(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】使い捨てマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20250519BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
A41D13/11 D
(21)【出願番号】P 2022533718
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2021018464
(87)【国際公開番号】W WO2022004152
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020113468
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若杉 慶
(72)【発明者】
【氏名】古屋 光大
(72)【発明者】
【氏名】小松 慎平
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀行
(72)【発明者】
【氏名】須田 朋和
(72)【発明者】
【氏名】古屋 芳織
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和昌
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-326006(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106174799(CN,A)
【文献】特開2018-057390(JP,A)
【文献】特開2020-084388(JP,A)
【文献】特開2019-002081(JP,A)
【文献】特開2008-054767(JP,A)
【文献】特開2008-093285(JP,A)
【文献】特開2009-285370(JP,A)
【文献】特開2017-217324(JP,A)
【文献】特開2012-067147(JP,A)
【文献】特開2010-242273(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0066271(KR,A)
【文献】特開2007-021025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 18/02
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、
を
有し、
前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記上下方向の端部に比べて、前記上下方向の中央部の方が、前記吸熱剤の坪量が高いことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項2】
請求項1に記載の使い捨てマスクであって、
前記吸熱剤は、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含むことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材の非肌側面は、前記マスク本体部の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、
前記不織布の肌側面は、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成していることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項4】
請求項3に記載の使い捨てマスクであって、
前記吸熱剤は、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成する部分に配されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極されたシートであり、
前記吸熱剤は、アルコールを含まないことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記吸熱剤は、不揮発性であることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材の外周端と、前記不織布の外周端とが一致していることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材は、前記不織布に比べて、前記吸熱剤の坪量が低いことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項9】
請求項8に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材には前記吸熱剤が配されていないことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、かつ、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有することを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、
前記吸熱剤は、前記マスク本体部の前記不織布の全域に配されており 、
前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有することを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有し、
前記マスク本体部の上端部及び下端部の少なくとも一方は、前記不織布が非肌面側に折り返された折返し部を有し、
前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記不織布の肌側面に前記吸熱剤が配されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項13】
請求項12に記載の使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部の前記上端部は、前記折返し部を有し、当該折返し部における前記不織布の非肌側面に前記吸熱剤が配されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項14】
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、
を有し、
前記マスク本体部は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部と、前記一対のシート部を接合する接合部を有し、
前記使い捨てマスクの展開状態において、
前記マスク本体部は、上下方向、及び、左右方向を有し、
前記マスク本体部の前記左右方向の中央部は、前記左右方向の両端部に比べて前記吸熱剤の坪量が高い高坪量部を有し、
前記高坪量部は、前記マスク本体部の上端から下端まで前記上下方向に連続して配されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記耳掛け部は、前記マスク本体部の肌側面に接合されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記吸熱剤は、前記不織布を構成する繊維の少なくとも一部に練りこまれていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項17】
請求項1から15の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記吸熱剤は、前記不織布の肌側面に塗布されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項18】
請求項1から17の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記不織布は、親水性繊維を含むことを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項19】
請求項1から18の何れか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記フィルタ部材の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下であることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項20】
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、
を有し
前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記左右方向の両側部は、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が、前記左右方向の中央部より高い部分を有することを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、前記不織布の厚さ方向の一方側又は他方側の面と対向するように設けられた第2不織布を有し、
前記第2不織布に、冷感剤が配されていることを特徴とする使い捨てマスク。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の使い捨てマスクであって、
前記不織布は、一方側の面より平滑な他方側の面を有し、
前記他方側の面が、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成し、
前記吸熱剤は、少なくとも前記他方側の面に設けられていることを特徴とする使い捨てマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、着用者の顔面に接触して使用されるため、特許文献1には、マスクの最内層材に保湿剤、湿潤剤を付与することが開示されている。このようなマスクによれば、装着時の肌触りが良好で、しっとり感が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクには、着用者の湿った息によりマスク内の空間が蒸れやすいという問題がある。特に夏の暑い時期には、長時間のマスクの着用により熱中症が発生する恐れがある。特許文献1のマスクには保湿剤が付与されているため、マスクと接触した肌部分において、着用者はひんやり感(接触冷感)が得られる。
しかし、保湿剤による冷感は、保湿剤の温度と着用者の体温との温度差による冷感である。そのため、外気温と同程度の温度となる保湿剤による接触冷感では、冷感効果が低く、マスク内の蒸れを改善するには不十分である。また、通常、マスクの外周端は着用者の肌に密着しやすいが、マスクの中央部では着用者との間に空間が生じやすい。そのため、着用者の息により蒸れやすいマスクの中央部において、着用者の肌は保湿剤と接触し難く、着用者は冷感を実感し難い。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、マスク内の蒸れを改善し、着用者が冷感を実感しやすい使い捨てマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、
前記マスク本体部は、
ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、
前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、
を有し、
前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記上下方向の端部に比べて、前記上下方向の中央部の方が、前記吸熱剤の坪量が高いことを特徴とする使い捨てマスクである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、マスク内の蒸れを改善し、着用者が冷感を実感しやすい使い捨てマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の使い捨てマスク1の平面図である。
【
図2】
図1のI-I線におけるマスク1の断面図である。
【
図4】
図4Aは第2実施形態の使い捨てマスク2の折り畳み状態を示す平面図であり、
図4Bは展開状態のマスク2の正面図である。
【
図6】着用状態のマスク2を上から見た概略図である。
【
図7】第3実施形態の使い捨てマスク3の非肌側から見た平面図である。
【
図9】
図7のI-I線におけるマスク本体部10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有する使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材と、前記フィルタ部材の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤が配された不織布と、を有する。
【0010】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤が着用者の湿った息に接触して吸熱反応を起こし、マスク内の空間温度が下がるため、マスク内の蒸れを改善できる。また、フィルタ部材によって、着用者の息及び吸熱剤がマスク内の空間に留まりやすい。そのため、着用者の息と吸熱剤の接触時間が増えて冷感効果が高まり、また、冷感効果の持続性が高まる。よって、着用者がマスクの冷感を実感しやすくなる。
【0011】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含む。
