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特許7683018基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-16
(45)【発行日】2025-05-26
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20250519BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20250519BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20250519BHJP
【FI】
H01L21/316 M
H01L21/31 B
H01L21/31 C
H01L21/316 X
C23C16/42
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023547971
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033761
(87)【国際公開番号】W WO2023042264
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】赤江 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 富介
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 貴志
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-146917(JP,A)
【文献】特開2019-194353(JP,A)
【文献】特開2012-104695(JP,A)
【文献】特開2017-092475(JP,A)
【文献】特開2017-195371(JP,A)
【文献】特開平02-119261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して第1原料ガスを供給する工程と、第1酸化ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する酸化膜である第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2原料ガスを供給する工程と、前記第1酸化ガスよりも酸化力が大きい第2酸化ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1膜上に、前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する酸化膜である第2膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記凹状構造の内面は、対向する側面と、底面とを有し、
(a)では、前記対向する側面にそれぞれ形成された前記第1膜が互いに接触しない状態を維持しながら、前記第1膜を形成し、
(b)では、対向する前記第2膜の少なくとも一部が互いに接触するまで、前記第2膜を形成する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1膜の段差被覆性は、前記第2膜の段差被覆性よりも高い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1原料ガスの分子量は、前記第2原料ガスの分子量よりも大きい、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1原料ガスは、有機系ガスであり、
前記第2原料ガスは、無機系ガスである、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(b)では、前記第1膜と前記第2膜とにより前記凹状構造内の少なくとも一部を充填するまで前記第2膜を形成する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(b)では、前記第1膜と前記第2膜とにより前記凹状構造内の全体を充填するまで前記第2膜を形成する、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記凹状構造の内面は、対向する側面を有し、
前記凹状構造の上部における前記側面間の距離よりも、前記凹状構造の下部における前記側面間の距離の方が短い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給し、前記凹状構造の内面に、前記所定元素を含み所定の凝着力を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して前記所定元素を含む第2原料ガスを供給し、前記第1膜上に、前記所定元素を含み前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記第1原料ガスに含まれる前記所定元素の原子が有する1つの結合手にはアミノ基が結合しており、残りの3つの結合手にはアルコキシ基が結合している基板処理方法。
【請求項10】
(a)では、前記所定元素の原子から前記アルコキシ基が脱離することなく、前記アミノ基が脱離する条件であって、前記アミノ基が脱離し前記アルコキシ基との結合が維持された状態の前記所定元素の原子が、前記基板の表面に吸着する条件下で、前記第1原料ガスが前記基板に供給される、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第1原料ガスは、ジアルキルアミノトリアルコキシシランガスである、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第2原料ガスは、前記所定元素の原子に結合したハロゲン元素を含む分子構造を有している、請求項11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(b)の後に、更に(a)を行い、前記第2膜上に前記第1膜を形成する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して第1原料ガスを供給する工程と、第1酸化ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する酸化膜である第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2原料ガスを供給する工程と、前記第1酸化ガスよりも酸化力が大きい第2酸化ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1膜上に、前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する酸化膜である第2膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板に対して第1原料ガスを供給する第1原料ガス供給系と、
前記基板に対して前記第1原料ガスとは異なる分子構造を有する第2原料ガスを供給する第2原料ガス供給系と、
前記基板に対して第1酸化ガスを供給する第1酸化ガス供給系と、
前記基板に対して前記第1酸化ガスよりも酸化力が大きい第2酸化ガスを供給する第2酸化ガス供給系と、
(a)表面に凹状構造が設けられた前記基板に対して前記第1原料ガスを供給する処理と、前記第1酸化ガスを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する酸化膜である第1膜を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2原料ガスを供給する処理と、前記第2酸化ガスを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1膜上に、前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する酸化膜である第2膜を形成する処理と、を行わせるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系、前記第1酸化ガス供給系、及び前記第2酸化ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項16】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して第1原料ガスを供給する手順と、第1酸化ガスを供給する手順と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する酸化膜である第1膜を形成する手順と、
