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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20250520BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250520BHJP
   C07C 71/00 20060101ALN20250520BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/20 501
C07C71/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022078510
(22)【出願日】2022-05-12
(65)【公開番号】P2023167368
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 駿
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180928(JP,A)
【文献】特開2018-095853(JP,A)
【文献】特開2010-049227(JP,A)
【文献】特開2001-194794(JP,A)
【文献】特開2015-172746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0181628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
C07C 71/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される少なくとも2つのアシロキシ基を有する超原子価ヨウ素化合物、下記式(2)で表されるカルボン酸化合物、及び溶剤を含み、ベースポリマー及び光酸発生剤を含まない非化学増幅レジスト組成物。
【化1】
(式中、nは、0~5の整数である。
1及びR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である
3は、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。nが2~5のとき、各R3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化2】
(式中、mは、~4の整数である。
mが3又は4のとき、11は、炭素数1~40のm価炭化水素基又は炭素数2~40のm価複素環式基であり、mが2のとき、R11は、エーテル結合、カルボニル基、アゾ基、チオエーテル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、スルフィニル基スルホニル基、炭素数1~40のm価炭化水素基又は炭素数2~40のm価複素環式基である。また、前記m価炭化水素基又はm価複素環式基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記m価炭化水素基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。前記m価炭化水素基は、炭素数1~40のアルカン、炭素数2~40のアルケン、炭素数2~40のアルキン、炭素数3~40の環式飽和炭化水素、炭素数3~40の環式不飽和炭化水素又は炭素数6~40の芳香族炭化水素からm個の水素原子が脱離して得られる基であり、前記m価複素環式基は、複素環式化合物からm個の水素原子が脱離して得られる基である。
12は、単結合又は炭素数1~10のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。mが2~4のとき、各R12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
1 及びR 2 が、炭素数1~4のヒドロカルビル基である請求項1記載の非化学増幅レジスト組成物。
【請求項3】
前記超原子価ヨウ素化合物が、下記式のいずれかで表されるものである請求項1記載の非化学増幅レジスト組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項4】
前記カルボン酸化合物が、下記式のいずれかで表されるものである請求項1記載の非化学増幅レジスト組成物。
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の非化学増幅レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像液が、有機溶剤である請求項5記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記高エネルギー線が、電子線又は極端紫外線である請求項5記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IoT市場の拡大とともにLSIの高集積化、高速度化及び低消費電力化が更に要求され、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特に、ロジックデバイスが微細化を牽引している。最先端の微細化技術として、ArF液浸リソグラフィーのダブルパターニング、トリプルパターニング及びクアドロパターニングによる10nmノードのデバイスの量産が行われており、さらに次世代の波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィーによる7nmノードデバイスの検討が進められている。
【0003】
微細化の進行とともに、酸の拡散による像のボケが問題になっている(非特許文献1)。寸法サイズ45nm以降の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている(非特許文献2)。しかしながら、化学増幅レジスト組成物は、酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポージャベーク(PEB)温度を低くしたり、PEB時間を短くしたりして酸拡散を極限まで抑えようとすると、感度やコントラストが著しく低下する。
【0004】
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効である。そこで、ポリマーに重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤を共重合することが提案されている。しかし、寸法サイズ16nm以降のレジスト膜のパターン形成においては、酸拡散の観点から化学増幅レジスト組成物ではパターン形成ができないと考えられており、非化学増幅レジスト組成物の開発が望まれている。
【0005】
