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特許7673653ネガ型レジスト材料及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】ネガ型レジスト材料及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20250430BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250430BHJP
   G03F 1/76 20120101ALI20250430BHJP
   C08F 38/00 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/20 501
G03F1/76
C08F38/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022010019
(22)【出願日】2022-01-26
(65)【公開番号】P2022125971
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2021023472
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
(72)【発明者】
【氏名】船津 顕之
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-295456(JP,A)
【文献】特開平06-180502(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107037690(CN,A)
【文献】特開2017-132827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
C08F 38/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a1)で表される繰り返し単位a1又は下記式(a2)で表される繰り返し単位a2である繰り返し単位a、及び下記式(d1)~(d3)のいずれかで表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含むネガ型レジスト材料。
【化1】
(式中、R 1 及びR 2 は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1A 及びX 1B は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビレン基又はフェニレン基である。
2A 及びX 2B は、それぞれ独立に、単結合、エステル結合又はエーテル結合である。)
【化2】
(式中、R A は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1 は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は-O-Z 11 -、-C(=O)-O-Z 11 -若しくは-C(=O)-NH-Z 11 -である。Z 11 は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2 は、単結合又はエステル結合である。
3 は、単結合、-Z 31 -C(=O)-O-、-Z 31 -O-又は-Z 31 -O-C(=O)-である。Z 31 は、炭素数1~12の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、臭素原子又はヨウ素原子を含んでいてもよい。
4 は、メチレン基、2,2,2-トリフルオロ-1,1-エタンジイル基又はカルボニル基である。
5 は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z 51 -、-C(=O)-O-Z 51 -又は-C(=O)-NH-Z 51 -である。Z 51 は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
21 ~R 28 は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R 23 及びR 24 又はR 26 及びR 27 が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
- は、非求核性対向イオンである。)
【請求項2】
記式(a1)で表される繰り返し単位a1又は下記式(a2)で表される繰り返し単位a2である繰り返し単位a、及び酸発生剤を含むネガ型レジスト材料。
【化3】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1A及びX1Bは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビレン基又はフェニレン基である。
2A及びX2Bは、それぞれ独立に、単結合、エステル結合又はエーテル結合である。)
【請求項3】
前記ベースポリマーが、更に、フェノール性ヒドロキシ基を有する繰り返し単位bを含むものである請求項1又は2記載のネガ型レジスト材料。
【請求項4】
繰り返し単位bが、下記式(b)で表されるものである請求項3記載のネガ型レジスト材料。
【化4】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
11は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アセトキシ基又はハロゲン原子である。
1は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。
aは、0~4の整数である。bは、1又は2である。ただし、1≦a+b≦5である。)
【請求項5】
前記ベースポリマーが、更に、下記式(c)で表される繰り返し単位cを含むものである請求項1~4のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料。
【化5】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
12は、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子である。
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
2は、単結合又はエステル結合である。
cは、0~4の整数である。dは、1又は2である。ただし、1≦c+d≦5である。)
【請求項6】
更に、有機溶剤を含む請求項1~のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料。
【請求項7】
更に、酸発生剤を含む請求項記載のネガ型レジスト材料。
【請求項8】
更に、クエンチャーを含む請求項1~のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料。
【請求項9】
更に、界面活性剤を含む請求項1~のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項11】
