(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】アンダーフィル材、半導体パッケージ、及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20250430BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20250430BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20250430BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250430BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250430BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08G59/18
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K5/5415
(21)【出願番号】P 2021572717
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001475
(87)【国際公開番号】W WO2021149635
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020009238
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩士
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002289(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043035(WO,A1)
【文献】特開2004-210901(JP,A)
【文献】特開2017-048159(JP,A)
【文献】特開2011-001412(JP,A)
【文献】特開2018-172546(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08G 59/18
C08L 63/00
C08K 3/013
C08K 5/5415
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
芳香族アミン硬化剤
を含む硬化剤と、
無機充填材と、
トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物と、
を含有
し、
前記芳香族アミン硬化剤が、置換又は非置換のジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、アンダーフィル材。
【請求項2】
前記トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物の融点が200℃以下である、請求項1に記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
前記トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物がさらに一級アミノ基を有する、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
前記トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物の含有率が、前記アンダーフィル材の全質量に対して0.05質量%~1.5質量%である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する前記硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)が0.5~2.0である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
さらに、無機充填材を、前記アンダーフィル材の全質量に対して30質量%以上含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項7】
エポキシ樹脂と、
芳香族アミン硬化剤
を含む硬化剤と、
無機充填材と、
トリアジン環及び一級アミノ基を有し、融点が200℃以下である化合物と、
を含有
し、
前記芳香族アミン硬化剤が、置換又は非置換のジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、アンダーフィル材。
【請求項8】
前記トリアジン環及び一級アミノ基を有し融点が200℃以下である化合物の含有率が、前記アンダーフィル材の全質量に対して0.05質量%~1.5質量%である、請求項7に記載のアンダーフィル材。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する前記硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)が0.5~2.0である、請求項7又は請求項8に記載のアンダーフィル材。
【請求項10】
さらに、無機充填材を、前記アンダーフィル材の全質量に対して30質量%以上含有する、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。
【請求項11】
基板と、前記基板上に配置されている半導体素子と、前記半導体素子を封止している請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、を有する半導体パッケージ。
【請求項12】
基板と前記基板上に配置されている半導体素子との間の空隙を請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンダーフィル材、半導体パッケージ、及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、IC(Integrated Circuit)等の半導体装置に用いられる各種半導体素子の封止の分野では、生産性、製造コスト等の面から樹脂による封止が主流となっている。封止用の樹脂としては、エポキシ樹脂が広く用いられている。これは、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスに優れているためである。
【0003】
近年、半導体装置の分野では、パッケージの小型化及び薄型化に対応するため、ベアチップを直接配線基板上に実装する、いわゆるベアチップ実装による半導体装置が主流となっている。ベアチップ実装による半導体装置としては、例えば、COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等が挙げられる。
【0004】
半導体素子を配線基板上にバンプ接続してなるフリップチップ型の半導体装置では、バンプ接続した半導体素子と基板との間隙(ギャップ)に充填するアンダーフィル材として、液状樹脂組成物が使用されている。例えば、特許文献1には、多官能エポキシ樹脂、並びにフェノール系化合物及び酸無水物を含む硬化剤を用いたアンダーフィル材が記載されている。アンダーフィル材は、電子部品を温湿度及び機械的な外力から保護する役割を果たしている。
