(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】エピタキシャル成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250513BHJP
C30B 35/00 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B35/00
(21)【出願番号】P 2023181064
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 一徳
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039826(JP,A)
【文献】特開2008-159740(JP,A)
【文献】特開2006-066432(JP,A)
【文献】特開2008-218984(JP,A)
【文献】特開2005-223161(JP,A)
【文献】特開2015-026754(JP,A)
【文献】特開2001-274113(JP,A)
【文献】登録実用新案第3161426(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットに収納された複数のウェーハを1枚ずつ処理する反応炉と、
前記反応炉を含むエピタキシャル成長装置で成膜するための処理条件を制御する制御手段と、
前記カセットをセットするロードポートと、を含み、
前記反応炉で前記ウェーハの主面にエピタキシャル膜を成膜し、
所定の頻度で、次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉の内部を気相エッチングして生成物を除去するために前記反応炉をクリーニング処理し、
前記ロードポートにセットされるカセットを、決められた順番で処理するエピタキシャル成長装置において、
前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉を所定温度に維持するための温度維持処理レシピにより前記反応炉を制御するエピタキシャル成長装置
(ただし、ダミーウェーハを前記反応炉に投入し、ダミープロセス用レシピに基づいて前記ダミーウェーハを処理することにより前記反応炉を所定温度に維持するものを除く)。
【請求項2】
前記カセットを次のカセットに交換する場合に、前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理の予約設定がされていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記温度維持処理レシピにより前記反応炉を制御する請求項1に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記温度維持処理レシピは、前記クリーニング処理を含んだレシピである請求項1又は2に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項4】
カセットに収納された複数のウェーハを反応炉にて1枚ずつ処理し、前記ウェーハの主面にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程と、
所定の頻度で、次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉の内部を気相エッチングして生成物を除去するクリーニング処理工程と、を含み、
ロードポートにセットされるカセットを、決められた順番に従い処理するエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉を所定温度に維持するように温度を制御するための温度維持処理を実施するエピタキシャルウェーハの製造方法
(ただし、ダミーウェーハを前記反応炉に投入し、ダミープロセス用レシピに基づいて前記ダミーウェーハを処理することにより前記反応炉を所定温度に維持するものを除く)。
【請求項5】
前記カセットを次のカセットに交換する場合に、前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記温度維持処理を実施する請求項4に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルシリコンウェーハは、シリコンウェーハをCVD装置の反応炉に搬入し、トリクロロシラン等のシリコン原料ガスを導入し、シリコンウェーハの主面に単結晶シリコン膜を気相成長させることにより製造される。このとき、シリコンウェーハの表面のみならず反応炉の内部にもシリコンが付着し、成膜処理を繰り返すことでシリコン生成物が徐々に堆積することから、生成物を除去するためのクリーニング処理が定期的に行われる(特許文献1参照)。