(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】脳機能評価システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20250513BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20250513BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2021014012
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小出 泰久
(72)【発明者】
【氏名】阪井 大介
【審査官】村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-541863(JP,A)
【文献】特開2003-173376(JP,A)
【文献】特開2020-018424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 9/00-10/06
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳機能に関する被検者情報と、追加の被検者情報とを受け付ける受付手段と、
前記脳機能に関する被検者情報および前記追加の被検者情報に基づいて脳機能を評価した評価結果を出力する処理手段と、
を有し、
前記脳機能に関する被検者情報は、脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクをそれぞれ評価する情報であり、
前記受付手段は、前記脳機能に関する被検者情報に対応する第1の被検者情報を受け付けた後に、前記脳機能に関する被検者情報に対応する追加の第2の被検者情報を医療従事者用端末および被検者用端末から受け付け、
前記処理手段は、
前記第1の被検者情報に基づいて前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれの評価結果に依存する第1の評価結果を算出し、該第1の評価結果と前記第2の被検者情報に基づいて前記脳機能を再評価した第2の評価結果を算出し、
さらに、前記追加の被検者情報に基づいて再算出した評価結果を、前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む
時系列の更新
の履歴
に追加し、追加後の前記時系列の更新の履歴をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力する、
脳機能評価システム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記脳機能に関する被検者情報のデータに不足がある場合には、前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのうち被検者情報のデータに不足がある評価結果を仮の設定で判定することで、前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれに依存する評価結果を算出する、
請求項
1に記載の脳機能評価システム。
【請求項3】
前記処理手段は、前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのうち、被検者情報のデータに不足があるリスクの評価結果に仮の判定値を設定して前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれの評価結果に依存する評価結果を算出する、
請求項
2に記載の脳機能評価システム。
【請求項4】
前記
レポートにして出力される時系列の更新
の履歴は、前記評価結果
の変化を示したグラフである、
請求項1乃至
3のうちの何れか一項に記載の脳機能評価システム。
【請求項5】
前記追加の被検者情報は、自宅または介入施設で実施された
検査の情報である、
請求項1乃至
4のうちの何れか一項に記載の脳機能評価システム。
【請求項6】
前記被検者情報の入力の受け付けおよび前記レポートの出力は、UI画面を介して行われる、
請求項1乃至
5のうちの何れか一項に記載の脳機能評価システム。
【請求項7】
コンピュータが脳機能の評価結果を出力する方法であって、
脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクをそれぞれ評価する情報であ
る脳機能に関する被検者情
報を受け付けるステップと、
前記脳機能に関する被検者情報に対応する第1の被検者情報を受け付けた後に、前記脳機能に関する被検者情報に対応する追加の第2の被検者情報を医療従事者用端末および被検者用端末から受け付けるステップと、
前記第1の被検者情報に基づいて前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれの評価結果に依存する第1の評価結果を算出するステップと、
前記第1の評価結果と前記第2の被検者情報に基づいて前記脳機能を再評価した第2の評価結果を算出するステップと、
前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む
時系列の更新
の履歴
をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力するステップと、
さらに、追加の被検者情報を受け付けるステップと、
前記追加の被検者情報に基づいて再算出した評価結果を、前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む時系列の更新の履歴に追加し、追加後の前記時系列の更新の履歴をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
コンピュータに、
脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクをそれぞれ評価する情報であ
る脳機能に関する被検者情
報を受け付けるステップと、
前記脳機能に関する被検者情報に対応する第1の被検者情報を受け付けた後に、前記脳機能に関する被検者情報に対応する追加の第2の被検者情報を医療従事者用端末および被検者用端末から受け付けるステップと、
前記第1の被検者情報に基づいて前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれの評価結果に依存する第1の評価結果を算出するステップと、
前記第1の評価結果と前記第2の被検者情報に基づいて前記脳機能を再評価した第2の評価結果を算出するステップと、
前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む
時系列の更新
の履歴
をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力するステップと、
さらに、追加の被検者情報を受け付けるステップと、
前記追加の被検者情報に基づいて再算出した評価結果を、前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む時系列の更新の履歴に追加し、追加後の前記時系列の更新の履歴をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能評価システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、認知機能等の脳機能に関し、問診や、脳磁計を使った脳磁場測定など複数種類の測定を患者に実施し、得られた結果から医者が患者の脳機能の状態を診断する。医者による診断後、治療が開始されると、患者は定期的に病院で問診や脳磁場の測定などを受けて治療の継続や変更等の医者の治療判断に従う。昨今では医者の診断を補助する診断補助システムも普及するようになってきたが、診断補助システムで提供する機能は、測定結果等を画面に見やすいように表示する機能や、レポート作成機能などにとどまる。