【0012】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤が着用者の口元に触れた際にも安全である。
【0013】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の非肌側面は、前記マスク本体部の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、前記不織布の肌側面は、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成している。
【0014】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部において厚さ方向に積層される資材の数が少なくなるため、マスク内の蒸れを改善できる。
【0015】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成する部分に配されている。
【0016】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の肌に近い位置にて吸熱反応が起こりやすいため、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0017】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極されたシートであり、前記吸熱剤は、アルコールを含まない。
【0018】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤のアルコール成分によって、フィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0019】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、不揮発性である。
【0020】
このような使い捨てマスクによれば、マスクの使用前から吸熱剤が揮発してフィルタ部材に付着し、フィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0021】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の外周端と、前記不織布の外周端とが一致している。
【0022】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部の平面の広範囲に亘り、不織布(吸熱剤)を配することができ、マスク内の広範囲の空間温度を下げることができる。マスク本体部の平面の広範囲に亘り、フィルタ部材を配することができ、フィルタ部材の捕集効果が高まる。
【0023】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材は、前記不織布に比べて、前記吸熱剤の坪量が低い。
【0024】
このような使い捨てマスクによれば、着用者に近い不織布に多くの吸熱剤が配されることで、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、フィルタ部材に吸熱剤が付着していることによりフィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0025】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材には前記吸熱剤が配されていない。
【0026】
このような使い捨てマスクによれば、フィルタ部材に吸熱剤が付着していることによりフィルタ部材の捕集効果が軽減してしまうことを抑制できる。
【0027】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、
上下方向及び左右方向を有し、
前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、
前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、かつ、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有する。
【0028】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近い上下方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。また、マスク本体部の左右方向両側部は着用者の頬に接触するため、その部分において吸熱剤の坪量が高い部分を設けることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0029】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記上下方向の端部に比べて、前記上下方向の中央部の方が、前記吸熱剤の坪量が高い。
【0030】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近い上下方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。
【0031】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記上下方向の中央部において、前記フィルタ部材及び前記不織布は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記フィルタ部材及び前記不織布が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、前記吸熱剤は、前記マスク本体部の前記不織布の全域に配されており、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有する。
【0032】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近い上下方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。
【0033】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有し、前記マスク本体部の上端部及び下端部の少なくとも一方は、前記不織布が非肌面側に折り返された折返し部を有し、前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記不織布の肌側面に前記吸熱剤が配されている。
【0034】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部の上下端部において、吸熱剤が配された不織布がフィルタ部材で肌側から覆われてしまうことを防止できる。よって、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0035】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部の前記上端部は、前記折返し部を有し、当該折返し部における前記不織布の非肌側面に前記吸熱剤が配されている。
【0036】
このような使い捨てマスクによれば、マスクの外に排出された息が上昇する際に、折り返し部の非肌側面(外側面)の吸熱剤に接触しやすく、マスク本体部の上端部付近の温度を下げることができる。また、息の温度も下がるため、着用者の眼鏡が曇り難くなる。
【0037】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部と、前記一対のシート部を接合する接合部を有し、前記使い捨てマスクの展開状態において、前記マスク本体部は、上下方向、及び、左右方向を有し、前記マスク本体部の前記左右方向の中央部は、前記左右方向の両端部に比べて前記吸熱剤の坪量が高い高坪量部を有する。
【0038】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近いマスク本体部の左右方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触することができ、冷感効果が高まる。
【0039】
かかる使い捨てマスクであって、前記高坪量部は、前記マスク本体部の上端から下端まで前記上下方向に連続して配されている。
【0040】
このような使い捨てマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近いマスク本体部の左右方向の中央部において、より多くの吸熱剤が着用者の息と接触することができ、冷感効果が高まる。
【0041】
かかる使い捨てマスクであって、前記耳掛け部は、前記マスク本体部の肌側面に接合されている。
【0042】
このような使い捨てマスクによれば、耳掛け部が接合されたマスク本体部の部分(着用者の肌に密着しやすい部分)において、不織布よりも肌側に耳掛け部が設けられるため、吸熱剤が着用者の肌に直接に強く密着してしまうことを防止できる。
【0043】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、前記不織布を構成する繊維の少なくとも一部に練りこまれている。
【0044】
このような使い捨てマスクによれば、不織布から吸熱剤が脱落し難く、吸熱剤による冷感効果の持続性が高まる。
【0045】
かかる使い捨てマスクであって、前記吸熱剤は、前記不織布の肌側面に塗布されている。
【0046】
このような使い捨てマスクによれば、着用者に近い位置に吸熱剤が配され、吸熱剤が着用者の息と接触しやすくなるため、冷感効果が高まる。
【0047】
かかる使い捨てマスクであって、前記不織布は、親水性繊維を含む。
【0048】
このような使い捨てマスクによれば、不織布の親水性繊維によって不織布内に水分が保持されやすくなり、吸熱剤の吸熱反応が起こりやすくなるため、冷感効果が高まる。
【0049】
かかる使い捨てマスクであって、前記フィルタ部材の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下である。
【0050】
このような使い捨てマスクによれば、フィルタ部材の通気性が良いため、マスク内が蒸れ難くなる。
【0051】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記左右方向の両側部は、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が、前記左右方向の中央部より高い部分を有する。
【0052】
このような使い捨てマスクによれば、マスク本体部の左右方向両側部は着用者の頬に接触するため、その部分において左右方向の中央部より吸熱剤の坪量が高い部分を設けることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0053】
かかる使い捨てマスクであって、前記マスク本体部は、前記不織布の厚さ方向の一方側又は他方側の面と対向するように設けられた第2不織布を有し、前記第2不織布に、冷感剤が配されている。
【0054】
このような使い捨てマスクによれば、吸熱剤が、着用者の湿った息と接触して吸熱反応でマスクの表面温度が下げる前に、冷感剤によって冷感を感じやすくなるため、着用者は、マスクを着用したときからマスクによる冷感を実感しやすくなる。
【0055】
かかる使い捨てマスクであって、前記不織布は、一方側の面より平滑な他方側の面を有し、前記他方側の面が、前記マスク本体部の肌側面の少なくとも一部を形成し、前記吸熱剤は、少なくとも前記他方側の面に設けられている。
【0056】
このような使い捨てマスクによれば、一方側の面より平滑な他方側の面は、一方側の面より肌との接触面積が広いため、他方側の面に吸熱剤を配することで、着用者は、冷感を実感しやすくなる。
【0057】
かかる使い捨てマスクであって、水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しない。
【0058】
このような使い捨てマスクによれば、香り発生体を具備しない使い捨てマスクであっても、着用者は、マスクを着用したときからマスクによる冷感を実感しやすくなる。
【0059】
==第1実施形態===
図1は、第1実施形態の使い捨てマスク1(以下「マスク」とも呼ぶ)の平面図である。
図2は、
図1のI-I線におけるマスク1の断面図である。
図3は、マスク1の着用状態を示す図である。
【0060】
(マスク1の基本構成)
マスク1は、少なくとも着用者の口元と鼻孔を覆うことができるマスク本体部10と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部20を有する。マスク本体部10は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有する。厚さ方向において、着用者の顔面と対向する内側を肌側又は肌面側とも呼び、その反対側である外側を非肌側又は非肌面側とも呼ぶ。
【0061】
使用前のマスク本体部10は、厚さ方向から見た平面視(
図1)において、左右方向に長い矩形形状を成している。マスク本体部10は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材11と、フィルタ部材11の肌面側に設けられた肌側不織布(不織布)12と、サイドシート13と、を有する。
【0062】
フィルタ部材11は、ウィルス飛沫や細菌飛沫や花粉等の微粒子の捕集効果が高い部材である。具体的には、フィルタ部材11は、BFE(バクテリアろ過効率試験:試験粒子約3μm)が95%以上であることと、VFE(ウィルスろ過効率試験:試験粒子約1.7μm)が95%以上であることと、の少なくとも一方を満たす部材であることが好ましい。
