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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】タグおよび物品の提供方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20250430BHJP
   H04N 1/46 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
G06T1/00 510
H04N1/46
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2025508731
(86)(22)【出願日】2024-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2024030787
【審査請求日】2025-02-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/031559
(32)【優先日】2023-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】坂口 俊
(72)【発明者】
【氏名】冨田 みゆき
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-100312(JP,A)
【文献】特開2021-144197(JP,A)
【文献】特開2008-62562(JP,A)
【文献】特開2014-220744(JP,A)
【文献】特開2012-23524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
H04N 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に付与されるタグであって、
一般色覚者によって知覚される前記物品の色を色弱者が知覚可能なで示す第一領域と、色弱者によって知覚される前記物品の色を一般色覚者が知覚可能なで示す第二領域と、の少なくとも一方を有する、タグ。
【請求項2】
前記第一領域は、前記第一領域を視認した色弱者の色覚系の応答が前記物品を視認した一般色覚者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色を含む、請求項1に記載のタグ。
【請求項3】
前記第二領域は、前記第二領域を視認した一般色覚者の色覚系の応答が前記物品を視認した色弱者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色を含む、請求項1または2に記載のタグ。
【請求項4】
前記第一領域は、色弱者が知覚可能な複数の色であって、前記複数の色を混ぜることによって一般色覚者によって知覚される前記物品の色となる前記複数の色を含む、請求項1または2に記載のタグ。
【請求項5】
色弱者が知覚可能な複数の色それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色である、請求項4に記載のタグ。
【請求項6】
前記第二領域は、一般色覚者が知覚可能な複数の色であって、前記複数の色を混ぜることによって色弱者によって知覚される前記物品の色となる前記複数の色を含む、請求項1に記載のタグ。
【請求項7】
一般色覚者が知覚可能な複数の色それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色である、請求項6に記載のタグ。
【請求項8】
前記タグが、前記第一領域を有する、請求項1または2に記載のタグ。
【請求項9】
前記物品が衣類である、請求項1または2に記載のタグ。
【請求項10】
物品の提供方法であって、
前記物品の色に基づいてタグを決定する工程であって、前記タグは、一般色覚者によって知覚される前記物品の色を色弱者が知覚可能なで示す第一領域と、色弱者によって知覚される前記物品の色を一般色覚者が知覚可能なで示す第二領域と、の少なくとも一方を有する、前記決定する工程と、
前記決定する工程において決定されたタグを前記物品に付与する工程と、
前記タグが付与された物品を提供する工程と、
を含む、物品の提供方法。
【請求項11】
前記タグが、前記第一領域を有する、請求項10に記載の物品の提供方法。
【請求項12】