(b)前記基板に対して第2原料ガスを供給する手順と、前記第1酸化ガスよりも酸化力が大きい第2酸化ガスを供給する手順と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記第1膜上に、前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する酸化膜である第2膜を形成する手順と、
をコンピュータによって、基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項17】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給し、前記凹状構造の内面に、前記所定元素を含み所定の凝着力を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して前記所定元素を含む第2原料ガスを供給し、前記第1膜上に、前記所定元素を含み前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成する工程と、
を有し、
前記第1原料ガスに含まれる前記所定元素の原子が有する1つの結合手にはアミノ基が結合しており、残りの3つの結合手にはアルコキシ基が結合している半導体装置の製造方法。
【請求項18】
基板に対して所定元素を含む第1原料ガスを供給する第1原料ガス供給系と、
前記基板に対して前記所定元素を含み前記第1原料ガスとは異なる分子構造を有する第2原料ガスを供給する第2原料ガス供給系と、
前記基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
(a)表面に凹状構造が設けられた前記基板に対して前記第1原料ガスを供給し、前記凹状構造の内面に、前記所定元素を含み所定の凝着力を有する第1膜を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2原料ガスを供給し、前記第1膜上に、前記所定元素を含み前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成する処理と、を行わせるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系、及び前記反応ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有し、
前記第1原料ガスに含まれる前記所定元素の原子が有する1つの結合手にはアミノ基が結合しており、残りの3つの結合手にはアルコキシ基が結合している基板処理装置。
【請求項19】
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して、所定元素を含み、前記所定元素の原子が有する1つの結合手にはアミノ基が結合しており、残りの3つの結合手にはアルコキシ基が結合している第1原料ガスを供給し、前記凹状構造の内面に、前記所定元素を含み所定の凝着力を有する第1膜を形成する手順と、
(b)前記基板に対して前記所定元素を含む第2原料ガスを供給し、前記第1膜上に、前記所定元素を含み前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成する手順と、
をコンピュータによって、基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-153776号公報
【文献】特開2014-216342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、基板の凹状構造の内部を膜で埋め込む際に、基板の表面に形成されたパターンの間に生じる応力を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)表面に凹状構造が設けられた基板に対して第1原料ガスを供給し、前記凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2原料ガスを供給し、前記第1膜上に、前記第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成する工程と、
を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の凹状構造の内部を膜で埋め込む際に、基板の表面に形成されたパターンの間に生じる応力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
図5図5は、本開示の一態様における処理シーケンスの変形例を示す図である。
図6図6は、表面に凹状構造が設けられた基板に対して原料ガスとして第1原料ガスを用いた成膜を行い、凹状構造内の埋め込みを行ったときの基板の断面部分拡大図である。
図7図7は、表面に凹状構造が設けられた基板に対して原料ガスとして第2原料ガスを用いた成膜を行い、凹状構造内の埋め込みを行ったときの基板の断面部分拡大図である。
図8図8は、表面に凹状構造が設けられた基板に対して、第1原料ガスを用いた成膜と、第2原料ガスを用いた成膜と、をこの順に行い、凹状構造内の埋め込みを行ったときの基板の断面部分拡大図である。
図9図9は、表面に凹状構造が設けられた基板に対して、第1原料ガスを用いた成膜と、第2原料ガスを用いた成膜と、をこの順に行い、凹状構造内の埋め込みを行ったときの基板の断面部分拡大図である。
図10図10は、基板上に形成された膜における、膜厚と凝着力との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1供給部、第2供給部としてのノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとも称する。ノズル249a,249bは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249bはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249bは互いに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232c~232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232c~232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241c~241fおよびバルブ243c~243fがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232fは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、平面視においてウエハ200の中心に向かって開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0015】
ガス供給管232bからは、酸化ガスとしての酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232cからは、第2原料ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232dからは、還元ガスとしての水素(H)含有ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する基板処理工程において、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、酸化ガスに含めて考えることができる。
【0018】
ガス供給管232e,232fからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e,241f、バルブ243e,243f、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2原料ガス供給系が構成される。
【0020】
主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、酸化ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、還元ガス供給系が構成される。ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dを、酸化ガス供給系に含めて考えてもよい。酸化ガスおよび還元ガスは、後述する基板処理工程において、反応ガスとして用いられる。基板処理工程において、基板上に第1膜を形成する際に用いる反応ガスを第1反応ガスと称し、基板上に第2膜を形成する際に用いる反応ガスを第2反応ガスと称することができる。そのため、酸化ガス供給系および還元ガス供給系のそれぞれ或いは両方を、反応ガス供給系(第1反応ガス供給系、第2反応ガス供給系)と称することもできる。
【0021】
