(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】トリアリールアミンを有するアゾ化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 43/12 20060101AFI20250520BHJP
C09B 43/18 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
C09B43/12 CSP
C09B43/18
(21)【出願番号】P 2021087648
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】島田 知幸
【審査官】郡上 祐輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007523(JP,A)
【文献】特開2005-062813(JP,A)
【文献】特開2012-058597(JP,A)
【文献】特開2010-282074(JP,A)
【文献】特開平08-262886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
G03G 5/00- 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物。
【化1】
[一般式(I)中、Aは下記一般式(II)で表されるアゾ顔料の残基であり、
【化2】
(一般式(II)中、Bはアゾ顔料の主骨格を表し、
下記一般式(III)または下記一般式(IV)で表され、Cp
1、Cp
2は-OH基および-CONH-基を有するカップラー成分残基を表し、
Cp
1
が下記一般式(V)で表され、Cp
2
が下記一般式(VI)で表され、Ar
1、Ar
2およびAr
3はそれぞれ独立して
芳香族炭化水素環の一価もしくは二価基を表し、Xはエチレン基もしくはビニレン基を表し、lは1~3の整数を表し、mは0~2の整数を表す。)
Eは、前記カップラー成分残基のCp
1、Cp
2中の-OH基、-CONH-基の各水素原子に置換するように結合しており、Eはカルボエステル基:-C(=O)-O-R
1(式中R
1は、炭素数4~10の置換または非置換のアルキル基を表わす。)を表わし、nは1~6の整数を表す。]
【化3】
(一般式(III)中、R
11、R
12はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表す。)
【化4】
(一般式(IV)中、R
13、R
14、およびR
15はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表す。)
【化5】
【化6】
(一般式(V)および(VI)中、Zは炭化水素環または複素環の縮合環を表し、Yは炭化水素環の一価もしくは二価基を表す。なお前記一般式(II)での結合基XはYと結合する。)
【請求項2】
請求項1に記載のアゾ化合物
を製造するアゾ化合物の製造方法であって、
前記一般式(II)で表されるアゾ顔料と下記一般式(VII)で表されるピロ炭酸ジエステルとを塩基の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
【化7】
(式中R
1は、炭素数4~10の置換または非置換のアルキル基を表わす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機光導電体として有用な新規トリアリールアミンを有するアゾ化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実用化された電子写真感光体のほとんどは導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層とを積層した機能分離型の電子写真感光体であり、電荷輸送層に含まれる電荷輸送物質としては正孔輸送材料が用いられる。これらはもっぱら負帯電の電子写真プロセスに用いられている。
【0003】
また、電子写真プロセスにおける信頼性の高い帯電方式はコロナ放電によるものであり、ほとんどの複写機、プリンタはこの方式が採用されている。しかしながら、周知の如く、正極性と比べて負極性のコロナ放電は不安定であり、このためスコロトロンによる帯電方式が採用され、コストアップの一要因となっている。負極性のコロナ放電は化学的損傷を引き起こす物質であるオゾンの発生量をより多く伴うため、長時間使用することで帯電時に発生するオゾンによるバインダー樹脂及び電荷移動材料の酸化劣化や、帯電時に生成するイオン性化合物、例えば、窒素酸化物イオン、イオウ酸化物イオン、アンモニウムイオン等が感光体表面に蓄積することによる、画質低下が発生し問題となる。このため、オゾンの外部排出を防ぐべく、負帯電方式の複写機、プリンタにはオゾンフィルターが用いられている場合が多く、これも装置のコストアップの要因となっている。また、多量に発生するオゾンは環境汚染の問題ともなる。
【0004】
これらを解消するために、正帯電型の単層電子写真感光体の開発が進められている。正帯電方式であれば、オゾンや窒素酸化物イオンなどの発生量が抑えられ、さらに現状において広く用いられている二成分系現像剤の使用では、電子写真感光体が正帯電の方が、環境変動が少なく安定な画像が得られ、この面からも正帯電型の電子写真感光体が望ましい。