【0063】
フィルタ部材11としては、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートを例示できる。エレクトレット処理によって、ポリオレフィン系繊維表面に所定量の正電荷或いは負電荷を与えて分極させた誘電状態が形成され、捕集機能が得られる。
【0064】
具体的には、フィルタ部材11として、ポリオレフィン系繊維であるポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたメルトブロー不織布と、ポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたスパンボンド不織布とが、一体状に形成された、継ぎ目等のない1枚の不織布シートを例示できる。肌側に配されるメルトブロー不織布の平均繊維径が0.5~3μm、坪量が1.5~5g/m2であるとよい。非肌側に配されるスパンボンド不織布の平均繊維径が15~30μm、坪量が18~50g/m2であるとよい。また、上記不織布は、ポリプロピレン繊維のみによって構成されてもよいし、ポリプロピレン繊維に例えばポリエチレン繊維が付加されたものであってもよい。また、非肌側の不織布は、スパンボンド不織布に限らず、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布であってもよい。ただし、上記に限定されず、フィルタ部材11はエレクトレット処理されていないものであってもよい。例えば、繊維間隙の小さい部材であり、繊維間隙にウィルス飛沫等を付着させて捕集する部材(ナノフィルタ等)をフィルタ部材11としてもよい。
【0065】
肌側不織布12には、吸熱剤30が配されている。肌側不織布12は、吸熱剤30を配することが可能な不織布であればよい。好ましくは、肌触りの良い不織布であるとよく、ポロプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布等を例示できる。
【0066】
第1実施形態のマスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11及び肌側不織布12が、左右方向に沿う折り目Fによってプリーツ状に折り畳まれて、襞が形成されたプリーツタイプである。
図2に示すマスク本体部10は、非肌側から視認可能な4つの折り目F1~F4と、肌側から視認可能な4つの折り目F5~F8とを有する。折り目F1~F3,F8は上側に凸となる山折り部であり、折り目F4,F5~F7は下側に凸となる谷折り部である。ただし、折り目Fの数や向きは
図2に例示する構成に限定されない。
【0067】
使用前のマスク1では、プリーツ状の折り畳み形状が維持されており、マスク本体部10はほぼ平坦な状態である。プリーツ状の折り目Fによって、マスク本体部10は上下方向に広がることが可能となり、また、非肌側にΩ形状に隆起可能となる。よって、
図3に示すように、マスク1の着用者は、鼻から顎までの長さに応じてマスク本体部10を上下方向に広げ、マスク本体部10で口元と鼻孔を覆うことができる。
【0068】
また、マスク本体部10の上端部及び下端部は、それぞれフィルタ部材11及び肌側不織布12が非肌面側に折り返された折返し部101を有する。なお、以下の説明では、厚さ方向に折返し部101と重なるマスク本体部10の部位を非折返し部102と呼ぶ。折返し部101によって、マスク本体部10の上下端部の強度が高まる。また、フィルタ部材11及び肌側不織布12の開きを抑制できる。
【0069】
サイドシート13は、左右方向におけるマスク本体部10の両側部に設けられている。プリーツ状の折り目Fと上下の折返し部101とが維持されたフィルタ部材11及び肌側不織布12の左右方向の両側部を、肌側及び非肌側から挟むように、サイドシート13が設けられている。サイドシート13は、通気性や肌触りが良好なシートであることが好ましく、例えば、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を例示できる。
【0070】
マスク本体部10は、重なり合うシート同士を接合一体化する溶着部14、例えば熱溶着や超音波溶着等による溶着部14を有する。
図1に示すように、マスク本体部10の横方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布12、及びサイドシート13を接合する複数の溶着部14が上下方向に沿って設けられている。マスク本体部10の上下端部及び上下方向の中央部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12を接合する複数の溶着部14が左右方向に沿って設けられている。ただし、溶着部14のパターンは
図1に例示するものに限定されない。また、重なり合うシート同士は接着剤等(例えばホットメルト接着剤)で接合されていてもよい。
【0071】
また、
図2に示すように、マスク本体部10の上端部では、折り返し部101におけるフィルタ部材11と非折返し部102におけるフィルタ部材11の間に、形状保持部材15が配されている。形状保持部材15は、薄板矩形の部材であり、着用者が容易に曲げることができると共に、再び外力が掛からない限り、その形状が保持される部材である。形状保持部材15として、可撓性の熱可塑性樹脂や金属片で形成されたもの等を例示できる。マスク1の着用者は、鼻の形に合わせて形状保持部材15を変形させることができ、マスク本体部10の上端部と着用者の顔面との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。また、形状保持部材15の上下方向の両側に溶着部14が設けられ、形状保持部材15の位置ずれが抑制されている。
【0072】
耳掛け部20は、マスク本体部10の左右方向の両側部からそれぞれ延出したリング状の部材である。耳掛け部20は、伸縮性を有する部材であることが好ましく、例えば、ゴム紐、伸縮性不織布、伸縮性フィルム等を例示できる。
図1に例示する耳掛け部20は、ゴム紐であり、マスク本体部10の非肌側面に、接合部16によって接合されている。ゴム紐(20)の一端は、マスク本体部10の上端部の接合部16にて接合され、ゴム紐(20)の他端は、マスク本体部10の下端部の接合部16にて接合されている。接合部16の接合としては、溶着や接着剤による接合を例示できる。
【0073】
(吸熱剤30を有するマスク1について)
本実施形態のマスク1は、洗濯しながら繰り返し使用されるガーゼ等で形成されたマスクとは異なり、ウィルス飛沫や細菌飛沫を捕集するフィルタ部材11を備える。そのため、洗濯によってフィルタ部材11の捕集効果が軽減してしまうことを防止するために、本実施形態のマスク1は使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。
【0074】
マスクの着用により、ウィルス飛沫等の微粒子の侵入を抑制できる一方で、着用者の湿った息でマスク内の空間が蒸れやすいという問題が生じる。特に夏の暑い時期等には、マスク内の蒸れで熱中症が発生する恐れがある。
【0075】
そこで、本実施形態のマスク1では、フィルタ部材11の肌面側に、吸熱剤30が配された肌側不織布12が設けられている。吸熱剤30とは、水と反応して吸熱反応を起こす剤である。
【0076】
そのため、着用者の湿った息が肌側不織布12の吸熱剤30に接触し、吸熱剤30が吸熱反応を起こし、マスク1の表面温度が低下するため、マスク1内の蒸れが改善される。その結果、マスク1の着用による息苦しさを軽減でき、熱中症の発生を抑制できる。
【0077】
特に、ウィルス飛沫等を捕集するフィルタ部材11は、肌側不織布12に比べて通気性が低い(通気抵抗値が高い)。そのため、フィルタ部材11を有さないガーゼ等のマスクに比べて、本実施形態のマスク1では、着用者の息がマスク1の外に排出され難く、マスク1内の空間の密閉度が高い。つまり、着用者の吐いた息や吸熱剤30がフィルタ部材11を通過し難く、マスク1内の空間に留まりやすい。よって、着用者の息と吸熱剤30の接触時間が増え、マスク1の表面温度が低下しやすく、マスク1内の蒸れが改善されやすい。そのため、着用者はマスク1内の冷感を実感しやすくなる。また、着用者の呼吸によって、吸熱剤30を含んだ息がフィルタ部材11の内側において循環しやすいため、冷感効果の持続性も高まる。これによっても、着用者はマスク1内の冷感を実感しやすくなる。
【0078】
また、マスク1は形状保持部材15を有することが好ましい。そうすることで、マスク1と着用者(顔面)との間に隙間が生じ難く、マスク1内の空間の密閉度が高まる。そのため、着用者の息と吸熱剤30の接触時間や循環が増えて、冷感効果やその持続性が高まる。ただし上記に限らず、マスク1は形状保持部材15を有していなくてもよい。
【0079】
また、本実施形態のマスク1とは異なり、例えばマスクに配された保湿剤等を着用者の肌に接触させることで、ひんやり感(接触冷感)を着用者に付与する場合、保湿剤の温度と着用者の体温との温度差による冷感となる。そのため、外気温が高く、外気温と同程度となる保湿剤の温度が高い場合には、冷感効果が低く、マスク内の蒸れを改善するには不十分であり、着用者は冷感を実感し難い。また、通常、マスクの外周端は着用者の肌に密着しやすいが、マスクの中央部では着用者との間に空間が生じやすい。そのため、接触冷感を付与するマスクでは、着用者の息により蒸れやすいマスクの中央部(鼻孔や口元部分)において、着用者の肌は保湿剤と接触し難く、着用者は冷感を実感し難い。
【0080】
これに対して、本実施形態のマスク1では、吸熱剤30の吸熱反応を利用する。そのため、外気温に影響され難く、夏の暑い時期にもマスク1の表面温度を下げることができ、マスク1内の蒸れを改善できる。また、本実施形態のマスク1では、マスク1内の空間温度を下げるため、マスク1と着用者の肌が接触していない部分でも、着用者は冷感を実感できる。特に、着用者の息により蒸れやすいが、着用者の肌と空間が生じやすいマスク1の中央部(鼻孔や口元部分)においても、着用者は冷感を実感できる。
【0081】
吸熱剤30(吸熱成分)としては、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含むことが好ましい。糖アルコール類としては、キシリトール、エリスリトール、デキストロース、ソルビトール等を例示できる。糖類としては、トレハロース、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)等を例示できる。これらの吸熱剤30であれば、マスク1の着用者の口元に触れた際にも安全である。
【0082】
また、吸熱剤30は、肌側不織布12を構成する繊維の少なくとも一部に練り込まれているとよい。つまり、肌側不織布12を形成する前段階で吸熱剤30が配されるように、例えば、肌側不織布12を形成する前の繊維ウェブを吸熱剤30(溶液)に含浸させたり、樹脂に吸熱剤30を混ぜてから繊維を形成したりするとよい。また、吸熱剤30が混ざったバインダーを繊維ウェブに塗布してもよい。
【0083】
そうすることで、肌側不織布12から吸熱剤30が脱落し難く、徐々に吸熱剤30の機能が発揮され、吸熱剤30による冷感効果の持続性が高まる。また、マスク1の使用前から吸熱剤30がフィルタ部材11に付着して、フィルタ部材11の捕集機能が低下してしまうことを抑制できる。
【0084】
しかし、上記に限定されず、肌側不織布12を構成する繊維の表面に吸熱剤30を配してもよい。例えば、噴霧法やローラーコート法、刷毛塗り法等の各種公知の塗布方法で、肌側不織布12に吸熱剤30を塗布したり、吸熱剤30(溶液)に肌側不織布12を浸漬したりするとよい。この場合、吸熱剤30が着用者の息と接触しやすく、吸熱反応が起こりやすいため、冷感効果が高まる。
【0085】
より好ましくは、吸熱剤30は、肌側不織布12の肌側面に塗布されているとよい。そうして、吸熱剤30を着用者に近い位置に配することで、吸熱剤30は着用者の息とより接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1の表面温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。ただし、上記に限定されず、肌側不織布12の非肌側面又は両面に吸熱剤30が塗布されていてもよい。
【0086】
なお、吸熱剤30は、液体状であっても、固体状(ジェル状、粉体状等も含む)であってもよい。また、吸熱剤30を内包したマイクロカプセルを肌側不織布12に配し、物理的又は化学的な刺激(例えば熱、圧力、衝撃、光、液体等)により吸熱剤30を放出させるようにしてもよい。また、吸熱剤30には、吸熱作用を有する吸熱成分を溶解、分散させる溶媒も含まれるものとする。
【0087】
また、吸熱剤30は、肌側不織布12の平面全域に配されていてもよいし、肌側不織布12の平面の一部に配されていてもよい。また、吸熱剤30は、肌側不織布12に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m2)で配されていてもよいし、肌側不織布12の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
【0088】
また、肌側不織布12は、親水性繊維を含むことが好ましい。より好ましくは、肌側不織布12に親水性繊維が50%以上含まれているとよい。そうすることで、肌側不織布12では、着用者の息に含まれる水分が保持されやすく、肌側不織布12の吸熱剤30が水分と接触しやすくなり、接触時間も長くなる。よって、吸熱剤30による吸熱反応が起こりやすく、冷感効果が高まる。
【0089】
