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特許7682671非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20250519BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20250519BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20250519BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/489
H01M50/449
H01M50/457
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/414
H01M50/426
H01M10/0566
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021058380
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155050
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】高田 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 健太
(72)【発明者】
【氏名】米口 裕規
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/218405(WO,A1)
【文献】特開2016-191006(JP,A)
【文献】特表2019-505071(JP,A)
【文献】特表2013-530261(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146579(WO,A1)
【文献】特開2017-103044(JP,A)
【文献】特開2012-197434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/05-10/0587
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルムからなる非水電解液二次電池用セパレータであって、
広角X線回折(WAXD)の測定によって得られる回折強度のプロファイルから、以下の式(1)により算出される(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上、0.20以下である、非水電解液二次電池用セパレータ。
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
(ここで、前記WAXDは、前記非水電解液二次電池用セパレータの表面に対し、鉛直方向からX線を照射することによって行い、I(110)は、前記回折強度のプロファイルにおける(110)面の回折ピークのピーク面積であり、I(200)は、前記回折強度のプロファイルにおける(200)面の回折ピークのピーク面積である。)
【請求項2】
ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
広角X線回折(WAXD)の測定によって得られる回折強度のプロファイルから、以下の式(1)により算出される(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上、0.20以下であり、
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
(ここで、前記WAXDは、前記非水電解液二次電池用セパレータの表面に対し、鉛直方向からX線を照射することによって行い、I(110)は、前記回折強度のプロファイルにおける(110)面の回折ピークのピーク面積であり、I(200)は、前記回折強度のプロファイルにおける(200)面の回折ピークのピーク面積である。)
樹脂を含む多孔質層をさらに含み、
前記多孔質層は、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に積層されており、
前記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、水溶性ポリマー、ポリカーボネート、ポリアセタールおよびポリエーテルエーテルケトンからなる群より1種以上選択される樹脂である、非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記樹脂が、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される、請求項2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂が、アラミド樹脂である、請求項2または3に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの突き刺し強度が、5.0N以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項6】
正極と、請求項1~5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等の非水電解液二次電池は、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話および携帯情報端末等の機器に用いる電池、または車載用の電池として広く使用されている。
【0003】
このような非水電解液二次電池におけるセパレータとしては、例えば、特許文献1に記載されたポリオレフィンを主成分とする多孔性フィルムからなるセパレータ、および、当該多孔性フィルムと当該多孔性フィルムの少なくとも片面に積層された耐熱樹脂層とを備えた積層体からなるセパレータが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-273987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のセパレータには、耐衝撃性に改善の余地があった。
【0006】
そこで、本願発明の一態様は、耐衝撃性に優れる非水電解液二次電池用セパレータを提供することを目的とする。前記目的は、より詳細には、優れた耐衝撃性により、外部からの衝撃に起因する非水電解液二次電池の発火を防止し、非水電解液二次電池の安全性を向上させることができる非水電解液二次電池用セパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意研究を重ねた結果、本発明者は、配向性が特定の範囲に抑制されたポリオレフィンの結晶を含む、非水電解液二次電池用セパレータが耐衝撃性に優れることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明の一態様は、以下の[1]~[7]に示す発明を含む。
【0009】
[1]ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
広角X線回折(WAXD)の測定によって得られる回折強度のプロファイルから、以下の式(1)により算出される(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上である、非水電解液二次電池用セパレータ。
【0010】
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
(ここで、前記WAXDは、前記非水電解液二次電池用セパレータの表面に対し、鉛直方向からX線を照射することによって行い、I(110)は、前記回折強度のプロファイルにおける(110)面の回折ピークのピーク面積であり、I(200)は、前記回折強度のプロファイルにおける(200)面の回折ピークのピーク面積である。)
[2]樹脂を含む多孔質層をさらに含み、