しかしながら、高速印刷あるいは感光体の小径化に伴う装置の小型化を実現するには未だ感度や耐久性は充分でない。
したがって、正帯電型の単層電子写真感光体において優れた電荷輸送能を有し耐久性にも優れた電荷輸送材料がいまだに待ち望まれている。
【0005】
特許文献1は、単層電子写真感光体の電子輸送材料としてジフェノキノン誘導体を用いることを提案している。また、非特許文献1にはナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体からなる半導性材料が記載され、特許文献2及び特許文献3には、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体が提案されている。さらに特許文献4には有機光導電体として有用なアゾ化合物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高速複写機用並びにレーザプリンター用の電子写真感光体、特に正帯電単層型感光体における有機光導電体として有用な、高感度で、かつ有機溶剤に対して溶解性の優れたトリアリールアミンを有するアゾ化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)下記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物。
【0008】
【0009】
[一般式(I)中、Aは下記一般式(II)で表されるアゾ顔料の残基であり、
【0010】
【0011】
(一般式(II)中、Bはアゾ顔料の主骨格を表し、下記一般式(III)または下記一般式(IV)で表され、Cp1、Cp2は-OH基および-CONH-基を有するカップラー成分残基を表し、Cp
1
が下記一般式(V)で表され、Cp
2
が下記一般式(VI)で表され、Ar1、Ar2およびAr3はそれぞれ独立して芳香族炭化水素環の一価もしくは二価基を表し、Xはエチレン基もしくはビニレン基を表し、lは1~3の整数を表し、mは0~2の整数を表す。)
Eは、前記カップラー成分残基のCp1、Cp2中の-OH基、-CONH-基の各水素原子に置換するように結合しており、Eはカルボエステル基:-C(=O)-O-R1(式中R1は、炭素数4~10の置換または非置換のアルキル基を表わす。)を表わし、nは1~6の整数を表す。]
なお、一般式(III)から一般式(VI)は実施形態の欄で示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高速複写機用並びにレーザプリンター用の電子写真感光体、特に正帯電単層型感光体における有機光導電体として有用な、高感度で、かつ有機溶剤に対して溶解性の優れたトリアリールアミンを有するアゾ化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られたアゾ化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)である。
【
図2】実施例2で得られたアゾ化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)である。
【
図3】実施例3で得られたアゾ化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)である。
【
図4】実施例4で得られたアゾ化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)である。
【
図5】実施例5で得られたアゾ化合物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態についてさらに説明する。
【0015】
前記特許文献1のジフェノキノン誘導体は、電荷移動度がやや低いため複写機、プリンタの高速化、小型化を考えた場合、感光体感度特性は充分ではない。また、特許文献1のジフェノキノン誘導体は感光体を形成する樹脂バインダーとの相溶性が低く十分な特性が得られない。特許文献2及び特許文献3のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体は、構造が複雑で製造上の問題があった。また、非特許文献1のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体は電子輸送性が低く、実用的な特性を有しないという問題があった。さらに特許文献4のアゾ化合物は、電子輸送性に優れたものであるが正孔輸送性はほとんどなく感度、耐久性にまだ十分なものではなかった。
本発明はこれら従来の技術の課題を解決し、高速複写機用並びにレーザプリンター用の電子写真感光体、特に正帯電単層型感光体における有機光導電体として有用な、高感度で、かつ有機溶剤に対して溶解性の優れたトリアリールアミンを有するアゾ化合物およびその製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明のトリアリールアミンを有するアゾ化合物は、上記構成1)に示される通りであるが、下記構成2)~5)も本発明の実施形態に含まれる。
【0017】
2)前記一般式(II)のBが下記一般式(III)で表されることを特徴とする1)に記載のトリアリールアミンを有するアゾ化合物。
【0018】
【0019】
