(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-30
(45)【発行日】2025-05-12
(54)【発明の名称】アルコキシフェノール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/09 20060101AFI20250501BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20250501BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250501BHJP
【FI】
C07C41/09
C07C43/23 D
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021097354
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 佳祐
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-168636(JP,A)
【文献】特開平08-151343(JP,A)
【文献】特開昭54-061132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
〔式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R
5または-C(=O)-O-R
5を表し、R
5は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表し、R
1とR
2およびR
3とR
4は、それぞれ、互いに結合して環構造を形成していてもよい〕
で表されるジヒドロキノン化合物と、式(2):
【化2】
〔式(2)中、R
6は炭素数1~10の
アルキル基
、または-R
7
-OH〔式中、R
7
は炭素数1~10のアルカンジイル基を表
す〕〕
で表されるアルコール化合物とを、ペルオキシ二硫酸塩および酸触媒の存在下で反応させることを含む、式(3):
【化3】
〔式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
6は前記と同じ意味を表す〕
で表されるアルコキシフェノール化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R
5または-C(=O)-O-R
5(R
5は、前記と同じ意味を表す)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(1)で表されるジヒドロキノン化合物と式(2)で表されるアルコール化合物との反応は30~120℃の温度下で行う、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ペルオキシ二硫酸塩は、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸ナトリウムおよびペルオキシ二硫酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および硫酸からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
式(2)で表されるアルコール化合物は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.1モル当量以上10モル当量以下で存在する、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
ペルオキシ二硫酸塩は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.1モル当量以上10モル当量以下で存在する、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
酸触媒は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.01モル当量以上1モル当量以下で存在する、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
式(1)で表されるジヒドロキノン化合物と式(2)で表されるアルコール化合物との反応は、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒および水からなる群より選択される溶媒の存在下で行う、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシフェノール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコキシフェノール化合物の製造方法として、酸触媒の存在下、フェノール系化合物と脂肪族アルコールとを脱水縮合反応させて製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献等に記載されるようなアルコキシフェノール化合物を製造する方法においても、副生物の生成が抑制され、収率の改善がなされてきているが、さらなる収率の向上が求められている。
本発明は、十分に高い収率でアルコキシフェノール化合物の製造を実現し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]式(1):
【化1】
〔式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R
5または-C(=O)-O-R
5を表し、R
5は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表し、R
1とR
2およびR
3とR
4は、それぞれ、互いに結合して環構造を形成していてもよい〕
で表されるジヒドロキノン化合物と、式(2):
【化2】
〔式(2)中、R
6は炭素数1~10の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-OH、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい〕
で表されるアルコール化合物とを、ペルオキシ二硫酸塩および酸触媒の存在下で反応させることを含む、式(3):
【化3】
〔式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
6は前記と同じ意味を表す〕
で表されるアルコキシフェノール化合物の製造方法。
[2]式(1)中のR
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R
5または-C(=O)-O-R
5(R
5は、前記と同じ意味を表す)である、[1]に記載の製造方法。
[3]式(1)で表されるジヒドロキノン化合物と式(2)で表されるアルコール化合物との反応は30~120℃の温度下で行う、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]ペルオキシ二硫酸塩は、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸ナトリウムおよびペルオキシ二硫酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および硫酸からなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]式(2)で表されるアルコール化合物は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.1モル当量以上10モル当量以下で存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]ペルオキシ二硫酸塩は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.1モル当量以上10モル当量以下で存在する、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]酸触媒は、式(1)で表されるジヒドロキノン化合物1モル当量に対し、0.01モル当量以上1モル当量以下で存在する、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]式(1)で表されるジヒドロキノン化合物と式(2)で表されるアルコール化合物との反応は、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒および水からなる群より選択される溶媒の存在下で行う、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、十分に高い収率でアルコキシフェノール化合物の製造を実現し得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0008】
本発明は、式(3):
【化4】
〔式(3)中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R
5または-C(=O)-O-R
