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特許7680923マルチ電子ビーム検査装置、多極子アレイの制御方法、及びマルチ電子ビーム検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-13
(45)【発行日】2025-05-21
(54)【発明の名称】マルチ電子ビーム検査装置、多極子アレイの制御方法、及びマルチ電子ビーム検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20250514BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20250514BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20250514BHJP
   H01L 21/66 20060101ALN20250514BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/09 A
H01J37/244
H01L21/66 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021150890
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043334
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2024-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】前川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-249344(JP,A)
【文献】特開2012-164834(JP,A)
【文献】特開2019-200983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0355547(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0132199(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/147
H01J 37/09
H01J 37/244
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
マルチ1次電子ビームを放出する放出源と、
それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で前記対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子を有する多極子アレイと、
前記多極子アレイを通過したマルチ1次電子ビームを一括ビーム偏向することにより前記マルチ1次電子ビームで前記基板上を走査する対物偏向器と、
前記複数の多極子の電極毎に配置されるコンデンサとスイッチとを有し、前記コンデンサとスイッチとを用いて当該電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路と、
前記複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する複数の電源と、
前記対物偏向器による前記一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、前記複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を前記複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持するように前記複数の第1のサンプルホールド回路を制御する制御回路と、
前記マルチ1次電子ビームが前記基板に照射されることにより放出されるマルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項2】
前記複数の電源の数は、前記マルチ1次電子ビームのビーム本数にビーム1本あたりの多極子の電極数を乗じた値よりも少ないことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項3】
前記複数の電源の数は、前記マルチ1次電子ビームのビーム本数よりも少ないことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項4】
前記制御回路は、さらに、前記複数の電源を制御し、
前記対物偏向器は、前記一括ビーム偏向の繰り返しによる複数のラインスキャン動作によりビーム毎の所望の領域内を走査し、
前記制御回路は、前記複数のラインスキャン動作の少なくとも1つのラインスキャン動作に同期して、前記複数の電源の各電位を切り替えることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載のマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項5】
コンデンサとスイッチとを用いて電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する工程と、
マルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向により前記マルチ1次電子ビームで基板上を走査する対物偏向器によるマルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、前記複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を前記複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持する工程と、
前記複数の第2のサンプルホールド回路で保持された複数の電位を、それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で前記対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子における前記複数の第2のサンプルホールド回路に接続される複数の電極に印加する工程と、
を備えたことを特徴とする多極子アレイの制御方法。
【請求項6】
マルチ1次電子ビームを放出する工程と、
マルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向を行う対物偏向器を用いて、前記マルチ1次電子ビームでステージ上に載置された基板を走査する工程と、
コンデンサとスイッチとを用いて電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する工程と、
前記対物偏向器によるマルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、前記複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を前記複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持する工程と、
前記複数の第2のサンプルホールド回路で保持された複数の電位を、それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で前記対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子における前記複数の第2のサンプルホールド回路に接続される複数の電極に印加する工程と、
前記複数の多極子を有する多極子アレイにより前記マルチ1次電子ビームの収差を個別に補正する工程と、
前記マルチ1次電子ビームが前記基板に照射されることにより放出されるマルチ2次電子ビームを検出する工程と、
検出された検出信号に基づく検出画像を参照画像と比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビーム検査装置、多極子アレイの制御方法、及びマルチ電子ビーム検査方法に関する。例えば、マルチ電子ビームの収差を補正する多極子アレイ及び多極子アレイを搭載するマルチ電子ビームを照射する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチビームを検査対象基板に照射して、検査対象基板から放出される各ビームに対応する2次電子を検出して、パターン画像を撮像する。そして撮像された測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
マルチビームを用いた電子光学系では、像面湾曲、軸外非点、或いはディストーション(歪曲収差)といった収差が発生し得る。電子ビームを用いた検査装置では、検査を行うために、高精度な画像を取得する必要がある。かかる収差の補正は、マルチビームの各ビームを個別に軌道補正する必要がある。例えば、各ビーム独立の多極子レンズをアレイ状に配置することが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、多極子レンズで各ビームを個別に補正するためには、ビーム毎かつ電極毎に個別に制御する必要がある。そのため、ビーム数×多極子の電極数の電源が必要になる。ビーム数の増大に伴い、電源数も増大し、実装することが困難になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-200983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、多極子アレイに使用する電源数を低減可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、
基板を載置するステージと、
マルチ1次電子ビームを放出する放出源と、
それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子を有する多極子アレイと、
多極子アレイを通過したマルチ1次電子ビームを一括ビーム偏向することによりマルチ1次電子ビームで基板上を走査する対物偏向器と、
複数の多極子の電極毎に配置されるコンデンサとスイッチとを有し、コンデンサとスイッチとを用いて当該電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路と、
複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する複数の電源と、
対物偏向器による一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持するように複数の第1のサンプルホールド回路を制御する制御回路と、
マルチ1次電子ビームが基板に照射されることにより放出されるマルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、複数の電源の数は、マルチ1次電子ビームのビーム本数にビーム1本あたりの多極子の電極数を乗じた値よりも少ない。
【0010】
また、複数の電源の数は、マルチ1次電子ビームのビーム本数よりも少ないと好適である。
【0011】
制御回路は、さらに、複数の電源を制御し、
対物偏向器は、一括ビーム偏向の繰り返しによる複数のラインスキャン動作によりビーム毎の所望の領域内を走査し、
制御回路は、複数のラインスキャン動作の少なくとも1つのラインスキャン動作に同期して、複数の電源の各電位を切り替えると好適である。
【0012】
本発明の一態様の多極子アレイの制御方法は、
コンデンサとスイッチとを用いて電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する工程と、
マルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向によりマルチ1次電子ビームで基板上を走査する対物偏向器によるマルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持する工程と、
複数の第2のサンプルホールド回路で保持された複数の電位を、それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子における複数の第2のサンプルホールド回路に接続される複数の電極に印加する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査方法は、
マルチ1次電子ビームを放出する工程と、
マルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向を行う対物偏向器を用いて、マルチ1次電子ビームでステージ上に載置された基板を走査する工程と、
コンデンサとスイッチとを用いて電極に印加するための電位を保持する複数の第1のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する工程と、