前記基板が、フォトマスクブランクである請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記高エネルギー線が、波長180~400nmの紫外線である請求項1又は1記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記高エネルギー線が、電子線又は波長3~15nmの極端紫外線である請求項1又は1記載のパターン形成方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項記載のネガ型レジスト材料を塗布したフォトマスクブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型レジスト材料及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。5Gの高速通信と人工知能(artificial intelligence、AI)の普及が進み、これを処理するための高性能デバイスが必要とされているためである。最先端の微細化技術としては、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィーによる5nmノードのデバイスの量産が行われている。更には、次世代の3nmノード、次次世代の2nmノードデバイスにおいてもEUVリソグラフィーを用いた検討が進められている。
【0003】
マスクパターン製作においては、電子線(EB)描画によるレジストパターン形成が行われている。EB描画のスループット向上のため、化学増幅レジスト材料が一般的に用いられている。前記化学増幅レジスト材料としては、例えば、ポリヒドロキシスチレンのヒドロキシ基の一部を酸不安定基で置換したポリマーをベースポリマーとし、これに酸発生剤、酸の拡散を制御するクエンチャー、界面活性剤及び有機溶剤を配合したものが挙げられる。化学増幅レジスト材料は、高感度化のメリットがあるが、一方で酸拡散の像のぼけによって解像度やパターンの精度が低下してしまうという欠点も有している。
【0004】
ビーム半径を小さく絞ったり、加速電圧を50kVから100kVに増加したりすることによって解像度が向上する。しかしながら、前者の場合は描画面積が狭くなるため、後者の場合はレジスト膜内の電子の散乱が小さくなるため、レジスト膜の感度が低下し、いずれも描画時間が長くなる。さらに、微細化の進行や描画パターン数の増加によっても、描画時間が長くなる。
【0005】
解像性を向上しつつ描画時間を短縮するトレードオフの打破のために、小さく絞った複数のEBを用いて同時に描画を行うマルチビームEB描画装置が開発されている。これによって、解像力を向上しつつ、描画時間を短縮することができる。
【0006】
EB描画によるレジストパターンの解像度の向上とともに、レジストパターンのアスペクト比が増加し、これによって現像後のリンス乾燥時の応力によってパターンの倒れが発生するという問題が生じている。これを防ぐために、レジスト膜の薄膜化が進行している。また、これとともにドライエッチング耐性の向上が必要となり、レジスト膜のドライエッチング耐性向上のため、酸不安定基で置換されたポリヒドロキシスチレンとインデン(特許文献1)やアセナフチレン(特許文献2)とを共重合したベースポリマーを用いたポジ型レジスト材料が提案されている。インデンやアセナフチレンを共重合することによって、ドライエッチング耐性が向上しただけでなく、酸拡散を制御するメリットもあって、解像度の向上にも寄与している。
【0007】
酸触媒による脱水反応等で親水性から疎水性に極性が変化するネガ型レジスト材料が提案されている(特許文献3)。これは、架橋反応を伴わないため、架橋剤が添加された従来型のネガ型レジスト材料よりも現像液中での膨潤が小さく、これによってパターン倒れが起きにくいという特徴がある。
【0008】
架橋剤あるいは架橋ユニットを含むベースポリマーを用いるネガ型レジスト材料だけでなく、酸による脱水反応によって親水性が低下するネガ型レジスト材料においても、インデンやアセナフチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマーが提案されている(特許文献4)。
【0009】
近年、マスク基板として酸化膜系のハードマスクが適用されるようになってきており、レジスト膜の過度なドライエッチング耐性の向上は必要なくなった。ドライエッチング耐性を向上させるよりも解像性に優れたレジスト材料が要求されるようになってきており、解像度の向上に加えて近年は、エッジラフネス(LER、LWR)の低減が重要になってきている。
【0010】
解像度の向上やエッジラフネス低減のためには、酸拡散の低減、溶解コントラストの向上、及び膨潤の低減が重要である。ビニルアントラキノン等の極性基を有するバルキーな繰り返し単位の導入は酸拡散の低減に効果的である(特許文献5)が、更なる低酸拡散な材料開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-115630号公報
【文献】特開2006-169302号公報
【文献】米国特許第7300739号明細書
【文献】特開2013-164588号公報
【文献】特開2017-222832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、従来のネガ型レジスト材料を上回る解像度を有し、エッジラフネスが小さいネガ型レジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、近年要望される高解像度であり、エッジラフネスが小さいネガ型レジスト材料を得るべく鋭意検討を重ねた結果、これには特定の繰り返し単位を含むポリマーをネガ型レジスト材料のベースポリマーとして用いれば極めて有効であることを知見した。
【0014】
特許文献4に記載されたインデンやアセナフチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマーは、酸拡散制御に優れ、エッジラフネスが低減したが、更なる性能の向上が必要であった。インデンやアセナフチレンを共重合することによって主鎖が剛直になり、ポリマーのガラス転移点が高くなって、これによって酸拡散距離が短くなる。前記共重合体は、スチレン共重合体よりも酸拡散制御の効果が高い。一方、インデンやアセナフチレンは疎水性の芳香族化合物であるため、ポリマー内で親水性部分と疎水性部分が混在し、アルカリ現像液の溶解性が不均一になって膨潤を引き起こし、エッジラフネス劣化の要因となる。
【0015】
本発明者らは、酸拡散を抑えてアルカリ溶解均一性を向上させてエッジラフネスを低減させるため鋭意検討を重ねた結果、三重結合を有するマレイミドに由来する繰り返し単位を含むポリマーをベースポリマーとして用いることによって、露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが高く、酸拡散を抑える効果が高く、高解像度を有し、露光後のパターン形状とエッジラフネスが良好である、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なネガ型レジスト材料が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、下記ネガ型レジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
1.三重結合を有するマレイミド化合物に由来する繰り返し単位aを含むベースポリマーを含むネガ型レジスト材料。
2.繰り返し単位aが、下記式(a1)で表される繰り返し単位a1又は下記式(a2)で表される繰り返し単位a2である1のネガ型レジスト材料。
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1A及びX1Bは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビレン基又はフェニレン基である。
2A及びX2Bは、それぞれ独立に、単結合、エステル結合又はエーテル結合である。)
3.前記ベースポリマーが、更に、フェノール性ヒドロキシ基を有する繰り返し単位bを含むものである1又は2のネガ型レジスト材料。
4.繰り返し単位bが、下記式(b)で表されるものである3のネガ型レジスト材料。
【化2】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