【0005】
フリップチップ型の半導体装置では、従来、半導体素子と基板との接続には半田ボールが主に用いられてきた。一方、半導体装置の小型化及び高集積化による端子数の増加に伴い、従来の半田ボールに代えて、先端に半田がキャップされた銅ピラーが採用される場合が増えている。そのため、半導体装置をマザーボード等に取り付けるために、リフロー炉を用いて高温下(例えば260℃)で接続させる工程の際に、アンダーフィル材が銅ピラーから剥離する不良が発生している。
【0006】
エポキシ樹脂組成物の銅との接着を向上させる方法として、例えば、特許文献2~6には、銅との密着性に優れる化合物を含有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-256646号公報
【文献】特開2007-2170号公報
【文献】特開2012-188629
【文献】特開2016-169300号公報
【文献】特開2016-34906号公報
【文献】特開2017-2289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般的に銅との密着性に優れる化合物をアンダーフィル材に適用する場合、エポキシ樹脂、硬化剤等の樹脂成分と反応し、ポットライフ、すなわち室温下での保管安定性を悪化させる場合が多い。さらに、アンダーフィル材の高温下(例えば260℃)における銅との接着力についてはこれまで検証されていなかった。
【0009】
上記事情に鑑み、本開示は、ポットライフに優れ、硬化物としたときの銅に対する高温接着性に優れるアンダーフィル材、並びに当該アンダーフィル材の硬化物を備える半導体パッケージ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> エポキシ樹脂と、芳香族アミン硬化剤と、無機充填材と、トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物と、を含有する、アンダーフィル材。
<2> 前記トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物の融点が200℃以下である、<1>に記載のアンダーフィル材。
<3> 前記トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物がさらに一級アミノ基を有する、<1>又は<2>に記載のアンダーフィル材。
<4> エポキシ樹脂と、芳香族アミン硬化剤と、無機充填材と、トリアジン環及び一級アミノ基を有し、融点が200℃以下である化合物と、を含有する、アンダーフィル材。
<5> 基板と、前記基板上に配置されている半導体素子と、前記半導体素子を封止している<1>~<4>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、を有する半導体パッケージ。
<6> 基板と前記基板上に配置されている半導体素子との間の空隙を<1>~<5>のいずれか1項に記載のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ポットライフに優れ、硬化物としたときの銅に対する高温接着性に優れるアンダーフィル材、並びに当該アンダーフィル材の硬化物を備える半導体パッケージ及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0013】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0014】
≪アンダーフィル材≫
本開示の第1の実施形態に係るアンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、芳香族アミン硬化剤と、無機充填材と、トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物(以下、「第1のトリアジン環含有化合物」ともいう)と、を含有する。
本開示の第2の実施形態に係るアンダーフィル材は、エポキシ樹脂と、芳香族アミン硬化剤と、無機充填材と、トリアジン環及び一級アミノ基を有し、融点が200℃以下である化合物(以下、「第2のトリアジン環含有化合物」ともいう)と、を含有する。
以下、第1の実施形態に係るアンダーフィル材及び第2の実施形態に係るアンダーフィル材を、包括的に「本開示のアンダーフィル材」又は単に「アンダーフィル材」という場合がある。
【0015】
本開示のアンダーフィル材はポットライフに優れ、硬化物としたときの銅に対する高温接着性に優れる。本開示において、高温接着性とは260℃における接着性をいうものとする。本開示のアンダーフィル材がポットライフ及び硬化物としたときの銅に対する高温接着性に優れる詳細な理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
第1の実施形態に係るアンダーフィル材は、トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する化合物(第1のトリアジン環含有化合物)を含有している。トリアジン環における窒素原子は銅に対する高温接着性に寄与しているものと考えられる。また、アルコキシシリル基の存在により、第1のトリアジン環含有化合物はエポキシ樹脂との相溶性に優れ、アンダーフィル材中に良好に分散するため、アンダーフィル材全体にわたって高温接着性が良好なものとなると考えられる。さらに、第1のトリアジン環含有化合物を用い、硬化剤として芳香族アミン化合物を用いた場合、第1のトリアジン環含有化合物及び芳香族アミン化合物のエポキシ基に対する反応性が高すぎないため、ゲル化の進行が比較的緩徐であり、優れたポットライフが得られるものと考えられる。
第2の実施形態に係るアンダーフィル材は、トリアジン環及び一級アミノ基を有し、融点が200℃以下である化合物(第2のトリアジン環含有化合物)を含有する。トリアジン環における窒素原子及び一級アミノ基は銅との高温接着性に寄与しているものと考えられる。また、当該化合物は融点が200℃以下であるため、混練時(例えば約25℃~80℃)、素子と基板とのギャップへの充填時(例えば約100℃~120℃)、及びアンダーフィル材の硬化時(例えば約80℃~200℃)のエポキシ樹脂中の分散性に優れ、アンダーフィル材全体にわたって高温接着性が良好なものとなると考えられる。さらに、第2のトリアジン環含有化合物を用い、硬化剤として芳香族アミン化合物を用いた場合、第2のトリアジン環含有化合物及び芳香族アミン化合物のエポキシ樹脂に対する反応性が高すぎないため、ゲル化の進行が比較的緩徐であり、優れたポットライフが得られるものと考えられる。
【0016】
アンダーフィル材は、25℃で液体であることが好ましい。本開示において「液体」とは、流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が0.0001Pa・s~100Pa・sである物質を意味する。また、「液状」とは液体の状態であることを意味する。
【0017】
本開示において、粘度は、EHD型回転粘度計(例えば、東京計器株式会社製、VISCONIC EHD型(商品名))を25℃で1分間、10回毎分(10rpm)で回転させたときの測定値とする。上記測定値は、25±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEHD型回転粘度計を用いて得られる。