対物偏向器によるマルチ1次電子ビームの一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、複数の第1のサンプルホールド回路に印加された複数の電位を複数の第1のサンプルホールド回路のうち選択された複数の第2のサンプルホールド回路で保持する工程と、
複数の第2のサンプルホールド回路で保持された複数の電位を、それぞれがマルチ1次電子ビームのうち対応ビームが通過する位置で対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子における複数の第2のサンプルホールド回路に接続される複数の電極に印加する工程と、
複数の多極子を有する多極子アレイによりマルチ1次電子ビームの収差を個別に補正する工程と、
マルチ1次電子ビームが基板に照射されることにより放出されるマルチ2次電子ビームを検出する工程と、
検出された検出信号に基づく検出画像を参照画像と比較し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、多極子アレイに使用する電源数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4】実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。
図5】実施の形態1における収差補正器の各電極基板の構成の一例を示す上面図である。
図6】実施の形態1における収差補正器の構成の一例を示す断面図である。
図7】実施の形態1における多極子と印加電位を説明するための図である。
図8】実施の形態1における複数のサンプルホールド回路の一例を示す図である。
図9】実施の形態1におけるライン走査とサンプルホールド回路の制御方法を説明するための図である。
図10】実施の形態1における制御パルス信号のタイムチャートの一例を示す図である。
図11】実施の形態1における電源の構成の一例を示す図である。
図12】実施の形態1における配線数を説明するための図である。
図13】実施の形態1における歪曲収差(ディストーション)の一例を示す図である。
図14】実施の形態1における非点の一例を示す図である。
図15】実施の形態1における非点の他の一例を示す図である。
図16】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム照射装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、マルチ電子ビーム照射装置は、検査装置に限るものではなく、描画装置等、例えば、電子光学系を用いてマルチ電子ビームを照射する装置であれば構わない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を有している。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、収差補正器220、静電レンズ221、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、E×B分離器214、偏向器218、電磁レンズ224、及びマルチ検出器222が配置されている。電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、収差補正器220、静電レンズ221、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、及び副偏向器209によって1次電子光学系を構成する。また、電磁レンズ207、E×B分離器214、偏向器218、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系を構成する。電子ビームカラム102及び検査室103内は図示しない真空ポンプによって所望の圧力の真空状態になるように真空引きされる。
【0018】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0019】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、収差補正回路121、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、電源回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
【0020】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0021】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ224、及びE×B分離器214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。
【0022】
また、制御系回路160では、さらに、サンプルホールド回路盤130が配置される。サンプルホールド回路盤130は、電子ビームカラム102内に配置されると好適である。よって、サンプルホールド回路盤130は、真空雰囲気下に配置される。一方、収差補正回路121及び電源回路132は、制御室内に配置される。そのため、サンプルホールド回路盤130は、図示しないフィードスルーを介して、大気圧側の収差補正回路121及び電源回路132に接続される。サンプルホールド回路盤130は、収差補正器220(多極子アレイの一例)に接続される。
【0023】
サンプルホールド回路盤130内には、後述するように複数のサンプルホールド回路が配置される。電源回路132内には、後述するように複数の電源が配置される。収差補正回路121(制御回路)は、かかる複数のサンプルホールド回路を制御する。また、収差補正回路121は、さらに、複数の電源を制御する。
【0024】
収差補正器220は、後述するように2段以上の電極基板により構成され、サンプルサンプルホールド回路盤130を介して収差補正回路121により制御される。静電レンズ221は、中央部にマルチ1次電子ビーム全体が通過可能な開口部が形成された、例えば3段以上の電極基板により構成され、収差補正回路121により制御される。
【0025】
副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。