(一般式(III)中、R11、R12はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表す。)
【0020】
3)前記一般式(II)のBが下記一般式(IV)で表されることを特徴とする1)に記載のトリアリールアミンを有するアゾ化合物。
【0021】
【0022】
(一般式(IV)中、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表す。)
【0023】
4)前記一般式(II)のCp1が下記一般式(V)で表され、Cp2が下記一般式(VI)で表されることを特徴とする1)に記載のトリアリールアミンを有するアゾ化合物。
【0024】
【0025】
【0026】
(一般式(V)および(VI)中、Zは炭化水素環または複素環の縮合環を表し、Yは炭化水素環の一価もしくは二価基を表す。なお前記一般式(II)での結合基XはYと結合する。)
【0027】
5)前記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物の製造方法であって、前記一般式(II)で表されるアゾ顔料と下記一般式(VII)で表されるピロ炭酸ジエステルとを塩基の存在下で反応させることを特徴とする前記製造方法。
【0028】
【化7】
(式中R
1は、炭素数4~10の置換または非置換のアルキル基を表わす。)
【0029】
R1としては、ブチル基。ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基を表わす。
【0030】
また、Ar1、Ar2、Ar3、Z、およびYの炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などがあげられる。また複素環としては、インドール環、カルバゾール環、ベンゾラン環、ジベンゾフラン環などが例示できる。これらの炭化水素環、複素環の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;トリフルオロメチル基などのハロメチル基;ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基またはそのエステル、水酸基、-SO3Naなどのスルホン酸塩基などが挙げられる。
【0031】
また、R11~R15のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などがあげられる。
【0032】
以下に化合物例を示す。
<アゾ顔料の主骨格Bが一般式(III) で表される化合物例>
【0033】
(III)-1
【0034】
【0035】
(III)-2
【0036】
【0037】
(III)-3
【0038】
【0039】
<アゾ顔料の主骨格Bが一般式(IV) で表される化合物例>
【0040】
(IV)-1
【0041】
【0042】
(IV)-2
【0043】
【0044】
(IV)-3
【0045】
【0046】
(IV)-4
【0047】
【0048】
本発明の前記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物は、前記一般式(II)で表されるアゾ顔料と下記一般式(VII)で表されるピロ炭酸ジエステルとを塩基の存在下で反応させることにより製造できる。
【0049】
【0050】
(式中R1は、炭素数4~10の置換または非置換のアルキル基を表わす。)
【0051】
具体的には、非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下、0~150℃、好ましくは10~100℃の温度で、30分から20時間、前記一般式(II)で表されるアゾ顔料と下記一般式(VII)で表されるピロ炭酸ジエステルとを、適切なモル比で反応させる方法が挙げられる。該モル比は導入されるEの数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
また、例えば欧州特許第0648770号公報、欧州特許第0648817号公報、特表2001-513119号公報等に記載の方法を参考にすることができる。なお、前記一般式(II)で表されるアゾ顔料は特許第3573829号公報に開示されている。
【0052】
適切な非プロトン性有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。好ましい溶剤は、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドである。
【0053】
触媒として適切な塩基は、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、またはそのアミド類(例えばナトリウムアミド、カリウムアミド類)、水素化アルカリ金属類(例えば水素化リチウム)などがあげられる。また、有機脂肪族や芳香族の塩基も使用でき、例えばジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4-ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミンなどのヘテロ環式N-塩基類が使用できる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンが好ましい。
【0054】
