が含まれている場合、セル4の筒体40を透過した赤外光の減衰量は、厳密には、特定のガス成分及び干渉ガス成分全体の濃度を示す。以下では、分析対象のガスに干渉ガス成分が含まれる例を説明する。
【0035】
検出器5,6それぞれはニューマチック型の検出器である。ニューマチック型の検出器は、赤外線の強度を検出する熱型の検出器である。ニューマチック検出器には、特定のガス成分を含むガスが封入されている。ガスが赤外線を吸収した場合、ガスは膨張し、ガスの圧力が変化する。ニューマチック型の検出器は、この圧力変化を検出し、検出結果を、赤外線の強度を示す信号として出力する。圧力変化は、ニューマチック型の検出器内に配置されたコンデンサマイクロホンの電気容量の変化、又は、ニューマチック型の検出器内を流れるガスの流量の変化で表される。検出器5,6それぞれは、ガスの流量に基づいて赤外線の強度を検出する検出器である。
【0036】
具体的に、検出器5は、両端面が開放された筒状のブロック50を有する。ブロック50の一方の端面は、セル4に対向している。ブロック50の他方の端面は検出器6に対向している。ブロック50において、セル4側の端面の開口部に、赤外光を透過する第1透過窓51が嵌め込まれている。ブロック50の中途に、赤外光を透過する第2透過窓52が嵌め込まれている。ブロック50において、検出器6側の端面の開口部に、赤外光を透過する第3透過窓53が嵌め込まれている。
筒状のブロック50の形状は、図面(例えば、
図6)で示すように、一例として、四角柱の内部に円柱状の空洞が設けられた形状である。しかしながら、ブロック50の形状は、この形状に限定されず、四角柱の内部に円柱状の空洞が設けられた形状とは異なる形状であってもよい。
【0037】
ブロック50、第1透過窓51及び第2透過窓52によって第1ガス室54が形成されている。ブロック50、第2透過窓52及び第3透過窓53によって第2ガス室55が形成されている。第1ガス室54及び第2ガス室55それぞれには、特定のガス成分を含むガスで満たされている。第1ガス室54及び第2ガス室55に含まれるガスについて、特定のガス成分の濃度は実質的に一致している。ガスはブロック50内に密封されている。前述したように、特定のガス成分は、酸性のガス成分、例えば、一酸化窒素である。
【0038】
ブロック50の側壁には、第1ガス室54及び第2ガス室55を連絡する連絡路50aが設けられている。連絡路50aの中途には、連絡路50aを流れるガスの流量を検出するフローセンサ56が配置されている。連絡路50aを流れるガスはフローセンサ56を通る。
【0039】
セル4の筒体40を透過した赤外光は、第1透過窓51を介して第1ガス室54内に入射され、第1ガス室54を透過した赤外光は、第2透過窓52を介して第2ガス室55内に入射される。第2ガス室55を透過した赤外光は、第3透過窓53を介して検出器6に入射される。以上のように、セル4の筒体40を透過した赤外光は、第1ガス室54を透過する。第1ガス室54を透過した赤外光は第2ガス室55を透過する。第2ガス室55を透過した赤外光は検出器6に入射される。
【0040】
赤外光が第1ガス室54を透過した場合、第1ガス室54に満たされているガスに含まれる特定のガス成分は、赤外光の特定の波長成分を吸収する。これにより、第1ガス室54に満たされているガスは膨張する。同様に、赤外光が第2ガス室55を透過した場合、第2ガス室55に満たされているガスに含まれている特定のガス成分は、赤外光の特定の波長成分を吸収する。これにより、第2ガス室55に満たされているガスは膨張する。赤外光の吸収量が多い程、第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスは大きく膨張する。セル4から検出器5に入射された赤外光の特定の波長成分について、大部分は第1ガス室54で吸収され、第2ガス室55に満たされているガスが吸収する赤外光の量は少ない。
【0041】
赤外光が検出器5を透過した場合、第1ガス室54に満たされているガスが、第2ガス室55に満たされているガスよりも大きく膨張するので、ガスは、第1ガス室54から、連絡路50aを通って、第2ガス室55に流れる。検出器5に入射される赤外光の特定の波長成分の強度が強い程、第1ガス室54に満たされているガスに含まれている特定のガス成分が特定の波長成分を吸収する量が大きく、第1ガス室54に満たされているガスはより大きく膨張する。従って、第1ガス室54及び第2ガス室55内のガスによって吸収される赤外光の量の差が大きい。結果、検出器5に入射される赤外光の特定の波長成分の強度が強い程、連絡路50aを流れるガスの流量は多い。
【0042】
前述したように、フローセンサ56は、連絡路50aを流れるガスの流量を検出する。また、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分及び干渉ガス成分全体の濃度が高い程、セル4において吸収される赤外光の特定の波長成分の量が多いので、検出器5に入射される赤外光の特定の波長成分の強度は弱い。検出器5に入射される赤外光の特定の波長成分の強度が弱い程、連絡路50aを流れるガスの流量は少ない。連絡路50aを流れるガスの流量を検出することは、検出器5に入射される赤外光の特定の波長成分の強度を検出することに相当する。
【0043】
