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特許7674706マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20250501BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20250501BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20250501BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250501BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250501BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20250501BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20250501BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250501BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20250501BHJP
   H10H 20/857 20250101ALI20250501BHJP
【FI】
C08G59/18
C08L101/06
C08K5/3492
C08L63/00 Z
C08K3/013
C08L33/04
C08G59/62
B32B27/00 M
C08L25/18
H10H20/857
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024564457
(86)(22)【出願日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2024012604
(87)【国際公開番号】W WO2024204518
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2024-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2023053813
(32)【優先日】2023-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 歳幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 規生
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216804(JP,A)
【文献】特開2013-054341(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207294(WO,A1)
【文献】特開2010-039270(JP,A)
【文献】特開2023-166903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する接着性組成物。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、ラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂であり、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)に由来する構成単位、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体
(B)成分:(メタ)アクリル基又はエポキシ基を有し、イソシアヌレート骨格を有する化合物
(C)成分:多官能の脂肪族または脂環式のエポキシ化合物
(D)成分:溶剤
【請求項2】
前記フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)が、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレンおよび、下記式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる、請求項に記載の接着性組成物。
【化1】
(式(1)中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表す。)
【請求項3】
前記単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)が、下記式(2)で表される化合物である請求項1に記載の接着性組成物。
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子または硫黄原子を表し、bは炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは水素原子または水酸基を表す。)
【請求項4】
(A)成分の100質量部に対して、(B)成分が20~100質量部である請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項5】
(A)成分の100質量部に対して、(C)成分が10~100質量部である請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項6】
(E)成分として、界面活性剤を更に(A)成分の100質量部に対して0.01~1.0質量部含有する、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項7】
(F)成分として、無機フィラーをさらに含む請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物の両面を剥離基材でラミネートした接着性シート。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の接着性組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項10】
請求項に記載の硬化膜をアンダーフィル材として有するLED表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子に関し、特に、マイクロLED表示素子に用いられるアンダーフィル材、アンダーフィル膜の製造方法、その製造方法によって得られるアンダーフィル膜およびそのアンダーフィル膜を使用したマイクロLED表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話、モニタやTVに使用されるフラットパネルディスプレイには液晶表示素子(LCD)や有機発光ダイオード表示素子(OLED)が主に用いられている。LCDは既に量産技術が十分に確立されており安価で大型化も可能な一方、表示にバックライトを使用する必要があることからフォームファクターやフレキシブル性に劣る。また、OLEDはフレキシブル性に優れるものの表示素子の輝度を高くすると寿命が短くなるといった課題がある。これら欠点を解決できる表示素子として、近年、無機発光ダイオードをアレイ基板の各画素上に並べて表示を行うマイクロLED表示素子が開発されている。マイクロLED表示素子はマイクロメートルサイズの無機発光ダイオードを発光源として用いるため、LCDやOLEDと比べて輝度を高くすることができ、色純度も高く寿命も長い。また、画素毎にLEDを配列させるため、各画素を独立させることが可能であり、フレキシブル性にも優れる。
