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特許7673903RT-LAMP法による植物ウイルスの検出法及び検出用キット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-28
(45)【発行日】2025-05-09
(54)【発明の名称】RT-LAMP法による植物ウイルスの検出法及び検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6888 20180101AFI20250430BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20250430BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20250430BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20250430BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20250430BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6895 Z
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021029391
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2021137003
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020032748
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.刊行物名:第64回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨集,第94頁,J218 発行日 :令和2年(2020年)2月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2.刊行物名:令和2年度日本植物病理学会大会プログラム・講演要旨予稿集,第125頁,437 発行日 :令和2年(2020年)3月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 3.刊行物名:令和2年度日本植物病理学会大会プログラム・講演要旨予稿集,第125頁,438 発行日 :令和2年(2020年)3月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 4.掲載アドレス:https://service.dynacom.jp/acpartner/ppsjkanto/kouen/kouen.php 掲載日 :令和2年(2020年)9月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 5.掲載アドレス:https://service.dynacom.jp/acpartner/ppsjkanto/kouen/kouen.php 掲載日 :令和2年(2020年)9月28日~9月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 6.刊行物名:令和2年度日本植物病理学会関西部会プログラム・講演要旨予稿集,第51頁,302 発行日 :令和2年(2020年)10月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 7.掲載アドレス:http://kansaibukai.shimane-u.ac.jp/list.html https://service.dynacom.jp/acpartner/ppsjkansai/kouen/kouen.php 掲載日 :令和2年(2020年)11月7日~11月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 8.刊行物名:果実日本,第75巻第12号,第64~66頁 発行日 :令和2年(2020年)12月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 9.掲載アドレス:https://apsjournals.apsnet.org/doi/abs/10.1094/PDIS-09-20-2035-PDN 掲載日 :令和2年(2020年)12月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 10.掲載アドレス:http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/LC554756/?filetype=html 掲載日 :令和2年(2020年)12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 11.掲載アドレス:http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/LC554757/?filetype=html 掲載日 :令和2年(2020年)12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 12.掲載アドレス:http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/LC554758/?filetype=html 掲載日 :令和2年(2020年)12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 13.掲載アドレス:http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/LC554759/?filetype=html 掲載日 :令和2年(2020年)12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 14.掲載アドレス:http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/LC554760/?filetype=html 掲載日 :令和2年(2020年)12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 15.掲載アドレス:https://www.pref.aichi.jp/soshiki/nososi/2020nougyousougousikennjou-10daiseika.html 掲載日 :令和2年(2020年)12月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 16.掲載アドレス:https://www.pref.aichi.jp/shokuiku/report/backnumber.html 掲載日 :令和3年(2021年)1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良地
(72)【発明者】
【氏名】千秋 祐也
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 広宣
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013169(JP,A)
【文献】日本植物病理学会大会プログラム・講演要旨予稿集,2018, Vol.2018, p.72, #216
【文献】日本植物病理学会報 関東部会講演要旨,2019, Vol.85, No.1, pp.46-56
【文献】J. Gen. Plant Pathol.,2015, Vol.81, pp.382-389
【文献】Applied Entomology and Zoology,2018, Vol.53, pp.463-474
【文献】ウイルス,2017, Vol.67, No.1,pp.37-48
【文献】Arch. Virol.,2010, Vol.155, pp.987-991
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配列番号2~5記載の塩基配列から成るニホンナシ退緑斑点随伴ウイルス(JPCSaV)のRNA2~RNA5のいずれか1つに対するF3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー及びBIPプライマー、又は前記4つのプライマーとFloopプライマー及び/又はBloopプライマーとを含む、JPCSaVに特異的な塩基配列をRT-LAMPにより増幅するためのプライマーセット。