【0026】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0027】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0028】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、例えば11×11の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203は、マルチ1次電子ビーム20を放出する放出源の一例となる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0029】
次に、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0030】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20(マルチ1次電子ビーム)が形成される。
【0031】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像位置に配置されたE×B分離器214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。この間に、収差補正器220によって、像面湾曲、非点及び/或いは歪曲収差(ディストーション)といった収差が補正される。また、収差補正器220による補正によってビームの焦点位置のずれが生じた場合に静電レンズ221によって一括して焦点位置のずれが補正される。図1の例では、収差補正器220が電磁レンズ205の磁場中に配置される場合を示している。電磁レンズ205の磁場中に配置することにより、収差補正器220の制御電極に印加する電位を磁場外に配置する場合に比べて小さくできる。例えば、1/100程度に小さくできる。但し、これに限るものではない。収差補正器220は、成形アパーチャアレイ基板203とE×B分離器214との間に配置されていればよい。
【0032】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカスする。言い換えれば、電磁レンズ207(電子光学系の一例)は、収差補正器220によって像面湾曲、非点及び歪曲収差の少なくとも一方が補正されマルチ1次電子ビーム20を基板101に誘導する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によってマルチ1次電子ビーム20全体が遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用(画像取得用)のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0033】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20(マルチ1次電子ビーム)の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0034】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。
【0035】
ここで、E×B分離器214(ビームセパレータ)は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極と、2極以上の複数の電極とを有する。そして、かかる複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離する。
【0036】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、例えば図示しないダイオード型の2次元センサを有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応するダイオード型の2次元センサ位置において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子がダイオード型の2次元センサに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0037】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332内は、例えば、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。実施の形態1では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。対象となるマスクダイ33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0038】
図4は、実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。図4の例では、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。図4の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20の各1次電子ビーム9は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。マルチ1次電子ビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内のビームの移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべてを順に照射していく。図4の例では、サブ照射領域29内をy方向に進む4ラインで走査する場合を示しているが、後述するように、実際にはもっと多くのライン走査を行う。例えば、512ラインを走査する。
【0039】
基板101の所望する位置に、収差補正器220により収差が補正されたマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20に対応する、反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300が放出される。基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、E×B分離器214に進み、斜め上方に曲げられる。斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218で軌道を曲げられ、マルチ検出器222に投影される。このように、マルチ検出器222は、マルチ1次電子ビーム20が基板101面に照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出する。反射電子は光路の途中で発散しても構わない。