前記多孔質層は、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に積層されている、[1]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【0011】
[3]前記樹脂が、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される、[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【0012】
[4]前記樹脂が、アラミド樹脂である、[2]または[3]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【0013】
[5]前記ポリオレフィン多孔質フィルムの突き刺し強度が、5.0N以上である、[1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【0014】
[6]正極と、[1]~[5]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
【0015】
[7][1]~[5]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、耐衝撃性に優れ、外部からの衝撃に起因する非水電解液二次電池の発火を防止し、非水電解液二次電池の安全性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
図2】実施例2にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
図3】実施例3にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
図4】実施例4にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
図5】比較例1にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
図6】比較例2にて得られた回折強度のプロファイルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0019】
本明細書において、MD方向(Machine Direction)とは、後述の多孔質フィルムの製造方法において、シート状のポリオレフィン樹脂組成物、1次シート、2次シートおよび多孔質フィルムが搬送される方向を意味する。また、TD方向(Transverse Direction)とは、前記シート状のポリオレフィン樹脂組成物、前記1次シート、前記2次シートおよび前記多孔質フィルムの面に平行な方向であって、かつ、MD方向に垂直な方向を意味する。
【0020】
[実施形態1:非水電解液二次電池用セパレータ]
1.非水電解液二次電池用セパレータ
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、広角X線回折(WAXD)の測定によって得られる回折強度のプロファイルから、以下の式(1)により算出される(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上である、非水電解液二次電池用セパレータである。
【0021】
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
(ここで、前記WAXDは、前記非水電解液二次電池用セパレータの表面に対し、鉛直方向からX線を照射することによって行い、I(110)は、前記回折強度のプロファイルにおける(110)面の回折ピークのピーク面積であり、I(200)は、前記回折強度のプロファイルにおける(200)面の回折ピークのピーク面積である。)
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含む。以下、前記ポリオレフィン多孔質フィルムを単に「多孔質フィルム」とも称する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムからなる非水電解液二次電池用セパレータであり得る。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムおよび後述する多孔質層を含む積層体である非水電解液二次電池用セパレータであり得る。
【0023】
なお、後述する前記積層体である非水電解液二次電池用セパレータを、以下、「非水電解液二次電池用積層セパレータ」とも称する。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、必要に応じて、前記多孔質フィルムおよび前記多孔質層以外に、別の多孔質層として、後述する耐熱層、接着層、保護層等の公知の多孔質層を含み得る。
【0025】
前記多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含み、一般には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。また、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0026】
前記多孔質フィルムは、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。
【0027】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータの前記(200)面のピーク面積比率Rは0.15以上である。
【0028】
前記(200)面のピーク面積比率Rは、ポリオレフィン多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィンの結晶の配向性を表すパラメータである。前記(200)面のピーク面積比率Rが大きい値であることは、前記ポリオレフィンの結晶の配向性が低下し、前記ポリオレフィンの結晶の異方性の発現が抑制されることを意味する。
【0029】
本願発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上であるため、前記配向性が低い。ここで、前記配向性が低い場合、前記ポリオレフィンの結晶構造は、外力等による変化に対する柔軟性が高い。よって、外から衝撃を加えられた際に、本願発明の一実施形態におけるポリオレフィン多孔質フィルムは、ポリオレフィンの結晶構造が保持され易く、破損し難い。従って、本願発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、耐衝撃性に優れる。
【0030】
本願発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータの前記(200)面のピーク面積比率Rは大きい値であるほど、耐衝撃性に優れるため好ましい。具体的には、前記(200)面のピーク面積比率Rは、0.15以上であることが好ましく、0.16以上であることがより好ましい。また、前記(200)面のピーク面積比率Rの上限値は、特に限定されないが、例えば、0.20以下である。
【0031】
前記(200)面のピーク面積比率Rは、広角X線回折(WAXD)の測定によって得られる回折強度のプロファイルに基づいて求めることができる。前記Rは、例えば、以下の(1)~(5)に示す方法によって測定される。
【0032】
(1)非水電解液二次電池用セパレータの表面に対し、鉛直方向からX線を照射して、広角X線回折(WAXD)測定を行い、WAXD図形を得る。「前記表面に対し、鉛直方向からX線を照射する」とは、X線照射装置(例えば、後述する(株)リガク製NANO-Viewer)から照射されたX線と、前記表面とがなす角(X線の前記表面への照射角)が90度となるようにX線を照射することをいう。
【0033】
(2)前記WAXD図形から、ポリオレフィンの(110)面のピークに関して、水平方向を方位角β=0度として、方位角プロファイルを算出する。
【0034】
(3)前記方位角プロファイルのβ=0度付近に最も強く現れたピークを中心として、方位角が±5度の範囲において、回折角度2θに対する回折強度のプロファイルを算出する。
【0035】