【請求項2】
JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号18記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号19記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号20記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号21記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項3】
配列番号22記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、請求項2記載のプライマーセット。
【請求項4】
JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号23記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号24記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号25記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号26記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項5】
配列番号27記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号28記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、請求項4記載のプライマーセット。
【請求項6】
JPCSaVのRNA3に対する、
配列番号29記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号30記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号31記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号32記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項7】
配列番号33記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、請求項6記載のプライマーセット。
【請求項8】
JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号34記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号35記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号36記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号37記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項9】
配列番号38記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、請求項8記載のプライマーセット。
【請求項10】
JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号39記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号40記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号41記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号42記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項11】
配列番号43記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号44記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、請求項10記載のプライマーセット。
【請求項12】
JPCSaVのRNA5に対する、
配列番号45記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号46記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号47記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号48記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、請求項1記載のプライマーセット。
【請求項13】
配列番号49記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、請求項12記載のプライマーセット。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載のプライマーセットを含む、RT-LAMPによるJPCSaV検出又はJPCSaV感染診断用キット。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項記載のプライマーセット又は請求項14記載のキットを用いて、JPCSaVの標的核酸領域の増幅反応をRT-LAMPにより行う工程を含む、JPCSaV検出又はJPCSaV感染診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナシの病害「モザイク症」の病原と考えられるニホンナシ退緑斑点随伴ウイルス(Japanese pear chlorotic spot-associated virus:JPCSaV)を検出する遺伝子診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニホンナシの葉に退緑斑点を生じる「モザイク症」は、2010年に熊本県での発生が確認された(非特許文献1)。退緑斑点のほか、著しい場合には早期落葉や、枝表面や果柄部のえそが観察される。「モザイク症」は、本発明者等の調査では、2019年までに秋田県までを含む全国各地のニホンナシ生産圃場で発生が確認されている。「モザイク症」は従来、ナシにさび症状を引き起こすニセナシサビダニの寄生との相関があることが報告されていたが、一方でその症状から、何らかの植物ウイルスの感染が関与している可能性が考えられてきた。本発明者等は、モザイク症を呈するニホンナシから、フィモウイルス科エマラウイルス属と考えられる新種のウイルスを見出し、RNA1の全長配列を明らかにし、Japanese pear mosaic-associated virus(JPMaV)と命名し、平成30年度日本植物病理学会大会において学会発表を行った(非特許文献2)(配列自体は未公表)。本配列はモザイク症を示す全国各地のニホンナシのほか、モザイク症に類似する症状を示すセイヨウナシからも検出されることが報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】杉浦直幸 (2015) ニセナシサビダニによるナシのモザイク症状(仮称)と発生消長. https://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.ashx?c_id=3&id=9980&sub_id=2&flid=32942
【文献】千秋祐也ら (2018) ニホンナシのモザイク症葉から検出されるエマラウイルス様の塩基配列. 平成30年度日本植物病理学会大会
【文献】谷澤颯太ら (2018) 新潟県のセイヨウナシのモザイク症に関連して検出されたエマラウイルス様の配列. 平成30年度日本植物病理学会関東部会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の実情に鑑み、JPMaVのRNA1以外の全長ゲノム塩基配列を解読し、それらの配列を元に、プライマーを設計し、RT-LAMPによる検出・診断法を作製することで、当該ウイルスを的確に検出・診断できる手法を提供することを目的とする。