【0003】
特許文献1において、治療・投薬情報、生体信号を1つのレポートに時系列で表示することができるレポート作成システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脳機能を測定する方法は複数あり、従来の診断補助システムは測定により得られた情報を追加して脳機能を評価するということができないという問題がある。
【0005】
本発明は、被検者から得られた脳機能に関する情報と、追加の被検者情報とを基に脳機能の評価を随時行うことが可能な脳機能評価システム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の脳機能評価システムは、脳機能に関する被検者情報と、追加の被検者情報とを受け付ける受付手段と、前記脳機能に関する被検者情報および前記追加の被検者情報に基づいて脳機能を評価した評価結果を出力する処理手段と、を有し、前記脳機能に関する被検者情報は、脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクをそれぞれ評価する情報であり、前記受付手段は、前記脳機能に関する被検者情報に対応する第1の被検者情報を受け付けた後に、前記脳機能に関する被検者情報に対応する追加の第2の被検者情報を医療従事者用端末および被検者用端末から受け付け、前記処理手段は、前記第1の被検者情報に基づいて前記脳機能リスク、前記認知機能リスク、および前記生活習慣リスクのそれぞれの評価結果に依存する第1の評価結果を算出し、該第1の評価結果と前記第2の被検者情報に基づいて前記脳機能を再評価した第2の評価結果を算出し、さらに、前記追加の被検者情報に基づいて再算出した評価結果を、前記第1の評価結果と前記第2の評価結果とを含む時系列の更新の履歴に追加し、追加後の前記時系列の更新の履歴をレポートにして、前記医療従事者用端末または前記被検者用端末に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検者から得られた脳機能に関する情報と、追加の被検者情報とを基に脳機能の評価を随時行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる脳機能評価システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、Webサーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、クライアントPCのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、脳機能評価システムの機能ブロックの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、脳機能評価システムにおける全体のシーケンスの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、UI画面に表示する脳磁データの登録画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、問診の設問回答の入力画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、心理テストの結果を入力する入力画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、脳機能リスク算出部による脳機能リスクの判定フローの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、脳機能リスクを判定する基準データ(判定基準)の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、認知機能リスク算出部による認知機能リスクの判定フローの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、認知機能リスクを判定する基準データの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、生活習慣リスク算出部による生活習慣リスクの判定フローの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、生活習慣リスクを判定する基準データの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、総合評価算出部による総合評価フローの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、総合評価フローのサブルーチンのフローの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、総合評価を行うためのリスク分類に使用する基準データの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、レポート作成部が作成するレポートの構成の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、レポートに使用する総合評価の分類別のコメントデータの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、UI画面に総合評価の推移を時系列で表示させた場合の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、脳機能評価システム、方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
本実施の形態にかかる脳機能評価システムは、被検者の脳機能に関するデータ(被検者情報)を基に脳機能を総合的に評価する総合評価機能を提供する。一例として被検者情報は、脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクをそれぞれ評価する情報とし、これらの情報のうちの一つからでも脳機能を総合的に評価する評価結果を算出することができる総合評価機能を提供する。また、追加の被検者情報、例えば登録されていない残りの被検者情報や、既に登録済みの被検者情報の更新情報があれば、追加や更新された情報を反映して脳機能を総合的に再評価する評価結果を算出し、算出した評価結果を都度記憶したり、出力したりすることができるようにする。なお、再評価する評価結果の算出のタイミングは、随時とする。例えばユーザが評価結果の算出を要求するボタンを操作するなど、特定の契機で再評価の評価結果を算出する。以下では評価結果を算出することを、便宜的に「評価する」と記載する。ここで、「脳機能リスク」とは、被検者の脳磁データや生体信号などに基づき脳機能の低下のリスクを指標値(例えばA、B、Cのレベル)などで分類する指標である。「認知機能リスク」とは、被検者への心理テストや問診などの結果に基づき認知機能のリスクを指標値(例えばA、B、Cのレベル)などで分類する指標である。「生活習慣リスク」とは、被検者の生活習慣の自己申告等に基づき生活習慣により引き起こされる病気等のリスクを指標値(例えばA、B、Cのレベル)などで分類する指標である。総合的な脳機能評価が指す「脳機能」とは、「脳機能リスク」の「脳機能」とは異なり、「脳機能評価」は各リスクを含む因子から分類した脳の総合的な新しい評価を指し、例えば「脳機能ドック」にて「脳機能評価」として用いることが考えられる。
【0011】
(全体システム)
図1は、実施の形態にかかる脳機能評価システムの全体構成の一例を示す図である。