非化学増幅レジスト組成物用の材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。PMMAは、EUV照射によって主鎖が切断し、分子量が低下することによって有機溶剤の現像液への溶解性が向上するポジ型レジスト材料である。
【0006】
ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ)は、EUV照射によって生じたシラノールの縮合反応による架橋によってアルカリ現像液に不溶となるネガ型レジスト材料である。また、塩素置換したカリックスアレーンもネガ型レジスト材料として機能する。これらのネガ型レジスト材料は、架橋前の分子サイズが小さく酸拡散によるボケが無いため、エッジラフネスが小さく解像性が非常に高く、露光装置の解像限界を示すためのパターン転写材料として用いられている。しかしながら、これらの材料は感度が不十分であり、更なる改善が必要である。
【0007】
EUVリソグラフィー向け材料開発を困難にさせる要因として、EUV露光におけるフォトン数の少なさが挙げられる。EUVのエネルギーはArFエキシマレーザー光に比べて遙かに高く、EUV露光のフォトン数は、ArF露光のそれの14分の1である。さらに、EUV露光で形成するパターンの寸法は、ArF露光の半分以下である。このため、EUV露光はフォトン数のバラツキの影響を受けやすい。極短波長の放射光領域におけるフォトン数のバラツキは物理現象のショットノイズであり、この影響を無くすることはできない。そのため、いわゆる確率論(Stochastics)が注目されている。ショットノイズの影響を無くすることはできないが、いかにこの影響を低減するかが議論されている。ショットノイズの影響で寸法均一性(CDU)やラインウィズスラフネス(LWR)が大きくなるだけでなく、数百万分の一の確率でホールが閉塞する現象が観察されている。ホールが閉塞すると電通不良となってトランジスタが動作しないので、デバイス全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。実用的な感度でのレジスト適用を考慮した場合、PMMAやHSQを主成分としたレジスト組成物では、Stochasticsの影響を大きく受け、所望の解像性能を得ることはできていない。
【0008】
ショットノイズの影響をレジスト側で低減する方法として、EUVの吸収が大きい元素の導入が注目されている。特許文献1には、EUV光の吸収が大きいヨウ素原子を含む化学増幅レジスト組成物が提案されている。しかし、前述したとおり、化学増幅レジストでは、今後ますます寸法サイズが微細化されるEUVリソグラフィーにおいて優れた解像性能を実現できない。
【0009】
特許文献2には、スズ化合物を用いたネガ型レジスト組成物が提案されている。これは、EUV光吸収の高いスズ元素を主成分としているため、Stochasticsが改善され、高感度・高解像性を実現できる。しかし、いわゆるこのようなメタルレジストは、レジスト用溶剤に対する溶解性不足、保存安定性、エッチング後残渣による欠陥等多くの課題を抱えている。さらに、メタルレジストは、主に露光部が金属酸化物となることで現像液に不溶となるネガ型であるため、コンタクトホールのパターニングに適用する場合においては、反転プロセス工程が追加で必要となり、コスト面でも懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-005224号公報
【文献】特開2021-503482号公報
【文献】特開2015-180928号公報
【文献】特開2018-095853号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】SPIE Vol. 5039 p1 (2003)
【文献】SPIE Vol. 6520 p65203L-1 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィー、特に電子線(EB)リソグラフィー及びEUVリソグラフィーにおいて、感度及び解像性に優れるレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、少なくとも2つのアシロキシ基を有する超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物を主成分とするレジスト組成物が、極めて高感度であり、また優れた解像力を示すレジスト膜を与え、精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
1.少なくとも2つのアシロキシ基を有する超原子価ヨウ素化合物、カルボン酸化合物、及び溶剤を含むレジスト組成物。
2.前記超原子価ヨウ素化合物が、下記式(1)で表されるものである1のレジスト組成物。
【化1】
(式中、nは、0~5の整数である。
1及びR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R1及びR2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子間の原子と共に環を形成してもよい。
3は、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。nが2~5のとき、各R3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
3.前記カルボン酸化合物が、下記式(2)で表されるものである1又は2のレジスト組成物。
【化2】
(式中、mは、1~4の整数である。
11は、炭素数1~40のm価炭化水素基又は炭素数2~40のm価複素環式基であり、mが2のとき、R11は、エーテル結合、カルボニル基、アゾ基、チオエーテル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、スルフィニル基又はスルホニル基であってもよい。また、前記m価炭化水素基又はm価複素環式基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記m価炭化水素基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。
12は、単結合又は炭素数1~10のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。mが2~4のとき、各R12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
4.mが、2~4の整数である3のレジスト組成物。
5.1~4のいずれかのレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
6.前記現像液が、有機溶剤である5のパターン形成方法。