【0005】
なお、JPMaVとの名称について、ナシ葉での症状をより正確に表現するため、ニホンナシ退緑斑点随伴ウイルス(Japanese pear chlorotic spot-associated virus:JPCSaV)と改名することとし、以下、「JPCSaV」と称する。さらに、「JPCSaV」を、ナシ葉退緑斑点随伴ウイルス(pear chlorotic leaf spot-associated virus;PCLSaV)と称する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、RNA1に加えて、JPCSaVのRNA2~5の塩基配列を同定すると共に、同定したJPCSaVのRNA分節の塩基配列に対応するRT-LAMP用プライマーを設計し、それらのプライマーとRT-LAMPの手法を用いることで、JPCSaVを特異的に且つ高感度で検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)それぞれ配列番号1~5記載の塩基配列から成るJPCSaVのRNA1~RNA5のいずれか1つに対するF3プライマー、B3プライマー、FIPプライマー及びBIPプライマー、又は前記4つのプライマーとFloopプライマー及び/又はBloopプライマーとを含む、JPCSaVに特異的な塩基配列をRT-LAMPにより増幅するためのプライマーセット。
(2)JPCSaVのRNA1に対する、
配列番号6記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号7記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号8記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号9記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(3)配列番号10記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号11記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、(2)記載のプライマーセット。
(4)JPCSaVのRNA1に対する、
配列番号12記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号13記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号14記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号15記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(5)配列番号16記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号17記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、(4)記載のプライマーセット。
(6)JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号18記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号19記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号20記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号21記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(7)配列番号22記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、(6)記載のプライマーセット。
(8)JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号23記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号24記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号25記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号26記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(9)配列番号27記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号28記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、(8)記載のプライマーセット。
(10)JPCSaVのRNA3に対する、
配列番号29記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号30記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号31記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号32記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(11)配列番号33記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、(10)記載のプライマーセット。
(12)JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号34記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号35記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号36記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号37記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(13)配列番号38記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、(12)記載のプライマーセット。
(14)JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号39記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号40記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号41記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号42記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(15)配列番号43記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号44記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、(14)記載のプライマーセット。
(16)JPCSaVのRNA5に対する、
配列番号45記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号46記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号47記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号48記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、(1)記載のプライマーセット。
(17)配列番号49記載の塩基配列から成るFloopプライマーをさらに含む、(16)記載のプライマーセット。
(18)(1)~(17)のいずれか1記載のプライマーセットを含む、RT-LAMPによるJPCSaV検出又はJPCSaV感染診断用キット。