前記物品が衣類である、請求項10または11に記載の物品の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、タグおよび物品の提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カラー画像を出力する装置を開示する。この装置は、カラー画像から色弱者が識別困難な特定色の領域を抽出し、抽出された領域に特定色を明示する文字または記号を合成し、合成カラー画像を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-100312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、色覚多様性を考慮して物品の色を示す技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、物品に付与されるタグである。タグは、第一領域および第二領域の少なくとも一方を有する。第一領域は、一般色覚者によって知覚される物品の色を色弱者が知覚可能な態様で示す。第二領域は、色弱者によって知覚される物品の色を一般色覚者が知覚可能な態様で示す。
【0006】
この側面においては、一般色覚者によって知覚される物品の色が、色弱者が知覚可能な態様で示される。このため、このタグは一般色覚者の物品の見え方を色弱者に認識させることができる。あるいは、この側面においては、色弱者によって知覚される物品の色が、一般色覚者が知覚可能な態様で示される。このため、このタグは色弱者の物品の見え方を一般色覚者に認識させることができる。よって、このタグは色覚多様性を考慮して物品の色を示すことができる。
【0007】
本開示の他の側面は、物品の提供方法である。物品の提供方法は、決定する工程、付与する工程、および提供する工程を含む。決定する工程では、物品の色に基づいてタグが決定される。タグは、一般色覚者によって知覚される物品の色を色弱者が知覚可能な態様で示す第一領域と、色弱者によって知覚される物品の色を一般色覚者が知覚可能な態様で示す第二領域と、の少なくとも一方を有する。付与する工程では、決定する工程において決定されたタグが物品に付与される。提供する工程では、タグが付与された物品が提供される。
【0008】
この側面に係る方法は、上記の特徴を有するタグを用いることで、色覚多様性を考慮して物品の色を示すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の種々の側面によれば、色覚多様性を考慮して物品の色を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るタグが備わる衣類の一例を示す図である。
図2図2の(A)~図2の(E)それぞれは、実施形態に係るタグの一例を示す図である。
図3図3は、物品の提供方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、タグ決定装置の構成の一例を示す図である。
図5図5は、タグテーブルの一例を示す図である。
図6図6は、色変換装置の構成の一例を示す図である。
図7図7の(A)~図7の(E)それぞれは、種々の実施形態における色の示し方の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[色覚多様性の概要]
本開示に係るコンセプトは、色覚多様性を考慮して色を示す技術を提供することである。色覚多様性とは色の認識または識別が人々の間で異なる状況をいう。色覚が互いに異なる人々は色についての共通認識を持つことが困難である。このため、色覚が互いに異なる人々同士で色の認識または識別について相互理解を深めることが重要となる。
【0013】
色覚の種類として、C型(Common)、P型(Protanope)、D型(Deuteranope)、T型(Tritanope)、およびA型(Acromatic)という5種類が存在する。
【0014】
C型はL錐体、M錐体、およびS錐体の3種類の錐体を持つグループである。L錐体は、赤のような長波長付近の光に高い感度で反応する視細胞である。M錐体は、緑のような中波長付近の光に高い感度で反応する視細胞である。S錐体は、青のような短波長付近の光に高い感度で反応する視細胞である。日本人の場合には95%の男性および99%の女性がC型に属する。C型の人々は一般色覚者ともいわれる。
【0015】
