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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-15
(45)【発行日】2025-05-23
(54)【発明の名称】姿勢変化装置及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20250516BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20250516BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250516BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20250516BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20250516BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20250516BHJP
   B65G 47/248 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C23C14/24 J
H01L21/68 N
H05B33/10
H05B33/14 A
B65G49/06 A
B65G47/248 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021081190
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175059
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 和敏
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034406(JP,A)
【文献】特開2014-107412(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208736(WO,A1)
【文献】特開2003-060001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
C23C 14/24
H01L 21/683
H05B 33/10
H10K 50/10
B65G 49/06
B65G 47/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板キャリアの姿勢を変化させる姿勢変化装置であって、
前記基板キャリアを回動する回動手段を備え、
前記回動手段は、
前記基板キャリアを挟むようにして配置された複数のローラと、
前記複数のローラの少なくとも一つに設けられ、前記ローラを個別に囲む集塵カバーと、を含み、
前記集塵カバーは、
前記ローラの周面が露出した天部と、
前記ローラの周面に対向するように形成された底部と、
前記底部から離間して配置され、前記回動手段が前記基板キャリアを回動する際、前記底部の側の塵が前記天部の側へ移動することを規制する規制壁部と、を含む、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項2】
基板キャリアの姿勢を変化させる姿勢変化装置であって、
前記基板キャリアを回動する回動手段を備え、
前記回動手段は、
前記基板キャリアを挟むようにして配置された複数のローラと、
前記複数のローラの少なくとも一つに設けられ、前記ローラを個別に囲む集塵カバーと、を含み、
前記集塵カバーは、
前記ローラの周面に対向するように形成された底部と、
前記ローラの周面に対向するように前記底部から立設された左側の側部及び右側の側部と、
前記左側の側部から前記右側の側部へ突出するように形成された左側の中間板と、
前記右側の側部から前記左側の側部へ突出するように形成された右側の中間板と、
を備える、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の姿勢変化装置であって、
前記左側の中間板の右側の端部が、前記底部へ向かって湾曲し、
前記右側の中間板の左側の端部が、前記底部へ向かって湾曲している、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項4】
請求項2に記載の姿勢変化装置であって、
前記左側の中間板は、前記左側の側部に固定された第一の固定部と、前記第一の固定部に対して角度が可変の第一の可動部と、を含み、
前記右側の中間板は、前記右側の側部に固定された第二の固定部と、前記第二の固定部に対して角度が可変の第二の可動部と、を含む、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の姿勢変化装置であって、
前記集塵カバーの姿勢が、前記底部が下側の姿勢の場合、前記左側の中間板と前記右側の中間板との間に開口が形成されるように、前記第一の可動部と前記第二の可動部とが変位し、
前記集塵カバーの姿勢が、前記底部が上側の姿勢の場合、前記開口が閉鎖されるように、前記第一の可動部と前記第二の可動部とが変位する、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の姿勢変化装置であって、
