(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20250508BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20250508BHJP
C08F 279/02 20060101ALI20250508BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20250508BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
C08L33/06
C08F220/10
C08F279/02
C08L9/00
C08L51/04
(21)【出願番号】P 2023523280
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022006246
(87)【国際公開番号】W WO2022250314
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0066306
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・フ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ル・ダ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジュ・イ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0330463(US,A1)
【文献】特開平09-207134(JP,A)
【文献】特開2007-039640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/06
C08F 220/10
C08F 279/02
C08L 9/00
C08L 51/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位がグラフトされたジエン系ゴム質重合体を含むグラフト重合体と、
(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含む非グラフト重合体と、
廃人造大理石
10~30重量%とを含
み、変性シリカを含まない、熱可塑性樹脂組成物
であって、前記廃人造大理石は、(メタ)アクリレート系単量体単位を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記グラフト重合体10~50重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム質重合体には、ビニルシアニド系単量体単位がグラフトされている、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記グラフト重合体は、前記ジエン系ゴム質重合体にグラフトされず、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含むフリー重合体を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム質重合体は、平均粒径が200~500nmである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記非グラフト重合体30~80重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記非グラフト重合体は、ビニルシアニド系単量体単位を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、
前記ジエン系ゴム質重合体5~20重量%と、
前記(メタ)アクリレート系単量体単位20~70重量%と、
前記ビニル芳香族系単量体単位10~30重量%と、
前記廃人造大理石
10~30重量%とを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0066306号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、詳細には、耐スクラッチ性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
世界的に、プラスチックによる海洋汚染などの環境汚染によって、対策を講じる国が増えており、廃プラスチックのリサイクル方法を多角的に模索する傾向にある。このような世界的な流れを考慮すると、韓国内も例外ではない。最近、社会的問題として挙げられていたリサイクル可能資源の受け入れ拒否事態も、広い視覚から見ると、上記の世界的動向と無関係には見えない。このような背景に基づいて、今後、廃プラスチックを対象として最大限に発生の抑制を誘導し得る制度の導入や補完が行われた後、発生した廃プラスチックに対しては、物質のリサイクルが行われる必要があり、そのため、韓国内の会社でも、生分解性プラスチックや再生可能プラスチックに関する研究が活発に行われている。
【0004】
このような観点で、人造大理石は、最近、脚光を浴びている建築資材として全世界において300,000トン程度生産され、約6,000億ウォンの市場を有している。韓国内生産量は100,000トンであり、現在、韓国内で使用される人造大理石は、(メタ)アクリレート系単量体、(メタ)アクリレート系重合体、充填材などを原料として製造されている。しかし、人造大理石の製造過程中に必要なサイズに加工する時に、多量のスクラップとダストが発生し、これは、他の製品に使用することができず、単純に埋め立てるか焼却によって廃棄されており、土壌汚染を引き起こしている。そのため、廃人造大理石を活用することができる方法に関する研究がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐スクラッチ性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、(1)本発明は、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位がグラフトされたジエン系ゴム質重合体を含むグラフト重合体と、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含む非グラフト重合体と、廃人造大理石3~30重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
