(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】ラテックス組成物、フォームラバー、およびパフ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/04 20060101AFI20250508BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20250508BHJP
C08J 9/30 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
C08L9/04
C08K5/42
C08J9/30 CEQ
(21)【出願番号】P 2021056232
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石葉 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 英和
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099501(WO,A1)
【文献】特開2022-025609(JP,A)
【文献】特開2004-107436(JP,A)
【文献】特開2004-204148(JP,A)
【文献】特開2007-089965(JP,A)
【文献】特開平11-060611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体ラテックスと、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩とを含有し、
前記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩の含有割合が、前記重合体ラテックス中に含まれる重合体成分100重量部に対して、1.0~5.0重量部であり、
固形分濃度が60重量%以上であり、温度25℃における粘度が1500cps以下である、
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項2】
数平均粒子径が500nm以上である、請求項1に記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩が、ナトリウム塩である、請求項1または2に記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記重合体ラテックスが、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスである、請求項1~3のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩が、炭素数3~30の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩である、請求項1~4のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項6】
温度25℃で測定される粘度が1200cps以下である請求項1~5のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物を発泡成形してなるフォームラバー。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の
フォームラバー用ラテックス組成物を発泡成形してなるパフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物、フォームラバー、およびパフに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体ラテックスを用いて製造されたフォームラバー(ゴム発泡体)は、マットレス、化粧用スポンジ(パフ)、ロール、衝撃吸収剤等として種々の用途に使用されている。
【0003】
このようなゴム発泡体を得るための重合体ラテックスとして、耐油性が良好であるという観点より、従来から、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)ラテックス、およびこれを含有するラテックス組成物が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたラテックス組成物は、起泡性および気泡の安定性が十分ではなく、その改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、凝集物の発生が有効に抑制され、起泡性および気泡の安定性に優れたラテックス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、重合体ラテックスと、特定のスルホン酸の金属塩とを含有し、特定範囲の固形分濃度および特定範囲の粘度を有するラテックス組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、重合体ラテックスと、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩とを含有し、固形分濃度が60重量%以上であり、温度25℃における粘度が1500cps以下である、ラテックス組成物が提供される。
【0009】
本発明のラテックス組成物の数平均粒子径が500nm以上であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩が、ナトリウム塩であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記重合体ラテックスが、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスであることが好ましい。
本発明のラテックス組成物において、前記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩が、炭素数3~30の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、温度25℃で測定される粘度が1200cps以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記ラテックス組成物を発泡成形してなるフォームラバーが提供される。
さらに、本発明によれば、上記ラテックス組成物を発泡成形してなるパフが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凝集物の発生が有効に抑制され、起泡性および気泡の安定性に優れるラテックス組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のラテックス組成物は、重合体ラテックスと、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩とを含有し、固形分濃度が60重量%以上であり、温度25℃における粘度が1500cps以下である。
【0013】
<重合体ラテックス>
本発明のラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスは、重合体粒子が水中に分散してなる分散液である。
【0014】