前記底部に磁石が配置される、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の姿勢変化装置であって、
前記底部上に、取り外し可能なトレイが配置される、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の姿勢変化装置であって、
前記基板キャリアを搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラを、搬送位置と、前記回動手段が回動する際に前記回動手段または前記基板キャリアとの干渉を回避する退避位置と、の間で移動する移動手段と、
を備える、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の姿勢変化装置であって、
前記複数のローラは、
前記基板キャリアの一方の側に位置する複数の第一のローラと、
前記基板キャリアの他方の側に位置する複数の第二のローラと、を含み、
前記複数の第一のローラと、前記複数の第二のローラとは、前記回動手段による回動によって位置が入れ替わる、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項10】
基板キャリアの姿勢を変化させる姿勢変化装置であって、
前記基板キャリアを回動する回動手段と、
前記基板キャリアを搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラを、搬送位置と、前記回動手段が回動する際に前記回動手段または前記基板キャリアとの干渉を回避する退避位置と、の間で前記複数の搬送ローラのローラ軸方向に平行移動する移動手段と、を備える、
ことを特徴とする姿勢変化装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の姿勢変化装置と、
基板キャリアに保持されている基板に、蒸着物質を蒸着する蒸着装置と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板キャリアの姿勢変化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、基板上に有機材料や金属材料等の蒸着物質が蒸着される。処理によっては基板の上下を反転させる必要が生じるため、処理装置間に基板の姿勢を変化する装置が設けられている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国特許公開第10-2015-0100999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板を基板キャリアに搭載して搬送するシステムにおいては、基板キャリアと共に基板の上下を反転させる。基板キャリアの姿勢を変化させる際に、塵(パーティクル)が飛散して基板に付着することは望ましくない。
【0005】
本発明は、基板に塵が付着することを防止する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板キャリアの姿勢を変化させる姿勢変化装置であって、
前記基板キャリアを回動する回動手段を備え、
前記回動手段は、
前記基板キャリアを挟むようにして配置された複数のローラと、
前記複数のローラの少なくとも一つに設けられ、前記ローラを個別に囲む集塵カバーと、を含み、
前記集塵カバーは、
前記ローラの周面が露出した天部と、
前記ローラの周面に対向するように形成された底部と、
前記底部から離間して配置され、前記回動手段が前記基板キャリアを回動する際、前記底部の側の塵が前記天部の側へ移動することを規制する規制壁部と、を含む、
ことを特徴とする姿勢変化装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板に塵が付着することを防止する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置のレイアウト図。
図2】蒸着装置の説明図。
図3】姿勢変化装置の説明図。
図4】姿勢変化装置の説明図。
図5】(A)及び(B)は姿勢変化装置の動作説明図。
図6】(A)及び(B)は姿勢変化装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は姿勢変化装置の動作説明図。
図8】集塵カバーの分解斜視図。
図9】(A)~(C)は保持ユニットの回動時の集塵カバーの姿勢変化態様を示す説明図。
図10】別の実施形態の集塵カバーの姿勢変化態様を示す説明図。
図11】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<成膜装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置1のレイアウト図である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。成膜装置1は、基板Gに蒸着物質を成膜する装置であり、マスクMを用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。特に本実施形態の成膜装置1は、基板Gの搬送しながら、蒸着装置により基板Gに蒸着物質を蒸着する成膜方法を実行可能な、インライン型の成膜装置である。