フローセンサ56は、光源2が発光した赤外光がセル4に入射している期間にガスの流量を検出する。チョッパ3が赤外光を遮断した場合、第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスは放熱する。結果、これらのガスの状態は、収縮し、赤外光が検出器5に入射される前の状態に戻る。
【0044】
検出器6は、検出器5と同様に構成されている。検出器6は、筒状のブロック60、第1透過窓61、第2透過窓62、第3透過窓63及びフローセンサ66を有する。ブロック60、第1透過窓61、第2透過窓62、第3透過窓63及びフローセンサ66それぞれは、検出器5のブロック50、第1透過窓51、第2透過窓52、第3透過窓53及びフローセンサ56に対応する。検出器5と同様に、ブロック60、第1透過窓61及び第2透過窓62によって第1ガス室64が形成され、ブロック60、第2透過窓62及び第3透過窓63によって第2ガス室65が形成されている。
【0045】
第1ガス室64及び第2ガス室65は、特定のガス成分を含むガスで満たされている。ブロック60の側壁には、第1ガス室64及び第2ガス室65を連絡する連絡路60aが設けられている。連絡路60aの中途には、連絡路60aを流れるガスの流量を検出するフローセンサ66が配置されている。フローセンサ66の構成及び作用は、検出器5のフローセンサ56の構成及び作用と同様である。ガスはブロック60内に密封されている。
【0046】
検出器5の第2ガス室55を透過した赤外光は、検出器6の第1透過窓61を介して第1ガス室64内に入射され、第1ガス室64を透過する。第1ガス室64を透過した赤外光は、第2透過窓62を介して第2ガス室65内に入射される。第2ガス室65を透過した赤外光は、第3透過窓63を介して外部に出射される。以上のように、検出器5を透過した赤外光は、第1ガス室64を透過する。第1ガス室64を透過した赤外光は第2ガス室65を透過する。
【0047】
検出器5では、赤外光の特定の波長成分の大部分は特定のガス成分によって吸収される。このため、検出器5を透過した赤外光について、特定の波長成分の強度は低い。従って、検出器6の第1ガス室64及び第2ガス室65に満たされているガスによって吸収される赤外光の大部分の波長成分は、干渉ガス成分が吸収する波長成分である。結果、分析対象のガスに含まれている干渉ガス成分の濃度が高い程、検出器6に入射される赤外光の強度は弱く、フローセンサ66が検出するガスの流量は少ない。
【0048】
検出器6の第1ガス室64及び第2ガス室65に満たされているガスに含まれる特定のガス成分の濃度は、検出器5の第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスに含まれる特定のガス成分の濃度よりも高い。検出器6の第1ガス室64及び第2ガス室65に満たされているガスにおいて、特定のガス成分が占める割合は、例えば100%である。この場合、検出器5の第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスにおいて、特定のガス成分が占める割合は、例えば、10%~20%であり、100%未満の割合である。
【0049】
検出器5を透過した赤外光に関して特定の波長成分の強度は弱い。しかしながら、前述したように、検出器6の第1ガス室64及び第2ガス室65に満たされているガスに含まれる特定のガス成分の濃度は高いので、第1ガス室64及び第2ガス室65において、吸収される赤外光の量は多い。このため、フローセンサ66は、連絡路60aを流れるガスの流量を容易に検出することができる。
【0050】
図2は、ガス分析計1を用いたガス分析装置7の構成を示すブロック図である。前述したように、ガス分析計1は、光源2、チョッパ3、セル4及び検出器5,6を備える。ガス分析装置7は、ガス分析計1及び濃度算出部70を備える。濃度算出部70は、2つの増幅器70a,70b、A/D変換部70c,70d、表示部70e、メモリ70f及び制御部70gを有する。
【0051】
検出器5,6それぞれは増幅器70a,70bに接続されている。増幅器70a,70bそれぞれは、更に、A/D変換部70c,70dに接続されている。A/D変換部70c,70d、表示部70e、メモリ70f及び制御部70gは、内部バス70hに接続されている。
【0052】
検出器5のフローセンサ56及び検出器6のフローセンサ66それぞれは、ガスの流量を検出した場合、検出したガスの流量を示すアナログの流量信号を増幅器70a,70bに出力する。増幅器70a,70bそれぞれは、検出器5,6から入力されたアナログの流量信号の振幅を増幅する。増幅器70a,70bそれぞれは、振幅を増幅したアナログの流量信号をA/D変換部70c,70dに出力する。A/D変換部70c,70dそれぞれは、増幅器70a,70bから入力されたアナログの流量信号を、デジタルの流量信号に変換する。制御部70gは、A/D変換部70c,70dそれぞれからデジタルの流量信号を読み出す。表示部70eは、表示パネルを有し、制御部70gの指示に従って種々の値を表示する。
【0053】
メモリ70fには、図示しないコンピュータプログラムが記憶されている。制御部70gは、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。制御部70gは、メモリ70fに記憶されているコンピュータプログラムを実行することによって、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度を算出する濃度算出処理を実行する。