重合体粒子を構成する重合体としては、特に限定されないが、たとえば、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体;合成ポリイソプレン;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS);ポリブタジエン;天然ゴム;脱蛋白質天然ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体またはスチレンブタジエン共重合体が好ましい。得られるフォームラバーを、風合い、および、耐油性、耐摩耗性等の耐久性に優れたものとすることができることから、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体がより好ましい。重合体粒子を構成する重合体は、1種単独であってもよく、あるいは2種以上であってもよい。
【0015】
重合体粒子を構成する重合体は、カルボキシル基などの変性基を有するものであってもよいが、ゲル化性の観点から、カルボキシル基を有しない重合体が好ましい。なお、カルボキシル基を有しない重合体としては、カルボキシル基を実質的に有しない重合体であればよく、たとえば、不純物等に起因する程度の量(たとえば、単量体単位換算で、0.05重量%未満程度の量)であれば、カルボキシル基が含まれるものであってもよい。
【0016】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、共役ジエン単量体と、エチレン性不飽和ニトリル単量体とを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0017】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは20~95重量%であり、より好ましくは30~85重量%、さらに好ましくは40~80重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0018】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0019】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノまたはジメチル、マレイン酸モノまたはジ-n-ブチル、フマル酸モノまたはジエチル、フマル酸モノまたはジ-n-ブチル、イタコン酸モノまたはジ-n-ブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸のモノまたはジアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド及びその誘導体;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノ基を有するアクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン等の非共役ジエン単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。その他の単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0020】
また、スチレン-ブタジエン共重合体は、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンにスチレンを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0021】
本発明のラテックス組成物は、上記した重合体ラテックスに加えて、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を含む。本発明によれば、重合体ラテックスに対し、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を含有させることにより、凝集物の発生を有効に抑制しながら、起泡性および気泡の安定性に優れるラテックス組成物とすることができる。
【0022】
炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩は、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸アニオン基(-SO3
-)と対カチオンとの塩からなる構造を少なくとも1つ有するものであればよく、特に限定されない。炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩としては、アルカンスルホン酸の金属塩、アルキルスルホコハク酸の金属塩、または炭素数3以上の鎖状アルキル基と芳香環とを有するスルホン酸の金属塩を好適に用いることができる。
【0023】
炭素数3以上の鎖状アルキル基と芳香環とを有するスルホン酸の金属塩としては、芳香環として、ベンゼン環またはナフタレン環を有することが好ましく、ナフタレン環を有することがより好ましい。炭素数3以上の鎖状アルキル基と芳香環を有するスルホン酸としては、アルキルナフタレンスルホン酸の金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩を挙げることができる。これらのなかでも、起泡性および気泡の安定性により優れるラテックス組成物とできる側面から、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩が好ましく、優れた起泡性および気泡の安定性を有するとともに、フォームラバーとした場合の成形性により優れる側面から、アルキルナフタレンスルホン酸の金属塩がより好ましい。
【0024】
炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩は、アルカリ金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩であることがより好ましい。
炭素数3以上の鎖状アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよいが、起泡性および気泡の安定性により優れたものとすることができるという点より、直鎖状であることが好ましい。当該鎖状アルキル基の炭素数は、炭素数4以上であることが好ましく、炭素数5以上であることがより好ましく、炭素数6以上であることがさらに好ましく、炭素数7以上であることが特に好ましく、炭素数30以下であることが好ましく、炭素数20以下であることがより好ましく、炭素数15以下であることがさらに好ましく、炭素数12以下であることがさらにより好ましく、炭素数10以下であることが特に好ましい。
【0025】
上記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩としては、下記一般式(1)で表されるアルカンスルホン酸の金属塩、下記一般式(2)で表されるアルキルスルホコハク酸の金属塩、または下記一般式(3)で表されるアルキルナフタレンスルホン酸の金属塩を用いることが好ましい。
【化1】
[上記一般式(1)~(3)中、R
1~R
4は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数3以上のアルキル基を示す。一般式(2)におけるR
2とR
3は同じであっても異なっていてもよい。Mは金属を示す。]
【0026】
上記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩としては、製品名「ラテムルPS」(花王社製,アルカンスルホン酸ナトリウムの濃度40重量%水溶液)、製品名「ペレックスOT-P」(花王社製,ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの濃度70重量%の水溶液)、製品名「ペレックスNBL」(花王社製,アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度35重量%の水溶液)等を用いることができる。
炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明のラテックス組成物における、上記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩の含有割合は、重合体ラテックス中に含まれる重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.15~5.0重量部、より好ましくは0.1~4.0重量部、さらに好ましくは1.0~3.0重量部である。炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩の含有割合を上記範囲とすることにより、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を得ることができる。
【0028】
本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、60重量%以上であり、25℃における粘度が1500cps以下である。固形分濃度および25℃における粘度がこの範囲にあることにより、本発明のラテックス組成物をフォームラバー用途に用いた場合に、十分な強度を有するフォームラバーを適切に得ることができる。なお、本発明のラテックス組成物においては、固形分濃度が60重量%以上、25℃における粘度が1500cps以下であるものとするために、ラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスは、乳化重合により得られた重合体ラテックスについて、所定の肥大化処理を施すことにより、粒径が肥大化されたもの、すなわち、肥大化された重合体ラテックスであってもよい。
【0029】
ラテックス組成物の固形分濃度は、60重量%以上であり、好ましくは60~75重量%、より好ましくは60~70重量%である。固形分濃度が低すぎると、得られるフォームラバーの製造安定性や寸法安定性に劣るものとなってしまう。
【0030】
ラテックス組成物の25℃における粘度は、1500cps以下であり、好ましくは1200cps以下、より好ましくは1000cps以下である。なお、上記粘度の下限は、特に限定されないが、好ましくは100cpsである。粘度が高すぎると、起泡性および気泡の安定性に劣るものとなり、フォームラバーを適切に得ることができない。なお、本発明のラテックス組成物25℃における粘度は、B型粘度計を用い、温度25℃、回転速度60rpmの条件にて測定することができる。
本発明のラテックス組成物は、固形分濃度が60重量%以上であり、その固形分濃度(たとえば、実際に使用に供する固形分濃度)において、25℃における粘度が上記範囲であればよいが、固形分濃度65重量%とした場合に、25℃における粘度が上記範囲であることが好ましい。この場合において、ラテックス組成物の固形分濃度が65重量%未満である場合には、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を行って固形分濃度を調整した後に、ラテックス組成物の固形分濃度が65重量%を超える場合には、水を添加して希釈することにより固形分濃度を調整した後に、上記粘度測定を行うことができる。
【0031】
本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、限定されないが、好ましくは400nm以上、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは600nm以上である。上記重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径の上限は特に限定されないが、たとえば、5000nmである。重合体粒子の数平均分子量が上記範囲にあると、凝集物の発生が抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物とすることができ、得られるフォームラバーの品質を向上することができる。本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。ラテックス組成物に含まれる重合体ラテックスが、乳化重合により得られた重合体ラテックスについて、所定の肥大化処理を施すことにより、粒径が肥大化されたものである場合には、肥大化された重合体ラテックスを構成する重合体粒子の粒子径が上記範囲であればよい。
【0032】
本発明のラテックス組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
【0033】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ラテックス組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0035】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含むことが好ましい。
【0036】
架橋促進剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホニリル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
架橋促進剤の含有量は、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.05~5重量部であり、より好ましくは0.1~2重量部である。架橋剤促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0038】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含むことが好ましい。
【0039】
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、ラテックス組成物に含まれる重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0040】
本発明のラテックス組成物は、気泡安定剤;キレート剤;脱酸素剤;老化防止剤;防腐剤;抗菌剤;消泡剤;着色剤;増粘剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;pH調整剤などをさらに含有していてもよい。
【0041】
気泡安定剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物(たとえば、商品名「トリメンベース」、Crompton Corp社製)、ヘキサフルオロケイ酸塩などが挙げられる。気泡安定剤の配合量は、ラテックス組成物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度を向上させることができる。
【0042】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0043】
本発明のラテックス組成物の製造方法は、特に限定されないが、次の方法により製造することができる。すなわち、
重合体ラテックスを調製する調製工程と、
上記重合体ラテックスに、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を添加し、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を得る安定化工程と、
安定化された重合体ラテックス中の重合体粒子を肥大化させることで、肥大化された重合体ラテックスを含有するラテックス組成物を得る粒径肥大化工程と
を備える製造方法が挙げられる。
このような製造方法によれば、肥大化された重合体ラテックスと、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩とを含むラテックス組成物を得ることができる。
【0044】
(調製工程)