【0018】
アンダーフィル材の粘度は特に制限されない。なかでも高流動性の観点から、25℃におけるアンダーフィル材の粘度は0.1Pa・s~100.0Pa・sであることが好ましく、0.1Pa・s~50.0Pa・sであることがより好ましく、0.1Pa・s~30.0Pa・sであることがさらに好ましい。
【0019】
また、100℃~120℃付近で数十μm~数百μmの狭ギャップ間にアンダーフィル材を充填する際の充填のしやすさの指標として、アンダーフィル材の110℃の粘度が0.20Pa・s以下であることが好ましく、0.15Pa・s以下であることがより好ましい。なお、110℃でのアンダーフィル材の粘度は、レオメーター(例えば、TAインスツルメント製、AR2000、コーン半径20mm、せん断速度32.5/sec)により測定される。
【0020】
アンダーフィル材の、以下の方法で測定される25℃、24時間放置後のポットライフは、100%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることが特に好ましい。ポットライフの下限は特に制限されず、数値が低いほど好ましい。
アンダーフィル材を25℃で24時間放置後、25℃における粘度をE型粘度計(例えば、東京計器株式会社製、VISCONIC EHD型(商品名))(コーン角度3°、回転数10回毎分(rpm))を用いて測定する(放置後粘度)。ただし、高粘度のため回転数10回毎分(rpm)で測定できない試料については、2.5回毎分(rpm)で測定する。ポットライフ(%)は、下記式により、24時間放置後の粘度増加率として算出する。
ポットライフ(%)={(放置後粘度-初期粘度)/初期粘度}×100
【0021】
アンダーフィル材の、以下の方法で測定される銅(Cu)に対する高温接着力は、0.70kgf以上であることが好ましく、0.80kgf以上であることがより好ましく、0.90kgf以上であることがさらに好ましい。高温接着力は高いほど好ましい。
【0022】
銅に対する接着力は、例えば以下のように測定することができる。銅板の表面にアンダーフィル材を直径3mm、高さ3mmに成形した試験片を作製し、ボンドテスター(例えば、DAGE製 DS100型)を用いて、ヘッドスピード50μm/secの条件でせん断応力をかけ、成形品が銅板から剥離する強度を測定する。具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0024】
エポキシ樹脂は常温で固形であっても液状であってもよく、固形のエポキシ樹脂と液状のエポキシ樹脂を併用してもよい。アンダーフィル材の低粘度化の観点からは、常温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。成形時の流動性の観点からは、固形エポキシ樹脂の含有率はエポキシ樹脂全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。エポキシ樹脂としては、具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;フェニレン骨格及びビフェニレン骨格からなる群より選択される少なくとも一方を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;フェニレン骨格及びビフェニレン骨格からなる群より選択される少なくとも一方を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂;アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(アルキレングリコール)ジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ化合物などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、当該2種以上のエポキシ樹脂を予め混合してから他の成分と混合してもよく、予め混合せずに他の成分と混合してもよい。
【0027】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。エポキシ樹脂のエポキシ当量は60g/eq以上であってもよく、70g/eq以上であってもよく、90g/eq以上であってもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、500g/eq以下であってもよく、300g/eq以下であってもよく、200g/eq以下であってもよい。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、60g/eq~500g/eqであることが好ましく、70g/eq~300g/eqであることがより好ましく、90g/eq~200g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0028】
アンダーフィル材の全質量に対するエポキシ樹脂の含有率は特に限定されない。アンダーフィル材の全質量に対するエポキシ樹脂の含有率は、0.5質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。アンダーフィル材の全質量に対するエポキシ樹脂の含有率は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。粘度、ガラス転移温度、耐熱性等の観点からは、エポキシ樹脂の含有率は、アンダーフィル材の全質量に対して0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~40質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
一態様において、注入性及び硬化物としたときの熱膨張率の低減の観点からは、アンダーフィル材は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。また、アンダーフィル材は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂をいずれも含有することがより好ましい。
【0030】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の種類は特に制限されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。アンダーフィル材を液状で使用する観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂は常温(25℃)で液状のものであることが好ましい。粘度低減の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂はビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0031】