主に、ガス供給管232e,232f、MFC241e,241f、バルブ243e,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
原料ガスおよび反応ガスのそれぞれ或いは両方を、成膜ガスとも称し、原料ガス供給系、酸化ガス供給系のそれぞれ或いは両方を成膜ガス供給系とも称する。
【0023】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243fやMFC241a~241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0024】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0026】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0027】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0028】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0029】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0030】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0031】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0032】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0033】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0034】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200の表面に設けられた凹状構造を埋め込むように、凹状構造の内部に膜を形成する処理シーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0035】
ウエハ200の表面に設けられている凹状構造の内面は、対向する側面と、底面と、を有している。凹状構造は、凹状構造の上部における側面間の距離よりも、凹状構造の下部における側面間の距離の方が短い(狭い)、いわゆるテーパ状に構成されている。
【0036】
図4に示す処理シーケンスは、
表面に凹状構造が設けられたウエハ200に対して第1原料ガスを供給し、凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する第1膜を形成するステップAと、
ウエハ200に対して第2原料ガスを供給し、第1膜上に、第1膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2膜を形成するステップBと、を有する。
【0037】
ステップAでは、
第1原料ガスを供給する工程と、第1反応ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行う。
【0038】
ステップBでは、
第2原料ガスを供給する工程と、第2反応ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0039】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0040】
(第1原料ガス→第1反応ガス)×m→(第2原料ガス→第2反応ガス)×n
【0041】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0042】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0043】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
(OH終端形成)
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して第1反応ガスを供給(プリフロー)する。
【0045】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ第1反応ガスを流す。第1反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第1反応ガスが供給される(反応ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、不活性ガスの供給は不実施としてもよい。
【0046】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは600~700℃
処理圧力:0.1~30Torr、好ましくは0.2~20Torr
第1反応ガス供給流量:0.1~20slm、好ましくは5~12slm
第1反応ガス供給時間:100~1000秒、好ましくは200~1000秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~3.0slm
が例示される。
【0047】
なお、本明細書における「400~900℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「400~900℃」とは「400℃以上900℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0048】
本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、ウエハ200の表面全域にわたって水酸基終端(OH終端)を形成することができる。ウエハ200の表面に存在するOH終端は、後述する成膜処理において、原料ガスの吸着サイト、すなわち、原料ガスを構成する分子や原子の吸着サイトとして機能する。
【0049】
OH終端が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第1反応ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a,249bより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0050】
パージにおける処理条件としては、
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~10slm
不活性ガス供給時間:1~30秒、好ましくは5~20秒
が例示される。
【0051】
不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0052】
(ステップA:第1膜形成)
その後、以下のステップa1,a2を順次実行する。
【0053】
[ステップa1]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して第1原料ガスを供給する。
【0054】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ第1原料ガスを流す。第1原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第1原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、不活性ガスの供給は不実施としてもよい。
【0055】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:400~900℃、好ましくは600~700℃
処理圧力:0.1~10Torr、好ましくは0.2~10Torr
第1原料ガス供給流量:0.01~1slm、好ましくは0.1~0.5slm
第1原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは15~20秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10.0slm
が例示される。
【0056】
上述の処理条件下で、ウエハ200に対して、第1原料ガスとして、例えば、後述するアミノ基およびアルコキシ基を含むシランガスを供給することにより、第1原料ガスに含まれるシリコン(Si)から、アルコキシ基を脱離させることなく、アミノ基を脱離させることが可能となる。また、アミノ基が脱離しアルコキシ基との結合が維持された状態のSiを、ウエハ200の表面に吸着(化学吸着)させることが可能となる。すなわち、Siの3つの結合手にアルコキシ基が結合した状態で、Siをウエハ200の表面における吸着サイトの一部に吸着させることが可能となる。このようにして、ウエハ200の最表面上に、Siにアルコキシ基が結合した成分を含む第1層(Si含有層)を形成することが可能となる。
【0057】