【0003】
発光源のLED素子は、例えばサファイア基板上に半導体層をエピタキシャル成長させて電極を形成した後、ダイシングすることで小片として供給される。マイクロLED表示素子は、このようにして製造されたLED素子を、高精度でアレイ基板上に並べる必要がある。LED素子をアレイ基板上に並べる手法として、これまで、各LED素子を一つずつ設置するPick & Place方式が検討されてきた。しかしながら、本手法ではLEDの設置に膨大な時間が必要なため、大量生産には不向きであった。
【0004】
そこで、近年、接着性のある基材(スタンプ)で多量のLED素子をサファイア基板から一度に取り上げ、アレイ基板にマストランスファした後、ボンディングヘッドによりLED素子をアレイ基板の電極と熱圧着、またはレーザー加熱により金属接合するスタンプ方式が提案されている(非特許文献1、2)。この方式を用いると、一度に大量のLED素子をアレイ基板上に並べ、アレイ基板と接合出来るため、Pick & Place方式と比べてスループットの大幅な改善が見込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Adv.Optical Mater.2015,3,1313-1335
【文献】SID 2017 DIGEST,257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このスタンプを用いたマストランスファ方式では、アレイ基板とLED素子との接着性と、スタンプとLED素子との接着性の差により、LED素子をサファイア基板からアレイ基板にマストランスファする方式であるため、アレイ基板上に接着性を有する成分が必要となる。接着成分は、LED素子と基板電極を接合させる役割を担うことが多いため、通常は、はんだペーストや導電性ペーストが用いられる。しかしながら、この場合、LED素子の電極周辺は空間が出来ることとなり、振動などのパネルに印加される外部応力や、湿気などによる電極の剥離や腐食が問題となっている。
【0007】
接着性成分の中でも、非導電性ペーストおよびフィルムは、LED素子を該ペーストやフィルム上にボンディングしLED素子を基板電極と接合する際、LED電極とアレイ基板電極との間から排斥され電極周辺に永久膜として残ることで、電極周辺を湿気や外部応力から保護するアンダーフィル材として機能するため、上記記載の問題が改善できると期待されている。
【0008】
マイクロLED表示素子に特有のもう一つの課題として、LED素子周辺の部材の耐熱黄変抑制が挙げられる。LED素子からの発光は基板に対して垂直方向だけでなく、全方位に拡がるため、LED素子の色純度を維持するには、周辺部材の透明性が必要とされている。さらに前記のように、LED素子とアレイ基板の電極を金属接合させる際には、熱圧着やレーザー加熱といった高温プロセスが用いられる。このため、LED素子周辺部材にはこの高温プロセス後も高い透明性を保持するための、耐熱黄変抑制が求められる。
【0009】
次に、マイクロLED表示素子に特有ではないが、半導体実装デバイスに共通する課題として、電極部の酸化被膜を除去するためのフラックス処理工程が挙げられる。マイクロLED表示素子では、アレイ基板やLED素子の電極部に酸化被膜が形成されていると、金属接合できず導通不良が生じる。通常、揮発性低分子を含有するフラックス剤によりこの酸化被膜は除去されるが、フラックス処理後の電極間にこの揮発性低分子が残存すると、電極腐食が生じるといった課題がある。
【0010】
また、アレイ基板上やウェハ上の全面に機能膜が形成されると、その後に配線が取り出し難いといった課題もあるため、フォトリソグラフィによるパターニング、インクジェット塗布、フィルムシートによるパターン貼り付け、などにより、特定エリアのみに膜形成でき、揮発性がなくフラックス機能を有するアンダーフィル材が求められている。
【0011】
そこで、本発明は、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化、およびLED表示素子の高品位化を可能とするため、以下の機能を有するアンダーフィル材の提供を目的とする。
(1)フラックス機能を有すること
(2)室温で十分な接着力を発現すること
(3)高温プロセスにおける耐熱黄変抑制
(4)特定エリアのみへの膜形成
また、本発明は、そのアンダーフィル材を用いて、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とする、アレイ基板上にパターニングされたアンダーフィル膜の提供を目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、そのアンダーフィル材を用いて、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
そして、本発明は、そのLED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル膜を備えたマイクロLED表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、本発明を見出すに至った。すなわち、本発明は下記に関する。
1.下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する接着性組成物。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂
(B)成分:イソシアヌレート骨格を有する化合物
(C)成分:脂肪族または脂環式のエポキシ化合物
(D)成分:溶剤
2.前記(A)成分が、単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を含む重合体である1に記載の接着性組成物。
3.前記(A)成分が、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体である2に記載の接着性組成物。
4.前記フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)が、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレンおよび、下記式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる、3に記載の接着性組成物。