前記記一般式(VII)で表されるピロ炭酸ジエステルは、公知の方法で製造することができ、また、商業的にも入手できる。R1は、上記のものを示すが、溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0055】
前記製造方法において反応終了後に得られた化合物は、通常の方法で単離可能である。特に本発明の前記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物は有機溶剤に対する溶解性が優れているので、更なる純度向上のために、再結晶、カラムクロマトグラム等による精製が容易である。
【0056】
本発明の前記一般式(I)で示されるトリアリールアミンを有するアゾ化合物は、有機光導電体、特に電荷発生物質として各種電子写真用感光体に例えば次のようにして利用され得る。
(1)導電性支持体上に前記アゾ化合物、結着樹脂及び必要あれば増感剤を主成分とする光導電層を設けて単層型感光体とする。
(2)前記(1)の系に更に電荷輸送物質を添加して同様に単層型感光体とする。
(3)導電性支持体上に前記アゾ化合物を主成分とする電荷発生層を設け、更にその上に電荷輸送物質及び結着樹脂を主成分とする電荷輸送層を設けて積層型感光体とする。
(4)前記(3)の電荷発生層、電荷輸送層を逆に積層した層構成の感光体とする。
また、本発明のトリアリールアミンを有するアゾ化合物は有機溶剤に溶解性が優れているため、他の色材、例えば記録媒体用材料、カラーフィルターなどへの使用も可能である。
【実施例】
【0057】
以下に本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0058】
<実施例1>
・化合物(III-1)の製造
ピロカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル2.18g(10.0mmol)と脱水ピリジン50mlの溶液に化合物(III-1)の前駆体(E=H)1.09g(1.00mmol)を加え、室温で30分間攪拌した後、さらに約60℃で2時間加熱撹拌した。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、減圧下、溶媒を除去し、メタノール約20mlを加えて析出した固体をろ取して、60℃にて1日間加熱減圧乾燥して1.48g(収率99.3%)の下記構造式で示される赤色粉末のトリアリールアミンを有するアゾ化合物を得た。
【0059】
【0060】
元素分析(C89H82ClN7O13として)(すべてのE:C5H9O2として)は以下の通りであった。なお、本実施例および下記実施例における元素分析に用いた機器はElementar社製 vario MICRO cubeである。
【0061】
【0062】
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を
図1に示す。前記元素分析の結果および前記赤外線吸収スペクトルから、化合物(III-1)が合成されたことを確認した。
【0063】
<実施例2>
・化合物(III-2)の製造
ピロカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル437mg(2.00mmol)と脱水ピリジン10mlの溶液に化合物(III-2)の前駆体(E=H)241mg(0.200mmol)を加え、約60℃で2時間加熱撹拌した。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、減圧下、溶媒を除去し、メタノールを加えて析出した固体をろ取して、60℃にて1日間加熱減圧乾燥して333mg(収率103.7%)の下記構造式で示される赤色粉末のトリアリールアミンを有するアゾ化合物を得た。
【0064】
【0065】
元素分析(C98H84ClN7O13として)(すべてのE:C5H9O2として)は以下の通りであった。
【0066】
【0067】
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を
図2に示す。前記元素分析の結果および前記赤外線吸収スペクトルから、化合物(III-2)が合成されたことを確認した。
【0068】
<実施例3>
・化合物(III-3)の製造
ピロカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル1.09g(5.00mmol)と脱水ピリジン30mlの溶液に化合物(III-3)の前駆体(E=H)0.679g(0.500mmol)を加え、室温で30分間攪拌した後、約60℃で2時間加熱撹拌した。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、減圧下、溶媒を除去し、メタノール10mlを加えて析出した固体をろ取して、60℃にて1日間加熱減圧乾燥して0.874g(収率99.4%)の下記構造式で示される赤色粉末のトリアリールアミンを有するアゾ化合物を得た。
【0069】
【0070】
元素分析(C111H104N8O13として)(すべてのE:C5H9O2として)は以下の通りであった。
【0071】
【0072】
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を
図3に示す。前記元素分析の結果および前記赤外線吸収スペクトルから、化合物(III-3)が合成されたことを確認した。