【0054】
濃度算出処理では、制御部70gは、検出器5のフローセンサ56から入力された流量信号が示すガスの流量に基づいて、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分及び干渉ガス成分全体の濃度を算出する。具体的には、制御部70gは、セル4の筒体40内をゼロガスが流れている場合にフローセンサ56から入力された流量信号が示すガスの流量と、分析対象のガスが筒体40内を流れている場合にフローセンサ56から入力された流量信号が示すガスの流量との差に基づいて、特定のガス成分及び干渉ガス成分全体の濃度を算出する。ゼロガスは、赤外光を吸収しないガス成分、例えば、窒素(N2 )によって構成されるガスである。従って、赤外光がゼロガスを透過した場合であっても、ゼロガスは赤外光を吸収することはない。
【0055】
制御部70gは、検出器6のフローセンサ66から入力された流量信号が示すガスの流量に基づいて、赤外光の特定の波長成分を吸収した干渉ガス成分の濃度を算出する。具体的には、濃度算出部70は、セル4の筒体40内をゼロガスが流れている場合においてフローセンサ66から入力された流量信号が示すガスの流量と、分析対象のガスが筒体40内を流れている場合においてフローセンサ66から入力された流量信号が示すガスの流量との差に基づいて干渉ガス成分の濃度を算出する。
【0056】
以上のように、制御部70gは、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分及び干渉ガス成分の濃度と、分析対象のガスに含まれる干渉ガス成分の濃度とを算出する。制御部70gは、算出した2つの濃度に基づいて、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度を正確に算出する。これにより、特定のガス成分の濃度が分析される。制御部70gは、算出した特定のガス成分の濃度を表示部70eに表示させる。これにより、使用者は、特定のガス成分の濃度を確認することができる。
【0057】
図3はフローセンサ56の回路図である。フローセンサ56は、固定抵抗R1,R2及び薄膜抵抗体Rs1,Rs2を有する。薄膜抵抗体Rs1の抵抗値は、薄膜抵抗体Rs1の温度に応じて変動する。同様に、薄膜抵抗体Rs2の抵抗値は、薄膜抵抗体Rs2の温度に応じて変動する。薄膜抵抗体Rs1,Rs2のタイプは同一であり、これらの製造には、白金又はニッケル等の材質が用いられる。なお、電流が薄膜抵抗体Rs1を流れた場合、薄膜抵抗体Rs1は発熱する。薄膜抵抗体Rs1の温度が低い程、薄膜抵抗体Rs1の抵抗値は小さく、薄膜抵抗体Rs1の温度が高い程、薄膜抵抗体Rs1の抵抗値は大きい。薄膜抵抗体Rs2は薄膜抵抗体Rs1と同様に作用する。
【0058】
直流電源Eの正極は、固定抵抗R1,R2それぞれの一端に接続されている。固定抵抗R1,R2それぞれの他端は、薄膜抵抗体Rs1,Rs2の一端に接続されている。直流電源Eの負極と薄膜抵抗体Rs1,Rs2の他端とは接地されている。固定抵抗R1及び薄膜抵抗体Rs1は直流電源Eの出力電圧を分圧し,出力電圧を分圧することによって得られる第1分圧電圧を流量信号として濃度算出部70の増幅器70aに出力する。同様に、固定抵抗R2及び薄膜抵抗体Rs2は直流電源Eの出力電圧を分圧し、出力電圧を分圧することによって得られる第2分圧電圧も流量信号として濃度算出部70の増幅器70aに出力する。第1分圧電圧は、薄膜抵抗体Rs1の抵抗値が大きい程、即ち薄膜抵抗体Rs1の温度が高い程、高い。同様に、第2分圧電圧は、薄膜抵抗体Rs2の抵抗値が小さい程、即ち薄膜抵抗体Rs2の温度が低い程、低い。
【0059】
薄膜抵抗体Rs1,Rs2は連絡路50aに露出している。薄膜抵抗体Rs1は、薄膜抵抗体Rs2の第1ガス室54側に配置されている。なお、2つの薄膜抵抗体Rs1,Rs2は近接している。直流電源Eから薄膜抵抗体Rs1,Rs2それぞれに電流が流れた場合、薄膜抵抗体Rs1,Rs2は発熱する。薄膜抵抗体Rs1,Rs2は放熱する。ガスが連絡路50aを流れていない場合、発熱量と放熱量とが一致しており、薄膜抵抗体Rs1,Rs2の温度は一定の温度に収束している。
【0060】
ガスが連絡路50aを流れた場合、ガスは薄膜抵抗体Rs1から熱を奪う。これにより、薄膜抵抗体Rs1の温度は低下する。連絡路50aを流れる流量が多い程、薄膜抵抗体Rs1の温度はより低い温度に低下する。前述したように、薄膜抵抗体Rs1の温度が低い程、第1分圧電圧は低い。従って、連絡路50aを流れるガスの流量が多い程、即ち、検出器5に入射した赤外光の特定の波長成分の強度が強い程、第1分圧電圧は低い。
【0061】
ガスが薄膜抵抗体Rs1から熱を奪った場合、薄膜抵抗体Rs1を通過したガスの温度は上昇する。薄膜抵抗体Rs1から熱を奪ったガスは、薄膜抵抗体Rs1に近接する薄膜抵抗体Rs2を通過する。このとき、薄膜抵抗体Rs2の温度は、薄膜抵抗体Rs1から熱を奪うことによって温度が上昇したガスにより、上昇する。連絡路50aを流れるガスの流量が多い程、薄膜抵抗体Rs2の温度は、より高い温度に上昇する。前述したように、薄膜抵抗体Rs2の温度が高い程、第2分圧電圧は高い。従って、連絡路50aを流れるガスの流量が多い程、即ち、検出器5に入射した赤外光の特定の波長成分の強度が強い程、第2分圧電圧は高い。