【0015】
【化1】

式中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表す。
5.前記単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)が、下記式(2)で表される化合物である3に記載の接着性組成物。
【0016】
【化2】

式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子または硫黄原子を表し、bは炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは水素原子または水酸基を表す。
6.(A)成分の100質量部に対して、(B)成分が20~100質量部である1~5のいずれかに記載の接着性組成物。(イソシアヌレート成分の最適量)
7.(A)成分の100質量部に対して、(C)成分が10~100質量部である1~のいずれかに記載の接着性組成物。(その他エポキシ成分の最適量)
8.(E)成分として、界面活性剤を更に(A)成分の100質量部に対して0.01~1.0質量部含有する、1~のいずれかに記載の接着性組成物。
9.(F)成分として、無機フィラーをさらに含む、1~のいずれかに記載の接着性組成物。
10.1~のいずれかに記載の接着性組成物の両面を剥離基材でラミネートした接着性シート。
11.1~のいずれかに記載の接着性組成物を硬化してなる硬化膜。
12.11に記載の硬化膜をアンダーフィル材として有するLED表示素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着性組成物は、フラックス性、接着性、耐熱黄変に優れた膜透明性を有しており、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル材を形成することができる。更に、フィルムシート形態にて、アレイ基板上の必要な部分のみにアンダーフィル膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着性組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、ラス転移温度(Tg)が60℃以下である樹脂
(B)成分:イソシアヌレート骨格を有する化合物
(C)成分:脂肪族または脂環式の骨格を有するエポキシ化合物
(D)成分:溶剤
【0019】
以下、各成分の詳細を説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、フェノール性水酸基を有し、ラス転移温度(Tg)が60℃以下である樹脂であり、具体的にはアルカリ可溶性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂は、好ましくはアクリル重合体である。
【0020】
本発明において、アクリル重合体とはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、マレイミド等の重合性不飽和基、すなわち、構造中に炭素-炭素二重結合を含む重合性基を有するモノマーを用いて得られる重合体を指す。
【0021】
(A)成分の樹脂は、上記アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0022】
(A)成分の樹脂は、重量平均分子量が20,000未満で過小なものであると、シートを作製した際に剥離基材からの剥離性が悪化し易い一方、重量平均分子量が150,000を超えて過大なものであると、膜の柔軟性が損なわれ、フリップチップボンディング時の樹脂排斥性が悪化する。これらの観点から、上記樹脂の好ましい重量平均分子量は20,000~150,000の範囲であり、より好ましくは30,000~100,000の範囲にあるものである。
【0023】
(A)成分の樹脂の合成方法は、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)を含むモノマー混合物を共重合する方法が簡便である。ここで単独重合体とは、(A2)モノマー単独の高分子を示し、所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で重合反応させることにより、得られるか、(A2)モノマーと光ラジカル発生剤等を共存させた状態で、紫外線を照射し重合反応させることで得られる重量平均分子量が3000以上の高分子である。
【0024】
以下(A)成分の構成モノマーに関する詳細を述べる。
【0025】
モノマー(A1)は、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマーであり、好ましくはp-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、および下記式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーである。
【0026】
【化3】
式(1)中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、好ましくは(メタ)アクリル基である。bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、好ましくは単結合、または炭素数1~6の直鎖状アルキレン基である。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、好ましくは単結合または-O-である。dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表し、好ましくはp-ヒドロキシフェニル基である。該ヒドロキシフェニル基への置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数2~3のフルオロアルケニル基、炭素数1~3のフルオロアルコキシ基、炭素数2~3のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。これらヒドロキシフェニル基を有することにより、(A)成分がフラックス性を発現する。
【0027】
モノマー(A1)としては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、N-(p-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(p-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(p-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p-ヒドロキシフェニルアクリレート、p-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、p-ヒドロキシフェニルアクリレートおよびp-ヒドロキシフェニルメタクリレートから選ばれるモノマーが好ましい。