【0040】
以上のように、マルチ1次電子ビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチ1次電子ビーム20のショットにより、その都度、照射された位置から2次電子が放出され、マルチ検出器222にて検出される。
【0041】
図5は、実施の形態1における収差補正器の各電極基板の構成の一例を示す上面図である。
図6は、実施の形態1における収差補正器の構成の一例を示す断面図である。
収差補正器220は、所定の隙間を開けて配置される、2段以上の電極基板により構成される。図5(a)と図5(b)の例では、5×5本のマルチ1次電子ビーム20を用いる場合について示している。収差補正器220(多極子アレイ)は、それぞれがマルチ1次電子ビーム20のうち対応ビームが通過する位置で対応ビームを取り囲むように配置された複数の多極子13を有する。以下、具体的に説明する。
【0042】
第1電極基板10では、基板本体12に、マルチ1次電子ビーム20が通過する、複数の通過孔11(第1の通過孔)が形成される。図5(a)及び図6に示すように、第1電極基板10では、ビーム間ピッチPのマルチ1次電子ビーム20が通過する位置に複数の通過孔11が形成される。第1電極基板10の複数の通過孔11は、基板本体12の上面(ビームの進行方向の上流側)から裏面に向かう途中まで孔径D2(第2の孔径)となり、途中から裏面まで、孔径D3(第3の孔径)とサイズが広がるように形成される。また、図6に示すように、基板本体12の上面、側面、底面、及び複数の通過孔11内壁は、シールド電極44によって覆われる。少なくとも複数の通過孔11内壁にシールド電極44が配置される。
【0043】
第2電極基板14は、第1電極基板10の下部側(ビームの進行方向の下流側)に配置される。第2電極基板14では、基板本体15に、ビーム間ピッチPのマルチ1次電子ビーム20が通過する、複数の通過孔17(第2の通過孔)が形成される。図5(b)及び図6に示すように、第2電極基板14の複数の通過孔17は、基板本体15の上面から裏面まで孔径D1(第1の孔径)で形成される。通過孔17の周囲上面に通過孔17毎に個別にそれぞれ4極以上の多極子13が配置される。多極子13として、複数の電極16(第1の電極の一例)が配置される。図5(b)では、8つの電極16(a~h)(第1の電極の一例)が配置される場合を示している。例えば、マルチ1次電子ビーム20の歪曲収差を補正する場合であれば、ビーム毎に、直交する方向(x,y方向)に2極ずつ対向して配置される4極の電極16で良い。例えば、マルチ1次電子ビーム20の非点を補正する場合であれば、ビーム毎に、直交する方向(x,y方向)に加えて中間位相となる45°及び135°方向に2極ずつ対向して配置される8極の電極16が配置されると好適である。なお、非点の方向がわかっている場合には、直交する方向(x,y方向)に2極ずつ対向して配置される4極の電極16でも構わない。また、第2電極基板14では、基板本体15とビーム毎の複数の電極16(a~h)との間に、絶縁層40が配置される。また、図6に示すように、基板本体15の側面、底面、及び複数の通過孔17内壁は、シールド電極42によって覆われる。
【0044】
第1電極基板10の基板本体12の材料、及び第2電極基板14の基板本体15の材料として、共に、例えば、シリコン(Si)を用いると好適である。基板本体12,15,は、例えば、数100μm程度の膜厚のSi基板が好適である。また、ビーム毎の複数の各電極16(a~h)の材料として、例えば、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、或いはパラジウム(Pd)等の酸化されにくい金属を用いると好適である。また、シールド電極42,44の材料として、電極16と同様、例えば、Al、Pt、Ti、或いはPd等の酸化されにくい金属を用いると好適である。
【0045】
非点或いは及びディストーションを補正する場合、1つのビーム用の複数の電極16のうち、対向する2つの電極の一方には+Vの電位が印加される。他方には符号が逆転した同電位の-Vの電位が印加される。像面湾曲を補正する場合、1つのビーム用の複数の電極16には同電位が印加される。また、シールド電極42,44には、グランド(GND)電位が印加される。
【0046】
ここで、収差補正器220では、図6に示すように、第1電極基板10の通過孔11が第2電極基板14の電極16が配置される通過孔17よりも広く形成される。そのため、電極16上部が通過孔11によって空いている。そのため、対向する2つの電極16上の通過孔11内の空間にも電場Eを広げることができる。また、図6に示す第1電極基板10の通過孔11の上部がつば部分によって孔径D3から孔径D2へと狭まっているため、電気力線の方向を曲げやすくできる。そのため、電場が上段電極基板10より上方へと発散せずに、対向する2つの電極16上の通過孔11内で電場Eを形成できる。よって、第1電極基板10の通過孔11に進入してきた電子ビームに対して、通過孔11を通過中に電界を作用させることができる。そのため、偏向支点を電極16上の通過孔11途中に設けることができる。その分、電極16自体の厚さを小さくできる。
【0047】
図7は、実施の形態1における多極子と印加電位を説明するための図である。図7において、各ビーム用の多極子13として、8つの電極16a~16hが、対応するビームが通過する位置でかかる対応するビームを取り囲むように配置される。図7では、アレイ状に並ぶマルチ1次電子ビーム20のうち、インデックスiのビーム用の電極番号jの電極(Eij)を示している。jは、1~8の電極番号を示す。図7では、インデックスiのビーム用の電極Ei1~Ei8を示している。電極16a(E11)には電位V1が印加される。電極16bには電位V2が印加される。電極16cには電位V3が印加される。電極16dには電位V4が印加される。電極16eには電位V5が印加される。電極16fには電位V6が印加される。電極16gには電位V7が印加される。電極16hには電位V8が印加される。
【0048】