一方、P型、D型、T型、およびA型の人々は色弱者ともいわれる。P型は、L錐体を持たないP型強度(Protanopia)と、L錐体の感度がずれてM錐体の感度と似るP型弱度(Protanomaly)とで構成されるグループである。D型は、M錐体を持たないD型強度(Deuteranopia)と、M錐体の感度がずれてL錐体の感度と似るD型弱度(Deuteranomaly)とで構成されるグループである。T型はS錐体を持たないグループである。A型は、1種類の錐体のみを持つかまたは錐体を全く持たないグループである。色弱者の中ではP型およびD型がほとんどを占め、T型およびA型の割合は極めて小さい。
【0016】
上述した共通認識または相互理解の促進の一例として、本開示は、一般色覚者が認識する色を色弱者に知覚させ、または、色弱者が認識する色を一般色覚者に知覚させる物理的なタグを提供する。タグは、色の共通認識または相互理解がC型、P型、およびD型の人々の間で促進されるように、設計されてもよい。本開示は、一般色覚者および色弱者の双方で同じように知覚される色を物品に使用する例も提供する。
【0017】
[タグの概要]
タグは、物品に付与され、物品の色に関する情報を示す。物品は、例えば、衣類、布、家具、小物などであり、色を有する物体であれば特に限定されない。衣類は、身につけるもの全般を指し、洋服、肌着、帽子、マフラー、手袋、履物なども含む。以下では物品が衣類である場合を一例として説明する。タグが付与されるとは、物品にタグが直接縫い付けられることだけでなく、値札のように紐で物品に取り付けられることを含む。あるいは、タグが付与されるとは、間接的に、つまり論理的に、タグと物品とが紐付くことであってもよい。
【0018】
図1は、実施形態に係るタグが備わる衣類の一例を示す図である。図1に示されるように、タグ1は衣類10に付与される。図1に示される例においては、タグ1は、衣類10の裏地に縫い付けられる。衣類10にはその他のタグ11が縫い付けられていてもよい。衣類10は色C1を有する。色C1は、所定のスペクトルを有しており、一般色覚者と色弱者とで異なる色として知覚される。スペクトルは、波長(nm)と反射率(%)との関係をプロットしたものである。
【0019】
図2の(A)~図2の(E)それぞれは、実施形態に係るタグの一例を示す図である。図2の(A)に示されるタグ1は、第一領域R1および第二領域R2を有する。第一領域R1は、色弱者向けの情報を表示する領域である。第一領域R1は、一般色覚者の色C1の見え方を色弱者向けに示す情報を含む。より具体的な一例として、第一領域R1は、第一色E1を有する衣類の図形が表示される。第一色E1は、第一領域R1を視認した色弱者の色覚系の応答が衣類10を視認した一般色覚者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する。「両者の応答が一致する」とは、両者の応答の差が0になることだけではなく、所定の閾値以下となることをいう。つまり、一致には所定の近似範囲が含まれ、閾値は試験で決定することができる。第一領域R1によって、色弱者は一般色覚者の衣類10の見え方を認識できる。第一領域R1は、第一色E1を示す文字、記号などを追加的に含んでもよい。第一領域R1は、第一色E1を含まずに、第一色E1を示す文字、記号などで構成されてもよい。例えば、第一領域R1は、「赤」「青」などの文字だけを含んでもよいし、「R」「G」などの記号だけを含んでもよい。
【0020】
第二領域R2は、一般色覚者向けの情報を表示する領域である。第二領域R2は、色弱者の色C1の見え方を一般色覚者向けに示す情報を含む。より具体的な一例として、第二領域R2は、第二色F1を有する衣類の図形が表示される。第二色F1は、第二領域R2を視認した一般色覚者の色覚系の応答が衣類10を視認した色弱者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する。「両者の応答が一致する」とは、両者の応答の差が0になることだけではなく、所定の閾値以下となることをいう。つまり、一致には所定の近似範囲が含まれ、閾値は試験で決定することができる。第二領域R2によって、一般色覚者は色弱者の衣類10の見え方を認識できる。第二領域R2は、第二色F1を示す文字、記号などを追加的に含んでもよい。第二領域R2は、第二色F1を含まずに、第二色F1を示す文字、記号などで構成されてもよい。例えば、第二領域R2は、「赤」「青」などの文字だけを含んでもよいし、「R」「G」などの記号だけを含んでもよい。
【0021】