【0028】
モノマー(A2)は、単独重合体のTgが0℃以下となるモノマーであり、好ましくは下記式(2)で表される化合物である。
【0029】
【化4】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。aは酸素原子または硫黄原子を表し、好ましくは酸素原子である。bは炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2~12の直鎖、分岐、または環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~12の直鎖または分岐のアルキレン基である。なお、bの該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、好ましくは単結合または-O-を表す。dは水素原子または水酸基を表す。
【0030】
モノマー(A2)としては、具体的には、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-へプチルアクリレート、n-へプチルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、グリシジルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できるが、これらに限られるわけではない。
【0031】
本発明の効果を好適に得る観点から、成分(A)中のモノマー(A1)に由来する構成単位は、モノマー(A1)に由来する構成単位およびモノマー(A2)に由来する構成単位の合計に対して10~50質量%含むことが好ましく、成分(A)中のモノマー(A2)に由来する構成単位は、モノマー(A1)に由来する構成単位およびモノマー(A2)に由来する構成単位の合計に対して50~90質量%含むことが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、(A)成分のアクリル重合体を得る際に、上記モノマー(A1)~(A2)と共重合可能な、その他モノマーを併用することができる。上記その他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。以下、当該その他モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
上記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2-アミノエチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート 、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2-アミノメチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0036】
上記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
【0037】
上記スチレン化合物としては、ヒドロキシ基を有しないスチレン、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0038】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂を得る方法は特に限定されないが、例えば、モノマー(A1)並びにモノマー(A2)、並びに上記その他モノマー、及び所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で重合反応させることにより、得られる。その際、用いられる溶剤は、樹脂を構成するモノマー及び樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(D)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
【0039】
このようにして得られる樹脂(以下、特定共重合体ともいう)は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0040】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0041】
本発明においては、上記特定共重合体の粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する(D)溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
【0042】
また、本発明においては、(A)成分の樹脂は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0043】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、イソシアヌレート骨格を有する化合物である。組成物中にイソシアヌレート骨格を含有させることで、室温での金属への高い接着性が発現可能となる。硬化性の観点からイソシアヌレート骨格に2個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物が好ましい。(B)成分の好ましい骨格は、式(4A)および式(4B)(単に式(4)ともいう)に例示される。
【0044】
【化5】
【0045】
【化6】
【0046】
本発明の組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、20~100質量部であることが好ましく30~90質量部がより好ましい。
【0047】
<(C)成分>
(C)成分は、脂肪族または脂環式の骨格を有するエポキシ化合物である。組成物中の架橋成分となるエポキシ化合物が芳香族やアミノグリシジル基を有する場合、高温加熱により容易に膜の黄変が引き起こされるため、脂肪族または脂環式の骨格が好ましい。
【0048】
(C)成分の好ましい骨格は、式(5)または式(6)で表される。
【0049】
【化7】
(式(5)中、kは2~10の整数であり、mは0~4の整数であり、Xは芳香族環を含まないk価の有機基を表す。複数個のmは互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【0050】
【化8】
(式(6)中、kは2~10の整数であり、Xは芳香族環を含まないk価の有機基を表す)
【0051】
式(5)で表されるシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物の具体例としては、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、同PB4700、セロキサイド2021、セロキサイド2081、セロキサイド3000((株)ダイセル製 商品名)、エポカリックDE-102、DE-103(以上、ENEOS(株)製)、などが挙げられる。