7.前記高エネルギー線が、EB又はEUVである5又は6のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジスト組成物は、特にEBリソグラフィー及びEUVリソグラフィーにおいて、高感度及び高解像性を両立し、微細パターンを形成するにあたり極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、主成分として少なくとも2つのアシロキシ基を有する超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物を含む。
【0017】
[超原子価ヨウ素化合物]
超原子価ヨウ素化合物とは、形式的にオクテット則を超えた価電子を有するヨウ素化合物の総称である。本発明で使用する超原子価ヨウ素化合物としては、少なくとも2つのアシロキシ基を有するものであれば、特に限定されず、酸化数が+3である三配位ヨウ素化合物、+5である五配位ヨウ素化合物が挙げられる。
【0018】
前記超原子価ヨウ素化合物としては、下記式(1)で表される三配位超原子価ヨウ素化合物が好ましい。
【化3】
【0019】
式(1)中、nは、0~5の整数である。
【0020】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~10のヒドロカルビル基である。また、R1及びR2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子及び該炭素原子間の原子と共に環を形成してもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。前記炭素数1~10のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基等の炭素数3~10の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基を構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。R1及びR2としては、炭素数1~4のヒドロカルビル基が好ましい。
【0021】
式(1)中、R3は、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。nが2~5のとき、各R3は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。前記炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~40のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数3~40の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~40のアリール基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基を構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0022】
式(1)で表される超原子価ヨウ素化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
[カルボン酸化合物]
本発明で使用するカルボン酸化合物は、一般に有機化学で定義されるカルボン酸化合物全般が適用できるが、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【化10】
【0029】
式(2)中、mは、1~4の整数である。R11は、炭素数1~40のm価炭化水素基又は炭素数2~40のm価複素環式基であり、mが2のとき、R11は、エーテル結合、カルボニル基、アゾ基、チオエーテル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、スルフィニル基又はスルホニル基であってもよい。また、前記m価炭化水素基又はm価複素環式基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記m価炭化水素基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。R12は、単結合又は炭素数1~10のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、該ヒドロカルビレン基の-CH2-の一部が、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。mが2~4のとき、各R12は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
11で表されるm価炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記m価炭化水素基は、炭化水素から、m個の水素原子が脱離して得られる基である。前記炭化水素としては、炭素数1~40のアルカン、炭素数2~40のアルケン、炭素数2~40のアルキン、炭素数3~40の環式飽和炭化水素、炭素数3~40の環式不飽和炭化水素、炭素数6~40の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0031】
前記炭素数1~40のアルカンとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、これらの構造異性体等が挙げられる。
【0032】
前記炭素数~40のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、これらの構造異性体等が挙げられる。
【0033】
前記炭素数~40のアルキンとしては、アセチレン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、へプチン、オクチン、ノニン、デシン、これらの構造異性体等が挙げられる。
【0034】
前記炭素数3~40の環式飽和炭化水素としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、アダマンタン、ノルボルナン等が挙げられる。
【0035】
前記炭素数3~40の環式不飽和炭化水素としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0036】
前記炭素数6~40の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル等が挙げられる。
【0037】
11で表されるm価複素環式基は、複素環式化合物からm個の水素原子が脱離して得られる基である。前記複素環式化合物としては、フラン、ピリジン、ピラゾール、チアゾリジン等が挙げられる。