親水性繊維としては、例えば、レーヨン等の再生セルロース繊維、コットンや粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロール繊維等が挙げられる。また、疎水性繊維(例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)に、親水性処理を施して、親水性に変性させた繊維であってもよい。親水性繊維の判断は、例えば、繊維の接触角が90度未満であれば、親水性が高い繊維と判断できる。ただし上記に限定されず、肌側不織布12が親水性繊維を含まなくてもよいとする。
【0090】
また、フィルタ部材11の非肌側面は、マスク本体部10の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、肌側不織布12の肌側面は、マスク本体部10の肌側面の少なくとも一部を形成していることが好ましい。そうすることで、マスク本体部10において厚さ方向に積層されるシートの数が少なくなり、マスク1内の空間を蒸れ難くすることができる。本実施形態のマスク本体部10では、サイドシート13が配された左右方向の両側部以外の領域は、2枚の不織布(フィルタ部材11及び肌側不織布12)で構成されている。
【0091】
また、上記の場合、吸熱剤30が配された肌側不織布12がマスク本体部10の最も肌側に位置する。そのため、吸熱剤30は着用者の息と接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1の表面温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0092】
また、マスク本体部10の左右方向及び上下方向の中央部には、サイドシート13が位置せず、2枚の不織布で構成されることに加えて、上下の折返し部101も位置しない(プリーツ状の折り目Fは位置するが、この折り目Fは着用状態において上下方向に広げられる)。つまり、着用者の鼻孔や口元が位置して蒸れやすいマスク1の部分において、厚さ方向に積層されるシート数がほぼ2枚となるため、マスク1内の空間を蒸れ難くすることができる。
【0093】
ただし、マスク本体部10の構成は上記に限定されず、例えば、フィルタ部材11よりも非肌側や、肌側不織布12よりも肌側、フィルタ部材11と肌側不織布12の間に、別のシートが配されていてもよい。
【0094】
また、フィルタ部材11の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下であるとよく、好ましくは、0.3kPa・s/m以下であるとよい。フィルタ部材11の通気抵抗値が0.45kPa・s/mよりも高い場合、マスク1が吸熱剤30を有していても、着用者がマスク1内の蒸れを感じやすくなる恐れがある。そのため、吸熱剤30の冷感効果に加えて、フィルタ部材11の通気性を適度に保つことで、夏の暑い時期等にも、マスク1内の蒸れを改善できる。
【0095】
ただし、フィルタ部材11の通気抵抗値は、肌側不織布12の通気抵抗値よりも高いことが好ましい。そうすることで、着用者の息や吸熱剤30がマスク1内の空間において適度に留まり、着用者の息と吸熱剤30の接触時間が増えるため、吸熱効果及びその持続性も高まる。
【0096】
フィルタ部材11の通気抵抗値の測定は、周知の方法で行うことができる。例えば、コールドスプレー等を用いてマスク1からフィルタ部材11を分離し、フィルタ部材11を所定の大きさ(例えば直径100mmの円形)に切り出してサンプルとする。そして、カトーテック社製通気性試験機(KES-F8)又はそれと同等の通気性試験機を用いて、標準通気速度を2cm/sに設定し、サンプルの通気抵抗値を測定する。かかる測定を複数回(例えば5回)行い、その平均値を、フィルタ部材11の通気抵抗値とすることができる。
【0097】
また、前述したように、本実施形態のフィルタ部材11は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートである。このように、電荷により捕集機能を有するフィルタ部材11は、アルコールの付着により捕集機能が軽減してしまう。
【0098】
そのため、上記のフィルタ部材11を採用する場合、吸熱剤30は、アルコールを含まないことが好ましい。そうすることで、フィルタ部材11の捕集効果が軽減してしまうことを防止できる。例えば、吸熱剤30に含まれる溶媒は、水系溶媒であることが好ましい。また、例えば、アルコール系溶媒に吸熱成分を溶解,分散した溶液を肌側不織布12に塗布する場合、マスク1の製造ラインにおいて、アルコール系溶媒が気化した後に、肌側不織布12をフィルタ部材11に合流させるとよい。そうして、マスク1における吸熱剤30にはアルコールが含まれないようにするとよい。
【0099】
また、吸熱剤30は、不揮発性であることが好ましい。そうすることで、マスク1の使用前からフィルタ部材11側に吸熱剤30が揮発して、フィルタ部材11に吸熱剤30が付着し、フィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。不揮発性の吸熱剤30とは、一般生活環境下で気体とならず、沸点が100℃以上である物質とする。
【0100】
また、フィルタ部材11は、肌側不織布12に比べて、吸熱剤30の坪量が低いことが好ましく、より好ましくは、フィルタ部材11には吸熱剤30が配されていないとよい。そうすることで、着用者に近い肌側不織布12に多くの吸熱剤30が配されることになる。そのため、吸熱剤30は着用者の息と接触しやすく、冷感効果が高まる。また、着用者に近い位置にて吸熱反応が起こるため、マスク1の表面温度が下がりやすく、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、フィルタ部材11に吸熱剤30が付着していることによりフィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。
【0101】
フィルタ部材11と肌側不織布12に配される吸熱剤30の坪量の比較は、周知の方法で行うことができる。例えば、コールドスプレー等を用いてマスク1からフィルタ部材11と肌側不織布12を分離し、それぞれに竹炭やココアパウダーなどの有色の細かい粒子を撒いた後に、粒子を払う方法がある。吸熱剤30が配置された部分には粒子が多く付着する。そのため、フィルタ部材11と肌側不織布12に付着した粒子の量を比較することで、吸熱剤30の坪量を比較することができる。
【0102】
その他、フィルタ部材11と肌側不織布12それぞれに蒸気を当てて、それぞれの表面温度を比較してもよい。具体的には、フィルタ部材11及び肌側不織布12をそれぞれ所定のサイズに切り出してサンプルを作成し、ビーカーのような2つの容器に水を入れ、各サンプルで容器に蓋をする。サンプル上に温度センサーを取り付け、その上からラップフィルム等で覆った2つの容器を、40度に温めたウォーターバスに入れ、各サンプルの温度を比較する。吸熱剤30の坪量が多いサンプルの方が、時間経過に伴って、吸熱剤30の吸熱反応によりサンプルの温度が下がる。
【0103】
また、上記の方法を利用して、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認してもよい。例えば、粒子を撒く方法においては、肌側不織布12の肌側面に粒子が付着していれば、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認できる。また、蒸気を当てて温度を測定する方法においては、肌側不織布12と同じ構成の不織布であり、吸熱剤30が配されていない不織布を準備する。その不織布の温度よりも、肌側不織布12の肌側面の温度が低い場合には、肌側不織布12の肌側面に吸熱剤30が塗布されていることを確認できる。
【0104】
また、マスク本体部10において、フィルタ部材11の外周端と、肌側不織布12の外周端とが一致していることが好ましい。本実施形態のマスク1では、
図1に示すように、フィルタ部材11の左端11cと肌側不織布12の左端12cとが一致し、フィルタ部材11の右端11dと肌側不織布12の右端12dとが一致している。また、
図2に示すように、フィルタ部材11の上端11aと肌側不織布12の上端12aとが一致し、フィルタ部材11の下端11bと肌側不織布12の下端12bとが一致している。なお、上下の折り返し部101のシートの厚み分の位置ずれは含まないとする。また、折り返し部101における上下方向中央側の端101a,101bでは、フィルタ部材11の端と肌側不織布12の端とがずれていてもよい。
【0105】
上記によれば、マスク本体部10の平面の広範囲に亘り、肌側不織布12及び吸熱剤30を配することができる。よって、マスク1内の空間の広範囲の温度を、吸熱剤30により低下させることができる。また、マスク本体部10の平面の広い範囲に亘り、フィルタ部材11を配することができ、捕集効果が得られる。ただし上記に限定されず、フィルタ部材11の外周端と肌側不織布12の外周端とがずれていてもよい。
【0106】
また、第1実施形態のマスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11及び肌側不織布12がプリーツ状に折り畳まれている。マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられる。しかし、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12がプリーツ状に折り畳まれた状態で溶着部14により接合されている。また、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11及び肌側不織布12の上下端部が折り返された状態で溶着部14により接合されている。
【0107】
つまり、マスク本体部10の左右方向の両側部では、マスク1の着用時にも、
図2に示す断面の状態が維持される。具体的には、上下端部では、折り返し部101によって、肌側不織布12が厚さ方向に2層に重なっている。上下方向の中央部は、プリーツによって、肌側不織布12が厚さ方向に3層に重なっている部分を有する。
【0108】
なお、マスク1のように、上側及び下側の折返し部101を有する場合におけるマスク本体部10の「上端部」は、上側の折返し部101であり、「下端部」は、下側の折返し部101であり、「中央部」は、折返し部101を有さない部分であって、上下方向における上端部と下端部との間の部分である。マスク1のような折返し部101を有さないマスクの場合は、マスク本体部10の上下方向の上半分の長さを4等分したときの、最も上側の部分(上半分の上側の1/4の長さの部分)が「上端部」であり、マスク本体部10の上下方向の下半分の長さを4等分したときの、最も下側の部分(下半分の下側の1/4の長さの部分)が「下端部」であり、上下方向における上端部と下端部との間が「中央部」である。また、マスク本体部10の左右方向について、マスク本体部10の左右方向の一方側(左側)の長さを4等分したときの、最も一方側の部分(左半分の左側の1/4の長さの部分)が一方側の「側部」であり、マスク本体部10の左右方向の他方側(右側)の長さを4等分したときの、最も他方側の部分(右半分の右側の1/4の長さの部分)が他方側の「側部」であり、両側部の間の部分を「中央部」という。
【0109】
そのため、肌側不織布12に一定に吸熱剤30を配することで、肌側不織布12が2層に重なる上下端部に比べて、肌側不織布12が3層に重なる上下方向の中央部において、吸熱剤30の坪量(g/m2)を高くすることができる。
【0110】
マスク本体部10の左右方向の両側部のうちの上下端部には、耳掛け部20が接合されている。そのため、上下端部は、上下方向の中央部に比べて、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌に密着しやすく、着用者は吸熱剤30の冷感効果を実感しやすい。一方、上下方向の中央部は、着用者の鼻孔や口元に近いため、蒸れ易いが、吸熱剤30が着用者の湿った息と接触しやすい。そこで、吸熱剤30の坪量を上記のようにするとよい。そうすることで、マスク本体部10の左右方向の両側部において、上下方向の中央部は、着用者の肌への密着度が低いが、着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触するため、冷感効果が高まり、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、マスク本体部10の左右方向の両側部のうちの上下方向の中央部は、上下端部に比べると密着度は低いが、着用者の頬に接触する。そのため、その部分において吸熱剤30の坪量を高くすることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0111】
また、マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では肌側不織布12が3層に重なる。そのため、マスク本体部10の左右方向の中央部においても、上下端部に比べて、上下方向の中央部の方が、吸熱剤30の坪量(g/m2)が高くなる。よって、着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触するため、冷感効果が高まる。
【0112】
換言すると、プリーツ状の折り目Fを有するマスク1では、マスク本体部10の上下方向の中央部において、肌側不織布12を厚さ方向に3層に積層できる。そのため、肌側不織布12に一定に吸熱剤30を配していても、マスク本体部10の上下端部に比べて、上下方向の中央部の吸熱剤30の坪量を高くすることができる。その結果、マスク1の上下方向の中央部の冷感効果を高めることができる。
【0113】
また、
図2に示すように、マスク本体部10の上端部及び下端部は、フィルタ部材11及び肌側不織布12が非肌面側に折り返された折返し部101を有することが好ましい。そして、厚さ方向に折返し部101と重なる非折返し部102の肌側面102A、すなわち、肌側不織布12の肌側面に、吸熱剤30が配されていることが好ましい。なお、折返し部101は、肌側不織布12のみが非肌面側に折り返されたものであってもよい。