図1に示す脳機能評価システム1は、例えばサーバクライアントシステムの形態で実施することができる。一例として以下ではWebサーバシステムで実施する場合の形態について説明する。
【0012】
図1に示す構成において、Webサーバ10はコンピュータ構成の情報処理装置である。Webサーバ10は、患者の脳機能を総合的に評価する総合評価手段100を有する。
【0013】
Webサーバ10は、クライアントPCおよび携帯型端末装置30から受け付けた患者情報に基づき患者の脳機能を総合的に評価し、評価結果をクライアントPCおよび携帯型端末装置30に送信する。具体的に、Webサーバ10の総合評価手段100は、受付手段100a、処理手段100b、および記憶手段100cにより構成される。受付手段100aは、各種の情報を受け付ける。この例では脳機能に関するリスクを判定する被検者情報である患者情報を受け付ける。処理手段100bは、受け付けた情報を基に各種の処理を行う。この例では受付手段100aで受け付けられた患者情報を基に脳機能を総合的に評価する、つまり評価結果を算出する。算出した結果は記憶手段100cに随時保存したり、要求元の外部装置へ出力したりする。なお、本構成例ではWebサーバ10に記憶手段100cを設けているが、外部ストレージなどに記憶手段100cを設けてもよい。
【0014】
クライアントPC20(Personal Computer)および携帯型端末装置30は、それぞれネットワークを介してWebサーバ10にアクセスする。
【0015】
クライアントPC20は、病院P1内(あるいは検診センタ内など)の医療従事者用端末である。
図1に示す例では脳磁計40等の測定装置に接続されているPCを示しているが、測定装置のデータを取得することができる診察室等にあるPCであってもよい。クライアントPC20は、第1のネットワークN1に接続可能に構成され、患者情報を第1のネットワークN1を介してWebサーバ10に送信する。第1のネットワークN1は、クライアントPC20とWebサーバ10とを接続するLANやインターネット等のネットワークである。
【0016】
携帯型端末装置30は、スマートフォンやタブレット型の端末装置など、携帯可能な端末装置である。携帯型端末装置30は、第2のネットワークN2に接続可能に構成され、患者情報を第2のネットワークN2を介してWebサーバ10に送信する。第2のネットワークN2は、携帯型端末装置30とWebサーバ10とを接続するWi-Fi(登録商標)や、公衆網や、インターネット等のネットワークである。
【0017】
なお、携帯型端末装置30は「被検者用端末」に相当する。携帯型端末装置30は、広く普及するスマートフォンも含み、例えば患者の治療補助を行う外部スタッフや、患者の家族や、患者本人などでも、Webサーバ10にアクセスが認証されれば、自宅や施設など外部から公衆網を通じてWebサーバ10の機能の一部またはすべての利用が可能である。
【0018】
Webサーバ10は、1つの情報処理装置で実施してもよいし、機能を分散するなどして複数の情報処理装置の組み合わせで実施するようにしてもよい。また、脳機能の総合評価手段100の一部またはすべての機能をクラウドで提供してもよい。また、Webサーバ10に設ける機能の一部(脳機能の総合評価機能の一部)をクライアントPC20や携帯型端末装置30側に設けてもよい。
【0019】
また、医療従事者用端末および被検者用端末はクライアントPC20および携帯型端末装置30に限らない。医療従事者用端末および被検者用端末の装置構成や数は任意に決めてよい。
【0020】
図2は、Webサーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、Webサーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、補助記憶装置14、及び通信I/F15を有する。各部は、バス16などを介して接続されている。
【0021】
CPU11は、中央演算処理装置であり、Webサーバ10全体を制御する。ROM12は、BIOS等の固定プログラムを記憶するメモリである。RAM13は、CPU11が処理を実行する際のワーク領域などとして利用されるメモリである。
【0022】
補助記憶装置14は、HDDやSSD等である。補助記憶装置14は、Webサーバ10の各種プログラムやデータなどを記憶する。各種プログラムには、Webサーバ10のOSや、脳機能の評価を行うプログラムなどが含まれる。
【0023】
通信I/F15は、クライアントPC20や携帯型端末装置30と通信を行うネットワークインタフェースである。
【0024】
Webサーバ10のCPU11は、補助記憶装置14から各種のプログラムM1をRAM13に読み出して実行することにより、脳機能を総合的に評価するための各手段(受付手段100a、処理手段100b、および記憶手段100c)を機能部として実現する。
【0025】
図3は、クライアントPC20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3に示すように、クライアントPC20は、CPU21、ROM22、RAM23、補助記憶装置24、表示装置25、入力装置26、及び通信I/F27を有する。各部は、バス28などを介して接続されている。
【0026】
CPU21は、中央演算処理装置であり、クライアントPC20全体を制御する。ROM22は、BIOS等の固定プログラムを記憶するメモリである。RAM23は、CPU21が処理を実行する際のワーク領域などとして利用されるメモリである。
【0027】
補助記憶装置24は、HDDやSSD等である。補助記憶装置24は、クライアントPC20の各種プログラムやデータなどを記憶する。各種プログラムには、クライアントPC20のOSや、WebビューアなどのプログラムM2が含まれる。
【0028】
表示装置25は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイなどである。入力装置26は、キーボードやマウスなどの入力装置である。なお、入力装置26としてタッチパネルを設けてもよい。通信I/F27は、第1のネットワークN1のネットワークインタフェースである。
【0029】
クライアントPC20のCPU21は、補助記憶装置24から各種のプログラムM2をRAM23に読み出して実行することにより、Webサーバ10の機能を利用するUI部や通信部等のクライアント機能(Webビューアを含む)を発揮する。
【0030】
なお、携帯型端末装置30のハードウェア構成については、クライアントPC20と同様のコンピュータ構成で実施することが可能である。なお、携帯型端末装置30の通信I/Fは第2のネットワークのネットワークインタフェースとなる。また、携帯型端末装置30のCPUは、補助記憶装置から各種プログラムをRAMに読み出して実行することにより、Webサーバ10の機能を利用するUI部や通信部等を発揮する。それ以外は、クライアントPC20のハードウェア構成の説明の繰り返しとなるため、図示および説明を省略する。
【0031】
図4は、脳機能評価システム1の機能ブロックの構成の一例を示す図である。Webサーバ10には、脳機能を総合的に評価する機能部(受付手段100a、処理手段100b、および記憶手段100c)の詳細を示している。Webサーバ10は、インタフェースコントローラ101と、脳磁データ記憶部102と、演算指示部103と、入力データ記憶部104と、レポート作成部105と、スペクトル解析部106と、脳機能リスク算出部107と、認知機能リスク算出部108と、生活習慣リスク算出部109と、総合評価算出部110を有する。
【0032】
ここで、インタフェースコントローラ101が受付手段100a(
図1参照)に相当する。脳磁データ記憶部102や入力データ記憶部104が記憶手段100c(