【0052】
式(6)で表される化合物の具体例としては、脂環式エポキシ化合物のEHPE3150((株)ダイセル製 商品名)、水素化グリシジルエーテル系エポキシ化合物のデナコールEX-252(ナガセケムッテクス(株)製 商品名)、ST-3000、ST-4000D(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製 商品名)、EPOTEC YDH184、同YDH3000(巴工業(株)製 商品名)、リカレジンHBE-100(新日本理化(株)製 商品名)、脂肪族エステル構造のEPOTEC RD107、同RD111、同114、同130、同113、同129(巴工業(株)製 商品名)、ショウフリーPETG((株)レゾナック製 商品名)などが挙げられる。
【0053】
本発明の組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、10~100質量部であるであることが好ましく30~90質量部がより好ましい。
【0054】
<(D)成分>
本発明に用いる(D)溶剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶解し、且つ所望により添加される種々の成分などを溶解するものであり、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0055】
斯様な(D)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0056】
これら(D)溶剤の中、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。
【0057】
更に、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する全溶媒中1~90質量%、好ましくは1~50質量%の割合で混合することもできる。
【0058】
このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソアミルエーテル、サリチル酸メチル、等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0059】
<(E)成分>
(E)成分は、界面活性剤である。本発明の組成物にあっては、その塗布性を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に界面活性剤を含有することができる。
【0060】
(E)成分の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。この種の界面活性剤としては、例えば、スリーエムジャパン(株)製、DIC(株)製或いはAGCセイミケミカル(株)製等の市販品を用いることができる。これら市販品は、容易に入手することができるので、好都合である。その具体的な例としては、ポリフォックスPF-136A、151、156A、154N、159、636、6320、656、6520(Omnova社製)、メガファックR30、R08、R40、R41、R43、F251、F477、F552、F553、F554、F555、F556、F557、F558、F559、F560、F561、F562、F563、F565、F567、F570(DIC(株)製)、FC4430、FC4432(スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-386、S-611、S-651、(AGCセイミケミカル(株)製)、フタージェントFTX-218、DFX-18、220P、251、212M、215M((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤、BYK-300、302、306、307、310、313、315、320、322、323、325、330、331、333、342、345、346、347、348、349、370、377、378、3455(ビックケミージャパン(株)製)、SH3746、SH3749、SH3771、SH8400、SH8410、SH8700、SF8428(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-618、KF-6011、KF-6015(信越化学工業(株)製)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0061】
(E)成分の界面活性剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0062】
界面活性剤が使用される場合、その含有量は、(A)成分100質量部に基づいて通常0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.02~0.8質量部である。
【0063】
<(F)成分>
(F)成分は、無機フィラーである。本発明の組成物にあっては、膜の透明性や硬化膜の硬度を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に無機フィラーを含有することができる。
【0064】
(F)成分の無機フィラーとしては、特に制限されないが、例えば、粒子径が1nm以上700nm以下の、シリカ、窒化アルミ、窒化ボロン、ジルコニア、アルミナなどのゾルを挙げることができる。当該無機フィラーに含まれる粒子は、シランカップリング剤などにより表面処理されていてもよい。
【0065】
無機フィラーが使用される場合、その含有量は、固形分全体の100質量部に対し、通常10~90質量部であり、好ましくは20~80質量部である。
【0066】
<接着性シート>
本発明の接着性組成物をベースフィルムとして用いる剥離基材(例えば、シリコーン離型層をコーティングしたPETフィルム)の上に、バー塗布、スリット塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、オーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。
【0067】
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70~160℃、時間0.3~60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃~140℃、0.5~10分間である。
【0068】
その後、該組成物の塗膜上に保護フィルム用の剥離基材を貼り合わせることで、接着性シートが得られる。手動式または自動式のラミネートローラーを用いて、塗膜と保護フィルムの間に気泡が入らないように一定方向に押し合わせることで、接着性シートが得られる。
【0069】