【0062】
以上のように、フローセンサ56は、連絡路50aを流れるガスの流量を検出し、検出したガスの流量を示す第1分圧電圧及び第2分圧電圧を、流量信号として濃度算出部70の増幅器70aに出力する。増幅器70aは、フローセンサ56から入力された2つの流量信号の振幅を各別に増幅し、振幅を増幅した2つの流量信号を各別にA/D変換部70cに出力する。A/D変換部70cは、2つのアナログの流量信号それぞれをデジタルの流量信号に変換する。
【0063】
前述したように、検出器6のフローセンサ66の構成及び作用は、検出器5のフローセンサ56の構成及び作用と同様である。フローセンサ66は、連絡路60aを流れるガスの流量を検出し、検出したガスの流量を示す第1分圧電圧及び第2分圧電圧を、流量信号として濃度算出部70の増幅器70bに出力する。増幅器70bは、フローセンサ66から入力された2つの流量信号の振幅を各別に増幅し、振幅を増幅した2つの流量信号を各別にA/D変換部70dに出力する。A/D変換部70dは、2つのアナログの流量信号それぞれをデジタルの流量信号に変換する。
【0064】
以下では、検出器5の構成を詳細に説明する。前述したように、検出器6の構成は、検出器5の構成と同様である。このため、検出器6の構成の詳細な説明を省略する。
【0065】
図4は、
図1のA-A線における検出器5の断面図である。
図4に示すように、筒状のブロック50の外面に、ガスの排出及び注入に用いられる開口50b,50cが設けられている。ブロック50の側壁には、開口50bを第1ガス室54に繋ぐ第1通路50dが設けられている。ブロック50の側壁において、開口50bの周縁部に密閉部材57が接着している。密閉部材57は、開口50bを覆うことによって、開口50bを密閉している。ブロック50の側壁には、更に、開口50cを第2ガス室55に繋ぐ第2通路50eが設けられている。ブロック50の側壁において、開口50cの周縁部に密閉部材58が接着している。密閉部材58は、開口50cを覆うことによって、開口50cを密閉している。
【0066】
図5は検出器5内にガスを封入する工程の説明図である。検出器5内にガスを封入する前の段階では、密閉部材57,58それぞれは、両端が開放された筒状をなし、ブロック50の側壁において開口50b,50cの周縁部に接着している。密閉部材57,58の貫通孔は開口50b,50cに連絡している。密閉部材57,58それぞれは、アルミニウム又は銅で製造されており、外部から加えられる力によって容易に変形する。密閉部材57の軸方向に交差する方向、例えば、
図5において矢印が示す方向に沿って切断する。これにより、
図4に示すように、密閉部材57の貫通孔が塞がり、密閉部材57は開口50bを密閉する。同様に、密閉部材58の軸方向に交差する方向に沿って切断する。これにより、
図4に示すように、密閉部材58の貫通孔が塞がり、密閉部材58は開口50cを密閉する。
【0067】
検出器5内にガスを封入する場合、第1ガス室54及び第2ガス室55に入っているガスを、第1通路50d及び第2通路50eを介して密閉部材57,58の貫通孔から外部に真空ポンプ等で吸引する。これにより、第1ガス室54及び第2ガス室55の状態は真空状態となる。第1ガス室54及び第2ガス室55が真空である状態で、密閉部材57の貫通孔から特定のガス成分を含むガスを第1ガス室54に注入し、密閉部材58の開口から特定のガス成分を含むガスを第2ガス室55に注入する。これにより、第1ガス室54及び第2ガス室55が特定のガス成分を含むガスで満たされる。ガスを注入した後、密閉部材57,58を前述したように切断する。これにより、密閉部材57,58それぞれは変形し、貫通孔が塞がれる。結果、開口50b,50cが密閉される。
【0068】
図6は、
図1のB-B線における検出器5の断面図である。
図6に示すように、フローセンサ56は、ブロック50の側壁内に埋め込まれており、フローセンサ56の一部は連絡路50aに露出している。
図6に示す密閉部材57の状態は切断後の状態であり、密閉部材57は開口50bを密閉している。
【0069】
検出器5は酸性の乾燥剤が入っている箱体状の乾燥容器8を更に有する。酸性の乾燥剤の一例として、五酸化二リン、塩化カルシウム又は硫酸マグネシウム等が挙げられる。ブロック50の側壁には、更に、乾燥容器8が挿入される挿入穴50fが設けられている。挿入穴50fに乾燥容器8が挿入されている状態で、ブロック50の外面に設けられた挿入穴50fの開口は、球状の密閉部材59によって密閉されている。密閉部材59は例えば金属製である。挿入穴50f及び密閉部材59によって、乾燥容器8が収容される収容室が形成されている。
【0070】
挿入穴50fの底面には、第1通路50dの第1通路口50gが設けられている。第1通路50dについて、開口50bに繋がっている通路は2つに分岐している。分岐した2つの通路中の一方の通路は、第1ガス室54に繋がっている。分岐した2つの通路中の他方の通路は、第1通路口50gに繋がっている。従って、第1通路50dによって、挿入穴50f及び密閉部材59によって形成される収容室は第1ガス室54と繋がっている。
【0071】