この従来技術は、カセットに収納されたウェーハの枚数とマルチデポ回数とに応じ、クリーニング処理のエッチング時間を補正し、カセットの最終ウェーハの後に行われるクリーニング処理を適正化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、カセットの最終ウェーハの後に行われるクリーニング処理は適正化できるものの、成膜処理が終了したカセットと次に成膜処理するカセットとの間の処理については考慮されていない。このため、次のカセットの成膜処理の予約設定が出来ていないと装置の待機時間は長くなる。待機時間が長くなることにより炉体温度などの諸条件が変動するので、所定のレシピでエピタキシャル成長処理を行うと、所望の品質を有するエピタキシャルウェーハが得られないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、カセットの最終プロセスを終了してから次の成膜処理を開始するまでの待機時間が変動しても、所望の品質を有するエピタキシャルウェーハを製造できるエピタキシャル成長装置及びエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カセットに収納された複数のウェーハを1枚ずつ処理する反応炉と、
前記反応炉を含むエピタキシャル成長装置で成膜するための処理条件を制御する制御手段と、
前記カセットをセットするロードポートと、を含み、
前記反応炉で前記ウェーハの主面にエピタキシャル膜を成膜し、
所定の頻度で、次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉の内部を気相エッチングして生成物を除去するために前記反応炉をクリーニング処理し、
前記ロードポートにセットされるカセットを、決められた順番で処理するエピタキシャル成長装置において、
前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記反応炉を所定温度に維持するための温度維持処理レシピにより前記反応炉を制御するエピタキシャル成長装置(ただし、ダミーウェーハを前記反応炉に投入し、ダミープロセス用レシピに基づいて前記ダミーウェーハを処理することにより前記反応炉を所定温度に維持するものを除く)によって上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記カセットを次のカセットに交換する場合に、前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理の予約設定がされていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記温度維持処理レシピにより前記反応炉を制御することがより好ましい。
【0008】
上記発明において、前記温度維持処理レシピは、前記クリーニング処理を含んだレシピでもよい。
【0009】
また本発明は、カセットに収納された複数のウェーハを反応炉にて1枚ずつ処理し、前記ウェーハの主面にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程と、
所定の頻度で、次の成膜処理を開始する前に、前記反応炉の内部を気相エッチングして生成物を除去するクリーニング処理工程と、を含み、
ロードポートにセットされるカセットを、決められた順番に従い処理するエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記反応炉を所定温度に維持するように温度を制御するための温度維持処理を実施するエピタキシャルウェーハの製造方法(ただし、ダミーウェーハを前記反応炉に投入し、ダミープロセス用レシピに基づいて前記ダミーウェーハを処理することにより前記反応炉を所定温度に維持するものを除く)によって上記課題を解決する。
【0010】
上記発明において、前記カセットを次のカセットに交換する場合に、前記カセットの最終プロセスが終了した際に次のカセットの成膜処理が予約設定されているか否かを判定し、
次のカセットの成膜処理が予約設定されていないと判定したときは、前記最終プロセスを終了してから次のカセットの成膜処理を開始する前に、前記温度維持処理を実施することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カセットの最終プロセスを終了してから次の成膜処理を開始するまでの待機時間が変動しても、成膜処理する前に反応炉を所定温度に維持するための温度維持処理を実施するので、所望の品質を有するエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造システムの一実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1のエピタキシャル成長装置を示す概略構成図である。
【
図3】
図1のエピタキシャルウェーハ製造システムの動作を示すフローチャートである。
【
図4A】
図1のホストコンピュータから出力される成膜処理レシピ及びクリーニング処理レシピによる処理工程の温度推移を示すグラフである。
【
図4B】