5を表し、R
5は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表し、R
1とR
2およびR
3とR
4は、それぞれ、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
R
6は、炭素数1~10の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-OH、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい〕
で表されるアルコキシフェノール化合物(以下、「アルコキシフェノール化合物(3)」ともいう)の製造方法に関する。
【0009】
式(3)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R5または-C(=O)-O-R5を表し、R5は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の無置換のアルキル基、前記アルキル基に含まれる水素原子がハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0010】
R1とR2およびR3とR4は、それぞれ、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R1とR2とが「互いに結合して環構造を形成」するとは、R1とR2とが互いに結合して、R1およびR2にそれぞれ隣接する式(3)中のアルコキシフェノール骨格上の2つの炭素とともに環構造を形成することを意味する。同様に、R3とR4とが「互いに結合して環構造を形成」するとは、R3とR4とが互いに結合して、R3およびR4にそれぞれ隣接する式(3)中のアルコキシフェノール骨格上の2つの炭素とともに環構造を形成することを意味する。R1とR2、および、R3とR4は、いずれか一方のみが環構造を形成していてもよく、いずれもが環構造を形成していてもよい。R1とR2、および、R3とR4がいずれも環構造を形成している場合、それらの構造は同じであっても異なっていてもよい。
【0011】
R1とR2、または、R3とR4とが互いに結合して形成される環構造としては、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素環構造(脂環式構造)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環構造、および、置換若しくは無置換の複素芳香族環構造が挙げられる。
これらの環構造は、好ましくは3~10員環であり、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。中でも、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素環構造および置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環構造が好ましく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環構造がより好ましく、置換若しくは無置換のベンゼン環がさらに好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。なお、ここでいう「環構造」は、R1とR2と、R1およびR2にそれぞれ隣接する式(3)中のアルコキシフェノール骨格上の2つの炭素とが結合することにより形成される環構造、または、R3とR4と、R3およびR4にそれぞれ隣接する式(3)中のアルコキシフェノール骨格上の2つの炭素とが結合することにより形成される環構造の部分を意味する。これらの環構造は、式(3)中のアルコキシフェノール骨格部分とともに、例えばナフタレン骨格のような多環系構造を形成する。
【0012】
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、-C(=O)-R5または-C(=O)-O-R5であり、より好ましくは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは水素原子または無置換の炭素数1~6のアルキル基、特に好ましくは水素原子である。
【0013】
式(3)中、R6は炭素数1~10の炭化水素基を表す。該炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-OH、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよい。また、該炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。R6は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基、-R7-OH〔式中、R7は炭素数1~10のアルカンジイル基を表す〕であり、より好ましくは-R7-OHである。R7における炭素数1~10のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の無置換のアルカンジイル基、前記アルカンジイル基に含まれる水素原子が、ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等で置換されたアルカンジイル基が挙げられる。R7は、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルカンジイル基、より好ましくは無置換の炭素数1~6のアルカンジイル基、さらに好ましくは無置換の炭素数1~6の直鎖状アルカンジイル基である。
【0014】
本発明において、アルコキシフェノール化合物(3)は、式(1):
【化5】
で表されるジヒドロキノン化合物(以下、「ジヒドロキノン化合物(1)」ともいう)と、式(2):
【化6】
で表されるアルコール化合物(以下、「アルコール化合物(2)」ともいう)とを、ペルオキシ二硫酸塩および酸触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0015】
式(1)中のR1~R4は、それぞれ、前記式(3)中のR1~R4と同じ意味を表し、目的とするアルコキシフェノール化合物(3)の構造に応じて決定される。また、式(2)中のR6は、前記式(3)中のR6と同じ意味を表し、目的とするアルコキシフェノール化合物(3)の構造に応じて決定される。ジヒドロキノン化合物(1)およびアルコール化合物(2)は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ジヒドロキノン化合物(1)およびアルコール化合物(2)は、市販されているものを用いてもよく、従来公知の有機合成方法により製造したものを用いてもよい。
【0017】
本発明の方法において、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応は、ペルオキシ二硫酸塩および酸触媒の存在下で行われる。ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応を、酸触媒とペルオキシ二硫酸塩との存在下で行うことによって、高い収率でアルコキシフェノール化合物(3)を得ることができる。また、酸触媒のみの存在下で反応させる場合と比較して、より効率的に高収率なアルコキシフェノール化合物(3)の製造が期待できる。
【0018】
本発明において、ペルオキシ二硫酸塩は、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸ナトリウムおよびペルオキシ二硫酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのペルオキシ二硫酸塩を用いることにより、目的とするアルコキシフェノール化合物をより一層高い収率で得やすくなる。
【0019】
酸触媒としては、用いる溶媒との相溶性に優れる酸が好ましく、本発明の一実施態様においては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および硫酸からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0020】
ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応において、アルコール化合物(2)は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、好ましくは0.1モル当量以上10モル当量以下の量で存在する。アルコール化合物(2)が前記範囲内の量で存在すると、ジヒドロキノン化合物(1)との反応が進みやすく、高い収率でアルコール化合物(3)を得ることができる。アルコール化合物(2)は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、より好ましくは0.2モル当量以上、さらに好ましくは0.3モル当量以上の量で存在し、また、より好ましくは8モル当量以下、さらに好ましくは7モル当量以下の量で存在する。
【0021】
ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応において、ペルオキシ二硫酸塩は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、好ましくは0.1モル当量以上10モル当量以下の量で存在する。ペルオキシ二硫酸塩が前記範囲内の量で存在すると、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応が促進されやすく、十分に高い収率でアルコール化合物(3)を得ることができる。ペルオキシ二硫酸塩は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、より好ましくは0.2モル当量以上、さらに好ましくは0.3モル当量以上の量で存在し、また、より好ましくは8モル当量以下、さらに好ましくは6モル当量以下の量で存在する。
【0022】
ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応において、酸触媒は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、好ましくは0.01モル当量以上1モル当量以下の量で存在する。酸触媒が前記範囲内の量で存在すると、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応が促進されやすく、十分に高い収率でアルコール化合物(3)を得ることができる。酸触媒は、ジヒドロキノン化合物(1)1モル当量に対して、より好ましくは0.02モル当量以上、さらに好ましくは0.03モル当量以上の量で存在し、また、より好ましくは0.8モル当量以下、さらに好ましくは0.6モル当量以下の量で存在する。
【0023】
本発明の製造方法において、前記ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応は、好ましくは溶媒の存在下で行う。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;水等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上組合せて使用できる。中でも、生成物の溶解性の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒および水からなる群より選択される溶媒が好ましい。
【0024】
前記溶媒の使用量は特に限定されないが、各化合物が十分に溶解して反応が効率よく進行し得るよう、通常、ジヒドロキノン化合物(1)1質量部に対して2質量部以上、好ましくは3質量部以上であり、過剰な溶媒の使用を避けるため、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0025】
ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応には、必要に応じて、例えば、クラウンエーテルのような相間移動触媒などの添加剤を用いてもよい。
【0026】
本発明の製造方法において、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応における条件は、用いる各化合物の種類や反応規模等に応じて適宜決定し得る。
本発明の製造方法の一実施態様において、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応温度は、好ましくは30℃~120℃、より好ましくは40℃~110℃、さらに好ましくは50℃~100℃である。反応温度が前記範囲内であると、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応が十分に進みやすい。
【0027】
反応時間は、使用する化合物の種類、比率および温度等に応じて決定すればよく、反応規模等にもよるが、好ましくは2~24時間であり、より好ましくは8~12時間である。本発明において、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応時間は、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)とが併存し始めた時点を始点とし、ジヒドロキノン化合物(1)とアルコール化合物(2)との反応が停止/終了した時点を終点とする。反応の進行度合いは、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析手段により確認できる。
【0028】
反応終了後、必要に応じて、例えば、濾過、中和、抽出、水洗等の後処理、蒸留や結晶化等の単離処理等の有機合成化学において採用し得る処理、操作を施すことにより、アルコキシフェノール化合物(3)を単離することができる。
【0029】
得られた化合物の構造は、NMRスペクトル、IRスペクトル、マススペクトル等の測定、元素分析等により、同定することができる。
【0030】
本発明の方法により製造し得るアルコキシフェノール化合物(3)は、光学フィルムを製造するための材料となる重合性液晶化合物を製造するための原料として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
【0032】
1.実施例1
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン0.5g、1,6-ヘキサンジオール2.7g、トルエン2.5g、ペルオキシ二硫酸カリウム3.7gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液を、下記測定条件でHPLCにて分析したところ、4-(6-ヒドロキシへキシルオキシ)フェノールが得られた。
【0033】
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)]
(測定条件)
測定機種:SHIMAZU LC(島津製作所製)
使用カラム:YMC-Pack C4
検出波長:220nm
移動相:A液;10mMギ酸アンモニウム/水
B液;10mMギ酸アンモニウム/(水/アセトニトリル=1/9)
グラジエント条件:B液;5%→35min→55%→5min→100%(10min)→0.1min→5%(10min)
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
【0034】
HPLCにより求めた各成分の生成量に基づき、以下に従って転化率(%)および収率(%)を求めた。
【0035】
[転化率]
ジヒドロキノン化合物(1)の仕込み量に対して、反応終了時のジヒドロキノン化合物(1)の残存量との比率(モル比(%))から算出した原料消費率を転化率とした。結果を表1に示す。
【0036】
[収率]
ジヒドロキノン化合物(1)の仕込み量に対して、反応終了時に得られた4-(6-ヒドロキシへキシルオキシ)フェノールの生成量の比率(モル比(%))を収率とした。結果を表1に示す。
【0037】
2.実施例2
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン1.4g、1,6-ヘキサンジオール0.5g、水4.5g、ペルオキシ二硫酸カリウム1.1gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0038】
3.実施例3
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン1.4g、1,6-ヘキサンジオール0.5g、水4.5g、ペルオキシ二硫酸アンモニウム1.0gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
4.実施例4
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン1.4g、1,6-ヘキサンジオール0.5g、水4.5g、ペルオキシ二硫酸ナトリウム1.0gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0040】
5.比較例1
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン1.4g、1,6-ヘキサンジオール0.5g、水4.5g、ペルオキシ一硫酸カリウム2.6gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0041】
6.比較例2
攪拌機、温度センサーを備えた50mLのフラスコに、ハイドロキノン5.0g、1,6-ヘキサンジオール16.1g、水25g、30%過酸化水素水1.5gおよび硫酸0.4gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
7.比較例3
攪拌機、温度センサーを備えた30mLのフラスコに、ハイドロキノン1.4g、1,6-ヘキサンジオール0.5g、水4.5gおよび硫酸0.04gを加え、窒素気流下で80℃に昇温し、同温度で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて各成分の定量分析を行い、転化率および収率を求めた。結果を表1に示す。
【0043】