図1参照)に相当する。インタフェースコントローラ101や、演算指示部103や、レポート作成部105や、スペクトル解析部106や、脳機能リスク算出部107や、認知機能リスク算出部108や、生活習慣リスク算出部109や、総合評価算出部110が処理手段100b(
図1参照)に相当する。
【0033】
インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20や携帯型端末装置30などからのアクセスに基づき、脳機能の評価を行う機能を制御する。例えばインタフェースコントローラ101は、クライアントPC20または携帯型端末装置30からの要求や受信データを受け付け、クライアントPC20または携帯型端末装置30からの受信データの登録や、脳機能の評価に関する各種実行指示や、要求元のクライアントPC20または携帯型端末装置30への画面情報の送信などを行う。
【0034】
脳磁データ記憶部102は、クライアントPC20から送信された脳磁データD1の記憶部である。脳磁データD1は脳磁計で得た脳磁データのファイルである。このファイルには心拍や脈拍などの生体信号を含んでいてよい。
【0035】
演算指示部103は、演算処理部200に演算を指示する。
【0036】
入力データ記憶部104は、各種データの記憶部である。例えば、入力データ記憶部104は、送信された患者情報である患者データを記憶する。患者データには、患者の名前、年齢、性別等を示す患者識別情報D2や、患者への問診結果(患者から聞き取った情報など)D3や、患者への心理テスト(心理テストを実施した結果)D4等の入力データや、演算処理部200が行った演算結果などが含まれる。患者識別情報D2や、患者への問診結果D3や、患者への心理テストD4等の入力データは、クライアントPC20または携帯型端末装置30から入力データの送信を受け付けるなどして保存する。また、入力データ記憶部104に、基準データ(判定基準データを含む)D0を修正可能に記憶させてもよい。基準データD0は、脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスク毎に異なり、演算処理部200により各リスクの判定で使用される。基準データD0のデータが固定でもよい場合には演算処理部200側にもたせてもよい。
【0037】
レポート作成部105は、入力データ記憶部104に保存されている患者の各種データに基づいて患者別にレポートを作成する。例えば、患者が心理テストを毎日登録すれば、総合評価結果が毎日作成されるため、総合評価結果の時系列情報(折れ線グラフなど)をレポートに含める。
【0038】
演算処理部200は、一例としてスペクトル解析部106と、脳機能リスク算出部107と、認知機能リスク算出部108と、生活習慣リスク算出部109と、総合評価算出部110を有する。基準データD0は、脳機能リスク算出部107と、認知機能リスク算出部108と、生活習慣リスク算出部109と、総合評価算出部110とに、それぞれ対応する基準データを用意する。以下では一例として入力データ記憶部104に基準データD0が保存されているとして説明する。
【0039】
スペクトル解析部106は、インタフェースコントローラ101がクライアントPC20から脳磁データD1を受信すると、その脳磁データD1のスペクトル解析を行う。例えばインタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から脳磁データD1を受信すると、脳磁データ記憶部102へ脳磁データD1を保存し、演算指示部103へ、脳磁データD1のスペクトル解析を指示する。これによりスペクトル解析部106が脳磁データD1をスペクトル解析する。スペクトル解析では生体信号などから脳機能低下リスクを評価するパワースペクトル値を算出するなどし、解析結果は入力データ記憶部104に保存される。
【0040】
脳機能リスク算出部107は、入力データ記憶部104に保存された患者データを使用し、脳機能リスクの基準データに基づく脳機能リスクの分類を行って結果を入力データ記憶部104に保存する。
【0041】
認知機能リスク算出部108は、入力データ記憶部104に保存された患者データを使用し、認知機能リスクの基準データに基づく認知機能リスクの分類を行って結果を入力データ記憶部104に保存する。
【0042】
生活習慣リスク算出部109は、入力データ記憶部104に保存された患者データを使用し、生活習慣リスクの基準データに基づく生活習慣リスクの分類を行って結果を入力データ記憶部104に保存する。
【0043】
総合評価算出部110は、総合評価フローを実行して総合的な評価を行い、入力データ記憶部104に総合評価した結果を保存する。総合評価算出部110は、例えばクライアントPC20または携帯型端末装置30から脳機能の総合評価が要求されるなどした際に、脳機能リスク算出部107、認知機能リスク算出部108、および生活習慣リスク算出部109の各結果(「評価結果」に相当し、以下では「判定結果」と言う)に依存して総合評価を行い、総合評価結果を入力データ記憶部104に保存する。なお、詳しくは後述するが、脳機能リスクと、認知機能リスクと、生活習慣リスクのうち一部のリスクが評価できれば総合評価フローを実行して総合的な評価を行う。本実施の形態に示す例では、少なくとも2つのリスクの結果が得られればよい。また、3つの結果が集まれば、より高精度な総合評価結果が得られるため、なおよい。
【0044】
クライアントPC20は、WebビューアなどのUI部201と通信部202とを有する。UI部201は、Webサーバ10のインタフェースコントローラ101から通信部202に送信される画面情報を解析してUI画面を構成して表示する。また、UI部201は、UI画面で受け付けた入力データや、取得した脳磁データD1や、実行命令を通信部202からインタフェースコントローラ101へ要求データとして送信する。例えばUI部201は、脳磁計40(
図1参照)で測定した脳磁データD1の取得を、指定された格納先から取得する。クライアントPC20が脳磁計40を制御可能な装置であれば、UI部201により脳磁計40の操作画面を表示して、脳磁計40の設定や測定を実行し、その脳磁データD1を取得するなどしてもよい。また、UI部201は入力画面を表示装置25(
図2参照)で表示し、画面で各種データの入力を受け付ける。例えばUI部201は、患者識別情報D2や、患者への問診結果D3や、患者への心理テストD4等の入力を入力装置26(
図2参照)から受け付ける。
【0045】
UI部201は、UI画面からWebサーバ10への送信が指示されると、通信部202を介して要求情報をWebサーバ10に送信する。例えば、UI部201はUI画面から患者識別情報の送信が指示されると、通信部202を介して登録要求を示す要求情報と患者識別情報D2とをWebサーバ10へ送信する。また、UI部201はUI画面から脳磁データの送信が指示されると、通信部202を介して登録要求を示す要求情報と脳磁データD1とをWebサーバ10へ送信する。また、UI部201はUI画面から問診結果や心理テストの送信が指示されると、通信部202を介して登録要求を示す要求情報と、問診結果D3や心理テストD4等の入力データとを、Webサーバ10へ送信する。また、UI部201はUI画面から脳機能の総合評価の送信が指示されると、通信部202を介して取得要求を示す要求情報をWebサーバ10へ送信する。
【0046】
また、UI部201は、UI画面を表示し、Webサーバ10への基準データD0の登録や更新を行ってもよい。
【0047】
携帯型端末装置30も、クライアントPC20と同様にUI部301と通信部302とを有する。なお、携帯型端末装置30では一般に脳磁データD1の取得は行えないので、UI部301は、主に問診結果D3や心理テストD4等の登録機能や、脳機能の総合評価の更新や履歴の表示機能等に限るなどしてよい。
