(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】リラックス効果誘導剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/65 20060101AFI20250508BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20250508BHJP
A61K 31/341 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/17 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/232 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/234 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/25 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/484 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/488 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/725 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/804 20060101ALI20250508BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20250508BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
A61K36/65
A61K31/122
A61K31/341
A61K36/17
A61K36/232
A61K36/234
A61K36/25
A61K36/484
A61K36/488
A61K36/54
A61K36/725
A61K36/804
A61K36/9068
A61P25/20
(21)【出願番号】P 2020217818
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 美咲
(72)【発明者】
【氏名】赤木 淳二
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴大
(72)【発明者】
【氏名】弘津 圭祐
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-288101(JP,A)
【文献】特開2011-157344(JP,A)
【文献】特開2005-187394(JP,A)
【文献】特開2020-055826(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0084161(KR,A)
【文献】医師・薬剤師リレー治験録(10)目は心の使者,漢方の臨床,2005年,vol.52, no.1,pp.119-123,JDreamIII, [online], [検索日:2024.10.25], 整理番号 05A0110391
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00-25/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスを含む、リラックス効果誘導剤
(但し、りょう桂じゅつ甘湯を含むものを除く)。
【請求項2】
水に溶いて飲用する、請求項1に記載のリラックス効果誘導剤。
【請求項3】
1-シクロペンテン-3,5-ジオン、シクロペンタン-1,2ジオン及びフルフラールの含有量が、総量で、前記四物湯エキス及び独活葛根湯エキスの乾燥エキス換算量1g当たり0.4μg以上である、請求項1又は2に記載のリラックス効果誘導剤。
【請求項4】
前記四物湯エキス及び独活葛根湯エキスが110℃以上の熱履歴を受けていない、請求項1~3のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
【請求項5】
前記四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスの濃縮液を含む、請求項1~4のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
【請求項6】
前記四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスのフリーズドライ物を含む、請求項1~4のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラックス効果の誘導効果を示す漢方製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、日常生活においてストレスにさらされる機会が多く、心の緊張状態をいかにしてほぐし、うまくストレスと付き合っていくかが重要視されている。
【0003】
昨今、心身の不調を自分で管理し適切にコントロールする、セルフメディケーションの考え方が浸透しつつある。その中で漢方薬が利用される機会はますます増加している。
【0004】
漢方薬は、その多くが、複数生薬からなる調合物のエキスを有効成分とする。漢方薬の中には、様々な臓器の調子を整えるものだけでなく、不安感及び緊張感などのメンタル面の不調を改善するものもある。メンタル面の不調に対して用いられる漢方薬としては、半夏厚朴湯エキス、桂枝加竜骨牡蛎湯エキス、加味帰脾湯が挙げられる。