本発明のラテックス組成物に含まれる、重合体ラテックスを調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。重合体粒子が水中に分散してなる重合体ラテックスを調製する方法としては、たとえば、上記した単量体を乳化重合する方法、上記した単量体を溶液重合することにより得られる重合体の溶液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法、固体の重合体を有機溶媒に溶解または微分散してなる重合体の溶液または重合体の水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、生産性の観点から、単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る方法が好ましい。すなわち、調製工程において、単量体を乳化重合することが好ましい。
【0045】
単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る方法としては、乳化剤の存在下に、水中で、単量体を乳化重合する方法であればよく、従来公知の方法を採用することができる。この際においては、単量体としては、上記した単量体を上記した割合で用いればよい。また、たとえば、単量体を乳化重合する際には、通常用いられる、重合開始剤、キレート剤、酸素補足剤、分子量調整剤、pH調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0046】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、たとえば、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、たとえば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック(登録商標)型等の乳化剤が挙げられる。これらのなかでも、樹脂酸塩または脂肪酸塩が好ましく、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、オレイン酸カリウムがさらに好ましい。また、これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部未満であり、より好ましくは1~9重量部、さらに好ましくは1~5重量部、よりさらに好ましくは1~4重量部である。
【0047】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~2重量部である。
【0048】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3~1000重量部であることが好ましい。
【0049】
分子量調整剤としては、たとえば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、α-メチルスチレンダイマー、ターピノレンなどが挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。分子量調整剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.2~2重量部、特に好ましくは0.3~1.5重量部である。分子量調整剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を向上させることができる。
【0050】
乳化重合する際に使用する水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、80~600重量部が好ましく、100~200重量部がさらに好ましい。
【0051】
乳化重合反応は、連続式、回分式のいずれでもよく、重合時間等も特に限定されない。単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。なお、重合体ラテックスとして、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを製造する場合において、重合反応を開始した後に、単量体の一部を反応器に添加して重合を継続する方法を用いる場合には、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体の一部を反応器に添加して、重合反応を開始した後、反応器内の重合反応率が20~65%である間に、共役ジエン単量体の残部を一括または分割して反応器に添加し、さらに重合反応を継続する方法が挙げられる。この際においては、重合反応を開始した後に添加する共役ジエン単量体の割合は、重合に用いる共役ジエン単量体全量の20~60重量%とすることが好ましい。
【0052】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合を停止する際の重合転化率は、特に限定されないが、好ましくは75重量%以上である。重合転化率は低すぎても、高すぎても、生産性が低下する傾向にある。重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~35℃である。
【0053】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部である。
【0054】
以上のようにして重合反応を行い、重合体粒子が水中に分散してなる重合体ラテックスを得ることができる。必要に応じて重合体ラテックスから未反応単量体を除去してもよい。
【0055】
乳化重合により得られる重合体ラテックス中における重合体粒子の数平均粒子径は400nm以下であることが好ましい。重合体粒子の数平均粒子径は、ラテックス組成物の生産性の観点から、100nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上200nm以下がより好ましい。重合体粒子の数平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0056】
重合体粒子の数平均粒子径は、単量体を乳化重合することにより重合体ラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、開始剤の種類および量、水量、重合時間等の重合条件を調整することにより、制御することができる。また、重合体の溶液または重合体の水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化することにより重合体ラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、水量、重合体の溶液または重合体の水性分散液と水との混合条件等の乳化条件を調整することにより、制御することができる。
【0057】
重合体ラテックスの固形分濃度は、通常、10重量%~50重量%である。重合体ラテックスの固形分濃度は、40重量%未満であってもよい。重合体ラテックスの固形分濃度は、安定化された重合体ラテックスの固形分濃度の測定方法として後述する方法により測定することができる。
【0058】
(安定化工程)
安定化工程においては、上記重合体ラテックスに、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を添加し、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を得る。
【0059】