【0048】
(全体システムのシーケンス)
図5は、脳機能評価システム1における全体のシーケンスの一例を示す図である。以下において特に説明しないがクライアントPC20とWebサーバ10とは第1のネットワークN1を介して通信を行っているものとする。また、携帯型端末装置30とWebサーバ10とは第2のネットワークN2を介して通信を行っているものとする。
【0049】
まず、病院内の検診担当は、クライアントPC20がWebサーバ10から取得したUI画面で、来院した患者の患者識別情報D2を入力し、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に入力データを送信する(S1)。ここで、検診担当とは、患者に対し検診を行う担当医や医療従事者を想定している。
【0050】
インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から送信された患者識別情報D2を入力データ記憶部104に登録する(S2)。登録された患者識別情報D2は患者に固有の情報で管理される。患者に固有の情報は、例えば患者が検診を受け付けたときに患者IDを発行するなどして使用する。患者IDは、後に認証情報として利用することもできる。インタフェースコントローラ101は、その患者に固有の情報を使用し、その後も、当該患者に関するデータがあれば、入力データ記憶部104に当該患者に固有の情報に対応づけて保存する。つまり、入力データ記憶部104には患者毎に患者IDで患者に関するデータが対応付けられている。
【0051】
Webサーバ10への登録が終わると、検診担当はUI画面を操作し、脳磁計で測定した当該患者の測定データ(つまり脳磁データD1)を脳磁計が保存した保存先からファイルとして取得し、クライアントPC20の記憶部に当該患者の脳磁データD1のファイルを保存する(S3)。
【0052】
続いて検診担当はUI画面を操作し、記憶部に保存した当該患者の脳磁データD1をWebサーバ10(インタフェースコントローラ101)に送信する(S4)。インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から送信された当該患者の脳磁データD1を脳磁データ記憶部102に保存し(S5)、さらに演算指示部103を通じて当該患者の脳磁データD1のスペクトル解析をスペクトル解析部106に指示する(S6)。
【0053】
スペクトル解析部106は、当該脳磁データD1を取得して脳磁データD1のスペクトル解析を行い(S7)、その解析結果を入力データ記憶部104に保存する(S8)。
【0054】
Webサーバ10への登録が終わると、検診担当はUI画面を操作し、当該患者の問診結果や心理テストの結果を入力し、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に入力データ(問診結果D3や心理テストD4)を送信する(S9)。なお、問診や心理テストの何れか実施されていない場合には、後から問診結果または心理テストの残りを入力してWebサーバ10に送信してもよい。
【0055】
インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から送信された当該患者の入力データを入力データ記憶部104に当該患者の患者IDに対応付けて登録する(S10)。
【0056】
この登録後、検診担当はUI画面を操作し、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に対し当該患者の脳健康状態の判定つまり脳機能の総合評価を要求する(S11)。
【0057】
インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から当該患者の脳健康状態の判定の要求を受け付けると、演算指示部103へ当該患者についての脳健康状態の判定処理を実行させる(S12)。
【0058】
演算指示部103は、脳健康状態の判定処理として、まず脳機能リスク算出部107に対し当該患者の脳機能リスクの算出を指示する(S13)。この指示により脳機能リスク算出部107は、入力データ記憶部104に保存されている当該患者のスペクトル分析結果を使用して脳機能リスク判定フロー(例えば
図9の判定フローなど)を実行し、当該患者の脳機能リスクを算出する。
【0059】
脳機能リスク算出部107の算出が終わると、演算指示部103は続いて認知機能リスク算出部108に対し当該患者の認知機能リスクの算出を指示する(S14)。この指示により認知機能リスク算出部108は、入力データ記憶部104に保存されている当該患者の心理テスト結果を使用して認知機能リスク判定フロー(例えば
図11の判定フローなど)を実行し、当該患者の認知機能リスクを算出する。
【0060】
認知機能リスク算出部108の算出が終わると、演算指示部103は続いて生活習慣リスク算出部109に対し当該患者の生活習慣リスクの算出を指示する(S15)。この指示により生活習慣リスク算出部109は、入力データ記憶部104に保存されている当該患者の問診結果を使用して生活習慣リスク判定フロー(例えば
図13の判定フローなど)を実行し、当該患者の生活習慣リスクを算出する。
【0061】
生活習慣リスク算出部109の算出が終わると、演算指示部103は続いて総合評価算出部110に対し当該患者の脳健康状態の判定を指示する(S16)。この指示により総合評価算出部110は、脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクのうち、得られた算出結果を使用して総合評価フロー(例えば
図15の判定フローなど)を実行し、当該患者の脳健康状態の総合評価を算出する。各部で算出された結果は、入力データ記憶部104に保存され、インタフェースコントローラ101からクライアントPC20に終了が通知される。
【0062】
続いて、検診担当はUI画面を操作し、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に対し当該患者の脳健康状態のレポート作成を要求する(S17)。
【0063】
インタフェースコントローラ101は、クライアントPC20から当該患者の脳健康状態のレポート作成の要求を受け付けると、レポート作成部105から当該患者の脳健康状態のレポートを取得する(S18)。レポート作成部105は、入力データ記憶部104に保存された当該患者の各種データに基づきレポートファイルを作成する。
【0064】
そして、インタフェースコントローラ101からクライアントPC20に当該患者のレポートファイルが送信され(S19)、当該患者の脳健康状態を示すレポートの内容がクライアントPC20のUI画面に表示される。
【0065】
なお、例えば心理テストが実施されていない場合、認知機能リスクの結果は得られないため、情報が一つ欠けることになるが、総合判定フローの実行により脳機能リスクと生活習慣リスクの依存関係により2つのリスクの結果で評価され、そのレポートファイルがクライアントPC20に送信される。
【0066】
検診担当は、そのレポートファイルを出力し、そのレポートの内容を患者に電子ファイルまたは紙媒体で渡す(S20)。その後、患者は、患者ID等の認証情報により自宅や他の施設などから携帯型端末装置30でWebサーバ10(インタフェースコントローラ101)に接続する。例えば、レポートファイルのログイン情報(患者ID等)で認証を行って接続する。
【0067】
そして、携帯型端末装置30において、Webサーバ10から取得したUI画面を操作し、当該患者の心理テストD4の新規入力、あるいは問診D3や心理テストD4の回答内容の再入力を行い、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に入力データ(問診結果D3や心理テストD4)を送信する(S21)。インタフェースコントローラ101は、携帯型端末装置30から送信された当該患者の入力データを入力データ記憶部104に当該患者の患者IDに対応付けて追加登録する(S22)。