【0005】
具体的には、半夏厚朴湯エキスの効能については、「気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声」とされており(非特許文献1)、桂枝加竜骨牡蛎湯エキスの効能については、「体質の虚弱な人で疲れやすく、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、小児夜尿症、眼精疲労」とされており(非特許文献2)、加味帰脾湯エキスの効能については、「虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症」とされている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】医薬品インタビューフォーム、漢方製剤 テイコク半夏厚朴湯エキス顆粒、2014年7月(改訂第6版)
【文献】医薬品インタビューフォーム、漢方製剤 テイコク桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒、2017年8月(改訂第6版)
【文献】医薬品インタビューフォーム、漢方製剤 オースギ加味帰脾湯エキスG、2018年2月改訂(第3版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、漢方薬の中には神経症等のメンタル面の不調に対して用いられるものがあるが、現代人特有のストレスフルな日常生活の中では、心の緊張状態を感じた段階でより直接的にリラックス効果が得られるような新たな漢方薬があることが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、リラックス効果が得られる新たな漢方薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、四物湯エキス及び独活葛根湯エキスに、リラックス効果を誘導する効果があることを新たに見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスを含む、リラックス効果誘導剤。
項2. 水に溶いて飲用する、項1に記載のリラックス効果誘導剤。
項3. 1-シクロペンテン-3,5-ジオン、シクロペンタン-1,2ジオン及びフルフラールの含有量が、総量で、前記四物湯エキス及び独活葛根湯エキスの乾燥エキス換算量1g当たり0.4μg以上である、項1又は2に記載のリラックス効果誘導剤。
項4. 前記四物湯エキス及び独活葛根湯エキスが110℃以上の熱履歴を受けていない、項1~3のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
項5. 前記四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスの濃縮液を含む、項1~4のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
項6. 前記四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスのフリーズドライ物を含む、項1~4のいずれかに記載のリラックス効果誘導剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リラックス効果が得られる新たな漢方薬が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のリラックス効果誘導剤は、所定の漢方エキスを含有することを特徴とする。以下、本発明のリラックス効果誘導剤について詳述する。
【0013】
所定の漢方エキス
本発明で用いられる所定の漢方エキスは、四物湯エキス及び/又は独活葛根湯エキスである。
【0014】
四物湯は、シャクヤク、ジオウ、センキュウ、及びトウキからなる混合生薬である。四物湯エキスの製造に用いられる生薬調合物を構成する生薬の混合比としては特に制限されないが、例えば、シャクヤク1.5~5重量部、ジオウ1.5~5重量部、センキュウ1.5~5重量部、及びトウキ1.5~5重量部が挙げられる。独活葛根湯は、カッコン、ケイヒ、シャクヤク、マオウ、ドクカツ、ショウキョウ、ジオウ、タイソウ、及びカンゾウからなる混合生薬である。独活葛根湯エキスの製造に用いられる生薬調合物を構成する生薬の混合比としては特に制限されないが、例えば、カッコン2.5~5重量部、ケイヒ1.5~3重量部、シャクヤク1.5~3重量部、マオウ1~2重量部、ドクカツ1~2重量部、ショウキョウ0.25~1重量部、ジオウ2~4重量部、タイソウ0.5~2重量部、及びカンゾウ0.5~2重量部が挙げられる。
【0015】
所定の漢方エキスの濃縮液は、漢方処方に従った生薬調合物を抽出処理し、得られた抽出液を濃縮することにより得ることができる。抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノール、好ましくは水が挙げられる。抽出処理方法としては、生薬調合物に対して、約10~20倍量の抽出溶媒を加え、40~100℃、50~100℃、60~100℃、80~100℃、又は90~100℃程度で1~3時間程度撹拌して抽出する方法が挙げられる。濃縮方法としては特に限定されず、例えば、減圧下濃縮法、膜濃縮法、加熱濃縮法が挙げられる。また、所定の漢方エキスの乾燥物は、上記漢方エキスの濃縮液を乾燥処理することにより得ることができる。乾燥処理の方法としては特に限定されず、例えば、フリーズドライ法、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法、減圧留去法、スプレードライ法等が挙げられる。