収差補正器220といった多極子アレイで各ビームを個別に補正するためには、ビーム毎かつ電極毎に個別に制御する必要がある。そのため、ビーム数×多極子の電極数の電源が必要になる。ビーム数の増大に伴い、電源数も増大し、実装することが困難になるといった問題があった。例えば11×11本のマルチ1次電子ビームでは、i=1~121のビームが存在する。収差補正器220で、各ビームに8つの電極16が配置される場合、各ビームを個別に補正するためには121×8個の電源が必要となる。そこで、実施の形態1では、8つの電極×ビーム数の電極に、それぞれサンプルホールド回路を配置する。かかる複数のサンプルホールド回路(第1のサンプルホールド回路)は、複数の多極子13の電極16毎に配置されるコンデンサとスイッチとを有し、コンデンサとスイッチとを用いて当該電極16に印加するための電位を保持する。以下、具体的に説明する。
【0049】
図8は、実施の形態1における複数のサンプルホールド回路の一例を示す図である。図8において、横方向に同じビーム用の複数の電極Ei1~電極Ei8に接続するための8つのサンプルホールド回路2が並ぶ。そして、同じ8つのサンプルホールド回路2が縦方向にビーム本数分並ぶ。図8の例では、11×11本のマルチ1次電子ビーム20を用いる場合を示す。その場合、121本のビームが存在するので、8つのサンプルホールド回路2が縦方向に、121個並ぶ。よって、合計121×8個のサンプルホールド回路(第1のサンプルホールド回路)が配置される。
【0050】
各サンプルホールド回路2は、スイッチ3とコンデンサ4とを有する。ビームiの8つのスイッチ3の入力は、制御パルス信号SLiのラインに接続される。例えば、ビーム1用の8つのスイッチ3の入力は、制御パルス信号SL1のラインに接続される。ビーム121用の8つのスイッチ3の入力は、制御パルス信号SL121のラインに接続される。各ビーム用の電極番号1のスイッチ3は電源1からの電位V1ラインに接続される。同様に、各ビーム用の電極番号2のスイッチ3は電源2からの電位V2ラインに接続される。以下、同様に、各ビーム用の電極番号8のスイッチ3は電源8からの電位V8ラインに接続される。各スイッチ3の出力には、コンデンサ4の一方の端子と対応する電極Eijとが並列に接続される。また、各コンデンサの他方の端子はグランド電位に接続される。このように、121×8個のサンプルホールド回路2がアレイ状に配置される。かかる121×8個のサンプルホールド回路2は、サンプルホールド回路盤130内に配置される。
【0051】
また、電源回路132内には、サンプルホールド回路盤130内の複数のサンプルホールド回路に複数の電位を印加する複数の電源が配置される。複数の電源の数は、マルチ1次電子ビーム20のビーム本数にビーム1本あたりの多極子13の電極数を乗じた値よりも少ない。さらに、複数の電源の数は、マルチ1次電子ビーム20のビーム本数よりも少ない。例えば、1本のビームあたりの電極数と同じ数の電源が配置される。ここでは、8個の電源1~8が配置される。電源1からの電位V1が、各ビーム用の電極番号1のスイッチ3に接続される。電源2からの電位V2が、各ビーム用の電極番号2のスイッチ3に接続される。以下、同様にして、電源8からの電位V8が、各ビーム用の電極番号8のスイッチ3に接続される。
【0052】
図9は、実施の形態1におけるライン走査とサンプルホールド回路の制御方法を説明するための図である。対物偏向器の一例となる副偏向器209が、収差補正器220(多極子アレイ)を通過したマルチ1次電子ビーム20を一括ビーム偏向することによりマルチ1次電子ビーム20で基板101上を走査する。副偏向器209は、一括ビーム偏向の繰り返しによる複数のラインスキャン動作によりビーム毎のサブ照射領域29(所望の領域内)を走査する。具体的には、例えば、図9において、各サブ照射領域29内は、対応する1次電子ビーム9で、例えば、512回のライン走査(ラインスキャン)を行う。1回のライン走査が終了すると、次のライン走査開始位置にビームが振り戻される。1つのサブ照射領域29内全体を走査するためには、かかる動作を例えば512回繰り返す。
【0053】
収差補正回路121(制御回路)は、対物偏向器である副偏向器209による一括ビーム偏向の振り戻しに同期して、121×8個のサンプルホールド回路2(第1のサンプルホールド回路)に印加された複数の電位V1~V8を121×8個のサンプルホールド回路のうち選択された8つの複数のサンプルホールド回路2(第2のサンプルホールド回路)で保持するように121×8個のサンプルホールド回路2を制御する。また、収差補正回路121は、複数のラインスキャン動作の少なくとも1つのラインスキャン動作に同期して、複数の電源1~8の各電位V1~V8を切り替える。
【0054】
図10は、実施の形態1における制御パルス信号のタイムチャートの一例を示す図である。例えば、1回目のラインスキャン動作中に、電源1~8の各電位V1~V8をビーム1補正用の電位V1~V8になるように切り替える。そして、1回目のラインスキャン終了後、2回目のラインスキャン開始位置にビームを振り戻す時期に同期して、制御パルス信号SL1を例えば1回発信にする。これにより、制御パルス信号SL1がONの状態の間、ビーム1補正用の多極子13を構成する電極E11~E18に電位V1~V8が印加される。これと共に、ビーム1補正用の8つのサンプルホールド回路2のコンデンサ4にそれぞれの電位V1~V8が印加される。制御パルス信号SL1がOFFになっても、ビーム1補正用の8つのサンプルホールド回路2がそれぞれの電位V1~V8を保持する。具体的には、ビーム1補正用の8つのサンプルホールド回路2のコンデンサ4に蓄積されたそれぞれの電位V1~V8が電極E11~E18に印加される。よって、ビーム1補正用の多極子13を構成する電極E11~E18にビーム1補正用の電位V1~V8が印加され続けることになる。これにより、ビーム1の収差が補正される。
【0055】
1回目の振り戻しが終了後、2回目のラインスキャン動作中に、電源1~8の各電位V1~V8をビーム2補正用の電位V1~V8になるように切り替える。そして、2回目のラインスキャン終了後、3回目のラインスキャン開始位置にビームを振り戻す時期に同期して、制御パルス信号SL2を例えば1回発信にする。これにより、制御パルス信号SL1がONの状態の間、ビーム2補正用の多極子13を構成する電極E11~E18に電位V1~V8が印加される。これと共に、ビーム2補正用の8つのサンプルホールド回路2のコンデンサ4にそれぞれの電位V1~V8が印加される。制御パルス信号SL2がOFFになっても、ビーム2補正用の8つのサンプルホールド回路2がそれぞれの電位V1~V8を保持する。具体的には、ビーム1補正用の8つのサンプルホールド回路2のコンデンサ4に蓄積されたそれぞれの電位V1~V8が電極E21~E28に印加される。よって、ビーム2補正用の多極子13を構成する電極E21~E28にビーム2補正用の電位V1~V8が印加され続けることになる。これにより、ビーム2の収差が補正される。