(4)前記回折強度のプロファイルから、非水電解液二次電池用セパレータの主成分であるポリオレフィン多孔質フィルムにおけるポリオレフィンの(110)面のピークの面積I(110)と、(200)面のピークの面積I(200)とを算出する。
【0036】
(5)算出されたI(110)とI(200)とを用いて、以下の式(1)に基づき、前記(200)面のピーク面積比率Rを算出する。
【0037】
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
前記(110)面のピークの位置および(200)面のピークの位置は、前記ポリオレフィンの種類等によって変動する。例えば、前記ポリオレフィンがポリエチレンである場合には、(110)面のピークは、回折角度2θが21度付近にて検出され、(200)面のピークは、回折角度2θが24.5°付近にて検出される。
【0038】
ここで、前記回折強度のプロファイルには、ポリオレフィン多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィンに由来するピークが観測される。一方、例えば、当該ポリオレフィン多孔質フィルム以外の部材である前記多孔質層等に由来するピークは観測されない。つまり、前記多孔質層等は、前記(200)面のピーク面積比率Rの測定に影響を及ぼさない。
【0039】
よって、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータが、非水電解液二次電池用積層セパレータである場合であっても、前記(200)面のピーク面積比率Rは、ポリオレフィン多孔質フィルムの特性を表すパラメータとなる。
【0040】
従って、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータが、多孔質フィルムからなる場合、および、非水電解液二次電池用積層セパレータである場合の双方共、前述した方法によって、前記(200)面のピーク面積比率Rを測定することができる。
【0041】
前記多孔質フィルムのMD破断伸度は、20%GL(Gauge Length)以上であることが好ましく、30%GL以上であることがより好ましい。MD破断伸度の上限は特に限定されないが、通常、300%GL以下であり得る。前記MD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。
【0042】
ここで、前記MD破断伸度は、所定の操作を行った場合に、前記操作を行う前の前記多孔質フィルムのMD方向の長さに対する前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのMD方向に伸長した長さの割合(%)で表される。なお、前記所定の操作とは、前記多孔質フィルムをMD方向に伸長させる操作である。
【0043】
前記多孔質フィルムのTD破断伸度は、50%GL以上であることが好ましく、60%GL以上であることがより好ましい。TD破断伸度の上限は特に限定されないが、通常、300%GL以下であり得る。前記TD破断伸度は、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定される。
【0044】
前記多孔質フィルムのTD破断伸度は、MD破断伸度と同様に表すことができる。すなわち、前記多孔質フィルムをTD方向に伸長させる操作を行った場合に、前記操作を行う前の前記多孔質フィルムのTD方向の長さに対する前記多孔質フィルムが破断した際の前記多孔質フィルムのTD方向に伸長した長さの割合(%)で表される。
【0045】
一方、枚葉タイプ、すなわち、所定のサイズに加工済の多孔質フィルムでは、TD方向およびMD方向を区別し難いことがある。その場合、枚葉タイプの多孔質フィルムが長方形であれば、その長方形の特定の一辺に平行な方向に伸長した際の破断伸度と、前記長方形の特定の一辺に垂直な方向に伸長した際の破断伸度を測定する。多孔質フィルムは、通常MD方向に伸長させた際の強度の方が弱いため、前記2つの破断伸度のうち、小さい方の値を「MD破断伸度の値」とし、大きい方の値を「TD破断伸度の値」とする。
【0046】
また、多孔質フィルムのTD方向およびMD方向が区別できず、かつ、多孔質フィルムの形状が長方形ではない場合には、多孔質フィルムを任意の複数の方向に伸長させ、それぞれの方向に伸長させた場合の破断伸度を測定する。その後、測定されるそれぞれの破断伸度のうち、最も小さい値を「MD破断伸度の値」とする。その後、前記「MD破断伸度の値」が測定された伸長方向に垂直な方向を「TD方向」とし、その方向における破断伸度の値を「TD破断伸度の値」とする。なお、本明細書において、多孔質フィルムの形状とは、厚み方向に垂直な面の形状を意図している。
【0047】
前記多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであり、5~20μmであることが好ましい。前記多孔質フィルムの膜厚が4μm以上であれば、電池の内部短絡を十分に防止することができる。一方、前記多孔質フィルムの膜厚が40μm以下であれば、非水電解液二次電池の大型化を防ぐことができる。
【0048】
前記多孔質フィルムの膜厚が過剰に厚い場合、例えば前記膜厚が40μm超の場合は、当該膜厚によって、ある程度の耐衝撃性を得ることができる。しかし、当該構成では、非水電解液二次電池用セパレータの薄型化を求める近年の要請に応えることができない。
【0049】
一方、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、例えば4~40μmの膜厚であっても、前記(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上であるという構成を備えるため、十分な耐衝撃性を示すことができる。
【0050】
前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が5×10~15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、得られる多孔質フィルムおよび当該多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの強度が向上するため、より好ましい。
【0051】
また、前記(200)面のピーク面積比率Rを0.15以上に制御するため、前記ポリオレフィン系樹脂の主成分は、重量平均分子量が50万以上のポリオレフィンであることが好ましい。なお、ここで、「主成分」とは、前記ポリオレフィン系樹脂全体の重量に対して、50重量%以上を占める成分を意味する。
【0052】
前記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体から選ばれる1以上の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体等を挙げることができる。
【0053】
前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0054】
このうち、非水電解液二次電池用セパレータに過大電流が流れることをより低温で阻止することができるため、ポリエチレンがより好ましい。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0055】
前記ポリオレフィン系樹脂は、1分子あたりの長鎖分岐度が、好ましくは、20個以下、より好ましくは10個以下であるポリオレフィンを含み得る。ここで、前記長鎖分岐度は、例えば、GPC-MALSを使用したコンフォメーションプロットから計算した値である。ここで、前記コンフォメーションプロットは、分子半径と分子量との対数プロットを意味する。
【0056】
前記多孔質フィルムの単位面積当たりの重量、すなわち重量目付は、電池の、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4~20g/mであることが好ましく、5~12g/mであることがより好ましい。
【0057】
前記多孔質フィルムの透気度は、十分なイオン透過性を示すという観点から、ガーレ値で110~200sec/100mLであることが好ましく、110~190sec/100mLであることがより好ましい。