【0011】
成膜装置1で成膜が行われる基板Gの材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。
【0012】
成膜装置1は、基板キャリア100を用いて基板G及びマスクMを搬送する装置である。基板キャリア1は、例えば、基板Gを保持する機構及びマスクMを保持する機構を備える。基板Gを保持する機構は例えば静電チャックであり、マスクMを保持する機構は例えば磁気吸着チャックである。マスクMは基板Gと重なるように基板キャリア1に保持され、基板Gは基板キャリア100とマスクMとの間に保持される。基板キャリア100、基板G及びマスクMは板状の形態であり、水平姿勢で搬送される。
【0013】
基板キャリア100は、成膜経路1Aとリターン経路1Bとを循環的に(図示の例では反時計回りに)搬送される。搬送機構は本実施形態の場合、ローラコンベアである。成膜経路1Aには、基板搬入室110が設けられている。成膜装置1の外部から基板搬入室110に、成膜対象の基板Gが搬入され、リターン経路1Bの方向切替装置125から基板搬入室110に搬入される基板キャリア100の上に重ねられ、保持される。基板Gを保持する基板キャリア100は姿勢変化装置111へ搬送され、姿勢変化装置111でその姿勢が変更される。本実施形態では、基板Gが基板キャリア100の上に保持された姿勢から、基板Gが基板キャリア100の下に保持される姿勢へ、基板キャリア100が180度反転される。
【0014】
姿勢が反転された基板キャリア100は、アライメント室112に搬送される。アライメント室112では、リターン経路1Bから搬送されるマスクMと、基板キャリア100に保持された基板Gとの位置合わせが行われ、マスクMが基板キャリア100に保持される。基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100(100GM)は、加速室113で所定の搬送速度に加速され、蒸着装置114へ搬送される。ここで基板Gに蒸着物質が成膜される。その後、成膜済みの基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100(100GM)は、減速室115で減速され、分離室116でマスクMが基板キャリア100から分離される。分離されたマスクMはリターン経路1Bのマスク装着室121へ搬送される。
【0015】
マスクMが分離された基板キャリア100は姿勢変化装置117においてその姿勢が変更される。本実施形態では、基板Gが基板キャリア100の下に保持された姿勢から、基板Gが基板キャリア100の上に保持される姿勢へ、基板キャリア100が180度反転される。その後、基板キャリア100は基板分離室118へ搬送され、ここで基板Gが基板キャリア100から分離される。分離された基板Gは成膜装置1から排出される。
【0016】
基板Gが分離された基板キャリア100は、リターン経路1Bの方向切替装置119へ搬送される。基板キャリア100は姿勢変化装置120においてその姿勢が変更される。基板キャリア100は上下が反転するように180度反転される。基板キャリア100はマスク装着室121へ搬送され、マスクMが基板キャリア100に保持される。マスクMを保持した基板キャリア100(100M)は搬送装置122によってマスク分離室123へ搬送され、基板キャリア100からマスクMが分離される。分離されたマスクMはアライメント室112へ搬送される。
【0017】
マスクMが分離された基板キャリア100は姿勢変化装置120においてその姿勢が変更される。基板キャリア100は上下が反転するように180度反転される。そして、基板キャリア100は方向切替装置125を経由して基板搬入室110へ搬送される。以上の処理を繰り返すことで成膜処理が順次行われる。
【0018】
<蒸着装置>
図2は蒸着装置114の説明図である。蒸着装置114は、基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100を搬送する搬送室2aを形成する搬送チャンバ2と、複数のソースチャンバ3とを備える。複数のソースチャンバ3はX方向に並べて配置されており、搬送室2aはこれらソースチャンバ3の上方に位置している。
【0019】
搬送室2aは使用時に真空に維持され、そのX方向の一端部には搬入口2bが、他端部には搬出口2bが設けられている。基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100は、搬入口2bから搬送室2a内に搬入され、処理後に搬出口2cから外部へ搬出される。搬入口2b及び搬出口2cにはゲートバルブ(不図示)が設けられる。
【0020】
搬送室2aには、X方向に配列された複数の搬送ローラ2dが設けられている。この搬送ローラ2dの列は、Y方向に離間して二列配置されている。各搬送ローラ2dはY方向の回転軸周りに回転する。基板キャリア100は、二列の搬送ローラ2dの列に、そのY方向の両端部が載置され、搬送ローラ2dの回転によってX方向に水平姿勢で搬送される。
【0021】