11は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アセトキシ基又はハロゲン原子である。
1は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。
aは、0~4の整数である。bは、1又は2である。ただし、1≦a+b≦5である。)
5.前記ベースポリマーが、更に、下記式(c)で表される繰り返し単位cを含むものである1~4のいずれかのネガ型レジスト材料。
【化3】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
12は、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子である。
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
2は、単結合又はエステル結合である。
cは、0~4の整数である。dは、1又は2である。ただし、1≦c+d≦5である。)
6.前記ベースポリマーが、更に、下記式(d1)~(d3)のいずれかで表される繰り返し単位を含むものである1~5のいずれかのネガ型レジスト材料。
【化4】
(式中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-若しくは-C(=O)-NH-Z11-である。Z11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
2は、単結合又はエステル結合である。
3は、単結合、-Z31-C(=O)-O-、-Z31-O-又は-Z31-O-C(=O)-である。Z31は、炭素数1~12の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、臭素原子又はヨウ素原子を含んでいてもよい。
4は、メチレン基、2,2,2-トリフルオロ-1,1-エタンジイル基又はカルボニル基である。
5は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-である。Z51は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
21~R28は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、R23及びR24又はR26及びR27が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
-は、非求核性対向イオンである。)
7.更に、有機溶剤を含む1~6のいずれかのネガ型レジスト材料。
8.更に、酸発生剤を含む1~7のいずれかのネガ型レジスト材料。
9.更に、クエンチャーを含む1~8のいずれかのネガ型レジスト材料。
10.更に、界面活性剤を含む1~9のいずれかのネガ型レジスト材料。
11.1~10のいずれかのネガ型レジスト材料を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
12.前記基板が、フォトマスクブランクである11のパターン形成方法。
13.前記高エネルギー線が、波長180~400nmの紫外線である11又は12のパターン形成方法。
14.前記高エネルギー線が、EB又は波長3~15nmのEUVである11又は12のパターン形成方法。
15.1~10のいずれかのネガ型レジスト材料を塗布したフォトマスクブランク。
【発明の効果】
【0017】
本発明のネガ型レジスト材料は、レジスト膜としたときの露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが大幅に高く、高解像度を有し、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状とエッジラフネスが良好で、その上、酸拡散速度を抑制できる。したがって、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料や、EB露光用、EUV露光用、ArFエキシマレーザー露光用のパターン形成材料として好適である。また、本発明のネガ型レジスト材料は、半導体回路形成におけるリソグラフィーだけでなく、マスク回路パターンの形成、あるいはマイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド回路形成等にも応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ベースポリマー]
本発明のネガ型レジスト材料は、三重結合を有するマレイミド化合物に由来する繰り返し単位aを含むベースポリマーを含むことを特徴とする。
【0019】
繰り返し単位aとしては、下記式(a1)で表される繰り返し単位a1又は下記式(a2)で表される繰り返し単位a2が好ましい。
【化5】
【0020】
式(a1)及び(a2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。X1A及びX1Bは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビレン基又はフェニレン基である。X2A及びX2Bは、それぞれ独立に、単結合、エステル結合又はエーテル結合である。
【0021】
1A及びX1Bで表される飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-2,2-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等の炭素数1~6のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シシクロブタンジイル基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等の炭素数3~6の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0022】
繰り返し単位a1を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】
繰り返し単位a2を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
前記マレイミド化合物は、例えば、無水マレイン酸や無水イタコン酸とエチニル基を有するアミン化合物との反応、マレイミドやイタコンイミドとエチニル基を有するハロゲン化合物との反応によって合成することができる。
【0027】
繰り返し単位a1及びa2は、窒素原子を含むマレイミド基を有しており、酸拡散の制御能を有する。また、主鎖が剛直になることによる酸拡散低減効果も加わる。さらに、三重結合は酸性を帯びているので適度なアルカリ溶解性を有し、膨潤を低減させることができる。これによって、低酸拡散、低膨潤、高アルカリ溶解コントラスト、高解像度、低LER、及びCDUの改善を同時に達成することができる。
【0028】
前記ベースポリマーは、更に、フェノール性ヒドロキシ基を有する繰り返し単位bを含んでもよい。繰り返し単位bとしては、下記式(b)で表されるものが好ましい。
【化10】
【0029】
式(b)中、RAは、水素原子又はメチル基である。R11は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アセトキシ基又はハロゲン原子である。Y1は、単結合、エステル結合又はアミド結合である。aは、0~4の整数である。bは、1又は2である。ただし、1≦a+b≦5である。
【0030】
繰り返し単位bを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化11】
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