接着性シートを任意のサイズに加工することで、接着性組成物をアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することが出来る。任意のサイズに加工後、保護フィルムを剥離し、その剥離面を所定の場所に貼り合わせ、ベースフィルムを剥がすことで、接着性組成膜が基板上に転写される。該組成膜と基板との密着性を上げるためには、加圧下で転写することも有効である。
【0070】
塗膜面から保護フィルムを良好に剥離するためには、保護フィルムの剥離強度は小さく、ベースフィルムの剥離強度は大きくすることが必要である。保護フィルムの剥離強度80N/25mm以下であることが好ましく、ベースフィルムの剥離強度は160N/25mm以上であることが好ましい。
【0071】
<硬化膜>
続いて、斯かるパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性などに優れ、良好なパターンを有する膜が得られる。
【0072】
ポストベークとしては、一般に、温度140~270℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5~30分間、オーブン中の場合には30~90分間処理するという方法が採られる。
【0073】
而して、斯かるポストべークにより、目的とする、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0074】
本発明の接着性組成物から得られる膜は、フラックス性と接着性を有しており、フィルムを任意加工してアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することが出来る。
【0075】
接着性組成膜を有するアレイ基板上にLED素子をマストランスファ後、フリップチップボンダーにより加熱圧着(加熱温度は、はんだ電極を溶融するため通常250~350℃の範囲)することで、アレイ電極とLED素子電極とが接合される。加熱圧着時、該組成膜は未硬化状態のため加熱により溶融状態となり、圧力を掛けることでアレイ電極とLED素子電極間から該組成膜が排斥され、電極間接合を阻害しない。その後、電極周辺に排斥された該組成膜を熱硬化させることで、電極周辺を空気や水分から保護するアンダーフィル材として機能する。
【0076】
なお、本発明の接着性組成物はフリップチップボンディング時の高温プロセスを通しても黄変しにくく透明性が高いため、LED素子の色純度を阻害しにくい。
【実施例
【0077】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。使用した化合物の略号、剥離基材、及び各物性の測定方法は、以下の通りである。
【0078】
(モノマー)
HQMA:p-ヒドロキシフェニルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
(ラジカル重合開始剤)
AIBN:α,α’-アゾビスイソブチロニトリル
(イソシアヌレート化合物)
I1:NKエステルA-9300(新中村化学工業(株)製)
I2:TEPIC-VL(日産化学(株)製)
(エポキシ化合物)
E1:エポカリックDE-102(ENEOS(株)製)
E2:EHPE 3150((株)ダイセル製)
E3:jER152(三菱ケミカル(株)製)
E4:エポリードGT-401(ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) 修飾ε-カプロラクトン、(株)ダイセル製)
E5:セロキサイド 2021P((株)ダイセル製)
E6:デナコール EX-851(ナガセケムテックス(株)製)
E7:ショウフリー BATG((株)レゾナック製)
(無機フィラー)
F1:オルガノシリカゾル MEK-AC-5140Z(日産化学(株)製)
(溶剤)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPA:イソプロピルアルコール
(剥離基材)
ベースフィルム:シリコーン離型層をコーティングした、剥離強度380N/25mmのPETフィルム(ニッパ(株)製)
保護フィルム: シリコーン離型層をコーティングした、剥離強度40N/25mmのPETフィルム(ニッパ(株)製)
【0079】
<分子量の測定>
重合体の分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805の直列)(昭和電工社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0080】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
合成例により得られたポリマーのTgは示差走査熱量測定(DSC)DSC1(METTLER TOREDO社製)を用いて以下の条件で測定した。
昇温速度:10℃/min
測定温度:-20℃~200℃
測定回数:2回。Tgは2回目の昇温結果から算出。
【0081】
<アクリル重合体の合成>
(合成例1)
アクリル重合体を構成するモノマー成分として、HQMA(6.0g)、HEMA(4.0g)、およびBA(10.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.2g)を使用し、これらを溶剤PGME(47.1g)中において温度60℃で重合反応させることにより、Mn(数平均分子量):24,700、Mw(重量平均分子量):111,900であるアクリル重合体成分の溶液P1(アクリル重合体濃度:30.0質量%)を得た。この溶液P1を5cm×5cmのガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、アクリル重合体の乾燥膜を得た。得られたアクリル重合体のTgは31℃であった。
(合成例2)
アクリル重合体を構成するモノマー成分として、HQMA(10.0g)、およびBA(10.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.06g)を使用し、これらを溶剤PGME(46.8g)中において温度60℃で重合反応させることにより、表1に記載の分子量およびTgのアクリル重合体P2(アクリル重合体濃度:30.0質量%)を得た。
(合成例3)
アクリル重合体を構成するモノマー成分として、HQMA(14.0g)、およびBA(6.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.2g)を使用し、これらを溶剤PGME(37.5g)中において温度60℃で重合反応させることにより、表1に記載の分子量およびTgのアクリル重合体P3(アクリル重合体濃度:35.0質量%)を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
<接着性組成物の調製>
(実施例1-1)