タグ1は、第一領域R1および第二領域R2の少なくとも一方を有していればよい。例えば、図2の(B)に示されるように、タグ1Aは色弱者向けの情報のみを表示するため、タグ1Aは第一領域R1のみを有するといえる。第一領域R1に表示される情報は、種々の態様で表示されてもよい。例えば、図2の(C)に示されるように、タグ1Bは、色弱者が知覚可能な複数の色E11,E12を含む。複数の色E11,E12は、混ぜ合わされることによって一般色覚者によって知覚される第一色E1となる色である。例えば、第一色E1がピンク色である場合には、色E11は白色、色E12は赤色とすることができる。このように、組み合わせの元として表示される色は単純化(原色化)できる。このため、タグ1Bは、色弱者にとって認識しやすい態様で一般色覚者によって知覚される第一色E1を示すことができる。
【0022】
複数の色E11,E12それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色であってもよい。つまり、複数の色E11,E12それぞれは、色弱者も一般色覚者もほぼ同じ色として知覚できる色である。所定範囲は、試験で決定することができる。以下本開示では、色弱者も一般色覚者もほぼ同じ色として知覚できる色をユニバーサルカラーという。ユニバーサルカラーとすることで、タグ1Bは、タグ1Bに記載された色弱者向けの情報を一般色覚者に対しても理解させることができる。
【0023】
タグ1は、第二領域R2のみを有していてもよい。図2の(D)に示されるように、タグ1Cは一般色覚者向けの情報のみを表示するため、タグ1Cは第二領域R2のみを有するといえる。第二領域R2に表示される情報は、種々の態様で表示されてもよい。例えば、図2の(E)に示されるように、タグ1Dは、一般色覚者が知覚可能な複数の色F11,F12を含む。複数の色F11,F12は、混ぜ合わされることによって色弱者によって知覚される第二色F1となる色である。例えば、第二色F1が空色である場合には、色F11は白色、色F12は青色とすることができる。このように、組み合わせの元として表示される色は単純化(原色化)される。このため、タグ1Dは、一般色覚者にとって認識しやすい態様で色弱者によって知覚される第二色F1を示すことができる。
【0024】
複数の色F11,F12それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色であってもよい。所定範囲は、試験で決定することができる。ユニバーサルカラーとすることで、タグ1Dは、タグ1Dに記載された一般色覚者向けの情報を色弱者に対しても理解させることができる。
【0025】
図2の(C)を用いて説明された複数の色E11,E12、および、図2の(E)を用いて説明された複数の色F11,F12は、図2の(A)に示されるタグ1にも適用可能である。よって、第一領域R1および第二領域R2を有するタグ1、タグ1において複数の色の組み合わせの表示を提供するタグ(図示せず)、第一領域R1のみを有するタグ1A、タグ1Aにおいて複数の色の組み合わせの表示を提供するタグ1B、第二領域R2のみを有するタグ1C、タグ1Cにおいて複数の色の組み合わせの表示を提供するタグ1Dの合計六種類のタグが例示される。
【0026】
なお、タグから色に関する情報を取得するためには、衣類10の色を知覚しようとする人が、タグが第一領域R1および第二領域R2のどちらの領域を含んでいるのか、あるいは両方の領域を含んでいるのかを知る必要がある。タグが両方の領域を含む場合、衣類10の色を知覚しようとする人は、どの領域が第一領域R1であり、どの領域が第二領域R2であるのかを知る必要がある。これらの情報は、タグに記載されてもよいし、説明情報として物品に別途付与されてもよいし、物品の売り場などにおいて掲示されることで周知されてもよい。
【0027】
[物品の提供方法の概要]
図3は、物品の提供方法の一例を示すフローチャートである。図3に示される提供方法M1は、タグを決定する工程(ステップS10)、タグを付与する工程(ステップS12)、および、物品を提供する工程(ステップS14)を含む。
【0028】
タグを決定する工程(ステップS10)においては、装置または人が、物品の色に基づいて、物品に付与されるタグを決定する。最初に、装置がタグを決定する場合を説明する。
【0029】