前記ベースポリマーは、更に、下記式(c)で表される繰り返し単位cを含んでもよい。繰り返し単位cは、酸触媒による脱水反応等で親水性から疎水性に極性が変化する単位である。
【化14】
【0034】
式(c)中、RAは、水素原子又はメチル基である。R12は、炭素数1~6のアルキル基又はハロゲン原子である。R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基であり、R13とR14とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。Y2は、単結合又はエステル結合である。cは、0~4の整数である。dは、1又は2である。ただし、1≦c+d≦5である。
【0035】
繰り返し単位cを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化15】
【0036】
【化16】
【0037】
【化17】
【0038】
前記ベースポリマーは、更に、下記式(d1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位d1ともいう。)、下記式(d2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位d2ともいう。)及び下記式(d3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位d3ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化18】
【0039】
式(d1)~(d3)中、RAは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z1は、単結合、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基若しくはこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基、又は-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-若しくは-C(=O)-NH-Z11-である。Z11は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、ナフチレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z2は、単結合又はエステル結合である。Z3は、単結合、-Z31-C(=O)-O-、-Z31-O-又は-Z31-O-C(=O)-である。Z31は、炭素数1~12の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基又はこれらを組み合わせて得られる炭素数7~18の基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、臭素原子又はヨウ素原子を含んでいてもよい。Z4は、メチレン基、2,2,2-トリフルオロ-1,1-エタンジイル基又はカルボニル基である。Z5は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-である。Z51は、炭素数1~6の脂肪族ヒドロカルビレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。なお、Z1、Z11、Z31及びZ51で表される脂肪族ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0040】
式(d1)中、M-は、非求核性対向イオンである。前記非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、トリフレートイオン、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルキルスルホネートイオン、トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン、メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルキルスルホネートイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドイオン等のイミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドイオン等のメチドイオンが挙げられる。
【0041】
前記非求核性対向イオンとしては、更に、下記式(d1-1)で表されるα位がフッ素原子で置換されたスルホン酸イオン、下記式(d1-2)で表されるα位がフッ素原子で置換され、β位がトリフルオロメチル基で置換されたスルホン酸イオン等が挙げられる。
【化19】
【0042】
式(d1-1)中、R31は、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基は、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、ラクトン環又はフッ素原子を含んでいてもよい。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、後述する式(1A')中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示するものと同様のものが挙げられる。
【0043】
式(d1-2)中、R32は、水素原子、炭素数1~30のヒドロカルビル基又は炭素数2~30のヒドロカルビルカルボニル基であり、該ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルカルボニル基は、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基又はラクトン環を含んでいてもよい。前記ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルカルボニル基のヒドロカルビル部は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、後述する式(1A')中のR111で表されるヒドロカルビル基として例示するものと同様のものが挙げられる。
【0044】
繰り返し単位d1を与えるモノマーのカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化20】
【0045】
繰り返し単位d2を与えるモノマーのアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化21】
【0046】
【化22】
【0047】
【化23】
【0048】
【化24】
【0049】
【化25】
【0050】
【化26】
【0051】
【化27】
【0052】
【化28】
【0053】
【化29】
【0054】
【化30】
【0055】
【化31】
【0056】
繰り返し単位d3を与えるモノマーのアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化32】
【0057】
【化33】
【0058】
式(d1)~(d3)中、R21~R28は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
【0059】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0060】