安定化工程における、上記炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩の添加量は、重合体ラテックス中に含まれる重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.15~5.0重量部、より好ましくは0.1~4.0重量部、さらに好ましくは1.0~3.0重量部である。炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩の添加割合を上記範囲とすることにより、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を得ることができる。
【0060】
また、安定化工程においては、重合体ラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を添加する前、あるいは、添加した後に、必要に応じて重合体ラテックスの固形分濃度を調整することにより、ラテックスの固形分濃度を40重量%以上60重量%未満の範囲とすることが好ましい。
【0061】
重合体ラテックスの固形分濃度の調整は、特に限定されないが、調製工程により得られた重合体ラテックスの固形分濃度に応じて、重合体ラテックスを濃縮または希釈する方法により行うことができる。
【0062】
重合体ラテックスを濃縮する方法としては、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法が挙げられる。重合体ラテックスを濃縮する方法としては、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。また、重合体ラテックスを希釈する方法としては、水を添加する方法が挙げられる。
【0063】
蒸留を行う際の温度としては、30℃~100℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましい。蒸留を行う際の圧力(ゲージ圧)としては、-0.1~0.0MPa0MPaが好ましく、-0.05~-0.099MPaがより好ましい。
【0064】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000G、遠心分離前の重合体ラテックスの固形分濃度を、好ましくは2~15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を得ることができる。
【0065】
安定化された重合体ラテックスを含有する組成物の固形分濃度は、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、好ましくは40~55重量%であり、より好ましくは42~52重量%である。
【0066】
(粒径肥大化工程)
粒径肥大化工程においては、調製工程、および安定化工程を経て得られた安定化された重合体ラテックスを含有する組成物中に含まれる、重合体ラテックスを肥大化させる。粒径肥大化工程においては、ラテックスの乳化状態を不安定にし、重合体粒子を合一化させることにより、肥大化させることのできる化合物を添加する。
【0067】
フォームラバーの製造に用いられるラテックス組成物は、フォームラバーとした場合における成形性の観点より、比較的高濃度(たとえば、固形分濃度60重量%以上)のものであることが望まれる一方で、高濃度とすると、流動性が低下してしまうことから、流動性を維持しつつ、濃度を高めるための手法として、ラテックス組成物に含まれる重合体粒子の肥大化処理が一般的に行われている。
【0068】
ここで、フォームラバーの製造に用いられるラテックス組成物には、乳化重合に用いられる乳化剤に加えて、安定化剤として、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を用いる方法が知られている。一方で、重合体粒子の肥大化処理は、ラテックス組成物の乳化状態を不安定にさせることで、重合体粒子を合一化するものであることから、反応容器の器壁に凝固物を形成して付着したり、得られるラテックス組成物の粘度が上昇してしまう等の課題があった。また、フォームラバーとして使用した際に、起泡性や気泡の安定性に劣るという課題があった。
これに対し、本発明の製造方法によれば、安定化剤としての、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物に代えて、スルホン酸の金属塩として、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するもの、具体的には、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を、上記安定化工程において配合することにより、得られるラテックス組成物の粘度の上昇を抑制することができ、さらには、得られるラテックス組成物を、起泡性および気泡の安定性に優れるものとすることができるものである。
【0069】
粒径肥大化工程においては、重合体粒子を肥大化させる化合物として、たとえば、酸性物質を用いることができる。酸性物質としては、pKaが0~4の酸性物質を用いることができる。酸性物質とは、水中で電離した場合にH+を放出する物質である。酸性物質のpKaが上記範囲であれば、重合体ラテックスの凝固を抑制するとともに、粒径肥大化を効率的に進行させることができる。
【0070】
本明細書において、pKaとは、25℃の水中における解離指数を表す。解離指数とは、HAで表される酸が、水中において、H+とA-に電離し、電離平衡となった状態における、平衡定数Ka:
Ka=[H+][A-]/[HA]
([ ]は各物質のモル濃度を表す。)
の逆数の常用対数である。
【0071】
酸性物質が、多段階で電離する物質である場合には、酸性物質のpKaは、イオン化前の酸性物質と、一段階電離した物質(一価のアニオンとH+)とが電離平衡となった状態における平衡定数から算出されるpKaを意味する。たとえば、本明細書において、リン酸のpKaは、H3PO4と、H2PO4
-およびH+との電離平衡状態における平衡定数から算出される解離指数pKa=2.12を意味する。
【0072】
pKaが0~4の酸性物質としては、たとえば、シュウ酸、亜硫酸、リン酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、乳酸が挙げられる。pKaが0~4の酸性物質としては、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、リン酸またはクエン酸が好ましく、リン酸がより好ましい。pKaが0~4の酸性物質は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
pKaが0~4の酸性物質のpKaは、特に限定されないが、好ましくは0~4、より好ましくは1.0~3.5、さらに好ましくは1.5~3.3、よりさらに好ましくは1.8~2.4である。酸性物質のpKaが上記範囲にあれば、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができる。
【0074】
粒径肥大化工程における、pKaが0~4の酸性物質の添加量としては、特に限定されないが、得られるラテックス組成物の凝集物がより抑制される観点から、安定化ラテックス100重量部に対して0.1~50重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましい。
【0075】