【0068】
追加登録を行うと、図示を省略しているが総合判定(S11~S16)と同様に総合判定処理を行い、レポート作成部105が更新後の総合判定結果を含めてレポートを作成する。
【0069】
その後、携帯型端末装置30でUI画面をさらに操作し、Webサーバ10(インタフェースコントローラ101)に対し当該患者の脳健康状態のレポートの再取得を要求する(S23)。この要求により、インタフェースコントローラ101は更新後のデータに基づいて作成されたレポートをレポート作成部105から取得し、携帯型端末装置30に送信する(S24)。更新後の脳健康状態を示すレポートの内容が携帯型端末装置30のUI画面に表示される。
【0070】
なお、Webサーバ10に登録されているデータは、クライアントPC20および携帯型端末装置30から随時更新することができる。レポート作成部105は、更新データがクライアントPC20または携帯型端末装置30から繰り返し送信された場合には、送信された各日時の総合判定の更新の履歴を作成し、グラフ等の時系列順に示す情報としてレポートに出力する。
【0071】
なお、携帯型端末装置30のUI画面には、患者や、患者をサポートする人にとって必要な情報のみを表示させるようにインタフェースコントローラ101側で送信情報を制限してもよい。例えば携帯型端末装置30のUI画面は、問診や心理テストなどの入力データの登録および更新と、レポートの表示の機能のみに送信情報を制限する。
【0072】
(UI画面)
次に、UI画面について説明する。ここでは各種登録/入力画面をタブの切り替えで行うUI画面の一例を示す。
【0073】
図6は、UI画面に表示する脳磁データの登録画面の一例を示す図である。UI画面1000は、この例では上部に複数の切替タブTを有し、切替タブTのうちMEGタブT1に表示を切り替えることにより、
図6に示すように脳磁データの登録画面1111が入力可能に表示される。複数の切替タブTには、この他、基本情報タブや、問診タブや、心理テストタブや、分析結果タブや、レポートタブなどが含まれる。基本情報タブは、クライアントPC20のUI画面に提供され、病院や検診施設のスタッフなどにより患者の名前、年齢、性別等を示す患者識別情報D2が入力される。
【0074】
図6に示す登録画面1111は、脳磁計40(
図1参照)で測定した脳磁データのファイル選択ボックス1111Aや、脳磁データにおいて確認される情報を追加する設定入力ボックス1111Bなどを有する。この登録画面1111は、クライアントPC20のUI画面に提供される。病院や検診施設のスタッフなどは、この登録画面1111のファイル選択ボックス1111Aで患者の脳磁データのファイルを選択し、選択した脳磁データに確認される情報を設定入力ボックス1111Bに設定するなどして保存ボタン1111Cを押下する。保存ボタン1111Cの押下により脳磁計から当該患者の脳磁データがクライアントPC20にファイルとして保存される。そして分析ボタン1111Dの押下により、クライアントPC20からWebサーバ10(インタフェースコントローラ101)に脳磁データD1のファイル(設定した情報を含む)が送信される。
【0075】
図7は、問診の設問回答の入力画面の一例を示す図である。この入力画面1121は、クライアントPC20の他、携帯型端末装置30のUI画面にも提供され、問診タブT2に表示を切り替えることにより入力可能に表示される。
図7の入力画面1121に問診の設問の一例(問診1の例)を示している。設問には、患者の行動パターンや、生活様式や、性格などを把握するための設問が含まれている。各設問1121Aの回答は、患者本人や、その補助スタッフなどが選択欄1121Bから指定するなどして入力し、保存ボタンを押下するなどして、問診結果D3をWebサーバ10(インタフェースコントローラ101)に送信する。この入力画面1121は、携帯型端末装置30でもWebサーバ10にアクセスすることにより取得されるため、携帯型端末装置30のUI画面で、患者本人や、その補助スタッフなどによる問診の回答の更新も随時可能である。
【0076】
図8は、心理テストの結果を入力する入力画面の一例を示す図である。この入力画面1131も問診回答の入力画面1121と同様に、クライアントPC20の他に携帯型端末装置30のUI画面にも提供され、心理テストタブT3に表示を切り替えることにより入力可能に表示される。
図8の入力画面1131に心理テストの項目の一例を示している。MMSEやFAB等の入力項目が含まれる。各項目1131Aには心理士や補助スタッフなどが患者から読み取った印象をランク指定するなどして入力し、保存ボタン1131Bを押下するなどして入力結果(心理テスト結果D4)をWebサーバ10(インタフェースコントローラ101)に送信する。また、携帯型端末装置30からWebサーバ10にアクセスすることにより当該入力画面1131が取得可能なので、携帯型端末装置30のUI画面で、心理テストのランク等の結果の更新も随時可能である。
【0077】
(判定フロー)
図9は、脳機能リスク算出部107による脳機能リスクの判定フローの一例を示す図である。
図10は、脳機能リスクを判定する判定基準の一例を示す図である。
図9に示す脳機能リスクの判定フローは、
図10の判定基準を基に脳機能リスクの判定を行う。判定基準の一例として、脳磁データのスペクトル解析により算出された脳のリズムと脳波の複雑さの値(スコア)を使用する。ここで、脳のリズムは、中間周波数MF(Mean Frequency)であり、脳波の複雑さは、SE(Spectrum Entropy)である。
【0078】
まず、脳機能リスク算出部107は、入力判定の内容(
図10参照)に示すように各解析方式MFとSEのそれぞれのスペクトル解析結果(スコア)が得られているかを判定する(S101)。脳機能リスク算出部107は、各解析方式MFとSEのそれぞれのスペクトル解析結果(スコア)が得られていない場合(S101:No)、脳機能リスクを「A(空)」とする。
【0079】
脳機能リスク算出部107は、各解析方式MFとSEのそれぞれのスペクトル解析結果が得られている場合(S101:Yes)、そのうちのMFのスコアが、基準値判定の内容(
図10参照)を満たすかを判定する(S102)。
【0080】
脳機能リスク算出部107は、MFのスコアが基準値判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S102:Yes)、MFのスコアがさらにD判定の内容(
図10参照)を満たすかを判定する(S103)。脳機能リスク算出部107は、MFのスコアがD判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S103:Yes)、脳機能リスクを「D」とする。
【0081】
脳機能リスク算出部107は、MFのスコアが基準値判定の内容(
図10参照)を満たさないか(S102:No)、あるいはMFのスコアがD判定の内容(
図10参照)を満たさない場合(S103:No)、MFとSEのスコアがC判定の内容(
図10参照)を満たすかを判定する(S104)。脳機能リスク算出部107は、MFとSEのスコアがC判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S104:Yes)、脳機能リスクを「C」とする。
【0082】
脳機能リスク算出部107は、MFとSEのスコアがC判定の内容(
図10参照)を満たさない場合(S104:No)、MFまたはSEのうちの何れかがB判定の内容(
図10参照)を満たすかを判定する(S105)。
【0083】