(19)(1)~(17)のいずれか1記載のプライマーセット又は(18)記載のキットを用いて、JPCSaVの標的核酸領域の増幅反応をRT-LAMPにより行う工程を含む、JPCSaV検出又はJPCSaV感染診断方法。
(20)(1)~(17)のいずれか1記載のプライマーセットと、
ニセナシサビダニのミトコンドリアCOI遺伝子に対する、
配列番号51記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号52記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号53記載の塩基配列から成るFIPプライマー;及び
配列番号54記載の塩基配列から成るBIPプライマー、
を含む、ニセナシサビダニに特異的な塩基配列をLAMPにより増幅するためのプライマーセットと、
を含む、JPCSaVに特異的な塩基配列をRT-LAMPにより増幅し、且つニセナシサビダニに特異的な塩基配列をLAMPにより増幅するためのプライマーセットの組合せ物。
(21)ニセナシサビダニのミトコンドリアCOI遺伝子に対する、配列番号55記載の塩基配列から成るFloopプライマー及び/又は配列番号56記載の塩基配列から成るBloopプライマーをさらに含む、(20)記載のプライマーセットの組合せ物。
(22)(20)又は(21)記載のプライマーセットの組合せ物を含む、RT-LAMPによるJPCSaV検出若しくはJPCSaV感染診断とLAMPによるニセナシサビダニ検出のためのキット。
(23)(20)若しくは(21)記載のプライマーセットの組合せ物又は(22)記載のキットを用いて、JPCSaVの標的核酸領域の増幅反応をRT-LAMPにより行う工程とニセナシサビダニの標的核酸領域の増幅反応をLAMPにより行う工程とを含む、JPCSaV検出若しくはJPCSaV感染診断とニセナシサビダニ検出のための方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ナシの樹体から病害「モザイク症」の病原と考えられるJPCSaVを簡易且つ迅速に検出することができる。また、本発明によれば、ナシ園において感染樹を特定、除去し、新たな感染樹を生み出さないことや、果実、穂木等の輸出入の現場において、JPCSaVの感染の有無を速やかに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】JPCSaVのゲノムRNAの模式図を示す。
図2-1】JPCSaVのゲノムRNAの全長配列(JPCSaVの分節RNA1~RNA5の全長塩基配列)を示す。塩基配列は、5'から3'の向きで記す。下線の塩基配列はオープンリーディングフレームを示し、マイナス鎖RNAウイルスのため、C末端からN末端の向きになっている。
図2-2】図2-1の続きである。
図2-3】図2-2の続きである。
図2-4】図2-3の続きである。
図2-5】図2-4の続きである。
図2-6】図2-5の続きである。
図2-7】図2-6の続きである。
図3-1】本発明に係るプライマーリストを示す。
図3-2】図3-1の続きである。
図4】JPCSaVゲノム上における本発明に係るプライマーマップを示す。黒塗りと白抜きの矢尻はそれぞれF3プライマー及びB3プライマーを、それらに挟まれた白抜きの四角は増幅産物を示す。その下にプライマーセット名を記した。
図5-1】JPCSaVゲノム配列上における本発明に係るプライマー位置及び配列を示す。
図5-2】図5-1の続きである。
図5-3】図5-2の続きである。
図5-4】図5-3の続きである。
図5-5】図5-4の続きである。
図5-6】図5-5の続きである。
図5-7】図5-6の続きである。
図6-1】実施例1におけるRT-LAMP反応の結果を示す。「CS」は退緑斑点(chlorotic spot)葉、「H」は健全ナシ葉を示す。パネルAは濁度の増幅曲線グラフを、パネルBはLAMP反応時間(分)を示す。「nd」は非検出を示す。
図6-2】図6-1の続きである。
図6-3】図6-2の続きである。
図7】注射針法によるウイルスのサンプリングの様子を示す写真である。
図8】実施例1における簡易RT-LAMP法(注射針法)の結果を示す。括弧内の値は反応時間(分)を示す。「nd」は非検出を示す。
図9】実施例1におけるRT-LAMP反応後の反応チューブの色を示す写真である。パネルAは通常組成のRT-LAMP反応液を示し、パネルBはマラカイトグリーンを添加したRT-LAMP反応液を示す。各サンプルは以下の通りである:1:愛知CS-1、2:愛知 CS-2、3:愛知 H、4:茨城CS、5:茨城 H、6:イチジクFMV、7:シソ PMoV。
図10-1】各RT-LAMPプライマーの増幅領域における、PCLSaVの日本分離株(Ibarak-2018、Aichi-2020)及び中国分離株(FJ、HB、CG1)の部分配列のアラインメント及びRT-LAMPプライマーのアニーリング位置を示す。矢印は伸長方向を示す。
図10-2】図10-1の続きである。
図10-3】図10-2の続きである。
図10-4】図10-3の続きである。
図10-5】図10-4の続きである。
図10-6】図10-5の続きである。
図10-7】図10-6の続きである。
図10-8】図10-7の続きである。
図10-9】図10-8の続きである。
図10-10】図10-9の続きである。
図10-11】図10-10の続きである。
図10-12】図10-11の続きである。
図10-13】図10-12の続きである。
図11】実施例3におけるニセナシサビダニ内PCLSaVのRT-LAMP反応の結果を示す。個体「CS」は退緑斑点(chlorotic spot)葉から採取した個体を、「H」は健全ナシ葉から採取した個体を示す。
図12】ニセナシサビダニ検出用のLAMPプライマー(EC5)を示す。
図13】ニセナシサビダニのミトコンドリアCOI遺伝子上のEC5プライマーの位置を示す。
図14】実施例4におけるEC5プライマーを用いたニセナシサビダニのLAMP検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るプライマーセットは、JPCSaVに特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするRT-LAMP用プライマーを含む、RT-LAMPによりJPCSaVに特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットである。
【0011】
JPCSaVは、5分節(RNA1~5)から成る1本鎖(-)RNAをゲノムとする、フィモウイルス科エマラウイルス属に属する(-)1本鎖RNAウイルスである。
【0012】
本発明者等が配列決定したJPCSaVのRNA1~5の塩基配列に基づき作製したRT-LAMP用プライマーセットを用いたRT-LAMPによれば、ナシ由来のサンプル中のJPCSaVを高感度且つ迅速に検出することができる。また、本発明に係るプライマーセットを用いたRT-LAMPによれば、中国のナシにおいてモザイク症を呈する葉から検出されたPCLSaVも検出することができる。
【0013】
本発明に係るプライマーセットは、図1及び2に示す、それぞれ配列番号1~5記載の塩基配列から成るJPCSaVのRNA1~5のいずれか1つに対するRT-LAMP用プライマーを含む、JPCSaVに特異的な塩基配列をRT-LAMPにより増幅するためのプライマーセットである。本発明では、JPCSaVのRNA分節の塩基配列をDNAで示す(すなわち、JPCSaVのゲノムRNAの塩基配列を、UをTに変換してDNAで表示する)。
【0014】
本発明において、「JPCSaVのRNA分節に対するRT-LAMP用プライマー」とは、JPCSaVのRNA分節の塩基配列に基づいて設計された、RT-LAMPに使用されるプライマーを意味する。プライマー設計支援ソフトウェアPrimerExplorer V5(http://primerexplorer.jp/)を用いて、JPCSaVのRNA分節の配列情報に対してRT-LAMP用プライマーを設計することで、本発明に係るプライマーセットを得ることができる。
【0015】
本発明における核酸増幅法であるLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)は、納富らが開発した、PCR法で不可欠とされる温度制御が不要な核酸増幅法であるループ媒介等温増幅法(国際公開第00/28082号パンフレット;栄研化学株式会社ホームページ(http://loopamp.eiken.co.jp/lamp/))である。当該方法は、鋳型となるヌクレオチドに自身の3'末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とすると共に、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法である。また、LAMPでは、プライマーの3'末端が常にサンプルに由来する領域に対してアニールするために、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能するため、その結果として、高感度に且つ特異性の高い核酸増幅反応を可能としている。