なお、挿入穴50f及び密閉部材59によって形成される収容室が繋がる部屋は、第1ガス室54に限定されない。第1例として、挿入穴50fの底面に、第2通路50eの第2通路口が設けられてもよい。この場合、第2通路50eについて、開口50cに繋がっている通路が2つに分岐し、分岐した2つの通路中の一方の通路が第1ガス室54に繋がり、分岐した2つの通路中の他方の通路が第2通路口に繋がっている。第2例として、挿入穴50fの底面に設けられた通路口と、連絡路50aとが通路によって繋がってもよい。この場合、収容室は、通路及び連絡路50aによって、第1ガス室54及び第2ガス室55に繋がる。以下では、収容室が第1ガス室54と繋がっている例を説明する。
【0072】
図7は、検出器5の部分断面図である。
図7では、
図6に示す断面の一部を示している。乾燥容器8では、一面が開放された筐体80の開口部に蓋体81が嵌め込まれている。筐体80の底面が挿入穴50fの底壁に設けられた第1通路口50gに最も近い面となるように、即ち、筐体80の底壁が
図6及び
図7の右側に配置されるように、乾燥容器8は、収容室内に配置されている。筐体80内に乾燥剤が収容されている。
【0073】
図8は乾燥容器8の蓋体81の説明図である。
図8の上側は蓋体81の平面が示されている。
図8の下側には、蓋体81の側面を示している。
図8に示すように、蓋体81には切れ欠き81aが設けられている。
図7に示すように、切れ欠き81aは、筐体80の軸方向に貫通しており、蓋体81の縁部から蓋体81の中央部まで延びている。乾燥容器8では、筐体80及び切れ欠き81aによってガスの出入口82が形成されている。
【0074】
図7に示すように、筐体80の側壁と挿入穴50fの側壁との間に第1の隙間が設けられており、切れ欠き81aは第1の隙間と繋がっている。筐体80の底壁と挿入穴50fの側壁との間に第2の隙間が設けられている。乾燥容器8のガスの出入口82は、切れ欠き81a、第1の隙間及び第2の隙間を介して第1通路50dと連絡している。第1ガス室54に満たされているガスは、第1通路50d、第2の隙間、第1の隙間及び切れ欠き81aの順に流れ、出入口82から乾燥容器8内に入る。第2ガス室55に満たされているガスは、連絡路50a、第1ガス室54、第1通路50d、第2の隙間、第1の隙間及び切れ欠き81aの順に流れ、出入口82から乾燥容器8内に入る。乾燥容器8の乾燥剤は、乾燥容器8内に入ったガスから水分を吸収する。水分を吸収されたガスは、出入口82から乾燥容器8の外に出る。出入口82から出たガスは、切れ欠き81a、第1の隙間、第2の隙間及び第1通路50dの順に流れ、第1ガス室54に戻る。出入口82から出たガスは、切れ欠き81a、第1の隙間、第2の隙間、第1通路50d、第1ガス室54及び連絡路50aの順に流れ、第2ガス室55に戻る。
【0075】
以上のように、検出器5では、第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスは乾燥容器8に入り、ガスに含まれている水分は乾燥剤によって吸収される。このため、第1ガス室54及び第2ガス室55は乾燥している。従って、検出器5内において、赤外光が水分によって吸収されることはない。
【0076】
前述したように、検出器5では、第1ガス室54及び第2ガス室55に特定のガス成分を含むガスを注入する場合、開口50b,50cを密閉する前に、第1ガス室54及び第2ガス室55それぞれに入っているガスを、第1通路50d及び第2通路50eを介して外部に真空ポンプ等で吸引する。これにより、ブロック50内の状態は真空状態となる。その後、特定のガス成分が含まれるガスをブロック50内に封入し、ブロック50内の気圧は大気圧まで戻る。ガスを封入した後、開口50b,50cが密閉される。なお、密閉後のブロック50内のガス中には、特定ガス成分のガス中に含まれる微量の水分、又は、封入設備及び接着剤等に含まれる微量の水分が存在する場合がある。
【0077】
挿入穴50f及び密閉部材59によって形成されている収容室に乾燥剤が収容されている場合において、乾燥剤が潮解性を有するとき、乾燥剤は水分を吸収し、乾燥剤の一部は液状に変化する。検出器5へのガスの封入は、挿入穴50f及び密閉部材59によって形成されている収容室に乾燥剤が収容されている状態で、検出器5内を真空にした後に行われる。検出器5内を真空にする工程において乾燥剤が潮解していた場合、潮解した液が飛散する可能性がある。液が飛散した場合、潮解した液が第1ガス室54及び第2ガス室55に設けられた第1透過窓51、第2透過窓52又は第3透過窓53等に付着し、結果、曇りが発生する可能性がある。赤外光が曇っている透過窓を透過した場合、赤外光の強度が減衰する。
【0078】
この場合、フローセンサ56が検出するガスの流量は、第1ガス室54に入射された赤外光の特定の波長成分の強度を正確に示さない。しかしながら、乾燥容器8において、ガスの出入口82は、第1通路50dの第1通路口50gに対向する場所とは異なる場所、具体的には、乾燥容器8において筐体80の底壁の反対側にある乾燥容器8の蓋体81に設けられている。このため、たとえ、液が飛散した場合であっても、飛散した液が第1ガス室54又は第2ガス室55に入りにくく、第1透過窓51、第2透過窓52又は第3透過窓53において曇りが発生する可能性は低い。結果、第1透過窓51、第2透過窓52又は第3透過窓53を赤外光が通過した場合に生じる赤外光の減衰は殆どない。乾燥容器8の筐体80の底面に対向する面は蓋体81の面である。