21~R28で表される炭素数1~20のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の炭素数1~20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素数3~20の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の炭素数2~20のアルキニル基;シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等の炭素数3~20の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、n-プロピルナフチル基、イソプロピルナフチル基、n-ブチルナフチル基、イソブチルナフチル基、sec-ブチルナフチル基、tert-ブチルナフチル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~20のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0061】
また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0062】
また、R23及びR24又はR26及びR27が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、前記環としては、以下に示す構造のものが好ましい。
【化34】
(式中、破線は、R25又はR28との結合手である。)
【0063】
繰り返し単位d2及びd3のカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化35】
【0064】
【化36】
【0065】
【化37】
【0066】
【化38】
【0067】
【化39】
【0068】
【化40】
【0069】
【化41】
【0070】
【化42】
【0071】
【化43】
【0072】
【化44】
【0073】
【化45】
【0074】
【化46】
【0075】
【化47】
【0076】
【化48】
【0077】
【化49】
【0078】
【化50】
【0079】
【化51】
【0080】
【化52】
【0081】
【化53】
【0082】
【化54】
【0083】
【化55】
【0084】
【化56】
【0085】
繰り返し単位d1~d3は、酸発生剤として機能する。ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像度の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってLWRやCDUが改善される。なお、繰り返し単位d1~d3を含むベースポリマー(すなわち、ポリマーバウンド型酸発生剤)を用いる場合、後述する添加型酸発生剤の配合を省略し得る。
【0086】
前記ベースポリマーは、更に、ヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基及びシアノ基から選ばれる密着性基を含む繰り返し単位eを含んでもよい。繰り返し単位eを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化57】
【0087】
【化58】
【0088】
【化59】
【0089】
【化60】
【0090】
【化61】
【0091】
【化62】
【0092】
【化63】
【0093】
【化64】
【0094】
【化65】
【0095】
前記ベースポリマーは、更に、ヨウ素原子を含む繰り返し単位fを含んでもよい。繰り返し単位fを与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化66】
【0096】
【化67】
【0097】
【化68】
【0098】
前記ベースポリマーは、前述した繰り返し単位以外の繰り返し単位gを含んでもよい。繰り返し単位gとしては、スチレン、ビニルナフタレン、インデン、アセナフチレン、クマリン、クマロン等に由来するものが挙げられる。
【0099】
前記ベースポリマー中、繰り返し単位a1、a2、b、c、d1、d2、d3、e、f及びgの含有比率は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<a1+a2<1.0、0<b<1.0、0≦c<1.0、0≦d1≦0.4、0≦d2≦0.4、0≦d3≦0.4、0≦d1+d2+d3≦0.4、0≦e≦0.7、0≦f≦0.5及び0≦g≦0.5が好ましく、0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.01≦a1+a2≦0.8、0.1≦b≦0.9、0.1≦c≦0.9、0≦d1≦0.3、0≦d2≦0.3、0≦d3≦0.3、0≦d1+d2+d3≦0.3、0≦e≦0.5、0≦f≦0.4及び0≦g≦0.4がより好ましく、0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0.02≦a1+a2≦0.7、0.2≦b≦0.8、0.2≦c≦0.8、0≦d1≦0.25、0≦d2≦0.25、0≦d3≦0.25、0≦d1+d2+d3≦0.25、0≦e≦0.4、0≦f≦0.3及び0≦g≦0.3が更に好ましい。ただし、a1+a2+b+c+d+e+f+g≦1である。なお、例えば、a+b+c=1とは、繰り返し単位a、b及びcを含むポリマーにおいて、繰り返し単位a、b及びcの合計量が全繰り返し単位中100モル%であることを示し、a+b+c<1とは、繰り返し単位a、b及びcの合計量が全繰り返し単位中100モル%未満で繰り返し単位a、b及びc以外に他の繰り返し単位を含んでいることを示す。
【0100】
前記ベースポリマーを合成するには、例えば、繰り返し単位a~gを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱し、重合を行えばよい。
【0101】
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。重合開始剤としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。重合時の温度は、好ましくは50~80℃である。反応時間は、好ましくは2~100時間、より好ましくは5~20時間である。
【0102】
ヒドロキシ基を含むモノマーを共重合する場合、重合時にヒドロキシ基をエトキシエトキシ基等の酸によって脱保護しやすいアセタール基で置換しておいて重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0103】
ヒドロキシスチレンやヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレンやヒドロキシビニルナフタレンのかわりにアセトキシスチレンやアセトキシビニルナフタレンを用い、重合後前記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してヒドロキシスチレンやヒドロキシビニルナフタレンにしてもよい。
【0104】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また、反応温度は、好ましくは-20~100℃、より好ましくは0~60℃である。反応時間は、好ましくは0.2~100時間、より好ましくは0.5~20時間である。
【0105】
前記ベースポリマーは、その重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~30,000である。Mwが小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じやすくなる。なお、Mwは、溶剤としてTHFを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0106】
また、前記ベースポリマーにおいて分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は、低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。パターンルールが微細化するに従って、MwやMw/Mnの影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、前記ベースポリマーのMw/Mnは、1.0~2.0、特に1.0~1.5と狭分散であることが好ましい。