【0114】
マスク本体部10の上下端部が非肌面側に折り返されることで、マスク本体部10の上下端部においてフィルタ部材11が肌側不織布12を肌側から覆ってしまうことを防止できる。つまり、マスク本体部10の上下端部において、吸熱剤30が配された肌側不織布12を肌側に露出させることができる。よって、着用者に近い位置にて吸熱剤30の吸熱反応が起こるため、着用者は冷感を実感しやすくなる。特に、マスク本体部10の上下端部は、上下方向の中央部に比べて着用者の肌に密着しやすいので、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
【0115】
また、上記のように、マスク本体部10の上端部が非肌面側に折り返される場合、上端部の折返し部101の非肌側面(外側面)101A、すなわち肌側不織布12の非肌側面にも吸熱剤30が配されていることが好ましい。
【0116】
着用者の吐いた息は温かいため、マスク本体部10の外に排出された着用者の息は上昇しやすい。そのため、マスク本体部10の外に排出された息が、マスク本体部10の上端部の非肌側面101Aに配された吸熱剤30と接触ができる。よって、マスク本体部10の上端部付近の温度を下げることができ、マスク本体部10の肌面側と非肌面側の両面に吸熱剤70を配することで、着用者の肌に接触する吸熱剤70の量を増やすことができるため、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、マスク本体部10の外に排出された息の温度も下がるため、着用者の眼鏡が曇り難くなる。
【0117】
ただし、上記の構成に限定されない。例えば、マスク本体部10の上端部及び下端部が肌面側に折り返されていてもよいし、マスク本体部10の上端部及び下端部の一方のみが非肌面側に折り返されていてもよい。また、上側の折り返し部101の非肌側面に吸熱剤30が配されていなくてもよい。
【0118】
また、第1実施形態のマスク1の耳掛け部20(ゴム紐)は、マスク本体部10の非肌側面に、接合部16によって接合されている。この場合、耳掛け部20が肌側不織布12を肌側から覆ってしまうことを防止できる。よって、吸熱剤30が配された肌側不織布12を着用者に近い位置に配することができる(肌側に露出させることができる)。よって、耳掛け部20の接合部16においても、着用者に近い位置にて吸熱剤30の吸熱反応が起こるため、着用者は冷感を実感しやすくなる。特に、耳掛け部20の接合部16に対応する肌側不織布12の部分は、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌に密着しやすいので、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
【0119】
==第2実施形態==
図4Aは、第2実施形態の使い捨てマスク2(以下「マスク」とも呼ぶ)の折り畳み状態を示す平面図であり、
図4Bは、展開状態のマスク2の正面図である。
図5は、着用状態のマスク2の正面図である。
図6は、着用状態のマスク2を上から見た概略図である。以下、第2実施形態のマスク2のうち第1実施形態のマスク1と異なる部分について主に説明する。
【0120】
第2実施形態のマスク2は、マスク本体部40と、耳掛け部50を有する。マスク本体部40は、マスク2の展開状態及びマスク2の着用状態において、上下方向、及び、左右方向を有し、着用者の対向する側を肌側(肌面側)とし、その反対側を非肌側(非肌面側)とする。また、マスク本体部40は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部43,44と、一対のシート部43,44を互いに接合する接合部45と、形状保持部材46と、一対のシート部43,44に耳掛け部50を接合する接合部47を有する。接合部45,47は、溶着、圧搾、接着剤等の周知の方法で接合できる。
【0121】
マスク本体部40の左右方向について、マスク本体部40の左右方向の長さのうち、最も短い部分について、一方側(左側)の長さを4等分したときの、最も一方側の部分(左半分の左側の1/4の長さの部分)が一方側の「端部」であり、マスク本体部40の左右方向の他方側(右側)の長さを4等分したときの、最も他方側の部分(右半分の右側の1/4の長さの部分)が他方側の「端部」であり、左右方向における両側端部の間を「中央部」という。
【0122】
図4Aに示すように、一対のシート部43,44は、互いの肌側面が対向するように重ね合わされた状態で、一対のシート部43,44の端縁43a,44aに沿った接合部45により接合されている。その端縁43a,44aは外側に向かって凸な曲線形状である。そのため、折り畳み状態(平面状)のマスク2を、一対のシート部43,44が離間するように展開すると(
図4B)、マスク本体部40は、その肌側面が凹んだ立体形状(カップ形状)となる。
【0123】
また、第2実施形態のマスク2は、第1実施形態のマスク1と同様に、使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。そして、マスク本体部40(一対のシート部43,44)は、
図6に示すように、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ部材41と、フィルタ部材41の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤30が配された肌側不織布(不織布)42を有する。
【0124】
そのため、着用者の湿った息が肌側不織布42の吸熱剤30に接触すると、吸熱剤30が吸熱反応を起こし、マスク2の表面温度が下がるため、マスク2内の蒸れを改善できる。特に、第2実施形態のマスク2は着用時に立体形状となり、マスク2と着用者との間に空間が生じやすい。そのため、吸熱剤30によりマスク2の表面温度を下げることで、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0125】
また、一対のシート部材43,44は、それぞれの上端部であって、フィルタ部材41と肌側不織布42の間に形状保持部材46を有する。そのため、マスク2内の空間の密閉度が高まり、冷感効果やその持続性が高まる。ただし、マスク2は形状保持部材46を有していなくてもよい。
【0126】
また、一対のシート部材43,44は、平面上に重ね合わされた状態(
図4A)で接合部45にて接合されている。そのため、
図6に示すように、マスク2の着用状態において、接合部45からシート部材43,44の端縁43a,44aまでの領域(すなわちシート部材43,44のつなぎ目部分)において、肌側不織布42が2層に重ねられた状態が維持される。そのため、肌側不織布42に一定に吸熱剤30を配することで、接合部45からシート部材43,44の端縁43a,44aまでの領域を、それ以外の領域に比べて、吸熱剤30の坪量が高い高坪量部48にすることができる。なお、吸熱剤30の坪量の比較方法は前述の比較方法と同様に行うことができる。
【0127】
このように、マスク1の着用状態(
図5)において、マスク本体部40の左右方向の中央部401が、左右方向の両端部402に比べて吸熱剤30の坪量が高い高坪量部48を有することが好ましい。そうすることで、着用者の息により蒸れやすいマスク2の左右方向の中央部(鼻孔や口元部分)において、より多くの吸熱剤30が着用者の息と接触でき、冷感効果が高まる。よって、マスク2の表面温度がより低下して、マスク2内の蒸れを改善でき、着用者が冷感を実感しやすくなる。
【0128】
さらに、肌側不織布12が2層に重ねられている吸熱剤30の高坪量部48(すなわちシート部材43,44のつなぎ目部分)は、マスク本体部40の上端40aから下端40bまで上下方向に連続して配されているとよい。
【0129】
着用時に立体形状(カップ状)となる第2実施形態のマスク2では、マスク本体部40の左右方向の中央部において、着用者との間に空間が生じやすい。そのため、マスク本体部40の左右方向の中央部において、吸熱剤30の高坪量部48を上下方向に長く設けるとよい。そうすることで、マスク2内の空間に溜まった着用者の息がより多くの吸熱剤30と接触でき、冷感効果が高まる。
【0130】
また、第2実施形態のマスク2の耳掛け部50は、耳を掛けるための開口部51が形成された伸縮性シートである。耳掛け部50は、
図6に示すように、接合部47によって、マスク本体部40の肌側面に接合されている。この場合、吸熱剤30が配された肌側不織布12の肌側面が耳掛け部50に覆われてしまう。ただし、耳掛け部50が接合されている肌側不織布12の部分は、耳掛け部50の伸長力によって着用者の肌への密着度が高い。そのため、耳掛け部50で吸熱剤30が覆われていても、着用者は冷感を実感できる。また、着用者の肌への密着度が高い部分において、吸熱剤30が着用者の肌に直接に触れないことで、着用者の肌への刺激も軽減できる。
【0131】
==第3実施形態==
図7は、第3実施形態の使い捨てマスク3の非肌側から見た平面図である。
図8は、マスク3の肌側から見た平面図である。
図9は、
図7のI-I線におけるマスク本体部10の断面図である。なお、
図9は、溶着部14を省略して示している。各図は、使用前のマスク3を示している。第3実施形態の構成のいくつかは、第1実施形態にも適用可能である。
【0132】
(マスク3の基本構成)
マスク3について、第1実施形態のマスク1の構成と共通する部分は、符号等を同じとし、マスク3の基本構成の詳細な説明は省略する。マスク1と同様に、マスク3は、マスク本体部10と耳掛け部20を有する。マスク本体部10は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有する。厚さ方向において、着用者の顔面と対向する内側を肌側又は肌面側とも呼び、その反対側である外側を非肌側又は非肌面側とも呼ぶ。
【0133】
使用前のマスク本体部10は、厚さ方向から見た平面視(
図7、
図8)において、左右方向に長い矩形形状を成している。マスク本体部10は、フィルタ部材11と、フィルタ部材11の肌面側に設けられた肌側不織布(不織布)12と、フィルタ部材11と肌側不織布12との間に設けられた非肌側不織布(第2不織布)18と、を有する。平面視において、フィルタ部材11と肌側不織布12と非肌側不織布18は、略同じ大きさで、略同じ形状を有している。第1実施形態と同様に、肌側不織布12は、吸熱剤30が配された不織布である。
【0134】
フィルタ部材11としては、第1実施形態と同様に、ポリオレフィン系繊維であるポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたメルトブロー不織布と、ポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたスパンボンド不織布とが、一体状に形成された、継ぎ目等のない1枚の不織布シートを例示できる。ただし、上記に限定されず、フィルタ部材11はエレクトレット処理されていないものであってもよい。例えば、多数の微細な間隙(ナノレベルの空隙や孔)を備え、間隙や孔によってウィルス飛沫等を捕集する所謂ナノフィルタをフィルタ部材11としてもよい。
【0135】
非肌側不織布18は、冷感剤80が配された不織布である。非肌側不織布18は、冷感剤80を配することが可能な不織布であればよく、スパンボンド不織布に限らず、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布であってもよい。好ましくは、肌触りの良い不織布であるとよく、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布等を例示できる。
【0136】
マスク3は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11、肌側不織布12、及び非肌側不織布18が、左右方向に沿う折り目Fによってプリーツ状に折り畳まれて、襞が形成されたプリーツタイプである。
図9に示すマスク本体部10は、非肌側から視認可能な4つの折り目F1~F4と、肌側から視認可能な4つの折り目F5~F8とを有する。折り目F1、F2、F7、F8は上側に凸となる山折り部であり、折り目F3、F4、F5、F6は下側に凸となる谷折り部である。ただし、折り目Fの数や向きは
図9に例示する構成に限定されない。
【0137】
使用前のマスク3は、
図7等に示すように、プリーツ状の折り畳み形状が維持されており、マスク本体部10はほぼ平坦な状態である。プリーツ状の折り目F1~F8によって、マスク本体部10は上下方向に広がることが可能となり、また、非肌側にΩ形状に隆起可能となる。よって、第1実施形態の
図4に示すおむつ1の着用状態と同様に、マスク3の着用者は、鼻から顎までの長さに応じてマスク本体部10を上下方向に広げ、マスク本体部10で口元と鼻孔を覆うことができる。
【0138】
また、マスク本体部10の上端部100X及び下端部100Yは、それぞれ肌側不織布12及び非肌側不織布18が非肌面側に折り返された折返し部101を有する。なお、以下の説明では、厚さ方向に折返し部101と重なるマスク本体部10の部位を非折返し部102と呼ぶ。折返し部101によって、マスク本体部10の上下端部の強度が高まる。また、肌側不織布12、非肌側不織布18及びフィルタ部材11の開きを抑制できる。
【0139】
マスク本体部10は、重なり合うシート同士を接合一体化する溶着部14、例えば熱溶着や超音波溶着等による溶着部14を有する。