【0079】
なお、乾燥容器8において、ガスの出入口82が設けられる場所は、乾燥容器8の蓋体81に限定されず、例えば、筐体80の側壁であってもよい。
図7に示すように、乾燥容器8の筐体80の底壁は平板状をなす。しかしながら、筐体80の底壁は湾曲していてもよい。
【0080】
また、特定のガス成分は酸性のガス成分であり、かつ、乾燥剤として酸性の物質が用いられる。このため、ガス成分と乾燥剤との中和反応が起こらず、第1ガス室54及び第2ガス室55に含まれているガスが適切に乾燥される。
前述したように、検出器6は検出器5と同様に構成されている。このため、検出器6は検出器5が奏する効果と同様の効果を奏する。
【0081】
なお、検出器6に入射される赤外光の強度が十分に強い場合、検出器6の第1ガス室64及び第2ガス室65に満たされているガスに含まれる特定のガス成分の濃度は、検出器5の第1ガス室54及び第2ガス室55に満たされているガスに含まれる特定のガス成分の濃度以下であってもよい。
【0082】
また、分析対象のガスに含まれる干渉ガス成分が含まれていない場合、濃度算出部70の制御部70gは、検出器5のフローセンサ56から入力された流量信号が示すガスの流量に基づいて、特定のガス成分の濃度を算出することができる。この場合、ガス分析計1の構成は、検出器6が除かれた構成であってもよい。更に、特定のガス成分は、酸性のガス成分に限定されず、アルカリ性のガス成分であってもよい。この場合、乾燥剤として、アルカリ性の物質が用いられる。
【0083】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2におけるガス分析計1aの概略を示す断面図である。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施の形態1と共通している。このため、実施の形態1と共通する構成部には、実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
赤外光の強度を検出する検出器を備える従来のガス分析計で用いられる光源の1つとして、一面が開放された箱体状をなす反射体内に、赤外光を発光する発光素子が収容されている光源がある。例えば、反射体の底面に発光素子が配置され、発光素子が発光した赤外光の一部は、反射体の内面で反射し、セルに向かって伝播する。発光素子が発光した場合、発光素子では熱が発生する。発生した熱は反射体に伝導し、反射体は放熱する。送風機は反射体に向けて風を送る。これにより、反射体は効率的に放熱する。
【0085】
しかしながら、送風機が送った風が反射体内に入った場合、発光素子の温度が風により変動する。発光素子が発光する赤外光の強度は発光素子の温度に応じて変動する。このため、発光素子の温度が風により変動した場合、光源が発光する赤外光の強度が安定しない。この場合、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度を適切に算出することができない。
実施の形態2の目的は、風が反射体内に入り込まないガス分析計を提供することにある。
【0086】
実施の形態2におけるガス分析計1aは、実施の形態1におけるガス分析計1と同様に、セル4及び検出器5,6を備える。実施の形態2におけるガス分析計1aは、光源2の代わりに、光源9を備える。ガス分析計1aでは、光源9の近傍に、光源9に風を送る送風機Fが配置されている。
【0087】
図示しない電源は、図示しないスイッチを介して光源9に電力を供給する。スイッチがオンである場合、光源9は、セル4に向けて、強度が一定である赤外光を発光する。スイッチがオフである場合、光源9は赤外光の発光を停止している。スイッチのオン及びオフへの切替えは交互に繰り返される。これにより、光源9が発光した赤外光は、実施の形態1における光源2が発光した赤外光と同様に、断続的にセル4に入射される。
なお、実施の形態1と同様に、ガス分析計1aの構成は、検出器6が除かれた構成であってもよい。
【0088】
図10は光源9の説明図である。
図10には、光源9の断面、側面及び平面が示されている。光源9では、矩形板状の基板90の板面に、一面が開放された箱体状をなす反射体91の底壁91aが設置されている。底壁91aは円状をなす。反射体91において、側壁91bは、底壁91aの周縁部から斜め方向に延びており、底壁91aの外側に広がっている。従って、反射体91の開口の面積は底壁91aの面積よりも広い。
【0089】
図10に示すように、光源9では、底壁91aの中央に、赤外光を発光する発光素子92が配置され、反射体91内に収容されている。発光素子92は、例えば、フィラメントである。発光素子92が発光した赤外光の一部は、反射体91の開放面、即ち、セル4に向かって伝播する。発光素子92が発光した赤外光の他部は、底壁91a又は側壁91bの内面で反射し、反射体91の開放面に向かって伝播する。
【0090】
反射体91の側壁91bの端面に、弾性を有する環状の密着部材93が配置されている。密着部材93は、所謂、Oリングである。
図9及び
図10に示すように、光源9では、円筒状の覆い体94が側壁91bの外面を覆っている。覆い体94は基板90の板面に設置されている。