【0058】
前記多孔質フィルムの突き刺し強度は、5.0N以上であることが好ましく、5.3N以上であることがより好ましく、5.5N以上であることがさらに好ましい。前記突き刺し強度が、5.0N以上であることは、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータの強度が十分に高いことを意味する。よって、より優れた耐衝撃性を達成することができるため好ましい。前記突き刺し強度は、以下の方法によって測定することができる。
【0059】
(i)前記多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで台の上面に固定した後、ピン(ピン径1mmΦ、先端0.5R)を、突き刺し速度:10mm/sec、突き刺し深さ:10mmの条件にて、当該多孔質フィルムに突き刺す。ここで、上記台は、上記上面が平面であればよく、その形状および材質等は限定されない。
【0060】
(ii)(i)にて前記多孔質フィルムに前記ピンを突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、その測定値をフィルムの突き刺し強度とする。
【0061】
前記多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20体積%~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。
【0062】
前記多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、十分なイオン透過性、および、電極を構成する粒子の入り込みを防止するという観点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0063】
2.ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法
本発明の一実施形態におけるポリオレフィン多孔質フィルムを製造する方法は特に限定されないが、具体的には、例えば、以下に示す(A)~(D)の工程を含む方法を挙げることができる。
【0064】
(A)ポリオレフィン系樹脂、並びに、任意で孔形成剤等の添加剤を混練機に加えて溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)得られたポリオレフィン樹脂組成物を押し出し機のTダイより押し出し、冷却しながら、第1の方向に延伸して、シート状に成形することにより、1次シートを得る工程、
(C)1次シートを、前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸して2次シートを得る工程、
(D)2次シートを、前記第1の方向へ収縮させながら前記第1の方向と異なる第2の方向に延伸する工程。
【0065】
工程(A)において、前記ポリオレフィン系樹脂の使用量は、得られるポリオレフィン樹脂組成物の重量を100重量%とした場合、6重量%~45重量%であることが好ましく、9重量%~36重量%であることがより好ましい。また前記ポリオレフィンの主成分の重量平均分子量が50万以上であることが好ましい。
【0066】
前記第1の方向は、MD方向であることが好ましい。また、前記第2の方向は、TD方向であることが好ましい。
【0067】
前記孔形成剤としては、特に限定されないが、例えば、無機充填剤および可塑剤等を挙げることができる。前記無機充填剤としては、特に限定されるものではなく、無機フィラー、具体的には炭酸カルシウム等が挙げられる。前記可塑剤としては、特に限定されるものではなく、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0068】
前記添加剤としては、前記孔形成剤の他に、任意で、本発明の効果を損なわない範囲にて、公知の添加剤を用いることができる。前記公知の添加剤としては、例えば、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0069】
工程(B)において、1次シートを得る方法は特に限定されるものではなく、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイフ法等のシート成形方法により1次シートを製造することができる。
【0070】
例えば、Tダイ押出加工におけるTダイ押出温度などの、前記シート成形方法におけるシート成型温度は、200℃以上、280℃以下が好ましく、220℃以上、260℃以下がより好ましい。
【0071】
より膜厚精度の高い1次シートを得る方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン系樹脂の融点より高い表面温度に調整された一対の回転成形工具を用いて、ポリオレフィン樹脂組成物を圧延成形する方法が挙げられる。このとき、回転成形工具の表面温度は、(ポリオレフィン系樹脂の融点+5)℃以上であることが好ましい。また表面温度の上限は、(ポリオレフィン系樹脂の融点+30)℃以下であることが好ましく、(ポリオレフィン系樹脂の融点+20)℃以下であることがさらに好ましい。
【0072】
一対の回転成形工具としては、ロールまたはベルトが挙げられる。両回転成形工具の周速度は必ずしも厳密に同一周速度である必要はなく、それらの差異が±5%以内程度であればよい。また、前記シート形成方法により得られる単層のシート同士を積層したものを、1次シートとしてもよい。
【0073】
ポリオレフィン樹脂組成物を一対の回転成形工具により圧延成形する際には、押出機よりストランド状に吐出したポリオレフィン樹脂組成物を直接一対の回転成形工具間に導入してもよく、一旦ペレット化したポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよい。
【0074】
工程(B)における延伸倍率は、1.1倍以上、1.9倍以下が好ましく、1.2倍以上、1.8倍以下がより好ましい。また、工程(B)における延伸温度は、120℃以上、160℃以下が好ましく、130℃以上、155℃以下がより好ましい。
【0075】
工程(B)におけるポリオレフィン樹脂組成物の冷却には、冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができる。好ましくは冷却ロールに接触させる方法である。
【0076】
工程(B)における第1の方向は、MD方向であることが好ましい。前記第1の方向がMD方向であることは、後述の緩和操作によって、通常、最も低い、多孔質フィルムのMD方向の伸長に対する強度を改善し、前記多孔質フィルム全体の伸長に対する強度を効率よく改善することができるため好ましい。
【0077】
前記ポリオレフィン樹脂組成物および前記1次シートに孔形成剤が含まれている場合、工程(B)および工程(C)の間、または、工程(C)の後に、延伸されたシートを、洗浄液を用いて洗浄して、前記孔形成剤を除去する工程を含む。
【0078】
前記洗浄液としては、前記孔形成剤を除去できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、塩酸水溶液、ヘプタン、ジクロロメタンなどを挙げることができる。
【0079】
工程(C)における、前記第2の方向に延伸する際の延伸温度は、80℃以上、140℃以下が好ましく、90℃以上、130℃以下がより好ましい。また、前記第2の方向に延伸する際の延伸倍率は、2倍以上、12倍以下が好ましく、3倍以上、10倍以下がより好ましい。
【0080】
工程(D)において、前記2次シートを前記第2の方向に延伸する際に、前記2次シートを前記第1の方向へ収縮させる操作を行うことによって、得られる多孔質フィルムの耐衝撃性を改善することができる。
【0081】