pKaが0~4の酸性物質を、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法としては、純粋なpKaが0~4の酸性物質を、そのまま、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法や、pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法が挙げられる。得られるラテックス組成物の安定性および生産性の観点から、pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法が好ましい。pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液中における、pKaが0~4の酸性物質の濃度は、pKaが0~4の酸性物質の種類や、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物の固形分濃度等に応じて適宜決定すればよいが、得られるラテックス組成物の安定性および生産性の観点から、1重量%~30重量%が好ましく、2重量%~20重量%がより好ましい。
【0076】
pKaが0~4の酸性物質を、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する際には、全量のpKaが0~4の酸性物質を一度に添加してもよく、pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して添加してもよく、pKaが0~4の酸性物質を連続的に添加してもよい。得られるラテックス組成物の安定性の観点から、pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法、または、pKaが0~4の酸性物質を連続的に安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法が好ましい。
【0077】
pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法、または、pKaが0~4の酸性物質を連続的に安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加する方法において、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物へのpKaが0~4の酸性物質の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、起泡性および気泡の安定性に優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、0.5~120分間が好ましく、0.5~60分間がより好ましい。
【0078】
粒径肥大化工程においては、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を撹拌しながらpKaが0~4の酸性物質を添加することが好ましい。安定化された重合体ラテックスを含有する組成物の撹拌方法としては、たとえば、パドル型撹拌翼等の撹拌装置を用いて、回転速度50~2,500rpmで撹拌する方法が挙げられる。
【0079】
また、粒径肥大化工程においては、pKaが0~4の酸性物質を安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に添加した後に、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を撹拌してもよい。pKaが0~4の酸性物質を添加した後の、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物の撹拌条件としては、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、回転速度は50~2,500rpmが好ましく、50~1000rpmがより好ましく、撹拌時間は0.5時間~12時間が好ましく、0.5時間~5時間がより好ましい。
【0080】
粒径肥大化工程により、重合体粒子を肥大化させることにより、数平均粒子径が400nm以上の肥大化された重合体粒子とすることが好ましい。肥大化された重合体粒子の数平均粒子径が400nm以上であれば、得られるラテックス組成物は、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れるため好ましい。重合体ラテックス中における肥大化された重合体粒子の数平均粒子径は、より好ましくは500nm以上、さらに好ましくは600nm以上である。上記重合体ラテックス中の肥大化された重合体粒子の数平均粒子径の上限は特に限定されないが、たとえば、5000nmである。粒径肥大化ラテックス中における肥大化された重合体粒子の数平均粒子径は、重合体ラテックス中におけるゴム粒子の数平均粒子径の測定方法と同様にして測定することができる。
【0081】
粒径肥大化工程におけるpHは、特に限定されないが、好ましくは2.0~6.0、より好ましくは3.0~5.5、さらに好ましくは3.0~5.2である。粒径肥大化工程におけるpHが上記範囲であると、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができる。
【0082】
粒径肥大化工程に続いて、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加する工程を含むことが好ましい。肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加することにより、凝集物の発生が抑制されたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができる。
【0083】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などのアルカリ金属炭酸塩の水溶液;炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液;アンモニア水溶液;トリメチルアミン水溶液、トリエタノールアミン水溶液などの有機アミン化合物の水溶液;等が挙げられるが、アルカリ金属水酸化物の水溶液またはアンモニアの水溶液が好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニアの水溶液がより好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液がさらに好ましい。
【0084】
アルカリ水溶液を添加した後の、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物のpHとしては、7.5~12.0が好ましく、8.0~11.0がより好ましい。
【0085】
本発明においては、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を固形分濃度60重量%以上に濃縮する濃縮工程を含むことが好ましい。
【0086】
粒径肥大化工程において、肥大化された重合体ラテックス、たとえば、数平均粒子径が400nm以上である肥大化された重合体粒子が水中に分散してなる肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を得ることができる。このような肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物は、濃縮時の流動性に優れており、固形分濃度を容易に60重量%以上(フォームラバー製造用途として好適な固形分濃度)とすることができる。そして、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を、固形分濃度60重量%以上に濃縮することにより、得られるラテックス組成物を、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたものとすることができ、さらには、得られるフォームラバーの品質(たとえば、気泡の均一性や強度)を向上させることもできる。
【0087】
肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を濃縮する方法としては、重合体ラテックスを濃縮する方法として上述した方法およびその条件を適宜採用することができる。肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を濃縮する方法としては、凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。
【0088】
濃縮後のラテックス組成物の固形分濃度としては、60重量%以上が好ましい。凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産することができ、さらに、得られるフォームラバーの品質を向上することもできることから、濃縮後のラテックス組成物の固形分濃度としては、60~75重量%がより好ましく、60~70重量%がさらにより好ましい。
【0089】
本発明の製造方法が、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加する工程、および、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を固形分濃度60重量%以上に濃縮する工程を含む場合には、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加した後に、アルカリ水溶液を添加した肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を固形分濃度60重量%以上に濃縮してもよく、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を固形分濃度60重量%以上に濃縮した後に、濃縮後の肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加してもよい。凝集物の発生がより抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性により優れたラテックス組成物を、より高い生産性にて生産する観点から、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物にアルカリ水溶液を添加した後に、アルカリ水溶液を添加した肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を固形分濃度60重量%以上に濃縮することが好ましい。
【0090】
<フォームラバー>
本発明のフォームラバーは、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られるものである。本発明のラテックス組成物は、凝集物の発生の抑制、起泡性および気泡の安定性に優れている。よって、本発明のラテックス組成物を用いることで、高品質のフォームラバーを高い生産性にて製造することができる。フォームラバーの製造方法としては、本発明のラテックス組成物を、発泡および凝固させる製造方法が好ましい。
【0091】
本発明のラテックス組成物を発泡させる際には、通常空気が用いられる。たとえば、ラテックス組成物を攪拌し、空気を巻き込むことで発泡させることができる。この際、たとえば、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質を、本発明のラテックス組成物に添加して発泡させることもできる。
【0092】
本発明のラテックス組成物を発泡させて、発泡物を得た後、発泡状態を固定化するために、発泡物を凝固させることが好ましい。凝固方法は、発泡物をゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡物に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡物に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、発泡物中の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部である。
【0093】
発泡物に凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、発泡物を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0094】
得られたフォームラバーは、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0095】
本発明のラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0097】
<重合体粒子の数平均粒子径>
光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて、重合体粒子の数平均粒子径(nm)を求めた。
【0098】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=(X3-X1)×100/X2
【0099】
<粘度>
各実施例および比較例にて得られた、肥大化処理後のラテックス組成物について、温度25℃の条件にて、B型粘度計を使用して回転速度60rpmにて測定することにより、B型粘度を測定した。
【0100】
<重合体粒子の数平均粒子径>
光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて、重合体粒子の数平均粒子径(nm)を求めた。
【0101】
<凝集物量>
ラテックス組成物の固形分濃度を測定した後、そのラテックス組成物約100gを精秤した後、重量既知の80メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックス組成物を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、凝集物の含有量を、ラテックス組成物中に含まれる重合体の成分の量を100%とした際の割合として求めた(単位:%)。凝集物の含有量が少ないほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
【0102】
<起泡性>
各実施例および比較例で得られたラテックス組成物を用いてクラクソン試験を行い、10cmの泡高さになるまでの時間を測定した。当該時間が短いほど、起泡性に優れる。
【0103】
<消泡性>
上記クラクソン試験を行い10cmの泡高さとした後、2時間静置した後の液面の低下を測定した。液面低下の程度が低いほど、泡の安定性に優れる。
【0104】
<実施例1>
(調製工程)
耐圧反応容器に、水200部、オレイン酸カリウム(OLK)3.9部、アクリロニトリル55部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.03部、硫酸第一鉄0.003部、エチレンジアミン四酢酸・ナトリウム0.008部を添加し、十分に脱気した後、1,3-ブタジエン25部を添加した。次いで、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加して、反応温度5℃で乳化重合を開始した。重合転化率が40%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。さらに、重合転化率が60%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。重合転化率が80%になった時点で、ジエチルヒドロキシルアミン0.25部および水5部からなる重合停止剤溶液を添加して重合反応を停止させ、未反応単量体を除去し、重合体ラテックスを得た。重合体ラテックス中の重合体粒子の数平均粒子径は、120nmであった。
【0105】
(安定化工程)