各ソースチャンバ3a内は、使用時に真空に維持される内部空間を形成する。ソースチャンバ3aは、上部に開口部が形成された箱型を有しており、開口部を介して、搬送室2aとソースチャンバ3aの内部空間とが連通している。各ソースチャンバ3aには上方に蒸着物質を放出する蒸着源3aが設けられている。本実施形態の蒸着源3aはいわゆるラインソースであり、Y方向に延設されている。蒸着源3aは蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を搬送室2aへ放出する。
【0022】
蒸着装置114は、搬送チャンバ2内で基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100を搬送しながら、蒸着源3aにより基板Gに蒸着物質を蒸着する。本実施形態では、複数のソースチャンバ3が基板キャリア100の搬送方向に配置されている。3つのソースチャンバ3から異なる種類の蒸着物質を放出する場合、基板Gに異なる蒸着物質を連続的に蒸着することができる。なお、ソースチャンバ3の数は3つに限られず、1つあるいは2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0023】
<姿勢変化装置>
図3及び図4を参照して姿勢変化装置111について説明する。図3は姿勢変化装置111の内部構造をY方向で見た図であり、図4はX方向で見た図である。姿勢変化装置111は、使用時に真空に維持される内部空間を形成するチャンバ4と、チャンバ4内に配置された複数の搬送ユニット5と、チャンバ4内に配置された保持ユニット6と、チャンバ4の外部から保持ユニット6を回動する回動ユニット8と、チャンバ4の外部から各搬送ユニット5をY方向に移動する移動ユニット9とを備える。なお、便宜的に、保持ユニット6を回動ユニット8と区別して表現しているが、保持ユニット6と、回動ユニット8とは、一体として、基板キャリア100を回動するための手段を構成してもよい。
【0024】
チャンバ4は、そのX方向の一端部に搬入口4aを、他端部に搬出口4bを備えており、基板G及びマスクMを保持した基板キャリア100は、搬入口4aからチャンバ4内に搬入され、姿勢変化後に搬出口4bら外部へ搬出される。搬入口2b及び搬出口2cにはこれらを開閉するゲートバルブ4c、4dが設けられている。
【0025】
搬送ユニット5は、X方向及びY方向に離間して複数設けられている。各搬送ユニット5はX方向に配列された複数の搬送ローラ5aと、搬送ローラ5aを回転するモータ等の駆動源とを備える。各搬送ローラ5aは片持ち状態で支持され、Y方向の回転軸周りに回転する。基板キャリア100は、Y方向に離間した二列の搬送ローラ5aの列に、そのY方向の両端部が載置され、搬送ローラ5aの回転によってX方向に水平姿勢で搬送される。
【0026】
各搬送ユニット5は、移動ユニット9によって図4において二点鎖線で示す搬送位置と、実線で示す退避位置との間をY方向(搬送ローラ5aのローラ軸方向)に平行移動する。搬送位置は、Y方向で姿勢変化装置111の中央側の位置であり、退避位置はY方向で外側の位置である。各搬送ユニット5は、搬送位置において基板キャリア100を搬送する。退避位置は、回動中の保持ユニット6や回動ユニット8と、搬送ユニット5との干渉を回避する位置である。
【0027】
移動ユニット9は、駆動機構90と、作動軸91とを含む。駆動機構90は、作動軸91をY方向に進退させる電動シリンダなどのアクチュエータを含み、チャンバ4の外部に配置されている。作動軸91はチャンバ4の側壁に形成された開口(不図示)を通過してチャンバ4の内外に延設されている。シール構造92は、ベローズ等の筒状構造を有し、チャンバ4の側壁に形成された開口と作動軸91とをシールしてチャンバ4内の気密性を維持する。
【0028】
保持ユニット6は、Y方向に離間した一対のベース部材60を有する。各ベース部材60はX-Z平面に沿った板状の部材である。一対のベース部材60間は複数の梁部材60aで連結されており、これらが一体的に回動中心線81a周りに回動する。
【0029】
保持ユニット6は、基板キャリア100を挟むようにして保持する複数の保持ローラ63を含む。複数の保持ローラ63は、X方向に配列された四列のローラ列を構成している。四列のローラ列は、Y方向に離間した二列のローラ列に区分けされ、二列のローラ列は上下に離間したローラ列である。
【0030】
各ローラ列は、Y方向の回転軸周りに、ローラ支持部材61又は62に自由回転自在に支持されている。ローラ支持部材61は二つ設けられており、図3及び図4の例では上側に位置している。二つのローラ支持部材61はY方向に離間しており、ローラ支持部材61に支持される保持ローラ63は、ローラ支持部材61の内側側面に片持ち状態で支持されている。ローラ支持部材62も二つ設けられており、図3及び図4の例では下側に位置している。二つのローラ支持部材62はY方向に離間しており、ローラ支持部材62に支持される保持ローラ63は、ローラ支持部材62の内側側面に片持ち状態で支持されている。
【0031】