図7等に示すように、マスク本体部10の横方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18を接合する複数の溶着部14が上下方向に沿って設けられている。また、マスク本体部10の上下端部及び上下方向の中央部では、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18を接合する複数の溶着部14が左右方向に沿って設けられている。ただし、溶着部14のパターンは
図7に例示するものに限定されない。また、重なり合う部材同士が接着剤等(例えばホットメルト接着剤)で接合されていてもよい。
【0140】
また、
図9に示すように、マスク本体部10の上端部では、折返し部101と非折返し部102において、折り返された非肌側不織布18同士の間に、形状保持部材15が配されている。
【0141】
耳掛け部20は、着用時において、マスク本体部10の左右方向の両側部からそれぞれ延出したリング状の部材である。耳掛け部20は、伸縮性を有する部材であることが好ましく、例えば、ゴム紐、伸縮性不織布、伸縮性フィルム等を例示できる。具体的には、
図8に示すように、マスク3の一対の耳掛け部20は、伸縮性不織布で形成されており、それぞれ左右方向及び上下方向における中央部に、耳に掛けるための開口部21が設けられている。また、使用前のマスク3を肌面側から見たときに、マスク本体部10の平面形状に収まるように、左右方向の両側にそれぞれ耳掛け部20が設けられている。耳掛け部20は、左右方向における両端部に位置する接合部16でマスク本体部10の肌側面に接合されている。第1実施形態のマスク1の耳掛け部20は、ゴム紐をマスク本体部10の非肌側面に接合部16で接合したが、第3実施形態のマスク3のように、耳掛け部20を、伸縮不織布を肌側面に接合してもよい。接合部16は、上下方向に沿っており、伸縮不織布(20)をマスク本体部10に接合している。使用前において、一対の耳掛け部20は、マスク本体部10の肌面側の左右方向の中央部における連結部22で連続している。着用者は、着用の際に、連結部22を破断させることで、各耳掛け部20を着用者の両耳に掛けてマスク3を着用することができる。なお、接合部16の接合としては、溶着や接着剤による接合を例示できる。
【0142】
(吸熱剤30及び冷感剤80を有するマスク3について)
本実施形態のマスク3は、吸熱剤30を備える肌側不織布12と、冷感剤80を備える非肌側不織布18とが、厚さ方向に隣接しており、非肌側不織布18が、肌側不織布12の非肌面側と対向するように設けられている。吸熱剤30は、第1実施例と同様に、水と反応して吸熱反応を起こす剤であり、冷感剤80は、着用者の肌に触れると着用者に冷感や清涼感を与える剤である。
【0143】
肌側不織布12は、肌側の不織布に吸熱剤30が配された層であり、非肌側不織布18は、非肌側の不織布に冷感剤80が配された層である。肌側不織布12では、着用者の息に含まれる水分を保持させやすく、肌側不織布12の吸熱剤30と水分とを接触させやすくして、接触時間も長くするために、肌側不織布12が、親水性繊維を含むことが好ましく、肌側不織布12が親水性繊維を50%以上含むことがより好ましい。これによって、親水性の不織布に配された吸熱剤30は、吸熱反応を起こしやすくなる。
【0144】
親水性繊維としては、例えば、レーヨン等の再生セルロース繊維、コットンや粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロール繊維等が挙げられる。また、疎水性繊維(例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)に、親水界面活性剤の塗布等の親水性処理を施して、親水性に変性させた繊維であってもよい。
【0145】
マスク3は、吸熱剤30を備えることで、着用者の湿った息が吸熱剤30に接触し、吸熱反応により、マスク3の表面温度が低下させて、マスク3内の蒸れを改善できる。
【0146】
しかし、着用者の息の水分と吸熱剤30に接触し、吸熱剤30が吸熱反応を起こし、マスク3の表面温度を低下させるまでに所定の時間を要する場合がある。そのため、着用者がマスク3を着用してから、吸熱反応でマスク3の表面温度を下げるまでの間、着用者がマスク3の着用による蒸れを感じてしまう恐れがある。
【0147】
これに対し、マスク3は、吸熱剤30を備えた肌側不織布12だけでなく、冷感剤80を備えた非肌側不織布18も備える。非肌側不織布18の冷感剤80は、着用者の肌に触れることで着用者に冷感を与えることができるため、マスク3を着用した際に、直接、マスク3の外周端部が着用者の肌に当接することで冷感剤80が着用者の肌に触れたり、冷感剤80が揮発性物質の場合には、揮発した冷感剤80と着用者の肌とが接触することで、着用者は、冷感剤80による冷感を実感することができる。
図9に示すように、マスク3は、揮発した冷感剤80が、非肌側不織布18より肌面側に設けられている肌側不織布12を通過して、着用者の肌に到達することで、着用者は、冷感剤80の効果を感じることができる。
【0148】
つまり、着用者は、マスク3を着用したときには、まず、非肌側不織布18の冷感剤80による冷感や清涼感を感じることができる。その後、吸熱剤30の吸熱反応によるマスク3の表面温度の低下を実感することができる。そのため、着用者は、マスク3を着用したときから冷感を実感することができ、マスク3の着用による蒸れを改善し、息苦しさを軽減でき、熱中症の発生を抑制も可能となる。また、着用者は、マスク3を着用した直後は、冷感剤80による冷感効果を実感することができ、所定の時間経過後には、吸熱剤30による冷感効果を実感することができるため、吸熱剤30のみを備えたマスク又は冷感剤80のみを備えたマスクよりも、マスク3の着用直後から長時間、冷感効果を得ることができる。
【0149】
冷感剤80は、それ自体が吸熱せずに着用者の皮膚の冷感知覚受容器(温度感受性TRPチャネル)を刺激して、着用者に冷感を知覚させる冷感成分を含むものが好ましい。必要に応じて、冷感成分を溶解ないし分散させる溶媒成分を含んでいてもよい。冷感剤80(冷感成分)としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール等);メントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル等);サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油等が挙げられる。このような冷感知覚受容器を刺激する冷感剤80を用いることで、着用者に冷感を感じさせやすくなる。なお、冷感剤80としては、吸熱剤30の吸熱反応によるマスク3の表面温度を低下させるまでの時間よりも早く着用者に冷感剤80による冷感を知覚させることができる物質を用いることが好ましい。
【0150】
また、フィルタ部材11として、不織布が誘電分極されたシートを用いる場合、電荷により捕集機能を有するフィルタ部材11が、アルコールの付着により捕集機能が軽減することを防ぐために、吸熱剤30及び冷感剤80は、アルコールを含まないことが好ましい。例えば、吸熱剤30及び冷感剤80に含まれる溶媒が、水系溶媒であることが好ましい。また、例えば、アルコール系溶媒に吸熱成分を溶解,分散した溶液を肌側不織布12、非肌側不織布18に塗布する場合、マスク3の製造ラインにおいて、アルコール系溶媒が気化した後に、肌側不織布12及び非肌側不織布18をフィルタ部材11に合流させるとよい。
【0151】
また、吸熱剤30は不揮発性の物質であり、冷感剤80が揮発性の物質であることが好ましい。揮発性の冷感剤80によって、マスク3を使用した直後から揮発した冷感剤80が着用者の肌に冷感や爽快感を付与しやすくなる。一方で、不揮発性の吸熱剤30によって、マスク3の使用前に吸熱剤30が揮発しないため、吸熱剤30の効果が低減してしまう恐れを軽減させることができる。また、冷感剤80が冷感効果を発揮する時間と、吸熱剤30が冷感効果を発揮する時間とをずらすことができるため、着用者は、マスク3の着用直後から長時間に亘って冷感効果を実感することができる。なお、揮発性の冷感剤80とは、一般生活環境下で気体となり、沸点が100℃未満である物質とする。
【0152】
冷感剤80は、液体状であっても、固体状(ジェル状、粉体上等も含む)であってもよい。マスク3の非肌側不織布18には、液体状の冷感剤80が内包されたマイクロカプセルが配されている。このマイクロカプセルは、外部からの圧力(衝撃、摩擦)等の物理的な刺激により膜材が崩壊(破損)して、内部の冷感剤80が露出したり、放出したりする。マスク3の冷感剤80を内包するマイクロカプセルの膜材は、ウレタン樹脂である。閉じられたマイクロカプセルの膜材に冷感剤80が内包された状態のマイクロカプセルを「冷感剤80」ともいう。なお、冷感剤80は、必ずしもマイクロカプセルに内包しなくてもよく、液体状又は固体状の冷感剤80を直接、非肌側不織布18としての不織布に塗布又は散布してもよい。
【0153】
また、第1実施形態と同様に、マスク3の肌側不織布12には、液体状の吸熱剤30が内包されたマイクロカプセルが配されている。このマイクロカプセルは、外部からの圧力(衝撃、摩擦)等の物理的な刺激により膜材が崩壊(破損)して、内部の吸熱剤30が露出したり、放出したりする。マスク3の吸熱剤30を内包するマイクロカプセルの膜材は、ウレタン樹脂である。閉じられたマイクロカプセルの膜材に吸熱剤30が内包された状態のマイクロカプセルを「吸熱剤30」ともいう。なお、吸熱剤30は、必ずしもマイクロカプセルに内包しなくてもよく、液体状又は固体状の吸熱剤30を直接、肌側不織布12としての不織布に塗布又は散布してもよい。
【0154】
マスク3に用いる吸熱剤30及び冷感剤80は、それぞれウレタン樹脂を膜材とするマイクロカプセルに内包したが、これに限られない。外部からの圧力(物理的な刺激)によって崩壊(衝撃、摩擦)する所定の強度を有するものであればよい。例えば、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂などであってもよい。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、マイクロカプセルとしては、例えば、熱、光、液体等の物理的又は化学的な刺激により膜材を破損させて、吸熱剤30及び冷感剤80を放出させるものであってもよい。吸熱剤30及び冷感剤80をマイクロカプセルに内包することで、肌側不織布12及び非肌側不織布18の不織布の繊維間に留めやすくなる。
【0155】
本実施形態のように、吸熱剤30と冷感剤80が、それぞれマイクロカプセルに内包されていることで、マスク3の着用前に、直接塗布された液体状又は固体状の吸熱剤30と冷感剤80がマスク3から滑落したり、冷感剤80のように揮発性の物質が揮発したりして、失われてしまう恐れを軽減させることができる。着用者は、マスク3を着用する際に、まず、マスク本体部10の全域に亘って軽く叩くことが好ましい。叩くことで、所定の物理的な刺激(圧力)が加えられて、肌側不織布12と非肌側不織布18のそれぞれのマイクロカプセルが破損(崩壊)して、内包されている吸熱剤30と冷感剤80がそれぞれ外部に露出される。吸熱剤30と冷感剤80が露出した状態のマスク3を着用した着用者は、吸熱剤30と冷感剤80の効果を得やすくなる。また、吸熱剤30と冷感剤80が、それぞれ同じ素材のマイクロカプセルの膜材に内包されていることで、着用者が使用前にマスク3を叩くという1つの動作で、一度に吸熱剤30と冷感剤80とを露出させることができ、その効果を発揮しやすくなる。
【0156】
また、非肌側不織布18への冷感剤80の配布は、肌側不織布12への吸熱剤30の配布と同様の方法で行うことができる。例えば、冷感剤80は、非肌側不織布18を構成する繊維の少なくとも一部に練り込まれているとよい。つまり、非肌側不織布18を形成する前段階で冷感剤80が配されるように、例えば、非肌側不織布18を形成する前の繊維ウェブを冷感剤80(溶液)に含浸させたり、樹脂に冷感剤80を混ぜてから繊維を形成したりするとよい。また、冷感剤80が混ざったバインダーを繊維ウェブに塗布してもよい。そうすることで、非肌側不織布18から冷感剤80が脱落し難く、徐々に冷感剤80の機能が発揮され、冷感剤80による冷感効果の持続性が高まる。
【0157】
上記に限定されず、非肌側不織布18を構成する繊維の表面に冷感剤80を配してもよい。例えば、噴霧法やローラーコート法、刷毛塗り法等の各種公知の塗布方法で、非肌側不織布18に冷感剤80を塗布したり、冷感剤80(溶液)に非肌側不織布18を浸漬したりしてもよい。
【0158】
吸熱剤30は、肌側不織布12の全域に配されていてもよいし、肌側不織布12の平面の一部に配されていてもよい。また、吸熱剤30は、肌側不織布12に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m2)で配されていてもよいし、肌側不織布12の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
【0159】
冷感剤80は、非肌側不織布18の全域に配されていてもよいし、非肌側不織布18の平面の一部に配されていてもよい。また、冷感剤80は、非肌側不織布18に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m2)で配されていてもよいし、肌側不織布12の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
【0160】
また、吸熱剤30が配された肌側不織布12が、マスク3における最も肌側の面を形成していることが好ましい。具体的には、
図3に示すマスク3のマスク本体部10のように、最も肌側の面に肌側不織布12が配置され、最も非肌側の面にフィルタ部材11が配置され、肌側不織布12とフィルタ部材11との間に、非肌側不織布18が設けられていることが好ましい。
【0161】