工程(D)において、前記2次シートの前記第2の方向への延伸を開始する工程と、前記2次シートを前記第1の方向へ収縮させる工程とは、同時に実施しても良いし、いずれかを先に実施し、その後もう片方を実施してもよい。しかしながら、前記工程を同時に行うこと、もしくは前記2次シートを前記第2の方向に延伸を開始する工程を先に行うことが好ましい。この場合、前記2次シートを前記第2の方向に延伸することにより、前記2次シートに前記第1の方向への収縮力が働くため、前記2次シートをシワなく収縮させることができる。
【0082】
工程(D)において、前記2次シートを前記第1の方向へ収縮させる際の延伸温度は、80℃以上、140℃以下が好ましく、90℃以上、130℃以下がより好ましい。また、前記2次シートを前記第2の方向に延伸する際の延伸倍率は、1.2倍以上、2倍以下が好ましく、1.3倍以上1.5倍以下がより好ましい。前記2次シートを前記第1の方向へ収縮させる際の収縮率は、10%以上50%以下が好ましく、20%以上、40%以下がさらに好ましい。
【0083】
ここで、工程(D)において、前記2次シートを前記第1の方向へ収縮させることによって、得られる多孔質フィルムの前記第1の方向の引張伸びが改善すると共に、当該多孔質フィルムにおけるポリオレフィンの結晶の異方性の発現を抑制することができる。
【0084】
また、工程(D)において前記2次シートを前記第2の方向に延伸する延伸倍率を、工程(C)において前記1次シートを前記第2の方向に延伸する延伸倍率よりもできる限り小さくする態様(以下、「態様A」)が好ましい。例えば、工程(D)における前記延伸倍率を、得られる多孔質フィルムにしわが発生しない程度の大きさに制御することが好ましい。これによって、当該多孔質フィルムにおけるポリオレフィンの結晶の配向性を、前記(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上となるように制御することができる。
【0085】
実際、前記態様Aを充足する後述の実施例1~4では、非水電解液二次電池用セパレータの前記Rは0.15以上の高い値となり、当該非水電解液二次電池用セパレータは、簡易衝撃試験にて破膜し難いという結果が得られている。
【0086】
なお、工程(C)を行わず、工程(D)のみを行った場合には、得られる多孔質フィルムの前記第1の方向の引張伸びは改善するが、得られる多孔質フィルムにおけるポリオレフィンの結晶の異方性が発現し、当該ポリオレフィンの結晶の配向性が向上する。
【0087】
例えば、後述する比較例2では、工程(C)を行わず、工程(D)のみを行ったことによって得られた多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの前記(200)面のピーク面積比率Rは0.15未満の低い値となっている。また、当該非水電解液二次電池用セパレータは、簡易衝撃試験にて破膜し易いとの結果が得られている。
【0088】
3.多孔質層
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、前記ポリオレフィン多孔質フィルムと、前記ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面上に積層された多孔質層とを含む非水電解液二次電池用積層セパレータであってもよい。
【0089】
前記多孔質層は、樹脂を含む樹脂層であり、好ましくは、耐熱層または接着層である。前記多孔質層を構成する樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0090】
前記多孔質層が前記片面上に積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、非水電解液二次電池としたときの、ポリオレフィン多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層され、より好ましくは、正極と接する面に積層される。
【0091】
前記樹脂としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0092】
前述の樹脂のうち、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。
【0093】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびエチレン-プロピレン共重合体等が好ましい。
【0094】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体およびエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0095】
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどのアラミド樹脂が好ましい。
【0096】
アラミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、ポリ(4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0097】
なお、前記樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
前記多孔質層は、微粒子を含んでもよい。本明細書における微粒子とは、一般にフィラーと称される有機微粒子または無機微粒子のことである。前記微粒子は、絶縁性微粒子が好ましい。
【0099】
前記有機微粒子としては、樹脂からなる微粒子が挙げられる。前記無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライトおよびガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。前記微粒子は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
前記多孔質層における微粒子の含有量は、前記多孔質層の1~99体積%であることが好ましく、5~95体積%であることがより好ましい。
【0101】
前記多孔質層の厚さは一層あたり、0.5~15μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましい。多孔質層の厚さが一層あたり0.5μm以上であれば、非水電解液二次電池の破損等による内部短絡を充分に抑制することができる。また、多孔質層における電解液の保持量が充分となる。一方、前記多孔質層の厚さが一層あたり15μm以下であれば、レート特性またはサイクル特性の低下を抑制することができる。
【0102】
前記多孔質層の単位面積当たりの重量、すなわち重量目付は一層あたり、1~20g/mであることが好ましく、4~10g/mであることがより好ましい。
【0103】
前記多孔質層の1平方メートル当たりに含まれる多孔質層構成成分の体積は一層あたり、0.5~20cmであることが好ましく、1~10cmであることがより好ましく、2~7cmであることがさらに好ましい。
【0104】
前記多孔質層の空隙率は、十分なイオン透過性を得ることができるように、20~90体積%であることが好ましく、30~80体積%であることがより好ましい。また、前記多孔質層が有する細孔の孔径は、前記非水電解液二次電池用積層セパレータが十分なイオン透過性を得ることができるように、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0105】
前記非水電解液二次電池用積層セパレータの膜厚は、5.5μm~45μmであることが好ましく、6μm~25μmであることがより好ましい。
【0106】
前記非水電解液二次電池用積層セパレータの透気度は、ガーレ値で100~350sec/100mLであることが好ましく、100~300sec/100mLであることがより好ましい。
【0107】
また、前記非水電解液二次電池用積層セパレータの突き刺し強度は、5.0N以上であることが好ましく、5.3N以上であることがより好ましく、5.5N以上であることがさらに好ましい。なお、前記突き刺し強度は、前記多孔質フィルムと同様の方法にて測定される。
【0108】