図4は、タグ決定装置の構成の一例を示す図である。図4に示されるタグ決定装置100は、一つのコンピュータ、または通信ネットワークにより互いに接続された複数のコンピュータにより構成される。コンピュータは、一般にハードウェア装置としてプロセッサ、メモリ、通信インタフェース、入力装置、および出力装置を備える。プロセッサの例としてCPUおよびGPUが挙げられる。メモリはフラッシュメモリ、ハードディスクなどにより構成される。通信インタフェースはネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。入力装置の例として、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、マイクロフォン、センサ、およびカメラが挙げられる。出力装置の例として、モニタ、タッチパネル、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、およびスピーカが挙げられる。タグ決定装置100は、一例として、プロセッサ101およびメモリ102を備える。メモリ102はタグテーブルTB1を予め記憶する。
【0030】
図5は、タグテーブルの一例を示す図である。図5に示されるタグテーブルTB1は、上述した六種類のタグが色ごとに用意されている場合のテーブルの一例である。図5に示されるように、タグテーブルTB1は、「物品の色」と「タグ識別子」とを関連付けたテーブルである。「タグ識別子」には、さらに、「情報の提示対象」、「複数色の表示」、「第一領域の色」、および「第二領域の色」が関連付けられる。
【0031】
図5に示される例においては、「物品の色」は衣類10の色を示す。「タグ識別子」は、タグを一意に特定する情報である。「情報の提示対象」は、タグに表示された情報が誰に向けられているのかを示す情報である。ここでは、色弱者向けの情報、一般色覚者向けの情報、および両方に向けた情報の3つに区分されている。「複数色の表示」は、複数の色の組み合わせで表示する態様の有無を示す情報である。「第一領域の色」は、第一領域R1に表示される色である。「第二領域の色」は、第二領域R2に表示される色である。
【0032】
続いて、タグ決定装置100の動作を説明する。最初に、プロセッサ101は、衣類10の色情報を受け付ける。プロセッサ101は、タグ決定装置100のユーザによって入力されることで色情報を受け付けてもよいし、画像センサが衣類10を撮像して認識した色情報を受け付けてもよい。続いて、プロセッサ101は、メモリ102のタグテーブルTB1を参照し、受け付けた色情報に基づいてタグを決定する。プロセッサ101は、決定されたタグをタグ決定情報として出力する。
【0033】
例えば、プロセッサ101が物品の色「C1」を受け付けた場合、プロセッサ101は、タグテーブルTB1を参照し、物品の色「C1」に関連付けられたタグ識別子「T1」~「T6」を取得する。プロセッサ101は、タグ識別子「T1」~「T6」の中から一つのタグ識別子を選択し、タグ決定情報として出力する。例えば、プロセッサ101は、タグ決定装置100のユーザに対して、「情報の提示対象」および「複数色の表示」を問い合わせ、ユーザの回答に基づいて一つのタグ識別子を選択する。例えば、情報の提示対象が「色弱者向け」であり、複数色の表示が「無」とするユーザの回答である場合、プロセッサ101は、タグ識別子「T3」を選択する。これにより、図2の(B)に示されるタグ1Aが選択されることになる。
【0034】
プロセッサ101は、ユーザによって予め入力された「情報の提示対象」および「複数色の表示」を用いて、一つのタグ識別子を選択してもよい。プロセッサ101は、ランダムに一つのタグ識別子を選択してもよい。以上の動作によって、図3に示されるタグを決定する工程(ステップS10)が終了する。人がタグを決定する工程(ステップS10)を実行する場合には、例えば図5に示されるタグテーブルTB1を参照して物品の色に応じたタグを選択すればよい。
【0035】
タグを決定する工程が終了した場合、タグを付与する工程(ステップS12)が実行される。タグを付与する工程においては、装置または人が、ステップS10で決定されたタグを衣類10に付与する。タグを付与する工程が終了した場合、物品を提供する工程(ステップS14)が実行される。物品を提供する工程においては、装置または人が、タグが付与された衣類10を提供する。提供には、搬送、展示、譲渡、販売などが含まれる。
【0036】
以上で図3に示されるフローチャートは終了する。図3に示されるフローチャートが実行されることにより、物品の色に対応したタグが物品に付与される。
【0037】
[タグに表示される色]
第一領域R1および第二領域R2に表示される色は、物品の色に基づいて決定される。以下では、第一領域R1および第二領域R2に表示される色を決定する装置の構成および動作を概説する。以下では、物品の色をベース色といい、第一領域R1の色を第一色、第二領域R2の色を第二色という。第一色は、第一領域R1を視認した色弱者の色覚系の応答がベース色を知覚した一般色覚者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色である。第二色は、第二領域R2を視認した一般色覚者の色覚系の応答がベース色を知覚した色弱者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色である。