【0056】
かかる動作を121回繰り返すことで、すべてのビーム補正用の電位V1~V8がそれぞれのビーム補正用の多極子13を構成する電極Ei1~Ei8に印加され続けることになる。これにより、各ビームの収差が個別に補正される。
【0057】
図11は、実施の形態1における電源の構成の一例を示す図である。図11では、電源回路132に配置される8つの電源のうちの1つを示している。各電源5は、D/A(デジタルアナログ)コンバータ7とオペアンプ6を有している。各電源5は、D/Aコンバータ7とオペアンプ6を使って可変に電位を調整する。必要な電位の範囲を例えば16ビット(512階調)の分解能で制御する。収差補正回路121は、次に印加するビーム用の電位を示す16ビットのデジタル制御電位信号をD/Aコンバータ7に出力する。D/Aコンバータ7は、D/A変換して、オペアンプ6に出力し、所望の電位がオペアンプ6の出力としてサンプルホールド回路に出力される。
【0058】
ここで、121本のビームに対して、1回ずつの各電極用電位のサンプルホールドを行った場合、121ラインスキャンの動作で完了する。512ラインのスキャンを行う場合、121ライン毎に4回のサンプルホールドを行うことができる。言い換えれば、各ビーム制御用の電極16に印加する電位は、4回のリフレッシュ動作ができる。512ラインの走査を例えば4.5msで行う場合、次のリフレッシュまで1.125ms必要となる。電極16に1nAの電子が照射された際に許容できる電圧変動を100μVとすると、コンデンサ4の容量Cは、1nA×1.125ms/100μV=11.25nF以上あれば足りる。かかる容量のコンデンサであれば十分に実装可能である。
【0059】
また、上述した例では、1ラインのスキャンサイクルが8.789μsになる。そのうち振り戻しに500nsかかる。かかる時間内にリフレッシュが完了すればよい。シミュレーションの結果、十分にリフレッシュが可能であった。
【0060】
図12は、実施の形態1における配線数を説明するための図である。収差補正器220には、ビーム数×電極数の電源が必要となる。よって、サンプルホールド回路盤130と収差補正器220との間は、少なくともビーム数×電極数(例えば、121×8本)の配線で接続される。一方、サンプルホールド回路盤130と収差補正器220との間は、制御パルス信号SLiの数である121本と電源の数である8本の配線に減らすことができる。よって、中継するフィードスルーとサンプルホールド回路盤130との間は、制御パルス信号SLiの数である121本と電源の数である8本の配線に減らすことができる。このように、大気圧環境と真空環境との境界に配置されるフィードスルーの配線数を減らすことができる。
【0061】
図13は、実施の形態1における歪曲収差(ディストーション)の一例を示す図である。図13の例では、5×5本のマルチ1次電子ビーム20を用いた場合について示している。成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22がx,y方向に所定のピッチでマトリクス状に形成されていれば、理想的には、図13(b)に示すように、基板101上に照射されるマルチ1次電子ビーム20の照射位置19も所定の縮小率でマトリクス状に配置されるはずである。しかし、電磁レンズ等の電子光学系を使用することで、図13(a)に示す様にディストーション(歪曲収差)が発生してしまう。ディストーションの形は条件により、樽型またはピンクッション型と呼ばれる分布を取る。一般には磁気レンズのディストーションは半径方向に加えて回転方向のずれも生ずる。図13(a)では回転成分が生じない条件での例を示している。マルチ1次電子ビーム20に生じるディストーションの向き及び位置ずれ量は、ある程度の傾向は存在するとしても、ビーム毎に異なってしまう。そのため、かかるディストーションを補正するためには、個別ビーム毎に補正する必要がある。実施の形態1における収差補正器220を用いて、ビーム毎にビーム軌道を補正することで、図13(b)に示すように、基板101上に照射されるマルチ1次電子ビーム20の照射位置19を補正できる。
【0062】
図14は、実施の形態1における非点の一例を示す図である。図14の例では、5×5本のマルチ1次電子ビーム20を用いた場合について示している。図14(b)に示すように、理想的には、各ビームは、円形に照射される。しかし、電磁レンズ等の電子光学系を使用することで、図14(a)に示すように、非点収差が生じてしまう場合がある。そのため、図14(a)に示すように、基板101(試料)面上においてx,y方向の2次方向に焦点位置がずれ、焦点位置でビームがいわゆる楕円状になり、照射されるビームにボケが生じてしまう。マルチ1次電子ビーム20に生じる非点の向き及び位置ずれ量は、マルチ1次電子ビーム20の中心から放射状に延びるように楕円状になる傾向があるが、ビーム毎に異なってしまう。そのため、かかる非点を補正するためには、個別ビーム毎に補正する必要がある。そこで、実施の形態1における収差補正器220を用いて、ビーム毎にビーム軌道を補正することで、図14(b)に示すように、非点を補正できる。
【0063】
図15は、実施の形態1における非点の他の一例を示す図である。マルチ1次電子ビーム20に生じる非点の向きは、図14(a)に示したマルチ1次電子ビーム20の中心から放射状に延びる場合に限るものではない。図15(a)に示すように、円周方向に延びる場合もあり得る。かかる場合でも同様に、実施の形態1における収差補正器220を用いて、ビーム毎にビーム軌道を補正することで、図15(b)に示すように、非点を補正できる。
【0064】
また、実施の形態1における収差補正器220では、ディストーションと非点とを同時に補正できる。また、多極子13を構成する8つの電極16に同じ電位(バイアス電位)を印加することでさらに焦点も同時に補正できる。
【0065】
ここで、静電レンズ221は、マルチ1次電子ビーム20全体が通過する開口部が形成された3段の電極基板を有し、中段の電極基板には、制御電位が印加される。また、上段及び下段の電極基板にはGND電位が印加される。中段の電極基板の制御電位を調整することで、一括してマルチ1次電子ビーム20の焦点位置を補正できる。なお、ビーム毎に焦点位置を個別に制御できるように静電レンズアレイを配置しても好適である。
【0066】