【0038】
前記m価炭化水素基又はm価複素環式基は、その水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を含んでいてもよい。また、前記m価炭化水素基は、それを構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0039】
12で表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メタンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の炭素数1~0のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の炭素数3~0の環式飽和ヒドロカルビレン基;ビニレン基、プロペン-1,3-ジイル基等の炭素数2~0の不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~0のアリーレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物等を含んでいてもよい。
【0040】
式(2)で表されるカルボン酸化合物のうち、mが2~4の整数であるものが好ましい。この場合、超原子価ヨウ素化合物と混合した際に高分子量の強固なレジスト膜を形成しやすく、エッチング耐性や現像液耐性の観点から好ましい。
【0041】
前記カルボン酸化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
本発明のレジスト組成物中、超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物の含有比率は、モル比で、超原子価ヨウ素化合物:カルボン酸化合物=10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、30:70~70:30が更に好ましい。
【0045】
[有機溶剤]
本発明のレジスト組成物は、有機溶剤を含む。前記溶剤としては、本発明に使用される超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物を溶解し、成膜可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;及びこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0046】
前記有機溶剤の含有量は、レジスト組成物中の固形分濃度が、0.1~20質量%となる量が好ましく、0.1~15質量%となる量がより好ましく、0.1~10質量%となる量が更に好ましい。なお、本発明において固形分とは、レジスト組成物の全成分のうち、溶剤以外のものの総称である。
【0047】
[その他の成分]
本発明のレジスト組成物は、更にその他の成分として界面活性剤を含んでもよい。前記界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤としては、米国特許出願公開2008/0248425号明細書の段落[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。さらに、本発明では、米国特許出願公開2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載されたフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤を使用することもできる。本発明のレジスト組成物が前記界面活性剤を含む場合、その含有量は、全固形分中0.0001~2質量%が好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明のレジスト組成物は、更にその他の成分としてラジカル捕捉剤を含んでもよい。ラジカル捕捉剤を添加することで、フォトリソグラフィー中における光反応を制御し、感度を調整することができる。
【0049】
前記ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードフェノール類、キノン類、ヒンダードアミン類、チオール化合物等が挙げられる。具体的には、ヒンダードフェノール類としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。キノン類としては、4-メトキシフェノール(メトキノン)、ヒドロキノン等が挙げられる。ヒンダードアミン類としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシラジカル等が挙げられる。チオール類としては、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール等が挙げられる。本発明のレジスト組成物が前記ラジカル捕捉剤を含む場合、その含有量は、全固形分中0.01~10質量%が好ましい。前記ラジカル捕捉剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
本発明のレジスト組成物は、超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物を主成分としており、従来の化学増幅レジスト組成物に含まれるような酸不安定基付きベースポリマーや、光酸発生剤を含まない。しかしながら、本発明のレジスト組成物は、特にEB及びEUV露光によって露光部分が現像液に可溶となり、ポジ型のパターンを形成することができる。その機構については完全に明らかではないが、例えば以下のように推測される。
【0051】
本発明において使用される超原子価ヨウ素化合物は、式(1)で表されるような、アリール基とカルボキシレート配位子2つとが結合した三配位の化合物である。このような三配位ヨウ素化合物は、カルボン酸化合物と混合することで、カルボキシレート配位子の交換が平衡反応で生じると考えられる。この際、元のカルボキシレート配位子を何らかの方法で除去することができれば、新たな配位子を有した超原子価ヨウ素化合物が生成される。例えば、超原子価ヨウ素化合物として比較的入手容易なヨードベンゼンジアセテートと、分子量の大きいカルボン酸化合物を混合し、生じた低沸点の酢酸を除去すれば、配位子交換が完成する。分子量が十分に大きい配位子であれば、強固なレジスト膜を形成することが可能となる。特にカルボン酸化合物が複数のカルボキシ基を有している場合、例えばジカルボン酸化合物を用いれば、超原子価ヨウ素化合物を有するポリエステル構造の高分子量体を形成できると考えられ、成膜性を確保するとともに十分な現像液耐性を得ることができる。
【0052】