また、本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、第1原料ガスに含まれるSiから脱離したアミノ基を、ウエハ200の表面に吸着させないようにすることが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成される第1層中に、第1原料ガスに含まれるSiから脱離したアミノ基を含ませないようにすることが可能となる。すなわち、ウエハ200上に形成される第1層を、アミノ基の含有量が少なく、アミノ基に由来する不純物、例えば、炭素(C)、窒素(N)等の不純物の少ない層とすることが可能となる。
【0058】
本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合したアルコキシ基により、すなわち、ウエハ200の表面に吸着したSiの結合手をアルコキシ基により埋めておく(塞いでおく)ことにより、ウエハ200の表面に吸着したSiへの原子または分子のうちの少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。また、本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiに結合したアルコキシ基を立体障害として作用させることにより、ウエハ200の表面に吸着したSiの周辺の、ウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)への原子または分子のうち少なくともいずれかの吸着を阻害することが可能となる。またこれにより、本ステップでは、ウエハ200の表面に吸着したSiの周辺の、ウエハ200の表面における吸着サイト(OH終端)を保持することが可能となる。
【0059】
本ステップでは、Siのウエハ200の表面への吸着反応(化学吸着反応)が飽和するまで、第1原料ガスの供給を継続することが好ましい。第1原料ガスの供給をこのように継続したとしても、Siに結合したアルコキシ基が立体障害として作用することにより、Siを、ウエハ200の表面に不連続に吸着させることが可能となる。具合的には、Siをウエハ200の表面に1原子層未満の厚さとなるように吸着させることが可能となる。
【0060】
Siのウエハ200の表面への吸着反応を飽和させた状態において、ウエハ200の表面は、Siに結合したアルコキシ基により覆われた状態となり、ウエハ200の表面の一部は、吸着サイト(OH終端)が消費されることなく保持された状態となる。Siのウエハ200の表面への吸着反応を飽和させた状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される層は、1原子層未満の厚さの不連続層となる。
【0061】
第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。そして、OH終端形成におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0062】
第1原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのSiに、アルコキシ基とアミノ基とが結合した分子構造を有するガスを用いることができる。
【0063】
アルコキシ基とは、アルキル基(R)が酸素(O)原子と結合した構造を有するものであり、-ORの構造式で表される1価の官能基のことである。アルコキシ基(-OR)には、メトキシ基(-OMe)、エトキシ基(-OEt)、プロポキシ基(-OPr)、ブトキシ基(-OBu)等が含まれる。アルコキシ基は、これらの直鎖状アルコキシ基だけでなく、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、セカンダリブトキシ基、ターシャリブトキシ基等の分岐状アルコキシ基であってもよい。また、アルキル基(-R)には、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、プロピル基(-Pr)、ブチル基(-Bu)等が含まれる。アルキル基は、これらの直鎖状アルキル基だけでなく、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリブチル基、ターシャリブチル基等の分岐状アルキル基であってもよい。
【0064】
アミノ基とは、アンモニア(NH)、第一級アミン、第二級アミンのいずれかから水素(H)を除去した構造を有するものであり、-NH、-NHR、-NRR’のうちいずれかの構造式で表される1価の官能基のことである。構造式中に示したR、R’は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を含むアルキル基である。R、R’は、これらの直鎖状アルキル基だけでなく、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリブチル基、ターシャリブチル基等の分岐状アルキル基であってもよい。R、R’は、同一のアルキル基であってもよく、異なるアルキル基であってもよい。アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基(-N(CH)、ジエチルアミノ基(-N(C)等を例示することができる。
【0065】
第1原料ガスとしては、例えば、(ジメチルアミノ)トリエトキシシラン([(CHN]Si(OC)ガス、(ジエチルアミノ)トリエトキシシラン([(CN]Si(OC)ガス、(ジメチルアミノ)トリメトキシシラン([(CHN]Si(OCH)ガス、(ジエチルアミノ)トリメトキシシラン([(CN]Si(OCH)ガス等のジアルキルアミノトリアルコキシシランガスを用いることができる。ジアルキルアミノトリアルコキシシランガスは、アミノ基およびアルコキシ基を含むシランガスとして用いることができる。これらのガスに含まれるSiは4つの結合手を有しており、Siの4つの結合手のうち3つの結合手にはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基)が結合しており、Siの4つの結合手のうち残りの1つの結合手にはアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基)が結合している。このように、第1原料ガスとして、分子構造中にアミノ基を含む有機系ガスを用いることが好ましい。第1原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0066】
第1原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH[N(C]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。第1原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0067】
[ステップa2]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、第1反応ガスとしてO含有ガスを供給する。
【0068】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ第1反応ガスを流す。第1反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第1反応ガスが供給される(反応ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、不活性ガスの供給は不実施としてもよい。
【0069】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:0.1~30Torr、好ましくは0.2~20Torr
第1反応ガス供給流量:0.1~20slm、好ましくは5~12slm
第1反応ガス供給時間:1~200秒、好ましくは150~190秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~3.0slm
が例示される。他の処理条件は、ステップa1の第1原料ガス供給を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0070】
本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、例えば、第1層に含まれるSiと結合するアルコキシ基を、第1層から脱離させることが可能となる。上述の処理条件下でウエハ200に対して第1反応ガスとして、例えば、酸化ガス(O含有ガス)を供給することにより、ウエハ200上に形成された第1層の少なくとも一部を酸化(改質)させ、第2層として、SiおよびOを含む層であるシリコン酸化層(SiO層)を形成することが可能となる。第2層は、アルコキシ基等を含まない層、すなわち、C等の不純物を含まない層となる。また、第2層の表面は、O含有ガスによる酸化処理の結果、OH終端された状態、すなわち、吸着サイトが形成された状態となる。なお、第1層から脱離したC等の不純物は、二酸化炭素(CO)等のガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、第2層(SiO層)は、ステップa1で形成された第1層(Si含有層)に比べて、C等の不純物が少ない層となる。