【0016】
本発明において、上記所定の漢方エキスとしては四物湯エキス及び独活葛根湯エキスのいずれか一方を含んでもよいし、両方を含んでもよい。リラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、上記所定の漢方エキスとしてはより好ましくは四物湯エキスが挙げられる。
【0017】
上記所定の漢方エキスは、リラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、1-シクロペンテン-3,5-ジオン、シクロペンタン-1,2ジオン及びフルフラールからなる群より選択される香気成分を含むことが好ましい。また上記所定の漢方エキス中に含まれる当該香気成分の含有量としては特に限定されないが、リラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、総量で、当該漢方エキスの乾燥エキス換算量1g当たり例えば0.4μg以上、好ましくは5μg以上、より好ましくは8μg以上、さらに好ましくは10μg以上、一層好ましくは13μg以上を含有する。上記所定の漢方エキス中に含まれる上記の香気成分の含有量(総量)範囲の上限としては特に限定されないが、当該漢方エキスの乾燥エキス換算量1g当たり、例えば20μg以下又は16μg以下が挙げられる。
【0018】
また、上記所定の漢方エキス中の1-シクロペンテン-3,5-ジオンの含有量としては特に限定されず、付与すべきリラックス効果の誘導効果に応じて適宜決定することができるが、リラックス効果の誘導効果をより一層向上させる観点から、当該漢方エキスの乾燥エキス換算量1g当たり好ましくは0.1μg以上、より好ましくは1μg以上、さらに好ましくは2μg以上、一層好ましくは3μg以上が挙げられる。上記所定の漢方エキス中のシクロペンタン-1,2ジオンの含有量としては特に限定されず、付与すべきリラックス効果の誘導効果に応じて適宜決定することができるが、リラックス効果の誘導効果をより一層向上させる観点から、当該漢方エキスの乾燥エキス換算量1g当たり好ましくは0.1μg以上、好ましくは1μg以上、さらにより好ましくは2μg以上、一層好ましくは3μg以上、より一層好ましくは3.5μg以上が挙げられる。上記所定の漢方エキス中のフルフラールの含有量としては特に限定されず、付与すべきリラックス効果の誘導効果に応じて適宜決定することができるが、リラックス効果の誘導効果をより一層向上させる観点から、当該漢方エキスの乾燥エキス換算量1g当たり好ましくは0.2μg以上、より好ましくは2μg以上、さらに好ましくは4μg以上、一層好ましくは6μg以上より一層好ましくは7μg以上が挙げられる。
【0019】
本発明の漢方エキス製剤において、上記所定の漢方エキスは、当該漢方エキスの濃縮液の形態で含まれていてもよいし、当該漢方エキスの乾燥物の形態で含まれていてもよい。漢方エキスの濃縮液とは、漢方エキスと溶媒(例えば、漢方エキスの抽出に用いた抽出溶媒)とを含み、濃縮エキスに含まれる漢方エキス濃度(乾燥エキス換算量)が、その漢方の煎じ薬に含まれる漢方エキス濃度(乾燥エキス換算量)より高められている又は服用時に希釈することを要する程度に高められているものをいう。漢方エキスの乾燥物は、漢方エキスの抽出に用いられた溶媒が除去されていればよい。
【0020】
本発明の漢方エキス製剤において、上記所定の漢方エキスは、その調製過程における上記の香気成分の損失を抑制してリラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、少なくとも110℃以上の熱履歴を受けていないものであることが好ましい。例えば、上記所定の漢方エキスは、エキスの抽出を上記の温度で行い、その後の濃縮又は乾燥を、90℃未満、好ましくは80℃未満、さらに好ましくは60℃未満、一層好ましくは50℃未満、より一層好ましくは40℃未満の温度条件で行って得られたものであることが好ましい。このような観点から、上記所定の漢方エキスが濃縮液の形態で含まれている場合には、当該濃縮液は減圧下濃縮物であることが好ましく、上記所定の漢方エキスが乾燥物の形態で含まれている場合には、当該乾燥物はフリーズドライ物であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の漢方エキス製剤において、上記所定の漢方エキスは、その調製過程における上記の香気成分の損失を抑制してリラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、漢方エキス液を微粒子化して溶媒を急激に蒸発させる工程を経ていないものも好ましい。このような観点からも、上記所定の漢方エキスが濃縮液の形態で含まれている場合には、当該濃縮液は減圧下濃縮物であることが好ましく、上記所定の漢方エキスが乾燥物の形態で含まれている場合には、当該乾燥物はフリーズドライ物であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明の漢方エキス製剤は、上記所定の漢方エキスが110℃以上の熱履歴を受けているものを含む場合、及び/又は上記所定の漢方エキスが漢方エキス液を微粒子化して溶媒を急激に蒸発させる工程を経て調製されたものを含む場合を除外するものではない。これらの場合は、110℃以上の熱履歴を受けて調製された上記所定の漢方エキス及び/又は漢方エキス液を微粒子化して溶媒を急激に蒸発させる工程を経て調製された上記所定の漢方エキスに、上記の香気成分を添加剤として追加配合すればよい。