上述のとおり、吸熱剤30は、着用者の湿った息との接触によって吸熱反応が起き、マスクの表面温度を下げる。そのため、吸熱剤30が配された肌側不織布12をマスク本体部10の最も肌側に設けることで、吸熱剤30は着用者の息と接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者の肌に近い位置で吸熱反応が起こすことができるため、マスク3の表面温度が下がると、着用者は冷感を実感しやすくなる。
【0162】
また、非肌側不織布18が、フィルタ部材11と肌側不織布12との間に設けられていることで、非肌側不織布18がフィルタ部材11と肌側不織布12で挟まれた構成となる。そのため、冷感剤80がマイクロカプセルに内包された状態で、非肌側不織布18に配されている場合でも、マイクロカプセルが非肌側不織布18から脱落しづらくなり、冷感剤80の効果が低減する恐れを軽減させることができる。また、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されておらず、冷感剤80そのものが液体で非肌側不織布18に塗布されている場合であっても、非肌側不織布18の両面をフィルタ部材11と肌側不織布12で覆うことで、冷感剤80の揮発を低減させて、冷感剤80の効果が低減する恐れを軽減させることができる。
【0163】
さらに、フィルタ部材11の非肌側面が、マスク本体部10(マスク3)の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、肌側不織布12の肌側面が、マスク本体部10(マスク3)の肌側面の少なくとも一部を形成していることが好ましい。そうすることで、フィルタ部材11を備えるようなマスク3であっても、マスク本体部10において厚さ方向に積層されるシートの数を少なくすることができ、マスク3内の空間を蒸れ難くすることができる。そして、マスク本体部10(マスク3)の肌側面の少なくとも一部を形成する部分に、吸熱剤30が配されていることがより好ましい。着用者の肌に近い位置に設けられた吸熱剤30による吸熱反応が、着用者の肌に近い位置で起こりやすくなるため、着用者は、吸熱反応による冷感を実感しやすくなる。
【0164】
ただし、マスク本体部10の構成は上記に限定されず、例えば、フィルタ部材11よりも非肌側や、肌側不織布12よりも肌側、フィルタ部材11と肌側不織布12の間に、別のシートが配されていてもよい。また、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18について、積層させる順番を異ならせてもよい。
【0165】
より好ましくは、吸熱剤30は、肌側不織布12の肌側面に塗布されているとよい。吸熱剤30を着用者の肌に近い位置に配することで、吸熱剤30は着用者の息とより接触しやすくなり、吸熱反応が促され、冷感効果が高まる。また、着用者の肌に近い位置にて吸熱反応が起こるため、着用者は、マスク3の表面温度が下がったことを実感しやすくなる。同様に、冷感剤80は、非肌側不織布18の肌側面に塗布されているとよい。冷感剤80を着用者の肌に近い側に配することで、冷感剤80が着用者の肌に触れやすくなり、着用者は、冷感剤80による冷感効果を実感しやすくなる。ただし、上記に限定されず、肌側不織布12の非肌側面又は両面に吸熱剤30が塗布されていてもよく、非肌側不織布18の非肌側面又は両面に冷感剤80が塗布されていてもよい。
【0166】
また、肌側不織布12において、一方側の面より他方側の面の方が平滑(表面の粗さが低い)である場合に、一方側の面を非肌側に、他方側の面を肌側に配置し、且つ、他方側の面を、マスク本体部10の肌側面の少なくとも一部を形成するように設けて、吸熱剤30を他方側の面(肌側不織布12の肌側の面で、且つ、マスク本体部10の肌側面の少なくとも一部を構成する部分)に設けることが、より好ましい。つまり、肌側不織布12のうち、肌側面の方が、非肌側面より平滑であり、より平滑な面を着用者の肌と当接可能な位置に配置し、その着用者の肌と当接可能な平滑な面に、吸熱剤30を配することが好ましい。一般的に、平滑度が高い面(他方側の面)は、平滑度が低い面(一方側の面)より着用者の肌との接触面積を広くすることができる。そのため、より平滑な肌側の面は、非肌側の面より着用者の肌との接触面積を広くすることができるため、マスク3は、肌側面に設けられた吸熱剤30と着用者の肌との接触面積とをより広くすることができ、着用者は、吸熱剤30による冷感を実感しやすくなる。
【0167】
不織布12の平滑を比較する指標としては、面の凸凹の高さ、KESの表面粗さの標準偏差(SMD)、平均摩擦係数の平均偏差(MMD)を例示できる。
【0168】
具体的には、電子顕微鏡によって不織布12の断面の凹凸の高さを測定できる。不織布12の他方側の面(肌側面)の凹凸の高さが、不織布12の一方側の面(非肌側面)の高さよりも低い場合には、不織布12の他方側の面(肌側面)は、不織布12の一方側の面(非肌側面)よりも平滑である。
【0169】
表面粗さの平均偏差(SMD)及び表面摩擦係数の平均偏差(MMD)の測定は、例えば、不織布12の表面の感触を表す特性値として一般的に知られている、カトーテック株式会社製のKESでの特性値(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄 発行 昭和55年7月10日)に基づいて測定できる。
【0170】
具体的には、表面特性の測定は、表面試験装置(カトーテック株式会社製KES-FB4-AUTO-A)を用いて、各サンプルにおいて1.0×1.0cmの範囲を試料とし、平滑な金属平面の試験台に配置して行う。表面粗さの測定は、その表面(又は裏面)上に、10gfの荷重を掛け、かつ、0.5mm径のピアノ線で巻かれた幅0.5cmの接触端子を試料に圧着させて行う。表面摩擦の測定は、表面粗さの測定に用いた接触端子と同じピアノ線を10本並べ重錘によって50fgの力で接触面を試料に圧着させて行う。表面粗さ及び表面摩擦の測定では、試料を0.1cm/secの一定速さで水平に2cm移動させ、試料には20gf/cmの一軸張力が与えられる。測定結果から、表面粗さの平均偏差(SMD)及び表面摩擦係数の平均偏差(MMD)を求める。
【0171】
肌側不織布12の通気抵抗値が、非肌側不織布18の通気抵抗値より高いことが好ましい(肌側不織布12の通気抵抗値>非肌側不織布18の通気抵抗値)。これによって、着用中における着用者の息(呼気)を、通気抵抗値の高い肌側不織布12内により多く保持しやすくなるため、吸熱剤30と着用者の息との吸熱反応をさせやすくなり、マスク3の表面温度を下げやすくなる。なお、肌側不織布12の通気抵抗値及び非肌側不織布18の通気抵抗値の測定は、それぞれ周知の方法で行うことができる。例えば、上述のフィルタ部材11の通気抵抗値の測定方法を用いることができる。
【0172】
さらに、フィルタ部材11の通気抵抗値が、肌側不織布12の通気抵抗値よりも高いことが好ましい。つまり、フィルタ部材11の通気抵抗値が、肌側不織布12の通気抵抗値よりも高く、肌側不織布12の通気抵抗値が、非肌側不織布18の通気抵抗値より高いことがより好ましい(フィルタ部材11の通気抵抗値>肌側不織布12の通気抵抗値>非肌側不織布18の通気抵抗値)。そうすることで、フィルタ部材11におけるウィルス飛沫や細菌飛沫や花粉等の微粒子の捕集効果を維持しつつ、肌側不織布12に適度に留めた着用者の息と吸熱剤30との吸熱反応を促しやすくなるため、吸熱効果及びその持続性を高めることができる。また、冷感剤80がフィルタ部材11を通して外部に流出(揮発)する恐れを軽減させることができるため、冷感効果及びその持続性を高めることができる。
【0173】
また、マスク3は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18がプリーツ状に折り畳まれている。マスク3の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられる。しかし、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18がプリーツ状に折り畳まれた状態で溶着部14により接合されていることになる。また、マスク本体部10の左右方向における全域に亘って、上端部100X及び下端部100Yにおいて、フィルタ部材11、肌側不織布12及び非肌側不織布18が折り返された状態で溶着部14により接合されている。
【0174】
つまり、マスク本体部10の左右方向の両側部では、マスク3の着用時にも、
図9に示す断面の状態が維持される。具体的には、マスク3の上下端部100X、100Yでは、折返し部101によって、肌側不織布12が厚さ方向に2層に重なっており、非肌側不織布18が厚さ方向に2層に重なっている。上下方向の中央部は、プリーツによって、肌側不織布12及び非肌側不織布18がそれぞれ厚さ方向に3層に重なっている部分を有する。
【0175】
なお、マスク3のように、上側及び下側の折返し部101を有する場合におけるマスク本体部10の「上端部100X」は、上側の折返し部101であり、「下端部100Y」は、下側の折返し部101であり、「中央部100Z」は、折返し部101を有さない部分であって、上下方向における上端部100Xと下端部100Yとの間の部分である。マスク3のような折返し部101を有さないマスクの場合は、マスク本体部10の上下方向の上半分の長さを4等分したときの、最も上側の部分(上半分の上側の1/4の長さの部分)が「上端部」であり、マスク本体部10の上下方向の下半分の長さを4等分したときの、最も下側の部分(下半分の下側の1/4の長さの部分)が「下端部」であり、上下方向における上端部と下端部との間が「中央部」である。また、マスク本体部10の左右方向について、マスク本体部10の左右方向の一方側(左側)の長さを4等分したときの、最も一方側の部分(左半分の左側の1/4の長さの部分)が一方側の「側部」であり、マスク本体部10の左右方向の他方側(右側)の長さを4等分したときの、最も他方側の部分(右半分の右側の1/4の長さの部分)が他方側の「側部」であり、両側部の間の部分を「中央部」という。
【0176】
また、このようなプリーツ状の折り目Fを有するマスク3において、マスク本体部10の形成時に、肌側不織布12の全域に一定に吸熱剤30が配された後に折り目Fが形成されることで、肌側不織布12のうち、肌側不織布12が3層に重なる上下方向の中央部100Zは、肌側不織布12が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、吸熱剤30の坪量(g/m
2)が高くなるため、中央部100Zは、上下端部100X、100Yより吸熱剤30の坪量が高い部分を有する。具体的には、
図9に示すように、使用前のマスク本体部10の肌側不織布12が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、吸熱剤30の坪量が高い部分となる。
【0177】
これによって、マスク本体部10全体の上下方向において、上下端部100X、100Yよりも中央部100Zの冷感効果を高めることができる。マスク3の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では肌側不織布12が3層に重なり、吸熱剤30の坪量が高い部分Hが維持される。また、着用時において、マスク本体部10の上下方向における中央部100Zは、着用者の鼻孔や口元に近いため、着用者の息とより多くの吸熱剤30とが接触しやすくなるため、吸熱剤30による冷感効果を感じやすい。そのため、その部分に配する吸熱剤30の坪量を高くすることで、着用者は、吸熱剤30による冷感効果をより得やすくなる。
【0178】
さらに、非肌側不織布18の全域に一定に冷感剤80を配し、プリーツ状の折り部Fを形成することで、非肌側不織布18のうち、非肌側不織布18が3層に重なる上下方向の中央部100Zは、非肌側不織布18が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、冷感剤80の坪量(g/m
2)が高い部分となるため、中央部100Zは、上下端部100X、100Yより冷感剤80の坪量が高い部分を有する。具体的には、
図9に示すように、使用前のマスク本体部10の非肌側不織布18が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、冷感剤80の坪量が高い部分となる。また、マスク3の着用時でも、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では非肌側不織布18が3層に重なり、冷感剤80の坪量が高い部分Hが維持される。
【0179】
吸熱剤30だけでなく、中央部100Zに、上下端部100X、100Yより高い冷感剤80の坪量を有する部分を設けることで、中央部100Zの冷感効果をより高めることができる。着用者は、鼻孔や口元に近い中央部100Zにおいて、冷感剤80の効果を感じやすくなり、マスク3の冷感効果を実感しやすくなる。
【0180】
また、着用者の鼻孔や口元に近い上下方向における中央部100Zにおいて、上下端部100X、100Yよりも多くの吸熱剤30が着用者の息と接触させて、吸熱反応を起こしやすくさせ、冷感効果が高めやすくするために、このようなプリーツ状の折り目Fを有するマスク3において、肌側不織布12の上下方向の中央部100Zが、上下端部100X、100Yより吸熱剤30の坪量が高い部分を有することが好ましい。例えば、肌側不織布12のうち、中央部100Zに吸熱剤30を配し、上下端部100X、100Yには、吸熱剤30を配さない構成であってもよい。これによって、肌側不織布12の中央部100Zは、上下端部100X、100Yよりも吸熱剤30の坪量が高くなる。さらに、複数の折り目Fによって、肌側不織布12が3層に重なる部分は、肌側不織布12が1層の部分又は肌側不織布12が2層の部分よりも吸熱剤30の坪量が高い部分となる。