アンダーフィル材がビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する場合、ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量は特に制限されず、アンダーフィル材の所望の特性に応じて選択できる。例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率はエポキシ樹脂の全質量に対して20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率はエポキシ樹脂の全質量に対して90質量%未満であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率はエポキシ樹脂の全質量に対して20質量%以上90質量%未満であってもよく、30質量%~80質量%であってもよく、40質量%~70質量%であってもよい。
【0032】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。グリシジルアミン型エポキシ樹脂は2官能以上であることが好ましく、硬化後の耐熱性向上の観点からは3官能以上(すなわち1分子中にエポキシ基を3つ以上有する)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン等が挙げられる。3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、トリグリシジル-p-アミノフェノール、4,4’-メチレンビス[N,N-ビス(オキシラニルメチル)アニリン]等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、常温(25℃)における粘度の観点からはトリグリシジル-p-アミノフェノールが好ましい。
【0033】
アンダーフィル材の粘度低減の観点からは、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の分子量は300以下であることが好ましい。
【0034】
アンダーフィル材がグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含有する場合、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有量は特に制限されない。例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、25質量%以上であってもよい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して10質量%~60質量%であってもよく、20質量%~50質量%であってもよく、25質量%~40質量%であってもよい。
【0035】
ナフタレン型エポキシ樹脂の種類は特に制限されない。熱膨張率の低減の観点からは、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンが好ましい。
【0036】
アンダーフィル材がナフタレン型エポキシ樹脂を含有する場合、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有量は特に制限されない。例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。ナフタレン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよい。ナフタレン型エポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂の全質量に対して10質量%~30質量%であってもよく、15質量%~25質量%であってもよい。
【0037】
<芳香族アミン硬化剤>
芳香族アミン硬化剤の種類は特に制限されず、1分子中に1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つを2個以上有する芳香族アミン化合物であることが好ましく、1分子中に1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つを2個~4個有する芳香族アミン化合物であることがより好ましく、1分子中に1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つを2個有する芳香族アミン化合物であることがさらに好ましい。芳香族アミン硬化剤は、25℃で液体であることが好ましい。
【0038】
芳香族アミン硬化剤としては、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン等のジエチルトルエンジアミン;1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン等のトリエチルジアミノベンゼン;3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。芳香族アミン硬化剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
なかでも、保存安定性の観点からは、ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
【0040】
芳香族アミン硬化剤の活性水素当量は特に制限されない。芳香族アミン硬化剤の活性水素当量は、20g/eq以上であってもよく、30g/eq以上であってもよく、40g/eq以上であってもよい。芳香族アミン硬化剤の活性水素当量は、200g/eq以下であってもよく、100g/eq以下であってもよく、80g/eq以下であってもよい。硬化物の熱応力低減と高いガラス転移温度(Tg)の両立の観点からは、20g/eq~200g/eqであることが好ましく、30g/eq~100g/eqであることがより好ましく、40g/eq~80g/eqであることがさらに好ましい。
【0041】
アンダーフィル材は、芳香族アミン硬化剤に加えて、他の硬化剤を含有していてもよい。芳香族アミン硬化剤以外の硬化剤としては、脂肪族アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
【0042】
硬化剤の全質量に対する芳香族アミン硬化剤の含有率は特に制限されず、ポットライフ及び硬化物としたときの銅に対する高温接着性を特に良好なものとする観点からは、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。なかでも、ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンからなる群より選択される少なくとも1つの合計含有率は、硬化剤の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂と硬化剤(芳香族アミン硬化剤を含む)との当量比、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の官能基(アミン硬化剤の場合は活性水素)数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0044】
アンダーフィル材を常温(25℃)で液体にする観点からは、硬化剤全体として常温で液体となるように硬化剤を選択することが好ましい。すなわち、1種の硬化剤のみを用いる場合は、その硬化剤が常温で液体であることが好ましい。2種以上の硬化剤の組み合わせを用いる場合は、2種以上の硬化剤がすべて常温で液状であってもよく、一部が常温で固形の硬化剤であり、2種以上の硬化剤を混合したときに常温で液体となるような組み合わせを用いてもよい。硬化剤として常温で固形の硬化剤を使用する場合、その含有率は、流動性の観点から、硬化剤の全質量に対しての20質量%以下であることが好ましい。