脳機能リスク算出部107は、MFまたはSEのうちの何れかがB判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S105:Yes)、さらにMF/SE判定を行う(S106)。
【0084】
脳機能リスク算出部107は、MFがMF/SE判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S106:Yes)、脳機能リスクを「B type:1」とする。脳機能リスク算出部107は、SEがMF/SE判定の内容(
図10参照)を満たす場合(S106:No)、脳機能リスクを「B type:2」とする。
【0085】
脳機能リスク算出部107は、MFもSEもB判定の内容(
図10参照)を満たさない場合(S105:No)、脳機能リスクを「A」とする。
【0086】
このように、脳磁データが得られていない場合にも総合判定のため脳機能リスクは「A」と判定する。ただし、脳機能としての判定は仮の判定のため空である識別を付帯する。
【0087】
図11は、認知機能リスク算出部108による認知機能リスクの判定フローの一例を示す図である。
図12は、認知機能リスクを判定する判定基準の一例を示す図である。心理テストとして2種類の検査、MMSE(Mini Mental State Examination)とFAB(Frontal Assessment Battery)とを実施して、各スコアを基準データの判定基準と比較する。
【0088】
まず、認知機能リスク算出部108は、入力データの入力判定を行い(S201)、入力データが入力判定(
図12参照)を満たさない場合(S201:No)、認知機能リスクを「A(空)」とする。
【0089】
認知機能リスク算出部108は、入力データが入力判定(
図12参照)を満たす場合(S201:Yes)、MMSEがD判定の内容(
図12参照)を満たすかを判定し(S202)、満たす場合には(S202:Yes)、認知機能リスクを「D」とする。
【0090】
認知機能リスク算出部108は、MMSEがD判定の内容(
図12参照)を満たさない場合(S202:No)、FABまたは総合印象点がC判定の内容(
図12参照)を満たすかを判定し(S203)、満たす場合には(S203:Yes)、認知機能リスクを「C」とする。
【0091】
認知機能リスク算出部108は、FABも総合印象点もC判定の内容(
図12参照)を満たさない場合(S203:No)、MMSE、FABまたは総合印象点がB判定の内容(
図12参照)を満たすかを判定する(S204)。
【0092】
認知機能リスク算出部108は、B判定の内容を満たす場合(S204:Yes)、さらに軽度異常の数が軽度異常数判定の内容(
図12参照)を満たすかを判定し(S205)、該当する場合(S205:Yes)、認知機能リスクを「B type:1」とする。一方該当しない場合(S205:No)、認知機能リスク算出部108は、認知機能リスクを「B type:2」とする。
【0093】
また、認知機能リスク算出部108は、B判定の内容を満たさない場合(S204:No)、認知機能リスクを「A」とする。
【0094】
このように、心理テストが得られていない場合にも総合判定のため認知機能リスクは「A」と判定する。ただし、認知機能としての判定は仮の判定のため空である識別を付帯する。
【0095】
図13は、生活習慣リスク算出部109による生活習慣リスクの判定フローの一例を示す図である。
図14は、生活習慣リスクを判定する判定基準の一例を示す図である。生活習慣リスクの判定は、
図14(a)に示すリスクスコアにより行う。リスクスコアは、問診の結果に基づき決められた条件に基づき加算した点数である。
図14(b)に一例としてリスクスコアの加算条件を例示する。
図14(b)では、一例として設問回答の番号が条件に一致する場合に1点以上のスコアを付けるように設定した。以下では生活習慣リスク算出部109により問診結果からリスクスコアが算出済みであるものとして生活習慣リスクの判定フローを詳しく説明する。
【0096】
まず、生活習慣リスク算出部109は、問診の設問回答の入力判定を行い(S301)、設問回答が入力判定(
図14参照)を満たさない場合(S301:No)、生活習慣リスクを「A(空)」とする。
【0097】
生活習慣リスク算出部109は、設問回答が入力判定(
図14参照)を満たす場合(S301:Yes)、設問回答のリスクスコアがD判定の内容(
図14参照)を満たすかを判定し(S302)、満たす場合(S302:Yes)、生活習慣リスクを「D」とする。
【0098】
生活習慣リスク算出部109は、設問回答のリスクスコアがD判定の内容(
図14参照)を満たさない場合(S302:No)、設問回答のリスクスコアがC判定の内容(
図14参照)を満たすかを判定し(S303)、満たす場合(S303:Yes)、生活習慣リスクを「C」とする。
【0099】
生活習慣リスク算出部109は、設問回答のリスクスコアがC判定の内容(
図14参照)を満たさない場合(S303:No)、設問回答のリスクスコアがB判定の内容(
図14参照)を満たすかを判定し(S304)、満たす場合(S304:Yes)、生活習慣リスクを「B」とする。
【0100】
生活習慣リスク算出部109は、設問回答のリスクスコアがB判定の内容(
図14参照)を満たさない場合(S304:No)、生活習慣リスクを「A」とする。
【0101】
このように、問診の設問回答が十分に得られていない場合にも総合判定のため生活習慣リスクは「A」と判定する。ただし、生活習慣の判定は仮の判定のため空である識別を付帯する。
【0102】
図15は、総合評価算出部110による総合評価フローの一例を示す図である。総合評価算出部110は、
図9、
図11、
図13に示すフローにより得られた判定結果、つまり脳機能リスク、認知機能リスク、および生活習慣リスクの各判定結果(これらの組を以下では「判定結果セット」と呼ぶ)を使用し、これらの依存関係を規定した
図15の総合評価フローにより総合判定する。
【0103】
図16は、総合評価フローのサブルーチンのフローの一例を示す図である。
図17は、総合評価を行うためのリスク分類に使用する判定基準の一例を示す図である。
【0104】
図15および
図16の総合判定フローについて詳しく説明する。まず、総合評価算出部110は、判定結果セットがD判定を満たす、つまり
図16のD判定処理を行い(S401)、満たす場合(S401:Yes)、総合判定を「D」とする。
図16のD判定処理の例では認知機能リスクが「D」の場合に「Yes」となり、それ以外は「No」となる。
【0105】
総合評価算出部110は、判定結果セットがD判定を満たさない場合(S401:No)、判定結果セットがC判定を満たす、つまり
図16のC判定処理を行い(S402)、C判定の条件を満たす場合(
図15のS402:Yes)、C分類の判定を行う(S403)。
図16のC判定処理の例では、認知機能リスクが「C」の場合と、認知機能リスクが「C」でなくても認知機能リスクが「B」且つ脳機能リスクが「C」または「D」の場合に満たし、それ以外は満たさない。
【0106】
C分類の判定は、リスク分類(
図17参照)の表から、判定結果セットの判定結果の組み合わせに対応する総合評価項目の設定をC分類から抽出した値(C1またはC2)を判定結果とする。
【0107】
総合評価算出部110は、判定結果セットがC判定を満たさない場合(
図15のS402:No)、判定結果セットがB判定を満たす、つまり
図16のB判定処理でB判定となるかを判定し(S404)、満たす場合(
図15のS404:Yes)、B分類の判定を行う(S405)。
図16のB判定処理の例では、認知機能リスクが「A」以外且つ脳機能リスクが「B」以外の組み合わせの場合にB分類へ処理が進む。あるいは認知機能リスクが「A」以外で脳機能リスクが「B」でも、生活習慣リスクが「A」以外の組み合わせの場合にB分類へ処理が進む。認知機能リスクが「A」以外で脳機能リスクが「B」でも、生活習慣リスクが「A」の組み合わせの場合はA分類(