図9に示すように、覆い体94は、密着部材93よりもセル4側に突出している。
【0091】
図9に示すように、セル4では、透過窓41の一部は、筒体40の光源9側の端面から外側に露出されている。透過窓41の露出部分は、光源9の覆い体94内に嵌め込まれている。筒体40の光源9側の端面が、覆い体94の端面に接触するまで、透過窓41は反射体91の底壁91aに向かって押し込まれている。これにより、密着部材93は、反射体91の開口の周縁部と、透過窓41の周縁部とに密着している。
【0092】
図10に示すように、覆い体94には、内外方向に貫通する複数の開口94aが設けられている。反射体91は、熱伝導率が高い部材、例えば、金属によって構成されている。電源はスイッチを介して発光素子92に電力を供給する。スイッチがオンである場合、電源が発光素子92に電力を供給し、発光素子92は赤外光を発光する。スイッチがオフである場合、発光素子92は発光を停止している。
【0093】
発光素子92が赤外光を発光した場合、発光素子92は発熱する。発光素子92が発生させた熱は反射体91に伝導し、反射体91は放熱する。送風機Fは、反射体91に向けて風を送る。送風機Fが送った風は、覆い体94の複数の開口94aを通って反射体91の側壁91bに当たり、側壁91bに当たった風は複数の開口94aを通って光源9の外部に出る。このため、反射体91は効率的に放熱を行い、発光素子92の温度上昇が抑制される。
【0094】
前述したように、密着部材93は、反射体91及びセル4の透過窓41に密着している。このため、送風機Fが送った風が反射体91内に入り込むことはない。送風機Fが送った風が反射体91内に入り込んだ場合、反射体91内の発光素子92の温度が変動し、光源9からセル4に発光される赤外光の強度が不安定となり、分析対象のガスに含まれている特定のガス成分の濃度を適切に算出することができない。
【0095】
図11は密着部材93の効果を示すグラフである。実施の形態1の説明で述べたように、濃度算出部70は、検出器5,6のフローセンサ56,66から入力された流量信号が示すガスの流量に基づいて、特定のガス成分の濃度を算出する。
図10には、セル4の筒体40内にゼロガスが流れている場合において算出された特定のガス成分の2つの濃度の推移が示されている。一方の濃度は、密着部材93が用いられていないガス分析計において、算出された濃度であり、細い実線によって示されている。他方の濃度は、ガス分析計1aの濃度算出部70が算出した濃度であり、太い実線によって示されている。これらの濃度の推移について、横軸には時間が示されている。筒体40内には、特定のガス成分は存在しないため、特定のガス成分の濃度は実際にはゼロである。
【0096】
図11に示すように、密着部材93が用いられていない場合、実際の濃度はゼロであるにも関わらず、算出された濃度は大きく変動している。算出された濃度の誤差が大きいことがわかる。一方で、密着部材93が用いられているガス分析計1aの濃度算出部70が算出した濃度は殆ど変動せず、濃度の変動幅も小さい。算出された濃度の誤差が小さいことがわかる。
【0097】
以上のように、実施の形態2におけるガス分析計1aにおいては、光源9の反射体91と、セル4の透過窓41との間に隙間が存在しないので、送風機Fが送った風が反射体91内に入り込まず、発光素子92の温度が風により変動することがない。このため、光源9が発光する赤外光の強度が安定し、濃度算出部70によって正確な濃度が算出される。
実施の形態2における検出器5,6それぞれの構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態2における検出器5,6それぞれは、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0098】
なお、実施の形態2において、断続的な赤外光を生成する方法は、スイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返す方法に限定されない。例えば、実施の形態1と同様に、チョッパ3を用いて断続的な赤外光を生成してもよい。この方法では、チョッパ3が回転した場合、チョッパ3の羽根車は、例えば、セル4及び検出器5の間を通過する。また、実施の形態1において、断続的な赤外光を生成する方法は、チョッパ3を回転させる方法に限定されない。例えば、実施の形態2と同様に、電源が光源2に電力を供給する経路に配置されたスイッチのオン及びオフへの切替えを交互に繰り返す方法であってもよい。
また、実施の形態1において、光源2は赤外光を発光する装置であればよい。このため、実施の形態1における光源2の構成は、光源9の構成と同様であってもよいし、光源9の構成と異なっていてもよい。
【0099】
(実施の形態3)
実施の形態2においては、入射された赤外光の強度を検出する検出器として、特定のガス成分を含むガスが封入されている検出器5,6が用いられている。しかしながら、赤外光の強度を検出する検出器は、ガスが封入されている検出器に限定されない。
以下では、実施の形態3について、実施の形態2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成は実施の形態2と共通している。このため、実施の形態2と共通する構成部には、実施の形態2と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0100】