【0045】
<無機充填材>
無機充填材の種類は特に制限されず、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、熱膨張率低減の観点からはシリカが好ましく、熱伝導性向上の観点からはアルミナが好ましい。
【0046】
無機充填材の含有量は特に制限されない。無機充填材の含有率は、アンダーフィル材の全質量に対して30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。無機充填材の含有率は、アンダーフィル材の全質量に対して90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、75質量%以下であってもよい。良好な流動性、及び無機充填材による所望の効果を両立する観点からは、無機充填材の含有率は、アンダーフィル材の全質量に対して30質量%~90質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましく、50質量%~75質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒子径は、特に制限されない。例えば、無機充填材の体積平均粒子径は0.2μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。無機充填材の体積平均粒子径は20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。無機充填材の体積平均粒子径は0.2μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が0.2μm以上であると、アンダーフィル材の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が20μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布において小径側からの体積の累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0048】
<トリアジン環含有化合物>
-第1のトリアジン環含有化合物-
第1のトリアジン環含有化合物は、トリアジン環とアルコキシシリル基とを有する。
トリアジン環における窒素の位置は特に制限されない。すなわち、骨格となるトリアジンは、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、及び1,3,5-トリアジンのいずれであってもよい。
【0049】
第1のトリアジン環含有化合物は、トリアジン(C3H3N3)上の3つの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、アルコキシシリル基を有する1価の基で置換されている構造を有する。当該1価の基の置換位置は、3つの炭素原子のうちいずれであってもよい。当該1価の基の置換個数は、1個~3個のいずれであってもよく、1個又は2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0050】
第1のトリアジン環含有化合物における、アルコキシシリル基を有する1価の基の置換個数が1又は2である場合、トリアジン環上の、当該アルコキシシリル基を有する1価の基が結合していない炭素原子には、当該アルコキシシリル基を有する1価の基以外の置換基が結合していてもよく、置換基が結合していなくてもよい。
【0051】
アルコキシシリル基を有する1価の基は、アルコキシシリル基自体であってもよく、アルコキシシリル基のケイ素原子に連結基が結合してなる1価の基であってもよい。アルコキシシリル基を有する1価の基が、アルコキシシリル基のケイ素原子に連結基が結合してなる1価の基である場合、連結基は、例えば、炭化水素基であってもよく、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を有する炭化水素基であってもよい。連結基の長さ、すなわち、アルコキシシリル基のケイ素原子と、トリアジン環上の炭素原子と、の間に存在する原子鎖上の原子(水素原子、分岐鎖又は置換基を含まない)の数は、例えば、2~13であってもよく、3~11であってもよい。
【0052】
アルコキシシリル基は、-Si(OR)3で表される構造を有する。ここで、Rは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、3つのRのうち少なくとも1つはアルキル基である。3つのRのうち、2つ以上がアルキル基であることが好ましく、3つ全てがアルキル基であることがより好ましい。Rで表されるアルキル基としては、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、エチル基又はメチル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
【0053】
トリアジン環に結合していてもよい、アルコキシシリル基を有する1価の基以外の置換基は特に制限されず、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基等が挙げられる。なかでも、アミノ基が好ましく、1級アミノ基又は2級アミノ基がより好ましく、1級アミノ基がさらに好ましい。アルコキシシリル基を有する1価の基以外の置換基の個数は、特に制限されず、アルコキシシリル基を有する1価の基の数と、アルコキシシリル基を有する1価の基以外の置換基の数と、が合計で3であることが好ましい。
【0054】
第1のトリアジン環含有化合物の好ましい例として、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【0056】
式(I)において、Xはアルコキシシリル基を有する1価の基を表す。Xにおけるアルコキシシリル基を有する1価の基の詳細は、上述した態様と同じである。
【0057】
トリアジン環含有化合物の分子量は特に制限されず、例えば100~800であってもよく、200~700であってもよく、300~600であってもよい。
【0058】
第1のトリアジン環含有化合物の融点は特に制限されず、高温接着性及びポットライフの観点からは、200℃以下であることが好ましく、175℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。取り扱い性、及び分散性の観点からは、第1のトリアジン環含有化合物の融点は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。以上の観点から、第1のトリアジン環含有化合物の融点は、0℃~200℃であることが好ましく、10℃~175℃であることがより好ましく、25℃~150℃であることがさらに好ましい。
【0059】
銅に対する高温接着力と優れたポットライフを良好に両立する観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第1のトリアジン環含有化合物の含有率は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがさらに好ましい。