ローラ支持部材61及び62は、複数のガイドユニット65を介してZ方向に移動(昇降)自在にベース部材60に支持されている。ガイドユニット65は例えば伸縮式のガイド機構であり、ベース部材60に固定される筒体と、筒体にZ方向に進退自在に支持されたロッドとを有し、ロッドにローラ支持部材61、62が固定される。ベース部材60と、ローラ支持部材61及び62との間には、それぞれ昇降ユニット64が設けられている。本実施形態の昇降ユニット64はZ方向に伸縮するアクチュエータであり、例えば電動シリンダである。昇降ユニット64の伸縮によって、ローラ支持部材61及び62をベース部材60に対して昇降することができる。
【0032】
そして、ローラ支持部材61に支持される複数の保持ローラ63と、ローラ支持部材62に支持される複数の保持ローラ63とで、基板キャリア100のY方向の端部を挟むようにして基板キャリア100が支持される。図3及び図4の例では、ローラ支持部材61に支持される複数の保持ローラ63が基板キャリア100の一方の面の側(上側)に位置し、ローラ支持部材62に支持される複数の保持ローラ63が基板キャリア100の他方の面の側(下側)に位置し、これらの保持ローラ63によって基板キャリア100を上下に挟み込んで支持することができる。
【0033】
保持ローラ63の回転によって、塵(パーティクル)が舞い上がって基板Gに付着することは望ましくない。本実施形態では、各保持ローラ63が集塵カバー7によって個別囲まれている。集塵カバー7の詳細は後述する。
【0034】
各ベース部材60にはまた、ストッパ66A及び66Bが設けられている。図3及び図4の例ではストッパ66Aが搬入口4aの側に位置し、ストッパ66Bが搬入口4bの側に位置している。ストッパ66A及び66Bは、それぞれ、ローラ69と、ローラ69を回転自在に支持するスイングアーム68と、スイングアーム68を回動するモータ等のアクチュエータ67とを含む。アクチュエータ67はベース部材60に固定されており、ローラ69はY方向の回転軸周りに自由回転自在にスイングアーム68に支持されている。スイングアーム68の回動によって、ローラ69は基板キャリア100の搬送経路上の作動位置と、図3及び図4に図示される退避位置との間で移動される。作動位置においてローラ69の周面に基板キャリア100の端面を当接することで基板キャリア100がその基板面方向に変位することを規制する。また、ローラ69を退避位置から作動位置へ移動させる際、ローラ69の周面で基板キャリア100の端面を押圧することで基板キャリア100を保持位置まで移動させることができる。
【0035】
このように本実施形態の保持ユニット6は、二組の機構(ベース部材60、ローラ支持部材61及び62、複数のローラ63、複数の昇降ユニット64、複数のガイドユニット65、ストッパ66A及び66B)がY方向に離間して配置されている。そして、保持ユニット6は、回動ユニット8によってY方向の回動中心線81a周りに回動可能に構成されている。
【0036】
回動ユニット8は、駆動ユニット80Aと従動ユニット80Bとを含む。各ユニット80A及び80Bは、回動中心線81a上に同軸上に設けられた回転軸81を備える。各回転軸81はチャンバ4の側壁に形成された開口(不図示)を通過してチャンバ4の内外に延設されており、一方の回転軸81は二つのベース部材60の一方に、他方の回転軸81は他方のベース部材60に、それぞれ固定されている。シール構造82は、ベローズ等の筒状構造を有し、チャンバ4の側壁に形成された開口と回転軸81とをシールしてチャンバ4内の気密性を維持する。
【0037】
ユニット80Aは、回転軸81を回転させる駆動源であるモータや、モータの回転を減速して回転軸81に伝達する減速機などを含む。ユニット80Bは回転軸81を回転自在に支持する軸受けを含む。
【0038】
図5(A)~図7(B)を参照して姿勢変化装置111の動作を説明する。図5(A)は、基板Gを保持した基板キャリア100が姿勢変化装置111に搬入されてきた段階を示している。基板Gは基板キャリア100の上側に保持されている。各搬送ユニット5は搬送位置に位置しており、基板キャリア100は搬送ローラ5a上で搬送されている。各保持ローラ63は基板キャリア100から離間している。ストッパ66Bのローラ69は作動位置に位置している。
【0039】
図5(B)は基板キャリア100の搬入が完了した状態を示している。ゲートバルブ4c、4dがそれぞれ搬入口4a、搬出口4bを閉鎖する。下側の昇降ユニット64がローラ支持部材62を上昇させる。これにより基板キャリア100が、ローラ支持部材62に支持された複数の保持ローラ63と当接して、搬送ユニット5から上方へ持ち上げられる。そして、基板キャリア100は、ローラ支持部材62に支持された複数の保持ローラ63によって下側から、ローラ支持部材61に支持された複数の保持ローラ63によって上側から、挟まれた状態となる。
【0040】
図6(A)に示すようにストッパ66Aが駆動され、ストッパ66Aのローラ69が作動位置に移動される。ローラ69が基板キャリア100の端面に当接して基板キャリア100をX方向に押圧する。基板キャリア100はX方向で図6(A)の右側へ、ストッパ66Bのローラ69と当接する位置まで移動する。基板キャリア100の移動の際、保持ローラ63は基板キャリア100の移動に従って転動する。基板キャリア100は、その法線方向(この段階ではZ方向)において複数の保持ローラ63に挟持されて変位が規制され、その面方向(この段階ではX方向)においてストッパ66A及び66Bの各ローラ69によって変位が規制される。続いて、移動ユニット9の駆動により、各搬送ユニット5は退避位置に移動する。これにより、各搬送ユニット5は図4に示したように、ベース部材60の外側の、保持ユニット6と干渉しない位置に移動することになる。