【0023】
本発明の漢方エキス製剤中の上記所定の漢方エキスの含有量(乾燥エキス換算量)としては特に限定されず、漢方エキス製剤の剤型により異なりうるが、例えば20~100重量%、好ましくは25~100重量%が挙げられる。
【0024】
その他の成分
本発明の漢方エキス製剤は、上記所定の漢方エキスのみからなるものであってもよいし、製剤形態に応じた添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料(上記のヒドロキシケトン系香気成分等)、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、漢方エキス製剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0025】
また、本発明の漢方エキス製剤は、上記所定の漢方エキスの他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0026】
製剤形態
本発明の漢方エキス製剤の製剤形態については特に限定されないが、具体的な製剤形態としては、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤(ドライシロップを含む)等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。本発明の漢方エキス製剤をこれらの製剤形態に調製するには、有効成分である上記所定の漢方エキス、及び必要に応じて添加される添加剤、基剤、及び薬理成分を用いて、通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0027】
服用方法
本発明の漢方エキス製剤は、経口投与すればよい。1回当たりの用量としては、漢方エキスの乾燥エキス換算量で、例えば0.5~5g、好ましくは0.75~2g、より好ましくは1~1.5gが挙げられ、1日に1~3回服用することができる。リラックス効果の誘導効果をより一層高める観点から、本発明の漢方エキス製剤は、服用時に水に溶いて飲用することが好ましい。水の温度としては特に限定されないが、上記の香気成分による香りが立ちやすく、リラックス効果の誘導効果をさらに一層高める観点から、好ましくは20~75℃、より好ましくは30~65℃、より好ましくは35~40℃が挙げられる。水に溶くとは、水に完全に溶解させることは要さず、水中に分散させることも含まれる。水の使用量としては、水に溶いた漢方エキス製剤の全量が例えば80~150ml、好ましくは90~120mlとなる程度が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(1)漢方エキス製剤の調製
(1-1)独活葛根湯エキス濃縮液の調製
原料生薬として、カッコン1.5g、ケイヒ1.5g、シャクヤク1.5g、マオウ1.0g、ドクカツ1.0g、ショウキョウ0.167g、ジオウ1.0g、タイソウ0.5g、及びカンゾウ0.5gの割合で用い、これらを刻んだ後、水15倍重量を用いて約100℃で1時間間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、独活葛根湯エキス濃縮液を得た。濃縮液の1回用量は5g(漢方エキスの乾燥エキス換算量1.25g)である。
【0030】
(1-2)四物湯エキス濃縮液の調製
原料生薬として、シャクヤク1.5g、ジオウ1.5g、センキュウ1.5g、及びトウキ1.5gの割合で用い、これらを刻んだ後、水15倍重量を用いて約100℃で1時間間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮し、四物湯エキス濃縮液の濃縮液を得た。濃縮液の1回用量は5g(漢方エキスの乾燥エキス換算量1.25g)である。
【0031】
(2)香気成分の測定
GC/MSを用いて漢方エキスに含有される香気成分の含有量を測定した。カラムに関しては、DB-WAX(膜厚0.25μm、長さ30m、内径0.25mm)を用いた。カラム温度は60℃から150℃までは10℃/min、45℃から160℃までは10℃/min、100℃から160℃までは15℃/min、160℃から240℃までは20℃/minのペースで上昇させた。分析の間、検出器の温度は、それぞれ300℃に保った。各標準品から算出した検量線を用いて定量を行った。濃縮液は原液を用い、0.5μLを注入した。結果を表1に示す。
【0032】
(3)リラックス効果の誘導効果の評価
得られた漢方エキス5g(漢方エキスの乾燥エキス換算量1.25g)に37℃の水を加えて全量を100mlとし、20歳代~50歳代の男女10名を被験者として飲用させ、リラックス効果の実感の度合いを、「実感した」「どちらかというと実感した」「どちらともいえない」「どちらかというと実感しなかった」及び「実感しなかった」の5段階で評価させた。全被験者中、「実感した」及び「どちらかというと実感した」と評価した人数の割合を有効率とした。結果を表1に示す。
結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
表1に示されるとおり、実施例1及び実施例2の漢方エキス製剤では、優れたリラックス効果の誘導効果が認められた。また、独活葛根湯エキス濃縮液(実施例2)に比べて四物湯エキス濃縮液(実施例1)によるリラックス効果の誘導効果は顕著に高く、この結果は、上記の香気成分の含有量が独活葛根湯エキス濃縮液に比べて四物湯エキス濃縮液で高いことに対応していた。