【0038】
図6は、色変換装置の構成の一例を示す図である。図6に示される色変換装置200は、一つのコンピュータ、または通信ネットワークにより互いに接続された複数のコンピュータにより構成される。色変換装置200は、プロセッサ201およびメモリ202を備える。メモリ202は、一般色覚者の錐体感度関数および色弱者の錐体感度関数を予め記憶する。錐体感度関数は、色覚系ともいい、L錐体、M錐体、およびS錐体のそれぞれの感度特性であり、波長および相対感度の関係を示す。錐体感度関数は、入力となるスペクトルの形状に応じて応答を出力する。錐体感度関数は、色覚の種類ごとに用意されてもよく、例えばP型の錐体感度関数とD型の錐体感度関数とが用意されてもよい。
【0039】
プロセッサ201は、ベース色の可視光領域のスペクトルを入力する。そして、プロセッサ201は、ベース色の可視光領域のスペクトルと、メモリ202に記憶された一般色覚者の錐体感度関数とに基づいて、L錐体、M錐体、およびS錐体のそれぞれの応答(3つの数字)を取得する。続いて、プロセッサ201は、ベース色の可視光領域のスペクトルと、メモリ202に記憶された色弱者の錐体感度関数とに基づいて、L錐体、M錐体、およびS錐体のそれぞれの応答(3つの数字)を取得する。そして、プロセッサ201は、色弱者の応答が一般色覚者の応答に近づくように(一致するように)、ベース色のスペクトルの形状の変更と、それに対応する色弱者の応答の取得とを繰り返す。これにより、色弱者の応答と一般色覚者の応答とが一致するスペクトルが得られる。このようにして得られたスペクトルの色が上述した第一色である。
【0040】
第二色のスペクトルは、第一色と同様に決定できる。つまり、プロセッサ201は、一般色覚者の応答が色弱者の応答に近づくように(一致するように)、ベース色のスペクトルの形状の変更とそれに対応する一般色覚者の応答の取得とを繰り返す。これにより、一般色覚者の応答と色弱者の応答とが一致するスペクトルが得られる。このようにして得られたスペクトルの色が上述した第二色である。
【0041】
次に、第一領域R1および第二領域R2に表示される複数の色であるユニバーサルカラーについて説明する。ユニバーサルカラーは、2つの色と考慮割合とに基づいて生成することができる。考慮割合は、色覚多様性の考慮の度合いであり、0%~100%の範囲内の数値である。2つの色は、考慮割合が0%の色、および考慮割合が100%の色である。考慮割合が0%の色は、ベース色である。考慮割合が100%の色は、色弱者の色覚系の応答がベース色を知覚した一般色覚者の色覚系の応答と一致する色であり、上述した第一色である。プロセッサ201は、考慮割合を入力し、入力された考慮割合になるように、ベース色(またはベース色のスペクトルを変化させた色)のスペクトルと、第一色のスペクトルとを、考慮割合に応じて線形結合し、考慮割合に対応するように変化させたスペクトルを出力する。ユニバーサルカラーは、一例として、考慮割合が20%またはそれに近い値で生成できる。プロセッサ201は、異なるやり方で考慮割合に対応するように変化させたスペクトルを出力してもよい。例えば、プロセッサ201は、ベース色のRGBを一定にするという条件下で、色弱者の応答が一般色覚者の応答に近づくように(一致するように)スペクトルの形状を変更した色を用意する。プロセッサ201は、用意された色よりも考慮割合が大きい色を作成する場合には、用意された色と、考慮割合が100%の色とを考慮割合に応じて線形結合し、考慮割合に対応するように変化させたスペクトルを出力する。
【0042】
[種々の実施形態]
色覚多様性を考慮して色を示す技術の種々の実施形態について説明する。図7の(A)~図7の(E)それぞれは、種々の実施形態における色の示し方の一例を示す図である。図2の(A)などに示されるタグ1は、衣類10に限定されるものではなく、図7の(A)に示されるように、ソファなどの家具に付与することもできる。あるいは、タグは文房具などの小物に付与されてもよい。これにより、家具または小物の色についても、色弱者および一般色覚者の相互理解を深めることができる。
【0043】