得られた重合体ラテックスに、アルカンスルホン酸ナトリウム水溶液(アルカンスルホン酸ナトリウムの濃度40重量%水溶液、製品名「ラテムルPS」、花王社製、上記一般式(1)で表される化合物であり、R1が、炭素数が3以上30以下の直鎖アルキル基である化合物)を、重合体成分100部に対するアルカンスルホン酸ナトリウム量が2.2部となるように添加した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱することにより、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物を得た。
【0106】
(粒径肥大化工程)
得られた安定化された重合体ラテックスを含有する組成物に、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油(商品名「DF714S」、星光PMC社製)0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、リン酸水溶液(リン酸濃度10重量%)を、安定化された重合体ラテックスを含有する組成物100部に対するリン酸の割合が1.7部となるように添加した。なお、リン酸水溶液の添加は複数回に分割して行い、リン酸水溶液の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、30分間であった。リン酸水溶液の添加を終了した後、1.0時間撹拌を継続し、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物を得た。
【0107】
得られた肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物に水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム濃度3重量%)を添加して、肥大化された重合体ラテックスを含有する組成物のpHを10.0に調整した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱し、固形分濃度65重量%のラテックス組成物を得た。得られたラテックス組成物について、上記方法にしたがって、重合体粒子の数平均粒子径、凝集物量、粘度、起泡性および消泡性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0108】
<実施例2>
安定化工程における、アルカンスルホン酸ナトリウム量を2.7部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0109】
<実施例3>
安定化工程におけるアルカンスルホン酸ナトリウムを、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム水溶液(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの濃度70重量%の水溶液、製品名「ペレックスOT-P」、花王社製、上記一般式(2)で表される化合物であり、R2およびR3が、いずれも、炭素数が8の直鎖アルキル基である化合物)に変更し、その添加量を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムが2.7部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。
実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0110】
<実施例4>
安定化工程におけるアルカンスルホン酸ナトリウムを、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム水溶液(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度35重量%の水溶液、製品名「ペレックスNBL」、花王社製、下記一般式(3-1)で表される化合物であり、R
4が炭素数が3以上30以下の直鎖アルキル基であり、Mがナトリウムである化合物)に変更し、その添加量を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムが2.2部となる量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。
実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【化2】
【0111】
<比較例1>
安定化工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。得られたラテックス組成物は凝集してしまい、安定性に劣るものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0112】
<比較例2>
安定化工程におけるアルカンスルホン酸ナトリウムを、NASF水溶液(β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)の濃度45重量%水溶液、製品名「デモールT-45」、花王社製)に変更し、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩が2.2部となる量で添加したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0113】
<比較例3>
安定化工程におけるNASFの添加量を、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する、NASFが2.7部となる量に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、ラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0114】
<比較例4>
安定化工程におけるアルカンスルホン酸ナトリウムを、ラウリル硫酸アンモニウム水溶液(ラウリル硫酸アンモニウムの濃度24重量%水溶液、製品名「ラテムルAD-25」、花王社製)に変更し、重合体ラテックス中の重合体成分100部に対する、ラウリル硫酸アンモニウムが2.2部となる量で添加したこと以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物を得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0115】
【0116】
表1に示すように、重合体ラテックスと、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩とを含み、特定範囲の固形分濃度と特定範囲の粘度を有するラテックス組成物によれば、凝集物の発生が抑制されるとともに、起泡性および気泡の安定性に優れたラテックス組成物を得ることができた(実施例1~4)。
【0117】
一方、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩を含まない場合(比較例1)は、凝集物が発生し、ラテックスの安定性に劣るものであった。炭素数3以上の鎖状アルキル基を有さない、スルホン酸の金属塩であるNASFを用いた場合(比較例2および比較例3)は、得られるラテックス組成物が増粘するとともに、起泡性および気泡の安定性に劣るものであった。
【0118】
炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸の金属塩ではなく、炭素数3以上の鎖状アルキル基を有するスルホン酸のアンモニウム塩を用いた場合(比較例4)は、得られたラテックス組成物は沈殿を生じてしまい、フォームラバー成形が不可となった。