図1のホストコンピュータから出力される成膜処理レシピ,クリーニング処理レシピ及び温度維持処理レシピによる処理工程の温度推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るエピタキシャルウェーハ製造システムの一実施の形態を示す概略構成図である。同図に示すように、本実施形態のエピタキシャルウェーハ製造システム1は、バルクシリコンウェーハ(ポリッシュドウェーハ)の主面にエピタキシャル膜を気相成長させるためのエピタキシャル成長装置10と、エピタキシャル成長装置10の処理条件を出力するホストコンピュータ40とを備える。エピタキシャル成長装置10は、データ通信ラインを介してホストコンピュータ40に接続され、ホストコンピュータ40から出力される製品プロセス(成膜処理)に関する成膜処理レシピ、クリーニング処理に関するクリーニングレシピ及び温度維持処理に関する温度維持処理レシピに従って動作する。
【0014】
データベース50には、製造すべきウェーハ製品の仕様、ウェーハ製品の仕様ごとの成膜条件に関する製法情報(レシピ名)、連続処理枚数などが記録され、ホストコンピュータ40には、反応レシピ詳細、処理パラメータの設定などが記録され、後述する制御部19は、ホストコンピュータ40からの情報を記録する。本明細書において、ウェーハ製品の仕様ごとの成膜条件に関する製法情報を成膜処理レシピ、クリーニング処理に関する方法情報をクリーニング処理レシピ、反応炉11を所定温度に維持するための温度維持処理に関する方法情報を温度維持処理レシピともいう。
【0015】
エピタキシャル成長装置10は、ウェーハを1枚ずつ処理する第1反応炉11A及び第2反応炉11Bと、複数枚のウェーハが収容された第1カセット21Aと第2カセット21Bが設置されるロードポート20と、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bと、ロードポート20との間に設けられたウェーハ搬送機構30と、を備える。本実施形態のエピタキシャル成長装置10は、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを備え、2枚のウェーハを並列処理することが可能な冗長構成とされている。また、本実施形態のロードポート20は、第1カセット21Aと第2カセット21Bのそれぞれを設置可能な第1ポート20Aと第2ポート20Bとを有し、第1カセット21A及び第2カセット21Bのそれぞれからウェーハを取り出し、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bに送り込むことができる。なお、ロードポート20は、雰囲気の置換を行うロードロック室として機能してもよく、又は雰囲気を置換しない単なるカセット設置スペースであってもよい。後者の場合、ロードポート20内のウェーハは、ロードポート20とは別に用意されたロードロック室を経由して第1反応炉11A及び第2反応炉11Bに送られる。
【0016】
図2は、エピタキシャル成長装置10の第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを示す概略構成図である。本実施形態の第1反応炉11Aと第2反応炉11Bとは同じ構成であるため、第1反応炉11Aについて説明する。
【0017】
本実施形態のエピタキシャル成長装置10は、
図2に示すように、エピタキシャルCVD法によりウェーハWを1枚ずつ処理する枚葉型の気相成長装置であり、ガス導入口111及びガス排出口112が形成された石英製の第1反応炉11Aを備える。また、本実施形態のエピタキシャル成長装置10は、第1反応炉11Aの外側上部及び外側下部から内部を加熱する複数のヒータ12と、第1反応炉11Aの内部に設けられ、黒鉛にSiC膜が被膜されて、ウェーハWを支持するサセプタ13と、サセプタ13を回転駆動する回転駆動機構14と、これらの各部を制御する制御部19とを備える。なお、制御部19は、ウェーハWの搬送・成長を含めた処理順序に関する制御も実行する。
【0018】
第1反応炉11Aのガス導入口111は、配管15及びバルブ16を介して複数の原料タンク17に接続されている。複数の原料タンク17は、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)などのエピタキシャル原料ガスを貯蔵するシリコン原料タンク17a、ドーパントガスを貯蔵するドーパントガスタンク17b、クリーニングに用いる塩酸(HCl)、三フッ化塩素(ClF3)などのエッチャントガスの液化原料を貯蔵するクリーニング原料タンク17c、アルゴン(Ar)、水素(H2)などのキャリアガスの液化原料を貯蔵するキャリア原料タンク17dを含む。これら原料ガスなどの供給のON/OFF及び供給量は、対応するバルブ16及びマスフローコントローラなどを制御することにより行うことができる。第1反応炉11Aのガス排出口112は、サセプタ13を挟んでガス導入口111と反対側に設けられ、ガス導入口111から第1反応炉11Aの内部に供給されたガスは、サセプタ13の上方を通ってガス排出口112から排出される。