【0073】
<実施例4>
・化合物(IV-1)の製造
ピロカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル0.327g(1.50mmol)と脱水ピリジン10mlの溶液に化合物(IV-1)の前駆体(E=H)0.173g(0.100mmol)を加え、約60℃で2.5時間加熱撹拌した。徐々に深紫色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、減圧下、溶媒を除去し、メタノールを加えて析出した固体をろ取して、60℃にて1日間加熱減圧乾燥して0.133g(収率48.5%)の下記構造式で示される深紫色粉末のトリアリールアミンを有するアゾ化合物を得た。
【0074】
【0075】
元素分析(C143H132N14O18として)(すべてのE:C5H9O2として)は以下の通りであった。
【0076】
【0077】
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を
図4に示す。前記元素分析の結果および前記赤外線吸収スペクトルから、化合物(IV-1)が合成されたことを確認した。
【0078】
<実施例5>
・化合物(IV-2)の製造
ピロカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル0.437g(2.00mmol)と脱水ピリジン10mlの溶液に化合物(IV-2)の前駆体(E=H)0.390g(0.200mmol)を加え、約60℃で3時間加熱撹拌した。徐々に深紫色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、減圧下、溶媒を除去し、メタノールを加えて析出した固体をろ取して、60℃にて1日間加熱減圧乾燥して0.483g(収率94.7%)の下記構造式で示される深紫色粉末のトリアリールアミンを有するアゾ化合物を得た。
【0079】
【0080】
元素分析(C159H143N15O18として)(すべてのE:C5H9O2として)は以下の通りであった。
【0081】
【0082】
このものの赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)を
図5に示す。前記元素分析の結果および前記赤外線吸収スペクトルから、化合物(IV-2)が合成されたことを確認した。
【0083】
<応用例>
特開2007-108682号公報に記載された実施例3に準じ、本応用例で用いる電子写真感光体を以下のように作製した。
電荷発生材料として無金属フタロシアニン顔料(大日本インキ工業株式会社:Fastogen Blue8120B)30質量部、シクロヘキサンノン970質量部とともにボールミル装置にて2時間分散せしめ、電荷発生材料分散液とした。これとは別にテトラヒドロフラン340質量部に、ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;4.0万、帝人化成社製)49質量部、前述のトリアリールアミンを有するアゾ化合物(III-2)で表わされる電荷輸送物質20質量部、下記式(i)で表わされる電荷輸送物質29.5質量部、及びシリコーンオイル(KF50-100CS信越化学工業社製)0.1質量部を溶解せしめ、これに前述の電荷発生物質分散液66.6質量部を添加し撹拌して感光層塗工液とした。
直径30mm、長さ340mmのアルミニウムドラム(予め円周振れの測定を行ない20μm以内のものを選別したもの)上に、前記感光層塗工液を用いて浸漬塗工を行ない成膜して、乾燥120℃で15分乾燥した。なお感光層は25μmの厚さとなるような昇降速度条件で作製した。
このようにして作製した電子写真感光体を、リコー製IPSiO Color 8100改造機(書込のLD波長を780mnとしてパワーパックを変更し帯電極性を正帯電用に改造したもの)に搭載し、以下の条件で、画像面積率6%となる矩形のパッチと文字の混在しているフルカラー画像の連続10万枚の印刷を行ない、その際初期画像及び10万枚印刷後の暗部電位、明部電位、画像品質について評価を行なった。結果を表6に示す。
暗部電位、明部電位、画像品質については以下のようにして評価した。
・暗部電位:一次帯電の後、現像部位置まで移動した際の感光体表面電位とし、初期において+700Vとするように帯電器の印加電圧を調整し、その後は試験終了後まで一定の印加電圧とした。
・明部電位:帯電の後、画像露光(全面露光)を受け、現像部位置まで移動した際の感光体表面電位を測定した。
・画像品質:フルカラー画像出力時の帯電ムラに起因する地汚れの有無を調べた(白部に全く地肌汚れが発生しなかった場合を〇とし、白部に一部でも地肌汚れが発生した場合を×とした)。
【0084】
【0085】
【0086】
以上の説明から判るように、本発明のトリアリールアミンを有するアゾ化合物は高速複写機用として高い感度を示し、電子写真感光体に用いられる有機光導電体としてきわめて有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【文献】特許第2732697号公報
【文献】特開2005-154409号公報
【文献】米国特許第6794102号明細書
【文献】特許第5387936号公報
【非特許文献】
【0088】
【文献】Chemistry letters (2003),32(6), 508-509