本開示で示された第一色は、タグを用いることなく衣類に適用されてもよい。例えば、図7の(B)に示されるように、色C1の衣類の裏地を、第一色E1とすることができる。これにより、リバーシブルの衣類において、表裏の色に関係性を持たせることができ、色弱者および一般色覚者の相互理解を深めることができる。
【0044】
本開示で示されたユニバーサルカラーは、種々の物品に適用できる。例えば、図7の(C)に示されるように、衣類の色にユニバーサルカラーUC1を採用してもよい。あるいは、図7の(D)に示されるように、布の色にユニバーサルカラーUC1,UC2,UC3を採用してもよい。さらに、図7の(E)に示されるように、企業のロゴなどをユニバーサルカラーUC1で記載してもよい。これにより、色弱者および一般色覚者の色の認識の差を小さくすることができる。
【0045】
[変形例]
以上、本開示での実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0046】
図2の(C)および図2の(E)に示されるタグでは、複数の色とともに第一色E1および第二色F1を表示しているが、複数の色のみを表示してもよい。
【0047】
図5においては一つの色に対して六種類のタグが用意されている例を説明したが、一つの色に対するタグの種類の数は特に限定されず、例えばタグは一つの色に対して一種類だけでもよい。一つの色に対してタグが一種類だけである場合、図5に示されるタグテーブルTB1は、「物品の色」および「タグ識別子」の列だけで構成してもよい。
【0048】
第一領域R1および第二領域R2は、QRコード(登録商標)などを利用して間接的に色を示してもよい。
【0049】
色変換装置200は、ユニバーサルカラーを採用しない場合には、考慮割合を取得および利用しなくてもよい。メモリ202にP型の錐体感度関数とD型の錐体感度関数とが記憶されている場合には、色変換装置200は、色弱者の情報を受け付けて、使用する錐体感度関数を決定すればよい。
【0050】
本開示に係る物品は、種々のカテゴリーに分類される。カテゴリーは、例えば、衣食住、被服/ファッション、学校/子ども、ブランド/広告、おもちゃ、その他を含む。これらのカテゴリーに含まれる具体的な物品の例は以下の通りである。衣食住に関連する物品は、例えば、衣服、着色料を含む食品、食器、テーブルクロス、壁紙、家具、寝具などである。衣食住に関連する物品は、壁紙、家具、寝具などと照明とを組み合わせたものでもよい。被服/ファッションに関連する物品は、例えば、傘、帽子、ヘアピン、ヘアゴム、カチューシャ、ヘアバンド、眼鏡、サングラス、イヤリング、ピアス、イヤフォン、化粧品、ネイルアートに関する物品(マニキュア、ジェル、シールなど)、ネックレス、ネクタイ、スカーフ、マフラー、ショール、タイピン、インナートップス、アウタートップス、インナーボトムス、アウターボトムス、手袋、リストバンド、ブレスレット、時計、スマートウォッチ、指輪、スマホケース、鞄、ベルト、靴下、レギンス、タイツ、ストッキング、アンクレット、靴、サンダル、下駄、スリッパ、団扇、扇子、ハンカチ、タオルなどである。学校/子どもに関連する物品は、例えば、文房具、ノート、レターセット、道具入れ、ランドセル、教科書/教材、制服、体操着、上履き、絵の具セット、弁当箱、クレヨン、付箋、ファイル、バインダーなどである。ブランド/広告に関連する物品は、例えば、ロゴが付与された物品、看板、広告に係る物品、パッケージ(飲料、菓子、本の表紙、CDジャケット)などである。おもちゃに関連する物品は、例えば、ぬいぐるみ/人形、おままごと用品、粘土(クレイ)などである。その他の物品は、例えば、キャンドル、石鹸、名刺などである。このように、本開示に係る物品は多岐にわたり、各カテゴリーにおいて具体的な物品が含まれる。これにより、様々な用途又はシーンに対応することが可能である。
【0051】
[付記]
上記の様々な例から把握されるとおり、本開示は以下に示す態様を含む。
(付記1)
物品に付与されるタグであって、
一般色覚者によって知覚される前記物品の色を色弱者が知覚可能な態様で示す第一領域と、色弱者によって知覚される前記物品の色を一般色覚者が知覚可能な態様で示す第二領域と、の少なくとも一方を有する、タグ。
(付記2)
前記第一領域は、前記第一領域を視認した色弱者の色覚系の応答が前記物品を視認した一般色覚者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色を含む、付記1に記載のタグ。
(付記3)
前記第二領域は、前記第二領域を視認した一般色覚者の色覚系の応答が前記物品を視認した色弱者の色覚系の応答と一致するように構成されたスペクトルを有する色を含む、付記1または2に記載のタグ。