【0016】
RT-LAMP(Reverse Transcription-Loop-Mediated Isothermal Amplification)は、標的遺伝子であるRNAからcDNAを合成しつつ、LAMPを行う核酸増幅法である。
【0017】
LAMPで使用されるプライマーは、鋳型核酸の塩基配列の計6領域、すなわち3'末端側からF3c、F2c、F1cという領域と、5'末端側からB3、B2、B1という領域の塩基配列を認識する少なくとも4種類のプライマーであって、各々インナープライマーF(FIP)及びB(BIP)とアウタープライマーF(F3)及びB(B3)と呼ぶ。また、F1c、F2c、F3cの相補配列をそれぞれF1、F2、F3、またB1、B2、B3の相補配列をB1c、B2c、B3cと呼ぶ。インナープライマーとは、標的塩基配列上の「ある特定のヌクレオチド配列領域」を認識し、且つ合成起点を与える塩基配列を3'末端に有し、同時にこのプライマーを起点とする核酸合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を5'末端に有するオリゴヌクレオチドである。ここで、「F2領域」及び「F1c領域」を含むプライマーをインナープライマーF(FIP)、そして「B2領域」及び「B1c領域」を含むプライマーをインナープライマーB(BIP)と呼ぶ。一方、アウタープライマーとは、標的塩基配列上の『「ある特定のヌクレオチド配列領域」の3'末端側に存在するある特定のヌクレオチド配列領域』を認識し、且つ合成起点を与える塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。ここで、「F3領域」を含むプライマーをアウタープライマーF(F3)、「B3領域」を含むプライマーをアウタープライマーB(B3)と呼ぶ。
【0018】
RT-LAMPでは、先ずJPCSaVのRNA分節に対して、FIPプライマーがアニーリングし、そこから逆転写酵素により相補的なcDNAを合成する。FIPプライマーは、JPCSaVのRNA分節上の「F2c領域」に相補的な「F2領域」を3'末端側に有し、且つ5'末端側にJPCSaVのRNA分節上の「F1c領域」と同一の領域を有する。
【0019】
次いで、FIPの外側に位置するF3プライマーがJPCSaVのRNA分節上の相補的な配列「F3c領域」に対してアニーリングし、逆転写酵素の作用により、既に合成されたFIPから伸長した一本鎖DNAを剥がす一方で、F3プライマーより伸長する。F3プライマーは、JPCSaVのRNA分節上の「F3c領域」に相補的な「F3領域」を有する。剥がされたFIPからの一本鎖DNAは、FIPが有する5'末端側の「F1c領域」と伸長部分の「F1領域」とが相補的であることから、自己アニーリングすることでループを形成することとなる。
【0020】
当該ループを形成した一本鎖DNAに、もう一方のインナープライマーであるBIPプライマーがアニーリングし、そこから鎖置換型DNA合成酵素の作用により伸長する。BIPプライマーは、JPCSaVのRNA分節上の「B2領域」と同一の領域を3'末端側に有し、且つ5'末端側にJPCSaVのRNA分節上の「B1領域」に相補的な「B1c領域」を有する。また、鎖置換型DNA合成酵素とは、伸長方向に二本鎖領域が存在する場合に、当該二本鎖を解離しながら、相補鎖合成を行うことができるDNA合成酵素を意味する。
【0021】
さらに、BIPプライマーの外側に位置するB3プライマーが当該ループを形成した一本鎖DNAにアニーリングし、鎖置換型DNA合成酵素の作用により、既に合成されたBIPプライマーからの一本鎖DNAを剥がす一方で、B3プライマーより伸長する。B3プライマーは、JPCSaVのRNA分節上の「B3領域」と同一の領域を有する。剥がされたBIPから伸長した一本鎖DNAは、両端でそれぞれに相補的な配列を有するので、それぞれが自己アニーリングすることでループを形成することとなる。すなわち、当該剥がされたBIPから伸長した一本鎖DNAは、両端にループを形成することでダンベル型構造となる。このダンベル型構造がLAMPにおける増幅サイクルの起点構造となり、一連の増幅サイクルが行われる。
【0022】
LAMPにおいては、インナープライマーとアウタープライマーに加え、さらにこれとは別のプライマー、すなわちループプライマー(Loop Primer)を用いることができる。ループプライマーFloop(LF)及び/又はBloop(LB)は、ダンベル型構造の5'末端側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的な塩基配列を持つプライマーである。このプライマーを用いると、核酸合成の起点が増加し、反応時間の短縮と検出感度の上昇が可能となる(国際公開第02/24902号パンフレット)。ループプライマーの塩基配列は上述のダンベル型構造の5'末端側のループ構造の一本鎖部分の塩基配列に相補的であれば、標的遺伝子の塩基配列又はその相補鎖から選ばれても良く、他の塩基配列でも良い。また、ループプライマーは1種類でも2種類でも良い。
【0023】
以上に説明したプライマーセットの各プライマーの長さは、10塩基以上、好ましくは15塩基以上で、化学合成あるいは天然のどちらでも良く、各プライマーは単一のオリゴヌクレオチドであってもよく、複数のオリゴヌクレオチドの混合物であってもよい。
【0024】
具体的な本発明に係るプライマーセットとして、図3~5に示すように、JPCSaVに特異的な塩基配列を迅速に増幅できるRT-LAMPのプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、JPCSaVのRNA1~5を標的配列として、以下の8組のプライマーセットを選定した。
【0025】
(1)プライマーセットR1LP1:
JPCSaVのRNA1に対する、
配列番号6記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号7記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号8記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号9記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号10記載の塩基配列から成るFloopプライマー;
配列番号11記載の塩基配列から成るBloopプライマー。
【0026】
(2)プライマーセットR1LP2:
JPCSaVのRNA1に対する、
配列番号12記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号13記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号14記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号15記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号16記載の塩基配列から成るFloopプライマー;
配列番号17記載の塩基配列から成るBloopプライマー。
【0027】
(3)プライマーセットR2LP3:
JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号18記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号19記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号20記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号21記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号22記載の塩基配列から成るFloopプライマー。
【0028】
(4)プライマーセットR2LP4:
JPCSaVのRNA2に対する、