尚、本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータは、前記多孔質フィルムおよび前記多孔質層以外の別の多孔質層を、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。前記別の多孔質層としては、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。
【0109】
4.多孔質層、非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法
本発明の一実施形態における前記多孔質層および本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法としては、例えば、前記多孔質層に含まれる樹脂を含む塗工液を前記多孔質フィルムの片面または両面に塗布し、乾燥させることによって多孔質層を析出させる方法が挙げられる。
【0110】
前記塗工液は、前記多孔質層に含まれる樹脂を含む。また、前記塗工液は、前記多孔質層に含まれ得る後述の微粒子を含み得る。前記塗工液は、通常、前述の多孔質層に含まれ得る樹脂を溶媒に溶解させると共に、前記微粒子を分散させることにより調製され得る。ここで、前記樹脂を溶解させる前記溶媒は、特に限定されず、前記微粒子を分散させる分散媒を兼ねている。また、前記溶媒により前記樹脂をエマルションとしてもよい。
【0111】
塗工液は、所望の多孔質層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)や微粒子量等の条件を満足することができれば、どのような方法で形成されてもよい。
【0112】
塗工液の多孔質フィルムへの塗布方法は、特に制限されるものではない。前記塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、およびダイコーター法等が挙げられる。
【0113】
[実施形態2:非水電解液二次電池用部材、実施形態3:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる。
【0114】
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを含む。
【0115】
前記非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、前記非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備え得る。なお、非水電解液二次電池用セパレータ以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0116】
前記非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、前記非水電解液二次電池用セパレータを介して対向した構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。前記非水電解液二次電池は、特にはリチウム二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0117】
前記非水電解液二次電池部材は、前記非水電解液二次電池用セパレータを備えている。従って、前記非水電解液二次電池部材は、安全性、例えば、外からの衝撃に対する安全性に優れる非水電解液二次電池を製造できるという効果を奏する。
【0118】
前記非水電解液二次電池は、前記非水電解液二次電池用セパレータを備えている。従って、前記非水電解液二次電池は、安全性、例えば、外からの衝撃に対する安全性に優れるという効果を奏する。
【0119】
1.正極
前記非水電解液二次電池部材および前記非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0120】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0121】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。前記導電剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0123】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0124】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0125】
2.負極
前記非水電解液二次電池部材および前記非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0126】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、例えば、炭素質材料等が挙げられる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、および熱分解炭素類等が挙げられる。
【0127】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられ、特にリチウム二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0128】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。前記ペーストには、好ましくは前記導電剤および前記結着剤が含まれる。
【0129】
3.非水電解液
前記非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されず、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl等が挙げられる。前記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【実施例
【0131】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0132】
[測定方法]
実施例1~4および比較例1~2にて製造した、多孔質フィルムおよび非水電解液二次電池用積層セパレータ(以下、「積層多孔質フィルム」と称する)の物性等を、以下の方法を用いて測定した。
【0133】
[膜厚]
多孔質フィルムおよび積層多孔質フィルムの膜厚を、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機(VL-50)を用いて測定した。
【0134】
[重量目付]
積層多孔質フィルムから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W(g)を測定した。そして、以下の式(2)に従い、積層多孔質フィルムの重量目付を算出した。
【0135】
重量目付(g/m)=W/(0.08×0.08)・・(2)
同様の方法によって、前記積層多孔質フィルムを構成する多孔質フィルムの重量目付を算出した。その後、前記積層多孔質フィルムの重量目付から前記多孔質フィルムの重量目付を差し引くことにより、前記積層多孔質フィルムを構成するパラアラミド層の重量目付を算出した。
【0136】
[透気度]
積層多孔質フィルムの透気度(ガーレ値)を、JIS P8117に準拠して測定した。
【0137】
[突き刺し強度]
積層多孔質フィルムの突き刺し強度を、以下の(i)および(ii)に示す方法にて測定した。
【0138】
(i)前記積層多孔質フィルムを11.3mmΦのワッシャで台の上面に固定した後、ピン(ピン径1mmΦ、先端0.5R)を、突き刺し速度:10mm/sec、突き刺し深さ:200mmの条件にて、当該積層多孔質フィルムに突き刺した。
【0139】
(ii)(i)にて前記積層多孔質フィルムに前記ピンを突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、その測定値を当該積層多孔質フィルムの突き刺し強度とした。
【0140】
[MD破断伸度、TD破断伸度]
積層多孔質フィルムのMD破断伸度およびTD破断伸度を、JIS K7127規格に準拠した方法にて測定した。具体的な測定方法を以下に示す。
【0141】