(付記4)
前記第一領域は、色弱者が知覚可能な複数の色であって、前記複数の色を混ぜることによって一般色覚者によって知覚される前記物品の色となる前記複数の色を含む、付記1~3のいずれか一つに記載のタグ。
(付記5)
色弱者が知覚可能な複数の色それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色である、付記4に記載のタグ。
(付記6)
前記第二領域は、一般色覚者が知覚可能な複数の色であって、前記複数の色を混ぜることによって色弱者によって知覚される前記物品の色となる前記複数の色を含む、付記1~5のいずれか一つに記載のタグ。
(付記7)
一般色覚者が知覚可能な複数の色それぞれは、色弱者の色覚系の応答と一般色覚者の色覚系の応答との差が所定範囲内となる色である、付記6に記載のタグ。
(付記8)
前記タグが、前記第一領域を有する、付記1または2に記載のタグ。
(付記9)
前記物品が衣類である、付記1~8のいずれか一つに記載のタグ。
(付記10)
物品の提供方法であって、
前記物品の色に基づいてタグを決定する工程であって、前記タグは、一般色覚者によって知覚される前記物品の色を色弱者が知覚可能な態様で示す第一領域と、色弱者によって知覚される前記物品の色を一般色覚者が知覚可能な態様で示す第二領域と、の少なくとも一方を有する、前記決定する工程と、
前記決定する工程において決定されたタグを前記物品に付与する工程と、
前記タグが付与された物品を提供する工程と、
を含む、物品の提供方法。
(付記11)
前記タグが、前記第一領域を有する、付記10に記載の物品の提供方法。
(付記12)
前記物品が衣類である、付記10または11に記載の物品の提供方法。
【0052】
付記1に係るタグによれば、一般色覚者によって知覚される物品の色が、色弱者が知覚可能な態様で示される。このため、このタグは一般色覚者の物品の見え方を色弱者に認識させることができる。色弱者は物品の色の選択を間違えなくなり、色弱者に色の選択に自信を持たせることができる。あるいは、このタグによれば、色弱者によって知覚される物品の色が、一般色覚者が知覚可能な態様で示される。このため、このタグは、色弱者の物品の見え方を一般色覚者に認識させることができる。よって、このタグは色覚多様性を考慮して物品の色を示すことができる。
【0053】
付記2によれば、タグは、一般色覚者の物品の見え方を色弱者に色で知覚させることができる。
【0054】
付記3によれば、タグは、色弱者の物品の見え方を一般色覚者に色で知覚させることができる。
【0055】
付記4によれば、タグは、色弱者に認識しやすい態様で、一般色覚者によって知覚される物品の色を示すことができる。
【0056】
付記5によれば、色弱者と一般色覚者との間で認識の差が小さい色が採用されることにより、タグは、タグに記載された色弱者向けの情報を一般色覚者に対しても理解させることができる。
【0057】
付記6によれば、タグは、一般色覚者に認識しやすい態様で、色弱者によって知覚される物品の色を示すことができる。
【0058】
付記7によれば、色弱者と一般色覚者との間で認識の差が小さい色が採用されることにより、タグは、タグに記載された一般色覚者向けの情報を色弱者に対しても理解させることができる。
【0059】
付記8によれば、タグは、一般色覚者の物品の見え方を色弱者に認識させることができる。
【0060】
付記9によれば、タグは、一般色覚者の衣類の見え方を色弱者に認識させることができる。あるいは、タグは、色弱者の衣類の見え方を一般色覚者に認識させることができる。
【0061】
付記10に係る方法は、上記の特徴を有するタグを用いることで、色覚多様性を考慮して物品の色を示すことができる。
【0062】
付記11に係る方法は、一般色覚者の物品の見え方を色弱者に認識させることができる。
【0063】
付記12に係る方法は、一般色覚者の衣類の見え方を色弱者に認識させることができる。あるいは、付記12に係る方法は、色弱者の衣類の見え方を一般色覚者に認識させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A,1B,1C,1D…タグ、R1…第一領域、R2…第二領域。
【要約】
物品に付与されるタグであって、一般色覚者によって知覚される物品の色を色弱者が知覚可能な態様で示す第一領域と、色弱者によって知覚される物品の色を一般色覚者が知覚可能な態様で示す第二領域と、の少なくとも一方を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7