【0041】
回動ユニット8の駆動により、図6(B)に示すように保持ユニット6が回動される。保持ユニット6によって基板キャリア100はその法線方向と面方向において変位が規制されているので、落下することはない。図7(A)は回動が完了した状態を示す。保持ユニット6は180度回動し、図6(A)の状態からからZ方向及びX方向に反転している。ローラ支持ユニット62が上側に、ローラ支持ユニット61が下側にそれぞれ位置しているため、回動の前後で、ローラ支持ユニット61に支持されていた複数の保持ローラ63と、ローラ支持ユニット62に支持されていた複数の保持ローラ63との、基板キャリア100に対する位置(上か下か)が入れ替わる。また、ストッパ66Bが搬入口4aの側に、ストッパ66Aが搬出口4bの側に、それぞれ位置しており、回動の前後で、ストッパ66Aとストッパ66Bの位置も入れ替わる。基板キャリア100もZ方向及びX方向に反転され、基板Gは基板キャリア100の下側に保持されている。移動ユニット9の駆動により、各搬送ユニット5は退避位置から搬送位置に移動する。
【0042】
その後、下側の昇降ユニット64がローラ支持部材61を降下させる。これにより基板キャリア100が搬送ユニット5上に載置され、各保持ローラ63は基板キャリア100から離間する。ストッパ66Aのローラ69が作動位置から退避位置に移動される。ゲートバルブ4c、4dが搬入口4aと搬出口4bを開放する。図7(B)は、基板キャリア100を搬出させる段階を示している。搬送ユニット5の駆動により基板キャリア100がX方向に搬出される。搬入時には、上側に基板Gが保持されていた基板キャリア100が、下側に基板Gが保持された姿勢に変化(反転)した状態で基板キャリア100が搬出される。
【0043】
その後、ストッパ66Bのローラ69を退避位置に戻し、ストッパ66Aのローラ69を作動位置に移動すると、姿勢変化装置111の状態は、保持ユニット6の上下、前後が反転しているだけで図5(A)の段階と実質的に同じ状態となり、次の基板キャリア100の搬入が可能となる。姿勢変化装置111のその後の動作は図5(A)~図7(B)参照して説明した動作と実質的に同じであり、順次搬入されてくる基板キャリア100の姿勢変化を繰り返し行うことができる。
【0044】
<集塵カバー>
集塵カバー7の構造について図8を参照して説明する。図8は集塵カバー7の分解斜視図である。図8における集塵カバー7の姿勢は、図5(A)に図示した保持ユニット6の姿勢において、ローラ支持部材62に支持された各集塵カバー7の姿勢に相当し、ローラ支持部材61に支持された各集塵カバー7の姿勢はこれを反転した姿勢に相当する。
【0045】
集塵カバー7は、保持ローラ63の回転によって生じる塵を捕捉し、外部に飛散することを抑制する箱状の部材である。本実施形態の集塵カバーは、本体部7Aと本体部材7Aに着脱可能な分離部7Bとを備えている。本体部7Aがローラ支持部材61又は62に固定されることで、集塵カバー7がローラ支持部材61又は62に支持される。
【0046】
集塵カバー7は、Z方向で上下の関係にある底部70及び天部71と、X方向を左右方向として左側の側部72及び右側の側部と、Y方向を前後方向として前側の前部73と、を備える。なお、本実施形態の集塵カバー7は前後方向で後側となる後部は、ローラ支持部材61又は62によって形成される。しかし、集塵カバー7が固有の後部を有していてもよい。
【0047】
天部71は本体部7Aの左右の天壁71a、71aで形成される。左右の天壁71a、71aは、逆方向に傾斜した屋根型を為しており、左右の天壁71aの間には隙間71bが形成されている。保持ローラ63の周面63aの一部は隙間71bから外部に露出し、周面63aの露出した部分が基板キャリア100に当接する。本実施形態では天部71が左右の天壁71a、71aを有し、保持ローラ63の周面63aを部分的に覆う形態としたが、天部71は全体的に開放された形態であってもよい。しかし、本実施形態によれば、塵の捕捉性能及び飛散防止性能を向上できる。また、本実施形態では、左右の天壁71aが傾斜した形態であるが水平であってもよい。しかし、本実施形態によれば、保持ローラ63の周面63aの露出を少なくでき、塵の捕捉性能及び飛散防止性能を向上できる。
【0048】
底部70及び左右の側部72は、本体部7Aにより形成された壁体であり、底部70は水平な板状をなし、左右の側部72は底部70から立設された垂直な板状をなしている。底部70及び左右の側部72は、保持ローラ63の周面63aの周りに位置しており、周面63aに対向している。底部70上には永久磁石74が配置されており、鉄粉等の強磁性体の塵を吸着してその捕捉性能を向上する。
【0049】
前部73は、分離部7Bにより形成された壁体であり、垂直な板状をなしている。分離部7Bは、左右の側部72と重なる左右の耳部76を有しており、耳部76には取付溝76aが設けられている。左右の側部72には、ねじ構造により側部72に取り付けられている固定ノブ77が設けられている。固定ノブ77の中間部位を取付溝76aに挿入するようにして、分離部7Bを本体部7Aに装着し、固定ノブ77を側部72に締結すると、耳部76が固定ノブ77と側部72との間に挟持され、分離部7Bが本体部7Aに固定される。このようにして分離部7Bが本体部7Aに装着されると、本体部7Aの前部側の開口が前部73によって閉鎖され、前部73はローラ63の端面63bに対向する。