積層多孔質フィルムのMD方向の長さを測定した。測定した当該長さを、以下、「伸長前のMD長さ」と称する。その後、前記積層多孔質フィルムをMD方向に伸長し、前記積層多孔質フィルムが破断した際の前記積層多孔質フィルムのMD方向の長さを測定した。測定した当該長さを、以下、「伸長後のMD長さ」と称する。以下の式(3)を用いて、MD破断伸度を測定した。
MD破断伸度[%GL]=[{(伸長後のMD長さ)-(伸長前のMD長さ)}/(伸長前のMD長さ)]×100・・(3)
同様に、積層多孔質フィルムのTD方向の長さを測定した。測定した当該長さを、以下、「伸長前のTD長さ」と称する。その後、前記積層多孔質フィルムをTD方向に伸長し、前記積層多孔質フィルムが破断した際の前記積層多孔質フィルムのTD方向の長さを測定した。測定した当該長さを、以下、「伸長後のTD長さ」と称する。以下の式(4)を用いて、TD破断伸度を測定した。
TD破断伸度[%GL]=[{(伸長後のTD長さ)-(伸長前のTD長さ)}/(伸長前のTD長さ)]×100・・(4)
[簡易衝撃試験]
積層多孔質フィルムから、一辺の長さ5cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルをポリウレタン製であり5cmの正方形、厚さ5mmのシート(大創産業製、耐震マット角型)に張り付けた。シートに張り付けた前記サンプルの中央部にガラス製の直系1.2cm、重さ2.2gの球体(大創産業製、glass pearl beads)を静置させ、高さ35cmから重さ148g、底面の直径が2.2cmの円柱状の錘を自由落下させ、錘を前記ガラス製の球体に衝突させた。その際に前記サンプルの破断の有無を確認し、破断していない場合を〇、破断していた場合を×とした。前記サンプルが破断していない場合も含めて新たにサンプル作成から実施し、合計4回、試験を実施した。
【0142】
[(200)面のピーク面積比率R]
まず、(株)リガク製NANO-Viewer(X線出力:Cuターゲット、40kV、20mA)を用い、多孔質フィルムの広角X線回折(WAXD)測定を行った。得られたポリエチレンの結晶ピークの面積比率に基づいて、前記積層多孔質フィルムにおけるポリエチレン結晶の(200)面のピーク面積比率Rを評価した。
【0143】
具体的には以下の方法により、前記Rを算出した。すなわち、まず、積層多孔質フィルムのサンプルのMD方向を鉛直方向として、試料ホルダーにサンプルを取り付け、当該サンプルの表面に対し、当該サンプルの鉛直方向からX線を照射して、WAXD図形を得た。
【0144】
次に、回折角度2θ=21度付近に現れるポリエチレンの(110)面のピークに関して、水平方向を方位角β=0度として、方位角プロファイルを算出した。方位角プロファイルにおいてβ=0度付近に最も強く現れたピークを中心に、方位角が±5度の範囲において、回折角度2θに対する回折強度のプロファイルを求めた。
【0145】
得られた回折強度のプロファイルにおいて、回折角度2θが21度と24.5度付近に検出されるポリエチレンの(110)面のピークの面積I(110)と、(200)面のピークの面積I(200)を求めた。さらに、下記式(1)により(200)面のピーク面積比率Rを算出した。
【0146】
(200)面のピーク面積比率R=I(200)/I(110)・・(1)
[実施例1]
超高分子量ポリエチレン粉末(固有粘度:21dL/g、粘度平均分子量300万、東ソー株式会社製)70重量%と、重量平均分子量2000のポリエチレンワックス(エクセレックス20700、三井化学社製)30重量%とを準備した。この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスとの合計を100重量部として、酸化防止剤(IRGANOX 1010、BASF社製)0.4重量部、酸化防止剤(IRGAFOS 168、BASF社製)0.1重量部、および、ステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加えた。
【0147】
さらに、得られた混合物の全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を加えた。これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。
【0148】
当該ポリオレフィン樹脂組成物を、一対のロールにてMD方向に1.4倍の延伸倍率にて延伸し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製した。得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬させることによって前記炭酸カルシウムを除去し、1次シートを得た。
【0149】
続いて、得られた1次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。1次シートをTD方向に4.29倍の延伸倍率にて延伸し、2次シートを得た。
【0150】
続いて、前記2次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。続いて、前記2次シートを、MD方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによってMD方向に緩和させながら、TD方向において対向する把持部材間の距離を広げることによって、温度115℃で、TD方向に1.63倍の延伸倍率にて延伸した。連続して、延伸倍率が1.4倍になるまで、前記2次シートをTD方向に収縮させ、膜厚13.8μmの多孔質フィルムを得た。この時のMD緩和率は25%であった。
【0151】
続いて、攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。
【0152】
まず、前記セパラブルフラスコを十分乾燥させ、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)2200gを仕込んだ。次に、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07gを添加し、当該セパラブルフラスコ内部の温度を100℃に昇温して、当該塩化カルシウム粉末を完全に溶解させた。
【0153】
前記温度を室温に戻した後、パラフェニレンジアミン68.23gを添加し、完全に溶解させた。得られた溶液を20℃±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド124.97gを5分割して、約10分おきに、当該溶液に添加した。その後も攪拌しながら、溶液を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成させた。熟成させた前記溶液を、1500メッシュのステンレス金網を用いてろ過した。得られたパラアラミド溶液中のパラアラミドの濃度は6重量%であった。
【0154】
前記パラアラミド溶液100gをフラスコに秤取し、158gのNMPを添加し、パラアラミド濃度が2.25重量%の溶液に調製した。続いて、当該溶液を10分間攪拌した。パラアラミド濃度が2.25重量%の前記溶液に、アルミナC(日本アエロジル社製、平均一次粒子径13nm)6gおよび炭酸化カルシウム2.3g(丸尾カルシウム製)を混合し、塗工液を得た。
【0155】
得られた塗工液を前記多孔質フィルムに塗布した後、前記塗工液を乾燥させ、前記多孔質フィルム上にパラアラミド層(多孔質層)を形成した。その結果、前記多孔質フィルム上にパラアラミド層が形成された積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、1.9g/mであった。
【0156】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図1に示す。
【0157】
なお、前記「MD緩和率」とは、前記多孔質フィルムのMD方向の長さの、延伸前の前記2次シートのMD方向の長さに対する減少率を指す。
【0158】
[実施例2]
実施例1における1次シートを得るための方法と同一の方法にて、1次シートを得た。その後、得られた1次シートを、実施例1と同様の方法にて、TD方向に3.57倍の延伸倍率にて延伸し、2次シートを得た。