このような超原子価ヨウ素化合物とカルボン酸化合物との結合体は、成膜調製時に生じさせる。すなわち、成膜時及びその後のベーク工程において生じた低分子カルボン酸成分を除去することで、配位子交換反応を完了させるとともにレジスト膜を形成する。
【0053】
本発明のレジスト組成物から得られるレジスト膜は、有機溶剤溶解性が極めて低い。これは、分極の大きい前記ヨウ素化合物に由来するものと推測される。しかし、これが光によって分解することで、有機溶剤可溶となり、ポジ型レジスト組成物として機能するものと推測される。あるいは、光分解物が低分子量成分であるならば、露光部を揮発させて除去する、すなわち現像液を使用することなくパターニングすることも可能である。
【0054】
前述の推測から、本発明のレジスト組成物は非化学増幅レジスト組成物であると言える。そのため、本発明のレジスト組成物によれば、従来の化学増幅レジスト組成物(ベースポリマー及び光酸発生剤を含む組成物)にみられる、酸の拡散による像のボケが発生せず、微細なパターンを解像することが可能となる。
【0055】
本発明のレジスト組成物は、特にEUVリソグラフィーにおいて極めて有効である。それは、EUV光に対して吸収能の高いヨウ素原子を有していることに由来する。すなわち、ショットノイズが低減され、より高解像性及び低LWRを達成することができる。
【0056】
微細パターンが形成可能なEUVレジスト組成物として、ヨウ素原子と同様にEUV光吸収能の高い金属スズ化合物を主成分とするメタルレジストが報告されている(例えば、特許文献2)。しかし、前述したとおり、このようなメタルレジストは、溶剤への溶解性不足、保存安定性、そして金属元素を含むが故のエッチング後残渣による欠陥等多くの問題点がある。一方、本発明のレジスト組成物は、金属元素を使用していないため、欠陥の点でメタルレジストよりも有利であり、溶剤への溶解性についても問題はない。さらに、本発明のレジスト組成物を用いることで、非現像あるいは有機溶剤現像によってポジ型パターンが形成されるため、例えば、コンタクトホール形成工程においても、ネガ型現像で行われる反転プロセス工程が不要となる。これらの点から、本発明のレジスト組成物は、メタルレジストよりも有用であると言える。
【0057】
特許文献3や4には、超原子価ヨウ素化合物を添加剤として含むレジスト組成物や、超原子価ヨウ素化合物をベースポリマーのポリマー骨格に組み込んだレジスト組成物が記載されている。しかし、これらの特許文献に記載されているレジスト組成物の特性としては、ラインエッジラフネスを改善できるとの記載のみであり、超原子価ヨウ素化合物が光分解する可能性も非化学増幅レジストとして機能する可能性も一切言及していない。さらに超原子価ヨウ素化合物が主成分とはなっていない。したがって、これらの特許文献から、本発明のような、EUVリソグラフィーにおいてショットノイズを低減でき、しかも非化学増幅レジストとして微細パターンを形成できる材料を想起するには至らないと思料される。すなわち、本発明は、明確に新規なレジスト組成物及びパターン形成方法を提供するものであると言える。
【0058】
[パターン形成方法]
本発明のレジスト組成物を種々の集積回路製造に用いる場合は、公知のリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、パターン形成方法としては、前述したレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を高エネルギー線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、必要に応じて現像液を用いて現像する工程とを含む方法が挙げられる。
【0059】
まず、本発明のレジスト組成物を、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)上に、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01~2μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で、好ましくは60~200℃、10秒~30分間、より好ましくは80~180℃、30秒~20分間プリベーク(PB)し、レジスト膜を形成する。
【0060】
次いで、高エネルギー線を用いて、前記レジスト膜を露光する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、EB、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等が挙げられる。前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、EUV、X線、軟X線、エキシマレーザー光、γ線、シンクロトロン放射線等を用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~300mJ/cm2程度、より好ましくは10~200mJ/cm2程度となるように照射する。高エネルギー線としてEBを用いる場合は、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは0.1~2000μC/cm2程度、より好ましくは0.5~1500μC/cm2程度で描画する。なお、本発明のレジスト組成物は、特に高エネルギー線の中でも、EB又はEUVによる微細パターニングに好適である。
【0061】
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて露光後にPEBを行う。その場合、露光後にホットプレート上又はオーブン中で30~120℃を10秒~30分間、より好ましくは60~100℃を30秒~20分間の条件で行うことが好ましい。
【0062】
露光後又はPEB後、必要に応じて現像液を用いて現像してパターニングを行う。本発明では有機溶剤現像によって露光部が可溶化し、ポジ型パターンを得ることができる。このときに用いる現像液としては、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、n-ペンタノール、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、酢酸2-フェニルエチル、2-プロパノール、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、4-メチル-2-ペンタノール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
現像後、必要に応じてリンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3~10のアルコール、炭素数8~12のエーテル化合物、炭素数6~12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0064】