図12は、実施の形態3におけるガス分析計1bの概略を示す断面図である。ガス分析計1bでは、セル4の筒体40を透過した赤外光の特定の波長成分の強度は、検出器Dによって検出される。検出器Dでは、セル4の筒体40を透過した赤外光は、複数のフィルタを通過する。赤外光の中で予め決められた波長成分のみがフィルタを透過する。複数のフィルタが透過する波長成分は相互に異なる。複数のフィルタそれぞれを透過した複数の赤外光の強度、即ち、セル4の筒体40を透過した赤外光に係る複数の波長成分の強度は、複数の受光素子によって検出される。
【0101】
検出器Dは、セル4の筒体40を透過した赤外光について、特定の波長成分の強度と、セル4の筒体40内で吸収されない参照用の波長成分の強度とを検出する。ガス分析計1bを用いたガス分析装置7では、検出器Dに濃度算出部70の増幅器70aに接続されている。検出器Dは、検出した特定の波長成分の強度を示すアナログの第1強度信号と、検出した参照用の波長成分の強度を示すアナログの第2強度信号とを濃度算出部70の増幅器70aに出力する。
【0102】
増幅器70aは、第1強度信号及び第2強度信号の振幅を増幅し、振幅を増幅したアナログの第1強度信号及び第2強度信号をA/D変換部70cに出力する。A/D変換部70cは、アナログの第1強度信号をデジタルの第1強度信号に変換するとともに、アナログの第2強度信号をデジタルの第2強度信号に変換する。制御部70gは、A/D変換部70cから第1強度信号及び第2強度信号を読み出す。実施の形態3においては、濃度算出部70は、増幅器70b及びA/D変換部70dを有していなくてもよい。
【0103】
濃度算出部70の制御部70gは、濃度算出処理において、検出器Dから入力された第1強度信号及び第2強度信号が示す2つの強度に基づいて、分析対象のガスに含まれる特定のガス成分の濃度を算出する。具体的には、濃度算出部70は、第1強度信号が示す特定の波長成分の強度と、第2強度信号が示す参照用の波長成分の強度との差に基づいて、特定のガス成分の濃度を算出する。これにより、特定のガス成分の濃度が分析される。
【0104】
以上のように構成されたガス分析計1bにおいても、送風機Fが送った風が反射体91内に入った場合、発光素子92の温度が変動し、光源9が発光する赤外光の強度が安定しない。しかしながら、実施の形態3における光源9は、実施の形態2と同様に構成されているので、光源9の反射体91と、セル4の透過窓41との間に隙間が存在しない。このため、送風機Fが送った風が反射体91内に入り込まず、発光素子92の温度が風により変動することなく、光源9が発光する赤外光の強度が安定し、濃度算出部70の制御部70gによって正確な濃度が算出される。また、実施の形態2と同様に、光源9では、反射体91は効率的に放熱を行い、発光素子92の温度上昇が抑制される。
【0105】
なお、実施の形態3において、濃度が検出される特定のガス成分の数は、1つに限定されず、例えば、2以上であってもよい。この場合、検出器Dは、複数のガス成分それぞれが吸収する複数の特定の波長成分の強度を検出するとともに、参照用の波長成分の強度を検出する。濃度算出部70の制御部70gは、1つの特定の波長成分の強度と、参照用の波長成分の強度とを用いて、1つの特定のガス成分の濃度を算出する。同様にして、制御部70gは、他の特定のガス成分の濃度を算出する。特定のガス成分の数が3である場合、3つの特定のガス成分の一例として、二酸化炭素、一酸化炭素及び炭化水素が挙げられる。
【0106】
実施の形態2又は実施の形態3の一態様に係るガス分析計は、分析対象のガスに含まれ、赤外光の特定の波長成分を吸収する特定のガス成分の濃度を分析するためのガス分析計において、赤外光を発光する光源と、前記分析対象のガスが流れ、前記光源が発光した赤外光が透過するセルと、前記セルを透過した赤外光の前記特定の波長成分の強度を検出する強度検出部とを備え、前記セルは、前記光源が発光した赤外光が透過する透過窓を有し、前記光源は、赤外光を発光する発光素子と、一面が開放された箱体状をなし、前記発光素子を収容しており、前記発光素子が発光した赤外光を反射する反射体と、前記反射体の開口の周縁部と、透過窓の周縁部とに密着する環状の密着部材とを有する。実施の形態2,3において、検出器5,Dそれぞれが強度検出部として機能する。
【0107】
実施の形態2又は実施の形態3の一態様に係るガス分析計は、好ましくは、送風機を備え、前記光源は、前記反射体の側面を覆う筒状の覆い体を有し、前記覆い体には複数の開口が設けられ、前記送風機は前記覆い体に向けて風を送る。
【0108】
実施の形態1~3で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施の形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1,1a ガス分析計
2,9 光源
4 セル
5,6 検出器
8 乾燥容器
41 透過窓
50a,60a 連絡路
50d 第1通路
50f 挿入穴(収容室の一部)
50g 第1通路口
54,64 第1ガス室
55,65 第2ガス室
56,66 フローセンサ
59 密閉部材(収容室の一部)
82 出入口
91 反射体
92 発光素子
93 密着部材
94 覆い体
94a 開口
F 送風機