【0181】
上述のとおり、プリーツ状の折り目Fを有するマスク3の左右方向におけるマスク本体部10の両側部は、マスク3の着用時にも、溶着部14によって、マスク3の上下端部100X、100Yは、折返し部101によって、肌側不織布12が厚さ方向に2層に重なり、上下方向の中央部100Zは、プリーツによって、肌側不織布12が厚さ方向に3層に重なる部分を有する(
図9)。そのため、吸熱剤30が肌側不織布12の全域に一定に配し、折り目Fを形成すると、マスク本体部10の両側部は、肌側不織布12が2層に重なる上下端部100X、100Yより、肌側不織布12が3層に重なる上下方向の中央部100Zの吸熱剤30の坪量(g/m
2)を高い部分となる(
図9)。
【0182】
着用中のマスク本体部10のうち左右方向における両側部は、着用者の頬と接触、又は近接する部分である。その着用者の頬と接触する部分、又は近接する部分において、着用者の鼻孔や口元に近い中央部100Zの吸熱剤30の坪量を上下端部100X、100Yの吸熱剤30の坪量より高くすることで、着用者は、頬の着用者の鼻孔や口元に近い中央部100Zでマスクの冷感を実感しやすくなる。特に、マスク本体部10の左右方向の両側部には、耳掛け部20が接合されている。そのため、マスク本体部10の左右方向の両側部は、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌(頬)に密着しやすく、着用者は吸熱剤30の冷感効果を実感しやすい。
【0183】
同様に、非肌側不織布18の全域に一定に冷感剤80を配し、折り部Fを形成すると、左右方向におけるマスク本体部10の両側部では、非肌側不織布18が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、非肌側不織布18が3層に重なる上下方向の中央部100Zにおいて、冷感剤80の坪量(g/m
2)を高くなる。つまり、使用前のマスク本体部10の非肌側不織布18が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、冷感剤80の坪量が高い部分となる(
図9)。
【0184】
このように、左右方向におけるマスク本体部10の両側部において、吸熱剤30だけでなく、中央部100Zが、上下端部100X、100Yに配された吸熱剤30の坪量より高い部分を有することで、着用者の頬と接触する部分、又は近接する部分の、鼻孔や口元に近い中央部100Zにおいて、吸熱剤30だけでなく、冷感剤80による冷感効果も得やすくなり、マスク3の冷感効果を実感しやすくなる。
【0185】
さらに、マスク本体部10の左右方向の両端部は、着用者の頬に接触し、着用者の肌に近づく部分であり、着用者が吸熱剤30による冷感効果を得やすい部分であるため、マスク本体部10において、左右方向の両端部の吸熱剤30の坪量(g/m2)について、左右方向の中央部より高い部分を有することで、着用者は、吸熱剤30による冷感効果を得やすくなる。なお、左右方向の両側部に、左右方向の中央部より吸熱剤30の坪量が高い部分を設ける方法としては、例えば、左右方向の両端部により多くの吸熱剤30を配し、左右方向の中央部に、両端部より少ない吸熱剤30を配する(又は、吸熱剤30を配さない)構成であってもよい。また、マスク3について、フィルタ部材11と肌側不織布12と非肌側不織布18とを備え、更に、マスク本体部10の左右方向の両側部を、肌側及び非肌側から挟むように設けたサイドシート(不図示)を備え、このサイドシートに、更なる吸熱剤30を配してもよい。サイドシートとしては、通気性や肌触りが良好なシートであることが好ましく、例えば、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を例示できる。
【0186】
なお、肌側不織布12及び非肌側不織布18にそれぞれ吸熱剤30及び冷感剤80が配されていることの確認は周知の方法で行うことができる。まず、マスク3から測定対象の肌側不織布12及び非肌側不織布18を取り出し、所定の大きさのサンプルを形成するそのサンプルを、例えばガスクロマトグラフィー装置(Agilent社製の7890B又はそれと同等の装置)を用いて成分解析することで、肌側不織布12及び非肌側不織布18のサンプルがそれぞれ吸熱剤30及び冷感剤80を含むか否かを確認できる。吸熱剤30及び冷感剤80がマイクロカプセルに収容されている場合には、肌側不織布12及び非肌側不織布18のサンプルを電子顕微鏡で観察することで、マイクロカプセル(吸熱剤30及び冷感剤80)の有無を確認できる。
【0187】
また、非肌側不織布18における上下端部100X、100Yと中央部100Zとの冷感剤80の坪量(g/m2)の比較、及び肌側不織布12における上下端部100X、100Yと中央部100Zとの吸熱剤30の坪量(g/m2)の比較も、上記ガスクロマトグラフィー装置を用いて行うことができる。
(1)まず、マスク3から測定対象の肌側不織布12を取り出し、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zに分離する。分離した上端部100X、下端部100Y、中央部100Zを、さらに所定のサイズ(例えば上下方向×左右方向=20mm×40mm等)の細かいサンプルにカットする。
(2)次に、細かくカットしたサンプルを特定の溶媒に浸漬する等してマイクロカプセルを溶かして、サンプルから、吸熱剤30(冷感効果のある成分)と、その他の成分(溶媒等)の混合物を抽出する。
(3)サンプル毎に抽出した混合物を、ガスクロマトグラフィー装置を用いて成分解析する。そして、サンプル毎に、吸熱剤(冷感効果のある成分)のピーク値と、その他の成分(溶媒等)のピーク値とを取得し、その他の成分のピーク値に対する吸熱剤のピーク値の割合(吸熱剤のピーク値/その他の成分のピーク値)を算出する。その割合が、サンプルに設けられていた吸熱剤の量に相当するものとする。
(4)最後に、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zを構成するそれぞれの複数のサンプルの吸熱剤の割合(吸熱剤のピーク値/その他の成分のピーク値≒吸熱剤30の量)の平均値を算出することで、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zにおける吸熱剤30の坪量に相当するものとして、比較することができる。
また、吸熱剤80がマイクロカプセルに内包されている場合、又は内包されていない場合において、非肌側不織布18のうち、比較対象となる部分からそれぞれ所定の大きさのサンプルを切り出し、切り出したサンプルから吸熱剤30を取り除いて、吸熱剤30を取り除く前後の重さの差を算出し、その差を比較することで、各サンプルの吸熱剤30の坪量の差として比較することができる。例えば、吸熱剤30がマイクロカプセルに内包されている場合には、非肌側不織布18の比較対象となる部分からそれぞれ所定の大きさのサンプルを切り出し、各サンプルについて、乾燥状態で重さを測定した後、流体(水流や風流)でマイクロカプセルを落下させ、再度、乾燥状態とした状態の各サンプルの重さを測定し、マイクロカプセルを落下させる前と後の重さの差を算出し、その差を比較することで、各サンプルの吸熱剤30の坪量として比較することができる。
なお、非肌側不織布18における上下端部100X、100Y、中央部100Zの冷感剤80の坪量(g/m2)の比較も同様である。
【0188】
また、第1実施形態のマスク1の肌側不織布12に吸熱剤30が配されていることの確認、及び肌側不織布12における上下端部と中央部の吸熱剤30の坪量(g/m2)の比較も、同様の方法で行ってもよい。
【0189】
図9に示すように、折返し部101において、非肌側不織布18の上下方向の長さ18X(18Y)が、肌側不織布12の上下方向の長さ12X(12Y)より短いことが好ましい(18X<12X、18Y<12Y)。マスク3のように、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されている場合には、折返し部101において、非肌側不織布18を肌側不織布12が非肌面側から覆い、肌側不織布12が非肌側不織布18を厚さ方向の両面側から覆っているため、マスク3の使用前に、冷感剤80が内包されたマイクロカプセルが落下したり、破損したりしてしまう恐れを軽減させることができる。また、揮発性の冷感剤80がマイクロカプセルに内包されておらず、非肌側不織布18に液体状又は固体状で配されている場合には、肌側不織布12によって覆われていることで、非肌側不織布18の冷感剤80が揮発してしまう恐れを軽減させることができる。
【0190】
ただし、上記の構成に限定されない。例えば、マスク本体部10の上端部及び下端部が肌面側に折り返されていてもよいし、マスク本体部10の上端部及び下端部のいずれか一方のみが非肌面側に折り返されていてもよい。また、上側の折返し部101の非肌側面に吸熱剤30が配されていなくてもよい。
【0191】
また、本実施形態のマスク3では、肌側不織布12と非肌側不織布18の上端部及び下端部を非肌側に折り返して折返し部101を形成したが、これに限られない。肌側不織布12又は非肌側不織布18の少なくとも一方を非肌面側に折返してもよい。例えば、肌側不織布12のみ非肌面側に折り返し、折返し部101と厚さ方向に重なる非折返し部102の肌側面102A(肌側不織布12の肌側の面)に吸熱剤30を配し、非肌側不織布18を非肌面側に折り返さない構成であってもよい。さらに、肌側不織布12及び非肌側不織布18に加えて、フィルタ部材11も折返しても良い。また、折返し部101は、肌面側から非肌面側に向かって折り返された部分に限らず、非肌面側から肌面側に向かって折り返された部分であってもよい。肌側不織布12と非肌側不織布18のいずれも非肌面側に向かって、又は肌面側に向かって折り返さない構成であってもよい。同様に、第1実施形態のマスク1において、フィルタ部材11を非肌側に折り返さずに、肌側不織布12のみを非肌側に折り返して折返し部101を形成してもよい。肌側不織布12のみを折り返すことで、フィルタ部材11が直接、着用者の肌に触れることを防ぎつつ、マスク本体部10の上端部及び下端部が過度に硬くなってしまう恐れを軽減させることができる。
【0192】
図7等に示すように、マスク3は、形状保持部材15を有することが好ましい。形状保持部材15によって、マスク3と着用者(顔面)との間に隙間が生じ難く、マスク3内の空間の密閉度が高まる。そのため、吸熱剤30及び冷感剤80をマスク3の空間内に留めやすくなるため、吸熱剤30及び冷感剤80の冷感効果を高めることができ、また、着用者の息と吸熱剤30の接触時間や循環が増えて、冷感効果やその持続性を高めることができる。ただし上記に限らず、マスク3は形状保持部材15を有していなくてもよい。
【0193】
また、マスク本体部10において、フィルタ部材11の外周端と、肌側不織布12及び非肌側不織布18の外周端とが一致していることが好ましい。本実施形態のマスク3では、
図1等に示すように、フィルタ部材11の左端11cと肌側不織布12の左端12cと非肌側不織布18の左端18cとが一致し、フィルタ部材11の右端11dと肌側不織布12の右端12dと非肌側不織布18の右端18dとが一致している。また、
図3に示すように、フィルタ部材11の上端11aと肌側不織布12の上端12a、非肌側不織布18の上端18aとが一致し、フィルタ部材11の下端11bと肌側不織布12の下端12bと非肌側不織布の下端18bとが一致している。なお、上下の折返し部101のシートの厚み分の位置ずれは含まないとする。これによって、マスク本体部10の平面の広範囲に亘って、吸熱剤30及び冷感剤80を配することができるため、マスク3の広範囲で、着用者は、マスク3の冷感を実感することができる。また、マスク本体部10の平面の広い範囲に亘り、フィルタ部材11を配することができ、捕集効果が得られる。ただし上記に限定されず、フィルタ部材11の外周端と肌側不織布12の外周端、非肌側不織布18の外周端とがずれていてもよい。
【0194】
また、フィルタ部材11は、肌側不織布12に比べて、吸熱剤30及び冷感剤80の坪量が低いことが好ましく、より好ましくは、フィルタ部材11には吸熱剤30及び冷感剤80が配されていないとよい。フィルタ部材11に吸熱剤30及び冷感剤80が付着していることによりフィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。
【0195】
本実施形態のマスク3は、フィルタ部材11と肌側不織布12と非肌側不織布18とを厚さ方向に接合したマスク本体部10を有したが、これに限られない。例えば、フィルタ部材11と肌側不織布12と非肌側不織布18と、これらとは別の部材を厚さ方向に重ねていてもよい。
【0196】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0197】
本発明のマスクが、水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しないものであってもよい。水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しなくても、マスクが、吸熱剤が配された不織布を備えることで、着用者は、マスクによる冷感を実感することができる。
【符号の説明】
【0198】
1、2、3 (使い捨て)マスク、
10 マスク本体部、11、フィルタ部材、12 肌側不織布(不織布)、
13 サイドシート、14 溶着部、15 形状保持部材、16 接合部、
18 非肌側不織布(第2不織布)、
20 耳掛け部、
30 吸熱剤、
40 マスク本体部、41 フィルタ部材、42 肌側不織布(不織布)、
43、44 一対のシート部、45 接合部、46 形状保持部材、
47 接合部、48 高坪量部、
50 耳掛け部、
80 冷感剤