【0071】
第2層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第1反応ガスの供給を停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0072】
第1反応ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、プラズマ励起させたOガス(O )等のO含有ガスを用いることができる。第1反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0073】
[所定回数実施]
上述のステップa1,a2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の第1膜としての第1SiO膜を形成することが可能となる。上述のサイクルは複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行うことで形成される第2層(SiO層)の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成される第1SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0074】
なお、ステップAでは、ウエハ200の表面に設けられた凹状構造内の対向する側面に形成された第1SiO膜が互いに接触しない状態(膜厚)を維持しながら、第1SiO膜を形成することが好ましい。
【0075】
また、ステップAでは、第1SiO膜の厚さと後述する第2膜としての第2SiO膜の厚さとの合計の厚さに対する第1SiO膜の厚さの比率を50%以下とすることが好ましい。
【0076】
また、ステップAでは、第1SiO膜の厚さと後述する第2膜としての第2SiO膜の厚さの合計の厚さに対する第1SiO膜の厚さの比率を10%以上とすることが好ましい。
【0077】
なお、第1SiO膜の段差被覆性は、後述する第2膜としての第2SiO膜の段差被覆性よりも高くなっている。これは、ステップa1において、上述の通り、第1原料ガスに含まれるSiのウエハ200の表面への吸着反応を飽和させた状態において、ウエハ200の表面へ吸着したSiにより構成される層を、1原子層未満の厚さの不連続層とすることができるためである。すなわち、ステップa1においては、例えば、ウエハ200の凹状構造内の上部付近における側面であるか、凹状構造の底部であるかによらず、第1層が1原子層以上の不均一な厚さで形成されることが抑制され、第1層は段差被覆性に優れた均一な厚さの層として形成される。この場合、ステップa2では、例えば、ウエハ200の凹状構造内の上部付近における側面においても、また、凹状構造の底部においても、O含有ガスを段差被覆性に優れた第1層と反応させることができ、結果として、第1SiO膜を段差被覆性に優れた膜とすることが可能となる。
【0078】
また、第1SiO膜は、後述する第2膜としての第2SiO膜よりも、下地酸化量を良好な状態に維持できる特性を有している。第1SiO膜を形成する際に、第2SiO膜を形成する際よりも下地酸化量を良好な状態に維持できるのは、ステップa2において、後述するステップb2よりも酸化力が弱くなる処理条件下で、第1層を酸化させているためである。具体的には、ステップa2において、第1反応ガスとして、後述するステップb2で用いる第2反応ガスよりも、酸化力の弱いガスを用いているためである。結果として、下地の酸化、すなわち、第1SiO膜と接するウエハ200の表面の酸化を充分に抑制することが可能となる。ウエハ200の表面の酸化を抑制することで、それに伴うデバイス特性の低下などの影響を低減することができる。
【0079】
(ステップB:第2膜形成)
その後、以下のステップb1,b2を順次実行する。
【0080】
[ステップb1]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して第2原料ガスを供給する。
【0081】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ第2原料ガスを流す。第2原料ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第2原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243e,243fを開き、ノズル249a,249bのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、不活性ガスの供給は不実施としてもよい。
【0082】
本ステップにおける処理条件としては、
第2原料ガス供給流量:0.01~1slm、好ましくは0.1~0.5slm
第2原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは15~20秒
が例示される。他の処理条件は、ステップa1の第1原料ガス供給を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0083】
上述の処理条件下で、ウエハ200に対して、第2原料ガスとして、例えば、後述するクロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、第3層として、塩素(Cl)を含むSi含有層を形成することが可能となる。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。なお、上述の処理条件下では、ウエハ200の最表面上へのクロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着が支配的に(優先的に)生じ、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積は僅かに生じるか、あるいは、殆ど生じないこととなる。すなわち、上述の処理条件下では、第3層(Si含有層)は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)を圧倒的に多く含むこととなり、Clを含むSiの堆積層を僅かに含むか、もしくは、殆ど含まないこととなる。
【0084】
第3層が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第1反応ガスの供給を停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0085】
第2原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0086】
第2原料ガスとしては、例えば、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。このように、第2原料ガスとして、分子構造中にアミノ基を含まない無機系ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0087】
第2原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0088】
[ステップb2]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、第2反応ガスとして、O含有ガスおよびH含有ガスを供給する。
【0089】
具体的には、バルブ243b,243dを開き、ガス供給管232a,232b内へH含有ガス、O含有ガスをそれぞれ流す。ガス供給管232a,232b内を流れたH含有ガス、O含有ガスは、それぞれ、MFC241a,241bにより流量調整され、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスとH含有ガスとは、処理室201内で混合して反応し、その後、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して、O含有ガスとH含有ガスとの反応により生じた原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸素を含む水分(HO)非含有の酸化種が供給される(O含有ガスおよびH含有ガス供給)。このとき、バルブ243d,243eを開き、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、不活性ガスの供給は不実施としてもよい。