【0050】
分離部7Bは前部73に接続されたトレイ75を有している。トレイ75には塵が落下し、積載される。トレイ75は鉄等の強磁性材料からなり、分離部7Bを本体部7Aに装着した状態では、トレイ75が磁石74の上に重なる。トレイ75上の鉄粉等の強磁性体の塵は、磁石74の磁力によってトレイ75に保持され易くなる。分離部7Bを本体部7Aから取り外すと、同時にトレイ75も底部70から取り外されるので、トレイ75の清掃を容易に行える。
【0051】
左右の側部72には、底部70からZ方向に離間した中間板78が設けられている。左側の側部72に設けられた左側の中間板78は右側の側部72へ突出するように形成され、右側の側部72に設けられた右側の中間板78は左側の側部72へ突出するように形成されている。左右の中間板78のX方向の間には開口79が形成され、保持ローラ63から塵がトレイ75に落下して捕捉される。中間板78は側部72のY方向の幅と同様の幅をもち、集塵カバー7の内部空間を底部70の側と、天部71の側とに仕切り、保持ユニット6が回動して上下が反転した場合に、底部70側に溜まった塵が天部71の側へ移動することを規制する規制壁部として機能する。
【0052】
本実施形態の中間板78は、側部72の側の端部である固定部78aと、反対側の端部である傾斜部78bとを有する。固定部78aは側部72に固定され、側部72から水平に延びる部分である。傾斜部78bは固定部78aから傾斜して延びる部分である。このように中間板78は、側部72の側と反対側の端部が底部70へ向かって湾曲した形状を有している。この形状は、保持ローラ63からトレイ7へ塵が落下し易くする一方、保持ユニット6が回動して上下が反転した場合に、トレイ7から天部71へ塵が戻りにくい効果を発揮する。
【0053】
なお、本実施形態では、中間板78を、平板状の固定部78aと、平板状の傾斜部78bによって湾曲させる形態としたが、弧状に湾曲した形態であってもよい。また、本実施形態では中間板78を側部72に固定したが、前部73に固定してもよい。
【0054】
図9(A)~図9(C)を参照して保持ユニット6の回動の際の集塵カバー7の態様について説明する。図9(A)は集塵カバー7が天部71が上、底部70が下の姿勢をとっている状態を示している。図9(A)における集塵カバー7の姿勢は、図5(A)に図示した保持ユニット6の姿勢において、ローラ支持部材62に支持された各集塵カバー7の姿勢に相当する。基板キャリア100に対してローラ63は下面に当接する。ローラ63の回転によって塵が発生すると、重力で開口79を通過してトレイ75に落下して捕捉され、塵200はトレイ75上に積載される。
【0055】
図9(B)は、図9(A)の状態から保持ユニット6が90度回動したときの集塵カバー7の姿勢を示している。保持ユニット6の回動によって集塵カバー7も回動する。トレイ75に捕捉された塵200の量が多い場合、図9(B)に示すように塵は重力でトレイ75の端部(下側)に移動し、塵の一部はトレイ75からはみ出て、下側の位置となった側部72上にあふれる場合もある。
【0056】
図9(C)は、図9(B)の状態から保持ユニット6が更に90度回動したときの集塵カバー7の姿勢を示しており、保持ユニット6がZ方向及びX方向に反転したときの集塵カバー7の姿勢を示している。集塵カバー7は天部71が下、底部70が上の姿勢となる。図9(C)における集塵カバー7の姿勢は、図7(A)に図示した保持ユニット6の姿勢において、ローラ支持部材62に支持された各集塵カバー7の姿勢に相当する。基板キャリア100に対してローラ63は下面に当接する。トレイ75に捕捉されていた塵や、図9(B)の姿勢において、側部72上にあふれた塵は、重力によって天部71の側へ移動しようとするが、中間板78によってこれが阻止される。よって、塵200が隙間71bから集塵カバー7の外部に飛散し、基板キャリア100に保持されている基板Gに付着することが防止される。
【0057】
<集塵カバーの別の形態>
図10(A)~図10(C)は集塵カバー7の別の構成例を示す。図示の例は、図8図9(C)に例示した集塵カバー7と、中間板78の構成のみが異なっており、中間板78’を有している。中間板78’は側部72に固定された固定部78a’と、固定部78a’に対して角度が可変の可動部78b’とを有している。
【0058】
固定部78a’は図8の固定部78に相当し、可動部78b’は傾斜部78bに相当するが、傾斜部78bは固定部78aと一体的に形成され、角度が不変であったのに対し、可動部78b’はヒンジ78cを介して固定部78a’に連結されており、角度が可変である。ヒンジ78cはY方向の回動中心回りに、固定部78a’に対して可動部78b’を回動自在に連結しており、可動部78b’の角度範囲(回動範囲)には突片によって構造的に制限が加えられている。本実施形態では、ヒンジ78cを用いて可動部78b’の角度を可変としたが、弾性体によって角度を可変とする構造であってもよい。
【0059】