【0107】
前記ベースポリマーは、組成比率、Mw、Mw/Mnが異なる2つ以上のポリマーを含んでもよい。また、繰り返し単位a1を含むポリマーと繰り返し単位a2を含むポリマーとをブレンドしてもよく、繰り返し単位a1及び/又はa2を含むポリマーと、繰り返し単位a1及びa2を含まないポリマーとをブレンドしてもよい。本発明のポリマーは、ネガ型レジスト材料のベースポリマーとして好適である。
【0108】
[有機溶剤]
本発明のネガ型レジスト材料は、有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤は、前述した各成分及び後述する各成分が溶解可能なものであれば、特に限定されない。前記有機溶剤としては、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0109】
本発明のネガ型レジスト材料中、前記有機溶剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、50~10,000質量部が好ましく、100~5,000質量部がより好ましい。前記有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
[酸発生剤]
本発明のネガ型レジスト材料は、化学増幅ネガ型レジスト材料として機能させるため、酸発生剤(以下、添加型酸発生剤ともいう。)を含んでもよい。前記添加型酸発生剤としては、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)が挙げられる。光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等が挙げられる。酸発生剤の具体例としては、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載されているものが挙げられる。
【0111】
前記酸発生剤としては、アレーンスルホネート型の酸発生剤が、架橋反応又は脱水反応を誘発するのに適度な強度の酸を発生させるため好ましい。このような酸発生剤としては、以下に示す構造のスルホネートアニオンを有するスルホニウム塩を好適に用いることができる。対をなすスルホニウムカチオンとしては、繰り返し単位d2及びd3のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【化69】
【0112】
【化70】
【0113】
【化71】
【0114】
【化72】
【0115】
【化73】
【0116】
【化74】
【0117】
本発明のネガ型レジスト材料が添加型酸発生剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0.01~100質量部が好ましく、0.1~80質量部がより好ましい。前記添加型酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d3を含むことで、及び/又は添加型酸発生剤を含むことで、本発明のネガ型レジスト材料は、化学増幅ネガ型レジスト材料として機能することができる。
【0118】
[クエンチャー]
本発明のネガ型レジスト材料は、クエンチャーを含んでもよい。なお、クエンチャーとは、レジスト材料中の酸発生剤より発生した酸をトラップすることで未露光部への拡散を防ぐことができる化合物を意味する。
【0119】
前記クエンチャーとしては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0120】
前記クエンチャーとして、特開2008-158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸及びカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、カルボン酸エステルの酸不安定基を脱保護させるために必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないスルホン酸及びカルボン酸は脱保護反応を起こさないため、クエンチャーとして機能する。
【0121】
また、前記クエンチャーとして、下記式(1)で表されるカルボン酸オニウム塩が挙げられる。
【化75】
【0122】
式(1)中、R101~R104は、それぞれ独立に、水素原子、-L-CO2 -、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。R101とR102と、R102とR103と、又はR103とR104とが、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。Lは、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。R105は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。
【0123】
式(1)中、環Rは、式中の炭素原子及び窒素原子を含む炭素数2~6の環であり、該環の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部が、炭素数1~20のヒドロカルビル基、又は-L-CO2 -で置換されていてもよく、該環の炭素原子の一部が、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。前記環は、脂環でも芳香環でもよく、また、5員環又は6員環であることが好ましく、その具体例としては、ピリジン環、ピロール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピラゾール環、イミダゾリン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、イミダゾリン環、オキサゾール環、チアゾール環、モルホリン環、チアジン環、トリアゾール環等が挙げられる。
【0124】
式(1)で表されるカルボン酸オニウム塩は、少なくとも1つの-L-CO2 -基を有する。すなわち、R101~R104のうち少なくとも1つが-L-CO2 -である、及び/又は環Rの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが-L-CO2 -で置換されたものである。
【0125】
式(1)中、Q+は、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであるが、スルホニウムカチオンが好ましい。前記スルホニウムカチオンとしては、繰り返し単位d2及びd3のカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0126】
前記クエンチャーの他の例として、特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、レジスト膜表面に配向することによってレジストパターンの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0127】
本発明のネガ型レジスト材料が前記クエンチャーを含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~4質量部がより好ましい。前記クエンチャーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
[その他の成分]
本発明のネガ型レジスト材料は、前述した成分に加えて、界面活性剤、架橋剤、撥水性向上剤、アセチレンアルコール類等を含んでもよい。
【0129】