配列番号23記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号24記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号25記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号26記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号27記載の塩基配列から成るFloopプライマー;
配列番号28記載の塩基配列から成るBloopプライマー。
【0029】
(5)プライマーセットR3LP5:
JPCSaVのRNA3に対する、
配列番号29記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号30記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号31記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号32記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号33記載の塩基配列から成るFloopプライマー。
【0030】
(6)プライマーセットR4LP6:
JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号34記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号35記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号36記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号37記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号38記載の塩基配列から成るFloopプライマー。
【0031】
(7)プライマーセットR4LP7:
JPCSaVのRNA4に対する、
配列番号39記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号40記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号41記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号42記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号43記載の塩基配列から成るFloopプライマー;
配列番号44記載の塩基配列から成るBloopプライマー。
【0032】
(8)プライマーセットR5LP8:
JPCSaVのRNA5に対する、
配列番号45記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号46記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号47記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号48記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号49記載の塩基配列から成るFloopプライマー。
【0033】
あるいは、各プライマーの配列番号で示される塩基配列において、1又は数個(例えば、1~10個)の塩基が欠失、置換又は付加した塩基配列を有し、且つLAMPにおけるそれぞれのプライマー機能を有するプライマーを代替的に含むことができる。
【0034】
また、本発明に係るプライマーセットは、単独で、又はRT-LAMPに必要な試薬と共に、RT-LAMPによるJPCSaV検出又はJPCSaV感染診断用キットとして提供することができる。RT-LAMPに必要な試薬としては、例えば鎖置換型DNA合成酵素、逆転写酵素、dNTP、緩衝液、滅菌水、反応生成物の検出に必要な試薬等が挙げられる。
【0035】
鎖置換型DNA合成酵素は、鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、例えばBst DNAポリメラーゼ(ニッポンジーン株式会社)、Bca(exo-)DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、Csa DNAポリメラーゼ(ニッポンジーン株式会社)、96-7 DNAポリメラーゼ(ニッポンジーン株式会社)等が挙げられる。
【0036】
逆転写酵素としては、RNAを鋳型としてDNAを合成する活性を有する酵素であれば特に限定されない。このような酵素としては、例えばAMV reverse transcriptase(プロメガ株式会社)、M-MLV reverse transcriptase(プロメガ株式会社)、Recombinant HIVの逆転写酵素、SuperscriptII/III/IV、ReverTraAce、Thermoscript、Ominiscript、Sensiscript等が挙げられる。
【0037】
またBca DNAポリメラーゼのように、逆転写酵素活性とDNAポリメラーゼ活性の両活性を有する酵素を用いると、RT-LAMPを1つの酵素で行うことができる。
【0038】
さらに、本発明は、以上に説明した本発明に係るプライマーセット又はキットを用いて、JPCSaVの標的核酸領域の増幅反応をRT-LAMPにより行い、JPCSaVを検出又は定量する、JPCSaV検出又はJPCSaV感染診断方法(以下、「本方法」と称する)に関する。換言すれば、当該検出又は定量により、JPCSaV感染の有無を検査又は評価することができる。
【0039】
本方法では、先ず、JPCSaV感染の有無の検出対象のナシ由来のサンプルからRNAを抽出及び精製する。ここで、ナシ由来のサンプルとしては、例えば植物体全体、植物器官(例えば葉、葉柄、花弁、茎、根、種子、果実等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞等が挙げられる。これらのサンプルは、モザイク症又は壊疽症状を呈しているものであっても、無病徴であってもよい。検出に最も適しているサンプルは葉であり、モザイク症の部位を用いることで検出率を高めることができる。また、ナシから採取したJPCSaVの媒介虫と推定されるニセナシサビダニ自体をサンプルとして良い。RNA抽出法としては、市販のRNA検出試薬を用いる方法や、トリス緩衝液や滅菌水と共にサンプルを摩砕、希釈して粗精製RNAを得る方法が挙げられる。さらに、簡易な方法として、つまようじ又は注射針等鋭利な器具の先端でサンプルを10数回程度突き、先端に付着した汁液をそのまま鋳型として用いることも可能である。
【0040】
次いで、得られた鋳型RNAをRT-LAMPに供する。RT-LAMPの反応液には、例えば、反応液25μl当たり、本発明に係るプライマーセットに含まれる各プライマー1.0~50pmol、鋳型RNA 0.02fg~4μg、鎖置換型DNA合成酵素0.5~15U(ユニット)、逆転写酵素1.0~10U、最終濃度1.0~10mMのdNTPが含まれる。また、RT-LAMPの増幅反応条件としては、例えば、温度60℃~70℃(好ましくは63℃~65℃)で15~90分(好ましくは20~40分)が挙げられる。
【0041】
RT-LAMP反応後の核酸増幅産物の検出には公知の技術が適用できる。例えば、核酸合成の副産物であるピロリン酸マグネシウムにより生成される濁度を肉眼で確認、あるいは、リアルタイム濁度測定装置(例えば、栄研化学株式会社製のLoopampEXIA)で光学的に確認する。また、予めマラカイトグリーンを反応液に添加し、RT-LAMPを行うことで、反応液の色(水色:増幅あり、無色:増幅無し)から目視による判定を容易にすることができる(Nzelu et al. 2014. Development of a loop-mediated isothermal amplification method for rapid mass-screening of sand flies for Leishmania infection. Acta Tropica 132:1-6.)。
【0042】