【0090】
本ステップにおける処理条件としては、
処理圧力:大気圧未満、好ましくは0.1~20Torr、より好ましくは0.2~0.8Torr
O含有ガス供給流量:0.1~10slm、好ましくは0.5~10slm
H含有ガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1.5slm
各ガス供給時間:1~200秒、好ましくは15~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。他の処理条件は、ステップa1の第1原料ガス供給を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0091】
本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、ウエハ200上に形成された第3層の少なくとも一部を酸化(改質)させ、第4層として、SiおよびOを含む層であるシリコン酸化層(SiO層)を形成することが可能となる。第4層(SiO層)を形成する際、第3層(Si含有層)に含まれていたCl等の不純物は、O含有ガスおよびH含有ガスによるSi含有層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201内から排出される。これにより、第4層は、ステップb1で形成された第3層に比べて、Cl等の不純物が少ない層となる。また、第4層の表面は、O含有ガスおよびH含有ガスによる酸化処理の結果、OH終端された状態、すなわち、吸着サイトが形成された状態となる。
【0092】
上述の条件下で処理室201内へO含有ガスおよびH含有ガスを同時かつ一緒に供給することで、O含有ガスおよびH含有ガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(HO)非含有の酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、上述の酸化(改質)処理が行われる。この酸化処理によれば、O含有ガスを単独で供給する上述のステップa2に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO含有ガスおよびH含有ガスを同時かつ一緒に添加することで、O含有ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られるようになる。
【0093】
第4層が形成された後、バルブ243b,243dを閉じ、処理室201内へのO含有ガス、H含有ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0094】
第2反応ガス、すなわち、O含有ガスおよびH含有ガス(O含有ガス+H含有ガス)としては、例えば、Oガス+水素(H)ガス、オゾン(O)ガス+Hガス、過酸化水素(H)ガス+Hガス、水蒸気(HOガス)+Hガス等を用いることができる。この場合において、H含有ガスとして、Hガスの代わりに重水素()ガスを用いることもできる。なお、本明細書において「Oガス+Hガス」というような2つのガスの併記記載は、HガスとOガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。第2反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0095】
また、本ステップでは、O含有ガスおよびH含有ガスのうち少なくともいずれかをプラズマ励起させて供給するようにしてもよい。たとえは、プラズマ励起させたOガス(O )とプラズマ励起させていないHガス(H )とを供給するようにしてもよいし、プラズマ励起させていないOガスとプラズマ励起させたHガスとを供給するようにしてもよいし、プラズマ励起させたOガスとプラズマ励起させたHガスとを供給するようにしてもよい。
【0096】
[所定回数実施]
上述のステップb1,b2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の第2膜としての第2SiO膜を形成することが可能となる。上述のサイクルは複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行うことで形成される第4層(SiO層)の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第4層を積層することで形成される第2SiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0097】
なお、ステップBでは、第1SiO膜上に形成された対向する第2SiO膜の少なくとも一部が互いに接触するまで、第2SiO膜を形成することが好ましい。
【0098】
また、ステップBでは、第1SiO膜と第2SiO膜とによりウエハ200の凹状構造内の全体を充填するまで第2SiO膜を形成することが好ましい。
【0099】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上へ所望の厚さの第2SiO膜を形成する処理が完了した後、ノズル249a,249bのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0100】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0101】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0102】
(a)表面に凹状構造が設けられたウエハ200に対して第1原料ガスを供給し、凹状構造の内面に、所定の凝着力を有する第1SiO膜を形成するステップAと、ウエハ200に対して第2原料ガスを供給し、第1SiO膜上に、第1SiO膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2第SiO膜を形成するステップBと、を行うことにより、ウエハ200の表面に形成されたパターンの倒壊、変形といった現象(以下、これらを総称してパターン倒れともいう)の発生を抑制することができる。
【0103】
というのも、上述の基板処理工程において、原料ガスとして第1原料ガスのみを用い、第2第SiO膜の凝着力よりも大きい凝着力を有する第1SiO膜のみで凹状構造の内部の埋め込みを行う場合、第1SiO膜の形成が進む途上で、凹状構造の内面に形成される第1SiO膜の表面同士が接触する際に、これらの膜が強い力で互いに凝着しようとする(引き合う)。このように、凹状構造に加わる応力、すなわち、凹状構造内の対向する内面同士の間に生じる引き合う力が大きくなることにより、パターン倒れが発生するのである(図6参照)。
【0104】
本態様では、第1原料ガスを用いた成膜を行うだけでなく、第2原料ガスを用いた成膜を組み合わせ、第1SiO膜の上に、第1SiO膜の凝着力よりも小さい凝着力を有する第2SiO膜を形成するようにしている。これにより、凹状構造の内部の埋め込みを第1SiO膜のみによって行う場合に比べて、凹状構造の内面に形成される膜の表面同士が接触する際に凹状構造に加わる応力を低減させ、パターン倒れの発生を抑制することができる(図8参照)。本態様によれば、ステップBにおいて、第1SiO膜と第2SiO膜とにより凹状構造内の全体を充填するまで第2第SiO膜を形成した場合であっても、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0105】
本明細書において、「凝着力」とは、主にファンデルワールス力などに基づき膜表面の分子間に働く引力のことをいう。また、「パターン倒れ」とは、隣接するパターン同士がもたれ合うように近接し、場合によってはパターンが基部から折損したり、剥離したりする現象のことをいう。
【0106】
(b)ステップAにおいて、第1原料ガスとして有機系ガスを供給した場合でも、ステップBにおいて、第2原料ガスとして無機系ガスを供給することにより、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0107】
というのも、有機系ガスである第1原料ガスの分子量は、無機系ガスである第2原料ガスの分子量よりも大きい傾向にあり、これに伴い第1SiO膜の表面の分子量は、第2SiO膜の表面の分子量よりも大きくなる。膜の表面を構成する分子の分子量が大きくなるほど、膜の凝着力は大きくなる傾向があるので、第1SiO膜の凝着力は、第2SiO膜の凝着力よりも大きくなる(図10参照)。本態様では、上述のように、第1原料ガスを用いた成膜を行うだけでなく、第2原料ガスを用いた成膜を組み合わせることにより、パターン倒れの発生を抑制できる。
【0108】