前記界面活性剤としては、特開2008-111103号公報の段落[0165]~[0166]に記載されたものが挙げられる。界面活性剤を添加することによって、レジスト材料の塗布性を一層向上させ、あるいは制御することができる。本発明のネガ型レジスト材料が前記界面活性剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~10質量部が好ましく、0.0001~5質量部がより好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0130】
前記架橋剤としては、特開2020-027297号公報の段落[0170]~[0177]に記載されたものが挙げられる。架橋剤を添加することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができるが、現像液中での膨潤が増大するリスクもある。本発明のネガ型レジスト材料が前記架橋剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~30質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましい。
【0131】
前記撥水性向上剤は、レジスト膜表面の撥水性を向上させるものであり、トップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。前記撥水性向上剤としては、フッ化アルキル基を含むポリマー、特定構造の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール残基を含むポリマー等が好ましく、特開2007-297590号公報、特開2008-111103号公報等に例示されているものがより好ましい。前記撥水性向上剤は、アルカリ現像液や有機溶剤現像液に溶解する必要がある。前述した特定の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、現像液への溶解性が良好である。撥水性向上剤として、アミノ基やアミン塩を含む繰り返し単位を含むポリマーは、ポストエクスポージャーベーク(PEB)中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。本発明のネガ型レジスト材料が撥水性向上剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。前記撥水性向上剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
前記アセチレンアルコール類としては、特開2008-122932号公報の段落[0179]~[0182]に記載されたものが挙げられる。本発明のネガ型レジスト材料がアセチレンアルコール類を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましい。前記アセチレンアルコール類は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0133】
[パターン形成方法]
本発明のネガ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、公知のリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、パターン形成方法としては、前述したネガ型レジスト材料を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含む方法が挙げられる。
【0134】
まず、本発明のネガ型レジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01~2μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、10秒~30分間、より好ましくは80~120℃、30秒~20分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0135】
前記レジスト膜の上には、ポリチオフェンやポリアニリンベースの帯電防止膜を設けてもよく、これ以外のトップコート膜を形成してもよい。
【0136】
次いで、高エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、EB、波長3~15nmのEUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等が挙げられる。前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等を用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2程度、より好ましくは10~100mJ/cm2程度となるように照射する。前記高エネルギー線としてEBを用いる場合は、露光量が好ましくは0.1~100μC/cm2程度、より好ましくは0.5~50μC/cm2程度で直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて描画する。なお、本発明のネガ型レジスト材料は、特に高エネルギー線の中でもEB、EUV、軟X線、X線、γ線、シンクロトロン放射線による微細パターニングに最適である。
【0137】
露光後、ホットプレート上又はオーブン中で、好ましくは60~150℃、10秒~30分間、より好ましくは80~120℃、30秒~20分間PEBを行ってもよい。
【0138】
露光後又はPEB後、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは2~5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒~3分間、好ましくは5秒~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により露光したレジスト膜を現像することで、光を照射した部分は現像液に溶解せず、露光されなかった部分は溶解し、基板上に目的のネガ型パターンが形成される。
【0139】
一般的に広く用いられているTMAH水溶液よりもアルキル鎖が長いTEAH、TPAH及びTBAHは、現像中の膨潤を低減させてパターンの倒れを防ぐ効果がある。TMAH現像液としては、2.38質量%の水溶液が最も広く用いられている。これは0.26Nに相当し、TEAH、TPAH又はTBAH水溶液も同じ規定度であることが好ましい。0.26NとなるTEAH、TPAH及びTBAHの濃度は、それぞれ3.84質量%、5.31質量%及び6.78質量%である。
【0140】
EB又はEUVで解像される32nm以下のパターンにおいて、ラインがよれたり、ライン同士がくっついたり、くっついたラインが倒れたりする現象が起きている。これは、現像液中に膨潤して膨らんだライン同士がくっつくのが原因と考えられる。膨潤したラインは、現像液を含んでスポンジのように軟らかいため、リンスの応力で倒れやすくなっている。アルキル鎖が長いTEAH、TPAH及びTBAHを含む現像液は、膨潤を防いでパターン倒れを防ぐ効果がある。
【0141】
三重結合は、200℃以上の熱によって架橋する特性がある。現像によってレジストパターン形成した後加熱することによって架橋し、更に硬度の高いパターンを得ることができる。パターンの硬度を高めることによって、ドライエッチング耐性を向上させることができる。さらに、ポストベークによる架橋によって水分透過性を低下させ、膜の剛直性を上げることによって、永久膜として用いる場合に膜の耐久性を上げることができる。
【実施例
【0142】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0143】
[1]ベースポリマーの合成