図10(A)は図9(A)の状態に相当し、集塵カバー7が天部71が上、底部70が下の姿勢をとっている状態を示している。可動部78b’は水平方向に対して傾斜部78bと同様の角度をもって傾斜している。ローラ63の回転によって塵が発生すると、重力でトレイ75に落下して捕捉され、塵200はトレイ75上に積載される。
【0060】
図10(B)は図9(B)の状態に相当し、図10(A)の状態から保持ユニット6が90度回動したときの集塵カバー7の姿勢を示している。このとき、上側に位置している中間板78’の可動部78b’はその自重により固定部78a’に対して回動し、固定部78a’と可動部78b’がいずれも垂直な姿勢となっている。この結果、開口79が半分閉鎖される。下側に位置している中間板78’については変化はない。
【0061】
図10(C)は図9(C)の状態に相当し、図10(B)の状態から保持ユニット6が更に90度回動したときの集塵カバー7の姿勢を示している。集塵カバー7は天部71が下、底部70が上の姿勢となる。このとき、図10(B)の段階で下側に位置していた中間板78’の可動部78b’もその自重により固定部78a’に対して回動し、固定部78a’と可動部78b’がいずれも水平な姿勢となっている。この結果、開口79が略前部閉鎖される。トレイ75に捕捉されていた塵や、図9(B)の姿勢において、側部72上にあふれた塵は、重力によって天部71の側へ移動しようとするが、開口79が閉鎖されており、中間板78’によってこれを確実に阻止できる。よって、塵200が隙間71bから集塵カバー7の外部に飛散し、基板キャリア100に保持されている基板Gに付着することが防止される。
【0062】
<ローラの別の形態>
上述の形態では、保持ユニット6が複数の保持ローラ63を有する例を説明した。保持ローラ63とは別に、回動ユニット8は、基板キャリア100を挟むように配置された複数のローラを備えていてもよい。これらのローラは、例えば、アイドルローラである。ある状態で、基板キャリア100の下方にあるアイドルローラは、搬送ローラ5aと同じ高さにある。アイドルローラ自身は駆動されず、主として搬送ローラ5aへの基板キャリア100の荷重を分散する目的で配置される。アイドルローラは、駆動手段と連結されないため、回動ユニット8とともに回動されるようにアイドルローラを構成しても、装置の複雑化や大型化を回避することができる。したがって、アイドルローラが基板キャリアを挟むように配置されることで、装置の簡略化を図ることができる。なお、基板キャリア100が回動される際に、アイドルローラが基板キャリア100を保持していなくてもよい。
【0063】
上述の形態で説明した集塵カバー7は、アイドルローラにも設けてよい。また、アイドルローラのみに集塵カバー7を設け、保持ローラ63には、カバーを設けない構成としてもよい。例えば、保持ユニット6の保持部の先端にローラを用いない場合などが挙げられる。
【0064】
<電子デバイス>
次に、電子デバイスの一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を例示する。
【0065】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図11(A)は有機EL表示装置500の全体図、図11(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0066】
図11(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0067】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0068】
図11(B)は、図11(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0069】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、図11(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0070】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層600が設けられている。
【0071】
図11(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0072】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0073】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0074】
こうした電子デバイスの製造において、上述した成膜装置1が適用可能であり、当該製造方法は、基板Gを搬送する搬送工程と、搬送されている基板Gに蒸着装置114によって各層の少なくともいずれか一つの層を蒸着する蒸着工程と、を含むことができる。
【0075】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0076】
1 成膜装置、6 保持ユニット、63 保持ローラ、7 集塵カバー、71 天部、70 底部、78 中間板、111 姿勢変化装置、100 基板キャリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11