樹脂溶液として、上記合成例1で得られたアクリル重合体溶液(P1)(4.167g)に、イソシアヌレート化合物I1(0.375g)、エポキシ化合物E1(0.375g)、および溶剤PGME(2.683g)、IPA(2.400g)を加えた後、室温で2時間撹拌して表2に示す組成の接着性組成物V1を調製した。
【0084】
(実施例1-2~1-5)および(比較例1-1~1-4)
樹脂溶液、イソシアヌレート化合物、エポキシ化合物、溶剤の種類及び量を表2のように変更して加えた後、室温で2時間撹拌して、表2に示す組成のポジ型感光性粘着組成物V2~V5およびRV1~RV4を調製した。
【0085】
(実施例1-6)
アクリル重合体樹脂溶液(P2)(2.857g)に、イソシアヌレート化合物I2(0.623g)、エポキシ化合物E2(0.623g)、無機フィラーF1(2.144g)および溶剤PGME(3.752g)を加えた後、室温で2時間撹拌して表2に示す組成の接着性組成物V6を調製した。
【0086】
【表2】
【0087】
(実施例2-1)
<接着力評価>
実施例1-1で調製した接着性組成物V1を、5cm×5cmのガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚3μmのプリベーク膜を形成した。その後、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザーを用いて、プローブ球(直径:25mm、材質:SUS)、圧縮速度:1mm/sec、引張速度:1mm/sec、圧縮荷重:200g、圧縮保持時間:2secにより、室温(23℃)での塗膜表面の剥離強度を測定した。剥離強度が1.0g以上であれば接着性良好、1.0g未満であれば不良と判断した。結果を表3に記す。
【0088】
<透過率評価>
実施例1-1で調製した接着性組成物V1を、4cm×4cmの石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚3μmのプリベーク膜を形成した。このプリベーク膜にフリップチップボンディング時に有機膜に与える熱を想定し、温度300℃で60秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、温度230℃で30分間ホットプレート上にてポストベークを行い、硬化膜を形成した。得られた硬化膜の透過率を測定し、可視域(波長400nm~800nm)の平均値が95%以上であるものを透明性良好、95%未満であるものを不良として評価した。結果を表3に記す。
【0089】
(実施例2-2~2-6および比較例2-1~2-4)
実施例1-2~-6および比較例1-1~1-4で調製した接着性組成物V2~V6およびRV1~RV4を用いて、実施例2-1と同様な方法で接着性と透明性を評価した。なお、プリベーク条件に関しては適宜、温度100~140℃、時間2~10分に変更した。
【0090】
結果を表3に記す。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示したように、実施例の接着性組成物は、いずれも良好な接着性と透明性を示した。これに対し、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル重合体を用いた接着性組成物を使用した場合(比較例2-3)、もしくはイソシアヌレート化合物を用いない場合(比較例2-2)、接着性が不足していた。また、用いるエポキシ化合物が芳香族環を有する場合(比較例2-1、2-4)、透明性が不足していた。
【0093】
(実施例3-1)
<フィルムシートの作製と評価>
実施例1-1で調製した接着性組成物V1を、A4サイズのベースフィルム上にバーコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間オーブンにてプリベークを行い、膜厚3μmのプリベーク膜を形成した後、保護フィルムをプリベーク膜上にローラーを用いてラミネートし、接着性シートS1を作製した。その後、保護フィルムの剥離性を評価した。保護フィルムを剥離後、保護フィルム側に膜残りが無ければ良好、保護フィルム側に接着性組成物の一部が残っていれば不良、と判断した。次に、ベースフィルムから基材への転写性を評価した。基材には5cm×5cm、厚さ1mmのガラス基板を使用した。ベースフィルムを剥離後、ベースフィルム側に膜残り無く、接着性シートがシワなく基材へ転写されれば良好、ベースフィルム側に接着性組成物の一部が残る、または転写後の接着性シートにシワが発生していれば不良、と判断した。最後に、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザーを用いて、プローブ球(直径:25mm、材質:SUS)、圧縮速度:1mm/sec、引張速度:1mm/sec、圧縮荷重:200g、圧縮保持時間:2secにより、室温(23℃)での塗膜表面の剥離強度を測定した。剥離強度が1.0g以上であれば接着性良好、1.0g未満であれば不良と判断した。結果を表4に記す。
【0094】
(実施例3-2)
実施例1-2で調製した接着性組成物V2を用いて、実施例3-1と同様な方法で接着性シートS2を作製し、保護フィルムの剥離性、基材への転写性、シートの接着性を評価した。結果を表4に記す。
【0095】
【表4】
【0096】
(実施例4-1、4-2)
<フリップチップボンディング試験>
実装サンプルとして、電極面積20μm×20μm、電極高さ5.5μm(SnAgハンダの高さが2.3μm、銅ポスト電極の高さが3.2μm)の電極を1700個有するTEG(Test Element Group)チップ(5.1mm×5.1mm×厚み700μm)と、TEGチップの電極とデイジーチェーンとなるように銅電極が配線されたTEG基板(15mm×15mm×厚み700μm)を準備した。TEG基板上に実施例3-1、3-2で作製した接着性シートをそれぞれ転写し、アンダーフィル膜を形成した。次いで、パナソニック(株)製フリップチップボンダーを用いて、このアンダーフィル膜を有するTEG基板に、ステージ温度60℃、ヘッド温度370℃60秒、ヘッド圧150NでTEGチップをフリップチップボンディングした。その後、230℃30分でポストベーク(後硬化)を行い、接合体を得た。得られた接合体について、TEGチップの剥離有無(剥離無し:〇、剥離有り:×)と導通抵抗値(100Ω未満:〇、100Ω以上:×)を評価した。結果を表5に記す。
【0097】
(比較例4-1)
接着性シートをアンダーフィル膜として使用する代わりに、フリップチップボンディング前にTEGチップおよびTEG基板を5質量%の硫酸水溶液で洗浄して表面酸化被膜を除去したこと以外は、実施例4-1と同様に接合体を形成し、TEGチップの剥離有無の確認と導通抵抗値を測定した。結果を表5に記す。
【0098】
【表5】
【0099】
表5に示したように、実施例の接着性シートをアンダーフィル膜として用いたTEG接合体は、TEGチップが剥離すること無く、導通抵抗値も良好であった。これに対し、アンダーフィル膜を用いなかった場合は、TEGチップの剥離が大幅に増加し、再現良く抵抗値測定が出来なかった(比較例4-1)。