ベースポリマーの合成に用いたモノマーM-1~M-4、AM-1~AM-4及びPM-1~PM-4は、以下のとおりである。なお、ポリマーのMwは、THFを溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【化76】
【0144】
【化77】
【0145】
【化78】
【0146】
[合成例1]ポリマーP-1の合成
2Lフラスコに、モノマーM-1を2.4g、モノマーAM-1を4.1g、4-ヒドロキシスチレンを7.2g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-1を得た。ポリマーP-1の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化79】
【0147】
[合成例2]ポリマーP-2の合成
2Lフラスコに、モノマーM-1を2.4g、モノマーAM-2を3.8g、4-ヒドロキシスチレンを7.8g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-2を得た。ポリマーP-2の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化80】
【0148】
[合成例3]ポリマーP-3の合成
2LフラスコにモノマーM-2を2.4g、モノマーAM-3を4.0g、4-ヒドロキシスチレンを6.0g、メタクリル酸-4-ヒドロフェニルを3.6g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-3を得た。ポリマーP-3の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化81】
【0149】
[合成例4]ポリマーP-4の合成
2Lフラスコに、モノマーM-3を2.7g、モノマーAM-1を4.9g、4-ヒドロキシスチレン5.4g、モノマーPM-1を6.8g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-4を得た。ポリマーP-4の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化82】
【0150】
[合成例5]ポリマーP-5の合成
2Lフラスコに、モノマーM-4を5.1g、モノマーAM-1を4.9g、4-ヒドロキシスチレンを4.8g、モノマーPM-2を5.9g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-5を得た。ポリマーP-5の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化83】
【0151】
[合成例6]ポリマーP-6の合成
2Lフラスコに、モノマーM-1を3.2g、モノマーAM-1を4.9g、4-ヒドロキシスチレンを4.8g、モノマーPM-3を5.6g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-6を得た。ポリマーP-6の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化84】
【0152】
[合成例7]ポリマーP-7の合成
2Lフラスコに、モノマーM-1を1.6g、モノマーAM-4を8.3g、3-ヒドロキシスチレンを6.0g、モノマーPM-4を7.4g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-7を得た。ポリマーP-7の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化85】
【0153】
[合成例8]ポリマーP-8の合成
2Lフラスコに、モノマーM-1を3.2g、モノマーAM-1を4.9g、4-ヒドロキシ-3-メトキシスチレンを5.9g、モノマーPM-3を5.6g、及び溶剤としてTHFを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気及び窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温した後、重合開始剤としてAIBNを1.2g加え、60℃まで昇温し、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール1L及び水0.1Lの混合溶剤に添加したところ、白色固体が沈殿した。前記白色固体を濾別した後、60℃で減圧乾燥し、ポリマーP-8を得た。ポリマーP-8の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化86】
【0154】
[比較合成例1]比較ポリマーcP-1の合成
モノマーM-1のかわりにアセナフチレン2.3gを用いた以外は、合成例1と同様の方法で合成を行い、比較ポリマーcP-1を得た。比較ポリマーcP-1の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化87】
【0155】
[比較合成例2]比較ポリマーcP-2の合成
モノマーM-1のかわりにN-フェニルマレイミドを用いた以外は、合成例1と同様の方法で比較ポリマーcP-2を得た。比較ポリマーcP-2の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化88】
【0156】
[比較合成例3]比較ポリマーcP-3の合成
モノマーM-1のかわりにN-エチルイタコンイミドを用いた以外は、合成例1と同様の方法で比較ポリマーcP-3を得た。比較ポリマーcP-3の組成は13C-NMR及び1H-NMRにより、Mw及びMw/MnはGPCにより確認した。
【化89】
【0157】
[2]ネガ型レジスト材料の調製及びその評価
[実施例1~10、比較例1~3]
(1)ネガ型レジスト材料の調製
界面活性剤としてオムノバ社製界面活性剤PolyFox PF-636を50ppm溶解させた溶剤に、表1に示す組成で各成分を溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してネガ型レジスト材料を調製した。
【0158】
表1中、各成分は以下のとおりである。
・有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
EL(乳酸エチル)
【0159】
・酸発生剤:PAG-1
・クエンチャー:Q-1
【化90】
【0160】
・ブレンドポリマー:bP-1
【化91】
【0161】
(2)EBリソグラフィー評価
表1に示す各ネガ型レジスト材料を、110℃で60秒間ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のべーパープライム処理した直径6インチφのSi基板上に、クリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上で110℃で60秒間プリベークして80nmのレジスト膜を作製した。これに、(株)日立製作所製HL-800Dを用いて、HV電圧50kVで真空チャンバー内描画を行った。
描画後、直ちにクリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いてホットプレート上で表1に示す温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ネガ型パターンを得た。
得られたレジストパターンを次のように評価した。
100nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力とし、100nmLSのラインエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。
結果を表1に併記する。
【0162】
【表1】
【0163】
表1に示した結果より、本発明のネガ型レジスト材料は、十分な解像度を有し、LERが低減されたことがわかった。