また、(2)本発明は、前記(1)において、前記廃人造大理石は、(メタ)アクリレート系単量体単位を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記廃人造大理石を10~30重量%含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記グラフト重合体10~50重量%を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記ジエン系ゴム質重合体には、ビニルシアニド系単量体単位がグラフトされている熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記グラフト重合体は、前記ジエン系ゴム質重合体にグラフトされず、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含むフリー重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、前記ジエン系ゴム質重合体は、平均粒径が200~500nmである熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、前記非グラフト重合体30~80重量%を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0015】
また、(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つにおいて、前記非グラフト重合体は、ビニルシアニド系単量体単位を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、(10)本発明は、前記(1)~(9)のいずれか一つにおいて、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記ジエン系ゴム質重合体5~20重量%と、前記(メタ)アクリレート系単量体単位20~70重量%と、前記ビニル芳香族系単量体単位10~30重量%と、前記廃人造大理石3~30重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐スクラッチ性および耐衝撃性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0020】
本発明において、「ジエン系ゴム質重合体」は、ジエン系単量体の単独またはジエン系単量体と、これと共重合可能な共単量体とを架橋反応させて製造した重合体を意味し得る。前記ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなる群から選択される1種以上であることができ、このうち、1,3-ブタジエンが好ましい。前記共単量体は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体、オレフィン系単量体などが挙げられる。前記ジエン系ゴム質重合体は、ブタジエンゴム質重合体、ブタジエン-スチレンゴム質重合体、ブタジエン-アクリロニトリルゴム質重合体およびエチレン-プロピレンゴム質重合体からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0021】
本発明において、「(メタ)アクリレート系単量体」は、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体であることができ、C1~C10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であることができ、このうち、メチルメタクリレートが好ましい。
【0022】
本発明において、「ビニル芳香族系単量体」は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレンおよびp-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上であることができ、このうち、スチレンが好ましい。
【0023】
本発明において、「ビニルシアニド系単量体」は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルおよびα-クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であることができ、このうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0024】
本発明において、「平均粒径」は、動的光散乱法(dynamic light scattering)によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には、散乱強度平均粒径を意味し得る。平均粒径は、Nicomp 370HPL装置(製品名:PSS-Nicomp社製)を用いて測定することができる。
【0025】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位がグラフトされたジエン系ゴム質重合体を含むグラフト重合体と、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含む非グラフト重合体と、廃人造大理石3~30重量%とを含む。
【0026】
一般的に、人造大理石は、様々な質感、色相および柄を創り出すことができ、装飾効果がよく、研削および精密加工が容易であり、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性、加工性、耐衝撃性に優れ、メンテナンスが容易であることから、様々な分野において用いられている。しかし、人造大理石が建築資材およびキッチン用資材として加工される際、約15~20%がスクラップおよびダストなどの廃人造大理石として発生する。このような廃人造大理石は、熱分解させて原料として使用するか、粉砕して、人造大理石の原料としてリサイクルしている。
【0027】
しかし、本発明者らは、廃人造大理石を熱可塑性樹脂組成物に適正量で使用する場合、耐衝撃性の低下を最小化し、且つ耐スクラッチ性を著しく改善し、優れた加工性を有して幅広い分野に適用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0028】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、前記廃人造大理石を3~30重量%含み、好ましくは10~30重量%含むことができる。上述の条件未満で含むと、耐スクラッチ性の改善効果が実現されない。上述の条件を超えると、加工性が低下し、射出成形が不可能である。
【0029】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト重合体を10~50重量%、好ましくは20~40重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0030】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記非グラフト重合体を30~80重量%、好ましくは35~70重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0031】
一方、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記ジエン系ゴム質重合体を5~20重量%、好ましくは10~15重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および表面光沢特性が改善することができる。