【0019】
図1に戻り、本実施形態のロードポート20は、第1カセット21A及び第2カセット21Bの各スロットにウェーハWが収容されているか否かを検知する在荷センサ22を有し、制御部19は、在荷センサ22の出力に基づいて、第1カセット21A及び第2カセット21Bに収容されているウェーハWの枚数を数える。第1カセット21A及び第2カセット21Bのスロット数(ウェーハの最大収容枚数)は、たとえば25であるが、25枚のウェーハWが常に収容されているわけではなく、最大収容枚数に満たない場合があるため、各スロットにウェーハWが収容されているか否かを検出する必要がある。このように、制御部19及び在荷センサ22は、第1カセット21A及び第2カセット21Bに収容されているウェーハWの枚数を数える機能を有する。またロードポート20は、第1カセット21A及び第2カセット21Bに貼り付けられたラベルからウェーハ製品の品番を読み取る機能を有し、読み取られた品番データは、ウェーハWの枚数データと共にホストコンピュータ40に送られる。
【0020】
本実施形態のウェーハ搬送機構30はロボットアームを有し、ウェーハWをロボットアームに搭載又は把持し、ロードポート20と、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bとの間を搬送する。すなわち、第1カセット21A又は第2カセット21Bから取り出された成膜前のウェーハWは、ウェーハ搬送機構30により第1反応炉11A又は第2反応炉11Bに搬送される一方で、第1反応炉11A又は第2反応炉11Bで成膜処理されたウェーハWは、ウェーハ搬送機構30により第1反応炉11A又は第2反応炉11Bから取り出され、第1カセット21A又は第2カセット21Bの元のスロットに戻される。ウェーハ搬送機構30は、在荷センサ22の出力に基づいて、各スロットからウェーハWを取り出すとともに元のスロットに戻す。
【0021】
本実施形態の制御部19は、第1反応炉11A及び第2反応炉11BにおけるウェーハWの成膜処理、炉内のクリーニング処理及び炉内の温度維持処理を制御する。そのため、成膜処理時には、キャリアガスと共にシリコン原料ガス及び必要に応じてドーパントガスを供給する。また、クリーニング処理時には、キャリアガスと共にエッチングガスを供給してシリコン生成物を除去する。さらに、所定の条件が成立した時には、ヒータ12を制御することで第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを所定温度に維持する。なお、制御部19は、バルブ16及びマスフローコントローラ等を制御してエピタキシャル膜の成膜量(膜厚)、ドーパント量(抵抗率)、エッチング量、クリーニング時間等を制御する。制御部19は、ホストコンピュータ40から送られてくる成膜処理レシピ、クリーニング処理レシピ、温度維持処理レシピに基づいて、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを制御する。温度維持処理レシピによる維持温度は、シリコンエピタキシャル膜を生成する場合、たとえば1050~1275℃、好ましくは1100~1190℃である。
【0022】
本実施形態のホストコンピュータ40は、データベース50と通信可能に構成され、ロードポート20から送られてくる品番データに基づいてウェーハWの製品仕様に関する情報などを取得する。データベー50から取得する製品仕様に関する情報は、エピタキシャル膜の膜厚、抵抗率、成膜処理レシピ番号、クリーニング処理レシピ番号、温度維持処理レシピ番号、連続処理枚数などである。ホストコンピュータ40は、ロードポート20に搬入されたカセット21に収容されたウェーハWの処理条件等を、取得したタイミングで制御部19へ予約設定する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のエピタキシャルウェーハ製造システム1は、2つの反応炉である、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを備えるとともに、ロードポート20も2つのポートである、第1ポート20A及び第2ポート20Bを備え、ウェーハWを並列処理する機能を有する。このようにウェーハWを並列処理する機能を有する場合、エピタキシャル成長装置10は、2つの運転モードを設定・選択することができる。運転モードの一つは、第1ポート20Aにセットされた第1カセット21Aに収納された複数枚のウェーハWを、第1反応炉11Aで順に処理すると共に、第2ポート20Bにセットされた第2カセット21Bに収納された複数枚のウェーハWを、第2反応炉11Bで順に処理するモードであり、これはパラレル運転モードとも称される。運転モードの他の一つは、はじめに第1カセット21AからウェーハWを一枚ずつ順番に取り出して第1反応炉11A及び第2反応炉11Bの両方で並列処理し、第1カセット21Aに収納されたすべてのウェーハWの処理が完了した後に第2カセット21Bに収納されたウェーハWの処理を開始するモードであり、これはシリアル運転モードとも称される。このように、1つのカセット21に収容されたウェーハWを、単一の反応炉を用いて処理してもよく、複数の反応炉を用いて並列処理してもよい。