また、アンダーフィル材自体の粘度上昇を抑制する観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第1のトリアジン環含有化合物の含有率は、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
以上の観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第1のトリアジン環含有化合物の含有率は、0.05質量%~3.0質量%であることが好ましく、0.10質量%~2.0質量%であることがより好ましく、0.20質量%~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
-第2のトリアジン環含有化合物-
第2のトリアジン環含有化合物は、トリアジン環及び一級アミノ基を有し、融点が200℃以下である。
【0061】
高温接着性及びポットライフの観点からは、第2のトリアジン環含有化合物の融点は、175℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。取り扱い性、及び分散性の観点からは、第2のトリアジン環含有化合物の融点は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。以上の観点から、第2のトリアジン環含有化合物の融点は、0℃~200℃であることが好ましく、10℃~175℃であることがより好ましく、25℃~150℃であることがさらに好ましい。
トリアジン環含有化合物の融点は、融点測定器等によって測定することができる。
【0062】
トリアジン環における窒素の位置は特に制限されない。すなわち、骨格となるトリアジンは、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、及び1,3,5-トリアジンのいずれであってもよい。
【0063】
第2のトリアジン環含有化合物は、トリアジン(C3H3N3)上の3つの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、一級アミノ基を有する1価の基で置換されている構造を有する。当該1価の基の置換位置は、3つの炭素原子のうちいずれであってもよい。当該1価の基の置換個数は、1個~3個のいずれであってもよい。
【0064】
第2のトリアジン環含有化合物における、一級アミノ基を有する1価の基の置換個数が1又は2である場合、トリアジン環上の、当該一級アミノ基を有する1価の基が結合していない炭素原子には、当該一級アミノ基を有する1価の基以外の置換基が結合していてもよく、置換基が結合していなくてもよい。
【0065】
一級アミノ基を有する1価の基は、一級アミノ基自体であってもよく、一級アミノ基の窒素原子に連結基が結合してなる1価の基であってもよい。一級アミノ基を有する1価の基が、一級アミノ基の窒素原子に連結基が結合してなる1価の基である場合、連結基は、例えば、炭化水素基であってもよく、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を有する炭化水素基であってもよい。連結基の長さ、すなわち、一級アミノ基の窒素原子と、トリアジン環上の炭素原子と、の間に存在する原子鎖上の原子(水素原子、分岐鎖又は置換基を含まない)の数は、例えば1~10であってもよく、1~5であってもよい。一級アミノ基を有する1価の基は、一級アミノ基自体であることが好ましい。
【0066】
トリアジン環に結合していてもよい、一級アミノ基を有する1価の基以外の置換基は特に制限されず、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシシリル基を有する1価の基等が挙げられ、ポットライフの観点からは、アルコキシシリル基を有する1価の基が好ましい。アルコキシシリル基を有する1価の基の詳細は、第1のトリアジン環含有化合物において説明したアルコキシシリル基を有する1価の基と同様である。一級アミノ基を有する1価の基以外の置換基の個数は、特に制限されず、一級アミノ基を有する1価の基の数と、一級アミノ基を有する1価の基以外の置換基の数と、が合計で3であることが好ましい。
【0067】
第2のトリアジン環含有化合物の好ましい例として、上述した一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
銅に対する高温接着力と優れたポットライフを良好に両立する観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第2のトリアジン環含有化合物の含有率は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがさらに好ましい。
また、アンダーフィル材自体の粘度上昇を抑制する観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第2のトリアジン環含有化合物の含有率は、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
以上の観点から、アンダーフィル材の全質量に対する第2のトリアジン環含有化合物の含有率は、0.05質量%~3.0質量%であることが好ましく、0.10質量%~2.0質量%であることがより好ましく、0.20質量%~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0069】
<各種添加剤>
アンダーフィル材は、上述の成分に加えて、硬化促進剤、応力緩和剤、カップリング剤、イオントラップ剤、ブリード抑制剤、着色剤等の各種添加剤を含有してもよい。アンダーフィル材は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含有してもよい。
【0070】
(硬化促進剤)
アンダーフィル材は硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類、アンダーフィル材の所望の特性等に応じて選択できる。具体的には、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物;シクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物;3級アミン化合物の誘導体;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;イミダゾール化合物の誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボレート塩;テトラフェニルボレート塩の誘導体;トリフェニルホスフィン-トリフェニルボラン錯体、モルホリン-トリフェニルボラン錯体等のテトラフェニルボラン錯体などが挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
アンダーフィル材が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は特に制限されず、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部~15質量部であることが好ましく、0.5質量部~10質量部であることがより好ましく、0.8質量部~5質量部であることがさらに好ましい。
【0072】
(応力緩和剤)