【0032】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を20~70重量%、好ましくは30~50重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および加工性を改善することができる。
【0033】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記ビニル芳香族系単量体単位を10~30重量%、好ましくは15~30重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性を改善することができる。
【0034】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記廃人造大理石を3~30重量%、好ましくは10~30重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の低下を最小化し、且つ耐スクラッチ性を改善することができる。
【0035】
以下、本発明の構成要素について詳細に説明する。
【0036】
1)グラフト重合体
グラフト重合体は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を改善する構成要素である。前記グラフト重合体は、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位がグラフトされたジエン系ゴム質重合体を含み、前記ジエン系ゴム質重合体にグラフトされず、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含むフリー重合体をさらに含むことができる。
【0037】
一方、前記グラフト重合体は、ジエン系ゴム質重合体を20~70重量%、好ましくは30~60重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体が、ジエン系ゴム質重合体に適正水準にグラフトされて、耐衝撃性に優れ、表面光沢特性に優れたグラフト重合体を製造することができる。
【0038】
また、前記ジエン系ゴム質重合体の平均粒径は、200~500nm、好ましくは250~400nmであることができる。上述の条件を満たすと、耐衝撃性および表面光沢特性に優れたグラフト重合体を製造することができる。
【0039】
前記グラフト重合体は、(メタ)アクリレート系単量体単位を20~60重量%、好ましくは30~50重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、非グラフト重合体だけではなく、後述する廃人造大理石との相溶性に優れ、廃人造大理石による効果である耐スクラッチ性と耐衝撃性の改善効果を極大化することができるグラフト重合体を製造することができる。
【0040】
前記グラフト重合体は、ビニル芳香族系単量体単位を3~30重量%、好ましくは5~20重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、加工性が改善したグラフト重合体を製造することができる。
【0041】
一方、前記ジエン系ゴム質重合体には、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位だけではなく、ビニルシアニド系単量体もグラフトされることができる。この場合、前記グラフト重合体は、ビニルシアニド系単量体単位を7重量%以下含むことができる。上述の条件を満たすと、黄変現象を最小化し、且つ耐薬品性が改善したグラフト重合体を製造することができる。また、グラフト重合体の製造工程中に、固形分(凝塊物)の生成を最小化することができる。
【0042】
前記グラフト重合体は、乳化重合、懸濁重合および塊状重合で製造されることができ、このうち、耐衝撃性および表面光沢特性がいずれも優れたグラフト重合体を製造することができる乳化重合で製造されることが好ましい。
【0043】
2)非グラフト重合体
非グラフト重合体は、熱可塑性樹脂組成物の加工性を改善する構成要素である。前記非グラフト重合体は、(メタ)アクリレート系単量体単位およびビニル芳香族系単量体単位を含む。
【0044】
前記非グラフト重合体は、(メタ)アクリレート系単量体単位を60~85重量%、好ましくは65~80重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、非グラフト重合体だけでなく、後述する廃人造大理石との相溶性に優れ、廃人造大理石による効果である耐スクラッチ性と耐衝撃性の改善効果を極大化することができる非グラフト重合体を製造することができる。
【0045】
前記非グラフト重合体は、ビニル芳香族系単量体単位を15~40重量%、好ましくは20~35重量%含むことができる。上述の条件を満たすと、加工性に優れた非グラフト重合体を製造することができる。
【0046】
前記非グラフト重合体は、耐薬品性を改善するために、ビニルシアニド系単量体をさらに含むことができる。この場合、黄色発現を最小化するために、20重量%以下で含むことが好ましい。
【0047】
前記非グラフト重合体は、乳化重合、懸濁重合および塊状重合からなる群から選択される1種以上の方法で製造されることができるが、このうち、高純度の重合体を製造することができる塊状重合で製造されることが好ましい。
【0048】
3)廃人造大理石
廃人造大理石は、熱可塑性樹脂組成物の耐スクラッチ性を改善するために含まれる。
【0049】
廃人造大理石は、人造大理石の廃棄物であり、人造大理石と同じ方法により製造されることができる。具体的には、人造大理石は、(メタ)アクリレート系単量体、(メタ)アクリレート系重合体、開始剤および充填材を含む人造大理石用組成物を原料として用いることができる。また、このような人造大理石用組成物を押出し、プレス成形で硬化した後、脱型および後処理して製造することができる。ここで、後処理は、冷却、研磨、サンディングを意味し得る。
【0050】
人造大理石用組成物の構成要素である(メタ)アクリレート系重合体は、ポリメチルメタクリレートであることができる。前記開始剤は、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートおよび1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンからなる群から選択される1種以上であることができる。前記充填材は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナおよびカリウムアルミン酸からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0051】
前記廃人造大理石の主要原料は、(メタ)アクリレート系単量体および(メタ)アクリレート系重合体であり、前記廃人造大理石は、(メタ)アクリレート系単量体単位を含むことができる。また、このような廃人造大理石に含まれた(メタ)アクリレート系単量体単位により、上述のグラフト重合体と非グラフト重合体との相溶性に優れ、結果、耐衝撃性の低下を最小化し、且つ熱可塑性樹脂組成物の耐スクラッチ性を著しく改善することができる。
【0052】