【0024】
ここで、上述したパラレル運転モードを選択した場合には、以下のような問題が生じることが少なくない。すなわち、カセットの最終プロセスであるクリーニング処理が終了してから次のウェーハの成膜処理までの待機時間が、通常よりも長くなることがある。この原因としては、クリーニング処理時間が短かったり、カセットの交換タイミングが遅れたりすることで、次のカセットの成膜処理の予約設定が、カセットの最終プロセスの終了後になることがある。また、頻繁ではないが、シリアル運転モードを選択した場合でも、次のカセットの予約設定がされないと同様の問題が生じることがある。
【0025】
カセットの最終プロセスを終了してから次のウェーハの成膜処理までの待機時間が長くなると、反応炉11の内部温度などの諸条件が変動するところ、成膜処理レシピは一つしか設定されていないので、この成膜処理レシピでエピタキシャル成長処理を行うと、膜厚や抵抗率などの所望の品質を満足するエピタキシャルウェーハが得られないという問題がある。
【0026】
図4Aは、ホストコンピュータ40から出力される成膜処理レシピ及びクリーニング処理レシピによる処理工程の温度推移を示すグラフである。図示する例では、カセットAの最終プロセスとしてクリーニング処理1を実施する。すなわち、カセットAに収納された最後のウェーハに対し成膜処理1(昇温⇒成膜⇒降温)を実施したのちウェーハWを取り出した状態でクリーニング処理1(昇温⇒エッチング⇒降温)を実施する。このクリーニング処理1を終了した時点が、カセットAの最終プロセスの終了時になる。このとき、カセットAの最終プロセスの終了時までに、次のカセットBがロードポート20に搬入され、ホストコンピュータ40から制御部19へ、次のカセットBに収容されたウェーハWの成膜処理の条件等が予約設定されている場合は、所定時間Tの間に、次のカセットBのウェーハWを反応炉11に投入し、成膜処理2(昇温⇒成膜⇒降温)を実施する。ここで、所定時間TはウェーハWの炉内への搬入に要する時間で、炉内は所定のランプパワーで加熱されている。すなわち、カセットAの最終プロセスを終了してから所定時間T経過後に次のカセットBのウェーハWの成膜処理2を開始すれば、当該成膜処理2によるウェーハWのエピタキシャル膜品質の変動は抑制される。
【0027】
これに対し、
図4Bに示すように、カセットAの最終プロセスとしてのクリーニング処理1を終了するまでの間に、ホストコンピュータ40から制御部19へ、次のカセットBに収容されたウェーハWの成膜処理の条件等が予約設定されていない場合は、同図に点線で示すようにその反応炉11の炉内温度が低下してしまう。制御部19に設定された成膜処理レシピは一つしか設定されていないので、反応炉11の炉内温度が低くなった状態で、その一つしかない成膜処理レシピを用いてエピタキシャル成長処理を行うと、膜厚や抵抗率などの品質が変動することになる。
【0028】
そのため、本実施形態のエピタキシャルウェーハ製造システム1では、制御部19に、成膜処理レシピ及びクリーニング処理レシピとは別に、温度維持処理レシピが記録されている。この温度維持処理レシピとは、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bを所定温度に維持するためにヒータ12などを制御するレシピであり、第1反応炉11A及び第2反応炉11Bの温度がクリーニング処理を実施した場合と同じ程度の温度になるようにヒータ12の出力、出力比、時間などの条件を含むレシピである。温度維持処理レシピは、実機による確認実験又はコンピュータシミュレーションにより予め諸条件の値が求められ、これがホストコンピュータ40に記録されている。
【0029】
そして、ホストコンピュータ40は次のカセットBがセットされる際に、制御部19に収容されたウェーハWの成膜処理の条件等と成膜処理の予約設定を行う。制御部19は、カセットAの最終プロセスの終了時に、次のカセットBに収容されたウェーハWの成膜処理の予約設定がされているか否かを判定し、予約設定されていない場合は、カセットBのウェーハの成膜処理をする前に制御部19に設定されている温度維持レシピを実施する。
【0030】
図4Bは、ホストコンピュータ40から出力される成膜処理レシピ,クリーニング処理レシピ及び温度維持処理レシピによる処理工程の温度推移を示すグラフである。図示する例では、