アンダーフィル材は応力緩和剤を含有してもよい。応力緩和剤の種類は特に制限されず、熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
アンダーフィル材が応力緩和剤を含有する場合、応力緩和剤の含有量は特に制限されず、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0074】
(カップリング剤)
アンダーフィル材は、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤の種類は特に制限されず、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン化合物;チタン化合物;アルミニウムキレート化合物;アルミニウム/ジルコニウム化合物などが挙げられる。カップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
アンダーフィル材がカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は特に制限されず、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部~5質量部であることが好ましく、0.02質量部~2.5質量部であることがより好ましい。
【0076】
(イオントラップ剤)
アンダーフィル材は、イオントラップ剤を含有してもよい。イオントラップ剤の種類は特に制限されず、例えば、下記一般式(VI-1)又は下記一般式(VI-2)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
Mg1-aAla(OH)2(CO3)a/2・uH2O (VI-1)
(一般式(VI-1)中、aは0<a≦0.5であり、uは正数である。)
BiOb(OH)c(NO3)d (VI-2)
(一般式(VI-2)中、bは0.9≦b≦1.1、cは0.6≦c≦0.8、dは0.2≦d≦0.4である。)
【0078】
イオントラップ剤は、市販品として入手可能である。一般式(VI-1)で表される化合物としては、例えば、「DHT-4A」(協和化学工業株式会社製、商品名)が市販品として入手可能である。また、一般式(VI-2)で表される化合物としては、例えば、「IXE500」(東亞合成株式会社製、商品名)が市販品として入手可能である。
【0079】
また、上記以外のイオントラップ剤として、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオントラップ剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
アンダーフィル材がイオントラップ剤を含有する場合、イオントラップ剤の含有量は特に制限されず、充分な耐湿信頼性を実現する観点からは、エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。他の成分の効果を充分に発揮する観点からは、イオントラップ剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。以上の観点から、イオントラップ剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部~15質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましく、2質量部~5質量部であることがさらに好ましい。
【0081】
また、イオントラップ剤の平均粒子径は0.1μm~3.0μmであることが好ましく、最大粒子径は10μm以下であることが好ましい。イオントラップ剤の平均粒子径は、無機充填材の場合と同様にして測定することができる。
【0082】
(ブリード抑制剤)
アンダーフィル材は、ブリード抑制剤を含有してもよい。ブリード抑制剤の種類は特に制限されず、非イオン性の界面活性剤、シリコーン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。ブリード抑制剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
ブリード抑制剤の含有量は特に制限されず、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1質量部~5質量部であることが好ましく、0.2質量部~2質量部であることがより好ましく、0.3質量部~1質量部であることがさらに好ましい。
【0084】
(着色剤)
アンダーフィル材は、着色剤を含有してもよい。着色剤の種類は特に制限されず、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
アンダーフィル材が着色剤を含有する場合、着色剤の含有量は特に制限されず、アンダーフィル材全量に対して0.001質量部~1質量部であることが好ましく、0.02質量部~0.5質量部であることがより好ましい。
【0086】
〔アンダーフィル材の調製方法〕
アンダーフィル材は、例えば、各成分を一括して又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散等させることにより得ることができる。これらの成分の混合、撹拌、分散等のための装置は特に限定されず、撹拌装置、加熱装置等を備えたらい潰機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどが挙げられる。これらの装置を用いて各成分を混合し、混練し、必要に応じて脱泡することによってアンダーフィル材を得ることができる。
【0087】
〔アンダーフィル材の用途〕
アンダーフィル材は、種々の実装技術に用いることができる。特に、本開示のアンダーフィル材は、フリップチップ型実装技術に用いるアンダーフィル材、すなわち、バンプ等で接合された半導体素子と基板との間の隙間を充填する用途に好適に用いることができる。また、本開示のアンダーフィル材は、銅ピラーを用いたフリップチップ型実装技術に用いるアンダーフィル材として好適に用いることができる。
【0088】
半導体素子と基板の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから適宜選択することができる。アンダーフィル材を用いて半導体素子と基板の間の隙間を充填する方法は、特に制限されない。
【0089】
≪半導体パッケージ≫
本開示の半導体パッケージは、基板と、前記基板上に配置されている半導体素子と、前記半導体素子を封止している本開示のアンダーフィル材の硬化物と、を有する。
【0090】
半導体パッケージにおいて、半導体素子と基板の種類は特に制限されず、半導体パッケージの分野で一般的に使用されるものから適宜選択することができる。半導体パッケージは、本開示のアンダーフィル材が特に有用である観点からは、フリップチップ実装型の半導体パッケージであることが好ましく、半導体素子と基板とを接続するバンプとして銅ピラーを用いたフリップチップ実装型の半導体パッケージであることがより好ましい。
【0091】
≪半導体パッケージの製造方法≫
本開示の半導体パッケージの製造方法は、基板と前記基板上に配置されている半導体素子との間の空隙を本開示のアンダーフィル材で充填する工程と、前記アンダーフィル材を硬化する工程と、を有する。
【0092】