(c)ステップAでは、凹状構造内の対向する2つの側面にそれぞれ形成された第1SiO膜が互いに接触しない状態を維持しながら、第1SiO膜を形成し、ステップBでは、対向する第2SiO膜の少なくとも一部が互いに接触するまで、第1SiO膜上に第2SiO膜を形成する。すなわち、凹部構造内の埋め込みの際に生じる膜同士の接触を、凝着力の大きな第1SiO膜により行わせるのではなく、凝着力の小さな第2SiO膜によって行わせるようにしている。これにより、第2SiO膜の凝着力よりも大きな凝着力を有する第1SiO膜が互いに接触する場合に比べて、凹状構造に加わる応力を低減することができる。これにより、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0109】
(d)ウエハ200の表面に設けられた凹状構造が、凹状構造の上部における側面間の距離よりも、凹状構造の下部における側面間の距離の方が短い、いわゆるテーパ状に構成されている場合でも、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0110】
というのも、第1SiO膜、第2SiO膜は、いずれも、その膜厚が薄いほど、膜の凝着力が大きくなる傾向を有している(図10参照)。ここで、凹状構造が上述のようなテーパ状に構成されている場合、凹状構造の底部付近では、凹状構造の上部付近に比べて、対向する側面間の距離が短い(狭い)こと。そのため、第1SiO膜の形成が進む途上で、凹状構造の底部付近の側面に形成された第1SiO膜は、凹状構造の上部付近の側面に形成された第1SiO膜に比べて膜厚が薄い状態で、すなわち、凝着力が大きい状態で互いに接触し、結果、凹状構造に大きな応力を加えることが懸念される。その結果、凹状構造の底部付近を起点としてパターン倒れが発生しやすい。本態様では、ステップAにおいて、凹状構造内の対向する側面に形成された第1SiO膜が互いに接触しない状態を維持しながら第1SiO膜を形成するので、パターン倒れの発生を抑制することができる。
【0111】
(e)第1SiO膜の厚さと第2第SiO膜の厚さとの合計の厚さ(積層SiO膜の厚さ)に対する第1SiO膜の厚さの比率を50%以下とすることにより、凹状構造の内面に形成される第1SiO膜の表面同士が接触することを回避して、パターン倒れの発生を抑制することができる。第1SiO膜の厚さの比率が50%よりも高くなると、凹状構造の内面に形成される第1SiO膜の表面同士が接触することを回避することができず、パターン倒れが生じる可能性が高くなってしまう場合がある。
【0112】
(f)ステップAで形成される第1SiO膜の段差被覆性を、ステップBで形成される第2第SiO膜の段差被覆性よりも高くすることにより、凹状構造内におけるボイドやシームの発生を抑制することができる。
【0113】
というのも、上述の基板処理工程において、原料ガスとして第2原料ガスのみを用い、第1第SiO膜の段差被覆性よりも低い段差被覆性を有する第2SiO膜のみで凹状構造の内部の埋め込みを行う場合、凹状構造の上部付近において第2SiO膜が局所的に厚く成長し、凹状構造の内部の埋め込みが完了する前に凹状構造の上部が塞がれてしまい、結果、凹部構造内にボイドやシームが生じる場合がある(図7参照)。
【0114】
本態様では、第2原料ガスを用いた成膜を行うだけでなく、第1原料ガスを用いた成膜を組み合わせ、第2第SiO膜の段差被覆性よりも高い段差被覆性を有する第1SiO膜を、第2第SiO膜よりも先に形成することにより、凹状構造内におけるボイドやシームの発生を抑制することができる(図8参照)。本態様によれば、ステップBにおいて、第1SiO膜と第2SiO膜とにより凹状構造内の全体を充填するまで第2第SiO膜を形成した場合であっても、凹部構造内におけるボイドやシームの発生を抑制することができる。
【0115】
(g)ステップAにおいて、第1原料ガスとして、分子構造中にアミノ基を含むガスを用いることにより、凹部構造内におけるボイドやシームの発生を抑制することができる。
【0116】
というのも、原料ガスとして、分子構造中にアミノ基を含むガスを用いる場合、分子構造中にアミノ基を含まないガスを用いる場合と比べて、原料ガス分子とウエハ200表面との間での表面反応を適正化させ、形成される膜の段差被覆性を向上させることができるからである。本態様では、分子構造中にアミノ基を含む第1原料ガスを、分子構造中にアミノ基を含まない第2原料ガスよりも先に供給し、第2第SiO膜の段差被覆性よりも高い段差被覆性を有する第1SiO膜を、第2第SiO膜よりも先に形成することにより、凹部構造内におけるボイドやシーム等の発生を抑制することができる。
【0117】
(h)ステップAで供給される第1反応ガスの酸化力を、ステップBで供給される第2反応ガスの酸化力よりも小さくすることにより、ステップAにおいて、下地としてのウエハ200の表面の酸化を抑制することができる。
【0118】
また、ステップBで供給される第2反応ガスの酸化力を、ステップAで供給される第1反応ガスの酸化力よりも大きくすることにより、ステップBでは、ステップBで形成される第2SiO膜を十分に酸化させることができる。また、ステップAで形成された第1SiO膜に酸化不十分な領域が残っていた場合であっても、ステップBでは、第2反応ガスの高い酸化力を利用して、そのような領域を十分に酸化させることが可能となる。
【0119】
このように、本態様では、下地の酸化の抑制と、第1SiO膜及び第2SiO膜の確実な酸化と、を両立させることができるようになる。
【0120】
なお、ステップA,Bのそれぞれにおいて、反応ガスとして、酸化力の小さい第1反応ガスのみを用いる場合、下地の酸化を抑制できたとしても、第1SiO膜及び第2SiO膜の酸化が不十分となる場合がある。また、ステップA,Bのそれぞれにおいて、反応ガスとして、酸化力の大きい第2反応ガスのみを用いる場合、第1SiO膜及び第2SiO膜を十分に酸化させることができたとしても、下地の酸化を抑制することができない場合がある。
【0121】
(i)第1SiO膜の厚さと第2第SiO膜の厚さ(積層SiO膜の厚さ)の合計の厚さに対する第1SiO膜の厚さの比率を10%以上とすることにより、ステップBにおいて供給する第2反応ガスによる下地の酸化を抑制することができる。また、形成される積層SiO膜の段差被覆性を向上させることができる。第1SiO膜の厚さの比率が10%よりも低くなると、下地の酸化の抑制できない場合がある。また、形成される積層SiO膜の段差被覆性が低下する可能性がある。
【0122】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の基板処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0123】
上述の態様における処理シーケンスのように、ステップAを行った後、ステップBを行う以外に、図5および以下に示す処理シーケンスのように、各ステップを行う順番を変更し、ステップBを行った後にステップAを行うようにしてもよい。
本変形例では、ステップBにおいて、ウエハ200の表面に設けられた凹状構造内の対向する側面に形成された第2SiO膜が互いに接触する状態(膜厚)になるまで、第2SiO膜を形成することが好ましい。また、第1SiO膜よりも凝着力が小さい第2SiO膜によって凹状構造内の底部の少なくとも一部が埋め込まれるまで、第2SiO膜を形成することがより好ましい。
【0124】
(第2原料ガス→第2反応ガス)×n→(第1原料ガス→第1反応ガス)×m
【0125】
なお、以下に示すガス供給シーケンスのように、ステップBを行う前に、ウエハ200に対して第2反応ガスとして、O含有ガスおよびH含有ガスを供給(プリフロー)することが好ましい。このステップにおける処理手順は、上述のステップb2における処理手順と同様の処理手順とすることができる。
【0126】
第2反応ガス→(第2原料ガス→第2反応ガス)×n→(第1原料ガス→第1反応ガス)×m
【0127】
本ステップにおける条件としては、
処理圧力:大気圧未満、好ましくは0.1~20Torr、より好ましくは0.2~0.8Torr
O含有ガス供給流量:0.1~10slm、好ましくは0.5~10slm
H含有ガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1.5slm
各ガス供給時間:1~200秒、好ましくは15~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。他の処理条件は、OH終端形成の第1原料ガス供給を行う際の処理条件と同様な処理条件とすることができる。
【0128】
本ステップを上述の処理条件下で行うことにより、ウエハ200の表面全域にわたって水酸基終端(OH終端)を形成することができる。ウエハ200の表面に存在するOH終端は、後述する成膜処理において、原料ガスの吸着サイト、すなわち、原料ガスを構成する分子や原子の吸着サイトとして機能する。
【0129】
OH終端が形成された後、バルブ243b,243dを閉じ、処理室201内へのO含有ガス、H含有ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0130】