リンスを行うことによって、レジストパターンの倒れや欠陥の発生を低減させることができる。また、リンスは必ずしも必須ではなく、リンスを行わないことによって溶剤の使用量を削減することができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0066】
[1]レジスト組成物の調製
[実施例1-1~1-15、比較例1-1~1-3]
下記表1に示す組成で超原子価ヨウ素化合物及びカルボン酸化合物を溶剤に溶解し、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターでろ過することで、レジスト組成物(R-01~R-15)を調製した。また、下記表2に示す組成でベースポリマー、光酸発生剤、感度調整剤、溶剤及び0.01質量%の界面活性剤(PF-636、オムノバ社製)を混合した後、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターでろ過し、比較例用レジスト組成物(CR-01~CR-03)を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1中、超原子価ヨウ素化合物(I-1~I-3)、カルボン酸化合物(CA-1~CA-10)及び溶剤は、以下のとおりである。
【化14】
【0070】
【化15】
【0071】
・溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
AcOH(酢酸)
GBL(γ-ブチロラクトン)
【0072】
表2中、ベースポリマー(P-1)、光酸発生剤(PAG-1、PAG-2)及び感度調整剤(Q-1、Q-2)は、以下のとおりである。
【化16】
Mw=8755(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.94
【0073】
【化17】
【0074】
【化18】
【0075】
[2]EUVリソグラフィー評価(ラインアンドスペースパターン)
[実施例2-1~2-15、比較例2-1~2-3]
各レジスト組成物(R-01~R-15、CR-01~CR-03)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて、表3に記載の温度にて60秒間PBし、膜厚40nmのレジスト膜を作製した。ASML社製EUVスキャナーNXE3400(NA0.33、σ0.9、90度ダイポール照明)を用いて、36nmラインアンドスペース(LS)1:1のパターンを露光後、ホットプレート上で表3に記載の温度で60秒間PEBを行い、次いで表3に記載の現像液にて30秒間現像を行って、スペース幅18nm、ピッチ36nmのLSパターンを形成した。
得られたレジストパターンについて、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0076】
[感度評価]
前記LSパターンを(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて観察し、スペース幅18nm、ピッチ36nmのLSパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。
【0077】
[LWR評価]
最適露光量で照射して得たLSパターンを、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0078】
[限界解像性評価]
前記LSパターンが形成される最適露光量から、露光量を少しずつ増加させてパターンを形成していく際に解像する限界のライン幅(nm)を、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて求め、これを限界解像度(nm)とした。この値が小さいほど、限界解像性に優れ、より微細なパターンを形成できることを示す。
【0079】
【表3】
【0080】
現像液:nBA(酢酸ブチル)
TMAH(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)
【0081】
表3に示した結果より、本発明のレジスト組成物は、EUV露光によるLSパターン形成において、感度、LWR及び解像性に優れることがわかった。
【0082】
[3]EUVリソグラフィー評価(コンタクトホールパターン)
[実施例3-1~3-15、比較例3-1~3-3]
各レジスト組成物(R-01~R-15、CR-01~CR-03)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて、表4に記載の温度にて60秒間PBし、膜厚50nmのレジスト膜を作製した。次いで、ASML社製EUVスキャナーNXE3400(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハー上寸法がピッチ64nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク)を用いて前記レジスト膜を露光し、ホットプレート上にて表4に記載の温度で60秒間PEBを行い、表4に記載の現像液にて30秒間現像を行って、寸法32nmのホールパターンを得た。
得られたレジストパターンについて、以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0083】
[感度評価]
前記コンタクトホールパターンを(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて観察し、寸法22nmのホールパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。
【0084】
[CDU評価]
最適露光量で照射して得たホールパターン50個の寸法を測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとした。この値が小さいほど、均一なホール径のパターンが得られる。
【0085】
[限界解像性評価]
前記ホールパターンが形成される最適露光量から、露光量を少しずつ減少させてホールパターンを形成していく際に解像する限界のホール径(nm)を、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG-6300)を用いて求め、これを限界解像度(nm)とした。この値が小さいほど、限界解像性に優れ、より微細なホール径のパターンが形成できることを示す。
【0086】
【表4】
【0087】
表4に示した結果より、本発明のレジスト組成物は、EUV露光によるコンタクトホールパターン形成において、感度、CDU及び解像性に優れることがわかった。