半導体パッケージの詳細は上述の通りである。アンダーフィル材を用いて半導体素子と基板との間の隙間を充填する方法、及び充填後にアンダーフィル材を硬化する方法は特に制限されない。例えば、半導体素子と基板とを接続した後に、半導体素子と基板とのギャップに毛細管現象を利用してアンダーフィル材を付与し、次いでアンダーフィル材の硬化反応を行う後入れ方式、並びに、先に半導体素子及び基板の少なくとも一方の表面にアンダーフィル材を付与し、熱圧着して半導体素子を基板に接続する際に、半導体素子及び基板の接続とアンダーフィル材の硬化反応とを一括して行う先塗布方式が挙げられる。アンダーフィル材の付与方法としては、注型方式、ディスペンス方式、印刷方式等が挙げられる。
【0093】
アンダーフィル材の硬化条件は特に限定されず、例えば、80℃~200℃で、1分間~150分間加熱することが好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
〔アンダーフィル材の調製〕
表1及び表2に示す成分を同表に示す配合量にて混合し、アンダーフィル材を調製した。各成分の詳細は下記のとおりである。表1及び表2中、空欄は成分が配合されていないことを示す。
【0096】
エポキシ樹脂1…液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160g/eq、商品名「エポトート YDF-8170C」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
エポキシ樹脂2…トリグリシジル-p-アミノフェノール、エポキシ当量:95g/eq、商品名「jER 630」、三菱ケミカル株式会社
エポキシ樹脂3…1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、エポキシ当量:143g/eq、商品名「エピクロン HP-4023D」、DIC株式会社
【0097】
硬化剤1…ジエチルトルエンジアミン、商品名「jERキュア W」、活性水素当量:45g/eq、三菱ケミカル株式会社
硬化剤2…3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、商品名「カヤハード A-A」、活性水素当量:63g/eq、日本化薬株式会社
硬化剤3…3,4-ジメチル-6-(2-メチル-1-プロペニル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、商品名「YH-306」、無水酸当量:234g/eq、三菱ケミカル株式会社
硬化剤4…2-アリルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、商品名「MEH-8000H」、活性水素当量:140g/eq、明和化成株式会社
【0098】
硬化促進剤1…トリフェニルホスフィン
硬化促進剤2…2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール
イオントラップ剤…一般式(VI-2)で表される化合物、商品名:「IXE500」、東亞合成株式会社
着色剤…カーボンブラック、商品名「MA-100」、三菱ケミカル株式会社
無機充填材…表面がエポキシシランカップリング剤で処理された球状シリカ、商品名「SE2200-SEJ」、体積平均粒子径0.6μm、株式会社アドマテックス
【0099】
試験化合物としては、市販品として入手可能な以下の化合物を用いた。
【0100】
化合物1…トリアジン誘導体(商品名:VD-5、四国化成工業株式会社、下記化合物、Rは2価の連結基)
【0101】
【0102】
化合物2…メラミン(下記化合物)
【0103】
【0104】
化合物3…6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン(下記化合物)
【0105】
【0106】
化合物4…3-アミノ-1,2,4-トリアゾール(下記化合物)
【0107】
【0108】
化合物5…5-アミノ-1H-テトラゾール(下記化合物)
【0109】
【0110】
化合物6…1,2,3-ベンゾトリアゾール(商品名:BT-120、城北化学工業株式会社、下記化合物)
【0111】
【0112】
化合物7…1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(商品名:BT-LX、城北化学工業株式会社、下記化合物)
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
表1及び表2中、硬化剤の配合量は、硬化剤の全質量を100としたときの質量比で示されている。着色剤、無機充填材及び試験化合物の配合量は、アンダーフィル材の全質量に対する含有率(質量%)で示されている。硬化促進剤、イオントラップ剤の配合量は、エポキシ樹脂の合計100質量部に対する各成分の質量部で示されている。
上記アンダーフィル材において、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の活性水素数の比(硬化剤中の活性水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は1.0である。
【0117】
〔粘度の評価〕
アンダーフィル材の25℃における粘度(Pa・s)は、E型粘度計(東京計器株式会社製、VISCONIC EHD型(商品名))(コーン角度3°、回転数:10回転/分)回毎分(rpm)を用いて測定した。
【0118】
〔ポットライフの評価〕
アンダーフィル材を25℃で24時間放置後、25℃における粘度をE型粘度計(東京計器株式会社製、VISCONIC EHD型(商品名))(コーン角度3°、回転数10回毎分(rpm))を用いて測定した(放置後粘度)。但し、高粘度で回転数10回毎分(rpm)で測定できない試料については、2.5回毎分(rpm)で測定した。ポットライフ(%)は、下記式により、24時間放置後の粘度増加率として算出した。
ポットライフ(%)={(放置後粘度-初期粘度)/初期粘度}×100
【0119】
〔25℃又は260℃における接着力の評価〕
・銅(Cu)に対する接着力
銅板の表面にアンダーフィル材を直径3mm、高さ3mmに成形した試験片を作製し、ボンドテスターDS100型(DAGE製)を用いて、ヘッドスピード50μm/sec、25℃又は260℃の条件でせん断応力をかけ、成形品が銅板から剥離する強度を測定した。
【0120】
評価結果を表3及び表4に示す。表3及び表4中、「-」は該当しないことを表す。ポットライフの評価における「測定不可」とは、増粘が大きく測定できなかったことを表す。
【0121】
【0122】
【0123】
表3及び4に示される通り、試験化合物1を含有する実施例1~6のアンダーフィル材は、ポットライフ及び260℃における銅への接着力に優れていた。
一方、試験化合物1を含有しない比較例1のアンダーフィル材は、25℃における銅への接着力は若干高いものの、260℃における銅への接着力が劣っていた。種々の試験化合物を含有する比較例2~7のアンダーフィル材は、ポットライフが大きく劣るものがあったり、260℃における銅への接着力が劣っていた。また、試験化合物1を含有するものの、硬化剤を硬化剤3又は4に置換した比較例8又は9のアンダーフィル材も、ポットライフ及び260℃における銅への接着力が劣っていた。
【0124】
日本国特許出願第2020-009238号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。