画像取得機構150は、かかる収差補正器220により収差が補正されたマルチ1次電子ビーム20(マルチ1次電子ビーム)を用いて基板101上に形成されパターンの2次電子画像を取得する。具体的には、以下のように動作する。画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出信号に基づく検出画像データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0067】
参照画像作成工程として、参照回路112(参照画像作成部)は、被検査画像に対応する参照画像を作成する。参照回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、フレーム領域毎に、参照画像を作成する。フレーム領域として、例えばマスクダイ33を用いると好適である。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0068】
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0069】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0070】
次に、参照回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0071】
図16は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図16において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置52,56、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0072】
比較回路108内では、転送されたパターン画像データ(2次電子画像データ)が、記憶装置56に一時的に格納される。また、転送された参照画像データが、記憶装置52に一時的に格納される。
【0073】
位置合わせ工程として、位置合わせ部57は、被検査画像となるマスクダイ画像と、当該マスクダイ画像に対応する参照画像とを読み出し、画素36より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0074】
比較工程として、比較部58は、マスクダイ画像(被検査画像)と参照画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0075】
なお、上述したダイ-データベース検査に限らず、ダイ-ダイ検査を行っても構わない。ダイ-ダイ検査を行う場合には、同じパターンが形成されたマスクダイ33の画像同士を比較すればよい。よって、ダイ(1)となるウェハダイ332の一部の領域のマスクダイ画像と、ダイ(2)となる別のウェハダイ332の対応する領域のマスクダイ画像と、を用いる。或いは、同じウェハダイ332の一部の領域のマスクダイ画像をダイ(1)のマスクダイ画像とし、同じパターンが形成された同じウェハダイ332の他の一部のマスクダイ画像をダイ(2)のマスクダイ画像として比較しても構わない。かかる場合には、同じパターンが形成されたマスクダイ33の画像同士の一方を参照画像として用いれば、上述したダイ-データベース検査と同様の手法で検査ができる。
【0076】
すなわち、位置合わせ工程として、位置合わせ部57は、ダイ(1)のマスクダイ画像と、ダイ(2)のマスクダイ画像と、とを読み出し、画素36より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0077】
そして、比較工程として、比較部58は、ダイ(1)のマスクダイ画像と、ダイ(2)のマスクダイ画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、図示しない記憶装置、モニタ、若しくはメモリに出力される、或いはプリンタより出力されればよい。
【0078】
また、ダイ-データベース検査及びダイ-ダイ検査において、上述した例では、画素毎に比較する場合を示しているが、これに限るものではない。例えば、各図形パターンの輪郭線を抽出して、輪郭線同士の距離が閾値を超える場合には欠陥と判定するように構成しても好適である。
【0079】
以上のように、実施の形態1によれば、収差補正器220といった多極子アレイに使用する電源数を低減できる。
【0080】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、収差補正回路121、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、及び偏向制御回路128は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0082】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0083】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての収差補正器及びマルチ電子ビーム照射装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
2 サンプルホールド回路
3 スイッチ
4 コンデンサ
5 電源
6 オペアンプ
7 D/Aコンバータ
10 第1電極基板
11 通過孔
12 基板本体
13 多極子
14 第2電極基板
15 基板本体
16 電極
17 通過孔
19 照射位置
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
33 マスクダイ
34 照射領域
40 絶縁層
42,44 シールド電極
52,56 記憶装置
57 位置合わせ部
58 比較部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
121 収差補正回路
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 サンプルホールド回路盤
132 電源回路
142 駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205 電磁レンズ
206 電磁レンズ
207 電磁レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
220 収差補正器
221 静電レンズ
222 マルチ検出器
224 電磁レンズ
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図16