図15のS406)へ処理が進む。また、認知機能リスクが「A」で脳機能リスクが「A」以外で脳機能リスクが「B」以外の組み合わせの場合にはB分類(
図15のS405)へ処理が進む。また、認知機能リスクが「A」で脳機能リスクも「A」の組み合わせの場合にはA分類(
図15のS406)へ処理が進む。また、認知機能リスクが「A」で脳機能リスクが「A」以外で脳機能リスクが「B」の組み合わせの場合にはA分類(
図15のS406)へ処理が進む。
【0108】
B分類の判定は、リスク分類(
図17参照)の表から、判定結果セットの判定結果の組み合わせに対応する総合評価項目の設定をB分類から抽出した値(B1、B2、またはB3)を判定結果とする。
【0109】
総合評価算出部110は、判定結果セットがB判定を満たさない場合(S404:No)、A分類の判定を行う(S406)。A分類の判定は、リスク分類(
図17参照)の表から、判定結果セットの判定結果の組み合わせに対応する総合評価項目の設定をA分類から抽出した値(A1、A2、A3、またはA4)を判定結果とする。
【0110】
(レポート作成)
【0111】
図18は、レポート作成部105が作成するレポートの構成の一例を示す図である。
図19は、レポートに使用する総合評価の分類別のコメントデータの一例を示す図である。
【0112】
図18に示すレポートは、
図6に示す複数の切替タブTのレポートタブを選択するなどして取得される。
図18のレポート1200には、患者の基本情報欄1201や、総合評価欄1202や、生活習慣評価欄1203や、脳機能評価欄1204や、認知力評価欄1205などが含まれる。各欄には、入力データ記憶部に保存された患者データに基づき情報が設定される。
【0113】
例えば、総合評価欄1202に、総合評価判定フローにより判定された総合評価(一例として「B2」を設定)と、
図19のコメントデータに含まれる総合評価「B2」のコメントとが設定される。
【0114】
また、生活習慣評価欄1203に、生活習慣リスクの判定フローで判定された判定結果(一例として「B」を設定)と、生活習慣に関連する患者データが設定される。
【0115】
また、脳機能評価欄1204に、脳機能リスクの判定フローで判定された判定結果(一例として「A」を設定)と、MFおよびSEのそれぞれのレベルが星マークで設定される。
【0116】
また、認知力評価欄1205に、認知機能リスクの判定フローで判定された判定結果(一例として「B」を設定)と、MMSEおよびFABのそれぞれの値が星マークで設定される。
【0117】
図20は、UI画面に総合評価の推移を時系列で表示させた場合の表示例を示す図である。問診や心理テストや脳磁データの更新により、総合評価は随時推移する。不足分のデータが追加されたり、治療により問診や心理テストのスコアが変化したりすると、総合評価も変化する。例えば治療により問診や心理テストのスコアがより良い方向になっていくと、総合評価も改善の方向に変化していく。
【0118】
Webサーバ10は、問診や心理テストや脳磁データの更新(後から問診や心理テストや脳磁データの何れかを初めて入力する場合も含む)があると、前回までの総合評価に加え、今回の総合評価を保存することにより、更新履歴を生成する。例えばデータが不足していても総合的な評価が行われ、不足分を追加すればより高い精度の総合評価が時系列の順で保存される。また、
図20に示すように前回の来院(色付きのプロット)と今回の来院(色付きのプロット)の間に、自宅などから問診や心理テストの更新を行うたびに算出された総合評価(白抜きのプロット)が追加され、自宅などで行う治療による効果をより細かく分析することができるようになる。
【0119】
本実施の形態のコンピュータで実行するプログラムは、ROMに予め組み込んで提供してもよい。また、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0120】
以上のように、本実施の形態では、「脳機能リスク」「認知機能リスク」「生活習慣リスク」のうち、少なくとも1部(1つないし2つないし3つ)を用いて脳の健康状態の判定を行い、生活改善、行動変容を導く情報を、現在の状態のレポートとして医師と患者に報告する。3つのリスクの1つでも結果が算出できれば、一定のアルゴリズムで現在の脳健康状態を算出し、医師および患者にレポートとして提供することで患者の行動変容の機会を増加させることができる。
【0121】
また、各種判定フローの実行により各リスクの依存関係が規定されて、脳機能の総合判定が行える。脳磁データ、問診、心理テストのうち、データが得られずにリスク判定を行えないものについては仮に「A」と判定して総合判定を行うことが可能になる。データが得られていないものは、後で入力が行われることで残りのリスクが判定され、再度総合判定が行われる。さらに、脳磁データ、問診、または心理テストのデータが更新された場合は最新のデータに基づいて再度総合判定が行われる。
【0122】
よって、脳機能リスク、認知機能リスク、生活習慣リスクのうちの一部のリスク(例えば2つのリスク)からでも被検者の脳機能に関するデータ(被検者情報)を基に脳機能を総合的に評価することができる。このため、患者の体調により必要な測定を病院内ですべて実施することができない場合でも、この総合評価情報を参考にすれば、すぐに適切な治療を開始することが可能になる。
【0123】
また、患者から得られた脳機能に関する情報を基に脳機能の評価を随時行うことが可能となる。患者は、自宅等で治療を行っている期間も心理テスト等を随時実施することで、脳機能評価システムで客観的な治療効果の結果を確かめることができる。従って、患者自身が治療に効果がないと思ってしまうときでも、脳機能評価システムによる客観的な結果がモチベーションとなり、患者は治療を継続することが可能になる。
【0124】
また、ある要素について、自宅や介入施設などの病院外の場所で実施した最新の情報がある場合、それを過去のレポートに追記、更新可能で、現在の「脳健康状態」を更新して提供することができる。アップデート情報を得た被検者は行動変容への動機を高めることができる。
【0125】
また、自宅にいて治療の効果が出ない場合には予定よりも早めに病院に行ったり、補助スタッフと相談するなどして治療を変えてみたりするなど、患者や補助スタッフが自宅にいて判断することが可能になる。
【0126】
また、行動変容や生活改善の効果を通院による検査なしに確認することができるので、被検者の経済的、精神的負担の低い改善行動を継続して実施することができる。
【0127】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの各実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1 脳機能評価システム
10 Webサーバ
20 クライアントPC
30 携帯型端末装置
40 脳磁計
100 総合評価手段
100a 受付手段
100b 処理手段
100c 記憶手段
101 インタフェースコントローラ
102 脳磁データ記憶部
103 演算指示部
104 入力データ記憶部
105 レポート作成部
106 スペクトル解析部
107 脳機能リスク算出部
108 認知機能リスク算出部
109 生活習慣リスク算出部
110 総合評価算出部
200 演算処理部
201 UI部
202 通信部
301 UI部
302 通信部
D0 基準データ(判定基準データを含む)
D1 脳磁データ
D2 患者識別情報
D3 問診結果
D4 心理テスト
N1 第1のネットワーク
N2 第2のネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】