【0159】
前記2次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。続いて、前記2次シートを、MD方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによってMD方向に緩和させながら、TD方向において対向する把持部材間の距離を広げることによって、温度110℃で、TD方向に1.4倍の延伸倍率にて延伸した。その結果、膜厚14.1μmの多孔質フィルムを得た。この時のMD緩和率は25%であった。
【0160】
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1における積層多孔質フィルムを得るための方法と同一の方法によって当該多孔質フィルム上にパラアラミド層を形成し、積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、1.7g/mであった。
【0161】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図2に示す。
【0162】
[実施例3]
実施例1における1次シート得るための方法と同一の方法にて、1次シートを得た。その後、得られた1次シートを、実施例1と同様の方法にて、TD方向に4.29倍の延伸倍率にて延伸し、2次シートを得た。
【0163】
前記2次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。続いて、前記2次シートを、MD方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによってMD方向に緩和させながら、TD方向において対向する把持部材間の距離を広げることによって、温度115℃で、TD方向に1.4倍の延伸倍率にて延伸した。その結果、膜厚14.1μmの多孔質フィルムを得た。この時のMD緩和率は25%であった。
【0164】
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1における積層多孔質フィルムを得るための方法と同一の方法にて、当該多孔質フィルム上にパラアラミド層を形成して、積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、2.1g/mであった。
【0165】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図3に示す。
【0166】
[実施例4]
実施例2における2次シート得るための方法と同一の方法にて、2次シートを得た。得られた2次シートに対して、延伸時の温度を115℃としたこと以外は、実施例2と同様の方法にて、MD方向に緩和させながら、TD方向に延伸し、膜厚14.1μmの多孔質フィルムを得た。
【0167】
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1における積層多孔質フィルムを得るための方法と同一の方法にて、当該多孔質フィルム上にパラアラミド層を形成して、積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、1.9g/mであった。
【0168】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図4に示す。
【0169】
[比較例1]
超高分子量ポリエチレン粉末(GUR2024、ティコナ社製)68重量%と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP-0115、日本精鑞社製)32重量%とを準備した。この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスとの合計を100重量部として、酸化防止剤(IRGANOX 1010、BASF社製)0.4重量部、酸化防止剤(IRGAFOS 168、BASF社製)0.1重量部、および、ステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加えた。
【0170】
さらに、得られた混合物の全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を加えた。これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。
【0171】
当該ポリオレフィン樹脂組成物を一対のロールにてMD方向に1.4倍の延伸倍率にて延伸し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製した。得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬させることによって前記炭酸カルシウムを除去し、1次シートを得た。
【0172】
続いて、得られた1次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。続いて、前記1次シートを123℃でTD方向に7.05倍の延伸倍率にて延伸し、13.5μmの多孔質フィルムを得た。
【0173】
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1における積層多孔質フィルムを得るための方法と同一の方法によって、当該多孔質フィルム上にパラアラミド層を形成し、積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、3.0g/mであった。
【0174】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図5に示す。
【0175】
[比較例2]
1次シートを得るまでは実施例1と同様に実施し、続いて、得られた1次シートのTD方向の両端を、MD方向に隣接する複数の把持部材によって把持した。
【0176】
続いて、前記1次シートを、MD方向に隣接する把持部材間の距離を縮めることによってMD方向に緩和させながら、TD方向において対向する把持部材間の距離を広げることによってTD方向に5倍の延伸倍率にて延伸した。その結果、膜厚14.0μmの多孔質フィルムを得た。この時のMD緩和率は20%であった。
【0177】
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1における積層多孔質フィルムを得るための方法と同一の方法によって、当該多孔質フィルム上にパラアラミド層を形成し、積層多孔質フィルムを得た。前記パラアラミド層の目付は、1.7g/mであった。
【0178】
得られた積層多孔質フィルム(非水電解液二次電池用積層セパレータ)の物性値等を、上述の方法によって測定した。結果を表1および表2に表す。また、上述の方法によって取得した前記積層多孔質フィルムの回折強度のプロファイルを、図6に示す。
【0179】
[結果]
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
表2に示すとおり、実施例1~4の非水電解液二次電池用積層セパレータは、(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上であり、比較例1、2の非水電解液二次電池用積層セパレータは(200)面のピーク面積比率Rが0.15未満であった。実施例1~4の非水電解液二次電池用積層セパレータは、比較例1、2の非水電解液二次電池用積層セパレータよりも、簡易衝撃試験にて破断し難い。
【0183】
従って、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、(200)面のピーク面積比率Rが0.15以上であることによって、耐衝撃性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の一態様は、非水電解液二次電池の製造に好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6