また、本発明は、以上に説明した本発明に係るJPCSaVに特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットと、ニセナシサビダニのミトコンドリアCOI遺伝子に対するニセナシサビダニに特異的な塩基配列をLAMPにより増幅するためのプライマーセットとの組合せ物に関する。当該組合せ物によれば、JPCSaVに特異的な塩基配列をRT-LAMPにより増幅する一方で、ニセナシサビダニに特異的な塩基配列をLAMPにより増幅し、ナシにおける保毒虫であるニセナシサビダニの発生状況、寄生や不在確認を行うことができる。
【0043】
ニセナシサビダニに特異的な塩基配列をLAMPにより増幅するためのプライマーセットとしては、以下のEC5プライマーセットが挙げられる:
EC5プライマーセット:
配列番号51記載の塩基配列から成るF3プライマー;
配列番号52記載の塩基配列から成るB3プライマー;
配列番号53記載の塩基配列から成るFIPプライマー;
配列番号54記載の塩基配列から成るBIPプライマー;
配列番号55記載の塩基配列から成るFloopプライマー;
配列番号56記載の塩基配列から成るBloopプライマー。
【0044】
あるいは、各プライマーの配列番号で示される塩基配列において、1又は数個(例えば、1~10個)の塩基が欠失、置換又は付加した塩基配列を有し、且つLAMPにおけるそれぞれのプライマー機能を有するプライマーを代替的に含むことができる。
【0045】
さらに、本発明は、当該プライマーセットの組合せ物を含む、RT-LAMPによるJPCSaV検出若しくはJPCSaV感染診断とLAMPによるニセナシサビダニ検出のためのキットに関する。当該キットは、上記でJPCSaV検出又はJPCSaV感染診断用キットにおいて説明した試薬等を含むことができる。
【0046】
また、本発明は、当該プライマーセットの組合せ物又は当該組合せ物を含むキットを用いて、JPCSaVの標的核酸領域の増幅反応をRT-LAMPにより行う工程とニセナシサビダニの標的核酸領域の増幅反応をLAMPにより行う工程とを含む、JPCSaV検出若しくはJPCSaV感染診断とニセナシサビダニ検出のための方法に関する。上記で本方法において説明したRT-LAMPに準じて、ニセナシサビダニの標的核酸領域の増幅反応をLAMPにより行うことができる。
【実施例
【0047】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1〕本発明に係るプライマーセットを用いたRT-LAMP法によるJPCSaVの検出
1.JPCSaVゲノムの全長塩基配列の解読
エマラウイルス属ウイルス(以下、「エマラウイルス」と称する)は、分節RNAを5~9本有することが知られているため、JPCSaVも、RNA1以外の分節を有するはずである。エマラウイルスは、1ウイルス種内では各分節RNAの5'及び3'末端の約12塩基の配列が分節間で共通することを利用し、RNA1の末端配列を標的とするプライマーを用いたRT-PCRにより、モザイク症葉から、全分節RNAを増幅し、大腸菌へのクローニングとシーケンスを行い、全長配列を決定した。
【0049】
分節RNAは計5本見出され、RNA1~RNA5と命名した(図1)。また、モザイク症ナシ葉から抽出したRNAに対し、次世代シーケンス技術により、網羅的解析を行い、エマラウイルス様の配列を有するRNAを探索したところ、上記RNA1~5と同様の配列が得られるとともに、それ以外にエマラウイルスと推定される配列は見出されなかった。
【0050】
2.RT-LAMP用プライマーの設計
PrimerExplorer V5(http://primerexplorer.jp/)を用いて、RNA1~RNA5の全長配列(図2)をもとに、RT-LAMP増幅に適したプライマーを設計した。RNA1、RNA2、RNA4から各2セット、RNA3、RNA5からは各1セットのプライマーを設計した(図3)。JPCSaVゲノム上のプライマー位置を図4及び図5に示す。
【0051】
3.RT-LAMP法の実施
モザイク症の症状である退緑斑点を示すナシ葉及び非発症のナシ葉、並びに、国内で発生しているエマラウイルスとしてイチジクモザイクウイルス(フィグモザイクウイルス:FMV)及びシソモザイクウイルス(PMoV)の2種を供試した。
【0052】
ナシ葉は、2019年に、茨城県つくば市の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門及び愛知県豊川市のナシ圃場の品種「幸水」から、退緑斑点症状を示す葉及び非発症葉をサンプリングした。イチジク及びシソ葉は、それぞれFMV及びPMoVに感染していることを事前に確認した葉をサンプルとした。
【0053】
ナシ葉からのRNA抽出は、Gambino et al. (2008)(Gambino et al. (2008) A rapid and effective method for RNA extraction from different tissues of grapevine and other woody plants. Phytochem. Anal. 19: 520-525.)に従って行い、イチジク及びシソ葉からのRNA抽出は、Trizol Reagent(ThermoScientific)により行った。
【0054】
RT-LAMPの反応液は、20 mM Tris-HCl(pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM (NH4)2SO4、0.1% Tween 20、0.8 M betaine(富士フィルム和光純薬)、10 mM MgSO4、1.4 mM dNTPs、0.2 μM F3及びB3プライマー、1.6 μM FIP及びBIPプライマー、0.8 μM FLoop及びBLoopプライマー、8 units Bst DNA polymerase(ニッポンジーン)、逆転写酵素の1 unit AMV reverse transcriptase(プロメガ)を混合し、1 μlの鋳型RNAを加えて総量20 μlとした。
【0055】
リアルタイム濁度計LA200(Teramecs)を用いて、63℃又は65℃で60分間のRT-LAMP反応を行い、核酸増幅の副産物であるピロリン酸マグネシウムによる濁度の生成を記録するとともに、濁度が0.1に達する時間(LAMP反応時間)を計測した(図6)。
【0056】
4.注射針を用いた簡易RT-LAMP法の実施
RT-LAMP法に使われる酵素はDNAの増幅阻害を受けにくいとされており、簡易に調製した試料でも供試できることがRT-LAMP法の長所の一つである。そこで、最も簡単な鋳型調製法として注射針法が適用可能かを調査した。
【0057】
上記と同様に茨城県つくば市の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門及び愛知県豊川市のナシ圃場の品種「幸水」から採取した退緑斑点症状を示す葉及び非発症葉に、注射針23G(テルモ)を10回程度突き刺した(図7)。汁液が付着した針の先端を上記と同様に調製した反応液に浸し、63℃で60分間RT-LAMP反応を行った(図8)。プライマーセットはR2LP4を用いた。対照として、FMVが感染したイチジク葉及びPMoVが感染したシソ葉についても同様に処理した。
【0058】
5.目視によるRT-LAMP反応の判定
RT-LAMP反応の陽性又は陰性の確認は、上記のように濁度計を使う方法の他に、目視で反応液が白濁しているかそうでないかを観察するだけでも可能である。しかし、反応液の白濁は概して見難いため、HNB試薬やマラカイトグリーンを添加することで、目視による判定を容易にすることができる。
【0059】
そこで、上記の茨城県つくば市の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門及び愛知県豊川市のナシ圃場の品種「幸水」から採取した退緑斑点症状を示す葉及び非発症葉の全RNAを鋳型として、マラカイトグリーンを添加してRT-LAMP反応を行い、目視による判定が可能かを調査した。
【0060】
予めマラカイトグリーンを終濃度0.008%となるよう反応液に添加し、その他の組成は上記と同様に調製して、恒温器を用いて63℃でRT-LAMP反応を行った。プライマーセットはR2LP4を用いた。60分後に恒温器からチューブを取り出し、反応液の色が水色なら陽性、無色なら陰性と判定した(図9)。
【0061】
6.考察
図6に示したグラフでは、供試した8種のプライマーセットの全てで、愛知及び茨城の退緑斑点症ナシ葉から陽性反応が確認できた。また、R2LP3以外は、健全葉、FMV感染イチジク葉及びPMoV感染シソ葉では濁度が検出されなかった。R2LP3は愛知の健全葉で約57分に濁度が検出されたが、これは30分以内に生じる典型的な陽性反応とは明確に区別できるため、実用上問題はないと考えられた。8種のプライマーセットのうち、比較的反応時間が早いR2LP4及びR4LP6が特異的検出に最も適していると考えられた。