図4Aに示す例と同様にカセットAの最終プロセスとしてクリーニング処理1を実施する。そして、カセットAに収納された最後のウェーハに対し成膜処理1(昇温⇒成膜⇒降温)を実施したのちウェーハWを取り出した状態でクリーニング処理1(昇温⇒エッチング⇒降温)を実施する。このクリーニング処理1を終了したら、所定時間Tの間に次のカセットBの1枚目のウェーハWを反応炉11に投入し、成膜処理2(昇温⇒成膜⇒降温)を実施するはずであるが、カセットBの処理予約の設定が遅れなどの原因により、カセットAの最終プロセスたるクリーニング処理1を終了してから所定時間T経過後にカセットBの1枚目のウェーハWの成膜処理2を開始できない場合には、カセットBの1枚目のウェーハWの成膜処理2の前に温度維持処理を実施し、反応炉11の炉内温度を所定温度に維持したのち、カセットBの1枚目のウェーハWの成膜処理2(昇温⇒成膜⇒降温)を実施する。
【0031】
次に動作を説明する。
図3は、本実施形態のエピタキシャルウェーハ製造システム1の動作を示すフローチャートである。本例では、
図1に示すエピタキシャルウェーハ製造システム1をパラレル運転モードで使用した場合であって、第1ポート20Aの第1カセット21Aに収納されたウェーハWを第1反応炉11Aで成膜処理するときの動作を説明する。
【0032】
まずステップS1において、第1ポート20Aに第1カセット21Aが搬入される。カセットの交換は、現在のカセットに収納されたすべてのウェーハWの成膜処理が終了すると行われ、成膜処理後のウェーハWを収納したカセットをロードポート20から搬出し、成膜前のウェーハWを収納した新しいカセット21をロードポート20に搬入する。こうしたカセットの搬出・搬入作業は、図示しないカセット搬送装置により自動又は半自動で行われる。
【0033】
ステップS1において、未成膜のウェーハWが収納された新しい第1カセット21Aが第1ポート20Aに搬入されると、続くステップS2において、在荷センサ22により第1カセット21Aに収納されたウェーハWの枚数を数え、制御部19に取り込むと共にホストコンピュータ40にも出力する。
【0034】
ステップS3では、ホストコンピュータ40が、ロードポート20から送られてくる品番データに基づいて、データベース50からウェーハWの製品仕様に関する情報(エピタキシャル膜の膜厚、抵抗率、成膜処理レシピ番号、クリーニング処理レシピ番号、温度維持処理レシピ番号、連続処理枚数など)などを取得する。ホストコンピュータ40は、ロードポート20に搬入されたカセット21に収容されたウェーハWの処理条件等を制御部19へ出力し、成膜処理を予約設定する。
【0035】
ステップS4では、これから成膜処理を行うカセットの予約設定が、その前のカセットの最終プロセスが終了するまでに行われたか否かを判定し、その前のカセットの最終プロセスが終了するまでに行われていた場合はステップS6へ進み、その前のカセットの最終プロセスが終了するまでに行われていない場合はステップS5へ進む。
【0036】
ステップS5では、第1カセット21Aに収納されたウェーハWのうちの1枚目のウェーハWを成膜処理する前に、温度維持処理を実施する。新規なカセットが搬入された直後は、反応炉11の炉体温度が下がっている可能性があるためである。
【0037】
ステップS6において、制御部19は、ウェーハ搬送機構30を制御し、第1カセット21Aに収納されたウェーハWを第1反応炉11Aに投入し、成膜処理レシピにしたがって第1反応炉11Aやバルブ16及びマスフローコントローラなどを制御し、ウェーハWに所定のエピタキシャル膜を形成する。エピタキシャル膜の形成が終了したら、制御部19はウェーハ搬送機構30を制御し、成膜済みのウェーハWを第1反応炉11Aから取り出し、第1カセット21Aの元のスロットに収納する。
【0038】
続くステップS7において、制御部19は、クリーニング処理レシピにしたがって第1反応炉11Aやバルブ16及びマスフローコントローラなどを制御し、炉内にエッチングガスを導入して生成物を除去し、ホストコンピュータ40は、ウェーハWの成膜処理が終了したカセット21Aの搬出を制御する。
【0039】
続くステップS8において、ホストコンピュータ40は、制御部19を介してロードポート20に次のカセットがあるか否かを判定し、次のカセットがある場合はステップS1へ進み、次のカセットがなくなるまでステップS1からS7のステップを繰り返す。次のカセットがない場合は、製造を終了する。
【0040】
なお、上記実施形態の制御部19及びホストコンピュータ40が、本発明に係る制御手段に相当し、上記エピタキシャルウェーハの製造システム1が、本発明に係るエピタキシャル成長装置に相当する。
【符号の説明】
【0041】
1…エピタキシャルウェーハ製造システム
10…エピタキシャル成長装置
11…反応炉
11A…第1反応炉
11B…第2反応炉
111…ガス導入口
112…ガス排出口
12…ヒータ
13…サセプタ
14…回転駆動機構
15…配管
16…バルブ
17…原料タンク
17a…シリコン原料タンク
17b…ドーパントガスタンク
17c…クリーニング原料タンク
17d…キャリア原料タンク
19…制御部
20…ロードポート
20A…第1ポート
20B…第2ポート
21…カセット
21A…第1カセット
21B…第2カセット
22…在荷センサ
30…ウェーハ搬送機構
40…ホストコンピュータ
50…データベース
W…ウェーハ