ステップBでは、第1膜としての第1SiO膜の厚さと第2膜としての第2SiO膜の厚さとの合計の厚さに対する第2SiO膜の厚さの比率は90%以下とすることが好ましい。このような比率にすることにより、ステップBにおいて供給する第2反応ガスによる下地の酸化を抑制することができる。また、形成される積層SiO膜の段差被覆性を向上させることができる。第2SiO膜の厚さの比率90%よりも高くなると、下地の酸化の抑制できない場合がある。また、形成される積層SiO膜の段差被覆性が低下する可能性がある。
【0131】
ステップBでは、第1膜としての第1SiO膜の厚さと第2膜としての第2SiO膜の厚さとの合計の厚さに対する第2SiO膜の厚さの比率は50%以上とすることが好ましい。このような比率にすることにより、凹状構造の内面に形成される第1SiO膜の表面同士が接触することを回避して、パターン倒れの発生を抑制することができる。第2SiO膜の厚さの比率50%よりも低くなると、凹状構造の内面に形成される第1SiO膜の表面同士が接触することを回避することができず、パターン倒れが生じる可能性が高くなってしまう場合がある。
【0132】
本変形例では、ステップBにおいて、少なくとも凹状構造内の底部を、第1膜としての第1SiO膜よりも凝着力の小さい第2膜としての第2SiO膜によりある程度充填してからステップAを行うので、底部を起点とするパターン倒れの発生を抑制できる(図9参照)。
【0133】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0134】
上述の態様では、ステップA、ステップBをこの順番で行うことにより、ウエハ200上に、第1SiO膜と、第2SiO膜とが積層されてなるSiO膜(積層SiO膜)を形成させる例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ステップA、ステップBをこの順番で行い、ステップBの後に、更にステップAを行って、ウエハ200上に、第1SiO膜と、第2SiO膜と、第1SiO膜とがこの順番に積層されてなるSiO膜を形成するようにしてもよい。凹状構造内を第1SiO膜と第2SiO膜とである程度充填した状態で2回目のステップAを行うことになるため、パターン倒れの発生を抑制できる。さらに、2回目のステップAによって、段差被覆性に優れた第1SiO膜による凹状構造内の充填を行うことができるため、ボイドやシームの発生をより確実に抑制することができる。
【0135】
上述の態様では、ステップA、ステップBのそれぞれを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ステップA、ステップBをそれぞれ他の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。この場合には、ステップAとステップBとの間では、ウエハ200を大気へ暴露させないことが好ましい。これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0136】
上述の態様では、ステップBにおいて、凹状構造内の全体を充填するまで第2第SiO膜を形成する例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ステップBにおいて、凹状構造内の少なくとも一部を充填するように第2第SiO膜を形成するようにしてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0137】
また例えば、ステップA、ステップBでは、それぞれ、SiO膜だけでなく、例えば、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン硼酸窒化膜(SiBON膜)、シリコン硼酸炭窒化膜(SiBOCN膜)等のシリコン系酸化膜を形成するようにしてもよい。またステップA、ステップBでは、それぞれ、例えば、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、チタニウム酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)等の金属系酸化膜を形成するようにしてもよい。
【0138】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0139】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0140】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例
【0141】
上述の基板処理装置を用い、表面に凹状構造が設けられたウエハに対して、上述の態様の処理シーケンスを行うことで、凹状構造内を埋め込むように第1SiO膜と第2SiO膜とを形成し、サンプル1を作製した。サンプル1作製の際は、第1原料ガスとして(ジメチルアミノ)トリメトキシシランガス、第1反応ガスとしてOガス、第2原料ガスとしてHCDSガス、第2反応ガスとしてOガス+水素(H)ガスを用いた。
【0142】
上述の基板処理装置を用い、サンプル1を作製する際に用いたウエハと同様な構成のウエハに対して、上述の変形例の処理シーケンスを行うことで、凹状構造内を埋め込むように第1SiO膜と第2SiO膜とを形成し、サンプル2を作製した。サンプル2作製の際、第1原料ガス、第1反応ガス、第2原料ガス、第2反応ガスは、それぞれ、サンプル1を作製する際に用いたガスと同じガスを用いた。
【0143】
上述の基板処理装置を用い、サンプル1を作製する際に用いたウエハと同様な構成のウエハに対して、上述の態様の処理シーケンスのうちのステップAのみを行うことで、凹状構造内を埋め込むように第1SiO膜を形成し、サンプル3を作製した。サンプル3作製の際、第1原料ガス、第1反応ガスは、それぞれ、サンプル1を作製する際に用いたガスと同じガスを用いた。他の処理条件は、サンプル1のステップAにおける処理条件と同様とした。
【0144】
上述の基板処理装置を用い、サンプル1を作製する際に用いたウエハと同様な構成のウエハに対して、上述の態様の処理シーケンスのうちのステップBのみを行うことで、凹状構造内を埋め込むように第2SiO膜を形成し、サンプル4を作製した。サンプル4作製の際は、第2原料ガス、第2反応ガスは、それぞれ、サンプル1を作製する際に用いたガスと同じガスを用いた。他の処理条件は、サンプル1のステップBにおける処理条件と同様とした。
【0145】
そして、サンプル1~4におけるパターン倒れの発生の有無、下地の酸化抑制の可否について調べた。
【0146】
パターン倒れの発生の有無は、パターン上に形成したSiO膜の断面TEM画像を観察することにより行った。断面TEM画像を観察したところ、原料ガスとして第1原料ガス(有機系ガス)のみを供給したサンプル3の方が、原料ガスとして第2原料ガス(無機系ガス)のみを供給したサンプル4よりもパターン倒れが多く発生していることが確認された。サンプル3,4のそれぞれについて、隣接するパターン間の距離(ウエハの表面に形成された凹状構造の上部における側面間の距離)を横軸とし、各距離となった隣接するパターンの発生個数を縦軸とするヒストグラムを作成したところ、サンプル3の方がサンプル4よりも、隣接するパターン間の距離にバラつきがあることがわかった。そこで、サンプル3,4のそれぞれについて、隣接するパターン間の距離の標準偏差(nm)を求めたところ、サンプル3の標準偏差の方が、サンプル4の標準偏差よりも大きい結果となった。この結果から、パターン倒れの発生の有無に関して、サンプル4の標準偏差を閾値として判定することとした。サンプル1,2のそれぞれについて、隣接するパターン間の距離の標準偏差(nm)を求めたところ、サンプル1,2の標準偏差の方が、サンプル4の標準偏差よりも小さい結果となった。これにより、サンプル1,2では、パターン倒れが発生していないと判定した。
【0147】
下地の酸化抑制の可否は、サンプル1~4のパターン上に形成したSiO膜の断面TEM画像を観察し、下地であるウエハ表面の酸化膜の厚さ(nm)を下地酸化量としてそれぞれ測定することにより行った。サンプル1~4のウエハ表面の酸化膜の厚さを測定したところ、サンプル1の酸化膜の厚さは、1.2(nm)、サンプル2の酸化膜の厚さは、1.4(nm)、サンプル3の酸化膜の厚さは、0.6(nm)、サンプル4の酸化膜の厚さは、1.5(nm)であった。この結果から、下地の酸化抑制の可否は、サンプル4の酸化膜の厚さ1.5(nm)を閾値として判定することとした。サンプル1,2の酸化膜の厚さの方が、サンプル4の酸化膜の厚さよりも薄い結果となったので、サンプル1,2は、下地の酸化が抑制されていると判定した。
【符号の説明】
【0148】
200 ウエハ
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10