【0062】
図8では、R2LP4プライマーセットを用いた注射針法による簡易RT-LAMPの結果を示したが、退緑斑点症状を示す葉の全てから20分前後で陽性反応が確認でき、健全葉、FMV感染イチジク葉、PMoV感染シソ葉からは反応は生じなかった。このことから、JPCSaVの検出に注射針法を適用できると考えられた。
【0063】
図9は、図6と同じサンプルを用いたLAMP反応後の反応液の画像である。愛知及び茨城の退緑斑点症状を示す葉では反応液が白濁又は水色となり、目視でも判定可能だった。特にマラカイトグリーンを添加した場合は明らかに視認性が向上しており、陽性又は陰性の判定が容易になると考えられた。
【0064】
以上のことから、本発明に係るプライマーセットを用いたRT-LAMPは、JPCSaVの検出・診断法として実用性を有すると判断した。
【0065】
〔実施例2〕RT-LAMPプライマーによるPCLSaV日本分離株及び中国分離株のLAMP検出の可能性
各RT-LAMPプライマーの増幅領域における、PCLSaVの日本分離株(Ibarak-2018、Aichi-2020)及び中国分離株(FJ、HB、CG1)の部分配列のアラインメント及びRT-LAMPプライマーのアニーリング位置を図10に示す。
【0066】
LAMP(RT)反応はFIPのF2領域又はBIPのB2領域がターゲットの配列にアニーリングして増幅反応がスタートする。従ってF2又はB2領域の3'末端、F1c又はB1c領域の5'末端、F3又はB3領域の3'末端に変異がある場合は、増幅反応が阻害されることがある。各RT-LAMPプライマーのアニーリング部位について、これらの配列の5塩基目までを見ると、R1LP2、R3LP5及びR4LP7は増幅に影響のある変異は見られず、日本分離株も中国分離株も検出できると考えられた。また、R1LP1はB2領域の3'末端から4塩基目で中国分離株HBに、R2LP4はB1c領域の5'末端から5塩基目でそれぞれ中国分離株FJ及びCG1に変異が見られたが、変異箇所は最末端部から離れており、またそれぞれ1塩基のみの変異であることから、中国分離株も検出可能と考えられた。一方で、R2LP3はF2領域とB2領域のそれぞれ3'末端から2塩基目で、またB3領域の3'末端から1塩基目で、それぞれ中国分離株CG1に変異が見られた。また、R4LP6はF3領域の3'末端から3塩基目及びB3領域の3'末端から2塩基目に中国分離株CG1で変異が見られた。また、R5LP8はB2領域の3'末端から2塩基目で中国分離株FJに、同3塩基目とB3領域の3'末端から4塩基目で中国分離株CG1に変異が見られた。このことから、R2LP3、R4LP6及びR5LP8の3プライマーについては、中国分離株の一部で反応が遅延するか、又は増幅阻害が生じる可能性があると考えられた。
【0067】
〔実施例3〕ニセナシサビダニからのPCLSaV検出
ニセナシサビダニは体長が0.2mm以下と非常に小さいため、ウイルスを抽出する過程で様々なケアレスミスが起こることが想定された。そこで、サビダニ1頭から簡単且つ確実にウイルスを採取、検出する方法として、のりを使った方法が有効と考えられた。
【0068】
つまようじでスティックのりを少量とり、8連PCRチューブのキャップ裏に塗った。このときキャップの形状はフラットタイプが安定してやりやすかった。次に、実体顕微鏡で見ながら、注射針でニセナシサビダニを1頭釣り上げ、キャップ裏ののりに付着させた。このとき針をサビダニに軽く触れるだけでサビダニを釣り上げることができた。そのまま実体顕微鏡で見ながら、同じ注射針でサビダニを潰した。次にPCLSaVを検出するために、R2LP4プライマーを加えたLAMP反応液を調製して8連PCRチューブに分注し、静かにサビダニが付着したキャップを被せ、軽く数回反転して反応液と潰したサビダニを接触させた。その後、63℃で1時間保温してRT-LAMP反応を行い、ウイルスの有無を検定した。
【0069】
図11にニセナシサビダニ内PCLSaVのRT-LAMP反応の結果を示す。個体「CS」は退緑斑点(chlorotic spot)葉から採取した個体を、「H」は健全ナシ葉から採取した個体を示す。退緑斑点症ナシ葉上から採取したニセナシサビダニ個体の全てからPCLSaVが検出された。一方で健全葉上から採取したニセナシサビダニからはPCLSaVは検出されなかった。このことから、8連PCRチューブ蓋裏に潰したニセナシサビダニを付着させてLAMP反応液に接触させる方法でニセナシサビダニ内のPCLSaVを検出できると考えられた。
【0070】
〔実施例4〕LAMP法によるニセナシサビダニ検出法
PCLSaVを媒介すると考えられているニセナシサビダニについて、その体内に蓄積しているPCLSaVをRT-LAMP法で検出する方法は実施例1に示した通りである。一方で、ナシに寄生するサビダニ(フシダニ類)は、日本ではニセナシサビダニ以外にナシサビダニやナシハヤケサビダニが報告されており(上遠野冨士夫(1995)日本における木本寄生性フシダニ類の分類学的研究とナシ寄生性ニセナシサビダニの生態学的研究、千葉農試特報30 1~87)、ナシの栽培圃場で一般的にみられるサビダニのほとんどがニセナシサビダニであるとしても、まずは、遺伝子診断により種を同定した上で、PCLSaVの保毒状況を調査する必要がある。
【0071】
そこで、以下に、LAMP法によりニセナシサビダニを検出する方法を示す。ニセナシサビダニのミトコンドリアCOI遺伝子領域の登録配列(GenBank Accession No. LC325506)(配列番号50)を元に、プライマー設計支援ソフトウェアPrimerExplorer V5(http://primerexplorer.jp/)を用いて、ニセナシサビダニ検出用のLAMPプライマー(EC5)を設計した(図12)。またミトコンドリアCOI遺伝子上のEC5プライマーの位置を図13に示す。
【0072】
ニセナシサビダニは、2020年6月に愛知県長久手市のナシ圃場の品種「幸水」の葉上から採取した。ニセナシサビダニからのDNA抽出は、既報のシソサビダニからのDNA抽出法(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター編集(2020)オオバのシソサビダニおよびシソモザイクウイルス検出マニュアル 第3版.pp34)に従い、それぞれ1頭から抽出した。シソサビダニ及びトマトサビダニはそれぞれ愛知県長久手市の栽培トマト又はオオバの葉上から各10頭をまとめて採取し、DNAを抽出した。LAMP反応液は、20 mM Tris-HCl(pH 8.8)、10 mM KCl、10 mM(NH42SO4、0.1% Tween 20、0.8 M betaine(富士フィルム和光純薬)、10 mM MgSO4、1.4 mM dNTPs、0.2 μM F3及びB3プライマー、1.6 μM FIP及びBIPプライマー、0.8 μM FLoop及びBLoopプライマー、8 units Bst DNA polymerase(ニッポンジーン)を混合し、1 μlの鋳型RNAを加えて総量20 μlとした。リアルタイム濁度計LA200(Teramecs)を用いて、65℃で60分間の LAMP反応を行い、濁度の上昇を記録しながら濁度が0.1に達する時間(LAMP反応時間)を計測した。
【0073】
図14にEC5プライマーを用いたニセナシサビダニのLAMP検出結果を示す。供試したニセナシサビダニAからFの全てにおいて、約20分で陽性反応が確認できたが、シソサビダニ及びトマトサビダニは反応しなかった。このことから、EC5プライマーを用いたLAMP法でニセナシサビダニを特異的に検出できると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ナシ生産圃場において、JPCSaVの感染樹の特定、除去及び防除対策に有用であるだけでなく、ナシの苗木生産、輸出穂木の健全性を担保するための検査手法としても利用可能である。ナシの果実や穂木は、大量に輸出されており、輸出相手国からの検査要求があった場合に、検査手法が確立していることが必要であるため、輸出業者や植物防疫所等の利用が想定される。また、JPCSaVが海外で発生している場合には、海外での利用も見込まれる。
図1
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【配列表】
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