前記廃人造大理石は、人造大理石の加工時に発生したスクラップおよびダストからなる群から選択される1種以上であることができ、これを粉砕した加工品であることができるが、廃人造大理石であれば、形態とは無関係に用いることができるため、特に限定しない。また、ダストよりも体積が大きいスクラップを用いても、廃人造大理石の原料特性により、上述のグラフト重合体と非グラフト重合体との相溶性に優れ、熱可塑性樹脂組成物の耐スクラッチ性が著しく改善することができる。また、廃人造大理石は、熱可塑性樹脂組成物の加工容易性を考慮して、2mm以下であることが好ましく、粉末形態を有することが好ましい。所望の粒径を有する廃人造大理石は、メッシュを用いて得ることができる。
【0053】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0054】
製造例1
イオン交換水100重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート1.0重量部、メチルメタクリレート35重量部、スチレン11.9重量部、アクリロニトリル3重量部、t-ドデシルメルカプタン0.5重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.048重量部、ジナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート0.015重量部、硫酸鉄(II)0.001重量部およびクメンヒドロパーオキシド0.04重量部を含む混合溶液を準備した。
【0055】
反応器にブタジエンゴム質重合体ラテックス重合体(ラテックス内のゴム質重合体の平均粒径が250nm、ゲル含量:90%)50重量部を投入した後、前記反応器の温度を75℃に昇温した。前記反応器に前記混合溶液を3時間連続投入しながら重合した。次いで、前記反応器の温度を80℃に昇温し、1時間熟成した後、重合を終了して、グラフト重合体ラテックスを取得した。
【0056】
このグラフト重合体ラテックスを、酢酸マグネシウム2重量部およびギ酸0.5重量部を含む水溶液に投入し、機械的なせん断を加えて凝集した(Mechanical Coagulation)。その後、熟成、洗浄、脱水および乾燥して、グラフト重合体粉末を取得した。
【0057】
製造例2
メチルメタクリレート68重量部、スチレン22重量部、アクリロニトリル7重量部、メタクリル酸3重量部、トルエン30重量部とt-ドデシルメルカプタン0.15重量部を混合した原料を平均滞留時間が3時間にあるように反応器に連続して投入しながら重合した。ここで、前記反応器の温度を148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合液は、予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応の単量体を揮発した。次いで、重合液の温度を210℃に維持しながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて非グラフト重合体ペレットを製造した。
【0058】
製造例3
ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、エチレングリコールジメタクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスフェート、および水酸化アルミニウムを含む人造大理石用組成物を押出、プレス成形および後処理して製造された人造大理石の製品化過程で発生する人造大理石のスクラップとダストを回収して、粉末形態の廃人造大理石を得た。
【0059】
実施例1~実施例5
製造例1のグラフト重合体、製造例2の非グラフト重合体および製造例3の廃人造大理石を下記表1に記載の含量で混合して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0060】
比較例1~比較例5
製造例1のグラフト重合体、製造例2の非グラフト重合体および製造例3の廃人造大理石を下記表2に記載の含量で混合して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0061】
比較例6
スチレンおよびアクリロニトリルがグラフトされた平均粒径が250nmであるブタジエンゴム質重合体を含むグラフト重合体(ABS、株式会社LG化学製、商品名:DP270)、スチレン/アクリロニトリル重合体(SAN、株式会社LG化学製、商品名:92HR)および製造例3の廃人造大理石粉末を下記表2に記載の含量で混合して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0062】
比較例7
スチレンおよびアクリロニトリルがグラフトされた平均粒径が250nmであるブタジエンゴム質重合体を含むグラフト重合体(ABS、株式会社LG化学製、商品名:DP270)、スチレン/アクリロニトリル重合体(SAN、株式会社LG化学製、商品名:92HR)を下記表2に記載の含量で混合して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0063】
実験例1
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物100重量部、滑剤(N,N’-エチレンビス(ステアルアミド))0.5重量部、および酸化防止剤0.3重量部を混合した後、押出および射出して、試験片を製造した。前記試験片に対して、下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1および表2に記載した。
【0064】
(1)鉛筆硬度:23℃、相対湿度50%で48時間放置した10cm×10cm×3mmの試験片をASTM D3363に準じて試験片の表面を23℃で500gの荷重で様々な硬度を有する鉛筆で5回ずつ引っ掻いた後、引っ掻き程度を目視で評価した。試験片の表面に鉛筆の引っ掻き表示が2回以上発生した時に、鉛筆硬度の等級を下記のように分類した。
【0065】
(軟質)6B-5B-4B-3B-2B-B-HB-F-H-2H-3H-4H-5H-6H(硬質)
【0066】
(2)アイゾッド衝撃強度(kgf・cm/cm、1/4 In):25℃でASTM D256-10に準じて測定した。
【0067】
【0068】
【0069】
前記表1および表2を参照すると、廃人造大理石を適正量で含む実施例1~実施例5は、耐スクラッチ性および耐衝撃性に優れていた。しかし、廃人造大理石を含んでいない比較例1は、耐スクラッチ性に優れていなかった。また、廃人造大理石を少量で含む比較例2および比較例3は、比較例1に比べて耐スクラッチ性が全く改善しなかった。
【0070】
また、廃人造大理石を過量で含む比較例4および比較例5は、射出が不可能であり、試験片を製造することができなかった。
【0071】
また、ジエン系グラフト重合体と廃人造大理石を含む比較例6は、廃人造大理石を含んでいない比較例7に比べて、耐スクラッチ性は改善したが、改善効果はあまりなかった。また、比較例6は、実施例3と同じ量で廃人造大理石を含んでも相溶性の低下によって耐スクラッチ性の改善効果があまりなかった。